• 検索結果がありません。

雑誌名 同志社法學

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "雑誌名 同志社法學"

Copied!
64
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案におけ る受け子の罪責 : 一連の裁判例を契機として

著者 山田 慧

雑誌名 同志社法學

巻 70

号 2

ページ 507‑569

発行年 2018‑07‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000338

(2)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号九五五〇七

一連の裁判例を契機として――

             

Ⅰ  はじめにⅡ  裁判例の概観と分析Ⅲ  各論点の検討Ⅳ  最高裁決定の分析Ⅴ  むすびに

(3)

   同志社法学 七〇巻二号九六だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五〇八

Ⅰ  はじめに したせさ達配を等金現に場し「定指てし用利を等便郵る所現機金増が口手いなさ通を関加融と付型」送いた、金っ そしかし、、の後犯人た。大し少減に幅現にもと額害被が来金「等人犯、や」型交手金現がる者直接被害を宅取りにへ 制よに化強じ規た通を、りは平成二一年に機、認知件数・関融数も件および被害額その後は高たに水特、が金し移推で準 法まだを等金現、りよしに方の他のそみ込振のへ座る取目詐立知認のそ、りなにうよつ金欺に降以年五一成平、は)口   「貯すの識面」(欺詐殊特「るといめじはを」欺詐め込りな不預他、てい用を段手信通のの特そ話電、し対に者の定振

)(

、平成二二年以降、特殊詐欺の認知件数は、再度、上昇を続けている

  このように形を変えてきた特殊詐欺事案に関する興味深い裁判例が、近年、立て続けに現れている。特殊詐欺グループに属する者(架け子)が、被害者に電話等で欺罔行為を行い、金員を特定の場所に送付するよう促したが、被害者が欺罔行為を看破し、警察の監視下で「だまされたふり作戦」が実行されたところ、その後に架け子と共謀を遂げ、被害者から送られてきた(偽装)荷物を受け取ろうとした者(受け子)の罪責が問われた裁判例である。

  こうした事案(以下、「だまされたふり作戦事案」)を検討するうえで、まず留意すべきであるのは、被害者に対して欺罔行為がなされる以前に、架け子(ないしは首謀者)と受け子の間に共謀が認められないことを前提とする点である。事前共謀が認められれば、受け子に、詐欺罪の共(同正)犯(の未遂)が認められることに争いはないだろう。しかし、組織的に行われるのが一般的な特殊詐欺において、一番検挙されやすい受け子は、当該組織の末端の者であるのが通例であり、最後まで当該犯行の全容を知らされないことも多いという

。したがって、事前共謀の存在を明確に認定しがたい場合や、そもそも被害金を受け取る直前まで特定の受け子と連絡がなされないような場合は決して少なくないと言え

(4)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号九七五〇九 る。他方、事前共謀が認められないとしても、受け子の行為のみを評価して、詐欺(未遂)罪の成否を検討することは考えられる。すなわち、受け子に、挙動による欺罔行為や、不作為による欺罔行為が認められる余地はあろう。しかし、一連の多くの裁判例で問題とされた「現金送付型」の場合には、被害者と受け子が対面しないことから、受け子の行為を単独で欺罔行為と評価することは困難であると指摘されている

。以上の点に照らせば、受け子は、架け子による欺罔行為が終了した後に犯行に加担したとして、架け子との共犯関係が認められないか、すなわち、受け子に詐欺罪の承継的共犯としての罪責を負わせることができるかが問題となる。

  さらに、だまされたふり作戦事案は、受け子が犯行に加わる前に、被害者がすでに錯誤を脱していた点に特徴がある。行為時に既遂に至る可能性が純客観的には失われていた場合でもなお可罰的かどうかは、不能犯の成否として論じられてきたが、だまされたふり作戦事案においても、同様の議論があてはまるようにも思われる。しかし、後で見るように、裁判例においては、被害者がすでに錯誤を脱していた点を指摘したうえで、不能犯の成否を論じることなく、受け子を無罪としたものが散見される。確かに、架け子の欺罔行為時には、既遂に至る危険性が存在している(したがって、架け子には詐欺未遂罪が当然に成立する)ことから、弾丸の装塡されていないピストルで人を殺害しようとした場合のように、当初から既遂に至る可能性がなかった事案とは異なるとも言える。しかし、そうした理解は妥当であろうか。あるいは、承継的共犯の成否も問題となることが、こうした理解と関係するのであろうか。受け子の罪責を直接的に左右するだけに、これらの点は検討を要するように思われる。加えて、もし、だまされたふり作戦事案に、不能犯の議論をあてはめるべきだとすれば、その判断基準をいかに解すべきかという従来の問題も検討されなければならない。

  なお、だまされたふり作戦事案における下級審裁判例が蓄積されてきたなか、二〇一七年一二月に、最高裁による決定が下された(最決平成二九年一二月一一日裁判所ウェブサイト)。もっとも、後述のように、同決定の判示は極めて

(5)

   同志社法学 七〇巻二号九八だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五一〇

簡潔なものにとどまっており、その立場は必ずしも明らかでない。そこで、以下では、まず、同決定とともに、知りえた限りのものではあるが、蓄積されてきた下級審裁判例における事案とその判断を概観したうえで、下級審裁判例の分析により導き出される論点を明らかにする(Ⅱ)。次に、導き出された論点について、順に、若干の検討を加える(Ⅲ)。以上を前提に、改めて、最高裁による判断を振り返り、すでに示されている同決定に対する分析を検討しつつ、その意義を確認する(Ⅳ)。そして、最後に、だまされたふり作戦事案に関する一連の裁判例を契機として、今後、議論が必要であると思われる点を示したい(Ⅴ)。

Ⅱ  裁判例の概観と分析   前述のように、だまされたふり作戦事案における受け子の罪責について、複数の裁判例が登場するに至っているが、これらの裁判例においては、下級審と上級審において、その帰結や判断枠組みを異にしたものが散見される。以下では、そうした一連の裁判例を、事実の概要とともに簡潔に確認し

、裁判例の動向を把握したうえで、検討されるべき論点を導き出すこととしたい。

  一  裁判例の概観事例①【事実の概要】 

  被告人は、氏名不詳者の誘いに対し、詐欺の被害者が発送した現金を送付先において受け取ることになると概括的に

(6)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号九九五一一 認識しながらこれに応じたが、その時点において、すでに被害者は詐欺被害に遭ったことを認識して警察に相談し、発送中の荷物から現金が取り出されて模造紙幣に入れ替えられていた。【裁判所の判断】◆札幌地判平成二八年一月八日公刊物未登載

