『
大
梵
天
王
問
仏
決
疑
経
』を
め
ぐ
って
一 、 は じ め に 問 題 の 所 在 こ こ に問
題 と す る 『 大梵
天 王問
仏
決 疑 経 』 に つ い て は 、 一 九 九 九 年 六月
七 日 の駒
澤 大学
仏教
学
会
の 研 究 会 で 発 表 し た も ロ よ の で 、 こ の 論 文 は そ の 発表
の 要 旨 を ま と め た も の で あ る 。経
典 の 訳 註 研 究 に 関 し て は、別
の 論文
で 発 表 し 、 そ の 御 批判
を 仰 ぐ つ も り で あ る が 、 現在
知
ら れ て い る テ キ ス ト 以 外 を日
下
捜『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 , を め ぐ っ て 〔 石 井 ) 二
巻
本
『 問 仏決
疑 経 』初
会 法付
嘱
品第
一 サ ま 爾 口 大 梵 天 王、 即 引 若 干 眷 属 来 、 奉 献 世 尊 於 口 口 羅 華 、 各 各 頂 礼 仏 足、 退 坐 一 面 。 爾 時 世 尊 即 拈 奉 献 口 色 婆 羅 華、 瞬 日 揚 時 独 尊 名 眉 、 示 諸 大 衆 。 是 時 大 衆 黙 然 毋 措 。 ■ ■ 有 迦 葉 口 口 破 顔 微 笑 。 ム あ 世 尊 言 、有
我
正 法 眼 蔵 、 涅 槃 妙 心、 即 付 嘱 于 汝 。 汝 能 護 持 、 相 続 不 断 。 時 迦 葉 奉 仏 勅、 頂 礼 仏 足 退 。 そ 〈 爾 の 時 、 大 梵 天 王 は、 即 ち 若 干 の 眷 属 を 引 き 来 り 、 世 尊 に 金 お の お の 婆 羅 華 を 奉 献 し、 各各
仏 足 を 頂 礼 し、 一 面 に 退 坐 す 。 爾 の 時、 世 尊 は 即 ち 奉 献 せ る 金 色 の 婆 羅 華 を 拈 じ て、 瞬 目 揚 眉 し て 、 諸 な の 大 衆 に 示 す 。 是 の 時、 大 衆 は 黙 然 と し て 措 く こ と 毋 し 。 時 に 独 り 迦 葉 尊 者 の み 有 り て 破 顔 微 笑 す 。 世尊
言 く、 「 我 れ に 正 法 眼 蔵 、 涅 槃 妙 心 有 り て、 即 ち 汝 に 付 嘱 す 。 汝 能 く 護 持 し て、 相 続 し て 断 ぜ ざ ら し め よ 」 。 時 に 迦 葉 は 仏 の 勅 を 奉 じ て 、仏
足 を 頂 礼 し て 退 く 〉 。 ( 続 蔵 一 編 八 七 套 四 冊 三 〇 三 丁 左 上 ) ( 推 測 文 字 ノ 「 独 」 ハ 「 唯 」 ト モ 考 エ ラ レ ル ) 一 巻 本 『 問 仏 決 疑 経 』 拈 華 品 第 二 ( a ) 爾 時 娑 婆 世 界 主 大 梵 王、 名 日 方 広 。 以 三 千 大 千 世 界 成 就 之 根 、 妙 法 蓮 金 光 明 大 婆 羅 華、 捧 之 上 仏、 退 以 作 礼 。 而 白 仏 言 、 世 尊 今 仏、 巳 成 正 覚 、 五 十 年 来、 種 種 説 法 、 種 種 教 示 、 化 度 一 切 機 類 衆 生 。 若 有 未 説 最 上 大 法、 為 我 及 末 世 行 菩 薩 人、 欲 行 仏 道 凡 夫 衆 生、 布 演 宣 説 。 作 是 言 巳、 捨 身 成 座 、 荘 厳 天 衣 、 令 坐 如 来 。 爾 時 如 来 、 坐 此 宝 座、 受 此 蓮 華、 無 説 無 言 。 但 拈 蓮 華 、 八 八 入 大 会 中 八 万 四 千 人 天 。 時 大 衆 皆 止 黙 然 。 於 時 長 老 摩 訶 迦 葉 、 見 仏 拈 華 示 衆 仏 事、 即 今 廓 然 破 顔 微 笑 。 仏 即 告 言 是 也。 我 有 正 法 眼 蔵、 涅 槃 妙 心、 実 相 無 相 、 微 妙 法 門 、 不 立 文 字 、 教 外 別 伝 、 総 持 任 持、 凡 夫 成 仏、 第 】義
諦、 今 方 付 属 摩 訶 迦 葉 。 善 、 口 已 黙 然 。 爾 時 尊 者 摩 訶 迦 葉、 即 従 座 起、 頂 礼 仏 足 。 A 爾 の 時、 娑 婆 世 界 主 の 大 梵 王、 名 づ け て 方 広 と 日 う 。 三 千 大 千 世 界 の 成 就 の 根 の 妙 法 蓮 金 光 明 大 婆 羅 華 を 以 て、 之 れ を 捧 た て ま つ じ て 仏 に 上 り て、 退 く に 礼 を 作 す を 以 て す 。 而 し て 仏 に 白 し て こ の か 言 く、 「 世 尊 今 仏、 巳 に 正 覚 を 成 ず、 五 十 年 よ り 来 た 、 種 種 に 説 法 し、 種 種 に 教 示 し、 一 切 の 機 類 の 衆 生 を 化 度 す 。 若 し 未 だ 最 上 の 大 法 を 説 か ざ る こ と有
ら ば 、 我 れ 及 び 末 世 の 菩 薩 を 行 ず る 人、 仏 道 を 行 ぜ ん と 欲 す る 凡 夫 衆 生 の 為 に 、 布 演 宣 説 し た お わ ま え ー 。 是 の 言 を 作 し 已 り て 、 身 を 捨 て て 座 を 成 し、 天 衣 を 荘 す わ 厳 し、 如 来 を 坐 ら し む 。 爾 の 時、 如 来 、 此 の 宝 座 に 坐 り 、 此 の 蓮 華 を 受 け、 無 説 無 言 な り 。 但 だ 蓮 華 を 拈 じ て、 大 会 の 中 の 八 た 万 四 千 の 人 天 に 入 る 。 時 に 大 衆 皆 な 止 だ 黙 然 た る の み 。 時 に 長 た だ ち 老 摩 訶 迦 葉 は、 仏 の 華 を 拈 じ て 衆 に 仏 事 を 示 す を 見 て 、 即 今 に 廓 然 と し て 破 顔 微 笑 す 。 仏 即 ち 言 を 告 ぐ 是 な り 。 「 我 に 正 法 眼 蔵、 涅 槃 妙 心、 実 相 無 相、 微 妙 法 門 有 り、 不 立 文 字 、 教 外 別 伝 し て、 総 持 任 持 せ ば、 凡 夫 の 成 仏 に し て 、 第 一 義 諦 な り 。 今 ま ま と も 方 に 摩 訶 迦 葉 に 付 属 せ り 」 。 「 一、 面 い 已 り て 黙 然 た り 。 爾 の 時、 尊 者 摩 訶 迦 葉 は 、 即 ち 座 よ り 起 ち、 仏 足 を 頂 礼 せ り 〉 。 ( 同 一 三 、 六丁 左 上 ) (
bV
爾 時 大 梵 天 王 白 仏 言 、 世 尊 出 世 、 四 十 余 年 、種
種 説 法 。 云 何 有 未 曾 有 法 耶 。 云 何 有 及 言 語 法 耶 。 願 為 世 間 一 切 人 天 、 能 ほ 示 己自
。 言 了 金 色 千 葉 大 婆 羅 華 、 持 以 上 仏、 而 退 捨 身、 以 為 床 座、 真 誠 念 願 。 爾 時 世 尊 著 坐 其 座、 廓 然 拈 華 。 時 衆 会 中 百 万 人 天、 及諸
