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博 士 ( 歯 学 ) 干 枝 喜 恵

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 干 枝 喜 恵

学 位 論 文 題 名

ヒ ト 口 腔 内 因 子 に よ る 潜 在 EB ウ イ ル ス の 活 性 化 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【目的】

  EBウ イル ス(EBV)はへ ル ペ スウ イ ル ス科 に 属 し, 既 感 染 者の 口 腔 内に し ばしば 排出さ れ つつ, 広くヒト に不顕 性持続感 染してい るきわ めて普遍 的なウイルスである。一方,EBV関連 ヒト悪性腫瘍であるバーキットリンパ腫は疫学的に著しい特徴を有し,いわゆるバーキットペル トと呼 ばれる赤 道アフ リカに多 発する。 このよ うなEBV普遍性とバーキットリンパ腫の局地多 発性 と い うgapか ら, 赤 道 アフ リ カ にはEBVの 発 癌活性 を促進す る環境 因子の存 在が想定 さ れる。近年,北大と京大の詳細な共同疫学調査により,バーキットリンパ腫集中域に一致して密 生する 特異的な植物種,Euphorbia tirucalliが見いだされた。この植物は民間薬として利用さ れ, ま た 周 辺土 壌 や 飲料 水 の 中に 本 植 物の 主 成分 である4・deoxyphorbol ester(4・DPE) が高濃 度に検出 される ことから ,4,DPEは 経口的に 地域住 民の体内 に摂取さ れてい るものと 考えら れる。さ らに,4・DPEは腫瘍 プ口モ ーターと しての 性質を有 している ことか ら,バ―

キットリンパ腫発生の重要な環境危険因子と考えられる。そこで今回このような環境因子に加え,

EBV活 性 化に 影 響 を及 ぼ す 生体 側 因 子の 検 索 を目 的とし て,主要 なEBV増殖部位 である口 腔 内 に 着 目 , 唾 液 中 に 存 在 し 単 独 あ る い は4DPEと 共 同し て 潜 在EBV活性 化 の 促進 に 働 く 口 腔内因子の同定とその性状解析を行った。

【材料と方法】

1.唾液:起床時採取した唾液を35,00g,30分間の遠心上清を,O.45肛mメンブレンフィルター によりろ過滅菌後,使用時まで―70℃に保存した。

2. 細 胞 :EBV関 連抗 原 の 発現 を 検 索す る た めの 細 胞 はバ ー キ ッ トリ ン パ 腫由来EBV非産 生 系 細 胞 株 で あ るRaji細胞 , バ ー キッ ト リ ンパ 腫 由 来EBV低許 容 性 細胞 株 で あるP3HR・1細 胞を使用した。

3. 堊 ニdeoxyphorbol ester(4DPE) :Euphorbia tirucalliの メタ ノ ー ル抽 出 液 を, シ リカゲ ルクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーで精製後,dimethylsulfoxide     ―109―

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(DMSO)に 溶 解 後,RPMI培地 で 希釈 し,40ng/縦 で使 用し た。

4.EBV抗 原 の 発 現 誘 導 と 検 出 :Raji細 胞 ,P3HR・1細 胞lxi06/ 紺 に4・DPE 40ng/ 棚とRPMI培地で希釈した唾液を50%,10%となる ように添加して37℃,2日間 培養を行った。

EBV抗 原 の 検 出 は 抗 早 期 抗 原(EA・DR), 抗 ウ イ ル ス カ プ シ ド 抗 原(VCA)モ ノ ク 口 ナ ー ル 抗体による螢光抗体染色法およびEBV抗体陽性ヒト血清を用いるウエスタンブ ロット法により EA,VCA発現 の 変化 を検 索し た。 唾液 成分 の分 画は遠心分離による限外ろ過,ゲルろ過 法に て行った。また唾液中の低級脂肪酸の検出はガスク口マトグラフィーにて行い,さらに各低級脂 肪 酸 の 検 出 は こ れ ら の 精 製 標 品 を 用 い て EA発 現 の 増 強 効 果 を 検 索 し た 。

