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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 )    太 宰 昌 佳

学 位 論 文 題 名

Induction of antiviral activity enhanced by epigenetic     reactivation of IRF‑7

(エピジェネテイクな修飾によるIRF‑7 の再活性化に伴う抗ウイルス活性の検討)

学位論文内容の要旨

【 背 景 と 目 的 】HepatitisCvirus (HCV)感染 症 は, 世界 中 で約1億7000万 人 の患 者が い ると され て お り ,慢 性肝 炎 から 肝硬 変 と進 展し 最 終的 には 肝 臓癌に至 ることから,HCV感染症に対 する治療は社 会 的 に重 要な 問 題と なっ て いる .HCV感染 に 対す る自 然免疫応答の重 要性は広く知られ ており,ウイ ル ス が 細 胞 に 感 染 し た 際 に は , ウ イ ル スRNAは 細 胞 質 型 核 酸 認 識 受 容 体 で あ るretinoic acid‑induciblegene‐I(RIG ̄I)等 に認 識 され ,そ の下流にシグナ ルが伝達され,転 写因子である interferon.regulatoryfactor‐3(IRF.3冫nRF.7を介しInterferon(IFN)が発現誘導する,産生された IFNはIFNレ セ プ タ ー に 結 合 しJanu8kina8e(JAK) ーSignaltransducerandactivatorof tran8cripti.on(S1Wr)の系を介し,InterferonStimulatedgene8(ISGs)を誘導する.ISGsには直接的な 抗ウイルス作用を発揮する2|.5 ‐01igoadenylate8yntheta8e(2..5.OAS)や,Proteinkina8eR(PKR),

Myxoviru8re8i8tancegeneA(Mx苅な ど が良 く知 ら れており ,また,Vゆerin,ISG56,IFITMは特に抗 H( コV効 果を有するISG8であるとされてい る,また,IFN8の 転写に関与してい るIRF‐7は,IFNシグナ ル の 下流 で発 現 誘導 され るISG8であ る こと から ,IFN産 生に おい てP08itivefeedback機 構 を担 う自 然 免 疫応 答に お いて 重要 な 転写 因子 と して 認識 さ れている ,HCVに対 する抗ウイルス療 法は,従来の Interferon療法に始ま り,その後リバビ リンが併用される ようになり,さらに 現在はプロテアーゼ阻害 剤 が 加わ り治 療 効果 の改 善 が成 されている.しか しながら,耐性獲得 株の出現や治療難 治例の存在な ど の 問題 があ り ,現 在も 新 たな 局面からの治療法 の開発が必要とされ ている.近年,エ ピジェネティ ク ス に関 する 知 見が 積み 重 なり ,癌腫を始めとし た様々な疾患に関与 することが報告さ れている,慢 性 肝炎や肝細胞癌にお いても,異常なエ ピジェネティクス の修飾がおきている ことが報告されている,

エ ピ ジェ ネテ ィ クス の修 飾 機構 には , 主にDNAの メチ ル化とヒストン の修飾があり,遺 伝子のプロモ ー タ ー領 域のCpGislandに メチ ル 化が 起こ る こと で, その遺伝子の発 現が抑制される. 癌細胞では特 に 癌 抑制 遺伝 子 のDNAメチ ル化 修 飾が 起こ る こと で, 遺伝子の発現が 抑制され,遺伝子 が欠損した場 合 と 同 じ 状 態 に な る と 考え ら れて いる ー 近年 ,異 常 なDNAメチ ル化 に 対し ,DNAメチ ル 化酵 素阻 害 剤 が 臨床 に応 用 する 試み が 成さ れており,実臨床 ではすでに血液疾患 において使用され ている.過去 の 報 告に おい て ,慢 性炎 症 下で はエ ピ ジェ ネテ ィ クスな修 飾,特にDNAメチル化が促進 されることが 報 告 さ れ て お り , 加 え て,HCVを 含 む微 生物 由 来の 分子 に よる 直接 的 なDNAメチ ル化 の 作用 も示 唆 さ れ てい る. そ こで 今回 我 々は ,DNAのメ チ ル化 と感 染症という観点 から治療への応用 を検討するに 至 り , 慢 性HCV肝 炎 下 で はDNAメチ ル化 が 促進 する こ とで 自然 免 疫関 連遺 伝 子が 抑制 さ れて いる 可 能 性 と, その 場 合,DNAメ チル 化 酵素 阻害 剤 を用 いる ことで,抑制さ れた遺伝子の発現 を回復させ,

抗ウイルスに有効である可能性を検証するに至った.