比 丘、 悉 皆 黙 然 。 時 於 会 中 、 唯 有 尊 者 摩 訶 迦 葉、 即 見 其 示 、 破 顔 微 笑 。 従 座 而 起、 合 掌 正 立 、 有 気 無 言 。 爾 時 仏 告 摩 訶 迦 葉 言、 吾 有 正 法 眼 蔵、 涅 槃 妙 心、 実 相 無 相、 微 妙 法、 不 立 文 字、 教 外 別 伝、 有 智 無 智、 得 因 縁 証 。 今 日 付 属 摩 訶 迦 葉 。 摩 訶 迦 葉 、 未 来 世 中、 奉 事 諸 仏、 当 得 成 仏 。 今 日 亦 堪 為 世 間 師 。 〈 爾 の 時、 大 梵 天 王 は 仏 に 白 し て 言 く、 「 世 尊 の 出 世 は、 四 十 余 い か ん 年 に し て、 種 種 に 説 法 せ り 。 云 何 が 未 曾 有 の 法 有 ら ん や 。 云 何 が 言 語 の 法 に 及 ぶ 有 ら ん や 。 願 く は 世 間 の 一 切 の 人 天 の 為 に、 お わ 能 く 自 己 に 示 さ ん こ と を 」 。 言 い 了 り て 金 色 の 千 葉 の 大 婆 羅 華 を も て、 持 し て 以 て 仏 に 上 り、 而 し て 退 い て 身 を 捨 て て、 以 て 床 座 と 為 し、 真 誠 に 念 願 す 。 爾 の 時、 世 尊 は 其 の 座 に 著 坐 し、 廓 然 と し て 華 を 拈 ず 。 時 に 衆 会 の 中 の 百 万 の 人 天、 及 び 諸 の 比 丘 は、 悉 く 皆 な 黙 然 た り 。 時 に 会 中 に、 唯 だ 尊 者 摩 訶 迦 葉 の み 有 り 、 即 ち 其 の 示 す を 見 て、 破 顔 微 笑 す 。 座 よ り 起 ち て、 合 掌 し て 正 立 し 、 気有
る も 言 無 し 。 爾 の 時 、 仏 は 摩 訶 迦 葉 に 告 げ て 言 く、 「 吾 に 正 法 眼 蔵、 涅 槃 妙 『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) 心 、 実 相 無 相 、 微 妙 の 法 有 り、 不 立 文 字、 教 外 別 伝 し て、 有 智 も 無 智 も 、 因 縁 の 証 を 得 た り 。 今 目 、 摩 訶 迦 葉 に 付 属 す 。 摩 訶 迦 葉、 未 来 世 の 中 に 、 諸 仏 に 奉 事 し 、 当 に 成 仏 を 得 べ し 。 今 日 も 亦 た 世 間 師 と 為 す に 堪 え た り 」 〉 。 ( 同 三 二 七 丁 右 下〜
左 上 ) こ の よ う に 、拈
華
微
笑 の話
が 『 問 仏 決疑
経 』 に 存 在 す る 以 上 、 そ れ に 基 づ い て拈
華微
笑
の話
が成
立 し た と さ れ る の も 理 由 が あ っ た の で あ る 。 そ し て そ の 根 拠 に は 必 ず次
の 晦巌
智昭
の 『 人 天 眼目
』 巻 五 (二
八 八年
成 立 ) の 「宗
門 雑 録 」 所収
の 拈華
微
笑 の話
の 記 事 と 共 に 理解
さ れ て き た の で あ る 。 王 荊 公 問 仏 慧 泉 禅 師 云 、 禅 家 所 謂 世 尊 拈 花、 出 在 何 典 。 泉 云 、 蔵 経 亦 不 載 。 公 日 、 余 頃 在 翰 苑、 偶 見 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 三 巻 。 因 閲 之 、 経 文 所 載 甚 詳 。 梵 王 至 霊 山、 以 金 色 波 羅 花 献 仏 。 舎 身 為 床 座 。 請 仏 為 衆 生 説 法 。 世 尊 登 座 拈 花 示 衆 。 人 天 百 万 、 悉 皆 罔 措 。 独 有 金 色 頭 陀、 破 顔微
笑 。 世 尊 云、 吾 有 正 法 眼 蔵、 涅 槃 妙 心 、 実 相 無 相、 分 付 摩 訶 大 迦 葉 。 此 経 多 談 帝 王 事 仏 請 問 。 所 以 秘 蔵 世 無 聞 者 。 い わ ゆ く 王 荊 公 、 仏 慧 泉 禅 師 に 問 う て 云 く、 「 禅 家 の 所 謂 る 世 尊 の 拈 花 、 何 の 典 に 出 つ る や 」 。 泉 云 く、 「 蔵 経 に 亦 た 載 せ ず 」 。 公 日 こ の こ た ま く 、 「 余 頃 ろ 翰 苑 に 在 り て 、 偶 た ま 『 大 梵 天 王問
仏 決 疑 経 』 三 け み の 巻 を 見 る 。 因 み に 之 れ を 閲 す る に、 経 文 に 載 す る 所 甚 だ 詳 し 。 す 梵 王 、 霊 山 に 至 り て 、 金 色 の 波 羅 花 を 以 て 仏 に 献 ず 。 身 を 舎 て て 床 座 と 為 し、 仏 に 衆 生 の 為 に 説 法 せ ん こ と を 請 う 。 世 尊 は 座 八 九『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) に 登 り て 花 を 拈 じ て 衆 に 示 す 。 人 天 の 百 万、 悉 く 皆 な 措 く こ と な 罔 し 。 独 り 金 色 の 頭 陀 の み 有 り て 、 破 顔 微 笑 す 。 世 尊 云 く、 「 吾 に 正 法 眼
蔵
、 涅 槃 妙 心 、 実 相 無 相 有 り 、 摩 訶 大 迦 葉 に 分 付 す 」 。 つ か 此 の 経 は多
く 帝 王 の 仏 に 事 え て 請 問 す る を 談 ず 。 所 以 に 秘 蔵 し て 世 に 聞 く 者無
し 〉 ( 大 正蔵
四 八 巻 、 三 二 五 頁 中 ) 。 筆者
は 『 無門
関
』 の 出典
は、 『 問仏
決
疑 経 』 で は な い と断
言 す る 。 出 典 は間
違 い な く禅
宗
の 燈 史 の 一 つ で あ る 次 の 『 宗門
統
要集
』巻
一 「 釈 迦 文 仏章
」 ( 一 〇 九 三年
) で あ る こ と を・ 王 張 し た の で あ る 。 さ ら に も と も と 「 拈華
微
笑 」 の話
が 燈史
の 中 で ど の よ う な 成 立 過 程 を経
て来
た か に つ い て も検
討 し 、 ほ ぼ 『 景徳
伝 燈録
』 ( 一 〇 〇 四年
) か ら 『 天 聖広
燈 録 』 ( 一 〇 三 六年
) の 問 に 成 立 し 、特
に臨
済
宗
の禅
者
に よ っ て 伝 承 さ れ て い る こ ユ と を確
認 し て お い た の で あ る 。 ( a ) 世尊
昔 在 霊 山 会 上、 拈 花 示 衆 。 是 時 衆 皆 黙 然 。 唯 迦 葉 尊 者、 破 顔 微 笑 。 世 尊 云、 吾 有 正 法 眼 蔵、 涅槃
