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(1)

Ⅰ 緒 言

 近年,まちづくり

1)

を考える上で,地域内 外の多様な人びととの かかわり や つなが り , 関係性 などの重要性が強調されてい る。例えば古池(

2011

38

)は,まちづくりに はそこで育まれてきた文化をもとに,多様な主 体がかかわりながら創造的に織り成していく過 程が必要であると述べている。また,山田

2010

16

)は新しい時代の地域力として,多 様な主体による多様な行動,いわば開放型の地 域力,パートナーシップ型の地域力が重要であ ると指摘している。さらに,今村ほか(2010:

145

)は東京都奥多摩町における遠隔予防医療 事業の事例から,「つながり」による共通意識 が発生し,住民同士の交流が盛んになる可能性 を分析している。

 このように, かかわり や つながり , 関係性 が重視されるようになった背景とし て,とりわけ第二次世界大戦以降,住民や自治 体による問題解決力が低下してきたことがあげ られる(森重 

2010

9-13

)。今村ほか(

2010

205-206

)は,地域社会(コミュニティ)が問

題を解決する力を持ったもの,意図的につくっ ていくものという考え方が明示されたことはあ まりなかったとして,「コミュニティによる問 題解決」の必要性を強調している。しかし,特 に人口減少や少子高齢化が進行している地域で は,まちづくりの担い手そのものが減少してお り,地域の人びとだけでまちづくりを進めるこ

とが困難になっている。また,こうした地域で は,問題解決のためにさまざまなアイディアや 創意工夫が求められるが,そのためには知識や アイディアの源泉となる他者との交流が欠かせ ない。

 そこで,地域の人びとだけでなく,地域内外 の多様な人びとがかかわってまちづくりを進め る必要がある。森重(

2011

67

)は,それを「か  かわり合う地域社会(Engaging Community)」

と呼び,「多様な人びとがさまざまなかかわり をつくり出す場やしくみを形成することによっ て,親密な人間関係の構築をめざす地域社会」

と考えている。そして,この「かかわり合う地 域社会」を実践する手法として,地域主導の観 光(Community

-

led Tourism)の活用(森重 

2011

 

:67-69)や地域プラットフォームの形成(敷 田ほか 2012:28-29)などがあげられている。

 実際,地域内外の多様な人びとがかかわるま ちづくりが多くの地域で試みられている。しか し,いわゆる「成功事例」の中には,一部の当 事者や研究者だけの評価にとどまり,地域の人 びとの意向が明らかにされていない事例が少な くない。また,「地域社会の問題は基本的に地 域で暮らす人びとによって解決すべき」という 地域の「自立」の考え方も根強い。その中で,

地域外の人びとがまちづくりにかかわることに 対し,当該地域で暮らす人びとがどのような意 向を持っているかについて明らかにすること は,今後の「かかわり合う地域社会」の実現に 向けて一定の示唆が得られよう。

「かかわり合う地域社会」に対する  市民意識とその課題

─北海道登別市を事例に─

森  重  昌  之

(2)

 本研究では,北海道登別市の20歳以上の市民 を対象に質問票調査を実施し,市民以外の人び とがまちづくりにかかわること,すなわち「か かわり合う地域社会」に対し,市民がどのよう な意向を持っているのかについて調査した。登 別市は登別温泉を代表とする,いわゆる観光地 として知られており,市民と観光客がかかわる 機会が多いと思われる。しかし,温泉街や観光 施設が集積する登別地域に住む市民の割合は低 く,日常生活の中で観光客と接する市民が,他 の地域に比べて必ずしも多いわけではない。ま た後述するように,室蘭工業地帯の重工業に従 事する市民も多いことから,登別市は他の地域 とほぼ同じような条件であると判断した。

 他方,登別市には NPO 法人登別自然活動支 援組織モモンガくらぶ(以下,「モモンガくら ぶ」という)があり,後述するように,登別市 ネイチャーセンター「ふぉれすと鉱山」におい て,市内外の人びとによる交流を通じたさまざ まな活動を展開している。そこで本研究では,

モモンガくらぶの交流活動にかかわっている市 民とそうでない市民の意向を適宜比較すること で,交流活動が市民意識にどのような影響を与 えているかについて調査する。

 これらを踏まえた上で,「かかわり合う地域 社会」に対する市民意識を明らかにするととも に,どのような市民が「かかわり合う地域社 会」を求めているのか,その実現に向けてどの ような課題があるのかについて整理することを 目的とする。

Ⅱ  登別市およびモモンガくらぶの概要

1.北海道登別市の概要

 登別市は,北海道南西部・胆振総合振興局の 太平洋沿岸に位置し,面積が

212

.