【対象と方法】DNAメチル化酵素阻害剤は5.aza‐2 ‐deoxycytidine(5・aza・dC)を使用した.5.aza‐dC

−223ー

(2)

の 抗HCV効 果 をHCVレ プ リ コ ン 細 胞 :Huh7.5.1/Rep‑Feo‑lbを 用 い て 解 析 し た.HCVレ プ リ コ ン 複 製 量 はル シフ ェ ラー ゼ活 性 によ り測 定 し, 自然 免 疫関 連遺 伝 子の 発現はqRT‑PCR法を用いて解 析した DNAの メ チ ル 化 解 析 目 的 で , 各 種 ヒ ト 肝 細 胞 癌 由 来 の 細 胞 株 や 肝 細 胞 癌 組 織 検 体 に 対 し , Methylation‑specific PCR (MSP)と バ イサ ルフ ァ イト .パ イ ロシ ーケ ン ス法 を施 行 した .さ ら に 5‑aza‑dCに よ る 自 然 免 疫 の 活 性 化 を 調 べ る た め に , 肝 細 胞 癌 由 来 の 細 胞 株 に5‑aza‑dC処理 を 行 い ,3pRNAによ る核 酸 刺激 やNewcastle disease virus (NDV)を用いたウイ ルス感染の系を行い ,自然 免 疫 関連 遺伝 子 の発 現をqRT‑PCR法を 用い て 解析 した . また ,NDVF遺伝子 量を測定し,抗ウイ ルス効 果 を 確認 した .IRF‑7のIFNシグ ナル に 非依 存的 な 作用 を解 析 する ために,IFNシグナルの入ら なぃ細 胞 で あるStatl KO MEFsを 用い ,IRF‑7活性 化変 異 体発 現ベ ク ター をト ラ ンス フェ ク ションし ,ISGs の 発現誘導をqRT‑PCR法を用い て解析した.

【 結 果】 上記 の 仮説 を検 証 すべ く,5‑aza‑dCをHCV replicon細胞 に投 与 した とこ ろ ,replicon複製 量 の 減少 を認 め ,さ らに 複 数の 自然 免 疫関 連遺伝子の発 現が上昇していた .そこで、各ヒト肝 細胞癌 由 来 細胞 株に お いてDNAメ チル 化 を解 析し た とこ ろ、 幾 っか の細 胞株にお いて自然免疫の重要 な分子 で あ るIRF‑7のDNAメ チ ル 化 が 確 認 さ れ た , こ の 事 か ら ,IRF7が5‑asa‑dCに よ りDNAメ チ ル 化 が 解 除され,発現が回 復することで自然免 疫が活性化されて いる可能性が考え られた.肝細胞癌の 組織検 体 に お い て も ,15% 程 にIRF‑7のDNAメ チル 化が 存 在し た. こ れら の細 胞 株に おい て ,5‑aza‑dC処 理 を 行 う こ と でIRF‑7の 発 現 上 昇 が 可 能 で あ り , 核 酸 刺 激 後 やウ イル ス 感染 後のI型IFNsやIFN誘 導 遺伝子(ISGs);2 .5 OAS,PKR,Viperinの 発現誘導が増強した ,続いて,これら自然免疫の活性化 が 抗 ウ イ ル ス 効 果 を 示 す か ,RNAウイ ルス で あるNDVを 用い た 感染 実験 を 行っ たと こ ろ,5‑aza‑dC 処 理 によ ルウ イ ルス の複 製 量を 抑制 可 能で あっ た .さ らに , 抗ウ イルス目的でのIFN処理に5‑aza‑dC を 併 用す るこ と で, 抗ウイル ス効果を増強する ことが可能であった ことから,IFNシグナルに非 依存的 なISGsの 誘 導メ カニ ズ ムを 推察 しIRF‑7の機 能を 検 討し たと こ ろ,Stati KO MEFsに 活性 化 型IRF‑7 を 発 現さ せる こ とでISGsが 発現 誘導 さ れた ,これらより ,IFN投与 下においても5‑aza‑dCによりIRF‑7 の 発 現 を 回 復 さ せ る 意 義 が あ る もの と 考え られ , 抗HCV療法 にお い てIFNと5‑aza‑dCを併 用す る 有 用 性が示唆された.

