博士(工学)羽場 学位論文題名
修
Synthese of Optically Active Poly(crown ether
)s
used Chiral Template and Chiral Initiating System in Cationic Cyclopolymerization, and the Chiral Recognition towards Amino Acids
(カチオン環化重合におけるキラルなテンプレ一卜およびキラルな開始系を 用いた光学活性ポリクラウンエ―テル類の合成とアミノ酸に対するキラル認識)
学位論文内容の要旨
高分子化合物の合成は、より高機能な、あるいは高性能な高分子材料を求めて研究開発 が行われているが、合目的性のある研究には分子設計と重合設計が基本となる。分子設計 は作川機備、あるいは要求物性に基づぃて行われる。重合設計は高分子の一次構造、二次 構造を制御するための重合手段の開発、即ち、重合制御法の開発である。高分子合成の分 野ではこのように高分子鎖を精密に構築する重合制御が重要な課題になっている。重合制 御では高分r ・鎖の屯体配置を制御する立体規則性重合が多くのモノマーについて確立され ているが、さらに高度な立体制御を要する不斉重合は確立された方法がまだ少ない。不斉 重合による高分チは光学活性であり、生体における分子認識のように不斉認識能の発現が 期待される。分ナ認識はホスト・ゲスト化学として関心を集めているが、重要なホストに クラウンエーテルがある。クラウンエーテルがもつ分子認識、不斉分割の機能は、これを 高 分 ナ 化 す る こ と に よ っ て 、 機 能 性 材 料 と し て 応 用 が さ ら に 広 が る 。
そこで、本論文では、これまで何
f究を進めてきた環化重合によるクラウンエーテルポ、lJ マーの合成法を用いて、これにキラルなテンプレートあるいはキラルな重合開始系を導入 して高分丁‑ 鎖を不斉制御する新たな不斉環化重合の開発と、それによる光学活性クラウン エーテ ルポリマ ーの合 成、およ び生成 ポリマーの不斉認識の高度化を目的として研究を 行った。
本論文は5 章から構成されている。
第1 章は膈論であり、本研究の背景および目的について述べた。
第2 やでは、まず、環化重合で形成されるクラウン環の新たな構造解析法を提示した。
ク ラ ウ ン エ ー テ ル の 分 チ 認 識 は 環 員 数 お よび 構成 要素 に 依存 する が、 ク ラウ ンエ ーテ ルポ リ マ ーで は‥・般 rトのある構 造解析法がなかった。そこで 、リビングカチオン龜合系 を用い て 、 環化fi1ヰア とfrd亠 の構 造を もつユニマーの合成法を開 発した。ユニマーの構造に ついて の 矢 ‖, 亠は その まま ポ1Jマ ーに 適川できた。次に、C2対称 軸をもたないピラノシドの テンプ レ ー トと して の適 よH´陀 を検 討 した 。4種の ピラ ノシ ドか ら ジビ ニル エー テル をそれ ぞれ導 き 、 環 化 爾 合 に よ っ て 光 学 活 性 ク ラ ウ ン エー テル ポ1Jマ ーを 合成 した 。 これ らの ポlJマー は ク ラ ウ ン 環 の 火 と 裏 で 性 質 が 貝 な る が 、 ア ミ ノ 酸 に 対 し て イ く 斉 認 識 能 を 示 し た 。
