博 士 ( 工 学 ) 中 野 道 王
学 位 論 文 題 名
予混合圧縮自着火燃焼の基本特性と
2 ストローク直噴エンジンヘの適用に関する研究 学位論文内容の要旨
石油 資源の枯渇や地球温暖化の進行が懸念される現代において,内燃機関の燃焼研究における重要 な目的は,(1)比出カの向上,(2)エミッションの改善,(3)熱効率の向上の三点に集約されると言え,今 後の内燃機関にはこられをいっそう高い次元でバランスさせることが求められている.そこで.高い 圧縮 比で希薄な予混合気を自着火 燃焼させることで,高い熱 効率の実現とともに煤やNOx排出を 抑制 できるHCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)燃焼が注目されているが,これまで の と こ ろ 自 動 車 用 内 燃 機 関 と し て 広 く 普 及 で き る 技 術 レ ベ ル に 達 し て い を い , そこ で,本研究では,単筒工ンジ ンと詳細を化学反応シミュ レーションを用いてHCCI燃焼の基本 的を 特性を明らかにし,その上で,HCCI燃焼を自動車用内燃機関に適用可能で実用的教コンセプト を提案し,以下の項目を達成することを目標とした,
・ HCCI燃焼により,既存の自動車用内燃機関レベルの最大トルクを実現
・その際,工ンジンから排出される煤およびNOxはほばゼロ
・熱効率は既存の自動車用ガソリン機関以上
・上記目標を市販燃料(本研究ではレギュラーガソリン)で実現
HCCI燃焼の実用化を検討する上で ,その基本特性を理解する ことは重要であるため.試験用4ス トローク単筒工ンジンを用いて,圧縮比,回転速度,当量比,燃料性状がHCCI燃焼の自着火時期。エ ミッ ションをどに及ばす影響を検討した,これより,HCCI燃焼の実用化に向けての課題は,次のよ うに集約された.
課題1:自着火時期の制御技術の確立 課題2:高負荷でのノッキング抑制
課題3:工ミッション低減(全域でのTHC,COと,高負荷でのNOx)
上記 の三つの課題を解決する手法 を検討するために,詳細を化学反応モデルを用いたsingle zone modelのHCCI燃 焼 シミ ュレ ーシ ョン を 構築し ,HCCI燃焼の基本的をメカ ニズムと自着火制御手 法の 検討を試みた.その結果,課 題1のHCCI燃焼の自着火時期制御に対しては,EGR(排気ガス再循 環)や混合気の温度を積極的に制御することで自着火時期の制御ができることを確認した.しかし,
課題2のノッキングの抑制に対す る有効な手段は見当たらず, とくに高負荷条件でのノッキング 発生 は自着火時の圧力上昇率の観点から本質的に解決が困難を現象である可能性が示唆された,ま た, 課題3の高負荷でのNOx低減に 対しては,EGR割合を増やす だけでは効果が小さいことが示さ れた.
さら に,詳細を化学反応を用いたシミュレーションと,単筒エンジン実験の結果を用いて,HCCI燃 焼の 自着火時期に対する低温酸化反応の影響を検討した,その結果,HCCI燃焼工ンジンのシリンダ 内の温度・圧力条件は,圧縮行程の後期に低温酸化反応の影響が顕著を条件に達するため,低温酸化 反応 機構を有するparaffinをどの 燃料をHCCI燃焼に用いた場 合の自着火時期は,低回転ではその 影響 を強く受け,高回転ではその影響をほとんど受けをいことが示唆された,このことは。HCCI燃 焼が 燃料性状にきわめて敏感であることを示すもので,エンジンシステムが具備すべき自着火時期 制御 手法には,地域や季節による燃料性状の差異にも対応可能を高い制御性が要求されると考えら れる.
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これらの基礎的な検討をもとに,本研究では,HCCI燃焼に関する三つの課題を解決するコンセプト と して,2ストロ ーク・ ガソリ ン直噴HCCI燃焼を提案した.2ストローク機関は4ストローク機関 に比べて燃焼回数がニ倍であることから平均有効圧カに対する軸トルクも二倍とをり,ノッキング やNOxが問題 とをら をい希 薄を混 合気に よるHCCI燃焼だけで高負荷に対応できる可能性がある,
また,2ストローク機関における残留ガスは,サイクルの性質により本質的に低負荷で多く高負荷で は少をい.そのため,着火性の低いガソリンを低負荷で自着火させる際には高温の残留ガスを大量に 導入でき,失火抑制の効果が期待できる.一方,出カを高める必要がある高負荷では,残留ガスを滅 少させることで自着火時期を遅らせノッキングを回避する効果が期待できる,本研究では,単筒工ン ジ ン に よ り2ス ト ロ ー ク ・ ガ ソ リ ン 直 噴HCCI燃 焼 を 実 現 し 。 以 下 の 結 果 を 得 た . (1)外部掃気ポンプとして用いた機械式過給機の回転速度により残留ガス割合を変化させることで.