妙 心、 実 相 無 相、 微 妙 法 門、 不 立 文 字、 教 外 別 伝 、 付 嘱 摩 訶 迦 葉 。 海 会 端 云、 迦 葉 善 観 風 雲 別 気 色 。 雖 然 如 是、 還 覚 頂 門 重 麼 。 黄 龍 心 云 、 直 下 穿 過 髑 髏、 巳 是 換 却 眼 睛 。 臨 危 不 在 悚 人、 向 甚 処 見 釈 迦 老 子。 (b
) 世 尊 昔 至 多 子 塔 前、 命 摩 訶 迦 葉 分 座 令 坐 、 以 僧 伽 梨 囲 之 。 遂 告 云 、 吾 以 正 法 眼 蔵、 密 付 於 汝 。 汝 当 護 持、 伝 付 将 来、 無 令 断 絶 。 ( 宋 版i
六 丁 左 〜 七 丁 右 ) 】 九 〇 こ の こ と を確
認 す る と 、新
た な 問 題 が生
ま れ て く る 。 現存
の 二種
の 偽経
の 『 問 仏 決疑
経 』 を め ぐ っ て は、 江戸
期 よ り 日 本 撰 述 説 と 中国
撰
述 説 が あ り、 そ の結
論
を 得 て は い な い 。 こ こ に 、 こ れ ら の 主 張 の 経過
と問
題点
を 検討
す る必
要
が あ ろ う 。特
に 、 二 種 の 偽経
の 内 容、 中 で も }巻
本
の 内 容 を 細 か に検
討
す る 必 要 が あ り 、 従来
、 こ の 二種
の偽
経
の 関 係 を 論 じ た専
論
を寡
聞
に し て 知 ら な い し 、今
ま で の研
究
成
果 か ら判
断 し て 、多
く の問
題 を残
し て い る と考
え ら れ る の で あ る 。 た だ 、 周 知 の ご と く 、 面 山 瑞 方 二 六 八 三 − 一 七 六 九 ) ・ 諦 忍律
師
妙
龍 ( → 七 〇 五1
一 七 八 五 )等
の 江 戸 時代
の 日本
撰 述 の 偽 経 説 を 承 け て 展開
す る 、 二 巻 本 の本
格
的 な論
文 で あ る 忽滑
谷快
天 ( 一 八 六 七 ー 一 九 三 四 ) 氏 の 「 大 梵 天 王 問仏
決疑
経
に 就 て 」 ( 『禅
学
批 判 論 附録
』 、 鴻 盟 社 、 一九
〇 五 年 一 一 月 = 二 日 ) の説
が あ り 、最
重 要課
題 は そ の結
論
が 正 し い か ど う か と い う こ と が問
題 と な ろ う 。 二 、 二 巻 本 「 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 」 の 構 成 と 内 容 の 要 旨 先 に言
う よ う に 、 『 問 仏 決疑
経
] は 、 現在
、 二 巻本
と 」 巻本
の 二本
が続
蔵
経
巻
八 七 に収
め ら れ て い る 。 先 ず 二 巻 本 の構
成
と 内 容 の 要旨
を見
て み よ う 。 そ の場
合
、 二 巻本
の性
格
を推
測
す る に は、次
の無
著
の貴
重 な十
の 「凡
例
」 が存
在
す る 。 凡 例】 、 斯 経 全 軸 二 十 四 品 。 品 名 開 于 後 。 軸 今 成 両 本 。 〈 】 、 斯 の 経 は 全 軸 二 十 四 品 な り 。 品 名 は 後 に 開 く 。 軸 は 今 ま 両 本 と 成 る V 。 一 、 斯 経 三 百 有 年 来、 秘 于 某 寺 経 函 。 故 文 字
多
為 蠹 魚 蝕 者 。 ぞ 圏 児 充 之 。 間 有 紙 業 脱 者 、 可 歎 惜 矣 。 こ の か 〈 一 、 斯 の 経 は 三 百 有 年 よ り 来 た、 某 寺 の 経 函 に 秘 す 。 故 に 文 し み む ヒ ば あ 字 は 多 く 蠹 魚 の 為 に 蝕 ま れ る 。 圈 い の 字 を も て 之 を 充 つ 。 間 に 紙 葉 の 脱 す る こ と 有 る は、 歎 惜 す べ し 〉 。一 、 斯 経 出 処、 不 敢 分 明 説 。 蓋 付 予 人 、 以 秘 蔵 故、 深 誡 説 来 歴 。 読 人 毋 加 穿 鑿 。 〈 一 、 斯 の 経 の 出 処 は、 分 明 に 説 く を 敢 え て せ ず 。 蓋 し 予 に 付 す る の 人 の 秘 蔵 す る を 以 て の 故 に、 深 く 来 歴 を 説 く を 誠 む 。 読 な む 人 は 穿 鑿 を 加 え る こ と 毋 か れ 〉 。 ] 、 斯 経 震 旦 秘 之 御 府、 不 許 流 通 。 故 見 者 最 希 。
本
邦 幸 有 此 本 者、 実 国 家 之 宝 也 。 専 頼 有 力 弘 通 。 誠 知 王 荊 公 宋 景 濂 語 不 虚 也 哉 。 △ 、 斯 の 経 は 震 日 に て 之 を 御 府 に 秘 し て 流 通 を 許 さ ず 。 故 に ま れ 見 る 者 最 も 希 な り 。 本 邦 に 幸 い に 此 の 本 有 る は 、 実 に 国 家 の 宝 な り 。 専 ら 有 力 に 弘 通 を 頼 む 。 誠 に 王 荊 公、 宋 景 濂 の 語 の 虚 し か ら ざ る を 知 ら ん や V 。 → 、 斯 経 伝 写 、 失 訳 人 之 名 。 莫 怪 之 。 企 、 斯 の 経 の 伝 写、 訳 人 の 名 を 失 す 。 之 を 怪 し む こ と 莫 か れ V 。 『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) 一 、 斯 経 請 益 品 ] 篇、 文 相 句 義、 与 渥 槃 経 同 。 但 有 中 間 処 処 、 文 字 増 添 耳 。 然 字 蝕 最 甚 。 依 浬 槃 経 全 文、 則 理 顕 著 矣 。 〈 一 、 斯 の 経 の 請 益 品 の 一 篇 の、 文 相 句 義 は 『 涅 槃 経 』 と 同 じ 。 む し ば 但 だ 中 間 の 処 処 に 文 字 の 増 添 有 る の み 。 然 る に 字 の 蝕 み は 最 も 甚 だ し 。 『 涅 槃 経 』 の 全 文 に 依 ら ば、 則 ち 理 は 顕 著 せ ん 〉 。 一 、 斯 経 梵 王 於 涅 槃 会 上 別 発 問 、 如 来 為 之 重 説 。 故 文 身 句 体 、 与 涅 槃 経 大 同 小 異 。 〈 一 、 斯 の 経 は、 梵 王 の 涅 槃 会 上 に て 別 に 発 問 し、 如 来 之 が 為 に 重 ね て 説 く 。 故 に 文 身 句 体 は、 コ 涅 槃 経 』 と 大 同 小 異 な り 〉 。 一 、 斯 経 予 深 秘 五 十 年 于 茲、 時 逢 聖 明、 今 正 流 布 。 窃 意、 五 百 年 之 嘉 運 者 乎 。 見 聞 諸 師、 伏 冀 随 喜 流 通 。 こ こ く ] 、 斯 の 経 は、 予 深 く 五 十 年 茲 に 秘 す 。 時 に 聖 明 に 逢 い 、 今 ひ そ か お も ま 正 に 流布