1

km

2

,人口が

51

,

645

人の都市である(

2012

月現在)。登 別温泉を含む市域の北東部一帯は,支笏洞爺国 立公園の一部に含まれている。一方,市街地は 太平洋沿岸に沿って,北東部から登別地域,幌 別地域,鷲別地域に形成されている(図

)。

 登別地域は3,256世帯,市民全体の11.4%にあ たる

5

,

899

人が暮らしている。登別地域には,

登別温泉やカルルス温泉のほか,水族館の「登 別マリンパークニクス」,テーマパークの「登 別伊達時代村」,「のぼりべつクマ牧場」などの 主要な観光施設が集積している。一方,幌別地 域は市役所をはじめとする公共施設が集積して おり,10,273世帯,市民全体の41.6%に相当す る21,470人が暮らしている。さらに,鷲別地域 には

11

,

559

世帯,市民全体の

47

.

0

%に相当する

24

,

276

人が居住している。鷲別地域は工業地帯 のある室蘭市に隣接することもあり,社宅や新 興住宅地が形成されている。

 登別市は,室蘭市から続く工業地帯の重工業 と観光産業が主要産業になっている。

2010

年国 勢調査によると,第二次産業就業人口比率は北 海道平均の

18

.

1

%に対し,登別市は

25

.

7

%と高 い。また,第三次産業就業人口が

72

.

8

%を占め て い る。 ま た,

2011

年 度 の 観 光 入 込 客 数 は

266.1万人,宿泊客延べ数は105.8万人であるが,

いずれも

2011

年の東日本大震災の影響などで前 年度を下回っている。

2.モモンガくらぶの概要

 モモンガくらぶは,自然体験や環境学習,子 育て支援,人材育成などの活動を支援する市民 団体である。2013年3月末現在の会員数は163 名,有償スタッフは19名である。モモンガくら ぶは,幌別地域の市街地から北西へ約

10

km の 山間にある登別市ネイチャーセンター「ふぉれ すと鉱山」が2002年4月に開館したことを機 に,その活動を支援する市民団体として2002年

月に設立され,

2005

月に NPO 法人とし て登記された。

 モモンガくらぶは当初,自然体験や環境学習 の支援活動を中心に行っていたが,その後ボラ ンティアスタッフや利用者との交流を通じて,

教育や子育て支援,エコツアー,人材育成など

の新たな活動を次々に生み出していった

2)

。現

在はふぉれすと鉱山の指定管理者であり,ここ

を拠点に前述した活動を実施している。ふぉれ

(3)

すと鉱山では,指定管理者としての受託事業や モモンガくらぶの主催事業,会員がボランティ アスタッフとして自主的に行うチーム活動な ど,さまざまな活動が行われており,これらを 合わせた年間の事業・活動実績はのべ478件に 及ぶ(2012年度)。また,モモンガくらぶは

2010

年度から市街地でも活動を始め,鷲別地域 において登別市地域子育て支援拠点(ひろば 型)事業「富

とん

けし

子育てひろば」や自然体験型ア フタースクール「かめっ C

O くらぶ」などの子 育て支援活動を展開している

3)

 モモンガくらぶの活動の特徴として,隣接す る室蘭市や白老町など,登別市民以外の利用者 も積極的に受け入れ,多様な人びととの交流を 通して活動を実施している点があげられる。そ

の結果,人口5万人余りの登別市であっても,

年間400回以上の活動が実施できるほか,活動 に興味や関心を持つ多様な人材を集めたり,し がらみのない立場でアイディアを生み出したり できるようになる(森重 2012:79)。また,モ モンガくらぶの主催事業やチーム活動には,会 員を中心とした多くのボランティアがかかわっ ており,彼らが個人の趣味や特技を活動の中で 生かし,参加者に伝えている。こうした「 自 分のため が 人のため になる」活動を通し て,モモンガくらぶは個人の趣味や特技を社会 のニーズに結びつける「社会化」を行っており

4)

, まちづくりに貢献できる人材の育成をめざして いる。

図1 北海道登別市内地図

(4)

Ⅲ 質問票調査の概要

 質問票調査は,

2012

月現在,登別市に住 民登録をしている20歳以上の市民43,132人から

2,000人を無作為に抽出した(抽出率4.6%)。質

問票は A

ページで,個人属性のほか,

ふぉれすと鉱山での活動やモモンガくらぶの活 動の認知度および参加意向,市民以外の人びと との交流や交流によるまちづくりに対する意向 などを尋ねた。設問数は全部で

22

問とした。質 問票は郵便にて送返信し,回答期間は

2012

月21日から7月17日までとした。

 質問票の回収率は

18

.