負 荷(図 示平均 有効圧 カで約0.13〜0.55MPa)や回転速度(1000〜2000rpm)に関わらず最適を自着 火時期が容易に実現できる.
(2)図 示平均 有効圧 カの最高条件は4ストローク機関に換算すれば約l.lMPaとをり,この条件でも ノッキングは発生しをぃ.
(3)図示熟効率の最高値は回転速度に関わらず46%以上を実現できる,
(4)試 験 条 件全 域 でNOxは10ppm以 下とを り,NOx浄 化のた めの後 処理装 置を有 するこ とをく 排 気 規 制 を ク リ ア で き る 可 能 性 が あ る . ま た , ス モ ー ク は ほ ば ゼロ(FSN≦0.02)であ る . (5) THCは2000ppmC以 上 ,COは0.1% 以 上 排出 さ れ , 実用 化 に は 酸化 触 媒 が 必要 と を る . (6)始動直後を模擬した条件でも,エミッションや熱効率の悪化以外に大きを問題は見られをぃ.
こ れらの 結果よ り,本 研究で 提案した2ストロ ーク・ガソリン直噴HCCI燃焼エンジンは,HCCI燃 焼 の実用 化に対 する三 つの重要を課題をほば解決でき,また本研究の目標を実現するためのHCCI 燃 焼 エ ン ジ ン コ ン セ プ ト と し て 優 れ た 特 性 を 有 す る こ と が 確 認 さ れ た , さらに,実用化に向けた制御システムにおぃて検出または制御すべき物理量の特定を目指し,自着火 促 進効果 におけ る以下 のニつ の因子の 寄与を 詳細次 化学反 応モデ ルを用いることで検討した,
・高温の既燃ガスによる混合気温度の上昇
・ 残 留 ガ ス 中 に 含 ま れ る 反 応 性 の 高 い 反 応 中 間 生 成 物 に よ る 酸 化 反 応 の 促 進 そ の結果 ,2スト ローク ・ガソ リン直 噴HCCI燃焼工ンジンのように残留ガスによる自着火促進効 果 を利用 するHCCI燃 焼においては,実用化に向けた制御システムで検出または制御すべき物理量 は 混合気 の温度 であり ,成分としては02およびCOの濃度が重要であることが明らかにをった.ま た,反応性の高い反応中間生成物は,残留ガス中の濃度がきわめて低いために自着火時期にほとんど 影響しないことが示された,
以 上のよ うに, 本研究 で提案 した2ス トローク ・ガソリン直噴HCCI燃焼エンジンは,HCCI燃焼の 実用化に対する三つの重要を課題をほば解決でき,また本研究の目標の実現に向けて優れた基本特 性を有することが確認された,
しかしをがら,フリクションおよび掃気ポンプ駆動損失が正味熱効率と正味平均有効圧カに及ぼす 影響が課題であり,エンジン機構や流体解析の側面からの検討が必要である.また,THC,COの浄化 に対して触媒の適合を検討することも必要で,とくに排気温度が低い運転条件での酸化能カが課題 とをる可能性がある.さらに,高回転域での精密を自着火時期制御や,列型工ンジンにおける自着火 時期の気筒間差の抑制も必要にをると考えられる.
今後は,本研究で得られた知見をもとに,上記の残された課題を解決し,理想的を自動車用内燃機関 としての実用化を目指して研究を進めることが望まれる.
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
予混合圧縮自着火燃焼の基本特性と
2 ストローク直噴エンジンヘの適用に関する研究
石 油 資 源 枯 渇 や 地 球 温 暖 化 の 懸 念 か ら , 内 燃 機 関 の 燃 焼 研 究に お け る 課 題 は,(1)比出 カ の 向 上 ,(2)エ ミ ッ シ ョ ン の改 善 ,(3)熱 効率 の向上 の三点 に集約 され る.そ のため ,希薄 予混 合気を 高圧 縮 比 で 自 着 火 燃 焼 さ せ る こ と で 高 い 熱 効 率 を 実 現 す る と 同 時 に 煤 やNOx排 出 を 抑 制 で き るHCCI (Homogeneous Charge Compression Ignition)燃 焼 が 注 目さ れてい るが ,自動 車用内 燃機関 とし て普 及 できる 技術 レベル に達し ていを い.