せ ん と す 。 窃 に 意 う 、 五 百 年 の 嘉 運 な る 者 か 。 見 聞 の 諸 師、 伏 し て 冀 く は 随 喜 流 通 せ ん こ と を V 。一 、 斯 経 始 終、 為 台 賢 二 師 別 頓 判 看 。 至 心 熟 読 、 則 経 旨 精 通 無 遺 。 〈 一 、 斯 の 経 の 始 終 は、 台 ・ 賢 の 二 師 の 別 ・ 頓 の
判
看 を 為 す 。 の こ 至 心 に 熟 読 す れ ば、 則 ち 経 旨 精 通 し て 遺 す無
し 〉 。 一 、 世 説 我 国 台 嶺 慈 覚 大 師 曾 自 大 唐 抄 来 斯 経 、 在 于 某 国 某 寺 。 欲 親 討 校 正 、 老 矣 所 不 能 也 。 暫 俟 後 賢 、 全 、 世 に 我 が 国 の 台 嶺 の 慈 覚 大 師 の 曾 て 大 唐 よ り 斯 の 経 を 抄 も と 来 し て 某 国 某 寺 に 在 る と 説 く 。 親 し く 校 正 を 討 む と 欲 す る も、 】 九 一『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) し ば ら ま 老 に し て 能 わ ざ る 所 な り 。 暫 く 後 賢 を 俟 た ん 。 無 著 謹 誌 〈 無 著 謹 ん で 誌 す 〉 。 無
著
と は、 詳 伝 は 不 明 で あ る が、 後 に 紹 介 す る 「識
語
」 を書
い た無
著
霊 光 の こ と で 、 そ れ に よ っ て 知 ら れ る事
項
は そ こ で検
討
す る こ と に し よ う 。 こ の 「 凡例
」 か ら 見 て も 、内
容
的 に 疑問
が あ っ て 伝 承 し て い た こ と が窺
わ れ る 。 次 に 「大
梵
天 王問
仏
決
疑 経 目 録 」 が 示 さ れ る 。 巻 上 初 会 法 付 嘱 品 第 一 梵 王 決 疑 品 第 二 梵 工 囗 悟 密 意 品 第一、 一 比 丘 得 道 品 第 四 諸 王 得 益 品 第 五 諸 国 安 静 品 第 六 仏 告 般 涅 槃 品 第 七 正 像 末 法 品 第 八 略 説 邪 正 戒 品 第 九 弁 邪 正 口 品 第 卜 諸 法 実 相 品 第 卜 一 禅 定 品 第 十 二 涅 槃 品 第 十一、 一 一 九 二 如 来 病 現 品 第 十 四 生 死 品 第 十 五 梵 王 請 益 外 道 品 第 十 六 巻 下 劫 末 説 法 真 偽 品 第 十 七 略 説 三 宝 品 第 十 八 真 如 匚 口 品 第 卜 九 仏 名 義 品 第 二 十 降 魔 品 第 二 十 一 業 識 品 第 二 十 二 嘱 累 品 第 二 十 三 四 衆 誓 願 品 第 二 十 四 各 品 の内
容
を 簡 単 に 示 せ ば 次 の よ う に な る 。 巻 上初
会
法付
嘱 品第
→ 拈華
微
笑
の 話 を 説 く 。 梵 王決
疑 品 第 二 大 梵 天 王 が前
の 『 法 華経
』 の諸
法
実
相
、 悉皆
授
記 作 仏 の 説 に 対 し て 、今
の 拈華
の 義 趣 の 心疑
の 決 断 を 願 う 。諸
仏 の 密 意 は 言辞
を 以 て 測 度 す べ か ら ざ る こ と 。 摩 訶迦
葉
に は 、多
子 塔前
に て半
座
を 分 か ち 、 久遠
成
仏 す る こ と を 明 か す 。梵
王 口悟
密 意 品第
三密 意 と は 、 一
切
修
多
羅 の 心 体 で あ る こ と 。 正 法 眼 蔵 は、 決 し て 二 語無
い こ と 。 比 丘 得 道 品第
四塵
塵
刹 刹 が密
意 三昧
で あ る と し 、 以 下 に密
意 三昧
を 五 三句
ほ ど 挙 げ て 、 諸説
秘
密
真
言
、 一切
修
多
羅 、 一 切 魔外
の 立法
等
は 、 悉 く 皆 な密
意 三昧
の 異 説 異称
で あ る こ と を 認 め る 。 諸 王 得 益 品第
五 世 尊 が 迦 葉 に付
嘱
し た 正 法 眼蔵
涅槃
妙 心 は 、 諸 仏 の密
意
で あ り、諸
仏 の 心印
で あ り、 諸 仏 の修
多 羅教
の 究 竟 の 実法
で あ る こ と を 、 十 六 大国
王 や無
量 の 小 国 王 が今
日 始 め て 識得
し た こ と を述
べ る 。諸
国安
静
品 第 六護
国 護 法 の 義 を説
き、 正 法 眼蔵
が 正 し け れ ば 安国
で あ り、 正法
眼蔵
が 正 し か ら ざ れ ば 国 が乱
れ る こ と を い う 。 仏 告般
涅 槃 品第
七 涅槃
の 旨 趣 を 説 き 、我
れ は 常 に 霊 山 に在
り 、 不在
の時
の無
い こ と を い う Q 正像
末
法 品第
八 諸 仏 の 妙 法 は常
住
に し て 古 今 の盛
衰 の相
あ る こ と無
し と い う 。 権 実 偏 円 の随
機
方
便 あ る こ と を い う 。 略説
邪 正 戒 品第
九戒
は内
外 に あ ら ず 、 即 ち無
漏性
戒
な り 。 こ の 戒 に外
れ る の 『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) は 、 邪戒
で あ る 。 弁 邪 正 [ 品第
十
外
道 の 六 十 四能
や十
八 惑 人 呪術
の 邪 法 に対
し 、 仏 説 の 四波
羅 夷 ・十
三僧
残
・ 二不
定
法
・ 三十
捨
堕
・ 九十
一 堕法
・ 四懺
法
・ ヂ も 衆多
□ 法 ・ 七滅
口 な ど が 説 か れ る 。 → 切衆
生 は仏
性 を 有 つ と一
言
に統
収 す る な り 。 思 う べ か ら ず、 知 る べ か らず
。 是 の 故 に 拈華
の 旨 は 、 是 を 以 て 知 ら ん 。 夫 れ諸
仏
最
後
の 法義
は、 皆 な 是 の 如 き な り 。降
魔 品 第 二十
→ 降魔
し た い と 思 う な ら ば 、 汝等
の 心魔
を 降 さ ね ば な ら な い 。 心 魔 と は 降 魔 す る思
慮
を も つ こ と で あ り 、 正 思惟
は降
魔
で あ る 。 心 外 に 仏 を 求 む れ ば 、魔
と い う 仏 が 現来
す る 。 も し 心 魔 を 降 せ ば、 則 ち 一 切 の外
魔 は皆
な 悉 く帰
降
し て 即 ち 左右
に 侍 す る な り 。 心 魔 と は 二 辺 の 心 な り 。業
識 品 第 二十
二 一 切 法 の 見 聞等
は 、 悉 く皆
な 業 識 に し て 、自
ら 妄想
せ り 。此
の自
