研究論文
発達障害児の情動に関する研究
高見由香(長崎大学大学院教育学研究科)
小島道生(長崎大学教育学部)
I.問題と目的
情動をうまく使うことは社会的関係をうまくやっていくための重要な能力であり
(Saarni,2001)情動とコミュニケーションは深く関連している。日常生活で行う コミュニケーション活動では、言語によるものだけではなく、非言語的なチャンネ ル(表情・音声・姿勢・態度など)を通しての情報のやりとりも重要な役割を果た している(向後・望月・越川,2003)。近年、知的障害児の非言語的コミュニケー ションに関する研究も盛んにとり行われるようになりつつあり、発達障害児のコミ ュニケーション支援を考える上で、発達障害児の情動についての理解を深めること が求められている。発達障害者(児)の一群であるとされる知的障害者(児)の感 情(情動)については、他者感情の受信に困難がある一方で、感情の適切な表出に ついても困難を指摘されることがある(向後,2004)との報告もあり、発達障害児 の情動表出の側面における問題が浮き彫りになりつつある。
しかし、発達障害児の情動表出の実態に焦点を当てた研究は日本においては例が 少なく、とりわけ、情動が実際に表出する場面に視点を当てた研究は皆無である。
ゆえに、発達障害児の情動表出の実態を知ることで、発達障害児にとって効果的な コミュニケーション支援のあり方を明らかにできるのではないかと考える。
そこで、本研究では先行研究を参考とし、設定された状況下で発達障害児の情動 がどのように表出されるかについて調査を行うこととした。発達障害児の情動表出 に実験的に調査した先行研究(Jahromiら,2007)を基に、ダウン症児と知的障害 児を対象として、解決できないパズル課題を与え、その際に生じるフラストレーシ ョンの情動を子どもがどのように表出したり対処したりするかという調査を行った。
先行研究(Jahromiら,2007)で取り扱われた情動表出のチェック項目は、「衷情
/行動」と「言語」の2種類であったが、私たちの情動表出について考えたとき、
私たちは主に情動を「表情」、「行動」、「言語」を独立した形で表出していると考え る。「表情」もまた、は私たちが他者に情動を伝達する上で最も表出されやすく、最 も他者に伝わりやすい手段であると考えられており、「表情/行動」のカテゴリーを 分けて実態を捉える必要性があると思われた。そこで、本研究では、情動表出のチ ェック項目を「表情」「行動」「言語」の3つに分類して得点づけることとした。ま た、先行研究(Jahromiら,2007)では、課題が解決できたときの快情動に関して は触れられておらず、発達障害児の情動表出という点では明らかになっていない点 が多い。そこで木研究では、先行研究(Jahromiら,2007)と同様に発達障害児に
と っ て フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン を 感 じ ら れ る 場 面 と 、 先 行 研 究 (Jahromiら, 2007)で は 取 り 扱 わ れ な か っ た 達 成 に よ る 快 情 動 を 得 ら れ る 場 面 を 設 定 し 、 そ れ ぞ れ の 情 動 表出の実態について検討することとした。
II. 方 法 ( 1 ) 対 象 者
対 象 者 は 、 精 神 年 齢 、 生 活 年 齢 を 統 制 し た ダ ウ ン 症 児8名 ( 幼 児 1名 、 小 学 生 5 名 、 中 学 生2名) 知 的 障 害 児 9名 ( 小 学 生 8名 、 中 学 生2名 ) で あ っ た 。 対 象 児 の 詳 細 に つ い て は Table1に示す。
Table 1 参加者の生活年齢および精神年齢
ダウン症児 知的障害児
( 2 )手続き 人 数
8 9
平 均 値
生活年齢(ヶ月) 標 準
偏 差 範 囲 113.875 46.036 58"‑'178 157.111 32.289 73r,..,163
平 均 値
精神年齢(ヶ月) 標 準
偏 差 範 囲 56.500 16.125 37'"'‑'84 73.889 23.310 30'"'‑'99
パズル課題は、 (Jahromiら, 2007)を参考に、子どもが理解しやすいもの(車・
家 ・ 魚 ) を 3色 で 描 い た 10ピースのパズ、ルを作成し使用したo 1つ目と 2つ 目 の パ ズ ル は 一 見 完 成 で き そ う に み え る が 完 成 で き な い も の を 設 定 し 、 フ ラ ス ト レ ー シ
ョンの情動表出の測定に使用した。 3つ目のパズルは完成で、きるようなものを設定
しポジティブな情動表出の測定に使用した。 1つ目と 2つ 目 の パ ズ ル は2分 半 試 行 させた。 3つ 目 は パ ズ ル を 完 成 さ せ る た め の 十 分 な 時 間 を 与 え たD
( 3 ) 記 録
