発達障害のある子どもたち
への対応の基本
技術を鍛えよう
国立研究開発法人国立成育医療研究センター理事 日本小児保健協会常任理事 東京大学医学部小児科非常勤講師 Rabbit Developmental Research代表平岩 幹男
大きいか小さいかは別として
かけらはみんなが
持っている
発達障害のかけら
目を合わせて話すことが苦手で ある 自分なりにこだわりがある 話し始めると止まらないことがある じっとしているといらいらすることがある 予定が急に変更されると戸惑う すぐに集中力が途切れることがある 突然投げ出したくなることがある発達障害とは?
発達障害 発達の過程で明らかになる行動やコミュ ニ ケーションなどの障害で、根本的な治療は現 在ではないが、適切な対応により社会生活上 の困難は軽減される障害 したがって発達そのものの障害ではない発達障害の種類
自閉症 →知的障害を伴う(言葉の遅れがある) →知的障害がない(言葉の遅れがない) ADHD(注意欠陥・多動性障害) 学習障害 これらはしばしば合併する発達障害はスペクトラム
自閉症スペクトラム障害は →知的能力や症状に連続性 ADHD →衝動性、多動性、不注意の症状の出る ストライクゾーンは人によってさま ざま ディスレクシア →「読むのが苦手」から「読めない」まで様々2
しゃべらない
知的な遅れ、自閉症、難聴、表出性言語遅滞 運動発達の遅れにも注意する 理解も遅れている場合には要注意 非言語的コミュニケーションの評価 模倣動作の評価知的な遅れ(知的障害)
国際的にはIQ70未満 →ひとり暮らしができるのは85程度から 軽度を含めると人口の2%程度 受容言語も表出言語も遅れる 非言語的コミュニケーションも相応に遅れる そのほかの病態に合併することもある IQ値は生活上の困難さとは必ずしも一致しな い自閉症
自閉症スペクトラム障害(ASD)という概念 →知能にも症状にも連続性がある →男子に3∼5倍多い。人口の1∼2% 言葉の遅れで発見される群がある →必ずしも知的な遅れとは限らない →非言語面の遅れが大きいことが多い 適切な療育が知られていないし行われていない難聴
片耳の難聴を入れると数百人に1人? 新生児聴覚スクリーニングが普及してきた →しかし受けている新生児はまだ60% 生後6か月までに診断、療育開始で →言語発達の遅れは回避できる可能性がある →補聴器などだけではなく人工内耳も 幼児期以降は携帯電話でのチェッ クが可能表出性言語遅滞
表出言語の遅れはあるが受容は可能 →しゃべらないけれども理解はしている これ捨てて、ボール取ってなどの簡単な 指示 →自発語がなくても理解していることも多い いずれ自発語が出ることが多いが・・ →なかなか出てこないこともある 高機能自閉症への移行が少なくない1歳6か月児健診での頻出語
1. ワンワン 477人(59.5%) 2. パパ 444人(55.4%) 3. ママ 436人(54.4%) 4. バイバイ 302人(37.5%) 5. マンマ 297人(37.0%) 6. ブ ー ブー 226人(28.2%) 7. ニャ ンニャン 194人(24.2%) 8. ネンネ 167人(20.8%) 9. イタイ 146人(18.2%) 10.チョウダイ 76人( 9.5%)音声言語が先
これは原則
それが無理なら
文字言語も使う
2:ひらがなを入れよう
5:ひらがなを選んでみよう
6:ひらがなを選んでみよう
うまく選べたら思い 切りほめよう! できたら「あひる」の 声出しも こうして絵と文字を 一致させよう限局性学習障害で最も多いのは
発達性読み書き障害(ディスレクシア) →読みの障害:読むのが苦手 「かえる」を反対から、「ひつじ」と「ひたじ」 →書きの障害:複雑な図形の書写ができない 「龍」を写させてみよう 算数障害 →しばしば空間認識の障害もある 2+3 5+3 8+3 11−4Dyslexia
ほとんどのケースは診断すらされて いない 当日の朝食の内容と前日の夕食の内容が言 えるのに、国語の点数が低い・・疑ってよい 文科省の「1年以上の遅れ」が出たときには 語彙の遅れはしばしば決定的 読むのが苦手な子は読まなくなる 軽症を入れると2%? STの新しい領域4
文節読みの練習
くまさんは、うちにかえってとだなにおさらをし まいました。 くまさん は うち に かえって とだな に おさら を しまい ました くまさんは/うちに/かえって/とだな に/お さらを/しまいました。 くまさん/は/うち/に/かえって /とだな / に/おさら/をDyslexiaにこう対応してみたら・・
まずは診断をする →テストの点数が低くても知的障害ではない →この子だけに対応するのは無理といわれる →しかし学校との協調は欠かせない DAISY、小枝研究室のHPなどを教え る →http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/about/ →http://www.dyslexia-koeda.jp/user/monotony_index.php 技術的対応も含めて練習する発音練習
発音の明瞭度を上げる練習は毎日 やっていると少しずつできるようにな る さる と らくだ と たぬき を どうぶつえん・・障害の可能性や診断
だけで終わることは
児童虐待の
リスクを増やす
子どもの発達障害診療
が目指しているのは
20歳の時の生活の質を高める
こと、そのためのLST
注意したり
叱ったりしても
問題行動は
止まっても消えはしない