【結果と考察】

1)唾液による早期抗原(EA)の増強効果

  未 処 理Raji細 胞 に お け るEA陽 性 細 胞 率 の0.2% と比 較 する と,Raji細胞 に4。DPE単独 添 加し た場 合は0.9%とわずかにEA発現の増強効果が認められたが,Raji細胞に唾液50% お よ び唾 液10%と4・DPEを 共存 して 添加 する と 著名 なEA発現 の増 強効 果が 認められた。ま た EBV未 感染 ,既 感 染に かか わら ず, 唾液 中に はEA発現の増強効果が認められた。さらに唾 液 単 独添 加で もEA発現 の誘 導が 認め られ る例 も あった。EBV発現の増強因子が持続的に唾液 中 に排出されているかど うかを検索するために,同一人物から起床時に連続して採取した唾液の EA発 現 の 増 強 効 果 を 検 索 す る と ,Raji細 胞 に4・DPE単 独 添 加 し た も の と 比 較 す る と4

‑ DPEと唾 液50% およ び唾 液10%を 共存 して 添加 した場合はいずれにおいても著名なEA発 現 の増強効果が認められた。このことより,本活性因子は,ほぼ常時口腔内に存在していることが 認 めら れた 。EAの他 にVCAの発 現の 増強 効果 にっ いて検索するためにバーキットリンパ腫 由 来 低 許 容 性 細 胞 株 で あ るP3 HR・1細 胞 を 使 用 し て 同 様 に 施 行 し た 。 その 結果 ,P3HR・1 細 胞 に4・DPE単 独 添 加 し た も の と 比 較 す ると ,4・DPEと 唾液10% およ び唾 液50%添 加し た もの はい ずれ にお いて も著 名なEA,VCA発 現の 著しい増強効果が認められた。またウエ ス タ ン ブ ロ ッ ト 法 に よ りEA発 現 の 誘 導 を 検 索し た結 果,Raji細 胞に4・DPEと 唾液50% を共 存 し て 添 加 し た レ ー ン に はEAバ ン ド が 検 出さ れ, 螢光 抗 体法 での 結果 と一 致し てい た。

2)唾液中のEBV活性因子の性状解析

  本活 性因 子の 性状 を解析するた めに口腔内洗浄前後の唾液のEA発現の増強効果を比較す る と ,洗 浄前 の唾 液は 洗浄後の唾液 と比較して著しいEA発現の増強効果が認められた。さら に フィルターを通さずに48時間インキュペートを行った唾液は,フィルターを通して48時間イン キ ュペ ート を行 った 唾液よりも著 名なEA発現の増強効果が認められた。これらのことより ,

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本活性因子は口腔内に長時間滞留している物質が関与しているものと示唆された。また,活性因 子 の 熟 感 受 性 に っ い て 検 索 す る と , 150℃ , 60分 で 失 活 す る 物 質 で あ っ た 。 3)唾液中の成分の分 画

  本活性因子の分子量を検索するために,唾液を限外ろ過法およびゲルろ過法により分離して,

Raji細 胞に4‑ DPEと 唾液50% を共 存し て 添加 し,EA発 現の 増強 効果 を検 索し た結果,分子 量3,000以 下の より 低分 子画 分に 存在 す る物 質に 著名 なEA発現 の増 強効 果が 認められた。

  以上の結果より本因子が低級脂肪酸に関与するものと着目し,唾液中の低級脂肪酸をガスクロ マ トグ ラフ ィー によ り分 離しその精製標品にっいてEA発現の増強効果にっ いて検索すると,