0

%(

360

件)であり,

母集団と回答者の間に大きな偏りが見られた。

例えば年代の分布については,登別市人口に占 める30代女性の割合が13.2%であるのに対し,

回答者に占める割合は43.6%と異なっている。

逆に,

60

歳以上の女性を見ると,登別市民の割 合が

49

.

2

%であるのに対し,回答者の割合は

11.9%と低い(図2)。また,居住地域別で見

ると,「富岸子育てひろば」や「かめっ CO く らぶ」が展開している鷲別地域は住民登録人口 に比べ,回答者数の割合が

9

.

3

ポイント高い

(図3)。実際,ふぉれすと鉱山は子育て世代層 が多く利用していることから,今回はモモンガ くらぶの活動への関心が比較的高い市民が主に 回答したと推察できる。

Ⅳ 調査の結果と分析

1.ふぉれすと鉱山の来訪経験および頻度

 質問票調査では,モモンガくらぶの活動拠点

図2 登別市における年代別の住民登録人口(20歳以上)と回答者数

図3 登別市における居住地域別の住民登録人口(20歳以上)と回答者数

(5)

である「ふぉれすと鉱山」の来訪経験について 尋ねた。その結果,訪れたことがあると答えた 市民は,

33

.

1

%(

119

人)であった。

30

代の来 訪経験者が41.7%(60人)と最も高く,40代が

35.6%(26人)と続いている。逆に,20代や50

代,

60

代以上の市民の

70

%以上が,ふぉれすと 鉱山を訪れたことがないと回答している(図

4)。前述したように,ふぉれすと鉱山はネイ

チャーセンターであり,開館してから10年以上 が経過しているにもかかわらず,訪れたことの ない市民が多く,利用者の年代にも大きな差が 見られる。

 また,来訪経験者にふぉれすと鉱山の来訪頻 度を尋ねたところ,「これまで数回程度」が

66

.

4

%(

79

人)と最も多い。他方で,「月

回 以上」来訪する日常的な利用者は8.4%(10人)

で, 全 回 答 者 の

2

.

8

% に 過 ぎ な い。 し か し,

2012

年度には市民の半数近くに相当する,のべ

23

,

206

人がふぉれすと鉱山を利用しており,市 外からの利用者を考慮しても,ふぉれすと鉱山 が多くのリピーターによって支えられている様 子がうかがえる。

2.交流を通じた活動の認知度

 モモンガくらぶは,登別市内外の多様な人び ととの交流を通じて,ふぉれすと鉱山とその周 辺の自然環境を活用した,ものづくりも含めた

「自然体験・環境学習」,親と子の居場所づくり や自己実現の場の提供,自然体験にかかわる指

導者養成といった「子育て支援・人材育成」の 活動を行っている。そこで,次にモモンガくら ぶが実施している交流を通じた活動の認知度に ついて尋ねた。

 まず,自然体験・環境学習の活動が行われて いることを知っていると答えた市民は,

48

.

3

174

人)であった。前述したように,ふぉれす と鉱山の来訪経験者の割合は33.1%であった が,ふぉれすと鉱山がもともと廃校を利用した 野外活動の拠点であったことやネイチャーセン ターとして広報されていることもあって,認知 度は比較的高い。一方,認知度を年代別に比較 すると,

30

代と

40

代で半数を超えているが,

20

代と

50

代,

60

代以上の認知度は

37

%前後にとど まっている(図

)。自然体験や環境学習は幅 広い年代を対象にできる活動であるにもかかわ らず,モモンガくらぶが実施している活動は特 定の年代にしか知られていない状況にある。

 次に,子育て支援・人材育成の活動の認知度 を尋ねたところ,35.6%(128人)が知ってい ると回答していた。自然体験・環境学習に比べ ると,「知っている」と答えた割合は

12

.

7

ポイ ント減少しているが,ふぉれすと鉱山を訪れた ことがあると答えた市民だけを見ると,69.7%

83

人)が子育て支援・人材育成の活動を認知 していた。ふぉれすと鉱山は小学校低学年以下 の子どもの自然体験や環境学習を目的に訪れる 市民が多く,ふぉれすと鉱山で活動にかかわっ ているうちに,子育て支援・人材育成の活動に

図4 ふぉれすと鉱山への年代別来訪頻度

(6)

ついて知るという傾向を反映している。これら の活動の年代別認知度を見ると,子育て支援の 主な対象年代である

30

代が

44

.

