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植物の病傷害応答に関与する

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 和 久 田 真 司

学 位 論 文 題 名

植物の病傷害応答に関与するp −glucosidase の 酵素機能ならびに生理機能に関する研究

学位論文内容の要旨

  糖 質加 水分 解 酵素 撒多 様な 構 造や 機能 を持 つ糖 質 の代謝に関わ る.その主な生理機能の1っ とし て植物ホルモン配糖体の活性化が挙げられる.幾っかの植物ホルモン(abscisic acid,gibberellin, auxm c皿obnin,brassmost.er。id等)には配糖体が存在し、アグリコンとの相互変換はglucosyltransferase とp‐glucosidaseが担う ,シグナル物質の生合成に は数段階の酵素反応を必要と するが,配糖体は安 定な非活性体として貯蔵 され,必要に応じてp・glucosidaseによる一段の反応に より脱配糖化されて 活性体として供給される ,また,細胞内における活 ´陸化物質の濃度調整も担う と考えられている.

し か し な が ら , 植 物 ホ ル モ ン 配 糖 体pglucosidaseと し て の 機 能 は 未 知 の 部 分 が 多 い .   tuberomcacid(TA)お よびその配糖体(tuberonjcacidp_glucoside:TAG)は ,塊茎形成を誘導す る化 合物 とし て バレ イシ ョか ら 単離 され ,病 傷害 ス トレ スの 防御 応答 に 関与 する植物ホルモ ンの jasnlomcacidJA) から 合成 されるこ とが知られている.近年,TAはシロイヌナズナやトマト にお いてJA生 合成 ・ 代謝 関連 遺伝 子の発現 を調節することが報告され, バレイショ以外の植物にお いて も生 理機 能が 示 され た. 加え て,TAは 傷害時に傷害葉から非傷害葉 に輸送される.これらのこ とは TAの 輸 送 が 防 御 応 答 に お け る 重 要 な 機 能 を 担 う こ と を 示 唆し てい る. こ れま でTAからTAGを生 成す る酵 素は 同 定さ れて いる が ,TAGを分 解 してTAに 変換するpglucosidaseについては存在 すら 明ら かに され て いな かっ た. 本研究で はTAGplglucosidaseを同定し ,酵素機能および生理機能 を解 明することを目的とした.

1 TAGpglucosidaseの 精製

  TAGTAに 加 水 分 解 さ れ る こ と を 重 水 素 標 識 のTAG (TAG‑d5)を 用 い た 代 謝 実 験 で 明 ら か に し た . す な わ ち ,uLC‑MS/MSに よ りTAG‑d5処 理 し た 登 熟 期 の イ ネ で はTAG‑d5TA‑d5が 検出 さ れた ,

  次 に , 活 性 本 体 で あ るTAG p‑glucosidase (OsTAGG)を 精 製 し た .TAG加 水 分 解 活 性 は ,CM Sepharoseカ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー に よ り 低 濃 度NaClに 溶 出 す る 画 分OsTAGGlと高 濃度NaCl に 溶 出 す る 画 分OsTAGG2に 分 離 され た .前 者を5種 類の カラ ムク ロ マト グラ フイ ー に供 し, 精製 倍 率4300倍 でOsTAGGl 0.065 mgを 得た .ま た, 後者 を6種類のカラ ムクロマトグラフイーに供し , 精 製倍 率2800倍 でOsTAGG2 0.025 mgを 得た .

―1362―

(2)

2. TAGpーglucosidaseの 同 定

  OsTAGGlはSDS‑PAGEに よ り 分 離 さ れ る42 kDaお よ び25 kDaの2本 の ポ り ペ プ チ ド 鎖 か ら な り ,OsTAGG2は40kDaお よ び26kDaの2本 の ポ り ペ プ チ ド 鎖 か ら な る ,N末 端 ア ミ ノ 酸 配 列 解 析 お よ びpepndemassfhlgerp血 血 g解 析 の 結 果 ,OsTAGG1お よ び OsTAGG2は そ れ ぞ れ Os0490474900お よ びOs0490474800に コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 と 一 致 し た . ま た ,OsTAGGlお よ びOsTAGG2は そ れ ぞ れGり355お よ びGly359のN末 端 側 で 切 断 さ れ る こ と が 明 ら か に な っ た ,   0sTAGG1お よ びOsTAGG2の ア ミ ノ 酸 配 列 は85% 一 致 し ,glycosidchydrolasefarnjり1( (m1)に 属 す るp.glucosidascに お い て 保 存 性 が 高 い 領 域 が 認 め ら れ た . ま た ,OsTAGG1お よ ぴOsTAGG2は , GH1酵 素 の 触 媒 残 基 ( 一 般 酸 塩 基 触 媒 残 基 お よ び 求 核 触 媒 残 基 ) , す べ て のGHlの メ ン バ ー で 保 存 さ れ て い る グ リ コ ン と の 結 合 を 担 う ア ミ ノ 酸 残 基 も 保 存 さ れ て い た , 以 上 の こ と か ら ,0sTAGG1 お よ び OsTAGG2は ( m1に 属 す る 酵 素 群 の 共 通 構 造 を 有 す る こ と を 明 ら か に し た .