(以下「①地裁判決」)

  :有罪   被告人は、「犯人側が被害者をだまして現金入りの本件荷物を発送させたという客観的事実を概括的に認識していたのであって、……そのような荷物を送付先において受け取ろうとする行為は、現金が途中で抜き取られていたとしても、一般人の認識として、詐欺の被害金が犯人側に交付される具体的危険性のある行為と認められることから、詐欺の実行行為に当たるというべきである」。そして、本件の荷物受領行為は、「被害者をだます行為と一体のものとして本件詐欺未遂の実行行為を構成するものであ」り、氏名不詳者の誘いに応じたり、氏名不詳者らの指示に応じたりして犯人側と意思を通じたことから、「被害者をだまして現金を発送させた点も含めて被告人は共同正犯の責任を負う」。

事例②【事実の概要】

  氏名不詳者らが、被害者に対し、同人の息子を装い、現金三〇〇万円が至急必要である旨のうそを伝えたが、同人は詐欺であることに気づき、警察に相談した。さらに氏名不詳者らは、被害者方に電話をかけ、用意した現金を「マツムラ」を名乗る男に渡してほしいと申し向けたが、電話の相手は、被害者を装った女性警察官であった。その後、被告人は、パチンコ屋で知り合った氏名不詳者から、電話で、荷物を受け取る仕事をしないかと誘われ、これを承諾し(報酬

(7)

   同志社法学 七〇巻二号一〇〇だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五一二

の有無は不明であるが、期待はしていた)、指示された通りに現場に赴いて、「マツムラ」を名乗り、被害者に扮する女性警察官から現金を受け取ろうとした。【裁判所の判断】◆神戸地判平成二八年九月二三日

LEX/DB No.25448327

(以下、「②地裁判決」)

  :有罪(懲役二年六月、執行猶予四年)   被告人に氏名不詳の共犯者らとの共謀が成立したといえる、被告人が被害者から現金を受け取ろうとする直前の時点では、「すでに騙されたふり作戦が実施中であったから、客観的には詐欺の結果が発生する現実的危険性はなくなっていたといえる」が、「氏名不詳の共犯者らにおいて、被害者に対する欺罔行為をし、被害者が錯誤に陥って現金を交付しようとしたのだから、当初はその危険性があったことは明らかである。被告人は途中から関与しているが、未必的にせよ共犯者らのした欺罔行為を認識しながら、自らの報酬欲しさという動機から、共犯者らのした欺罔行為を利用する意思で現金(様のもの)を受け取ろうとする行為をしている。そして、その際の状況は、一般人からすれば、騙されて錯誤に陥った被害者が、まさに詐欺の犯人に現金を交付しようとするものといえるから(被告人の認識も同様である。)、欺罔行為時に存在した金銭騙取の現実的危険性は、被告人の受け取ろうとする行為の時点でもなお失われていないと見るべきであ」って、「被告人のした現金を受け取ろうとする行為はまさしく詐欺の実行行為(騙取行為)であり、かつ、被告人は、共犯者らによる欺罔行為も含め詐欺未遂の共同正犯(実行共同正犯)としての罪責を負うと認めることが相当である」。

事例③

(8)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一〇一五一三 【事実の概要】

  Cの屋号で便利業を営んでいた被告人は、氏名不詳者から依頼された郵便物の転送業務を複数回行い、郵便物一通につき、報酬二〇〇〇~五〇〇〇円を得ていた。その際、被告人は一度、郵便物を念のため開封したことがあったが、簡単な挨拶文と振込口座番号が記載された書面が入っていたため、問題がないと判断した。また、指示された転送先が変わった際、怪しいと感じ、警察に相談したところ、警察官は、何らかの犯罪にかかわっている可能性があるとの忠告をしたが、自身で郵便物の中身を確認したことなどから問題がないと判断した。

  被害者(当時八一歳)は、同人の息子を装った氏名不詳者から電話で、現金三〇〇万円を至急必要としているので、取引先Cに現金を送付してもらいたい旨のうそを言われたが、息子本人に連絡を取り、詐欺である旨を看破し、息子が警察に連絡した。その後、だまされたふり作戦が開始され、被害者は、現金を偽装した荷物の配達を依頼した。被告人は、その後に、氏名不詳者から荷物の受領を依頼され、これを承諾し(報酬の有無は不明、被告人は一万円くらいだと予想)、その翌日、C方において、配達員を装った警察官から偽装荷物を受け取ろうとしたところを逮捕された(被告人は、警察官がC方を捜索し始めてから逮捕されるまでの間、氏名不詳者との電話で、「荷物が届いたので、取りに来てほしい」などと会話をしている)。【裁判所の判断】◆名古屋地判平成二八年三月二三日

LEX/DB No. 25544199

(以下「③地裁判決」)

  :無罪

」。ゆたとはされていないから、いわる行否るなと題問が成共の犯正同共謀っ   「被話とこたっ言をそうで電実に〕者害被、〔は因訴件を行告行人が本件詐本未遂の実行行為を……、で上たしと為欺

(9)

   同志社法学 七〇巻二号一〇二だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五一四

  本件事実に照らし、「被告人が荷物を受け取ることを承諾した行為が、〔被害者〕が荷物の配達を依頼するまでに氏名不詳者らがした〔欺罔〕行為に何らかの影響を与えたと認めることはできない」。加えて、被害者が偽装荷物の配達依頼をし終えた時点では、「詐欺既遂の現実的危険も消失していたといえる。そうすると、詐欺既遂の現実的危険という本件詐欺未遂の結果が既に発生し終わった後に、被告人が関与したことになるから、被告人の同日の行為が本件詐欺未遂の結果と因果関係を有することはなく、この点で、被告人に本件詐欺未遂の共同正犯の責任を負わせることはできない」。