4

%(

64

人)と比 較的高い。しかし,年代が上がるにつれて認知 度が下がっており,関心が低下していくものと 推察される(図

)。

 さらに,交流を通じた活動の多くはモモンガ くらぶ会員をはじめとするボランティアによっ

て支えられているが,このことを知っていると 答えた市民は

28

.

6

%(

103

人)であった。「月に

回以上」来訪する日常的な利用者の

80

.

0

(8人),「年に数回程度」の来訪経験者の83.3

%(25人)が「知っている」と答えたが,「こ れまで数回程度」の来訪経験者の

41

.

8

%(

33

人)

がボランティアによって支えられていることを

「知らない」と回答している(図7)。ふぉれす

図5 自然体験・環境学習の活動の年代別認知度

図6 子育て支援・人材育成の活動の年代別認知度

図7 来訪頻度別のボランティアの認知度

(7)

と鉱山にはモモンガくらぶの有償スタッフと会 員,一般の利用者がかかわっているが,ある活 動でボランティアスタッフとして支援する会員 が,別の活動では利用者として参加することも ある。モモンガくらぶは,ボランティアが活動 に協力していることを強調し,さまざまな機会 を通じて紹介しているほか,参加も呼びかけて いる。しかし,活動を一瞥しただけでは誰がボ ランティアスタッフであるかわかりづらいこと もあり,ボランティアのかかわりの認知度が低 いと考えられる。

3.市外の人びとの施設利用に対する意向

 前述したように,モモンガくらぶは登別市民 以外の利用者も積極的に受け入れ,多様な人び ととの交流を通して活動を実践しているが,市 民以外の人びとがふぉれすと鉱山を利用してい ることについて,

25

.

3

%(

91

人)の市民が知っ ていると回答していた。「年に数回程度」以上 訪れる来訪経験者は70.0%(28人)が知ってい るが,ふぉれすと鉱山を訪れたことのない市民 の認知度は

10

.

8

%(

26

人)にとどまっている。

 他方で,市民以外の人びとが市営施設である ふぉれすと鉱山を利用することについて,「と ても良い」と答えた市民が

43

.

1

%(

155

人), 「良 い」と答えた市民が

28

.

6

%(

103

人)であった。

両者を合わせると71.7%であり,「良くない」

と答えた市民もいなかったことから,市民以外 の人びとの利用はおおむね好意的に受け止めら

れているといえる。

 ただし,市民以外の人びとの利用意向を年代 別に比較すると,顕著な差が見られる。

40

代以 下の市民はほぼ半数が「とても良い」と回答し ているが,50代で32.4%(12人),60代以上で は

18

.

2

%(

人)となる。「良い」と答えた市 民の割合に大きな差は見られないが,年代が上 がるにつれ,市民以外の人びとの利用を好意的 に捉える市民が減少する傾向にある(図8 )。

 市民以外の人びとの利用について,「とても 良い」もしくは「良い」と回答した理由をキー ワード別に整理したところ,「地域の賑わい創 出や活性化につながる」といった意見が

58

件と 最も多く見られた。次いで,「登別市を知って もらえる」が

49

件,「良い施設は共有した方が よい」が44件,「出会いや交流の機会が増える」

36

件,「多くの人びとに自然と触れ合ってほ しい」が

31

件であった

5)

。このことから,多 くの市民がふぉれすと鉱山の利用をきっかけ に,登別市の賑わい創出や認知度向上を求めて いることが推察できる。一方,

4

人の市民が

「あまり良くない」と答えたが,その理由はい ずれも「税金を納めた人が利用すべき」という 意見であり,納税者にサービスを提供するとい う基本的な考え方を示していた。

4.ふぉれすと鉱山での活動への参加意向

 登別市内外の人びとによる交流を通じた活動 が行われているふぉれすと鉱山について,こう

図8 市民以外の人びとの施設利用に対する年代別意向

(8)

した施設や活動が必要であるかどうかについて 尋ねた。その結果,

71

.

9

%(

259

人)の市民が

「必要である」と回答した。特に,ふぉれすと 鉱山の来訪経験者の93.3%(111人)が必要と 認識しているほか,来訪経験のない市民であっ ても,

61

.

