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犬の腫瘍の悪性度における膜結合型

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 高 木    哲

学 位 論 文 題 名

犬の腫瘍の悪性度における膜結合型

マト リクスメタ ロプロテイナーゼ阻害因子RECK

(Reversion inducing cysteine rich protein with Kazal motifs)

発現の意義に関する研究 学位論文内容の要旨

  MMP( マ ト リ ク ス メ タ ロ プ ロ テ イ ナ ー ゼ ) は 細 胞 外 基 質 蛋 白 分 解 酵 素 の 総 称 で あ り 、 腫 瘍 細 胞 の 浸 潤 お よ び 転 移 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 。 特 に ゼ ラ チ ナ ー ゼ(IV型 コ ラ ゲ ナ ー ゼ ) で あ るMMP‑2お よ び MMP‑9の 活 性 が 高 い 腫 瘍 は 悪 性 傾 向 が 強 い と 考 え ら れ て い る 。   近 年 、 こ の2っ の 酵 素 の 分 泌 お よ び 活 性 化 を 阻 害 す るRECK (Reversion inducing cysteine rich protein with kazal motifs)が 発見 され 、癌 細胞 の浸 潤能 を低 下さ せる こ とが 明ら かとなっ た 。MMPは 血 管 新 生 に も 重 要 な 役 割 を は た し て お り 、 こ の 血 管 新 生 をRECKが 抑 制 す る こ と で 癌 の 成 長 を 抑 え る こ と が 明 ら か と な っ て い る 。 こ の 蛋 白 は 細 胞 膜 に 結 合 した 形で 存在 し、

ヒ ト で は 臨 床 例 を 用 い て い く っ か の 腫 瘍 で 予 後 指 標 と し て の 有 用 性 が 見 出 さ れ て い る 。 さ ら に 、RECKを 強 制 発 現 さ せ た 腫 瘍 細 胞 を マ ウ ス に 移 植 し た 実 験 で は 、 生 存 期 間 の 有 意 な 延 長 が認 めら れて いる 。

  一 方 、 犬 や 猫 の 自 然 発 生 腫 瘍 は ヒ ト 腫 瘍 の 動 物 モ デ ル と し て 最 近 注 目 を 集 め て い る が 、 犬 のRECKと 自 然 発 生 腫 瘍 症 例 の 予 後 と の 関 連 に っ い て は 未 だ 明 ら か に さ れ て い な い 。   そ こ で 、 本 研 究 の 第1章 で は 、 犬 のRECK mRNAの 発 現 と そ の 機 能 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 犬 のRECK遺 伝 子 を 解 析 し た 結 果 、 犬 のRECK cDNAの 翻 訳 領 域 の 長 さ は ヒ ト お よ び マ ウ ス と 同 様 に2,913 bpで 、 そ の 相 同 性 は そ れ ぞ れ92.5% と87.1% で あ り 、 翻 訳 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 は そ れ ぞ れ95.5% と91.9% と 非 常 に 高 い 相 同 性 を 示 し 、 そ の 特 徴 的 配 列 が よ く 保 存 さ れ て い る こ と が 分 か っ た 。 ま た 、 正 常 犬 各 臓 器 で のRECK mRNAの 発 現 量 を り ア ル タ イ ムPCR法 で 定 量 し た と こ ろ 、 ほ ば 全 組 織 に 発 現 が 認 め ら れ 、 特 に 肺 と 精 巣 で RECK mRNAの 発 現 量 が 多 か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は ヒ ト の 報 告 と ほ ば 一 致 し 、 犬 のRECKも 非 常 に 似 た 性 質 を 有 す る も の と 推 察 さ れ た 。 さ ら に 、 犬 腫 瘍 細 胞 株 に 犬 のRECKを 強 制 発 現 さ せ る こ と に よ り 腫 瘍 の 浸 潤 能 が 抑 制 さ れ る こ と が 確 認 さ れ 、 他 の 動 物 種 同 様 に 腫 瘍 の 浸 潤 お よ び 転 移 に 関 連 が 深 い 蛋 白 で あ る と 考 え ら れ た 。 以 上 の こ と か ら 、 犬 と ヒ ト で の 剛 弼Kの 病態 生理 学的 意義 は非 常に 似て いる もの と推 察さ れ た。

  次 い で 第2章 で は 、 腫 瘍 で の 剋r(XmRNA発 現 に つ い て 臨 床 検 体 お よ び 培 養 細 胞 を 用 い て そ の 腫 瘍 病 態 と の 関 連 を 明 ら か に す る 目 的 で 実 験 を 行 っ た 。 す な わ ち 、 自 然 発 生 腫 瘍 症 例 を

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用いてRECK mRNA 発現量を測定し、その臨床的諸指標と比較した。また、犬の腫瘍細胞株 を 用 い て RECK mRNA の 発 現 と MMP‑2 お よ ぴ MMP‑9 の 活 性 を 比 較 し た 。 36 症例 の 腫瘍 組織と正常組織での RECK mRNA 発現量を比較したところ、腫瘍組織では正常組織よりも発 現量が少なかった。臨床例の RECK mRNA 発現量と年齢、性別、リンパ節および肺転移の有 無などとの有意差は認められなかった。Log ‐ rank 検定による生存期間の評価では、魁;(X が 高値を示した群では有意に生存期間が延長していた。また、株化腫瘍細胞では骨肉腫以外は ほ と んど R 瓜 XmRNA の 発現 が認め られなかっ た。MMP 活 性は株化腫 瘍細胞の種 類によっ て異なるが、骨肉腫の肺高転移細胞は元の骨肉腫細胞と比較して RE (XmRNA 発現量は少な く、 MMP 活性は高くなっていた。

