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デフォルトリスクのあるタームストラクチャー

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(1)デフォルトリスクのあるタームストラクチャー 森. 1. 田. 洋*. ブは,国債の価格体系から推計されるイールド. はじめに. カーブと比較するとはるかに高い水準に位置し デフォルト,すなわち債務者の債務不履行に. ている.この事実に対する最も自然な解釈は,. 閲し,ここ数年の間,過去のデータの整備,発. デフォルトリスクがスワップレートに反映され. 生確率の推計,そしてクレデイツトスブレッド. ていることである.国債が政府の発行するデフ. に対する派生商品の開発等様々な角度から数量 的なアプローチがなされ,システマテイツクな. ォルトフリーな債券であるのに射し,スワップ 取引は民間金融機関等の間で交わされる取引で. 分析が行われている.このように債務者のデフ. ある.スワップレートのインプライする長短各. ォルトに対する意識が高まっているのは,. 90. 金利にデフォルトリスクが反映されていない限. 年代に入って日本経済が長期的に低落傾向に入. りすくなくとも理論的にはリスクレスな裁定の. り,それと同時にデフォルトの発生件数が増え. 機会が存在してしまう1).裁定からフリーな金. たことが一つの背景となっている.実際にデフ. 利体系となるためには,デフォルトリスクに対. ォルトの発生件数が増加すれば,デフォルトリ スクの管理が金融機関にとって急務となること. 応するスプレッド分だけ国債,スワップ取引2. は必至である.. が生じなくてはいけない.. もちろん純粋に理論的見地からは,デフォル. つのインプライするイールドカーブの水準に差 このようなことからここ数年の間,理論的あ. トリスクが存在する様々な金融取引が活発に行. るいは実証的にデフォルトリスクを分析する動. われていさえすればデフォルトリスクに対する. きが活発になっている.もちろんデフォルトリ. 分析の必要性が生じる.例えば金融機関にとっ. スクが存在するタームストラクチャーを分析す. て重要な金融取引の一つ,固定金利と変動金利 を交換するスワップ取引から観測されるスワッ. るためには,そのベースとしてデフォルトフリ. プレートはデフォルトリスクなしに説明するこ. 利リスクの分析が大前提となることはいうまで. とが難しい.. もない.ここ数年の間デフォルトフリーなター. スワップレートから換算されるイールドカー. ーなタームストラクチャーの分析すなわち,金. ムストラクチャーの分野において多くの成果が あがっていることも,デフォルトリスクの意義 ある研究成果があがってきた理由である.. *. この論文は-一昨年5月末に日本格付け情報セン ターにおいて行われた投資理論研究会における 発表を加筆修正したものである。この研究会で は故青山護氏から多くの有益なコメントをもら. デフォルトリスクを分析するとき,債券の残 存期間は重要な影響を及ぼすと考えられる.倭. った。ここに深く感謝したい.. 生する確率が高くなる.このためデフォルトフ. 券の残存が長ければ長いほど,デフォルトが発.

(2) デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田 リーな債券金利に上乗せされるクレデイツトス. (213). 洋). 77. 論の出発点として1期間モデルの上でクレデイ. ブレッドと残存期間には一定の関係が存在す. ツトスブレッドをとらえてみる.次に最も単純. る.債券を運用している投資家にとって,運用. な枠組みにおいて多期間モデルの特徴を浮き彫. している債券の残存期間がどの程度なのかとい. りにし,いかなる困難が多期間モデルの構築に. うことを把握しない限りポートフォリオにおけ. 対して待ち受けているのかを明らかにする.つ. る適切な信用リスクの管理ができない.. づいてこの困難に対して現時点ではどのような. この論文では,デフォルトリスクの存在する. 工夫が行われているのかを説明する.次にデフ. 債券を対象とした金利の期間構造に関するここ. ォルト発生に対するアプローチの仕方からアプ. 最近の重要な研究を単純な枠組みの上で整理し 比較する.デフォルトリスクの存在するターム. ローチを2つのタイプに分類し,各々の節で各 債券モデルの説明を行う.最後に現時点でのデ. ストラクチャーの分析は,株式等の証券と違っ. フォルトリスクのあるタームストラクチャー理. てデフォルトの発生時点にリスクが存在し,キ. 論の方向性について言及し本論文を終える.. ャッシュフローのみならず,その発生時点まで もにリスクが存在する割引公式によって求めな くてはいけない.この特徴により生じるモデル. 2 2.I. 多期間モデルの構築. 1期間モデルにおけるクレデイツトスブ レッド. 構築の困難に対し,これをうまく処理した研究. この節では,デフォルトリスクのある多期間. 成果がここ最近になって登場している.この論. 文では最も単純な理論的枠組み,危険中立的,. モデルの構築にはどのような困難があるかを明. 離散時間の枠組みを中心に据えて,デフォルト. 確にするために,議論の出発点としてまず1期. リスクに対する各アプローチの特徴を明確にし. 間モデルを説明する.簡単化の仮定として,マ. ていくことを第一の目的とする.ここまでのデ. ーケットの投資家は危険中立的であるとする. 1期間は具体的には1年と考えてもよい.すな. フォルトリスクの理論的分・析はア-ビトレージ フリーの条件を利用して行われている.このた め例えば,金利リスクおよび信用リスク各リス. わち債券の残存期間は具体的には1年と考えれ ばよい.. デフォルトの問題を注意深く扱うために確率. クのリスクプライスおよびリスク発生の確率過 程の定式化には高い自由度がある.だが逆にそ. 空間は一般的な形のままとして,これを(n,. の自由度はア-ビトレージフリーという比較的 弱い条件故のものであり,均衡理論の枠組みで. F,. 信用リスクを見直した場合にその定式化が理論. る.. Q)で表すとしよう.. nは基本事象の集合. で数学的な問題を回避するために有限集合とす. 的に問題のないものかどうかというと別の問題. Fは情報構造を表す6集合体で一般性を失 うことなくnのすべての部分集合で構成されて. である.例えば金利リスクと信用リスクを独立. いる集合体とする.. に与えていいかどうかという間置は実証上重要. 6集合体,. Fの要素としてデフォルトに関す. な論点ではあるが,理論的にも果たしてその独. るイベントを表す集合βが存在することにす. 立性がいかなる条件下で妥当と考えていいかど. る.すなわちβは1期間後にデフォルトが発. うかを明らかにする必要がある.このような観. 生するというイベントを表す集合である.. 点にたつと現時点で豊富となった既存の信用リ. 額面が1の債券の価格を求めてみよう.. 1期. スクの理論的分析を可能な限り共通の枠組みを. 間後にデフォルトが発生したときに債券保有者. 利用して整理することは,今後の研究に対しそ. にわたる債券一枚あたりのキャッシュを確率変 数d(w)(w∈n)で表すことにしよう.当然. の方向性を探る意味で重要と考えられる. 本論分の構成は以下のとおりである.まず議. のことながらデフォルトが発生しなければ額面.