  また、氏名不詳者による欺罔行為により「詐欺既遂の現実的危険が生じており、詐欺未遂自体は成立しているのであって、その氏名不詳者の実行行為後に関与した被告人に詐欺未遂の共同正犯としての罪責を問うことができるかが問題となっているのであるから、犯罪の成否自体を問題とする不能犯とは、その問題状況を異にしている」。「〔被害者〕が模擬現金の配達を依頼した後、〔被害者〕にさらにうその電話をするなどしたとしても、既にこの荷物については、〔被害者〕の支配領域から離れている以上、この荷物との関係で詐欺既遂の結果が発生する現実的危険がより強まるなどの事態が生じるとは考え難い。そして、被告人がこの荷物を受け取るという行為には、〔被害者〕に働きかけて錯誤に陥らせるようなものは含まれていない。……また、以上の諸点に照らすと、既に模擬現金の配達が依頼された後に、これを受け取ることを依頼されて、現にこれを受け取るという行為をしたとしても、詐欺既遂の結果を発生させる客観的危険に何ら寄与するものではないから、現金を受領することで詐欺行為の一部に関与し、行為を共同したと見ることのできる詐欺既遂とは異なり、本件詐欺未遂で、被告人の受領行為をその行為(ないしは実行行為)の一部と見るのにも疑問が残る」。

  さらに、被告人が以前に受けた警察官からの忠告も具体的なものではなかったこと、報酬は不自然なほど高いものと

(10)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一〇三五一五 も言えないこと、被告人は、荷物を受け取る際、自身の免許証を示したり、氏名不詳者と共謀していたならば、通常は考えられない会話を氏名不詳者としたりしていることなどに照らすと、実際に荷物を受け取るまでに、当該荷物が詐欺でだまされた被害者から送付される現金であるかもしれないと認識していたと認めるには疑問が残る。

◆名古屋高判平成二八年九月二一日

LEX/DB No. (((((( 8(

(以下「③高裁判決」)

  :無罪 要なるあでのな面場るいっとこ題問が否成の罪犯、はて。てのをよ、はのるす断判てい用必方にえな場合う不犯の考能 しいたとを事て刑処罰ってがなに能可不生発果結、かれ免れるすいかに人一の者犯共、ばつ言っが題にな問ている、換 の場たっあが絡連の思意うていつにとこは行を欺詐、合て、未のるれさ罰処てしと罪遂……欺が為行の己自、にさま詐 体では全欺としての詐そこる、がういとすに題問を体の罪をみ。つに人告被の件本、に仮いるわ思とるいてしに題問れ そるが、論のような結罰れにわ思とるなとこいなれさ正は決当はと否成の罪犯は犯能不、自判な原思われはい。また、 行つに者たしとうよしい、実らか初当に仮、はで論はて、未らの処に常は者たし与関か遂後もてしとるす立成が犯立決 を問に的本、もてし慮考題たじっいと性果因るす対に判同基問え原……。るあで当不題のるは考り状ににあ況、全く別 的の合場たっなに能可不にっ発後が生発果結、と合場の不、成可た果結、は否の罪能の者犯入ににった後な共犯関係に さとは肯定よれてるい。こ同い用を法方断判なうよじ独単犯犯な能不な的型典うと合場い能が可果発生結当不初でらか らか、に係関犯共もれ後そ合場の犯共、くなでけだ犯っ入場たを、かもとはかうどかう使く葉ういと犯能不、もで合言 りのであ生、結果発るもけす有を能機る分をかいな不がで可あ独単、ばれみ鑑にとこるで能々様も期時や由事るなには   「き生場るれわ思と能可不が発に果結、が方え考の犯能合、べ、す罰処もてしと犯遂未か未きべす罰処てしと犯遂不

(11)

   同志社法学 七〇巻二号一〇四だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五一六

かつ妥当であると考えられる」。

」。るな 人で間のとら者詳不氏が被告謀、「てっがたし」。いなき共名し欺たとこるす立成が罪遂未と詐れにみられとば被告人、 既、詐欺結遂の果発実生はか事のこ、らいなえいもと現の険実の的でとこるすと情事礎基はてた当に断判の無有の危っ は事実び、被告人及う発いとたし送を物荷件本の名氏た不、入た得し識認が人般一し詳っかないてし識認はら者り金現 者を荷件本に既に前以る受頼の依の領受物荷のらか〕詳物け発害擬送模てし談相に警が者察被いを、えて終たとしても てべすと礎基を情事たい事し識認に特が者為行び及情きあで者得不名氏〔が人告被、が害る被、に仮、とるすうそ。た   「しが行、もてっあで能可不生時発果結はに際実、てし為の識当認が人般一、はてったに結断判の性能可の生発果そ

」。はなくとも共謀共同正犯に少当考たれらえるともる得りの あたので、れば正犯者担し謀分をれこ上の通、りあで為いと遂え割、てしとのもたしる果をた役罪程なに犯度の行に重要 実行な要重のめたるす現を仮れ当に為行行実がこらに取、がるあで題たなの行騙の物財、は為領い受該当、もてしと問   「お〕てけ受を頼依のらか者、詳不名氏〔が人害告被被な金実個一はかた当に為行行のを欺詐件本が為行るす領受る   もっとも、被告人の故意を否定した原審の判断は是認することができる。

事例④【事実の概要】

  バイク便等の業務を行っていた被告人は、以前、依頼を受けて運搬した荷物が詐欺に関するものであったことが判明し、警察官から注意を受けたことがあった。しかし、その後も被告人は、事前に教えられた場所に隠された鍵を用いて

(12)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一〇五五一七 マンションの空き室に入り、そこに届く荷物を指示された名前で受け取るとともに、指定された場所に荷物を運搬するという業務を氏名不詳者から依頼され、それを複数回遂行し、報酬三~四万円を得ていた。

  某日、氏名不詳者らは、被害者Aに対し、同人名義で購入したとされるプラチナ代金の支払いが終わっておらず、逮捕を回避するためには一〇〇万円を送付する必要がある旨のうそを言い、その後、被告人に対し、送付された金員を受け取るよう依頼し、被告人はこれを承諾のうえ、当該被害金を受け取った(報酬四万円)。(ⅰ事件)

  他日、氏名不詳者らは、電話により、被害者Bに対し、同人が介護施設の入居に関して違法な名義貸しを行ったため、現金二〇〇万円を送付しなければ刑事訴追を受けるなどとうそを言ったが、Bが警察に相談し、だまされたふり作戦が開始され、氏名不詳者らに指示されたマンションの一室に宛てて模擬現金入りの荷物が送付された。その後、被告人は、荷物の受領と運搬を依頼され、これを承諾し、その翌日、配達員を装った警察官から、被害者が送付した荷物を受け取った(報酬四万円)。(ⅱ事件)【裁判所の判断】◆名古屋地判平成二八年四月一八日

LEX/DB No. 25448222

(以下「④地裁判決」)