対象児の情動表出反応は、 VTRに 記 録 し 、 評 定 者 2名 に よ り チ ェ ッ ク し た 。 評 定 者 間 の 一 致 率 は 98.0%であった。一致が認められなかった項目については、 2人 が 合 議 し た 上 で 決 定 し たD
(4 ) 調 査 期 間
情動表出のパズル課題の実験は、 2008年 11月から 2008年 12月 に か け て 行 わ れ た。
( 5 ) 分 析 方 法
パ ズ ル 課 題 で 撮 影 し た ビ デ オ は 、 先 行 研 究 (Jahromiら, 2007) を 参 考 に ① ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 、 ② フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン 対 処 行 為 、 ③ 快 情 動 表 出 の3つ の 観 点 から評価を行った。
① ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 に つ い て
子 ど も の ネ ガ テ ィ ブ さ は 先 行 研 究 (Jahromiら, 2007) に 従 っ て 筆 者 が 作 成 し た 基 準 を 基 に VTRを 10秒 間 の 間 隔 ご と に 得 点 づ け し た 。 表 情 の 欲 求 不 満 の 表 出 の
‑16‑
証拠として、眉の周りがふくらんだり、眉にしわを寄せたり、鼻にしわを寄せたり、
頬をふくらせたり、口がまっすぐになったり 口をとがらせていたり、堅く閉じて
い る か ど う か を 観 点 と し た 口 ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 の 項 目 は 、 表 情 / 行 動 に よ る 欲 求 不 満 表 出 ( パ ズ ル が も た ら す 欲 求 不 満 に 向 き 合 っ た と き に 、 表 情 や 行 動 に よ っ て 欲 求 不 満 を 表 出 し た こ と が 認 め ら れ な か っ た 場 合 か ら 極 度 の 欲 求 不 満 を 表 す 場 合 ま
で3段階の評価)、発声による欲求不満表出(欲求不満に対して発声をしない場合か
ら 発 声 の ト ー ン や 量 に よ っ て 欲 求 不 満 を 表 す 場 合 ま で2段 階 の 評 価 ) を み た 。 そ の 結果をもとに、継続時間(消極性が表出されたインターパルの数)、情動の強され、
く つ か に 分 割 し た イ ン タ ー バ ル を 通 し て 表 出 さ れ た 消 極 性 の 評 価 値 の 合 計 ) を 算 出 し得点化した。
② フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 に つ い て
パ ズ ル 課 題 が も た ら す フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン に 対 処 す る た め の 行 為 や 表 出 を そ の 有
無によらず、 10秒の間隔で評価した。チェックリストの項目は、①表情表出による
安定化(フラストレーションを表情に出すことで気持ちを安定させる)、②言語/言 葉による安定化(言語による再評価)、③身体の安定化(爪を噛む、髪をいじる)、
④回避(その場から逃げてしまう、席から離れる)、⑤注意散漫(興味がパズルから それる)⑥何か安心できる別の方法を探す(安心感を求める行為の表出など)、⑦検 査者へ関心を向ける(注意が検査者へ向く)、③検査者以外のものに関心を向けるの 8項目であるo フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 の 得 点 は 、 解 決 で き な い 2つ の パ ズ ノレで測定されたすべてのインターパルで、合計したものを、比率の算出のためにイン
ターパルの総計数で、分割したものを用いた。
③ 快 情 動 の 表 出 の 強 さ に つ い て
3つ め の 解 決 で き る " パ ズ ル の 子 ど も の 情 動 表 出 を VTR に記録し分析を行っ た。完成するまでの 30秒間を 10秒 間 の ご と の イ ン タ ー バ ル と 完 成 後 5秒 間 の 計4 つ の イ ン タ ー バ ル 中 の 子 ど も の 快 情 動 を 、 筆 者 が 作 成 し た 基 準 を 基 に VTR を得点 づ け し た 。 表 情 の 快 情 動 の 表 出 の 証 拠 と し て 口 角 が 後 方 に ひ き あ が っ て い る 、 頬 が も ち あ が っ て い る 、 下 ま ぶ た が 押 し 上 げ ら れ て 目 が 細 く な っ て い る か ど う か を 観 点 と し た 。 