(3) 78. (214). 横浜経営研究. 全額が回収できるのでこの確率変数は次の符号 条件を持つ.. 第ⅩⅩ巻 第3号(1999). ツトスブレッドを連続時間複利表現でqとす B-e-(r+q)という等式が成 立するようにqを定義する.このとき(2)式よ る.すなわち,. ≦l. if a)∈D. =l. if a)∈E2/D. d(a)). り, q. となる.. マーケットの投資家が危険中立的であるとい う仮定の下では,投資家は期待収益率のもっと. (3). -. -1n(E[d]). となる.すなわちクレデイツトスブレッドには. も高い資産に資金の全額を投入しようとする.. 0≦ 回収額の期待値が直接的に反映される. ∂≦1であるから,回収額の期待値が高ければ. したがって,すべての資産がマーケットで過不. 高いほど,その値は上限の1に近づくので,右. 足なく保有されるためには,いずれの資産の期. 辺の対数の値は0に近づきクレデイツトスブレ. 待収益率も同一でなくてはいけない.したがっ て資産市場が均衡しているとき,その必要条件. ッドは0に近づく.逆に回収額の期待値が0に 近づけば近づくほどスプレッドは高い値をとる. として任意の危険資産の期待収益率が安全資産. ことになることがわかる.. より単純なケースとして,特に仮に回収不能. の収益率つまりリスクフリーレートと同一であ るという条件が得られる.これを上記の社債に. となる金額がデフォルト時において常に一定の. 適用すると,次の等式が得られる.. 金額1-〟. (0<〟≦1)である場合,すなわ. ち,. 旦坦=l+R. り-. β. d(w)-1-M∀w∈D. すなわち債券価格は次の等式を満たす.. の場合には,. (2)式における回収不能額の期待. 値は,. B-去・E[d] ⊥_ 1+R. F:[・ -:i] 1+R. E[d] -差d(a). (2). -∑In/D・l+ID・(1-M) a)∈f2. 債券価格はこの時点で2通りの見方を与えるこ. -I-∑Q(のP4. とができる.最初の等式は債券価格がデフォル. a)ED. トフリーな債券,具体的には国債の価格に額面. -. (4). 1-M・Q(D). 1円あたりの回収額の期待値を掛け合わせたも. となり,この場合のクレデイツトスブレッド. のであることを表している.また2番目の等式. は,. は,債券価格は国債の価格から回収不能となる 金額1-d-の割引現在価値を差し引いたものと してとらえることができる.. 債券の場合,価格もさることながら,利回り. q-. -ln(1-M・. Q(D)). (5). となり,先述の一般的ケースでのクレデイツト. スブレッドの性質がより単純な形で確認でき. 表現を使うことが多い.そこで連続時間複利表. る.すなわちクレデイツトスブレッドはデフォ. 現で債券価格を表現しなおしてみよう.リスク. ルト時の回収不能額およびデフォルト確率のご く簡単な関数となっていて,いずれのパラメー. フリーレートの連続時間複利をrとしよう.す なわちr-1n(1+R)である.またデフォル トフリーな債券との利回り格差であるクレデイ. タの値が増えてもクレデイツトスブレッドが増 加するという性質を得ることができる.特に.

(4) デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田 〟-1の場合にはクレデイツトスブレッドはデ. (215). 洋). 79. オルトが発生するというイベントを表す集合で ある.時点2においてデフォルトを起こす場合,. フォルトを起こさない確率を対数変換したもの として得ることができる.. 当然時点1ではデフォルトが発生していないの. 通常1期間モデルが実際的なモデルの利用に. で,定義より上の2つの集合はβ1∩β2-¢と. おいて意味が生じてくるのは,経済の各パラメ. いう関係を満たす.満期が時点2の債券を考え. ータあるいはその証券の確率過程が一種の定常 性を満たしているような場合であろう.だが債. るとき,この債券がデフォルトを起こさずに満 期を迎えるというイベントはn\(DlnD2)で. 券が分析の対象となる場合,満期が存在しない. 表現される.. 額面が1で満期が時点2の割引債の価格を表. コンソル債という特殊な債券を除いて,債券価 格やクレデイツトスブレッドが定常性を満たす. してみよう.引き続きマーケットの投資家は危. という必然性はない.. 険中立的であるとする.時点1,時点2の各時 点でデフォルトを起こしたときに回収される金. また,債券の残存期間とクレデイツトスブレ. (i-1,2)としよう・こ. ッドとの関係が資金連用において重要な役割を. 額をdi(w),. 果たす場合には,. の確率変数は1期間モデルと同様に次の不等式. 1期間モデルはそのモデルの. 構造上,投資家のリスク管理に対して具体的な. W∈Di,. 条件を満たさなくてはいけない.. 指針を与えることはできない.債券の残存期間. al∈Di, (i-1,2) 0≦di(a))≦1,. を明示的に導入するためには期間が2期間以上. (6). 仮に現在が時点1にあるとして,債券がデフ. となる多期間モデルが必要となる. このように1期間モデルには複数の理由で限. ォルトを起こしていなかったとしよう.したが. 界が存在する.次の節では多期間モデルとして 最も単純な2期間モデルの枠組みで,多期間モ. って現在の状態はw∈fl\Dlという状態にあ る.マーケットが均衡するとき,債券の期待収. デルが1期間モデルと決定的に違う重要な特徴. 益率はリスクフリーレートと等しいので,現在. を説明することにしよう.. の債券価格は1期間モデルと同様の論理で次の 等式を満たすことになる.. 2.2. デフォルト発生時点に関する不確実性 Bl-. 一多期間モデルのもつ重要な特徴一 1, 2iで表 時点は3つの時点から集合!0, すことにする.. ・1 A. ・d2.Io、D.uD2 E[ID2 1+R. i;]. E[Intquq 竺』土也. ・Ml]. 1期間モデルの場合と同様に,. I+R. 確率空間を(fl,F,. I+R. nはここで Q)と表す. も有限集合としよう.またFもflのすべての部. 時点0においても同じように次の式を得ること. 分集合で構成されているとする.時間の経過と. ができる.. ともに開示されていく情報をfilteration lFi :. i. 0,1,2iによって表す.各時点iにおける情報. -. Bo1+R. I+R. (8). は6集合体Fiで表されている.当然のことな がら時間とともに情報が増加していくので,. ㌔. ⊆Fl⊆F2が成立する・一般性を失うことなく F.ifl,れF2-Fとしよう・ 6集合体, Fの要素としてデフォルトに関す るイベントを表す集合β" β2が存在すること にする・ D,・, (i- 1,2)は時点fにおいてデフ. (7)式を(8)式に代入することによって最終的に 時点0における債券の評価式を次のように得る ことができる..

(5) 80. (216). Bo-. 横浜経営研究. 第ⅩⅩ巻. 吐上_ E[[l; :j・-[I ]]. 第3号(1999) えなくてはいけない.. -.I.・/二l・. 1+R. (1+R)2. Bo-E. ・. E[In、。 F]] ・E[IovD.uD2) ・l. (1+R)2. 受け取るキャッシュフロー. [. 但しrはいわゆるstopping. (1+良)丁 timeで. 塾』.三』』 1+R. (1+R)2. 丁-‡2l oth:i:le. ] E[In、D.uD, ∑. WED.. と定義される.このように,時間が明示的に導 入された動学的なモデルにおいて債券価格を求. dl(a・) Q(‡a,)). めること,またそれによってタームストラクチ. 1+R. ャーを理論的に分析することの難しさの一つ. ∑のED2 Q((a,))d2(a,). は,デフォルトが発生する時点にリスクが存在 することにある.例えば優良企業の株式を例に (9). とると,実現するキャッシュフローの大小にリ スクが存在するものの,それが発生する時点に リスクは存在しない.これに対し,デフォルト. (9)式に対する直感的解釈は容易である.右辺. リスクにさらされる債券は,キャッシュフロー. 勢1項の分子は時点1においてデフォルトが発 生したときの期待収益額,第2項の分子は時点. の大小にリスクがあるのみならず,その発生時 点までにもリスクが存在する.この点が通常の. 2においてデフォルトが発生したときの期待収. 危険資産のプライシングと決定的に異なる点で. 益額,そして第3項の分子がデフォルトを起こ. ある3).このようなことから,デフォルトリス. さなかったときの期待収益額である.したがっ. クのあるタームストラクチャーを分析する際に. て債券価値は将来発生するキャッシュフローの 期待値を現在価値に割り引いて戻したものとい. はどうしてもデフォルトの発生時点そのものに. う他の危険資産とまったく同じ形で与えられる. 存在するタームストラクチャーのモデリング. こととなる.. は,デフォルト発生のリスクを実際の発生に近. だが期待収益額を現在価値に戻す際注意しな くてはいけないのはデフォルトが時点1で発生. リスクがあることが要求される.信用リスクの. い形としながらも,それをいかに解析的に扱い. やすく導入するかが重要な問題となる.. したときには割引は1期間分のみという点であ る.このため,債券の満期が2期間残っている からといって,. βo=. 受け取るキャッシュフロー の期待値 (1+R)2. 2.3. 境界条件のエ夫によるモデルの簡素化. 前節で説明したように,多期間の枠組みにお いてクレデイツトスブレッドの理論値を求めよ うとした場合,デフォルトが発生する時点その (10). ものにリスクが存在することが大きなハードル となる.これに対し債券のデフォルトの特徴を. という表現にすることができない.これがデフ. 限定することで,解析的には確率分布の特性に. ォルトリスクにさらされる証券のもつ最も重要 な点である.あえて(10)式のような表現に近い. 大きな影響を受けずに債券価格の形をある程度. 表現を与えようとするのであれば次の表現を与. 夫をすることは実は金利リスクを導入するな. 明らかにすることが可能である.このような工.