  :一部有罪(懲役二年六月・執行猶予四年)   荷物の受領形態や、その報酬額に照らして、遅くとも、ⅰ事件に至るまでには、「被告人は、……荷物の送り主がだまされて財産的価値のある物を空室に送っているのかもしれないとの認識はあった」。

の責前、りあでのもう負任の依そもていつに為行欺詐の記を頼詐示のが人告被ていつに欺判示連判際意思の絡により、 担果にとどま結らず、加氏前に行われた名不詳者らそのと欺めの結果を生じさせたと認ら詐れるから、自ら行った行為   (事……思意るす担加に欺詐、件有は人告被)「ていつにをⅰしのに際実、りわ加に部一詐、示判ういと取受の物荷欺

(13)

   同志社法学 七〇巻二号一〇六だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五一八

氏名不詳者らと共謀を遂げたと認めるのに十分である。……被告人は、判示詐欺の全部について共同正犯としての責任を負う」。

てと被、ずれらめ認はた人い告げ遂を謀共の告が人負被いなはでのもうを共任責のてしと犯正同と 8 ったし、「く」なもでのもる進す促を欺詐のら者詳不名氏がにて記てし際う行を欺詐の載実、事訴公、がら者詳不名氏 絡が連が荷たし諾承を領受の物思点人告被、が」るあで否時でのお意ので点時のこ、りて、「っなに能不は起惹果結成   (為は……のら者詳不名氏、に事実事訴公)「ていつに件行ⅱのと正同共謀共、はのるな題み問、りおてれさ載記が犯

」。

◆名古屋高判平成二八年一一月九日

LEX/DB No. ((((((( 8

(以下「④高裁判決」)

  :破棄自判、有罪(懲役三年・執行猶予五年) なら、もで点時たけ受を頼か欺人頼依件本が人告被、「て詐依既は遂とこきべるみとたっあと険生結果発のの実的危現 詳び氏名不は者ら認識人及事告被、は実てういとたし送し得いたながたし、ず」え言もとっか識認が人般一、したっし ですべきるある」。そう礎とて基を情事たいし識認に特がすしとて、「を物荷のり入金現擬模発本相に察警が者害被件談 結為時のを果発生の可、行あちわなす。るできべるい用能性の認判者為行び及情た得し識事がっ人に当た断て、一般は た、はてっる当にえ考能不否犯の場合と同様の判断方法を成じれの問題状況にあと考えらるる上罪の犯記、らかるあで て遂犯としべも処罰す、未なかきべす罰処てしと犯遂未でき機は不同に的本基、と題の犯能問るけいすを分かる能を有 するれらえ考とるあでべき断判てっよにか否かるあがこ。られ不は、合場るれわ思と能可にか初当が生発果結で犯、単独 の因果性題といった問るはす対に果結、否成の罪犯考を時慮でた険危的実現の生発果結点したっ入に係関犯共、もて者   (っう的発後が生発果結、によ不の件本)「ていつに件事に可入にに係関犯共に後たっな能能可不、の合場たっなにⅱ

(14)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一〇七五一九 り」、「被告人が氏名不詳者らとの間で共謀したとみられれば、被告人に詐欺未遂罪の共謀共同正犯が成立しうる」。

  そして、本件事案に照らし、被告人は、詐欺罪の故意を有しつつ「本件の依頼を受け入れたのであるから、特殊詐欺による被害金を被告人らが受領し、本件依頼人らに渡すという役割を果たすことにつき、特殊詐欺の犯人である本件依頼人らと意思を通じ合ったものとみることができる ((

」。

」。をてしとのもたした果役少な要重に行遂の罪犯、割なたくるれらえ考と得りる当同と共謀共も正犯には あってこれを分担したので度れば、正犯者といえる程にじ合通すあるための重要な行為でり現、氏名不詳者らと意思を   「の等行実が為行領受、(は為よ領受の物荷……、にう行こかし実を取騙の物財、)もてた否い措ずまとひは点のかと

事例⑤【事実の概要】

  氏名不詳者は、被害者C(当時七八歳)に対し、E社のFを名乗って、D社の医療機関建設事業計画をでっちあげたうえで、「Cには、この医療施設の債権を買える権利があり、E社がお金を出すから、名義を貸してほしい」、「E社が、あなたの名義で一五〇〇万円の債権を購入しました」、「名義を借りたことがばれてしまいました。大変なことになりました」などとうそを言い、また、D社のGを名乗り、穏便に済ませるには、当社のお客様として登録してもらう必要があり、一口五〇万円かかるが、登録後、すぐにお金は戻る、などとうそを言い、Cにその旨を誤信させて、現金五〇万円を指定場所に送付するよう指示した。しかし、Cは警察に相談し、だまされたふり作戦が開始されたところ、その翌日、被告人は、連絡役であり、自身の先輩であるBから当該荷物の受領を依頼され、それを承諾し(報酬は不明)、当該偽装荷物を受け取った。

(15)

   同志社法学 七〇巻二号一〇八だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五二〇

【裁判所の判断】◆福岡地久留米支判平成二八年三月八日

LEX/DB No.25542899

(以下「⑤地裁判決」)

  :無罪   本件事実に照らし、面識のない者の自宅に、夜間一人で待機し、他人宛の荷物を受領するという、特異な受領形態であったことや、郵便配達員から知らない名前を告げられ、自身がその本人であると答えたことなどから、「郵便物の中身が、何らかの違法な行為に関わる物である可能性は当初から認識していたものと考えられる」。しかし、「詐欺の故意があるというためには、単に何らかの違法な行為に関わるという認識では足りず、少なくとも詐欺に関与するものかもしれないとの認識が必要である」。そして、上記事実は、詐欺被害に係る金員が入っている可能性を認識していたことを示すものとは言えない。

◆福岡高判平成二八年一二月二〇日

LEX/DB No. ((((((( 0

((

(以下、「⑤高裁判決」)

  :有罪(懲役二年)

」。はに人告被、「ず」らた当情少事の段特なうよるす除排は見ながくあできべういとたっある意のも詐欺と未的な故必 る当」であし。そて、「い相社適に念通会件がのるす価評本にをの』識認のといれしもかなも欺るて『詐いに関与すお っ行同、れさ解とのもたのあが識認の実事な分十要必が為し『いとたっあが』識認のとな詐れもかのもるす与関に欺に るの認段特、ばれあえさ』すう事いとるわ関に為行な法違の識情殊が面直に範規きに欺詐つ特、なな限りい本件のよう 詐とるれま含に然当が欺類殊特なうよの件本、はに型いうべ受為から何『きつに為行領件き本、てっがたし、りあでの   「行異を物荷ていおに況状な特領、にうよの為行領受件受す法様違るれさ定想常通らか態る為行なうよのそ、合場本