第3や で は 、 環 化 重 合 に よ る ク ラ ウ ン エ ー テ ル ポ ル マ ー の 環 の 込 み 合 い を 緩 和 し 、 分 チ認識能を向亅二させる 手段として、環化共重合に ついて倹討した。まず、1,2・ビス(2‑ビニ ロキ シエ トキ シ )ベ ンゼ ン(BVEB)と イソ ブチ ルビ ニ ルエ ーテ ル(1BVE)とのカ チオン亅辷爾合 を 試 み た 。iH NMRとIRに よ る 解 析 で は 、qニ 成 ポ リ マ ー に 残 行 二 亟 結 合 が 児 ら れ ず 、 BVEBは1BVEに よ っ て 分 子 内 環 化 をm害 さ れ る こ と な く 、 完 个 に 環 化 し 、 環 化 率100%で あ っ た 。 コ モ ノ マ ー が 環 化 を 阻 害 す る 通 常 の 環 化 共 重 合 と は 輿 な り 、 特 輿 で あ っ た。 さ ら に4稀 の モ ノ ビ ニ ル 化 合 物 を コ モ ノ マ ー に 用 い て 共 重 合し 、 生成 コポ ルマ ー の分 丁 認 識 能 を ア ル カ リ 金 属 イ オ ン 抽 出 に よ っ て 調 べ た 。 抽 出 能 は コ モ ノ マ ー に よ る 変 化 が見 ら れ 、 ス ベ サ ー の 嵩 高 さ が 関 係 し て い た 。 こ の 共 重 合 法 を キ ラ ル テ ン プ レ ー ト を 導 人し た 光学jオ ´1吐 ク ラウ ンエ ーテ ル ポリ マー にも 適用 し た。 コポ リマ ーの アミノ 酸に対する不斉 認 識 能 は IBVEの 組 成 の 増 加 と 共 に 向 上 し 、 ス ベ ー サ ー の 効 果 が 確 認 さ れ た 。
第4章 で は 、 キ ラ ル な ジ エ ポ キ シ ド の 環 化 重 合 に よ る キ ラ ル な 高 分 ナ 鎖 の 僻 築 と 、 キ ラ ル な テ ン プ レ ー ト に よ る 高 分 子 鎖 へ の 不 斉 誘 導 に つ い て 検 討 し た 。 キ ラ ル な ジ エ ポ キ シ ドは カ チオ ンお よび アニ オ ン重 合と もに 完 全に 環化 し、 環化 単 位は ジベ ンソ く19―クラウ ン ―6であ った 。 ポル マー はい ずれ も光学活 性であり、イく斎認識能を ′Jミした。CDスベクト ル の モ ル 楕 円 率 は カ チ オ ン 重 合 よ り も ァ ニ オ ン 重 合 に よ る ポ リ マ ー の 方 が 犬 き く 、 ア ニ オ ン 重 合 の 高 い 立 体 規 則 性 を 示 し 、 イ く 斉 認 識 能 も 大 き か っ た 。 こ れ から 高 分r鎖 の不 斉 による イく斉認識能の発現カミ確 認された。次に、1,1.−ビ‑2‑ナフトールから導いたジビニル エ ー テ ル の 環 化 重 合 に お け る キ ラ ル テ ン プ レ ー ト に よ る 不 斉 誘 導 に つ い て 詳 細 に 調 ぺ たdポ リマ ーの 環 化単 位に 相当 する (R,R)‑racemo、(S,S)‑racemo、mesoの3種 のモ デル化合 物 を 合 成 し 、 モ デ ル 化 合 物 と ポ リ マ ー のiH NMR、 旋 光 度 の 変 化 を 比 較 検 討 し た 。 そ の 結 果 、(R)‑体の ビナ フチ ルを キ ラル テン プレ ー トに 用い ると (R,R)‑racemo環化 単位 が形成さ れ 、(S)‑体から は(S,$‐環化単位が形成 していた。したがって、テン プレートのキラルなね じれが ポルマー主鎖ヘ転写される 不斉誘導の機構を提示した。
第5章 で は 、 キ ラ ル な 開 始 剤に よる ア キラ ルな ジビ ニ ルエ ーテ ルの 不斉 環 化霞 合、 即ち 、 エ ナ ン チ オ 選 択 重 合 を 試 み た 。 ポ ル マ ー の 活 性 末 端 に 開始 種が 強く 関与 す る1Jビン グ重 合 系と して 知ら れて い るプ ロト ン酸 ′塩 化 亜鉛 系開 始剤 を キラ ルな 開始 剤と し て転 用す るこ と を考案した。プロトン酸として(十).およぴ(‐) 10‑カンフブースルホン酸[(+)‑CSA、(りでSA] を用い、塩化亜鉛は塩化亜鉛 ―エーテル錯体を用いる改 良を加えた。1,2−ジビニロ キシベンゼ