快 情 動 表 出 の 項 目 は 、 表 情 に よ る 快 情 動 表 出 ( パ ズ ル が も た ら す 快 情 動 に 対 し て 、 表 情 や 行 動 に よ っ て 快 情 動 を 表 出 し た こ と が 認 め ら れ な か っ た 場 合 か ら 極 度 の 快 情 動 を 表 す 場 合 ま で3段階の評価)、行動による快情動表出(パズルがもたら す 快 情 動 に 対 し て 、 表 情 や 行 動 に よ っ て 伏 情 動 を 表 出 し た こ と が 認 め ら れ な か っ た 場 合 か ら 極 度 の 伏 情 動 を 表 す 場 合 ま で 3段階の評価)、発声による快情動表出(快情 動 に 対 し て 発 声 を し な い 場 合 と 発 声 の ト ー ン や 量 に よ っ て 快 情 動 を 表 す 場 合 の 2段 階の評価)をみた。その結果をもとに、情動の強さ(し、くつかに分割したインター パルを通して表出された消極性の評価値の合計)、を算出し得点化した。
皿 . 結 果
( 1 ) ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 に つ い て
ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 の 得 点 の 平 均 を 算 出 し た 。 結 果 は
T a b l e2
の と お り で あ る 。 情 動 の 継 続 時 間 に つ い て 、 表 情 の 情 動 表 出 の 継 続 時 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か った(t (15)=1.65, p> .05)。 行 動 の 情 動 表 出 継 続 時 間 に お い て は 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)=1.83, p > .05)。 発 声 の 情 動 表 出 の 継 続 時 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)=0.004, p> .05)。 次 に 情 動 の 強 さ に つ い て 、 表 情 の 情 動 の 強 さ に 有 意 差 は み ら れ な か っ た (t (15)=1.54, p> .05)。 行 動 の 情 動 の 強 さ に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)=1.60, p> .05)。 発 声 の 情 動 の 強 さ に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た ( t (15)=0.40, p> .05)。Table2ネガティブな情動表出の継続時間と情動の強さ
ダウン症児 知的障害児
標 準 偏
ネガティブさと対処法 平 均 値 標 準 偏 差 中高 平 均 値
差 情動の表出時間
中 高
表情によるフラストレーション表出 .39 .25 .00‑.67 .60 .28 .10‑.80 行動によるフラストレーション表出 .36 .21 .10‑.77 .19 .18 .00‑.53 発声によるフラストレーション表出 .48 .43 .00‑1.00 .47 .46 .03‑1.40 情動の強さ
表情によるフラストレーション表出 1.31 .26 1.00‑1.77 1.66 .20 1.10‑1.80 行動によるフラストレーション表出 1.30 .15 1.10‑2.47 1.24 .24 1.00‑1.70
1.00‑2.0
発声によるフラストレーション表出 1.46 .41
。
1.38 .28 1.03‑1.97( 2 ) フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 に つ い て
フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 に つ い て ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 の 得 点 の 平 均 に 対 し て t検 定 を 行 っ た 。 結 果 は
T a b l e3