3. TAGp一glucosidaseの酵素機能解析

  OsTAGGlお よ びOsTAGG2の 基 質 特 異 性 を 調 べ る た め に , 種 々 の 配 糖 体(TAG,MeTAG,jasmonyl i‑p‑glucoside,salicylic acid glucoside,zeatin glucoside,linamarin,pNPp・glucoside,pNPp‐galactoside, pNpp‐mannoside, お よ びPNPp ̄cellobioside) に 対 す る 活 性 を 測 定 し た . そ の 結 果 ,OSTAGG1お よ びOsTAGG2は ,m岬p.glucosideに 対 し て 最 も 高 い 活 性 を 示 し た , 天 然 の 配 糖 体 で はTAGに 対 す る 活 性 が 最 も 高 か っ た .0sTAGG1のTAGに 対 す る 聡 は31.7叫 で あ り , 臨 ー は14.7岬101/min′mg で あ っ た . 一 方 ,OsTAGG2の 轟 は146uMで あ り , 臨 ‥ は38.0岬01/min/mgで あ っ た . こ の こ と から,OsTAGGlのTAGに対する親和性は0sTAGG2よりも高いことが明らかになった.

  OsTAGG1お よ びOsTA(iG2の 細 胞 内 局 在 性 を 解 析 し た と こ ろ , 両 酵 素 は 細 胞 膜 に 不 均 一 に 存 在 し た . ま た , 細 胞 質 に お い て 網 目 状 の シ グナ ル も 観 察 さ れた こ と か ら ,endoplasrnicrぬclnumにも 存 在 することが判明した.

4. 病 傷 害 応 答 に お け る JA,TAお よ び TAGの 代 謝 お よ び TAGp−glucos idaseの 生 理 機 能   TAお よ びTAGの 代 謝 お よ び 生 理 機 能 に 関 す る 知 見 は 少 な い , し か し ,JAと 同 様 に 病 傷 害 応 答 に 関 与 す る と 予 想 さ れ , 病 傷 害 ス ト レ ス に 対 す るJA,TAお よ びTAGの 内 生 量 の 変 化 を 解 析 し た .   傷 害 に 対 す るJA類 の 内 生 量 を 定 量 し た . 傷 害 後0.5時 間 でJAが 検 出 さ れ , そ の 内 生 量 は 傷 害 後 1時 間 で 最 大 と な っ た(3.29士0.66 nmol/g FW).ま た ,TAお よ ぴTAGの 内 生 量 を 調 ぺ た . 両 化 合 物 はJAが 減 少 す る に っ れ て 徐 々 に 蓄 積 し ,4時 間 後 にTAの 内 生 量 が 最 大 と な っ た(1.03士0.19 nmoUg FW).ま た , TAGは 8時 間 後 に 内 生 量 が 最 大 と な っ た (9.95士 0.41 nmol/g FW).

  い も ち 病 菌 接 種 に 対 す るJA類 の 内 生 量 を 定 量 し た . 胞 子 散 布 後 ,JAの 内 生 量 は 徐 カ に 増 加 し , 72時 間 後 に 最 大 と な っ た(0.16士0.018 nmol/g FW).ま た ,TAお よ びTAGの 内 生 量 に つ い て は , TAの 内 生 量 が 感 染 に よ り わ ず か に 上 昇 し ,TAGの 内 生 量 はJAと ほ ば 同 様 の 蓄 積 パ タ ー ン を 示 し た , 72時 間 後 にTAGの 内 生 量 が 最 大 と な っ た(4.49士0.77 nmol/g FW).