(6) デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. ∑. ど,より複雑で実際的な分析を行う際には重要. weD.. となる.ここではここ最近の研究でとられてい. 洋). (217). 81. Q(a,)dl(a,). 謀諒w;.Q'o' ご諒Q(Dl). 1+R. る工夫を前節の枠組みで整理してみよう.. (12). デフォルトが発生したときに債券保有者が受 け取るキャシュが同一満期の国債の現在価値で ある場合を考えてみよう.デフォルト時におい. で表される.同じように時点2で発生するデフ. てこのような支払いをする債券の場合,その価 格の決定においてデフォルト発生がどの時点と. ォルトに関するキャッシュフローの割引現在価 値を求めてみよう.時点2でデフォルトが発生. なるかというリスクに関する計算を回避するこ. したときには,債券保有者の受け取るものは,. とができるという便利な性質がある.このよう. 1-Lとなる.したがって時点2で発生するデ. な債券はLongstaff ユarrow. -. Turnbull. -. Schwartz. (1995)や. (1995)において取り上げ. フォルトに関する部分の時点0で評価した現在 価値ば,. ∑. られている.. OED,. 先述の枠組みを利用してこのタイプの債券の. Q(a,)d2(a,) (1+R)2. 価格のもつ性質を調べてみよう.投資家が危険. '13'. 中立的なときには,社債の均衡価格は将来発生 するキャッシュフローをリスクフリーレートで. 期間分だけ割り引いた割引現在価値の期待値と なる.デフォルト時において債券保有者に対す. 吉諒去Q(a) &Q(D2). となる.以上より時点0における債券の理論価 格は,. る支払いは,当該債券の額面1に対して,より 少ない額面のデフォルトフリーな債券あるいは. Bo. -. その現在価値に相当するキャッシュである.こ. Q(Dl)・諾諒・Q(D2)・諾. のデフォルトフリーな債券の額面金額を当該債 券の額面1に対して1-L(0<_L<1)で表す. (14) ・(1-Q(Dl)-Q(D2))て珂×1. 1. こととしよう.時点1においてデフォルトが発 生したときには,債券保有者が受け取るものは. となる.注意深い読者はすぐに気づかれると思. 額面1あたり,. うが, (14)式右辺において,. dl(0)-誌oEDl. 1期間後, 2期間 後いずれの時点でデフォルトが起きても,債券 (ll). の価値を持つデフォルトフリーな債券あるいは. の現在価値の構成要素は,その時点でデフォル. トが発生する確率と左右の積となっている. それ相当のキャッシュとなる.よって時点1で. このような形となるのはデフォルト発生時点如 何に関わらず常に受け取るキャッシュの将来価. 発生するデフォルトに関する部分の時点0で評. 値が満期時点で同一の11Lとなっているから. 価したキャッシュフローの割引現在価値は危険. である.この点に注意して更に式を整理すると. 中立性を仮定したわれわれの枠組みにおいて. (15)式が得られる.. は, Bo. -Q(DI. UD2)・E寿.

(7) 82. 横浜経営研究. (218). 第)Ⅸ巻. 1. 第3号(1999). ト処理が妥当であるとするならば,デフォルト. +(1-Q(D.uD2))・(I+R)2. 発生確率に関しては自由度が非常に高いので, (15'. 既存の研究では採用されていないその他の確率. 百毒[l-Q(DIUD2)・L]. 過程の場合にクレデイツトスブレッドカーブが. したがって社債の価格は発生時点がいつであれ. どのような挙動を示すかも明らかにしていくべ. とにかくデフォルトが発生する確率とパラメー. きであろう.. タLおよびリスクフリーレートによって表すこ. デフォルトが発生すると,債権者のキャッシ. とができる.以上は残存2年の債券を例にとっ. ュフローがデフォルトを起こさなかった場合と. ての説明であったが,. 比較して,その一定比率分の価値を失うという. 3期間以上の債券価格も. 同じ性質をもち,価格を決定する上で重要なパ. 捉え方が可能である.. ラメータはデフォルト発生確率と割引率および ロスレートLのみとなる.このよう. に. LongstafE. Duffie. -. Singleton. (1997)は,この見かたをうまく定式化したア プローチをとる.実はこのアプローチを利用す. Schwartzモデル等では満期におけ. ることによってデフォルトリスクのある債券価. る債券保有者の受け取るキャッシュの将来価値. 格の評価をあたかもデフォルトリスクのない債. がデフォルト発生時点に関わらず一定であるこ. 券価格であるかのように扱うことが可能とな. -. とを仮定し,その結果債券価格を求める際には. り,既存のデフォルトフリーな債券価格の均衡. デフォルト発生時点の確率分布を利用しなくて. モデルを利用することが可能となる.これを次. よい債券評価式を得ることができている.. に説明しよう.. もちろんデフォルトが発生したときの企業資 産の処分・が上記のような形を常にとるわけでは. このアプローチを説明するために金利リスク. ない.だがデフォルトが発生したとき,その企. のない我々の枠組みでは次の仮定を置く.各時 点において1期間後にデフォルトが発生しない. 業が保有する証券を債券者に対し受け渡すとい. 場合の債券価格がわかっているとする.すなわ. った資産処理は一般的にあり得るし,こういっ. ち,. た形でのデフォルトの処理が実際にアメリカで. もちろん次の時点でデフォルトが発生するかど. は行われている.. うかが現時点でわかっているということではな. このような場合には上記の説明のとおり,倭. B,・+1,. (i-0,1)はFi一可測であるとする.. い.あくまでもデフォルトが発生しなかったと. 券価格の決定にはデフォルト発生時点は実質的. きにどのような債券価格となるかがわかってい. に影響を与えることがなく,単にデフォルトそ. るということを要求する仮定である4).もちろ. のものの発生確率が残存期間とどのように対応. んこの仮定は時点1において成立することは自. しているかのみが重要となる.以下で説明する. 明である.というのは時点2において債券がデ. LongstafE Turnbull. -. Schwartz. ( 1995)やJarrow. -. (1995)は,いずれもデフォルト時に. おける資産処分に関してこの仮定を置く.した がって,両者はまったく別々に進められた研究 ではあるが,実際のところその道いはデフォル ト発生確率の推移過程の違いだけとなる.つま. フォルトを起こさないときには額面1全額を債 券保有者が得ることができるからである. このアプローチの下では先ほどの表記を利用 して書くと,. (i-1,2) (16) di(の)-(1-Li.1(a・))Bi(0),. りクレデイツトスプレッドに対する説明力を比. と表すことができる.. 較するとしたならば,それは結果としてデフォ. 0,1)時点においてデフォルトが発生したとき,. ルト発生確率の推移過程の説明力を比較するこ. 債券保有者が額面1あたり失う価値で定義する. とになるのである.またこのタイプのデフオル. 確率変数である.この表記の下ではマーケット. Li+1(・)は,. i+1. (i-.