の 通 り で あ るO 与 え ら れ た フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン に 対 し て ① 表 情 表 出 に よ る 安 定 化 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)=0.86, p> .05)。 ② 言 語 / 言 葉 に よ る 安 定 化 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た(t(15)=1.37, p> .05)0③ 身 体 の 安 定 化 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)=1.27, p> .05)。 ④ 回 避 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)=0.52, p > .05)。 ⑤ 注 意 散 漫 に 有 意 差 は 認 め られなかった(t (15)ニ1.51,p>.05)⑥ 何 か 安 心 で き る 別 の 方 法 を 探 す に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)ニ0.58,p> .05)。 ⑦ 検 査 者 へ 関 心 を 向 け る に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た(t(15)=1.88, p>.05)。 ③ 検 査 者 以 外 の も の に 関 心 を 向 け る に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (t (15)ニ0.08,p> .05)。
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Table3フラストレーション対処法
ダウン症児 知 的 障 害 児
標 準 標 準
ネガティブさと対処法 平 均 値 中高 平 均 値
偏 差 偏 差
フラストレーション 対処法
① 表 情 表 出 に よ る 安 定 化 .39 .25 .00‑.70 .56 .27 .01‑.73
② 言 語 表 出 に よ る 安 定 化 .46 .42 .00‑1.00 .23 .26 .00‑.80
③ 身 体 の 安 定 化 .24 .09 .13‑.40 .15 .17 .00‑.53
④問題を回避する .01 .03 .00‑.07 .01 .01 .00‑.03
⑤注意を散漫させる .18 .26 .00‑.80 .04 .03 .00‑.10
⑥ 別 の 方 法 を 探 す .12 .16 .00‑.47 .08 .12 .00‑.37
⑦調査者に関心を向ける .26 .16 .10‑.57 .12 .14 .00‑.47
③調査者に頼らず手がかりを得ようとする .01 .02 .00‑.07 .01 .02 .00‑.07
( 3 ) 快 情 動 表 出 の 強 さ に つ い て
快 情 動 の 強 さ に つ い て 、 ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 を 比 較 し た 。 結 果 は Table4の通 りである口表情の情動の強さに有意差はみられなかった(t (15)=0.86,
p>
.05)。 行動 の 情 動 の 強 さ に お い て は 有 意 差 が 認 め ら れ (t (15)ニ2.19,p
<
.05)ダウン症児が知 的 障 害 児 と 比 較 し て 有 意 に 行 動 に よ る 快 情 動 表 出 を 行 っ て い た 。 発 声 の 情 動 の 強 さ に有意差は認められなかった(t (15)=1.47,p>
.05)。Table4快情動表出の強さ
ダウン症児 知 的 障 害 児
標 準 標 準
平 均 値 中高 平 均 値 qJ冨
偏 差 偏 差
情動の強さ
表情によるフラストレーション表出 1.63 .25 1.00‑2.00 1.36 .36 1.00‑2.00 行動によるフラストレーション表出 1.63 .52 1.00‑2.25 1.11 .18 1.00‑1.50 発声によるフラストレーション表出 1.69 .47 1.00‑2.00 1.17 .33 1.00‑2.00
N.考 察
( 1 ) ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 に つ い て
ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 の ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 を 比 較 し た 結 果 よ り 、 「 表 情 ・ 行 動 ・ 発 声j に よ る 情 動 の 表 出 時 間 、 情 動 表 出 の 強 さ の そ れ ぞ れ に 有 意 差 は 認 め ら れ ず 、 先 行 研 究 の 「 表 情 / 行 動J、「発声Jの ど ち ら の 場 合 に お い て も ダ ウ ン 症 児 の 方 が 長 く 表 出 さ れ る と い う 結 果 と は 異 な る 結 果 が 得 ら れ たD 理 由 と し て 考 え ら れ る こ と に つ い て 、 ま ず 、 生 活 年 齢 ・ 精 神 年 齢 が あ ば ら れ るD 先 行 研 究 (Jahromiら, 2007)の 対 象 児 の 平 均 月 齢 は 、 ダ ウ ン 症 児 ( 生 活 月 齢 96.11ヶ 月 , 精 神 月 齢 49.37