失敗を叱るだけの
教育なら
いらない
もし現状を
変えたいのであれば
理論的に対応することが
必要になる
出来ないことがあれば
できるように考えて
練習する
失敗した場面を再現して
うまくいく練習をする
単に次には期待しない
Life Skills Education Programme
(WHO 1997, Geneva) Decision making Problem solving Creative thinking Critical thinking Effective communication Interpersonal relationship skills Self-awareness Empathy Coping with emotions
Coping with stress
SSTからLSTへ
Social skills training: SST →統合失調症の社会復帰訓練から →対人コミュニケーションと集団対応が中心
Life skills training: LST
→Life skills education program(WHO1997) →生きていきために必要な能力の育成
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LST(life skills training)
社会で暮らしてゆくために必要なことを練習する 言語的、非言語的両方の手法が必要 →対人コミュニケーションの獲得と活用 →日常生活習慣の獲得 →学業スキル、身体スキル →自己コントロール →どうやって稼ぐようになるか その時だけではなく大人になって自立する目標
これらのスキルが必要になる
問題行動を消す、減らす
無視する タイムアウト 切り替える ほめて消す、減らす行動には理由がある・・ABC
A:環境からの先行刺激 (antecedent) B:誘発された子どもの行動 (behavior) C:その結果 (consequence) 信号が赤→渡らない→ほめられる 周りがうるさい→自分も騒ぐ→叱られる 食事の声掛け→食卓を拭く→ほめられる 食事の声掛け→ゲームをやめない→叱られる問題点は解決できる
たち歩き、指示が通らない、不注意 →多くの問題点は解決可能 →なぜそれが起きているか →どうなれば「ほめられる」か →どうなれば「叱らない」ですむか →失敗しやすい:一度に何とかする、 できなければあきらめる できないことを子どものせいにする技術とは・・
基本を押さえること →そのうえで自分なりにアレンジ →上達を目指すこと 再現性が欠かせない →再現するたびにうまくなる(経験値が増える) →その場次第では経験値は増えない 冷静に意識して使うことほめることが大切
であるといくら聞いても
できない
それは練習しないから
対応は
やる気と技術
努力すれば誰でも出来る
自動車の運転と基本は同じ
スモールステップ
急いでも焦っても うまくいかない 少しずつできることを 増やす 一度に歩けるのは 一歩だけ 百歩は歩けない自己決定権
命令系 →・・・しなさい・・自己決定権なし 禁止系 →・・・してはだめ・・自己決定権なし 希望系 →・・・してくれるとうれしいな →あたりまえのようにほめること →自己決定権ありハーイで手を上げる
・・できる子 手を挙げて ・・する子 手を挙げて ハーイと言いながら 手を挙げる そこでまずほめる それから指示を出す できたらほめる 注目させてから指示を出す →モチベーションを上げるハイタッチ
2歳前から可能 視線を合わせる には両手で 指示する、手挙 げ、ハイタッチ ごほうびにも 切り替えにもほめるサイクルを回す
目標1日50回:1回ずつで完結する できるためには →わかる指示をする →前から指示を出す できないことをできるようにするためには →手伝う →手伝ってもできたら「ほめる」 →手伝いは減らせるが、「ほめる」は変えない3秒
注意するとき
1秒
ほめるとき
ほめ言葉
口に出して練習し なければできるよ うにはならない 最低でも5種類 練習していれば 1秒で出る していなければ 3秒かかる1秒以内(秒速)
反応すべき時点から1秒以内に対応 →ほめるときにはすぐに反応 →ほめる以外では感情的にならないこと →注意するときの瞬間湯沸かし器はNG 動作的な補助を使うことも →ハイタッチなど動作的補助だけでも →ありがとうでもほめ言葉:レパートリーを増やす
やったね すごいね さいこー かっこいー すばらしー すくなくとも5つは使えるようにしようありがとうから
はじめよう
ほめることとおだてることは別のもの ありがとうは小さなお手伝いから10
ありがとう
ありがとうには下心なし それは「何かしてもらっ た時に」言うから だったらお手伝いを 増やしてみよう 「ありがとう」は、ほめ言 葉の第一歩3秒
頭の中で1,2,3 それから話す →かなり練習が必要 →感情のたかぶりを抑える 冷静に話す →子どもに説明させる →説明できたらほめる その行動を止めることではなく →次にその行動が起きなくなることが目標3秒ルール
怒りのエネルギーを子 どもにそのままぶつけ ない 3秒待つだけでかなり 冷静になれる これは練習が必要 安全に関わるときは別行動の問題
うまくできるように 場面を設定してくり返し練習 次は「・・しようね」では出来るようにならないまずは1分間座る練習から
ちゃんと1時間座ってい なさいではなく・・ まずは1分間から それを少しずつ延ばす できたらほめる 注意するだけでは できるようにならない1分待てたよ!