(16)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一〇九五二一 また、「組織の下位者に対し……暗に犯罪への協力を要請し、これを受けた当該下位者において、うすうす上位者の犯罪的な意図を察しつつ、ただ、面倒事を避けたいなどの心理から詳細を確認しないまま犯行に参画するという事態はまま見られるところであり、その場合でも相互利用補充関係ないしは実行犯に対する支配関係は認められるというべきであるから、共同正犯の一形態と評価し得る」。したがって、「直接の意思連絡があった被告人とBの間においてはもちろんのこと、Bを通じて、その背後にいる特殊詐欺グループの他の構成員らとの間においても、詐欺の共同正犯に係る共謀があったと認められる」。

  さらに、「本件詐欺の構造は、被害者を騙して現金を郵送させ、それを受領することによって既遂となるのであるから、本件受領行為は詐欺罪を構成するために不可欠な犯罪行為の一部である。本件では、……被告人は、本件受領行為を行った際には、未必的に詐欺の一端に加担することを認識・認容して、共謀の上行っているから、被告人の行為が類型的に見て構成要件を充足する危険性のあるものであると評価されれば、詐欺未遂罪の責任を負うというべきである」。もっとも、「被告人が共謀に加わったのが、本件荷物の発送後で、その荷物内には現金が入っていなかったことから、本件受領行為が本件詐欺における実行行為性を欠いており、未遂犯としての責任も負わないのではないか」が問題となるが、「そのような被告人の行為の危険性を判断し、未遂犯としての可罰性の有無を決するためには、いわゆる不能犯における判断手法により、当該行為の時点で、その場に置かれた一般通常人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事情を基礎として、当該行為の危険性の有無を判断するのが相当である」。「これを本件についてみると、被告人において被害者が騙されたふりをしているとの事情を認識していなかったのはもちろんのこと、その場に置かれた一般通常人にとっても、そのような事情はおよそ認識し得なかったといえるから、被害者が騙されたふりをしているとの事情は、行為の危険性を判断する際の基礎事情からは排除・捨象して考えるのが相当である」。そうすると、「被告人は、被

(17)

   同志社法学 七〇巻二号一一〇だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五二二

害者において騙されたが故に発送した本件荷物を受領したということになるから、被告人の本件受領行為に実行行為性を肯定することができ、未遂犯としての可罰性があることは明らかである」。

事例⑥【事実の概要】

  被告人は、知人から、報酬五〇〇〇円~一万円で荷物を受け取る仕事があるともちかけられ、以前よりそうした依頼を複数回引き受けていた。

  氏名不詳者は、被害者B(当時八四歳)に対し、必ず当たるロト6の特別抽選に選ばれた旨のうそを言い、特別抽選に参加するためには、E銀行に金を払わなければならないので現金を送付するように指示し、Bは、五〇万円および一〇〇万円を指定先に送付した。さらに、氏名不詳者は、Bに対し、「Bさんの一〇〇万円が間に合わなかったので、本当はしてはならないが、立て替えて一〇〇万円を私が払いました」、「Bさんじゃない人が送ったことがE銀行にばれてしまい、今回の特別抽選はなくなりました」、「不正があったので、E銀行に私とBさんで二九七万円の違約金を払わないといけなくなりました。違約金を払わないと今度の抽選にも参加できないので、半分の一五〇万円を準備できますか」などと告げた。Bは息子に相談し、詐欺であることが判明し、だまされたふり作戦が開始された。その後、再度、氏名不詳者がB方に電話をしてきたが、Bはだまされているふりをして、「何とか友人にお金を借りて一二〇万円は用意できました」などと言い、氏名不詳者は、さらに後の電話で、Bに対し、送付先、宛名、配達時間などを指示した。その後、被告人は、氏名不詳者による荷物の受領依頼を承諾し、その翌日、送付されてきた偽装荷物を受け取った。【裁判所の判断】

(18)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一一一五二三 ◆福岡地判平成二八年九月一二日

LEX/DB No. ((((( 8( (

((

(以下、「⑥地裁判決」)

  :無罪   被告人は、依頼されている仕事の内容などからして、「自身が受け取る荷物が……詐欺の被害金であるかもしれないという程度の認識は有していたものと認められるし、依頼する側も、被告人においてその程度の認識を抱くことは当然想定していたと考えられるから、〔氏名不詳者〕らが被告人に対して本件荷物の受取りを依頼し、被告人がそれを了承することにより、詐欺の共謀があったと認めることができる」。「そうすると、本件では、〔氏名不詳者〕(先行者)が詐欺の実行行為である欺罔行為を開始した後に、被告人(後行者)が〔氏名不詳者〕らに共謀加担したことになるが、そのような被告人に、詐欺未遂の共同正犯(いわゆる承継的共同正犯)の罪責を問うことができるかが問題となる」。

」。る共同正犯の成立を認め的こができると考えられると のち、そ成結果犯罪がを持し係関果因て対に果結の罪す立る継、と承、はに合場うよのそならがかう場合い想できる定 階いない段後で、行者して、了終が為行罪犯の欺詐だ未が行共を謀てっよにとこるす用利犯果先効加前の担者の行為の ていっよに係関果因、う財と領受の物たれさ付交びび及結のつす、らかるあでけ類罪犯る型立定成られた一段階を経て づ錯誤に基そく財物の交付の、で問に罪詐るなと題件い本、方一。る誤つ欺てに錯の者罔欺はるよ被れそ、為行罔欺、 なはありえ後いか、行ことらすぼ及を性果因にれそがが者れ共うあで同べういといなはとこき負てを犯とし正そに責任 先に既りよに為行の者行担の前か加謀共、とるすらじ生れたのこ為行くづ基にそや謀共者犯行後、はていつに果結罪と   「)罪(性果因てし対に果結犯与が犯、共は拠根罰処の犯寄)論べ犯共的果因(るあできるをれらめ求に点ういとつ持共   他方、「未遂犯の処罰根拠は……犯罪を決意した性格の危険性などではなく、当該犯罪の結果が生ずる危険性を発生させたという点」に求められ、したがって、「後行者である被告人が、詐欺の結果が生じる危険性を発生させることに

(19)