4

%(

148

人)が「必要である」と答 えている。また,「必要ない」と回答した市民 はわずか1.9%(7人)であった。ふぉれすと 鉱山の必要性に対する意向を年代別に見ると,

20

40

代では

70

%以上の市民が「必要である」

と答えている(図

)。これは,これらの年代 がふぉれすと鉱山で行われている活動について よく知っていることに加え,子育て支援の活動 をはじめ,直接的な便益を享受しているからと 考えられる。ただし,年代が上がるにつれて

「わからない」と答える市民の割合が高くなっ ており,特に

60

代以上の市民のうち「必要であ

る」と答えた割合は52.3%と,ほぼ半分にとど まっている。ここでも

50

代以上の市民に対し,

ふぉれすと鉱山での活動の認知度を高める必要 があることがうかがえる。

 次に,ふぉれすと鉱山で行われている活動へ の参加意向を尋ねたところ,市民の

15

.

8

%(

57

人)が「参加したい」,

68

.

9

%(

248

人)が「内 容によっては参加したい」と回答した。実際に ふぉれすと鉱山で行われている活動の認知度は 必ずしも高くはないが,活動に対して何らかの 参加意向を持っている市民は少なくないことが わかった。他の設問項目では,年代が上がるに つれてモモンガくらぶの活動への関心が低くな る傾向が見られるが,活動への参加意向につい ては,

60

代以上の市民の

75

.

0

%(

33

人)が「参 加したい」もしくは「内容によっては参加した い」と答えている(図

10

)。特に,「自然体験・

図9 ふぉれすと鉱山の必要性に対する年代別意向

図10 ふぉれすと鉱山で行われる活動への年代別参加意向

(9)

環境学習」や「子育て支援・人材育成」の活動 を「知っている」と答えた

60

代以上の市民は高 い参加意向を持っており,ニーズに見合った活 動を提供できれば,参加する可能性が高いと推 察できる。

5.「かかわり合う地域社会」に対する意向

 「豊かな暮らしを送る上で,いろいろな人び ととの交流が必要と思うか」どうか尋ねたとこ ろ,

35

.

3

%(

127

人 ) が「 と て も そ う 思 う 」,

52

.

2

%(

188

人)が「そう思う」と回答した。

一方,「あまり思わない」および「思わない」

と答えた市民は

3

.

0

%(

11

人)であった(図

11

)。

年代による大きな差は見られず,幅広い年代に おいて交流が必要と認識されている。

 次に,「自分もいろいろな人びととの交流活 動に参加してみたいと思うか」どうか聞いたと ころ,「とてもそう思う」と回答した市民が

18

.

6

%(

67

人),「そう思う」と答えた市民が

50.3%(181人)であった(図12)。「とてもそ

う思う」と答えた市民のほぼ全員が,交流の必 要性についても「とてもそう思う」と回答して いる。しかし,交流の必要性について「とても そう思う」と答えた市民が35.3%である一方で,

自身が交流活動に参加するかと問われると,強 い意向を持っている市民はほぼ半分に減少す る。ただし,ここで「交流活動」といった場 合,回答者はモモンガくらぶが実施しているよ うなアクティブな活動を連想している可能性が 高い。市民以外の人びととの情報交換なども含 め,交流活動をより幅広く捉えれば,参加意向 はさらに高まる可能性がある。

 また,「市民以外の人びとと交流しながらま ちづくりを進めることは必要と思うか」どうか 尋ねたところ,23.1%(83人)が「とてもそう 思う」,

52

.

5

%(

189

人)が「そう思う」と答え た(図

13

)。多くの市民が市民以外の人びとと のかかわりを好意的に受け止めていることがわ

とてもそう思 う, 35.3%

そう思う, 52.2%

思わない, 1.9%

あまり思わな い, 1.1%

どちらでもな い, 8.9%

その他, 0.6%

図11 交流の必要性に対する市民意識

とてもそう思 う, 18.6%

そう思う, 50.3%

どちらでもな い, 20.0%

思わない, 3.3%

その他, 0.6%

あまり思わな い, 7.2%

図12 多様な人びととの交流活動への参加意向

図13 市民以外の人びととの交流によるまちづくりに対する年代別意向

(10)

かる。これは,登別市が室蘭工業地帯に属し,

市域を超えて通勤・通学する市民が少なくない など,市域をあまり意識しない登別市の特性が 現れているとも考えられる。

 ただし,市民以外の人びととの交流によるま ちづくりに対する市民の意向を年代別に比較す ると,年代が上がるに連れて否定的な回答の割 合が高くなっている。「とてもそう思う」と回 答した20代の割合が29.0%(18人)であるが,

年代が上がるにつれてその割合が低下し,

60

代 以上の割合は

9

.