(8) デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. 洋). 能となっているのである.. の均衡条件は次のようになる.. (219) DufEie. -. 83. Singleton. (1997)はこのアプローチを利用することによ. ∑. WED,... I り,連続時間モデル上で債券の理論価格を求め Q(w I F)(.I i,I.1(の))B,A.I ・(1 1∑ Q(a F))B,・.1 WED,... ることに成功している.. B,.. =1+氏(∫-0,1). (17). 3. オプション価格理論を利用した信用リスク の評価. この式を書きなおすことによって,マーケット. の均衡において債券価格が満たすべき条件を得. デフォルト,すなわち債務不履行は,債薪の 支払い時点において現金を企業が用意できない. ることができる.. ときに発生する.仮に企業の保有する資産を即 座に現金化することが可能であるとしよう.こ. Q(a,I F)L(a・) 1-∑wEDE... Bi=. 1+R. xBi.1,. (i-0,1). (18). の前提の下では,既存の資産の売却価格総額が 支払い額を下回ったときに,債務の返済が不可 能となる.逆に既存の資産の時価が支払額を上. もちろんこの式は現在の債券価格と次の時点で. 回っている限りは,それを売却して現金化する. デフオル トが発生しなかったときの債券価格と. ことにより返済が可能となる.あるいは売却し. の関係を表す式に過ぎないが, β2-1であるこ とを利用することによって0時点における市場. なくても,資産を担保に新たに借り入れを起こ. 均衡における債券価格を求めることができる.. 増ゃ〕. すことで返済することもできる.このようにデ フォルトの発生構造を単純な形でとらえること が許されるならば,デフォルトに陥るか否かは. (19,. 返済時点において総資産の時価が返済額を上回 っているか否かで決定されることになる. 仮に発行されている債券が割引債であるとし. この表現の重要な特徴は,債券価格が Q(a・lF)i(a・) 1-∑oED... という分数の積として表現され I+R. ていることである.このように,残存期間分の 積という表現を得ることができると,スポット. よう.したがって債務者の立場からは債務の返 済が満期の一時点でのみ行われる.このときの 返済額を総額でFと表すことにする.満期にお. レートを簡潔な形で表現することが可能とな. ける投資家全体の受け取るキャッシュフローを. る.たとえばデフォルトが発生する確率が任意. グラフに表すとそれは図1のようになる.. の時点において定数p,またデフォルト時に失. 横軸は企業の総資産時価総額vT,縦軸は投. われる債券価値の比率が任意の時点において定. 資家全体の受け取るキャッシュフローを表す.. 数Lという単純なケースを考えてみよう.この. 便宜上グラフには傾きが45牽の直線を原点を. ときには(19)式は,次の単純な形となる.. 出発点として引いている.この直線上の点はい. Bo. -(諾)2 -〔 )2 l+R+pL. ずれも横と縦の座標の値が同一であることに注 (20). 意しよう. この債券の返済時点である満期において,企. したがって債券価格は近似的にR+pLの割引. 業の総資産時価総額が返済給額である額面総額. 率で額面1を割り引いた現在価値という表現を. を上回るならば,手持ちの資産を売却処分しさ. 得ることができる.つまり,あたかもスポット. えすれば額面以上のキャッシュを利用すること. レートがR+pLのデフォルトフリーな債券で. ができるのでデフォルトは回避することができ. あるかのような表現で債券価格を表すことが可. る.これに対し,絵資産の時価が額面を下回る.

(9) 84. (220). 横浜経営研究. 第ⅩⅩ巻 第3号(1999). ときには,額面総額を全額返済することが不可. わかれば,この社債の理論価格は,自動的に得. 能となりデフォルトが発生する5).企業がデフ. られるのである6).. このようにデフォルトリスクのある債券の理. ォルトを起こしたとき,ステークホールダーの. 中で最も企業の資産に対し権利が優先されるの. 論価格を求めるとき,オプション価格理論を利. は債権者である.したがってデフォルトが発生. 用してその理論・価格を求めることができる.こ. したときには,既存の総資産は債権者の手にわ. のアプローチは一般にコンティンジェントクレ. たることになる.グラフにおいてはデフォルト. イムアプローチと呼ばれている.. が発生するvT<Fの領域において,債権者の. (1974)はこのアプローチの下,オプション価. 受取額がりとなっているが,これをそのこと. 格理論を利用してデフォルトリスクの存在する. を表している.. 割引債を理論的に分析している7).. Merton. 債権者が割引債の保有者のみであれば,債券 Mertonモデル. の保有者全体の受け取るキャッシュフローは図. デフォルトリスクの存在する債券を割引債に. 1のようにVT<Fの領域で45度線となり,. 限定し,更にこの債券のデフォルトが満期にお. vT≧Fにおいて水平となる屈折した直線とな る.すでに気づかれた読者もいることと思うが,. いてのみ発生すると仮定しよう.短期金利が一 定でそれが連続時間複利表現でrと表されると. この満期におけるキャッシュフローのスケデュ. すると,満期がTの社債の価格Btは,オプシ. ールは,オプションのペイオフと形状が本質的 に同一となっている.割引債の満期におけるキ ャッシュフローは同一額面のデフォルトフリー. ョンにおける原証券価格を企業の総資産時価総 額,行使価格を額面総額としたヨーロピアンプ. な債券のキャッシュフローからその額面をちょ. ットオプション価格をデフォルトフリーな債券. うど行使価格とするヨーロピアンプットオプシ. 価値から差し引くことで次のように得ることが. ョンのライターのキャッシュフローをあわせた ものとなっている.したがってデフォルトフリ. できる. F, i, Fe-r(TILp(Ⅴ, T) F, i, -Ⅴ・-c(Ⅴ, T). ーな債券価格と企業の総資産時価総額の上に善 かれた仮想上のプットオプションの理論価格が. 満期における債券保有者-の支払総額. V(Tl満期における総督産. 」ニーY-一々 デフォルトが発生. 図1. (21).

(10) 洋). デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. 但し関数p(・,. ・,. ・,. I)は第1変数が原証券価格,. h]=. / ・n(v,. (221). r)I(r・壬ql)(・r-,) 1qJテこ了JJテニ了 h,. 85. / ・n(v,. -h.. I. i.)+(r+3)(rr-,) である c'Jテ.=7. 第2変数が行便価格のヨーロピアンプットオプ. この標準正規分布確率変数克の持つ性質1. ションの理論価格,. コールオプションの理論価格である.また等式. (hl)-1 -Pr(克<-hl)-Pr(克≦ -hl)-N(-hl) を利用することにより次のように表現を簡素化. はプットコールパリティによる.. することができる.. c(・,・,・,・)はヨーロピアン. (1974)の場合,総資産時価総額が. Merton. (23) Bt-(Ⅴ/F)N(-h.).eMr(T-t)N(h2). 幾何ブラウン運動に従うことを仮定する.また 短期金利は一定であるという仮定をおくため,. Mertonモデルではデフォルトリスクのプレミ. オプション価格としてブラックショールズモデ. アムがヨーロピアンプットオプションのプレミ. (21)式に. ルを直接応用することが可能となる.. -N. アムとして現れ,債券価格はブラックショール ズオプションと同じ基本的特徴をもつ.ここで. おけるオプション価格をブラックショールズオ プション価格を代入することで社債は具体的な. 重要な性質としては,満期に関する性質である. 形をとることができる.債券1枚の額面を1,. 8).周知のとおりオプション価格は満期が長け. つまり発行枚数をFとすると債券の価格は次の. れば長いほど高くなる性質を持つ.これは満期. ようになる.. が長ければ長いほど原証券の価格の確率分布の 裾野がひろがり,その結果権利行使の確率が高. B(. -. Ⅴ -. /F)N(hl) /F-((ti )) e-r(T-t)N(h2. くなるからである.したがってプットを発行す. る形式となる債券購入者のもつ価値は満期が長 (22). -(vt/F)(1-N(hl))・eJr(T-l)N(h2)ければ長いほど低くなる.但し年率に換算した クレデイツトスブレッドが満期が長くなるほど. 但しⅣ(・)は標準正規分布関数である.また. 高い水準になるかどうかは債券価格の対数値が 残存時間と同じオーダーで大きくなるかどうか. 0.010%. 0.008%. 0.006%. 0.004%. 0.002%. 0.000% o. 2. 4. 6. 8. 12 14 10 残存期間(局). 図2. 16. 18. 20. 22. 24.

