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室内遊びにおける幼児の身体活動量確保の提案

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Ⅰ.緒言

遊び空間の減少,少子化による遊ぶ仲間の減少,

社会の変化を受けた遊ぶ時間の減少という,いわ ゆる三間(サンマ)の減少により,子どもの運動 不足が問題視されて久しい.こうした問題がメ ディア等で取り上げられ,幼稚園,保育園からス ポーツクラブに通わせる親の増加や,「保育所・幼 稚園教育課程」のなかに体育専門の講師を招いて 体育指導をする園が増加しており,現代の子ども の「体力・運動能力低下」に対する問題意識は高 まっていると言える.中村(2004)は,走る・跳 ぶ・投げるといった基礎的な運動能力が目立って 低下しており,6歳以下の子どもにも体力の低下 が見られると指摘し,中でも歩く・走るといった 基礎の基礎とも言える運動能力や体をコントロー ルする力の育ちの遅れを危惧している.幼児期は 生活習慣病予防や身体活動の多い生活習慣の確立 といった点で重要な時期だと考えられ,文部科学 省発行(2012)の幼児期運動指針において,様々

な遊びを中心に毎日合計60分以上楽しく体を動か すことを推奨している.加えて田中ら(2009)は, 活動強度について1日に少なくとも60分の,

「中・高強度活動(moderate-to-vigorous…physic al…activity:MVPA)」が推奨されていることに言及 している.これらを網羅しようとした場合,天候 に関係なく平均的に中強度以上の運動の実施が求 められることは必至である.さらに田中ら(2015)

は,園での生活における身体活動量(歩数・活動 強度)計測から,幼児期のMVPAに関して屋外遊 びにおいては必ずしもMVPAが含まれていないこ とや室内で実施する遊び(大型積み木やボール投 げ)にもMVPAが含まれていることを指摘してい る.また園生活における歩数のうち自由遊びが7 割を占めるという山内(2014)の報告からもわか るように,自由遊びが幼児の身体活動量を確保す るうえで極めて重要な時間となっていると言える だろう.子どもの身体活動量確保は登園後の遊び 場の充実や保育士・幼稚園教諭の多様な遊びの提 供といった環境構成能力が求められていると考え

室内遊びにおける幼児の身体活動量確保の提案

ー身体活動量の計測をもとにー

An Approach to Securing Physical Activity of Young Children Measured in the Indoor Exercise;

―A Study on Measurement of the Physical Activity―

望月崇博(帝京科学大学),斧田侑己(渋谷区立美竹の丘保育園),川田裕樹(國學院大學)

Takahiro MOCHIZUKI(Teikyo University of Science),Yuki ONODA(Mitakenooka Nursery School),…

Yuki KAWATA(Kokugakuin University)

要約: 本稿は幼児クラス(5歳児クラス)の運動遊びにおける身体活動量(本稿においては歩数・

活動強度とする)に着目し,4つの運動遊び〔屋外での自由遊び,室内での自由遊び,ドッヂビー

(柔らかいフライングディスク)を用いた室内での自由遊び,ドッヂビーを用いて新たに実施した 室内運動遊び〕の身体活動量の計測を試み,各運動遊びにおける幼児の身体活動量の実態を把握し,

幼児の室内運動遊びにおける身体活動量確保のための提言を目的とした.研究方法として山梨県 の公立こども園5歳児を対象に加速度センサー内蔵歩数計を用い,先の4つの運動遊びの身体活 動量の測定・分析を試みた.結果は,屋外の自由遊びでは男女の身体活動量に差が出てしまうこと,

室内遊びで用具のみ介入させた自由遊びでは男女の歩数に差が出てしまうこと,室内自由遊びの 身体活動量は男女ともに低い数値となってしまうこと,室内での用具を介入させた遊びは身体活 動量を確保できること,運動提供者の介入(遊びの提供)は,室内遊びでも屋外遊び以上の身体 活動量が期待できること,女児の身体活動量確保は保育者・運動提供者の介入が必要であること の6点が明らかとなった.これらから室内遊びでの身体活動量確保のためには,幼児がのめりこ めるような用具や配慮といった環境(物的介入)を整えることと保育者・運動提供者の介入(遊 びの提供)の仕方,遊びへの関わり方を工夫することが望ましいと考える.

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られる.しかし先の運動指針で推奨している毎日 60分以上の運動は,悪天候時においては達成が困 難である.つまり室内での遊びの充実と身体活動 量の確保は検討すべき問題だと言える.このよう に考えた場合,幼児の屋外遊びや室内遊びの身体 活動量の実態把握は早急になされるべきであり,

また室内遊びに焦点を当てた身体活動量の計測は あまりなされていないのが現状だ.