1

%(

人)となっている。こ のことは,地域外の人びとと一緒にまちづくり を行うことに対する住民の不安を調査した塚 本・合田(

2011

125

)においても,同じよう な結果が得られている。

 市民以外の人びととの交流によるまちづくり を必要とする意向は,ふぉれすと鉱山の来訪経 験者により強く表れている。来訪経験のない市 民が「とてもそう思う」もしくは「そう思う」

と答えた割合が69.3%(167人)であったのに 対し,来訪経験者の割合は

88

.

2

%(

105

人)で あった(図

14

)。このことから,ふぉれすと鉱 山での実体験を通して,交流によるまちづくり の効果を実感するようになったと推察できる。

 前述の設問で「とてもそう思う」もしくは

「そう思う」と答えた市民に,市民以外の人び ととの交流によるまちづくりに期待することを 尋ねた。その結果,「登別市にない情報やアイ ディアをもらう」が

60

件と最も多い。以下,

「地域外の人びとと知識を共有する」(

30

件),

「理解や交流を深める」(30件),「登別市の活性 化につなげる」(27件),「新しい視野を広げる」

(25件)が続いた

6)

。一方,「あまり思わない」

もしくは「思わない」と回答した市民(

3

.

3

%,

12

人)にその理由を聞いたところ,「地域外の 人びとは住み続けるわけではない」,「登別のカ ラーも大事にすべき」などといった意見が聞か れた。

Ⅴ   「かかわり合う地域社会」の実現 に向けた課題

20

歳以上の登別市民を対象に,「かかわり合 う地域社会」に対してどのような意向を持って いるか調査した。その結果,多くの市民が市民 以外の人びとによる市営施設・サービスの利用 や市民以外の人びととの交流によるまちづくり を好ましいものと捉え,肯定的に評価している ことがわかった。また,いろいろな交流活動に 参加したいと考えている市民が半数以上も見ら れた。

 もちろん,回答者と母集団の間に偏りがある ことを考慮しなければならないが,登別市では

「かかわり合う地域社会」の実現に向けた素地 が見られることから,次の具体的な交流活動に つなげていく必要がある。しかし,多様な人び ととの交流を通じた活動を実施しているモモン ガくらぶの活動の認知度を見ると,自然体験・

環境学習の活動こそ

48

.

3

%であるものの,子育 て支援・人材育成の活動やボランティアのかか わりについては,

30

%程度にとどまっている。

特に

60

代以上の市民の認知度は,自然体験・環 境学習の活動で36.4%,子育て支援・人材育成 の活動で20.5%と低くなっている。このことは,

図14 ふぉれすと鉱山の来訪経験の有無による「交流によるまちづくり」の意向

(11)

市民以外の人びとも含めた交流活動の潜在的な 需要があり,税金を投じてサービスを提供して いるにもかかわらず,こうした需要に応えるこ とができていないというミスマッチが生じてい るといえる。

 もちろん,市役所やモモンガくらぶは広報や ウェブサイト,パブリシティなどを通じて,積 極的に交流活動の情報を発信し,参加者を募っ ている。また,登別市内のすべての小学校で,

5

年生を対象にふぉれすと鉱山で宿泊する校外 学習も行われている。しかし,活動を提供する 側からの情報発信に比べ,活動に参加する側の 情報発信が乏しい。前述したように,モモンガ くらぶの活動では,会員がボランティアスタッ フとして提供する側になったり,利用者として 参加する側になったりするなど,立場が頻繁に 入 れ 替 わ る「 プ ロ シ ュ ー マ ー」(Toffler 

1980

=

1980

382-384

) が 存 在 す る。 加 え て,

リピーターが非常に多いという特徴も見られ る。そこで,サービスを受ける側,つまり利用 者側から口コミなどを通じて情報を発信するこ とで,交流活動の認知度を高めることができる のではなかろうか。

 また,モモンガくらぶはふぉれすと鉱山にお いて,登別市民以外の利用者も含めた多様な人 びととの交流を通じたさまざまな活動を展開し ている。にもかかわらず,ふぉれすと鉱山に対 するイメージは,「ネイチャーセンター」とし ての位置づけにとどまっている。市役所は「ネ イチャーセンター」として広報しているほか,