ら の 妄 想 を 除 く の 外 に仏
性 有 る こ と無
し 。業
識
の 相 貌 を 見 た い と 欲 せ ば 、 須 ら く衆
生 の 無常
相
を見
る べ し 。諸
仏
の相
好 を 見 ん と 欲 せ ば 、当
に業
識
の 自 性 を見
る べ し 。 い わ ゆ る業
と は 、 仏 性 自 体 の業
な り 。識
と は 、仏
性
自
体
の識
な り 。 然 れ ば 則 ち 仏 性 の 業 と識
と は 、 → 性 の 二名
な り 。 諸 仏 の 応 世 身 と 衆 生 の 流 転 身 と は各
お の別
な り と 雖 も 、共
に 一仏
性
の 異 称 な り 。 即 ち 是 れ 業識
身
な り 。更
に 生 仏 不 二 が繰
り 返 し説
か れ る 。 今 ま 此 の 経 は 一切
修
多
羅
経 の 骨 髓 な り 、 そ の 一切
の修
多羅
は 此 の 経 の 皮 膚 な り 。嘱
累 品 第 二 十 三迦
葉 に 付 嘱 し た 密 法 は 、 諸仏
の 甚 深 の究
竟 の 正 法 な り 。 す べ 『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) て の 血 気有
る 者 は各
お の 具 せ ざ る は な し 。 迦 葉 は声
聞
で は あ る が 、密
法 は 毘 婆 尸 仏 よ り釈
迦
牟
尼仏
に付
法 さ れ た 正 法 眼 蔵 涅槃
妙 心 で あ る 。然
る に 劫末
の 衆 生 は其
の信
が劣
な る が故
に、 所 以 に 衣 を 迦 葉 に 授 け て 、 以 て 法 の付
続
の 証 と為
す の で あ る 。 そ の 後 に梵
王 に 後 後 の 仏 が出
世 し た時
に般
涅槃
に 臨 ん で 迦 葉 と 同 じ く こ の 会 の よ う に発
問
せ よ と付
嘱 し、 そ れ を 梵 王 は 世 尊 の 勅 と し て 承 知 す る の であ
る 。 四衆
誓 願 品 第 二 十 四 如 来 の 修 多 羅 蔵 は 決 し て滅
尽 す べ か らず
。 世 尊 の 説 法 を 聞 い て 在会
の 百 万 億 の 人 々 が各
々無
上乗
法 眼浄
蔵 を 獲 得 し 、 諸 天 等 も無
上 乗 法 眼 浄 を得
て 、 正 法蔵
を護
持
す る こ と を誓
願 し、 退席
す る 大 梵 天 王 も 諸 眷属
と 共 に如
来
が 正 法蔵
を 付 嘱 し た こ と を 心 に銘
み 護 念 し て 、 各 々仏
足
を 頂 礼 し 、 信 受奉
行 す る こ と で 終 わ る 。 以 上 の 二 四 品 を 終 え て 、 「 大 梵 天 王問
仏
決 疑経
巻
下 く 大 尾 V 」 に続
き 、続
蔵 経 本 に は 、 「識
語 」 が 存 し 、 そ の 伝 承 が 記 さ れ て い て 興味
深 く、 次 の よ う に 示 さ れ て い る 。 茲 時、 享 保 十 二 丁 未 仲 夏 吉 祥 日 。 陸 奥 州 南 部花
巻 玉 鳳 山 瑞 興 寺十
八 世 隠 野 衲 無著
霊 光 拝 書 く 時 七 十 八 歳 V 〈 茲 の 時、 享 保 十 二 丁 未 ( 一 七 二 七 ) 仲 夏 吉 祥 の 日 。 陸 奥 州 南 部 花 巻 玉 鳳 山 瑞 興 寺 十 八 世 隠 野 衲 無 著 霊 光 拝 書 す 一 九 五『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) 〈 時 に 七 十 八 歳 な り V >
右 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 〈 全 軸 分 為 二 本 〉 、 東 奥 南 部 洞 上 老 隠 無 著 光 師 五 十 年 間 所 秘 珍 也 。 親 附 凡 例、 具 陳 来 由 〈 乃 載 巻 首 〉 。 今 茲 偶 獲 転 写 之 本、 感 喜 無 措 。 手 謄 写 焉 。 時 享 保 庚 戌
解
制 日 、 謹 書 。 或 日 、 相 伝 、 斯 経 本 邦一 . 一 所 珍 蔵 。 其 一 奥 州 平 泉 光 堂 〈 秀 衡 廟 所 。 経 堂 今 存 〉、 其 二 濃 州 郡 上 長 瀧 〈 天 台 古 刹 〉 、 其 三 摂 州 水 出 三 宝 寺 〈 能 忍 旧 跡 、 今 作 洞 宗 〉 也 。 未 詳 斯 経 存 不 。 按 洞 老 之 所 伝 写 者、 正 是 光 堂 経 本 也 耳 。 更 可 希 求 者 、 郡 上 台 刹 〈 号 阿 名 寺 〉 。 彼 納 宋 朝 渡 来 之 名 蔵 二 部、 近 来 刊 行 珍 書 、 多 出 斯 蔵 。 因 思 斯 経 亦 存 不 可 測 矣 〈 斯 蔵 非 守 護 金 森 許 容、 不 能 輒 窺 〉 。 我 老 不 能 捜 求 。 後 来 有 台 縁 者、 上 稟 天 台 門 主、 及 依 憑 学 頭 僧 正 、 而 須 拝 閲 校 整 焉 。東 叔 老 禅、 写 本 之 末 置 此 一 紙 。 〈 右、 『 大 梵 天 土 間 仏 決 疑 経 』 〈 全 軸 分 か ち て 二 本 と 為 す 〉 は 、 東 奥 南 部 洞 上 老 隠 無 著 光 師 の 五 十 年 間 秘 珍 す る 所 な り 。 親 し く 凡 例 を 附 し て、 具 さ に 来 由 を 陳 ぷ A 乃 ち 巻 首 に 載 す る な り 〉 。 こ こ た ま 今 ま 茲 に 偶 た ま 転 写 の 本 を 獲 て 、 感 喜 す る こ と 措 く こ と 無 し。 手 つ か ら 焉 を 謄 写 す 。 時 に 享 保 庚 戌 二 七 三 〇 ) 解 制 の 日 、 謹 ん で 書 す 。 或 が 曰 く、 相 い 伝 う、 斯 の 経 は 本 邦 の 三 所 に 珍 蔵 せ り、 と 。 其 ひ か り の 一 は 奥 州 平 泉 の 光 堂 〈 秀 衡 の 廟 所 な り 。 経 堂 今 に 存 す V 、 其 ぐ じ よ う ぐ い た の 二 は 濃 州 郡
L
の 長 瀧 八 天 台 の 古 刹 な り 〉 、 其 の. 二 は 摂 州 水 田 九 六 の 三 宝 寺 〈 能 忍 の 旧 跡 な り 。 今 は 洞 宗 と 作 る 〉 な り 。 未 だ 斯 の い な 経 の 存 す る や 不 や を 詳 か に せ ず 。 洞 老 の 伝 写 す る 所 を 按 ず れ ば、 正 に 是 れ 光 堂 の 経 本 な る の み 。 更 に 希 求 す べ き は、 郡 上 の カ し こ 台 刹 く 阿 名 寺 と 号 す V な り。 彼 に 宋 朝 渡 来 の 名 蔵 二 部 を 納 め、 近 来 刊 行 の 珍 書 は、 多 く 斯 の 蔵 よ り 出 ず 。 因 て 斯 の 経 を 思 え ば 亦 た 存 す る こ と 測 る べ か ら ざ る な り 〈 斯 の 蔵 は 守 護 の 金 森 の た や す 許 容 に 非 ざ れ ば 、輒