そこで本研究では,幼児クラス(5歳児クラス)

の運動遊びの身体活動量に着目し,屋外での自由 遊び(外遊び),室内での自由遊び(中遊び),ウ レタン・ナイロン製の柔らかいフライングディス ク(ヒーロー社製……DODGEBEE:以下ドッヂビー)

を用いた室内での自由遊び,ならびにドッヂビー を用いて新たに実施した室内運動遊び(保育者の 介入)の身体活動量(歩数・活動強度)の計測を 試み,各運動遊びにおける幼児の身体活動量の実 態を把握し,幼児の室内運動遊びにおける提言を 目的とする.

Ⅱ.研究方法 1.対象者及び概要

本研究は山梨県の公立こども園5歳児クラスに おいて調査を行った.調査の実施に伴い事前に保 護者から書面による同意を得た18名のうち,全4 つの活動のデータを取得できた13名(男児7名,

女児6名)を対象とした.表1は対象児の身体的 特徴として男女の身長・体重の平均と2015年厚生 労働省発表の5歳児の身長・体重の全国平均を記 載した.日時と内容は2015年10月14日(晴れ)に 屋外での自由遊び(以下:屋外自由遊び)を…20分 間のうち12分間の身体活動量の測定,10月21日に 室内での自由遊び(以下:室内自由遊び)を20分 間のうち12分間の身体活動量の測定,10月28日に ドッヂビーを用いた室内での自由遊び(以下:ドッ ヂビー自由遊び)の12分間の身体活動量の測定と,

ドッヂビーを用いて新たに実施した室内運動遊び

(以下:ドッヂビー新運動遊び)の12分間の身体活 動量の測定である.また活動内容と時間について の行動観察を行い,各運動遊びの遊び始めた時間 を明確に記録した.さらに遊びの内容や様子の把 握のためにビデオ撮影を行い,統計処理の結果と 照合し比較・検討を行った.なお本研究は帝京科 学大学倫理委員会の承認を得て実施した.

表1.対象児の身体的特徴 男児(n=7) 女児(n=6)

身長(cm) 体重(kg) 身長(cm) 体重(kg)

5歳児 116±2.2 21.9±3.0 112±2.4 18.7±1.6 全国平均 110.9±4.5 18.7±2.4 108.3±5.0 17.2±2.6 2.測定した活動内容

屋外自由遊びは,こども園の園庭(縦約27.0m

×横約18.0m)の中で滑り台やブランコといった 固定遊具やボール,縄などの用具を使用の有無も 含め,自由に遊ぶことだけを指示し測定した(保 育者不介入).

室内自由遊び,ドッヂビー自由遊び,ドッヂビー 新運動遊びは,こども園内の多目的ホール(縦約 10.5m×横約21.0m)にて行った.室内自由遊びは,

用具(こども園のホールに置かれている大型の積 み木複数個,自在に組み立て可能な大型のブロッ ク複数個,体操で使用する幼児用のマット12枚)

の使用の有無も含め,ホール内で自由に遊ぶこと を指示し測定した(保育者不介入).

ドッヂビー自由遊びは,ドッヂビー600(半径約 30cm)とドッヂビー270(半径約15cm)を計20個 用意し,使用の有無も含め自由に遊ぶことを指示 し測定した(道具のみ提供).

ドッヂビー新運動遊びは,ドッヂビー小を用意 し,筆者らのルール説明のもと測定した.介入の 程度は遊びの説明と審判(勝敗の判定)のみ(避 け方や逃げ方,投げ方等には言及しなかった)で ある.

3.調査内容

1)身体活動量の測定

身体活動量の測定は,対象児13名の腰部に加速 度センサー内蔵歩数計(スズケン社製…ライフコー ダEX4秒版:以下ライフコーダ)を装着し,各活 動(屋外自由遊び,室内自由遊び,ドッヂビー自 由遊び,ドッヂビー新運動遊び)における歩数と 活動強度を測定した.なお計測したデータから4 つの運動遊びの時間を均一にするために各活動12 分間のデータを用いた(屋外自由遊びと室内自由 遊び,ドッヂビー自由遊びは対象者全員が遊び始 めてから12分間,ドッヂビー新運動遊びは3分×

4回の12分間).得られたライフコーダの測定結果 は4秒間ごとの活動強度が加速度により0(安静),

0.5(微少運動),1~9(歩行~ジョギングレベル)