n・ 酪 酸 , イ ソ 吉 草 酸 , 凡 ・ 吉 草 酸 に 著 名 なEA発 現 の 増 強 効 果 が 認 め ら れ た 。

【結語】

1) 唾液 中に は4・DPE共 存下 にお いて ,潜 在EBV活性 化を 著し く増 強す る因 子が存在した。

この増強作用は未感染,既感染にかかわらず,すべてのヒト唾液中に認められ,また唾液単独で も認められる例が存在した。

2)熟非働化実験と限 外ろ過,ゲルろ過法による検討の結果,本活性因子は低級脂肪酸と考えら れた。

3)ガスクロマトグラフィーによ り唾液中に検出される6種の低級脂肪酸のうち,凡・酪酸,イ ソ吉草酸,凡・吉草酸にEBV活性の増強効果が認められた。

4)本活性因子は口腔 内に長時間滞留した全唾液中により多く含まれることから口腔内常在菌が 関与している可能性が示唆された。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    小 口 春 久 副 査    教 授    渡 邊 継 男 副 査    教 授    松 本    章 副 査    教授    大里外誉郎

  審査は,主査および副査全員の口頭試問により,研究目的ならびにその内容にっいて詳細に行 なわれた。

  EBウ イ ルス(EBV)は 広く 世 界中 のヒ トに 不顕 性持 続感 染し てい るき わめ て普 遍的 な ウイ     −・111―

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ルス である。一方,EBV関連腫瘍であるバーキットリンパ腫は赤道アフリカに 多発するが,同 地域 に生育する植物種,Euphorbia tirucalliに含まれる腫瘍プ口モーターで ある4・deoxy― phorbol ester(4・DPE)は, その 多彩 なEBV活性 化作 用か ら本 症発 生の 環境 危険 因子 と 考 えら れる。本研究はこの環境危険因子に加え,EBV活性化に影響を及ぼす生体 側因子の検索を 目的 とし て主 要な 増強 部位 であ る口腔内に着目,唾液中に存在し単独あるい は4・DPEと共同 して 潜在EBV活性化の 促進に働く口腔内因子の同定とその性状解析を行なった 。本学歯学部小 児歯 科外 来を 受診 した 小児10名 (男 児5名 ,女 児5名 )お よび健康成人4名( 男2名,女2名)

より起床時採取した全唾液を遠心およびろ過滅菌処理後,試料として用いて実験を行ない,次の ような結果を得た。

1. 唾液 中 には4−DPE共 存下 にお いて ,潜 在EBV活性 化を 著し く増 強す る因 子が 存在 した。

この因子は未感染,既感染にかかわらず,すべてのヒト唾液中に認められ,また唾液単独でも活 性が認められる例も存在した。

2.熱非働化実験お よび限外ろ過,ゲルろ過法により検討を行なった結果,本活性因子は低級脂 肪酸と考えられた。

3.ガスクロマトグ ラフィーによって唾液中に検出された6種類の低級脂肪酸のうち,n・酪酸,

イソ吉草酸にEBV活 性の増強作用が認められた。

4.本活性因子は口 腔内に長時間滞留した全唾液中により多く含まれていることから,口腔内常 在菌が関与している可能性が示唆された。

  以 上の成績は,ヒト口腔内に広く検出可能なEBV活性化因子の存在と,それ が口腔内常在菌 に関 与す る低 級脂 肪酸 の可 能性 に由来することを明らかにしている。本活性 因子が4.DPEの よう な環境因子と共存して作用することで,潜在EBV発現を著しく増強した結 果はバーキット リン パ腫の局地多発性を理解するうえで重要であ り,口腔内因子のEBV増殖促 進を通じ,本リ ンパ腫の顎部好発に関与している可能性が考え られる。

  以上のような学位申請者(論文提出者)からの説明にもとづいて,主査および副査から詳細な 質問がなされ,明確な回答が得られた。また,審査担当者から指摘された数多くの示唆に対して も,学位申請者は十分に理解した上で,端的に賛同し,将来における本研究の展望にっいても明 確な説明を行なった。

  本 研究は,歯科医学とウイルス学の共同した基 礎的研究として,EBVに関す る研究の発展に とど まらず,EBVの他 にもヒト口腔内に常在しているウイルスの活性化因子の 解明に大いに貢 献していくものであり,この点が高く評価され,審査の結果,審査担当者全員によって,本研究 の論文は博士(歯学)の学位授与に値するもの と認められた。

参照

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