く 窺 う こ と 能 わ ず 〉 。 我 れ 老 に し て 捜 求 す る こ と 能 わ ず 。 後 来 に 台 の 縁 有 る 者 は、 上 は 天 台 門 主 を 稟 け、 及 び 学 頭 僧 正 に 依 憑 し て、 須 ら く 拝 閲 校 整 す べ し 。 東 叔 老 禅、 写 本 の 末 に 此 の 一 紙 を 置 く V 。享
保 十 七 年 子 之 二 月 、 実 海 的 座 元 持 此 本 而 詣 郡L
長 瀧 寺、 依 憑 阿 名 院 教 聞 坊 、 大 仁 坊、 神 主 斎 等 而 開 経 蔵、 委 悉 拝 閲、 終 無 斯 経 矣 。 〈 享 保 十 七 年 子 ( 一 七 三 二 ) の 二 月 、 実 海 的 座 元 は 此 の 本 を 持 ち て 郡 上 の 長 瀧 寺 に 詣 し て 阿 名 院 の 教 聞 坊、 大 仁 坊、 神 主 斎 等 に 依 憑 し て 経 蔵 を 開 き 、 委 悉 拝 閲 す る も 、終
に 斯 の 経 無 し 〉 。 こ れ ら の 「識
語
」 よ り、 続 蔵経
の底
本 に な っ た写
本
は、享
保 一 五年
2
七 三 〇 ) に 東叔
老禅
の書
写
に よ る も の で あ る こ と が 知 ら れ る 。更
に そ の 原 本 は享
保
一 二年
( 一 七 二 七 ) に 七 八 歳 の無
著 霊光
( 一 六 五 〇1
一 七 二 七〜
P
) が 書 写 し た も の で、 「 凡例
」 も こ の 人 の 手 に な る も の で あ る 。瑞
光寺
は 曹 洞宗
の 寺 院 で花
巻
市
坂本
町 に 現 存 す る が 、 火 災 の為
に寺
宝 は 焼失
し て 残 っ て い な い と の こ と で あ り 、 無 著 霊
光
な る 人 が 一 八 世 に 当 た る と い う 記 録 も 存 在 し な い と の こ と で あ る 。東
叔
老
禅
に よ れ ば、 無 著 の 写 本 は彼
の 有 名 な 平 泉 の光
堂 の 経本
で あ っ た と推
測 し て い る 。の 「 識 語 」 は 、 同 じ く
東
叔 が付
加 し た も の と 思 わ れ 、 二 年 後 に実
海
的 座 元 が 郡 上 の 天 台古
刹 の長
瀧
寺
に 伝 承 さ れ た写
本 を 捜 求 し た が当
時
既 に 見 つ か ら な か っ た と 伝 え て い る 。今
一 本 の 写 本 も 興味
深 い 。 日 本 達 磨宗
の大
目能
忍 が 開 い た 吹 田 ( 水 田 ) の 三 宝寺
に 存在
し て い た と い い 、享
保
の 頃 に そ の寺
が曹
洞宗
に 属 し て い た と い う の も 興味
深 い 。 三 宝 寺 は 既 に 現 存 し な い の で 、 こ の 寺 の 所 蔵 と伝
え る写
ほ も本
も 不 明 と 言 わ ざ る を え な い で あ ろ う 。 た だ、 「 凡例
」 や 「識
語
」 か ら で は 、 享 保 年 間 頃 の伝
承 を 確認
で き る だ け で 、 「 凡 例 」 のに 「 慈 覚 大 師 円 仁 ( 七 九 四 − 八 六 四 ) 」 の
将
来
を 記 す が、 「 拈華
微 笑 」 の 話 の 成 立 か ら い っ て も 、 全 く の 信 頼 で き る内
容
け ア と は 思 わ れ な い 。 こ の 問題
は 後 に検
討 す る こ と に し よ う 。 三 、 一 巻 本 『 大 梵 天 王 間 仏 決 疑 経 』 の 構 成 と 内 容 の 要 旨 続 蔵経
に は 、 上 記 の 『 問 仏 決 疑経
』 二 巻 に 続 い て 、 一巻
本 が 収 め ら れ て い る 。 二 巻 本 と は 異 な り 、 一巻
本 に は 「 凡例
」 や 「 識 語 」 に相
当 す る も の は 見 あ た ら な い 。 目 次 も 元来
の 写本
に は 存 在 し な か っ た よ う で 、続
蔵 経 に収
め る に あ た っ て 「 新加
」 さ れ て い る 。 新 加 さ れ た 「 大梵
天 王 問仏
決 疑経
目次
」 は , 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) 七 品 で、 次 の よ う に な っ て い る 。 序 品 第 一 拈 華 品 第 二 月輪
品 第 三 法 界 品 第 四 六 大 品 第 五 降魔
品 第 六 往 生 品 第 七 共 通 す る 品 名 は 二巻
本
の 「降
魔
品 第 二 十 】 」 と 一 巻本
の 「降
魔 品 第 六 」 の み で 、 そ の 「 隆魔
品 」 は 分 量 も 二 巻本
に 比 べ て 一巻
本 が 五 倍 あ り 、 そ の内
容
は 全 く 異 な っ て い る 。各
品 の 内 容 を 二 巻本
と 比 較 し な が ら 簡単
に 示 せ ば 次 の よ う に な る 。 序 品 第 一 世 尊 が 霊 鷲 山頂
で久
し か ら ず し て 般 涅槃
す る こ と を 述 べ 、 大衆
に 発 問 を 促 す が大
衆
は 黙 然 と し て 声 が な い 。 凡 夫 の 心中
に は 元 よ り仏
心 が あ り、 凡 夫 が 成 仏 し て大
妙
法
に 至 る と い う 教 え を 、摩
訶
迦葉
に付
す こ と を 示 唆 す る 。 拈 華 品第
二 大 梵 王 が 金 婆羅
華
を如
来 に 奉 っ て説
法 を 願 う 。如
来 が 拈 華 す る も 、 八 万 四千
の大
衆 は 黙 然 と す る の み 。摩
訶 迦 葉 が 破顔
微 笑 し て 、 正 法眼
蔵
が 付 嘱 さ れ る 。 そ の伝
法 は 過 去 七 仏 の儀
九 七『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 )
式
と す る 。 大 梵 王 の 質問
が続
き、後
五 百 歳 に 摩訶
迦
葉 の み が 「 真道
象 」 を 伝 え る 。 正法
八 百年
、 像 法 千 二百
年
、末
法 五千
五白
年
、 そ の 後 五 百年
に 人間
世 の 閻 浮 中 の こ と が語
ら れ る 。 そ の後
、 拈 華 微 笑 の話
が繰
り 返 さ れ、付
嘱 と 共 に摩
訶 迦 葉 の 成仏
の 授記
が 与 え ら れ る 。成
仏
は コ 心 性 」 に よ る 。 八 万蔵
経 の諸