望月 崇博 室内遊びにおける幼児の身体活動量確保の提案

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lue)形式で表示される.自由遊びの3つは遊び始 めてからの時間を,ドッヂビー新運動遊びは運動 時間と静止時間を区別し,分,秒単位で筆者らが 時間記録を付け,身体活動量のデータとした.(川 田ら,…2011…;…川田ら,…2014)

2)映像分析

4つの運動遊びの内容把握ために3方向からビ デオ撮影を行い,…対象児が関わった遊びの総時間 数の割合を,男女混合(全体)と男女に分けて算出 しデータとした.この映像分析結果と身体活動量結 果の関連を考察した.

4.ドッヂビーを用いて新たに実施した室内運動 遊びの開発過程

表2,図1にドッヂビー新運動遊びの詳細と構 成図を示した.ドッヂビー新運動遊びの開発過程 で,以下の5点に重点を置き開発を試みた.

① 室内でも安全性が高く,ドッヂビー特有の浮 遊感を楽しめること.

② 初見の幼児が多いことと,それに伴って運動 に優劣がつきにくく,意欲的に取り組めるこ と.

③ 初等教育現場でも使用されており継続的な運 動が期待できること.

④ 山内(2014)の運動遊びにおける身体活動量 確保の報告を参考にし,順番待ちを少なくす ること.

⑤ 幼児期運動指針より「多様な動きの経験」を 重視すること.

ドッヂビー運動遊び開発過程において,帝京科 学大学こども学部こども学科(幼児保育系)の学 生12名を対象に予備実験を行った.主に5歳児の 発達特性・発達段階(主に友達とゲーム性の運動 を行うことができることや勝ち負けを受け入れる ことができるようになることや物の性質に気づき 遊びの中で生かそうとする段階),室内運動遊びの 特徴(フロアに寝転がったり座ったりできる特徴)

に重点を置き,筆者らでディスカッションを重ね,

計3回の予備実験ののち運動開発に至った.

表2.ドッヂビー新運動遊び詳細

内容:円盤から逃げ回れ!! 人数:14名 使用物:ドッヂビー小3個,新聞紙4枚,穴あきダンボール 1個,マット1枚,布製ブロック4個

ルール

① 7 人対 7 人の 2 チームで,外から当てるチームと中で 逃げるチームに分かれて行う.

② 前半は A チームが外から当て,B チームが中で逃げる.

後半は交代.

③ 時間内に何回当てられるかを競う(3 分間).

④ 中のチームは当たっても逃げ続けられる.(逃げるため に中のものを自由に使用して良い.)

⑤ 中で止まったドッヂビーは外のチームが取りに行く.

(中のチームは触れてはいけない.)

⑥ 当たった数は運動提供者が数える.

新聞紙 4枚 穴あき

段ボール1

布製

ブロック4つ マット1枚 ドッヂビー

3

内野 7人 外野

7

直径約7mの円

図1.ドッヂビー新運動遊び構成図 5.統計処理

対象児13名のデータを屋外自由遊び,室内自由 遊び,ドッヂビー自由遊び,ドッヂビー新運動遊 びの4つに分類した.男女の各運動遊び間での歩 数の比較は対応のないtテスト,活動強度の比較 はマンホイットニーの U 検定をそれぞれ行った.

4つの運動遊びの比較において,歩数は各運動遊 び間における歩数の比較は反復測定分散分析,活 動強度の比較は Friedman 検定を行った.そこで 有意な主効果が認められた場合…Bonferroni法に基 づいて多重比較検定を行った.なお統計処理は IBM社製のSPSS…Statistics…ver.20を用い,全て の有意水準を5%未満と設定した.

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Ⅲ.結果

1.各運動遊びにおける男女の歩数比較と運動遊 び間の歩数比較

表3は各運動遊びにおける男女の歩数の比較を 示したものである.男女の各運動遊びにおける歩 数を対応のないt検定で比較した結果,屋外自由 遊びとドッヂビー自由遊びに有意差が認められ(屋 外自由遊びt=2.47,p<.05.ドッヂビー自由遊びt=…

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

屋外自

遊び ドッヂビー自

遊び 室内自

遊び ドッヂビー新運動遊び

* 歩数

   *:p<.05

望月 崇博 室内遊びにおける幼児の身体活動量確保の提案

表3.各運動遊びにおける男女の歩数比較

男児(n=7) 女児(n=6)