(11) 86. (222). 横浜経営研究. に依存するので,スプレッドカーブの漸近的性 質は上記の直感的理由だけからは明らかではな. 第)Ⅸ巻. 第3号(1999). Geskeモデルー満期前に利払いがある場合の 信用リスクの評価満期までの途中期間までに利払いがある場合. い.図3は総資産の連続時間複利成長率の期待 値,およびリスクフリー.レートが年5%,ボラ. でも一定の条件の下でクレデイツトスプレッド. ティリティが年5%の場合のクレデイツトスプ. を求めることができる.途中期間に利払いがあ. レッドをIn(vt/F)が1.09,1.1,1.11の3種類の 値をとるものとして求めたものである9).. Geske. 総資産の対数値の確率分布が正規分布となっ. るケースは債券の場合,クーポン債となるが, (1977)はMertonと同じく企業の稔資. 産時価稔額の確率過程に幾何ブラウン連動を仮. ていることを反映していわゆるS字型のクレデ. 定し,クーポンの利払いに関して比較的緩い条. イツトスブレッドが成立している.残存期間が. 件を課してクーポン債の理論価格を求めてい. 長くなることによってこのクレデイツトスプレ. る.この条件は,クーポン支払いを実行すると. ツドは一定の水準に向かって収束するという性 質をもつ.. きには,その金額は企業の総資産から処分され. Mertonモデルはデフォルトリスクをあつか. るのではなく,あらたに株主がその時点でクー ポン金額分の増資に応じることで企業に入った. った先駆的研究という意味で重要である.この 級,本質的に同一のアプローチをとる研究がな. キャッシュが利用されるとする,というもので. され多くの理論的成果をあげているからであ. る企業の所得から支払われるのが普通ではある. る.ただこのモデルが現在のデフォルトリスク. から,この仮定は必ずしも任意のクーポン債に. のあるタームストラクチャーを扱う時に実用的. 適用できるとは限らないが,この条件下ではク. であるかどうかということになると重要な問題 点が存在する.それはモデルから与えられるク. ーポン債の理論価格を求めることができる.簡 単化のため現在t時点にあるとし,満期の時点. レデイツトスブレッドの水準についてである.. Tまでの間に一回だけクーポンの支払いがある. Mertonモデルの場合,満期前においてデフ. ォルトが発生する確率が0であるため,デフォ ルト発生確率が低い値となり,その結果クレデ. ある.もちろん実際の利払いは事業から発生す. とし,そのクーポン総額はpであるとしよう. クーポン支払いのあるこの途中時点を∫(J< s<T)とする.満期における返済給額をFで. イツトスブレッドの水準が低い値となってしま う.これは実際のデフォルトが債券の満期前に. 表す.. おいても発生するという実状を反映したモデル. しよう.クーポンが支払われた後なので,この. となっていない故の大きな問題点である.実際. 債券保有者にとって残るキャッシュフロー発生. の企業の場合,多くの負債を抱えていることが 多い.そのため,企業の抱えるいくつかの負債. の時点は満期のみである.したがってこの時点. の一つが支払い時期になってデフォルトに陥. 債と同じ枠組みで債券価格が得られる.ヨーロ. り,.他の負債もデフォルトに陥るというのが平. ピアンコールオプション価格関数を利用すると. 均的なデフォルトの姿である.このことからす. 株主持分の時価は,. ると,. Mertonモデルのデフォルトリスクは実. 際のデフォルトリスクと大きくかけ離れている といわざるを得ない10). 時点∫でクーポンが支払われた直後にあると. ではクーポン債は実質的に割引債となり,割引. c(vs, s, T)と表される・ 但しオプションにおける行使価格は額面総額の. Fである.. さて同じ時点∫であるが,クーポン支払い直 前の時点にあるとしよう.このとき株主にとっ ての選択肢は,デフォルトを起こして時点∫以 降の企業の所得に対する請求権を失うか,利払.

(12) 洋). デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. (223). 87. 数回の一般的な場合も同じ方法で後ろ向きに価. いに応じてPの支払いを行い以降の請求権を維 持するかの2つである.前者の選択肢を選んだ. 格を求めればよい.このように,クーポン支払. ときには株主の持分は0となる.後者を選んだ. い分の増資をその時点で行うという′仮定の下で. 場合にはc(vs,. はあるがクーポン債の理論価格をオプション価. T)-Pを得ることになる・. s,. したがって合理的な選択を行うのであれば∫時 点における株主の持分の市場価値はmaxlc (y9,. S,. Of となる.この式を見て明. T)-P,. 格理論を応用して合成オプションの価格として 求めることができるのである.クーポン債の理 論価格を求めることは実際の企業の発行する負. らかなとおり,途中時点でクーポン支払いがあ. 債が途中時点に利払いがあることからすると,. るときには,株主はオプションに対するオプシ. 実践上重要となるであろう.だがデフォルト発. ョン,すなわち合成オプションを保有する形式 となる.この∫時点における株主の持分価値を. 生の確率過程に関して実際的とするような一般 化の方向の議論を行うため,以降では途中時点. 境界条件として時点fにおける株主の持分価値. の利払いがないケースに焦点をあてて,その場. を計算し,これを企業の総資産時価総額vtか. 合のクレデイツトスブレッドについて議論する. らのぞいたものがJ時点におけるクーポン支払. ことにする.. い直後のクーポン債の時価総額となる. Mertonの場合と同様に債券がF枚発行された. 4. First. デフォルト発生. として1枚あたりの債券価格を求めたものが次 Black. の(24)式となる.. staff= B[. (V[ F)(IN2(h3,h.;p)). -. Co又(1976) Schwartz. ,. Leland. (1995)では,. (1994). Long-. ,. Merton. (1974). と同じく企業の於資産時価練額vtが幾何ブラ. /. -. PassegeTimeによる. ウン運動過程に従うとしてオプション価格理論 ) F)e r(T-I)N(hl +e r(T-1)N2(hl,h2;P)I(P /. /. where. hl-. を応用して債券の価値を分析する11).この点. ・n(vl. V1・(r-壬62)(T-s) についてはMertonと同一の特定化である.だ Jテニ言 cr. がデフォルトがvtが下落してある境界に最初 h2-. ・n(vt. に到達してしまったときをデフォルトと定義す /F)I(r一言62)(T-i) る点に大きな違いがある.この定式化の下では. 先述のようなクレデイツトスブレッドの値が小 (24). さな値となってしまう問題を回避することがで きる.デフォルト発生をイメージとして離散時. 但しウはブラックショールズオプション価格関. 間のグラフで最も簡単なケースを表現したもの. 数の下でC(Vs,. が図3である.. T)-P0という積分方程 ㌔(・, ・; 式を満たすⅤであり, ・)を2次元標準 正規分布関数で,次の形をとる関数である. s,. 図3では横軸に時間,縦軸に総資産時価総額 がとられている.水平線として縦座標がKの 直線が引かれている.これが企業がデフォルト を起こすか起こさないかを決めるデッドライン. N2(x-, y-;p) -. となっている.つまりこのラインにⅤの経路が. 2方抑 f1 -2 pry+y-. yー2し. † ト. トp2. つ. 最初にヒットしまうとその時点でデフォルトが dxdy. 起きるという仕組みである.企業の総資産が当 該債券の満期までの間つねにVt>Kという大. 途中時点のクーポン支払いが1回のみならず複. 小関係を維持された場合にはデフォルトは発生.