教 は、 → 心 を乗
せ る 器 と す る 。 摩 訶 迦葉
は 過去
の 成仏
理解
を 否定
し て 、 「刹
那 成 仏 」 を 讃 嘆 す る 。 大梵
天 王 か ら 入得
と修
行 の 方法
を 聞 か れ て 、仏
は 「 ( = 心性
」 に依
る こ と を 明 か す 。 大 梵 天 王 の 問 に 対 し て 、摩
訶 迦 葉 が 得 た 一 心 の 理 は 一 切 の 教 と 同 じ で あ る と い う 。 心 性 の 道 は 、 在家
出
家
共 に 具 足 し て い る と 明 か す 。 月輪
品 第 三 月輪
に 朔 ・ 絃 ・ 望 ・晦
が あ っ て も 、摩
訶 迦葉
の今
日 の未
成仏
は 、 未来
の 成 仏 の 授記
と 同 じ で こ れ を 「 見性
仏
」 で あ る と い う 。 十 五 道 (十
波羅
蜜
・ 五智
〉 の 自 己 の成
仏
を 述 べ 、 こ れ を 「 心 性 」 と か 「 仏性
」 と い う 。 法 界 品 第 四 七 法 界 ( 三 法 身 法界
・ 五 因縁
法 界 ・ 四 気 法 界 ・ 七 大 法界
・ 三世
間
法 界 ・ 四 順 逆 法界
・ 十 界 法 界 ) を 述 べ 、 そ れ ぞ れ を 等流
・智
行 ・ 成 仏 の 三 法身
法 界 、 法 性 ・ 無 明 ・ 逢著
・ 執 行 ・後
会
の 五 因 縁 法界
、 空気
・ 陽 気 ・陰
気 ・ 生気
の 四 気 法 界 、 地 大 ・水
大 ・ 火 大 ・風
大 ・ 空大
・識
大 ・ 根 大 の 七 大 法 界 、器
界
・衆
一 九 八 生 ・ 五蘊
の 三世
間 法 界、 五徳
・十
善 ・ 四諦
・ 六 度 の 四 順 逆 法界
、 地獄
・非
情
・ 鬼 界 ・ 畜 生 ・ 人 間 ・仙
天 ・ 二 乗 ・ 空界
・菩
薩・ 仏 界 の十
界法
界
に 開 き、更
に そ れ ぞ れ を詳
説
し て い る が、 四 諦 ・ 六 度 等 省略
も あ り、 す べ て の項
目 に 亙 っ て は説
明 し て は い な い 。中
で も 注 目 す べ き は 、 順 の 五徳
と し て、 孝 父 ・孝
母 ・ 忠 君 ・ 助 聖 ・帰
三 宝 と し 、 逆 の 五 徳 と し て 、殺
父 ・殺
母 ・ 殺 君 ・殺
聖 ・ 破 三 宝 を 挙 げ て い て 、中
国的
思 考 が 見 ら れ る こ と で あ る 。 ま た 、 こ の 品 の最
後
に は 、 五十
二位
の 修 行 の 階位
も 明 か さ れ る 。 六大
品第
五 七仏
が 空 ( 金 行 、 肺 と 属 ) ・ 風 (木
行
、 肝 と属
) ・ 火 ( 火 行、 心 と 属 ) ・ 水 (水
行
、 腎 と 属 ) ・地
( 土 行 、脾
と 属 ) ・ 識 ( 空・ 王11
法性
11
如 来 蔵 ) の 六 大 法 を 説 く こ と を 明 か す 。 転輪
王 が 五 行 ( 木 火 土 金 水 ) だ け を 言 う の は 、 天 地 の み で 、諸
仏如
来 の 知 っ て い る 十 界 人 の業
因
報
果 の 天外
を言
わ な い か ら と す る 。 更 に 五大
は滅
す る が 、 如来
蔵
の 識 大 は 不滅
と 説 い て い る 。降
魔
品第
六 (こ
天魔
常
作障
魔
(11
天 魔作
障
魔
冒 天 鬼領
気障
魔
) (高
智
破
戒
報
魔
・持
戒
軽
智 報 魔 ・修
定
著
怪
報
魔
・智
戒
四 見 報 魔 ・依
宝 不 法報
魔
・ 妙解
無 報報
魔 ・智
行慢
心報
魔
・有
智
無 質 報魔
・表
学 誑 人報
魔 ・ 長弁
楽
輪
報
魔
) 、 ( 二 )外
道
邪 見障
魔 (11
外魔
) (帰
気
断
滅
魔
見 ・成
神
鬼
界
魔
見 ) 、 ( 三 )釈
中
邪解
障魔
(11
他魔
外
道 邪 見魔
11
釈中
典
会
魔 ) (文
字
博学
見
魔
・ 要 約 愚 痴 見魔
・ 易 行著
相 見 魔 ・ 難行
著
相
見魔
) 、 ( 四 V 知 見 差 路障
魔
( ロ 自 魔 ) ( 禅 坐 不 得 迷魔
・弁
達 不悟
迷 魔 ・ 凡 聖 不別
見魔
・慮
難 不 発 見魔
・ 慮 易 差 別 路 魔 ・ 知 見 不修
迷
魔
・能
修
不 見 迷 魔 ・ 見 空 不 中 迷魔
・見
滅
不 実 迷魔
・ 心教
不同
迷魔
) の 四 種魔
を 明 か す 。特
に こ の経
が 唯 だ経
文 字章
句
に 依 ら ず 、 此 の 経 理 を 以 て 心 心 に 伝 え る こ と が 強調
さ れ る 。 ま た 興味
深 い の は 、 一 如来
・ →経
句 ・ 一菩
薩
を 念 ず る 一行
の 易 行 に執
着
す る こ と が 否 定 さ れ て い る 。 往 生 品第
七往
生 説 は 善 巧 に し て 往 生 を 求 めず
普 賢 の 大 道 を修
行 す る 大根
菩 薩 の今
生得
利
勝
機
と 、 無 量寿
仏
を 専 念 し て命
終
後 に 極 楽 に往
生 す る 下根
愚痴
菩
薩 の 後 生得
利
劣 機 の 二 種 の機
に 修 行 者 を 分 け る 。 唯 だ後
者
は 劣 行 で あ り、 こ れ を 勝 行 と 誤 り、 他 人 に勧
め る こ と を 認 め る こ と は な く、 阿 弥 陀 仏 の本
願 心 に も 背 く と い う 。 更 に命
終
後
の 蓮 華 土 と大
道 を 行 ず る時
に 蓮 華 が 即 ち開
く 実 往 生 の 二 生 を 説 く 。 亦 た 九 品 の 外 の 一 生 に 四 輩 を 分 け る 。 一 に 六 度 を修
行
す る 開 悟 発智
の 菩 薩 道 人 、 二 に 漏 尽 の大
阿
羅 漢 、 三 に 『法
華
経 』 を 受持
し て開
示悟
入 す る 人、 四 に無
上 神 呪 を 受 持 し て 五 智 如来
の 五色
光印
を作
し 、 光 明 真 言 を誦
え て 法 身 を成
す 人 で あ る 。 四種
根
の 真言
行
人 は、 現 存 テ キ ス ト で は 欠 け て い る 。最
後
に極
大 乗 法 が 説 か れ、前
の 方便
禅
・中
の 得 道禅
・後
の真
実
禅 の 三 種 の如
来禅
が 明 か さ れ る 。 こ の 『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 )説
は 後 に 詳 し く紹
介
す る 。こ れ ら の
内
容 の簡
単 な紹
介 か ら も知
ら れ る よ う に 、確
か に 「 拈華
微 笑 」 の 話 の 共 通 性 は見
ら れ る も の の 両者