  さ ら に , 病 傷 害 ス ト レ ス に よ るOs TAGG1お よ びOs TAGG2の 転 写 産 物 へ の 影 響 を り ア ル タ イ ム PCRに よ っ て 解 析 し た . そ の 結 果 , 傷 害 時 のOs TAGG1の 発 現 は 傷 害 前 に 比 べ て 抑 制 さ れ ,Os TAGG2 の 発 現 は 誘 導 さ れ た . ま た , い も ち 病 菌 が 感 染 す る こ と に よ り ,Os TAGGお よ びOs TAGG2の 転 写

(3)

産物はいずれも徐々に増加することが明らかになった.

    

いもち病菌の感染により,Os TAGG1の発現が誘導されたことから,GUS染色による、いもち病 菌感 染によるイネ組織のOsTAGG1の発現を解析した.その結果,いも ち病菌の感染により,

OsTAGG1

は病斑付近の維管束で誘導されることが明らかになった,導管もしくは篩管で,TAが輸 送されることから,

OsTAGGl

は病害時に維管束細胞内でTAGを分解し,TAを木部もしくは師部 ーと輸送する働きを担うと推定された.

(4)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 客員教授 准 教 授 准 教 授 助教

松井 今井 松浦 森 佐分利

博和 亮三 英幸 春英

    

     学位論文 題名

植物の病傷害応答に関与する p ―glucosidase の 酵素機 能ならび に生理 機能に関する研究

  

本論 文 は, 図

44

, 表

16

,引 用文献

119

を含み,

4

章から なる総べー ジ

112

の和 文論 文 で ある . 別に 参 考論 文

2

編 が 添え ら れて い る 。

  

糖質加水分解酵素は多様な構造や機能を持つ糖質の代謝に関わる.その主な生理機能の

1

っとして植物ホルモン配糖体の活性化が挙げられる.幾っかの植物ホルモン(abscisic

acid

,gjbberellin,

auxin

,cytokinin,brassinosteroid等)には配糖体が存在し、アグ リコンとの相互変換は

glucosyl transferase

とp―glucosidaseが担う.シグナル物質の生 合成には数段階の酵素反応を必要とするが,配糖体は安定な非活性体として貯蔵され,必 要に応じてpーglucosidaseによる一段の反応により脱配糖化されて活性体として供給され る.また,細胞内における活性化物質の濃度調整も担うと考えられている.しかしながら,

植 物 ホ ル モ ン 配 糖 体

B

glucosidase

と し て の 機 能 は 未 知 の 部 分 が 多 い .

  tuberonic acid (TA)

およぴその配糖体(tuberonic acidp―glucoside:TAG)は,塊茎 形成を誘導する化合物としてバレイショから単離され,病傷害ストレスの防御応答に関与 する植物ホルモンの

jasmonicacid

(JA)から合成されることが知られている.近年,TA はシロイヌナズナやトマトにおいてJA生合成・代謝関連遺伝子の発現を調節することが報 告され,バレイショ以外の植物においても生理機能が示された.加えて,TAは傷害時に傷 害葉から非傷害葉に輸送される.これらのことは

TA

の輸送が防御応答に韜ける重要な機能 を担うことを示唆している.これまでTAからTAGを生成する酵素は同定されているが,TAG を分解してTAに変換する

p

−glucosidaseについては存在すら明らかにされていなかった.

本研究では

TAGp

−glucosidaseを同定し,酵素機能およぴ生理機能を解明することを目的 とした.

(5)

  

イ ネの 植 物 体内 に おい て

TAG

がTAに 加水 分 解さ れ る こと を 重水 素 標識の

TAG (TAG

一d5) を 用 い た代 謝実験で 明らかに した.続い て,活性 本体であ る

TAGp

―glucosidase (OsTAGG1 お よ ぴ

OsTAGG2)

を 精 製 し た .

OsTAGGl

お よ ぴ

OsTAGG2

は そ れ ぞ れ

Os0490474900

お よ ぴ

Os0490474800

に コードさ れるアミ ノ酸配列 と一致した :

OsTAGGl

はSDS−PAGEに より分離 さ れ る

42 kDa

お よ ぴ

25 kDa

2

本 の ポ り ベ プ チド 鎖 か らな り ,OsTAGG2は

40 kDa

お よ ぴ26

kDa

2

本 の ポり ベ プチ ド 鎖 から な る こと を 明ら か に した . また ,

OsTAGGl

およ ぴOsTAGG2 は そ れ ぞ れ

Gly355

韜 よ ぴ

Gly359

N

末 端 側 で 切 断 さ れ る こ と が 示 さ れ た ・

  OsTAGGl

お よ ぴ

OsTAGG2

の ア ミ ノ 酸 配 列 は

85%

一 致 し ,glycoside hydrolase family1

(GHl)