(13) 88. (224). 横浜経営研究. 第ⅩⅩ巻. 第3号(1999). 図3. せず,約束の額面が支払われることになる. このようなデフォルト発生の背後にある論理. 仮に設定可能なデッドラインの最小値である債 券の額面総額にデッドラインKが等しかった. は次のとおりである.企業は当該債券の他にも. としても,満期より前の時点でのKへのヒッ. 様々な負債を抱えているのが普通である.した. トもデフォルトとしてカウントしているので,. がって当該債券の満期が到来する以前の時点で. 他のパラメータが等しければMertonモデルよ. 運転資金の不足のためなどの理由から発行され. りもデフォルトの確率が高くなる.このため,. た他の負債に対する支払いが不可能となると企. Mertonモデルにおけるデフォルト確率とクレ. 業はその時点で債務不履行となる.したがって. デイツトスブレッドを同時に説明することの困. 当該債券がたとえ割引債であって満期以前の時. 難さがある程度緩和されることになる.. 点だとしても,実質的に支払いが不可能となる ことが確定し,その時点でその債券もデフォル. さらに,実際に発生する債務不履行は企業の 総資産がかりに負債の利払いよりもはるかに多. トを起こすのである.このデフォルト発生過程. 額の場合にも起き得る.例えば運転資本の回転. ではKというデッドラインにヒットしたこと. に失敗し,短期負債の支払いが滞ってしまうと. でデフォルトが発生する.もちろん債券の満期 時点においては額面総額以下の総資産時価総額. いうケースでは,短期負債そのものの金額は企 業の総資産よりもはるかに少ない金額であった. の場合にはデフォルトが発生するので,. としても発生し得る.これは企業の総資産の内,. Kは額. 面総額未満であってはならない. 先述のとおり,. Mertonモデルの場合,デフ. 流動性の高い資産がわずかにしかなく多くが有 形固定資産でしめられている場合には特にその. ォルトの発生が当該債券の満期時点のみに限定 されている.そのため実際のデフォルト確率と. 可能性が高くなるといえよう.. 観測されるクレデイツトスブレッドが整合的と. みデフォルトが発生する形となっており,確か. なるようなモデルとしては問題点があることを. にデフォルトの発生に対して理にかなった記述. 指摘した.デフ・オルト発生の境界を定数Kと. を行ってはいるが,実際に観測されるデフォル. するLongsta#-. トを扱い切れているとは言い難いのである.だ. Schwartz. (1995)の場合には,. Mertonモデル. の場合,総資産が返済予定額を下回った場合の.

(14) デフォルト.)スクのあるタームストラクチャー(森田 が,. Longstaff. 89. 利成長率の期待値が年5%,ヴオラティリティ. Schwartzモデルの場合には,. -. (225). 洋). 1・11. 1・1,. 負債の約束した支払い額よりも高い水準にK. が年5%の下で,. ln(vt/K)が1・09,. を設定しても満期だけではなく満期前の時点で. の各々をとるときのデフォルトの発生確率を求. もデフォルトが発生するように扱うことが可能. めている.. 分布関数は最初は勾配が逓増するのに対して. となるのである12).このようなパラメータの 自由度の高さ故にこのモデルではまことしやか. 途中から逓減するという特徴をもつ.これは分. なデフォルト発生確率とクレデイツトスブレッ. 布関数がブラウン運動のfirst. ドとなる債券価格の確率過程を与えることが可. 一つの大きな特徴である.というのはブラウン 連動にしたがう確率過程の場合特定の時点の値. 能となのである13).. Longstaff=. timeの. passage. の確率分布は正規分布であり,正規分布の持つ 性質が間接的に関係するからである.このため. Schwartzモデル. では実際に総資産時価が幾何ブラウン運動過. デフォルト発生の確率分布はS字に近い形状を. 程にしたがう場合のデフォルト発生の確率およ. とることになる14).. びその下でのクレデイツトスブレッドを求めて. この確率分布の性質はクレデイツトスブレッ ドの形状に対しても大き く影響する.. みよう.デフォルト発生時における総資産の状 態を幾何ブラウン運動過程の性質を利用して書. Longstaff. き直してみよう. vtが幾何ブラウン連動過程に. に額面がより少ないしかし満期が同一のデフォ. したがうとき,. ルトフリーな債券,あるいはそれに相当するキ. 1nvtはブラウン運動に従う・. よ-て定数を引いたInvt-lnK-ln. -. Schwartzモデルではデフォルト時. (豊)もブャッシュが支払われる.よって(15)式から類推. ラウン連動に従う.デフォルトが発生した状態. が可能であろうが,満期がTの社債の時点一に. はK-. おける価格をBtとすると(15)式を連続時間表. Vtによって記述されるので,両辺の自. 然対数をとって整理すると, ln. 0-lnvt-lnK-. 現に変更した次の形となる15).. (i)とすることができる.先述のとおり,. 1n. (vt/K)はブラウン運動に従う・よって, デフォルトが発生する時点は正の僅から出発し たドリフト付きブラウン運動の値が最初に0に. Bt. -. where. G(ti/ K,t,T)=N. / 1n(V; K)-r(T-t). ln(Vt /K)+r(T-t). ヒットする時点ということになり,デフォルト 発生のリスクに対して最も代表的なfirst passage. (26). /. G(V; K,i,T)L), e r(T-i)(1-. cr. v・:T. =7. (26)式. 図5は短期金利が一定値5%のときの,. timeを利用することができる.このとき. の満期までの間にデフォルトが発生する確率は. から求められるクレデイツトスブレッドのター. 次の式で表される.. ムストラクチャーを同一のパラメータの値の下 で示している.. / ln(Vt K)-r(T-t). 上記の数値のパラメータの下では,. Merton. モデルと同じくクレデイツトスプレッドは最初. ln(Ⅴ /K)+r(T-t) cr. (25). ;'T --7. ここでもⅣ(・)は標準正規分布関数を表す.こ のデフォルト発生確率を図3のMertonモデル の計算例と同一のパラメータの下で求めたもの が図4である.すなわち,絵資産の連続時間複. 急激に上昇し,途中時点からそれが緩やかにな. る形をとっている.但し大きな違いはMerton モデルと比較して遠かに大きなスプレッドを実 現できていることである.これは先述のデフォ ルトが満期以前にも発生しうることを定式化し たことによってデフォルトリ・スクが高まったこ.

(15) 90. (226). 横浜経営研究. 第ⅩⅩ巻 第3号(1999). 累積確率. -I.09. ---I.1. 0. 2. 4. 6. 8. 12. 10. 14. 16. 18. 20. 22. 24. 18. 20. 22. 24. デフォルト発生時点(局). 図4. クレデイツトスプ レッド. 0. 2. 4. 6. 8. 10. 12. 14. 残存期間(局) 図5. 16.

(16) デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. とが反映されているからである.このように Longstaff Merton. -. Schwartz. 洋). (227). 91. イツトスブレッドの理論値を求めようとした場 令,発行会社の資産と負債の時価でのバランス. (1995)のモデルでは. を示すデータが必要となる.だが,実際に企業. (1974)と同じ確率過程を企業の総資. 産時価総額に対して課しているものの,満期前. の資産と負債のバランスに関するデータは連続. のデフォルト発生という実際のデフォルトに近. 時間モデルに相当する頻度で得ることは困難で. い発生過程を記述しているため,スプレッドの. ある.特に企業の外部者が当該債券の評価をし. 水準も実際に観測されるようなオーダーの数字. ようとした場合には,企業の財務状態を連続的. となっている16).. に知ることは不可能であるから,このアプロー チでクレデイツトスプレッドの理論値を求める. 5. リデュースドフォームアプローチ. ことは事実上不可能である.さらに企業の内部. オプション価格理論の応用として信用リスク. にいる者であっても,簿価ベースならともかく 時価ベースで資産と負債のバランスを把握する. を評価するコンティンジェントクレイムアプロ. ーチは,債券のデフォルトが発生するプロセス を企業の資産の確率過程から出発して資産負債. ことも困難であろう17).. のバランスからデフォルト発生確率を求めるも. ニズムを敢えて定式化せずに,最初から実証分 析に耐えうるようにデフォルトの確率過程を外. このような理由から,デフォルト発生のメカ. のであった.このため,デフォルト発生の確率 をとおして,企業の資産負債のバランスの状態. 生的に与えてしまおうとするのがリデュースド. とクレデイツトスブレッドの対応関係を与える. フォームアプローチである.このアプローチの. ことができる.この意味でデフォルトリスク発. 内で最も単純なものとして図6のようなデフォ. 生に対してマイクロファウンデーションが与え. ルト発生の確率過程があり得る.. られた債券価格モデルであるといえよう.. 図では毎期一定の確率pでデフォルトが発生 するリスクにさらされている.この図の場合,. だが,このようなマイクロファウンデーショ ンを与えているが故に,いざモデルを利用して. 1期間後にデフォルトが発生する確率はpであ. の実践となると根本的な問題に直面する.この. るが,. 2期間後にデフォルトが発生する確率は (1-p)pとなる.より一般的にはn期間後にデ. アプローチの債券価格モデルを利用してクレデ. 図6.