【 考 察】 近年 , エピ ジェ ネ ティ クス の 修飾 を対象とした 薬物療法が,主に 癌腫を対象に進めら れてい る , 今回 我々 は ,エ ピジ ェ ネテ ィク ス の修 飾を 感 染症 の治 療 に生 かすという観点か ら検討した.HCV 慢 性 肝 炎 下 で はIRF‑7のDNAメ チ ル化 修 飾が 起き て いる 可能 性 が示 唆さ れ ,そ の場 合 ,5‑aza‑dC処 理 を 行う こと でIRF‑7を再活性化し,ISGsの誘導を含め自 然免疫応答の増強 が可能と考えられた .さら に はIFNに5‑aza‑dCを 併用 する 有 効性 を示 唆 する に至 っ た. 今後 の課題と しては,5‑aza‑dCに よる抗 HCV効 果 を さら に 普遍 的に 確 認す るべ く ,異 なるgenotypeの レ プリ コン 細 胞で の検 討 や, 由来 す る 細 胞 株 が 異 な る レ プ リ コ ン 細 胞 での 検 討, きら に 感染 実験 が 可能 なHCVウイ ル スで あるJFH‑1株 を 用 い た感 染実 験 を行 う必 要 があ る. ま た, 今回は肝細胞 癌の組織検体を用 いて検討したが,今 後は正 常 肝 や ,HCV慢 性 肝 炎 ( 非 肝 硬 変 / 肝 硬 変 ) 症 例 な ど 幅 広 い サン プル を 用い てIRF‑7のDNAメ チ ル 化 状 態を 検討 し ,ま た, 臨 床経 過と 照 らし 合わせること で治療への効果予 測因子になり得るか 等の検 討 が 必 要 で ある .近 年 ,HCVに対 するIFN治 療 効果 予測 因 子と して , ジェ ネテ ィ ック な解 析 でIL28B の 一 塩基 多型 が 有用 とさ れ てい るが , エピ ジェネティク スの観点からの解 析も今後有用となる 可能性 が あり大変興味深い ,

【 結 諭 】IRF‑7のDNAメ チ ル 化 修 飾 が 存 在 す る 場 合 , 従 来 のIFN療 法に 加 え5‑aza‑dCを併 用す る こ と で,抗HCVにおいて有効な治 療法になり得る可 能性が示された,

―224−

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

准 教授 准 教授 教 授 教 授

松本 森松 志田 坂本

学 位 論 文 題 名

美 佐子 組 子 壽 利 直 哉

Induction of antiviral activity enhanced by epigenetic     reactivation of IRF‑7

( エ ピ ジェ ネ テイ クな修 飾による IRF‑7 の 再活性化 に伴う抗 ウイル ス活性の 検討)

   本 研 究 は IRF ― 7 の DNA メ チ ル 化 に 着 目 し 、 DNA メ チ ル 化 酵 素 阻 害 剤 で あ る 5 −aza −2 ーdeoxycytidine (5 ーaza ―dC) を用いることでIRF ―7 の発現を回復し、C 型肝炎ウイルス (HCV) の抑制効果を示唆するに至った。

   学位審査は 4 名の審査員により非公開で行われ、申請者の発表後、質疑応答が行われた。森松 准教授よりIRF ―7DNA メチル化のメカニズムについて、また5 一 aza −dC 投与を終了後に予想される DNA メチル化の変化について質問がなされた。申請者は、現時点では特定の分子がDNA メチル化 されるメカニズムの詳細は解明されておらず、IRF − 7 も例外では無いこと、一方、ある特定の環 境下で発現が抑制された分子は、抑制状態が続くことで epigenetic な変化に至る点についてはコ ンセンサスが得られており、慢性炎症やHCV 感染によりIRF 一7 が抑制された状態が続き、メチル 化に至るプロセスは十分に考えられる旨を説明した。DNA メチル化は非可逆的な変化であり、一 旦解除された場合、メチル化を誘導する環境下に無い限りは、非DNA メチル化状態が維持される 旨を説明した。志田教授より Newcastle disease virus (NDV) の複製量を測定する際に、Fprotein 遺伝子量を用いた妥当性についての質問がなされた。申請者はin vitro でのNDV 感染実験におい て、F protein 遺伝子量と培地中のウイルス量に相関を認めた既報を用い、今回 Fprotein 遺伝 子量を計測した点、しかし、正確なNDV 複製量の検討を行う際には HAU の測定が必要と考えられ、