自然体験・環境学習の活動の認知度が最も高い ことから,多くの市民の認識も同様といえ,モ モンガくらぶによる交流活動の実態と市役所や 市民の認識に差が生じている。

 実際のふぉれすと鉱山は,提供者と利用者を 二分することが難しい,「交流を通じた新たな 社会的価値を生み出すかかわりの場」となって いる。田辺・森重(

2009

68-69

)も,ふぉれ すと鉱山では他者とのかかわりを通じて,満足 感や幸福感といった精神的報酬の交換が行わ れ,活動が促進されることを指摘している。そ

こで,こうした活動の実態に即して,ふぉれす と鉱山を「交流の場」として明確に位置づける ことが必要である。市民だけでなく,市民以外 の人びともかかわり,交流を通じて多様な活動 を生み出すことは,交流によるまちづくりを求 める市民のニーズにも合致している。その意味 でも,モモンガくらぶの活動を実態に即して評 価することが求められている。

Ⅵ 結 言

 現在は地域の人びとだけでなく,地域内外の 多様な人びとがかかわってまちづくりを進める

「かかわり合う地域社会」が求められている。

本研究では,北海道登別市の

20

歳以上の市民を 対象に質問票調査を実施し,「かかわり合う地 域社会」に対する市民意識と実現に向けた課題 について考察してきた。登別市の場合,多くの 市民が「交流」を肯定的に捉え,交流活動に参 加したいと考えている市民も少なくなかった。

そして,登別市では NPO 法人モモンガくらぶ が市内外の人びとによる交流を通じたさまざま な活動を実践しているが,実際の交流活動の認 知度は必ずしも高いとはいえず,市民の潜在的 な需要に十分応えられていないという課題が明 らかとなった。

 本研究で取り上げた登別市の事例から,「か

かわり合う地域社会」の実現に向けたいくつか

の示唆を得ることができる。第

に,市民以外

の人びとも含めた交流活動を始める場合,教育

や福祉といった市民の日常生活に深くかかわる

分野よりも,自然体験や環境学習のような市民

への直接的なかかわりが薄い分野から始めた方

がよいと考えられる。特に,「自然環境」とい

うテーマは住んでいる地域を越えて守るべきも

の,共有すべきものといった共通意識を築きや

すい。また,多くの人びとがかかわることでス

ケールメリットが発揮しやすい。質問票調査の

中でも,市民以外の人びとがふぉれすと鉱山を

利用して良いと回答した理由として,「良い施

設は共有した方がよい」,「多くの人びとに自然

(12)

と触れ合ってほしい」といった意見が多く見ら れた。

 第

に,ふぉれすと鉱山は幌別地域の市街地 から約10km 離れた山間に立地しているが,そ のことで日常のしがらみを離れ,自由な活動が できる雰囲気をつくり出すことができるという 周縁部の特徴が見られる。モモンガくらぶの会 員からは「ここは好きなことができる,かげが えのない場所である」という声も聞かれている

(森重 

2010

183

)。活動の参加を希望しない市 民にとっても,周縁部で行われている出来事で あれば,多少異質なものであっても受容しやす い。ただし,周縁部で行われている活動である がゆえに,市民の認知度を高めにくいという課 題は残ろう。

 そもそも「かかわり合う地域社会」の必要性 は,何もかつての地縁共同体のような人びとの 濃密な関係性に対する郷愁から主張されている わけではない。住民や自治体による地域社会の 問題解決が困難になる一方,人びとの地域社会 への関心の持ち方も多様になっている。例え ば,

2007

年に財政再建団体に陥った北海道夕張 市に対する地域外の人びとのさまざまな支援 や,2011年の東日本大震災を契機としたボラン ティアツーリズムの隆盛などを見ると,必ずし も自分が生活している地域だけに関心を持って いるわけではない。西田(2011:196-197)が 指摘しているように,情報技術と結びついた特 定のプラットフォームの普及によって,「手応 え」や「楽しさ」,「やりがい」といった善意以 外の動機を社会的行為に向けることができ,人 びとが容易に参加できるようになった結果,社 会参加や社会貢献活動についての予備知識を持 たない「弱い問題意識」であっても,それなり に貢献できるようになっている。

 そこで,地域住民と当該地域に関心を持つ地 域外の人びととの交流を通じて,彼らの力を社 会化することで,地域社会の問題解決力を高め ることができるのではないか。モモンガくらぶ が自然体験・環境学習の活動から子育て支援・