ヶ月)、知的障害児(生活月齢 110.40ヶ 月 , 精 神 月 齢 53.11ヶ 月 ) で あ っ た の に 対 し 、 本 研 究 の 対 象 児 の 平 均 月 齢 は 、 ダ ウ ン 症 児 ( 生 活 月 齢 113.88ヶ 月 , 精 神 月 齢 56.50ヶ 月 ) 知 的 障 害 児 ( 生 活 月 齢 157.11ヶ 月 , 精 神 月 齢 73.89ヶ月)、であり、
いずれも本研究の対象児の方が高かった。このことから、ネガティブな情動表出は、
生 活 年 齢 や 精 神 年 齢 が 高 く な る に つ れ て ダ ウ ン 症 児 、 知 的 障 害 児 の 表 出 の 差 は 少 な く な る こ と が 推 測 さ れ るO
次 に 考 え ら れ る 要 因 と し て 、 課 題 と し て 使 用 さ れ た パ ズ ル の 違 い が あ げ ら れ る 。 本 研 究 で は 、 先 行 研 究 (Jahromiら, 2007)を 参 考 に 筆 者 が 作 成 し た パ ズ ル を 使 用 し た 。 パ ズ ル の 絵 柄 は 先 行 研 究 が 人 気 の キ ャ ラ ク タ ー で あ っ た の に 対 し 、 本 研 究 の パ ズ ル は 子 ど も に わ か り や す い 絵 と し て 車 、 家 、 魚 、 を 用 い た 。 こ う い っ た 課 題 の 違 い や 場 面 の 違 い に よ っ て 子 ど も の 情 動 表 出 に も 差 が 出 る と い う こ と も 考 え ら れ たD
一 方 で 、 情 動 表 出 は 文 化 差 が 多 く 関 与 す る こ と が 知 ら れ て い るD 例えば、
Zahn ‑Waxlerら (1996)に よ れ ば 、 日 本 の 子 ど も は ア メ リ カ の 子 ど も に 比 べ て 、 怒 り を 表 出 す る こ と が 少 な い こ と が 示 さ れ て い るDまた、アメリカ人の子どもの方が、
日 本 人 の 子 ど も に 比 べ て 怒 り を 示 す 反 応 が 速 い と い う 報 告 も あ る (Keltner,2003)。 こ れ ら の 差 に つ い て 、 日 本 で は 一 般 的 に 否 定 的 な 情 動 表 出 を 抑 制 す る よ う に 求 め ら れている(菊池, 2006)の で 、 フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 情 動 で あ る 「 怒 り 」 や 「 悲 し みJと い っ た 情 動 を 表 出 さ れ る こ と は 少 な い は ず で あ るO し か し 、 今 回 の 結 果 を ア メ リ カ の 先 行 研 究 の 得 点 と 比 較 し た と こ ろ ほ と ん ど の 項 目 で 今 回 の 結 果 の 得 点 が 上 回 っ て い た 。 発 達 障 害 児 の 情 動 発 達 を 形 成 す る 上 で 文 化 差 は 影 響 さ れ に く い の か も し れ な い 。 ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 の ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 を 比 較 し た 結 果 、 「 表 情 ・ 行 動 ・ 発 声Jに よ る 情 動 の 表 出 時 間 、 情 動 表 出 の 強 さ の そ れ ぞ れ に 有 意 差 は 認 め ら れ ず 、 先 行 研 究 (Jahromiら, 2007)の「表情/行動」、「発声j の ど ち ら の 場 合 に お い て も ダ ウ ン 症 児 の 方 が 長 く 表 出 さ れ る と い う 結 果 と は 異 な る 結 果 が 得 ら れた。理由として考えられることのひとつとして生活年齢・精神年齢があげられる。
先 行 研 究 の 対 象 児 の 平 均 月 齢 は 、 ダ ウ ン 症 児 (CA96.11ヶ月, MA49.37ヶ月)、知 的 障 害 児 (CAII0.40ヶ月, MA53.11ヶ 月 ) で あ っ た の に 対 し 、 本 研 究 の 対 象 児 の 平 均 年 齢 は 、 ダ ウ ン 症 児 (CAI13.88ヶ月, MA56.50ヶ月)知的障害児 (CAI57.11
ヶ月, MA73.89ヶ 月 ) 、 で あ り 、 い ず れ も 本 研 究 の 対 象 児 の 方 が 高 か っ た 。 こ の こ と は 、 フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 の 表 出 は 発 達 的 な 変 化 が 要 因 の ひ と つ と し て
20‑