積極的に追加実験を検討する旨を述べた。また、IRF ―7 のDNA メチル化と癌化の関連性について、

IRF ー 7 の抗腫瘍効果の有無について質問がなされ、申請者はHepatitisBvirus (HBV) を背景とす るHCC 検体を用いた既報において、IRF ―7 のメチル化は非癌部に比して癌部で頻度が上昇したこ とから、癌化のプロセスにIRF ―7 メチル化が関わる可能性、 IRF ―7 の発現を回復させることで細 胞増殖が抑制された既報も鑑み、抗腫瘍効果を有する可能性を述べた。坂本教授より5 −aza ーdC の 効果に関し転写レベルでの検討について質問がなされ、申請者、DNA メチル化はプロモーター領 域における転写因子のりクルートに影響することから、 Luciferase assay 等の実験系の有用性を

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(4)

理 解 し 、 今 後 実 験 系 に 追 加 す る 旨 を 述 べ た 。 ま たHCC治 療 へ の 応 用 性 に つ い て も 質 問 が 成 さ れ 、 申 請 者 はIRF−7の 細 胞 増 殖 抑 制 効 果 の 既 報 も 鑑 み て 、 従 来 のIFN動 注 療 法 と の 併 用 等 に お い て 効 果 が 期 待 で き る 可 能 性 に つ い て 説 明 し た 。 さ ら にin vivoで5−aza−dCを 用 い た 実 験 系 の 可 能 性 に つ い て の 質 問 や 、IRF―7KOマ ウ ス を 用 い た 実 験 系 の 提 案 が 成 さ れ 、こ れ に対 し申 請 者は 、5―aza―dC は す で に 血 液 疾 患 で 臨 床 応 用 さ れ て お り 、 そ の 開 発 の 経 緯 か ら マ ウ ス で の 実 験 系 は 可 能 で あ る 点 と 、IRF―7KOマ ウ ス を 用 い た 実 験 系 に つ い て 積 極 的 に 考 慮 す る 旨 の 返 答 を 行 っ た 。 松 本 准 教 授 よ り5ーaza―dCを 用 い た 実 験 系 に お け るpositive controlの 必 要 性 に つ い て 提 案 が な さ れ 、 申 請 者 はpositive controlの 必 要 性 を 十 分 に 理 解 し 、 今 後 実 験 系 に 追 加 す る 旨 の 返 答 を 行 っ た 。 ま た IRF―7以 外 の 遺 伝 子 に 対 す る 検 討 、HCV以 外 の 微 生 物 に 対 す る 検 討 に つ い て 質 問 が な さ れ 、 申 請 者 はIRF‑7以 外 の 遺 伝 子 がDNAメ チ ル 化 修 飾 を 伴 う 可 能 性 は 十 分 に 考 え ら れ 、 今 後 、 解 析 対 象 を 広 げ る こ と で5−aza―dCの 応 用 範 囲 が 広 が る 可 能 性 、 ま たHCV以 外 に もHBV、 Epst ein―Barrvirus、 Helicobacterpylori等 に よ るDNAメ チ ル 化 促 進 の 報 告 が あ り 、 こ れ ら 微 生 物 へ の 応 用 も 十 分 検 討 可 能 で あ る 旨 を 述 べ た 。 最 後 にinvivoの 実 験 系 に つ い て の 質 問 が な さ れ 、 申 請 者 よ ル キ メ ラ マ ウ ス の 系 を 用 い た 検 討 が 考 え ら れ る 旨 の 説 明 が 成 さ れ た 。

  申 請 者 は す べ て の 質 問 に 対 し て そ の 主 旨 を 理 解 し 、 自 ら の 研 究 内 容 と 文 献 的 考 察 を 交 え て 適 切 に 回 答 し た 。 こ の 論 文 は 、 重 要 な 感 染 症 で あ るHCVの 治 療 に お い て 、 新 た にepigeneticsな 観 点 か ら の ア プ ロ ー チ で 検 討 し 、5ーazaーdCの 抗HCV効 果 と 、 さ ら に は イ ン タ ー フ ェ ロ ン と の 併 用 の 可 能 性 を 示 し た 点 で 高 く 評 価 さ れ 、 今 後 の 抗HCV治 療 の 開 発 に 寄 与 す る こ と が 期 待 さ れ る 。 審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 評 価 し 、 大 学 院 過 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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