に属 す る

B

glucosidase

に お いて 保 存性 が 高 い領 域 が 認め ら れた.ま た,

OsTAGGl

お よ ぴ

OsTAGG2

は,

GH1

酵素の触 媒残基( 一般酸塩基 触媒残基 およぴ求 核触媒残 基),す べ て の

GH1

の メン バ ーで 保 存 され て いる グ リ コン と の結 合 を 担う ア ミ ノ酸 残 基も 保 存 され て い た . 以 上 の こと か ら ,

OsTAGGl

お よぴ

OsTAGG2

GH1

に 属 する 酵 素 群の 共 通構 造 を 有 することを明らかにした.

  OsTAGGl

お よぴ

OsTAGG2

の基 質 特 異性 を 調べ る た めに , 種々 の 配 糖体

(TAG

MeT

AG

jaSmony11

p

―gluCOSide,SaliCyliCaCidgluCOSide,ZeatingluCOSide,

1inamarin

,ANP

p

―glucoside,j心旧p−ga.lactoSide,j母mp−mannOSide,およぴj心PD−CellobioSide)に対 す る活性を 測定した .その結 果,0sTAGG1およ ぴ

0sTAGG2

は,p NPp−gluC0sideに対して最 も 高 い 活性 を示した .天然の 配糖体では

TAG

に対する 活性が最 も高かっ た.また ,0sTAGGl お よ ぴ

OsTAGG2

の 細 胞内 局 在 性を 解 析 したとこ ろ,両酵 素は細胞 膜に不均 一に存在 した.

ま た , 細胞 質におい て網目状 のシグナル も観察さ れたこと から,・

end6plasmicreticulum

に も 存 在 す る こ と が 判 明 し た . こ れ ら の こ とか ら ,

OsTAGG1

お よ びOsTAGG2は 細胞 内 で

TAG

.p−glucosidaseと.して機能すると考えられた.

  TA

お よ ぴ

TAG

の 代 謝お よ ぴ 生理 機 能 に関する 知見は少 ない.し かし,

JA

と 同様に病 傷害 応 答 に 関与 す る と予 想 され , 病 傷害 ス トレスに 対するJA,

TA

およびT.

AG

の内生量 の変化 を 解 析 した . そ の結 果 ,. 傷 害 に対 し て

JA

だけで なくTA,お よぴ

TAG

が蓄 積するこ とが明 ら か に な っ た . また , い もち 病 菌に 対 し てJAと 共に ,

TA

お よ び1、AGが蓄 積 す るこ と が 示 さ れ た . さ ら に, 病 傷 害ヌ ト レス に よ るぬ 弼 鯔お よ ぴ 飴弼

G

餾 の 転写 産 物 への 影 響 を 解 析 し た. そ の 結果 , 傷害 時 の 伽弼 謡

j

の 発現 は 傷 害前 に 比べ て 抑 制され, 仏鰯6偬の 発 現 は 誘 導さ れた.ま た,いも ち病菌が感 染するこ .とによ り,仏鰯 粥および 仏黝卿の 転写 産物はいずれも徐々に増加することが明らかになった.

  

い もち 病菌 の感染に より,伽 黝岱jの発現 が誘導さ れたこと から,

GUS

染 色による いもち 病 菌 感 染に よ る イネ 組 織の 飴 弼 簡の 発 現を 解 析 した . その 結 果 ,い もち病 菌の感染 によ り , 仏 弼闘 は 病 斑付 近 の維 管 束 で誘 導 され る こ とが 明 らか に な った .導管 もしくは 篩管 で ,

TA

が 輸送 されるこ とから,

0sTAGG1

は病害時に 維管東細 胞内でT AGを分解し ,TAを木 部もしくは師部へと輸送する働きを担うと推定された.

  

本 研究 に よ って ,

0sTAGGl

お よ ぴ

0sTAGG2

の 酵 素機 能 た らぴ に 生理 機能に 関する新 たな 知 見 が 得 ら れ た . さ ら に ,

0sTAGGl

お よ ぴ

OsTAGG2

TA

の 輸 送に 関 与 する 可 能性 を 見 出 し , イ ネ の 防 御 機 構 に お け る

OsTAGGl

お よぴ

0sTAGG2

の役 割 の 解明 に 大 きく 近 づぃ た と

(6)

いえる・

  

よって審査員一同は、和久田真司が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有する と認めた。

参照

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