   同志社法学 七〇巻二号一一二だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五二四

ついて、何らかの因果性を及ぼした(寄与があった)といえるか否かが問題の核心である」。

」。当行為、詐欺の構成要件に該はす為るいはで)な行行実(為行 係が切断てされいる果こ関成因な要必に立の罪欺詐……はとで明人白っ取け受を物荷件本がた告、てっがたし。るあ被 しは成立荷ない」。本件欺罪場詐、はに合たれさ断切がの物は発誤送、くなのもくづ基にで錯行はる、「欺罔為に起因す 成て階め初て経をた段の定一れらけす立ずるのび果因でかれい間の階段各、りあでつ結領因て受という、果関係によっ に為、それ欺よる欺罔罔行ま欺、は罪詐、「たの」。るあ者被錯交の物誤たれさ付交び及付財の誤物、そ錯のに基づく財 あでの情事の前担加謀共る人告被、があでから明かがるいら負こでから明はとこいなわを、責罪が人告被てつにれそと   「たしっ行を為行罔欺件本て対おにB、は〕者詳不名氏てりせがさ生発を性険危るず生果、結の欺詐、てっよにれそ〔   もっとも、検察官の主張するように、「実行行為とは、……本件に即していえば、現金詐取という詐欺罪の構成要件的結果発生の現実的危険を有する行為」を意味し、「そして、構成要件的結果発生の現実的危険とは、必ずしも物理的・科学的な危険性を意味するものではなく、具体的状況下において、社会通念に照らして、その有無が判断されるべき危険性のことと解されるから、行為当時、行為者が特に認識した事情及び一般人に認識可能な事情を基礎とし、客観的な事後予測として犯罪の実現される危険性の有無を判断するのが相当である」と言える。しかし、当該危険性の判断において「一般人(もとよりその存在は危険性判断のために仮定したフィクションである)の認識という視点を取り入れるのは、……当該事案の具体的状況下において、社会通念に照らし、客観的な事後予測として危険性を判断するためであるから、そこで仮定すべき一般人は、犯人側の状況と共に、それに対応する被害者側の状況をも観察し得る一般人でなければならないはずである。そして、そのような一般人を前提とすれば、〔氏名不詳者〕がBに欺罔行為を行い、Bはそれによっていったんは錯誤に陥ったが、その後錯誤を脱し、むしろ警察官からの依頼に応じて犯人検挙のためにだま

(20)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一一三五二五 されたふりをすることにし、犯人を捕捉するために本件荷物を発送し、被告人はこれを受け取った、という事実経過を、特段の科学的知見などを用いることなく認識しうると考えられるのであり、その認識を基礎とすれば、被告人が本件荷物を受け取る行為は、……詐欺罪の結果発生の危険性を有しないものであるとの判断がなされることは明らかというべきである」。

」。をの罪遂未欺詐人犯告被上以るあ共、ととしいなさ許はれこてすと罪有る も当該犯罪定で想さまれでのくあ、くなはでもきべるいてるさ基法できべるれ討検てし礎とを観益侵害の性客的な危険 、は否成犯の罪き、しかし。るあ為行判者にれさ断てっよ面の観主の等格性でべ・的る社会的道義に非難を受けてしか 受荷物を偽け取る行為って空乗名を名で室き及、みらに非んと、はていつに根心な劣卑いだ行な識常がのそ、でのもく   「目のを割役のてしと子け受欺う詐、は人告被、りよと負こに認酬報、らがなし有を識のとといなれしもかるなにも

◆福岡高判平成二九年五月三一日

LEX/DB No. (((( 8(( (

((

(以下、「⑥高裁判決」)

  :破棄自判、有罪(懲役三年・執行猶予五年)   被告人は、知人の依頼により、空き部屋に送られてくる荷物を偽名で受領し、それを右知人に渡すという役割を引受けて報酬を約束され、現にそうした受領行為を行ったのであり、「かかる特異な依頼内容等に照らせば、被告人は、それが詐欺の被害金を受け取る役割である可能性を十分認識していたと認められるから、少なくとも未必的な故意に欠けるところはなく、受領の時点では本件共犯者との共謀が成立していたことも認定できる」。

  詐欺罪における財物交付の部分のみへの関与であっても、「先行する欺罔行為と相俟って、財産的損害の発生に寄与しうることは明らかである。また、詐欺罪における本質的な保護法益は個人の財産であって、欺罔行為はこれを直接侵

(21)

   同志社法学 七〇巻二号一一四だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五二六

害するものではなく、錯誤に陥った者から財物の交付を受ける点に、同罪の法益侵害性があるというべきである。そうすると、欺罔行為の終了後、財物交付の部分のみに関与した者についても、本質的法益の侵害について因果性を有する以上、詐欺罪の共犯と認めてよいし、その役割の重要度等に照らせば正犯性も肯定できる」。

  また、「本件では、被告人が加担した段階において、……未遂犯として処罰すべき法益侵害の危険性があったか否かが問題とされるところ、その判断に際しては、当該行為時点でその場に置かれた一般人が認識し得た事情と、行為者が特に認識していた事情とを基礎とすべきである。この点における危険性の判定は規範的観点から行われるものであるから、一般人が、その認識し得た事情に基づけば結果発生の不安感を抱くであろう場合には、法益侵害の危険性があるとして未遂犯の当罰性を肯定してよく」、原審のように、「敢えて被害者固有の事情まで観察し得るとの条件を付加する必然性は認められない」。「そうすると、本件で『騙されたふり作戦』が行われていることは一般人において認識し得ず、被告人ないし本件共犯者も認識していなかったから、これを法益侵害の危険性の判断に際しての基礎とすることは許されない。被告人が本件荷物を受領した行為を外形的に観察すれば、詐欺の既遂に至る現実的危険性があったということができる」。したがって、「被告人については詐欺未遂罪の共同正犯が成立する」。

◆最決平成二九年一二月一一日裁判所ウェブサイト ((

(以下、「⑥最高裁決定」)

  :上告棄却 為との戦作りふたれさま、る始すうそ。るいてし与関に開だい、行か欺件本の前功加のそ罔はわ人んかかにらず、被告 予と一体のも為のとして本定されていた件受領行為罔行欺ず、に、共犯者らと共謀の上本せ件詐欺を完遂する上で本件   「告共罔欺件本るよに者犯、人為きつに欺詐件本、は行被がが識認をとこたれさ始開作さりふたれさまだ、後たれ戦

(22)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一一五五二七 の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である」。