M SD M SD t(11) p ES

屋外自由遊び(歩) 1111.9 296.4 757.0 202.1 2.47* 0.031 1.05 室内自由遊び(歩) 696.6 184.2 798.0 250.0 0.84 0.418 0.35 ドッヂビー自由遊び(歩) 1065.3 176.1 866.8 142.5 2.21* 0.0495 0.94 ドッヂビー新運動遊び(歩) 1192.6 227.5 966.2 232.3 1.77 0.100 0.76

M:平均値,SD:標準偏差,*:p<.05(両側検定),ES:効果量

表4.各運動遊びにおける平均歩数 概要

グループ n M SD

屋外自由遊び 13 948.0 85.4

室内自由遊び 13 743.4 59.3

ドッヂビー自由遊び 13 973.7 51.6

ドッヂビー新運動遊び 13 1088.1 69.2

n:被験者数,M:平均値、SD:標準偏差

2.21,…p<.05.),両者とも男児が高い数値であった.

続いて表4は各運動遊びの平均歩数を示した.4 つの運動遊び間の差の分析のために反復測定分散 分析を行い,有意な主効果が認められたためBon ferroni法に基づいて多重比較検定にて各運動遊び の比較を行った.図2はその結果を示し,ドッヂ ビー新運動遊びの歩数が室内自由遊びの歩数に比 べ有意に増加した.

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表5.各運動遊びにおける男女の活動強度比較

男児(n=7) 女児(n=6)

M T M T U z p

屋外自由遊び 3.5 64.0   2.5 27.0   6.00 2.14* .035

室内自由遊び 2.2 50.0 2.1 41.0 20.00 .143 .89

ドッジビー自由遊び 2.9 39.0 3.6 52.0 11.00 1.43 .15

ドッジビー新運動遊び 4.1 54.0   3.7 37.0   16.00 .714 .48

M:中央値,T:順位総和,*p<.05(両側検定)

0 1 2 3 4 5 67 動強 度

有効数= 13

13

13

13

 

*:p<.05

図3.運動遊び間の活動強度比較 2.各運動遊びにおける男女の活動強度の比較と

運動遊び間の活動強度の比較

表5は各運動遊びにおける男女の活動強度の比 較を示したものである.各運動遊びの男女の活動 強度をマンホイットニーのU検定で比較したとこ ろ,…屋外自由遊びにおいて男児が女児よりも有意 に高い数値であった.4つの運動遊びの活動強度 の比較を Friedman 検定にて行い,有意な主効果 が認められたためBonferroni法に基づいて多重比 較検定を行った.図3は多重比較検定の結果を示 したものである.室内自由遊びとドッヂビー自由 遊びの比較において後者の活動強度が大きく,室 内自由遊びとドッヂビー新運動遊びにおいても後 者が有意に増加する結果となった.

3.映像分析による各運動遊びの特徴

図4,5,6は映像をもとに3つの自由遊び(そ れぞれ屋外自由遊び,室内自由遊び,ドッヂビー 自由遊び)において,対象児が関わった遊びの総

時間数の割合を,男女混合(全体)と男女に分けて 算出した.…映像分析から各運動遊びにおける対象 児の姿と算出した結果を記す.

屋外自由遊びで男女に関係なく遊ばれていたも のはスクーター(自ら地面を蹴って進むもの)で 全体の19%と滑り台(階段を登り上に上がるタイ プ)が全体の13%であった.男女別の遊びに着目 した場合,男児は集団で行う鬼あそび(ドロケイ のようなもの)が62%と高かった.こちらは男児 のみの遊びであったことが映像分析から明らかと なった.女児の遊びは集団で行う長縄(26%)や 個人で行う短縄(23%)が見られた.また女児の 遊びで少数ではあるが砂場に座って泥遊び(22%)

をしている姿も見られた.

次に室内自由遊びにおいては,男女に関係なく 遊ばれていたものは大型のブロックや座位での遊 び(積み木)で全体の約半分(49%)を占めた.た だブロックや積み木は数に制限があるため,それ

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らで遊べない子どもたちはホール内を歩いたり(散 歩や鬼遊び),体操用のマットを床に敷き,ゴロゴ ロ転がったり寝そべったりしていた.男女別に見 ても割合は異なるが同じ遊びに興じていたのがわ かった.