本 論 文 は , 単 筒 エ ン ジ ン と 詳 細 を化 学 反 応 シ ミュ レ ー シ ョ ンを 用 い てHCCI燃 焼 の 基本 的 顔 特 性 を 明 ら か に し , そ の 上 でHCCI燃焼 を 自 動 車 用内 燃 機 関 に 適 用可 能 を 実 用 的コ ン セ プ ト を提 案 す る こ とを目 的と したも のであ る,
筆 者 は , ま ずHCCI燃 焼 の 基 本 特 性 を 明 ら か に す る た めに , 試 験 用4ス ト ロ ー ク 単 筒エ ン ジ ン を 用 いて, 圧縮 比,回 転速度 ,当量 比, 燃料性 状が自 着火時期,エミッション教どに及ばす影響を検討し,
実 用化に 対す る課題 を以下 の三点 に集 約した . 課題1:自 着火時 期の制 御技術 の確立 課題2:高 負荷で のノッ キング 抑制
課題3:エ ミッシ ョン低 減(全 域でのTHC,COと, 高負荷 でのNOx)
次 に , これ ら 三 つ の 課題 を 解 決 する 手法を 検討 するた めに, 詳細な 化学反 応モ デルを 用いたsingle zone modelのHCCI燃 焼 シ ミ ュレ ー シ ョ ン を構 築 し , 基 本的 を 燃 焼 メ カ ニズ ム と 自 着 火制 御 手 法 を 検 討 し た , その 結 果 , 課 題1の 自 着 火時 期制御 に対し ては,EGR( 排気 ガス再 循環) や混合 気の温 度を 制 御 す る こ との 有 効 性 を 確認 し た . し か し, 課 題2に つい て は,ノ ッキン グが自 着火 時の圧 力上昇 率 に 依 存 す る ため に , 高 負 荷運 転 で の ノ ッ キン グ の 抑 制 は本 質 的 に 解 決困 難 で あ るこ とを明 らかに し た . ま た , 課題3に 対 し ても ,NOx生 成 と 混 合 気 温度 の 関 係 か ら, 高 負 荷 で のNOx抑 制 が困 難 で あ る こ とを示 した .
さ ら に 。上 記 の ェ ン ジン 実 験 と シ ミュ レ ー シ ョ ンを 用 い て ,HCCI燃 焼 の自 着 火時 期に 対する 燃料 性 状の影 響に ついて ,反応 過程に 着目 した検 討を行 った, その結 果,paraffinをど の低温 酸化反応機構 を 有 す る 成 分の 特 異 を 挙 動が 明 ら か に を った . こ れ よ り,HCCI燃 焼 は 燃 料 性状 に きわめ て敏感 であ
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之 美
紀 修
英 武
晴
川 久
田 田
小 近
永 藤
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
り,実用化に際しては地域や季節による燃料性状の差異に対応できる自着火時期制御手法が必要で あることを示した.
これらの基礎的を検討をもとに,筆者は,HCCI燃焼に関する三つの課題を解決するコンセプトと して,2ストローク・ガソリン直噴HCCI燃焼を提案した.このコンセプトは,2ストローク機関の燃 焼回数が4ストローク機関に比べて二倍であることと,残留ガスをガソリンの自着火促進に応用す る ことに 着眼し て,ノ ッキン グやNOxが 問題と をらを い希薄 を混合 気によ るHCCI燃焼 だけで高 負荷まで運転することを目指したものである,この独創的コンセプトを単簡エンジンとして実現し,
以下の結果を得た.
(1)外部掃気ポンプとして用いた機械式過給機の回転速度によって最適を自着火時期が容易に実 現できる.
(2)最大図 示平均 有効圧 カは約0.55MPaであり,ノッキングを発生することなく4ストロークガ ソリン機関並のトルクを実現できる.
(3)図 示 熟 効 率 の 最 高 値 は 回 転 速 度 に 関 わ ら ず 46%以 上 を 実 現 で き る . く4) NOx排出濃度は10ppm以下であり触媒をしで排気規制をクリアできるレベルである,また,
ス モ ー ク はほ ば ゼ ロ(FSN≦0.02)で あ る. 但 し,THCは2000ppmC以上 ,COは0.1% 以上排 出さ れっ実用化には酸化触媒が必要とをる.
(5)始動直後を模擬した条件でも,工ミッションや熱効率の悪化以外に大きを問題は見られない.
(6)上 記 の エ ン ジ ン 陸 能 を , 市 販 の レ ギ ュ ラ ― ガ ソ リ ン で 達 成 で き る . さらに,残留ガスの自着火促進効果について詳細を化学反応モデルを用いて検討した結果‐残留ガ ス による 自着火 促進効果を利用するHCCI燃焼において制御すべき物理量は混合気の温度であり、
成分としては酸素およびCOの濃度が重要であることを明らかにした.また,反応性の高い反応中間 生成物は,残留ガス中の濃度がきわめて低いために自着火時期にほとんど影響し誼いことも明らか にした.
これを 要するに,筆者はHCCI燃焼の本質的な特性を実験と理論解析から明らかにし,その課題 と対策を明確にした上で,独創的を2ストローク・ガソリン直噴HCCI燃焼エンジンを提案し,その 性能評価を単筒エンジンにて実施した結果,自動車用内燃機関として優れた特性を有することを証 明したものである,このように,筆者はHCCI燃焼の実用化に向けた新たを知見を得たものであり.
内燃機関の発展に貢献するところ大をるものがある.よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位 を授与される資格あるものと認める,
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