いつも会話に割り込 んでいた 砂時計を見ながら 1分間待つことを 覚えた 待てたら褒めてもら えたバスケット法
ちゃんと片付けなさい ではうまくいかない ちらかっているものを とりあえずバスケットに そこでまずほめる バスケットの中の整理 は、それからゆっくりと連絡帳を忘れない
連絡帳そのものを 忘れる 連絡帳とランドセ ルにカラビナ 家を出る前、学校 から帰る前 「カチャ」を習慣に する「やめて」を言う
「どうして」を言う
気になったことがあって肩を たたかれた 叩かれたと思って殴り返した 叩かれたときに「どうして」と 聞くことができればトラブル は減少する これも練習しかないカウントダウン
テンションコントロール →0でクールダウン 行動のスタート →0でスタート いきなり切り替えるのが 苦手ならばこうして練習聴覚過敏・触覚過敏
エアータオルや 掃除機が苦手 機械音と風 ドライヤーをクール にして少しずつ慣ら していく12
距離感を保つ
対人関係には心 理的だけでなく 物理的距離感も 重要である 1m前後の距離 が話しやすい 体の部分接触も 時には有効落ち着いてから参加する
いきなり参 加して失敗 5数えてか ら参加 その間に 状況を見る 大人が参 加して練習自分でクールダウン
腹が立った時怒りのエネルギー はものに当たるのではなく 自分の両手を握りしめて10数 える・・クールダウンできることが 多い・・・できたら激ほめ・・ くりかえすうちに自分なりの方法 を編み出すことも多い消しゴムを盗られたので
相手にハサミを突きつけた
学校は
ハサミを持ってくることを禁止した
行動を貨幣価値に換算する
消しゴムを隠されたのは「100円」 ハサミを突きつけるのは危ないから「10000円」 100円取ったのは相手が先だけど →10000円取り返していいのかな?コミュニケーションの問題
繰り返して練習して できるようになったらほめる 次は「・・しようね」では出来るようにならない視線が合っていると思わせる
目を見つづけることが苦手なASDでも 鼻を見続けることは簡単 1m以内に近づかなければ相手にはわからないあいさつ
おはようございます こんにちは さようなら いただきます ごちそうさま ありがとう ごめんなさい会話の練習
まずはopen end 2秒待ってclosed end 2秒待ってyes no この繰り返しで覚える 次は質問の練習 繰り返して会話にする話す順序を練習する
話せるということと 会話能力は別 苦手ならば練習する 5W+1H まずは →いつ、だれと →どこで、何を指示は一つずつ
並列、連続の指示 はしばしば苦手 一つずつの指示を クリアーしてから次 の指示を出す ただ連続指示をこ なす練習はムダ表現を変える
トラブルを叱って も 次にはつながらない 適切な表現を練習 することでトラブル は減る トラブルが回避でき たらほめる14
負けても「まあいいか」
負けたときに「まあ いいか」を言う練習 じゃんけんなどの テンポのよいもので 一番ではなかった、 負けてしまった →まあいいかで トラブルは減る発達障害の抱える問題
行動やコミュニケーションの問題を抱えるので →注意されたり叱られたりしやすい →めったにほめられない →そして二次障害につながる Self-esteem(自己肯定感、自尊感情)の低下 →低下しては行動は改善しない→Social skills training(社会生活訓練)が重要
薬物療法だけではなかなかうまくいかない