ドッヂビー自由遊びでは,男女ともに初めてドッ ヂビーを使用する子どもが多く,遊び始めは1人で 投げたり振ったりと使用法を吟味している姿が見 られた.そのため46%と高い数値となった.時間 経過とともに投げられるようになってくると,足 元に転がってきたドッヂビーを友達に投げ返す,

当てっこをするといった姿も見られた.時間経過 による特徴として,男児の方が使用に慣れるのが 早く複数での遊びに発展する流れが見てとれた.…

図4.屋外自由遊びにおける遊び内容の総時間割合 図5.室内自由遊びにおける遊び内容の総時間割合

屋外自由遊び

全体 室内自由遊び

全体

図6.ドッヂビー自由遊びにおける遊び内容の総時間割合

ドッチビー自由遊び 全体

Ⅳ.考察

1.性差からみた身体活動量

幼児の歩数に関して,屋外自由遊びとドッヂ ビー自由遊びの2つの運動遊びにおいて男児の歩 数が女児よりも有意に高く,活動強度においては 屋外自由遊びの項目で男児が女児よりも有意に高 かった.映像分析より,屋外自由遊びでは鬼遊び にて活発に園庭を走り回り遊びを楽しむ男児と長 縄や短縄,砂場で遊ぶ女児(留まって遊ぶ女児)

の姿が見られた.これらが結果に反映された一因 とも考えられる.ドッヂビー自由遊びにおいては,

男児は早めに使用法を見つけ友達同士で投げ合う 姿や当てっこ(投げて当てたり逃げたりの遊び)

をする姿が見られたことが歩行動作につながり,

女児においては1人で質感を確認する姿(ドッヂ

望月 崇博 室内遊びにおける幼児の身体活動量確保の提案

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ことがあげられ,ドッヂビー自由遊びで(図6)

はドッヂビーに対して全ての幼児が初見であり,

うまく投げられず走り回ったり(拾いに行ったり),

友達と投げ合う姿が見られたことがあげられる.

山内(2014)は,運動遊び指導(一斉保育での運 動遊び)を施している園の園児の歩数と自由遊び の園児の平均歩数を比較し,運動遊び指導におい て身体活動量を確保するためには順番待ちの時間 を少なくするような工夫が重要であると指摘して いる.本調査のドッヂビー新運動遊びにおいて,

外野はドッヂビーを3枚使用したことや範囲を円 形にしたことで投げる順番を待つ必要がなかった こと,内野においては当たらないように逃げるた めに様々な仕掛けを施したことが,身体活動量を 増加させた要因の1つとなったと考えられる.石 井ら(2011)が述べるように,用具の介入を含め た保育者(運動提供者)の介入(環境の構成)が 幼児の身体活動量増加の一助となり,ドッヂビー 新運動遊びが高い数値となった.本調査にて5歳 児クラスにおいては発達段階・発達特性に合わせ ゲーム性を重視した室内運動遊びの提供を行うこ とで身体活動量増加が見込めることが明らかと なった.

Ⅴ.室内運動遊びの身体活動量確保

本稿では,幼児クラス(5歳児クラス)の運動 遊びの身体活動量に着目し,4つの運動遊びの身 体活動量計測を試み,各運動遊びにおける身体活 動量の実態把握を基に,幼児の室内運動遊びにお ける身体活動量確保のための提言を目的とした.

本調査の身体活動量計測で明らかとなったことは,

1)保育者の介入のない屋外自由遊びでは男女の身 体活動量(歩数・活動強度とも)に差が出てし まうこと.

2)室内自由遊びの身体活動量は男女ともに低い数 値となってしまうこと.

3)室内遊びにおいて用具のみ介入させた自由遊び では男女の歩数に差が出てしまうこと.

4)室内での用具を介入させた遊びは,室内での自 由遊びに比べて身体活動量を確保できること.

5)運動提供者の介入(遊びの提供)によって,室 内遊びでも屋外遊び以上の身体活動量(歩数・

活動強度)が期待できること.

6)女児の身体活動量増加のためには,保育者・運 動提供者の介入(遊びの提供)が必要であるこ る姿が多く見られた.これらの要因からドッヂ

ビー自由遊びにおいて男児と女児の歩数に差が見 られたと考えられる.山内(2014)は女児の身体 活動傾向について保育者の存在に強く影響を受け ることを指摘し,保育者自身が中心となった活発 な身体活動を提供することにより,女児の身体活 動量増加が見込まれると言及している.本調査に おける歩数と活動強度の男女差を比較した場合,