(17) (228). 92. 横浜経営研究. 第ⅩⅩ巻 第3号(1999). フォルトが発生する確率は(1-p)n-1×pと なる.以下ではこのようなケース上でリデュー. Schwartzモデルの計算例とほぼ同一の範囲で. スドフォームアプローチの特徴をとらえること. 選択した一例が図7である.. にしよう18).. デフォルト確率が実現するようにパラメータを 確かに単調増加,凹関数としての性質を満た しているが,このパラメータの下では正規分布. Jarrow. ユarrow Schwartz. -. -. を直接,間接に利用しているアプローチとは異. Ttmbtlllモデル. =. Turnbull. (1995)では,. Longstaff. (1995)と同じくデフォルト時の. なり視覚的にはほぼ直線に近い分布関数となっ ている20).. 債権者のキャッシュフローを同一満期の国債の. 求めたデフォルト確率から満期がTの債券価格. 現在価値としている.したがって,債券価格が. は次のように求められる.. 満たす式は(15)式となる.ただデフォルト発生 (28). がポワソン過程に従うことを仮定する点に大き. BE-e r(T-t'[1-(.1e-P'T-t'). な違いがある.そこで離散時間モデルで表現し た図6の時間の刻みを細かくしてポワソン過程. 連続時間上におけるフォワードレートは債券価. に収束させてみよう.. 格を自然対数に変換し,マイナスの符号をつけ. 図6の確率過程をポワソン過程に収束させる には,. 1期間あたりのデフォルト確率pを期間. たものを満期に関して偏微分したものである.. この演算を(28)式に施すことでフォワードレトは,. pie-P('r-I). と求まる.したがってクレ. の分割に対応させて分割していけばよい.例え ば図6における1期間を1年とし,これを2分. デイツトスブレッドカーブはデフォルト発生パ. 割した6ケ月が1期間の場合を考えてみよう.. ラメータとロスレートの積,. この場合には,半分となった単位期間における. 右下がりのカーブとなる.これを図示したのが,. 〟+. I-. L(トe I'''-/'). pLから出発する. 図8である.デフォルト時における債券保有者 デフォルト発生確率は号となる・期間をn分割 した場合には単位期間1年の間におけるデフ オルト発生確率は旦となる.結果として1年. Longstaffの受け取るキャッシュは, Schwartz (1995)と同一ではあるが,デフォ. つまりn期間後までデフォルトが発生しない確. ルト発生の確率が指数分布に従うため,クレデ. n. 〃. イツトスブレッドの形状もまったく異なるもの 率は(I-:)''となる・したがって連続時間モデル では,. となる21).コンティンジェントクレイムアプ. ォルトが発生しない確率は,. ローチでは比較的残存期間が短い範囲ではスプ レッドは残存期間とともに増加する傾向にあっ. n-…としたときの極限をとればいいの で,連続時間モデルにおいて1年後までにデフ. たのに対し,この場合には逆に単調にわずかな -. (27). e-〝. nl聖(.-f)a. がら減少していく形状となる点が特徴的であ る.. となる19).現在t時点にあるとして,. T時点ま での間にデフォルトが発生しない確率は,各1 年においてデフォルトが発生しない確率を掛け 合わせたものつまり,. eーク(T i)となる.デフ. ォルトが発生する確率はこれを1から引いたも の,. 1-e-P(T-i)となる.したがってデフォ. DⅦ1狙e. Duffie nbull. -. =. Singleton. (1995). ,. Singletonモデル. (1997)はJarrow. Longstaff. -. Schwartz. -. Tur-. (1995). らと異なり,デフォルト時に債券価格の一定比 率が失われるという視点からアプローチし,チ. ルトの発生確率は,残存期間に関して単調増加,. フォルト発生の確率過程をポワソン過程とす. 凹関数となる.先のMeron,Longstaff-. る.ここでは枠組みを最も単純なものにし,離.

(18) 洋). デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. (229). 累積確率. 0.01. - ・・. 0. 2. 4. 6. 8. 10. 12. 14. 16. 18. 20. 22. 24. デブオルト発生時点(局). 図7. クレデイツトス. ブレッド. 0. 2. 4. 6. 8. 10. 12. 14. 残存期間(局) 図8. 16. 18. 20. 22. 24. -. T. 0.CK)7. 93.

(19) 横浜経営研究. (230). 94. 第ⅩⅩ巻. 第3号(1999). 散時間モデルから出発して,デフォルト発生の. 式を代入することによって,年2回複利表現に. 確率過程をポワソン過程に収束させてみよう.. おける,. 1年間をはさんだ2時点の債券価格の. 問の関係式が次のように得られる.. 一般性を失うことなく,最も単純なケースと して任意の時点においてデフォルトが発生する. 1-I)i. 条件付確率が定数p,債券価値のうちデフォル Bf=. ト時に失われる部分の比率も定数上であると仮. Bt.1. x. Bt.I. プ志. x. 定しよう. 2.3節で説明したように,デフォルト時に 失われる債券価値の一部がデフォルトが発生し. 1+R. (33). ていないときの債券価値に対する比率として表 現することが可能な情報構造の下では,時点J. 更に時間の刻みを細かくして1期間を土とし. とt+. た場合には,. Jl. 1の時点の債券価格が満たす関係式は次. のようになる.. p(1 L)Bt.1+(llP)Bt.I =1+R. (1一登)n. I. u. (29). x. D. Bt.l. (34). 1+R. Bt. ここでデフォルト発生の確率過程をポワソン過. が成立する.. 程に収束させるために,. することにより,次のように連続時間表現を得. Jarrow. -. Turnbullモ. デルと同様に時間の刻みを細かくしてみよう.. (34)式における〝を無限に大きく. ることができる.. 1期間を主として時・6.tと時点什主の債券価. ・ilnn--. 格2つの関係式を表すと次のようになる.. (._I,'.i)'一 1+R. L)Bt.; f(I-. f)BE.i I(1-. e-βL.. i了盲×卑十.. Bt. e-pL =. Ji了盲. TX. (30) =. この式を整理すると, J. I-. e-(r+pL)Bl+1. (35). β∫はデフォルトを起こしていないときの債券価 格であることから,満期において境界条件BT. _.]1L.. 読. Bt.I. e. ×β. 1. t+I. 1が成立する.この境界条件を利用すること. -. 2. によって時点fにおける債券価格は次のように. IIL. 一誘蓋×BE.土. (31). 与えられる.. 2. Bt. となる・時点汁壬と時点t+1の債券価格に 関しても同様に,. =. e-(r'pL)('-t). (36). ハザードレートp,およびロスレートLが時間. を通じて一定の単純な場合には,クレデイツト /一丁・ ,l-. 一誘蓋×卑+1. (32). という式が成立する.したがって(31)式に(32). スブレッドは満期に依存せずに一定億pLとな り,水平なタームストラクチャーが措かれるこ とになる.特にデフォルト時に回収がまったく 不可能となるエ-1の場合にはスプレッドは単.