人材育成の活動へと展開してきたプロセスも,

まさに交流を通じた問題解決の一例である。モ モンガくらぶ理事長が,組織を運営するにあた って「人がかかわる必然性をいかにつくるか」

と い う こ と を 強 調 し て い る よ う に( 森 重 

2012:80),地域内外の多様な人びとがかかわ

る「かかわり合う地域社会」の実現が,これか らのまちづくりにますます欠かせなくなるであ ろう。

〔謝 辞〕

 質問票調査を実施するにあたり,登別市教育 委員会ならびに NPO 法人登別自然活動支援組 織モモンガくらぶの皆さまに多大なるご協力を いただいた。ここに記して感謝の意を表した い。

1) ここでは,地域づくりや地域振興などと同義で,

「自分たちが暮らす地域社会をより良くしようと する活動」という意味で用いている。

2) 交流を通じたモモンガくらぶの活動の展開につ

いては,森重昌之(2009)「地域外の知識を活用 した市民のエンパワーメントと協働プロセスの 分析─北海道登別市ネイチャーセンター「ふぉ れすと鉱山」の運営を事例に」『計画行政』第32 巻第2号,55-62ページを参照のこと。

3) モモンガくらぶによる子育て支援活動の市街地

への展開については,森重昌之(2011)「地域づ くりの中間支援活動の展開プロセス─ NPO 法人 モモンガくらぶを事例に」『日本計画行政学会第

34回全国大会研究報告要旨集』,315-318ページ

を参照のこと。

4) 「社会化」の効果については,森重(2013)を参

照のこと。

5) 自由記述の回答をキーワードごとに整理したた

め,複数回答になっている。

6) 自由記述の回答をキーワードごとに整理したた

め,複数回答になっている。

参考文献

今村晴彦・園田紫乃・金子郁容(2010)『コミュニテ ィのちから─ 遠慮がちな ソーシャル・キャ ピタルの発見』慶應義塾大学出版会,

310ページ。

古池嘉和(2011)『地域の産業・文化と観光まちづく

り─創造性を育むツーリズム』学芸出版社,191

ページ。

(13)

森重昌之(2010)『観光を通じた地域再生に寄与する オープン・プラットフォームの研究』北海道大 学大学院国際広報メディア・観光学院博士学位 論文,264ページ。

森重昌之(2011)「多様な人びとがかかわる機会をつ くり出す地域主導の観光─「かかわり合う地域 社会(Engaging Community)」の形成に向けて」

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院

『Sauvage 院生論集』第7号,61-70ページ。

森重昌之(2012)「地域活動のプラットフォーム化の 条件─ NPO 法人モモンガくらぶを事例に」『日 本計画行政学会第35回全国大会報告要旨集』,

77-80ページ。

森重昌之(2013)「地域プラットフォームの活動の持 続に向けた条件─淡路おみなの会の活動を事例 に─」『阪南論集  人文・自然科学編』第48巻第

2号,71-82ページ。

西田亮介(2011)「ソーシャルメディア時代の新しい 社会貢献活動─「実感の連鎖」がもたらす結果 としての社会参加」西田亮介・塚越健司編『「統 治」を創造する─新しい公共/オープンガバメ ント/リーク社会』春秋社,193-231ページ。

敷田麻実・森重昌之・中村壯一郎(2012)「中間シス テムの役割を持つ地域プラットフォームの必要 性とその構造分析」『国際広報メディア・観光学 ジャーナル』第14号,23-42ページ。

田辺達也・森重昌之(2009)「自己実現機会の「場」

の創出を通じた地域活動への積極的参加の可能 性─北海道登別市ネイチャーセンター「ふぉれ すと鉱山」を事例に」『日本計画行政学会第32回 全国大会研究報告要旨集』,67-70ページ。

Toffler, A.(1980)The Third Wave, William Morrow  and Company. 〔徳山二郎訳(1980)『第3の波』

に本放送出版協会,642ページ。〕

塚本孝之・合田素行(2011)「中山間地域における地 域外部との連携協働の課題についての予備的考 察─外部人材との連携協働に内在する住民の「不 安」を手がかりに」『日本地域政策研究』第9号,

121-128ページ。

山田啓二(2010)「地域力再生プロジェクトの挑戦─

住民自治をベースにした新しい京都府づくり」

真山達志・今川晃・井口貢編『地域力再生の政 策学─京都モデルの構築に向けて』ミネルヴァ 書房,3-18ページ。

〔付 記〕

 本研究は,2012年度阪南大学産業経済研究所助成 研究(研究 C)「「かかわり合う地域社会」の基盤形 成に必要なしくみに関する研究」の成果報告である。

  (2013年7月19日掲載決定)

参照

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