  二  下級審裁判例の分析   次頁の表は、これまで列挙してきた裁判例をまとめたものである。各裁判例は、受け子の罪責を検討するうえで、いかなる判断を下したものと分析できるであろうか。

  ⑴  無罪とした裁判例   結論として無罪を言い渡した裁判例のうち、③地裁判決、③高裁判決および⑤地裁判決は、被告人の故意を否定するものである。

  他方、無罪の理由として、故意以外の観点にも言及した裁判例に目を転じると、③地裁判決では、詐欺既遂の現実的危険という詐欺未遂の結果がすでに発生し終わった後の関与は、詐欺未遂の結果と因果関係を有することはないという点 ((

、④地裁判決では、結果惹起が不能になった時点以降の意思連絡は、詐欺行為を促進しないという点、⑥地裁判決では、結果惹起が不能になった後は、促進すべき因果性がすでに切断されている以上、被告人による受領行為は実行行為とは言えないという点、がそれぞれ指摘されている。こうした判示から分かるように、これらの裁判例は、詐欺罪における承継的共犯の成立や、受領行為の実行行為性を一般論として否定するものではない ((

。すなわち、若干その言い回しを異にするものの、要は、欺罔行為が看破された以上、その時点で詐欺未遂罪は「終了」しており、それ以降の関与について、承継的共犯が認められる余地はないという趣旨の判断であると解される ((

  確かに、因果的共犯論を前提にすれば、他の者による犯罪が終了した後にそれに関与したとしても、関与者に共犯としての責任を課すことはできない ((

。また、承継的共犯については、周知の通り、最決平成二四年一一月六日刑集六六巻一一号一二八一頁(以下、「平成二四年決定」)が、先行行為によって生じた傷害結果に後行行為が因果性を及ぼすこと

(23)

   同志社法学 七〇巻二号一一六だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五二八

表:各裁判例の異同

裁判所判決日 結果事案の経緯等(未必の)故意事後的共謀受領行為の実行行為性 詐欺罪の承継的共同正犯成立の余地 不能犯論の適用

札幌地判(8・1・8有罪(詳細不明) 氏名不詳者らの指示に応じたりして犯人側と意思を通じた。 (実行共同正犯) 欺罔行為と受領行為の一体性 (具体的危険説)

神戸地判(8・9・((有罪 ・現金手交型パチンコ屋で知り合った男からの依頼請求額300万円報酬不明(期待はしていた) (結論のみ) (故意の認定のみ) (実行共同正犯) 先行行為を利用する意 (具体的危険説)

名古屋地判(8・3・((無罪被告人は便利業に従事過去に複数回、同種依頼を承諾(報酬20005000/便通)請求額300万円報酬不明(被告人は1万円くらいと予想) ×警察官の忠告も具体的なものではない。被告人の無警戒な態度報酬の高さ(増額)には、「詐欺」に関わるものであるとの認識を直ちに導くものではない(異常なほど高いとも言えない) ×(故意なし) 留保(共謀共同正犯を検討) 未遂結果に因果性は及ばない。 × 名古屋高判(8・9・((無罪 ×(原審を是認) 留保(共謀共同正犯を検討) ○?(根拠不明) (具体的危険説)

名古屋地判(8・4・(8 有罪被告人はバイク便等に従事以前より報酬3~4万円で同種依頼を承諾・請求額 ⅰ100万円 ⅱ200万円・報酬4万円 複数回にわたる、空室での荷物の受取承諾通常よりも高額の報酬 (故意+意思連絡) (実行共同正犯) 詐欺に加担する意思

無罪 ×結果惹起が不能になっており、この時点での意思連絡は詐欺行為を促進しない。 留保(共謀共同正犯の検討) × 名古屋高判(8・((・9 有罪(故意+承諾) 留保(共謀共同正犯の検討) ○?(根拠不明) (具体的危険説)

(24)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一一七五二九 福岡地判(8・3・8無罪被告人と依頼人は後輩・先輩関係過去にも同種依頼があったかは不明請求額50万円・報酬不明 ×・特異な受領形態・名前の偽り・隠蔽何らかの犯罪に関わっているかもしれないとの認識あBUT以前から同様の受取をしていたのか不明・飛ばしの携帯の不使用・報酬の予定を示す証拠なし→詐欺の故意なし ×(故意なし) 福岡高判(8・(((0有罪 ・実母による忠告→特殊詐欺は念頭にあった (故意+暗に犯罪への協力要請+その意図を察しつつ承諾) (実行共同正犯) 不可欠な犯罪行為の一詐欺に加担することの認識・認容 (具体的危険説)

福岡地判(8・9・(( 無罪被告人は、知人より荷物の受取を行う仕事を紹介される。以前に複数回、同種依頼を承諾・請求額120万円・報酬5000円~1万円 ・以前より複数回の同種依頼・偽名の使用・高額な報酬・特殊詐欺の社会的認知 (故意+承諾+依頼側もその程度の認識を抱くことは当然想定していた) (実行共同正犯)BUT結果惹起が不能になった後は、促進すべき因果性が既に切断されている以上、受領行為は実行行為とは言えない。 ・先行行為の効果を利用・犯罪結果への因果性 (具体的危険説)被害者側の事情をも観察しうる一般人 →危険なし 福岡高判((・5・(( 有罪(故意+承諾) 本質的法益の侵害との因果性 (具体的危険説)

最決H((((((有罪 欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為 被告人にだまされたふり作戦の認識なし

(25)

   同志社法学 七〇巻二号一一八だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五三〇

はありえない点を重視した判断を下した。この平成二四年決定を前提にしつつ、未遂犯も一種の結果犯であり、欺罔行為によって未遂「結果」が生じ、被害者がそれを看破したことにより詐欺未遂罪が「終了」したと考えるのであれば、傷害結果と同様、当該未遂結果に受け子である後行者が因果性を及ぼすことはありえないとの帰結に至るであろう ((

  ⑵  有罪とした裁判例   他方で、下級審が無罪としたものも含めて、多数の裁判例では、故意および共謀の成立を認め、ほぼ一貫して有罪判決が言い渡されていることが分かる。後述のように、いかなる理由によるのかは必ずしも明らかではないが、詐欺罪における承継的共犯の成立が肯定され ((

、だまされたふり作戦により、結果発生が純客観的には不能となっていた点については、具体的危険説の立場から、だまされたふり作戦が開始されていたことを行為者は認識していなかったし、一般人も認識しえなかった以上、未遂犯の成立を基礎づける危険性は否定されないとの判断が示されている ((