(20) デフォルトリスクのあるタームストラクチャー(森田. 洋). (231). 95. 純にデフォルトの発生確率を代替するハザード. れによっていかなる受け取りを債権者が得るの. レートとなる.. かという点については,実際のデフォルトに即. 2.3節でも触れたように,. (36)式の重要な. した十分な記述ができているとは言い難い.実. 特徴は,デフォルトリスクにさらされている債. 際のデフォルト時の処理は複雑でまたステーク. 券の価格が飽くまでも形式的なことではあるが. ホールダーの取り分も単純な形で記述できない. デフォルトフリーな債券の価格と同一の表現を 得ることができている点である.すなわち,. ことが多い.債券価格モデルはデフォルト時の 資産処理が数学的には微分方程式の境界条件と. r+pLが最終利回りのデフォルトフリーな割引. なっているため,デフォルト時の資産処理の記. 債の価格と向-の形式となっていることに大き述は境界条件の特定化を行うことに等しく,こ な特徴がある.したがってたとえデフォルトリ. の境界条件をどう特定化するかということで他. スクが存在して,その発生が満期前にもありえ. のデリバティブと同様に方程式の解そのものに. る一般的な枠組みであるのにもかかわらず,そ. 大きく影響を与えてくる.したがってデフォル. の債券価格は既存のデフォルトフリーな債券価. ト時の資産処理の記述が正確でない限りは,実. 格理論の成果をそのまま利用することが可能で. 際の債券の価格の動きをとらえることができな. ある22).デフォルトフリーな債券価格に関し. いといっても過言ではない.これについてはデ. てはここ数十年の間に様々なモデルが提示さ れ,一定の説明力も実証されてきた.したがっ. フォルト時における資産処理にそのもの関する 理論的な分析の発展が必要となるであろう.さ. てこのアプローチは既存のデフォルトフリーな 債券モデルの多くを応用することが可能である. らに今後観測されるデフォルトのケーススタデ. という意味で重要な意味をもつモデルなのであ る23). 6. おわりに. ィ等が豊富に行われてくることで,実際のデフ ォルトに即した様々な債券価格モデルの構築が 可能となることが期待される. デフォルトリスクの理論的分析を行うとき, 均衡モデルの観点からすると,金利リスクとデ. この論文では,決して包括的ではないが,デ フォルトリスクのタームストラクチャーに関す. フォルトに関するリスクプライスは単純に外か ら別々に与えることは一般にはできない.とい. る最近の研究の動向を概観し,いくつかの重要. うのは,金利リスクと債券発行企業の資産負債. なモデルの特徴を単純な枠組みにおいて比較,. バランスは独立なものではなく,どちらも共通. 整理した.. の複数のファクタ-から生成されている可能性. 2.2節で述べたように,デフォル. トのもつ性質故にその発生時点そのものにリス. があるからである.特に金融機関の発行する債. クが存在することがデフォルトリスクのあるタ. 券となればなおさらであろう.このようなこと. ームストラクチャーの扱いを難しくさせてい る.だがここ最近の研究ではこの困難に対して. からすると,デフォルトリスクの存在する債券. デフォルト時の支払い等において特定の仮定を. 組みで再検討することが必要である.. もうけるなどし,解析的に債券価格を得る工夫. は実物経済の記述を含んだ一般均衡モデルの枠 またデフォルトリスクはかならずしもヘッジ. が行われており,実際のクレデイツトスブレッ. が可能なリスクとは考えらてはいない.この考. ドとデフォルト確率が整合的となるモデルの構 築が行われてきている.. え方の下では,デフォルトリスクは他の資産を. いくつか大きな問題点も抱えている.例えば. 利用してヘッジすることが不可能であるから,. ア-ビトレージフリーな債券価格を一意的に求. デフォルトが発生したときステークホールダー. めることは不可能である.もちろん不完備市場. 間でどのような資産分配が行われるか,またそ. であっても債券価格の上限と下限を求めるとい.

(21) 96. 横浜経営研究. (232). 第XX巻. 第3号(1999) 求されているのである.. うことは可能かもしれない.だが価格を一意的 に求めようとすると場合には不完備市場の経済. 5)実際のデフォルトの発生は企業の総資産時価総 額がはるかに負債金額を上回っていても発生す. のとき,背後の投資家のリスク選好から出発し. る.これについてはLongstaff. て均衡における債券価格を求めなくてはいけな. ルの説明の箇所において触れる.. い.つまり不完備市場の資産価格理論の応用と して債券の均衡価格を求めることが必要とな る.今後はこの方向での研究も重要な選択肢と. -. Schwartzモデ. 6)対する株式の時価総額はヨーロピアンコールオ プションとしての性格を持つことになり,この 枠組みでは株価は企業の総資産を原証券とした コールオプション価格として求められる. Sholes (1972)も負債の存在 7)もちろんBlack する企業を扱っており,ステークホールダーの 企業に対する請求権の価値がオプションとして の性格を有する点を議論している. 8)その他の性質として例えば現在の総資産時価総 -. なるであろう. 注 1)マーケットにフリクションが存在しなければ, デフォルトリスクの存在するスワップ市場の金 利がデフォルトフリーな金利と同一の水準であ れば,前者で資金を調達して後者で運用を行う. 額が低くなると,コールオプションのデルタが. 逓増することに対応してデフォルトの確率が急 激に高くなり,同様に社債価格も急激に下がる.. また総資産時価総額のヴオラティリティが大き ければ大きいほどインザマネーになる確率が高. ことはリスクレスア-ビトレージを意味するか らである.. くその分デフォルトリスクにさらされる社債の 価格は下がる.. 2)この論文では一貫して割引債を扱う.満期まで の途中期間においてクーポンを支払うクーポン 債の場合は, 3節で触れるように,合成オプシ ョンすなわちオプションに対するオプションと. しての性格をもつと考えることができる.この アプローチからクーポン債を扱ったものとして はGeske (1977)がある. 3)もちろん,後に説明するように社債のプライシ (1974) ングにおける先駆的研究であるMerton. 9)連続時間モデルにおいて危険中立性を仮定した 場合,企業の総資産時価の成長率の期待値はリ スクフリーレートに一致しなくてはいけない.. したがってこの数値例では企業の総資産もリス クフリーレートも同一の5%としている 10) Mertonモデルにおいては金利が時間を通じて一. 定となっているが,金利リスクを導入した一般 化を行うことは可能である.例えばKim, Ramaswamy, (1987)はデフォ and Sundarsan. の場合には,デフォルトが発生する時点は社債 の満期のみであり,デフォルト発生の時点その. ルトフリーな金利がmean square-root過程に従 う場合での一般化を行っている.. ものは確定されている.この場合には先の2期 間モデルではβ1 ¢となり, 持ち出す必要はなくなるので, -. Bo=. stopping. timeを. ll). であるが総資産の連続時間複利成長率の期待値 はとくに定数である必要はないという意味でよ. ∑叫Q(+a)^xd2(α).iZ (f2W,) (1+R)2. (1+R)2. ・d, I. E[ID, In/。】. (1994)の場合はボラティリティが定数. Leland. り一般的である.. 12)もちろん,実際のデフォルトの発生に忠実な記 述を行おうとするならば,企業の資産負債の内 訳にまで立ち入ったモデルが本来必要であろう.. (1+R)2. その意味ではは総資産時価総額とデッドライン という表現となる.したがってこの場合には(10) 式と・同一の表現となっていて,通常の危険資産 と同様の形式を持たせることができる.だが後 に説明するが,そのような定式化は残念ながら 大きな問題をもつ.. 4)ここではいわゆる金利リスクがないことを前提 としてい早.実際の債券価格のダイナミックス のようにデフォルトリスクがなくても債券価格 の変動にリスクがあるときには,金利リスクの. 情報から生成される♂一集合体Gの上でG汁1-可 測(∫-0,1)であればよい.すなわちデフォル トリスクの存在する債券でも,次の時点のその 債券価格はデフォルトリスクのない債券が関係 するリスクに関してのみ依存していることが要. との大小関係でデフォルトを記述するLongstaff Shwartzモデルも第1次近似としての性格し か持たない点は否定できない. -. 13). Black. -. Cox. (1976)も同じようにfirstpassage. timeを利用してMertonモデルを一般化してい る.彼らのモデルの場合には満期前のデフォル. トは企業の総資産時価総額が債券の額面総額以 下の一定値の割引現在価値に最初に到達した時 点として定義している.したがってデフォルト 発生に関して比較をするとLongstaff-. (1995)の方がパラメータの自由度が (1994) はコンソル債を対象として,幾何ブラウン運動. Schwartz. 高いモデルとなっている.またLeland のfirst time. passageを利用して債券価格を分析.

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