   第3 章では培 養腫瘍細胞 を用いて、 RECKmRNA 発 現量を低下させる要因を解明する目的 で実験を行った。そのため、剛rCKmRNA が高発現している培養細胞として株化骨肉腫細胞 に着目し、他の動物種でも犬と同様か否かを調べた。その結果、様々なマウスの腫瘍細胞株 と比 較して、 Dunn 骨肉 腫細胞のRE ( XmRNA 発現量 は有意に多かった。犬とマウスで株化 骨肉 腫細胞の剛 ℃ KmRNA 発現 量が他の腫 瘍細胞より も多かった ことから、 RE ( XmRNA 発 現量は腫瘍の種類によって異なると思われた。しかしながら一般的に骨肉腫は高率に肺転移 を生じる極めて悪性度の高い腫瘍であり、臨床例でほとんど発現がない症例も存在したこと から、生体内では RECK 発現が低くなっている可能性が示唆された。そのため、マウス移植 モデ ルを用いて 免疫染色を行った結果、加 vf0 りでは RECK 陽性であったが、加 vfm では陰 性であった。

   このことから何らかの刺激により剛ジ( X 発現が低下して細胞外基質を分解している可能 性が考えられた。このため、剛弼 KmRNA 発現量を低下させる因子について明らかにする目 的で、Dunn 骨肉腫細胞と基底膜構成成分であるマトリゲルとの接着刺激試験を行った。また、

同時に培養上清のゼラチナーゼ活性も測定した。その結果、マトリゲルとの接触刺激により R 灰XmRNA 発現 量低下と pro .MMP ‐ 9 分泌 の増加を認めた。さらにマトリゲル構成成分に 対する反応について調べたところ、主にラミニンがその働きをしていると思われた。RE (K mRNA 発現量を低下させる要因については明らかにされておらず、本実験の成果は骨肉腫の 腫瘍病態を明らかにする上で有用な成績であると思われた。

   以上 の結果をま とめると、犬の RECK は過去に報告されているヒトとマウスのRECK と非 常によく似たアミノ酸構造を有し、腫瘍の浸潤能を抑制することが確認された。また、ほと んどの腫瘍臨床例およぴ培養細胞で正常組織と比較してRE (X の発現が著しく低いか、認め られなかった。刷ヨ( XmRNA 発現量が多い症例では生存期間の延長が認められ、予後因子と して検討する価値があるものと推測された。また、骨肉腫細胞株は他と比較して発現が多く、

細胞外基質、特にラミニンとの接触によって発現の調整を受けている可能性が示唆された。

犬の腫瘍症例で生検材料が少量しか得られず、病理組織学的所見のみでは予後判定が困難な

症例 に遭遇した 際に補助的 指標として 剛 rCKmRNA 発現の評価は有用であると思われた。

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学位論文審査の要旨

主,査 副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

藤 永    徹 斉 藤 昌 之 落 合 謙 爾 奥 村 正 裕

学 位 論 文 題 名

     犬 の 腫 瘍 の 悪 性 度 に お け る 膜 結 合 型

   マ ト リ ク ス メ タ ロ プ ロ テ イ ナ ー ゼ 阻 害 因 子 RECK (Reversion inducing cysteine rich protein with Kazal motifs)      発 現 の 意 義 に 関 す る 研 究

   マトリ クスメタロプロテイナーゼ(MMP) は細胞外基質蛋白分解酵素の総称で、特 に MMP‑2 お よ ぴMMP‑9 の 活性 が高い腫 瘍は悪性傾 向が強いと 考えられて いる。近 年、このニつの酵素の分泌および活性化を阻害して腫瘍細胞の浸潤能を低下させる RECK が発見された。この蛋白は細胞膜に結合しており、ヒトでは腫瘍症例において 予後指標としての有用性が見出されている。一方、犬のRECK と腫瘍症例の予後との 関連については未だに明らかにされていない。申請者は、犬の腫瘍の悪性度に関する RECK の 発 現 調 節 と 臨 床 病 理 学 的 意 義 に 関 し て 検 討 し 、 以 下 の 成 績 を 得 た 。    まず、 正常犬のRECK 遺伝 子のcDNA クロー ニングを実施し、その特徴的配列が動 物種聞 でよく保存されていることを明らかにした。また、リアルタイムPCR 法によ る RECKmRNA の 定 量 法 を 確 立 し 、 正 常 組 織 で の 発 現 を 確 認 し た 。    次いで 、犬の自然発生症例の腫瘍組織のRECK mRNA 発現量を測定し、その臨床的 諸指標と比較した。その結果、腫瘍組織では正常組織よりもRE'CKm RNA 発現量が少 なく、RECK が高値を示した群では有意に生存期間が延長していた。また、株化腫瘍 細胞では骨肉腫のみが高い発現量を示すことを確認した。

   最後に 、培養骨肉腫細胞株を用いて、RECK mRNA 発現量を減少させる要因を解明

する目的で実験を行った。その結果、基底膜構成成分との接触刺激によりRE'CKmRNA

発現量 減少と前駆型MMP‑9 の分泌増加が生じることを確認し、主にラミニンがその

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働きをしていることを明らかにした。

   以上のように申請者は、犬の自然発生腫瘍の悪性度におけるRECK の分子生物学的

意義の解明に貢献し、犬の腫瘍症例の悪性度判定における補助的指標としての臨床病

理学的診断への応用に有用な基礎的知見を提供した。よって審査員一同は、上記博士

諭文提出者高木哲氏の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研究科規程第6 条の規定

による本研究科の行う博士論文の審査に合格と認めた。

参照

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