大 き く 関 与 し て い る こ と を 示 唆 し て い る 。 ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 表 出 は 、 生 活 年 齢 や 精 神 年 齢 が 高 く な る に つ れ て ダ ウ ン 症 児 、 知 的 障 害 児 一 定 の 表 出 を 行 う こ と が 可 能 に なりその差は少なくなることが推測された。
( 2 ) フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 に つ い て
フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 法 に つ い て は 先 行 研 究 と 同 様 に 8つ の 項 目 か ら 対 象 児 の 情 動 表 出 を 観 察 し 得 点 を 算 出 し た 。 結 果 と し て は 、 知 的 障 害 児 、 ダ ウ ン 症 児 の 得点に有意な差がみられた項目はなかった。先行研究では、「⑤注意散漫」と「⑦検 査者に関心を向ける J で ダ ウ ン 症 児 が 知 的 障 害 児 と 比 べ て 高 い 頻 度 で 表 出 さ れ て い た 。 し か し 、 本 調 査 で は そ の 結 果 と は 一 致 せ ず 、 行 動 レ ベ ル に お い て は ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 で は フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 に 違 い は み ら れ な い と い う 結 果 と な っ た 口 有 意 差 は 認 め ら れ な い が ダ ウ ン 症 児 と 知 的 障 害 児 と の 間 で 得 点 に 聞 き が み ら れ た 項 目 は 先 行 研 究 と 同 様 に 「 ⑤ 注 意 散 漫 」 と 「 ⑦ 検 査 者 に 関 心 を 向 け る ん さ ら に「②言語表出j が ダ ウ ン 症 児 で 多 く み ら れ た 。 先 行 研 究 で は 、 ダ ウ ン 症 児 は 難 し い 課 題 を 与 え ら れ る と 課 題 を 遂 行 す る 時 聞 が 短 く な る こ と を 報 告 し て い るD 今回の 結 果 か ら も ダ ウ ン 症 児 が フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 情 動 に 対 し て 注 意 を 散 漫 さ せ る こ と で 気 持 ち を 安 定 化 さ せ る こ と が 示 さ れ 、 先 行 研 究 を 支 持 し た 。 ま た 、 知 的 障 害 児 は フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 対 処 行 為 と し て 「 ① 表 情 表 出 」 を 多 く 行 っ て い る の に 対 し て ダウン症児は「②言語表出 J や 「 身 体 表 出j を 多 く 行 っ て い る こ と が 示 さ れ た 。 障 害の特性により得意とする情動の表出ノミターンは異なるのかもしれない。
( 3 ) 快 情 動 表 出 に つ い て
行 動 の 情 動 の 強 さ に お い て は ダ ウ ン 症 児 が 知 的 障 害 児 と 比 較 し て 有 意 に 強 く 行 動 に よ る 快 情 動 表 出 を 行 っ て い た 。 具 体 的 な 内 容 と し て は 、 パ ズ ル が 完 成 し た と き に 両 手 を ば ん と た た い た り 、 机 を た た い て 完 成 で き た こ と を 検 査 者 に 伝 え よ う と す る様子がみられた。ダウン症児は、そのパーソナリティ特性として、「ひとなっっこ しリ「陽気で朗らか J 等の記述がなされる(建川, 1968) こ と が 多 く 、 社 会 性 の 発 達は良好な印象がある(小島, 2000) が 、 自 ら の 快 の 情 動 や 気 持 ち を 関 わ り 手 に 伝 えるという行為がそういったイメージにつながっているのかもしれない。
N.今 後 の 課 題
本 研 究 で は 発 達 障 害 児 に 対 し て 調 査 を 行 い 、 統 計 学 的 な 検 討 を 行 っ た が 、 対 象 人 数 が 少 な か っ た 。 さ ら に 、 今 回 は 対 象 を 発 達 障 害 児 に 限 定 し た た め 、 定 型 発 達 児 の 水 準 と 比 較 す る こ と が で き な か っ た 。 今 後 さ ら に 定 型 発 達 児 や 様 々 な 障 害 特 性 の 子
どもたちについての検討が必要である。
v .
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