  まず、承継的共犯について、平成二四年決定により、少なくとも傷害罪における承継的共犯の成立の余地は事実上封じられたに近いとの評価 ((

や、一般論として承継を認めないとの立場が判例において示されたとの評価も見られた ((

。そうしたなか、下級審とはいえ、だまされたふり作戦事案における裁判例が、受領行為を共謀のうえで分担すれば、「少なくとも共謀共同正犯には当たりうる」と判示したり、また実際に(実行ないし共謀)共同正犯として有罪を言い渡したりしているのは、「平成二四年決定が、承継的共犯に関する一般論として、それを全面的に否定する立場を示したわけではない」との理解の現れと言えよう ((

。もっとも、詐欺罪において承継的共犯が肯定されうる積極的な根拠は必ずしも明らかではない。①地裁判決では、欺罔行為と受領行為の一体性が強調されており、⑤高裁判決では、受領行為が詐欺罪を構成するために不可欠な犯罪行為の一部であって、詐欺の一端に加担することの認識・認容が被告人に認められることが指摘されている ((

。これらの裁判例は、一罪性や先行行為の認識・認容が認められる限りで承継を認める見解と親

(26)

   だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責同志社法学 七〇巻二号一一九五三一 和的であろう ((

。他方、②地裁判決では、「共犯者らのした欺罔行為を利用する意思」という表現が、⑥地裁判決では、「後行者が、共謀加担前の先行者の行為の効果を利用することによって犯罪の結果に対して因果関係を持ち…」という表現が用いられており ((

、これらの裁判例からは、承継を肯定する場面を限定しようとする見解が想起される。さらに、⑥高裁判決では、「欺罔行為の終了後、財物交付の部分のみに関与した者についても、本質的法益の侵害について因果性を有する以上、詐欺罪の共犯と認めてよい」との判断が示されている。こうした判示は、後述のように、一次的法益の侵害との間に因果関係があれば承継を認めてよいと説く、近時の有力説の影響を明らかに受けたものと思われる ((

  なお、受領行為が実行行為と言えるかどうかについて、それを肯定するものとしては、①地裁判決、②地裁判決、⑤高裁判決、⑥地裁判決をあげることができる。他方、⑥高裁判決においては、受領行為の実行行為性に関する判断は示されておらず、③地裁判決、③高裁判決、④地裁判決および④高裁判決は、その判断を留保し、共謀共同正犯の問題として検討がなされている ((

。もっとも、裁判例のうえで、受領行為の実行行為性と、承継的共犯に関する理論構成や不能犯論の適用の是非に関する判断との間に、何らかの対応関係を認めることはできないように思われる。

  次に、多数の裁判例は、具体的危険説に依拠し、「被害者が警察に相談して模擬現金入りの荷物を発送したという事実」を抽出したうえで、この事実は一般人も認識しえず、被告人も認識していなかった以上、危険性判断の基礎事情とすることはできないので、詐欺未遂を基礎づける危険性が認められるとの判断を示している。他方で、⑥地裁判決では、社会通念に照らした、客観的な事後予測としての危険性判断という観点から、具体的危険説において仮定されるべき一般人は、「被害者側の状況をも観察し得る一般人」でなければならないとされ、そうした一般人であれば、模擬現金を発送したという事実を含めた一連の事象経過を、特段の科学的知見などを用いることなく認識しうる以上、未遂処罰を基礎づける危険性は認められないと判示された。

(27)

   同志社法学 七〇巻二号一二〇だまされたふり作戦が行われた特殊詐欺事案における受け子の罪責五三二

  ⑶  検討されるべき論点   以上の裁判例の分析から、次の論点を導き出すことができる。第一に、一般的に、詐欺罪において承継的共犯が肯定されうるかが問題となる。平成二四年決定が示した因果性という観点を前提としてもなお、詐欺罪においては承継的共犯が認められると考える根拠は、必ずしも明らかではない。第二に、詐欺罪における承継的共犯が一般論として仮に認められるとしても、だまされたふり作戦事案においては、被害者が錯誤を脱し、偽装荷物が送付された時点で、当初は存在した詐欺既遂に至る危険性が消失し、詐欺未遂は「終了」している以上、承継的共犯を肯定する余地がないのではないかが問題となる。ここでは、「被害者が欺罔行為を看破していたとしても、不能犯の議論を適用して、なお未遂処罰を基礎づける危険性が認められる」との理論構成がそもそもありうるかが問われており、未遂犯を結果犯と理解することとの関係や、その是非も検討されうるだろう。なお、第一、第二の点について、受領行為の実行行為性を論じる意義があるかも確認される必要があろう。第三に、承継的共犯が一般的に認められ、だまされたふり作戦事案においては不能犯論を適用したうえで共同正犯の成否を論じるべきであるとしても、不能犯の成否の判断基準がなお問題となる。特に、同じ具体的危険説に依拠しながら、その判断の帰結を異にする裁判例が存在することは注目に値する。

Ⅲ  各論点の検討   下級審裁判例の判断に多少のばらつきが見られていたなか、⑥最高裁決定が登場するに至ったが、同決定は、事実を適示したうえでの事例判断の色彩が強い。そこで、以下では、まず、下級審裁判例の分析(Ⅱ二)によって導き出された三つの論点について、若干の検討を加えることとしたい。

参照

関連したドキュメント

︵逸信︶ 第十七巻  第十一號  三五九 第八十二號 ︐二七.. へ通 信︶ 第︸十・七巻  第㎝十一號   一二山ハ○

︵人 事︶ ﹁第二十一巻 第十號  三四九 第百二十九號 一九.. ︵會 皆︶ ︵震 告︶

 一六 三四〇 一九三 七五一九八一六九 六三

七圭四㍗四四七・犬 八・三 ︒        O        O        O 八〇七〇凸八四 九六︒︒﹇二六〇〇δ80叫〇六〇〇

一一 Z吾 垂五 七七〇 舞〇 七七〇 八OO 六八O 八六血

チ   モ   一   ル 三並 三六・七% 一〇丹ゑヅ蹄合殉一︑=一九一︑三二四入五・二%三五 パ ラ ジ ト 一  〃

期におけ る義経の笈掛け松伝承(注2)との関係で解説している。同書及び社 伝よ れば在3)、 ①宇多須神社

—Der Adressbuchschwindel und das Phänomen einer „ Täuschung trotz Behauptung der Wahrheit.