ン(DVB)と べ ン ズ ァ ル デ ヒ ド ジ ピ ニ ル ア セ タ ー ル(BZA)を モ ノ マ ー と す る カ チ オ ン 重 合 に よ っ て 、 い ず れ の モ ノ マ ー か ら も 光 学 活 性 な ポ ル マ ー が 生 成 し た 。 特 に 、BZAの 重 合 で は ポ リマーの//J、r旋光度は(十)℃SAから,は‐30゜ 、(‐)‐CSAからは十24゜に達した。次に、ポリマーの 絶 対 配 越 を 明 ら か に す る た め に 、BZAか ら の ポ リ マ ー の 環 化 構 造 単 位 に 相 当 す る3種 の モ デ ル化合物(4S6$‐、(4R,6R)‐、およびく4RS65R)4,6‐ジメチル‐2‐フェニル―1,3゛ジオキサンを合 成し た 。そ の結 果、( 十)−CSAからは(S,のの環化単位 が形成し、(‐)‐CSAから は(R,駒 になるこ と が 判 明 し た 。 ア キ ラ ル な モ ノ マ ー か ら キ ラ ル な ポ リ マ ー の 合 成 が 不 斉 重 合 の 目 標 で あ り 、 環化重合で2例日となる エナンチオ選択重 合に成功した。
−612ー
学位論文審査の要旨
主 査 教 授
横 田 和 明 副 査 教 授
杉 野 目
浩 副 査 教 授
林
治 助
副 査 助 教授 覚知 豊次 (地 球環境 科学 研究 科)
学 位 論 文 題 名
Synthese of Optically Active Poly(crown ether)s used Chiral Template and Chiral Initiating System in Cationic Cyclopolymerization, and the Chiral Recognition towards Amino Acids
(カチオン環化重合におけるキラルなテンプレ一卜およびキラルな開始系を 用いた光学活性ポリクラウンエーテル類の合成とアミノ酸に対するキラル認識)
高分 子化合物の合成は、より高機能な、あるいは高性能な高分子材料を求めて研究開発 が行わ れているが、合目的性のある研究のためには重合制御による高分子鎖の精密な構築 が必要 であり、特に、高分子鎖の高度な立体制御を要する不斉重合が重要な課題になって いる。
本論文 は、環化重合によるクラウンエーテルポリマーの合成法を用いて、これにキラル なテンプ レートあるいはキラルな開始系を導入し高分子鎖を不斉制御する新たな不斉環化 重合法の 開発と、それによる光学活性クラウンエーテルポリマーの合成、および生成ポリ マ ー の 不 斉 認 識 能 の 高 度 化 を 目 的 と し た 研 究 の 結 果 を ま と め た も の で あ る 。
本論文は全5 章から構 成されている。
第1 章は序論であり、 本研究の背景および口的について述べている。
第2 章ではまず、クラウンエーテル環 の新たな構造解析法として、リピングカチオン重
合系を用い て環化重合単位に相当するユニマーを合成し、その構造の知見からポリマーの
環構造を確 定する方法を提案している。次にC2 対称軸をもたない4 種のピラノシドからジ
ピニルエー テルを導き、これを環化重合して合成した光学活性クラウンエーテルポリマー
がアミノ酸に対して不斉認識能を有することを見い出し、対称性をも烽スない、表と裏の性
質 が異 なる ピラ ノシ ド でも テン プレ ート とし て適 用で きる こと を明らか にしている。