有意差が認められた屋外自由遊びとドッヂビー自 由遊びは幼児が自発的に行う自由遊びであり保育 者の介入がなかったため男児に有意な結果が表れ たと解釈することができる.また映像分析より ドッヂビー自由遊びでは用具の使用に慣れた子ど もから投げたり飛ばしたりする姿が見られたこと もあり,用具の介入のみでは男女の歩数に差が表 れてしまうことも明らかとなった.それとは逆に 用具と人的介入を施したドッヂビー新運動遊びに おいて,歩数・活動強度ともに男女に差は見られ なかった.要因として保育者の介入(遊びの提供)

があったためであると考察できる.本研究におけ る介入の程度は山内の調査結果にあるような体育 の一斉指導とは異なり,人的介入は遊び方の設定 のみでドッヂビーの投げ方,ドッヂビーからの逃 げ方や避け方等は自由に行って良いこととした.

その結果,体育遊びの一斉指導のような介入でな くても男女ともに歩数・活動強度を確保できるこ とが明らかとなった.個人での自由遊びとなると 女児は身体活動量の少ない遊びに向いてしまう傾 向にあり女児の活動量確保のためには一斉遊びが 重要となることがわかった.

2.各運動遊びにおける身体活動量

次に運動遊びごとに歩数を比較した結果,4つ の運動遊びに有意差が見られ,ドッヂビー新運動 遊びの歩数が室内自由遊びの歩数と比べて有意に 増加した.特筆すべき事項として,道具を介入さ せたドッヂビー自由遊びとドッヂビー新運動遊び は屋外自由遊びの歩数に比べ高い数値となったこ とである.用具(物的環境)と人的介入(遊びの 提供)の整備を施すことにより,雨天時や諸事情 により屋外遊びが実施できない場合でも同等かそ れ以上の歩数を確保できる可能性が示唆された.

次に活動強度においては室内の自由遊びよりも ドッヂビー自由遊びとドッヂビー新運動遊びの活 動強度が大きかった要因として,映像分析の結果 から室内での自由遊び(図5)においてはブロッ クや大型の積み木を使用した座位活動が多かった

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と.

以上の6点が明らかとなった.

これらを受けて室内遊びでの身体活動量確保の ためには,自由遊びを施すのではなく幼児がのめ りこめるような用具や配慮といった環境(物的介 入)を整えることと,保育者・運動提供者は介入

(遊びの提供)の仕方,遊びへの関わり方(人的環 境)を工夫することが望ましいと考える.保育士・

幼稚園教諭及び運動遊び提供者がこれらを整える ことで,雨天候時においても室内での子どもの身 体活動量は確保できると考えられる.介入の程度 について岡澤(2012)は子どもの運動遊びにおけ る関わり方について,運動技能だけに目を向けず,

プロセスへのたどり着き方,見守ることも含めた 適切な援助の重要性と,子ども達自身が遊びの達 成感を味わう重要性に言及している.また山内

(2014)は一度経験した運動遊びを自由遊びとして 行えるような保育者の環境設定の重要性を指摘し ており,運動遊びを提供した後の適切な援助と配 慮が重要となってくる.

結びに子どもの体力低下に歯止めをかけるため には,身体活動量確保をあらかじめ予期した充実 した運動遊びを施すことが望ましいと考える.本 稿は主に身体活動量に着目し,悪天候時や屋外遊 びが実施できない時の室内での運動遊びの活動量 確保の提案を試みた.今後,幼児の運動遊びを身 体活動量と多様な遊びからなされる動作獲得の関 連性からのアプローチを検討していく所存である.

Ⅵ.引用・参考文献

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川田裕樹,林田はるみ,佐藤文昭,田草川憲男

(2011).「山梨県におけるヘルスツーリズムと してのフィットネス・ウォーキングコースの検 討-県内12コースの実地調査および効果検証の 試み-」.『帝京科学大学紀要』7,67-75.

川田裕樹,小山慎一,橋口剛夫,植屋清見(2014).

「加速度センサー内蔵歩数計を用いた教育活動 -大学生の生活習慣の改善を目指して-」.『帝京 科学大学紀要』10,79-87.

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『佐野短期大学研究紀要』25,1-14.

謝辞

本調査を行うにあたりご協力いただいたこども 園の園児の皆様,および先生方に厚く御礼申し上 げる.また,調査にあたりご尽力いただいた朝霞 市宮戸保育園の植竹早希氏,ならびに活動内容に ついてご助言をいただいた帝京科学大学こども学 部こども学科の先生方に深謝する.なお,本研究 の一部は帝京科学大学教育推進特別研究費(代表 研究者:川田裕樹)により実施したものである.

望月 崇博

参照

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