第3章 で は 、 環 化 重 合 に よ っ て 合 成 し た ク ラ ウ ン エ ー テ ル ポ リ マ ー の 環 の込 み合 い を緩 和 し 、 分 子 認 識 能 を 向 上 さ せ る 手 段 と し て 、 環 化 共重 合に つい て検 討 して いる 。ま ず 、ジ ピ ニ ル モ ノ マ ー と し て1.2‑ピ ス(2‑ピ ニ ロ キ シ エ ト キシ ) ベン ゼン を用 い、4種 のモ ノ ピニ ル 化 合 物 と 共 重 合 し 、 生 成 コ ポ リ マ ー の 分 子 認 識 能を アル カリ 金属 イ オン の抽 出に よ って 調 べ 、 認 識 能 に お け る コ モ ノ マ ー の ス ペ ー サ ー 効 果を 見い 出し てい る 。次 いで 、こ の 共重 合 法 を 光 学 活 性 ク ラ ウ ン エ ー テ ル ポ リ マ ー に 適 用 し、 コポ リマ ーの ア ミノ 酸に 対す る 不斉 認 識 能 に も ス ベ ー サ ー が 有 効 に 作 用 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第4章 で は 、 キ ラ ル な ジ エ ポ キシ ドを 用 いた 環化 重合 によ る キラ ルな 高分 子 鎖の 構築 と、
キ ラ ル なテ ンプ レー ト を用 いた 高分 子鎖 へ の不 斉誘 導に つい て 検討 して いる 。 ジベ ンゾ‑19‑
ク ラ ウ ン毛 の環 化単 位 を形 成す るキ ラル な ジエ ポキ シド をカ チ オン およ びア ニ オン 重合 し、
ア ニ オ ン 重 合 に よ る ポ リ マ ー が カ チ オ ン 重 合 よ り も 高 い立 体 規則 性を 有し 、 不斉 認識 能も 高いことを認め 、不斉な高分子鎖による不斉 認識能の発現を達成してい る。次にl.l.・ビ‑2‑ナ フ ト ー ル か ら 導 い た ジ ビ ニ ル エ ー テ ル の 環 化 重 合 に お ける 不 斉誘 導に つい て 、環 化モ デル 化 合 物 の 合 成 と 不 斉 認 識 能 の 関 係 を 調 ベ 、 テ ン プ レ ー トの キ ラル なね じれ が ポリ マー 主鎖 ヘ転写され不斉 が発現する機構を実証してい る。
第5章 で は 、 キ ラ ル な 開 始 剤に よる ア キラ ルな ジピ ニル エ ーテ ルの 不斉 環化 重 合、 即ち 、 エ ナ ン チ オ 選 択 重 合 を 試 み て い る 。 リ ビ ン グ カ チ オ ン重 合 開始 剤の プロ ドン 酸 /塩 化亜 鉛 系に(十)およ び(ー)‑10‑カンファースルホン酸〔(十)−CSA,(‑)‑CSA)をプロトン酸として用 い 、 キラ ルな 開始 剤系 と して 、1.2‑ジ ビ ニロ キシ ロベ ンゼ ン とべ ンズ ァル デヒ ド ジピ ニル ア セ タ ー ル の カ チ オ ン 環 化 重 合 を 行 い 、 光 学 活 性 ポ リ マー の 合成 に成 功し てい る 。ポ リマ ー の環化単位に相 当するモデル化合物を合成し 、(十)‑CSAからは(S,S)‑racemo、(ー)‑CSAから は (R, R)‑racemoの 環 化 単 位 が 形 成 さ れ る エ ナ ン チ オ 選 択 重 合 に 成 功 し て い る 。 こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 高 分 子 鎖 の 高 度 な 立 体 制 御 を要 する 不斉 環 化重 合に つい て 高分 子 合 成 上 有 益 な 新 知 覚 を 得 た も の で あ り 、 高 分 子 化 学 およ び高 分子 材 料化 学の 進歩 に 貢献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。
よ っ て 著 者 は 、 北海 道大 学博 士( 工 学) の学 位を 授与 さ れる 資格 ある 者 と認 める 。