は 明 ら か に 内容
を 異 に す る も の と 言 っ て よ い 。 一巻
本
は 決 し て 二巻
本
の 抜粋
と 呼ば
れ る よ う な も の で は な い 。 一 巻本
に は、 か な り 独 自 の 法 相名
目
が存
す る 箇 所 も あ る 。 四 、 「 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 」 の従
来
の 研 究 研 究 を中
心 と し て 忽 滑 谷 快 天 の本
書
の 研究
は、忽
滑 谷快
天 氏 の 「大
梵
天 王 問 仏 決疑
経
に 就 て 」 ( 「禅
学
批
判論
附 録 』 明 治 三 八 年 一 → 月
;
一 日、 鴻 盟社
) お よ び 「第
二編
第十
七 節 拈 華 微笑
の本
拠
如 何 」〜
「第
二十
一節
宋 濂 と
大
梵 天 王 問 仏 決疑
経
」 ( 『禅
学 思 想史
上
巻
』 所収
、玄
黄
社 、 大 正 一 二年
七 月 ) に代
表
さ れ、 そ れ 以 降 は研
究
さ れ な い ま ま今
日 に 至 っ て い る 。前
者
の説
は 、 「緒
言
」 と 二 四項
目 で成
り 、 各項
目 は詳
細 で は な い が 、概
括 し て あ る の で 、 そ れ に 基 づ い て概
要 を 述 べ て み よ う 。緒
言
東
大 路 鉄 門 師 の写
本
( 元 来 は 西 有穆
山所
蔵 の 写本
)き
を
借
覧
の機
に真
偽 の考
証 を し た こ と 。第 一
内
容
。 上 下 二 五 品 の 品名
列 挙 ( 続 蔵経
巻 八 七 三 〇二 左
下
〜
三 〇 三 右 上 参 照 ) 。 こ こ に 忽 滑 谷 氏 が 二巻
本 を 問題 と し て い る こ と が 明
確
に な る 。 但 し、続
蔵
経
の 二巻
本 一 九 九『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) は、 二 四 品 で あ る が 、 忽 滑 谷 氏 は、 下
巻
に 百字
品 を紹
介 し、 全体
二 五品
と す る 。 第 二 説時
。 「 法華
の 後 に し て 入涅
槃
の前
」 (同
1
三 〇 三 右 下 、 三 〇 三 左 ヒ を 根拠
) 。 第 三 主張
。 コ 切 の 言 教 は 皆 仮 説 な り取
る に 足 ら ず、 耳 口 所伝
の 法 は 真 の 大 法 に は あ ら ず 」 ( 同 − 三 一 九 右 下 を根
拠 ) 。 「世
尊
の拈
華 は釈
迦
牟
尼 仏 の 伝 法 に 際 し て の儀
式 の み に あ ら ず し て 過 去 七 仏 の儀
式 な り 」 (同
1
三 二 四 左 上 ? 、 三 二 四左
上 を根
拠
) 。 「 拈 華 の 中 に 八 万 の法
蔵
も含
ま れ て あ る 」 ( 同 − 三 二 〇 左 下 を根
拠
) 。 第 四 大 小 乗 。 大 乗 (同
−
三 → 六 左 下 、 三 → 九右
上 、 一一 二 九 右 上 、 三 〇 三左
上等
を根
拠
) 。 た だ 、 迦 葉 の 讚 嘆 に特
色 。 第 五 古説
。 面 山 瑞 方 ( 一 六 八 三〜
一 七 六 九 ) ・諦
忍律
師 妙 龍 ( 一 七 〇 五 〜 八 五 ) は 日 本 撰 述説
。萬
仞
道
坦 ( 一 六 九 八〜
一 七 七 五 ) ・ 黄泉
無 著 ( 一 七 七 五〜
一 八 三 八) は 王 荊 公 の い う の は真
撰 、江
戸
の 流 布 本 は 偽撰
説
。忽
滑 谷 説 は 面 山 ・諦
忍 説 を 支持
す る 。 こ の 件 は後
に詳
述 す る 。第
六真
偽 。 忽 滑 谷 説 の 真経
と は 、 「 実際
釈尊
が説
か れ た 教 へ 、 又 は 其 事 実 を弟
子 の 迦 葉 等 が結
集
し て後
世 に 伝 へ た経
」 と す る 。第
七 偽 経 。 忽 滑 谷説
は 面 山 ・ 諦 忍説
を 支持
。両
人 は 「 日本
撰 述 説 」 の 理由
を 明 記 し な い の で、 こ れ よ り 以 下 に お 二 〇 〇 い て自
説
を説
く 。第
八 理由
( 一 ) 。 「 訳 人 の名
が な い 」 。第
九 理由
( 二 ) 。 「 将来
の祖
師
が な い 」 。第
十
理由
( 三 ) 。 「 大 蔵 中 に其
目 録 す ら な い 」 。第
十
一 理 由 ( 四 ) 。 「 日本
的 の 漢 文 」 。 「依
て 日本
作
の 偽経
」 と す る 。第
十
二 理 由 ( 五 ) 。 「如
来
臨 終 の 時 に 」 「 迦葉
の 在 座 は 歴 史的
事
実
と撞
着
を 来 す 」 。第
十
三 理 由 ( 六 ) 。 「 此経
に は 又 五 時 八 教判
釈
の 語 が あ る は 」 (同
− 三 〇 六 右 下 、 三 一 六右
上、 三 一 六右
下
、 三 一 六右
下
、 三 〇 六 右 上 を根
拠 ) 「 仏 の在
世 よ り 」 あ る こ と に な り 、 「 尤 も笑
ふ べ き こ と 」 。第
十
四 理 由 ( 七 V 。 「 教相
を破
す る 」 「禅
門 の慣
用語
」 (同
− 三 二 四 左 上、 三 一 九 右下
、 三 一 九右
上、 三 一 九 右 上 、 三 〇 九 左 上 、 三 一 〇 左 ヒ 、 三 一 七 左下
、 三 一 七 左 下、 三 一 八 左 下 を 根 拠 ) の 「 生 也 全機
現 。 死也
全機
現
」 ( 同⊥
二 一 〇右
上 を 根 拠 )等
が 「 用 ひ て あ る 」 の で 、 「 其 作者
の 宗旨
も 大概
推 量 が 出 来 る 」 。第
十
五 理 由 ( 八 ) 。 「支
那 の儒
教 道教
な ど の 思 想 を 言 明 」 ( 同 − 三 〇 六右
上 、 三 〇 六 右 上 を根
拠 ) 。 第 十 六 理 由 ( 九 ) 。 「作
者 が後
世
の同
体
別 体 な ど の語
を 用 ひ て 経 文 を造
つ た 」 ( 同1
三 一 六 左 下 を根
拠
) 。第
十
七 理 由 ( 十 ) 。 法相
宗
の 四 分 の義
あ り 「 相 分、自
性 分 な ど の 語 を 用 ひ て 経 文 に 編 入 し た る は杜
撰 」 ( 同 − 三=
右 上 を 根 拠 ) 。 第 十 八 理 由 ( 十 → ) 。 『 律 師 』 と い う 文 字 あ り 。 「 経中
に 律 師 と い ふ 一 団僧
が あ る 理 由 は な い 」 (同
ー 三 〇 七 左 下 を 根 拠 ) 。 第 十 九 理 由 ( 十 二 ∀ 。 「応
知我
諸
比 丘 。 若 欲 行 婬、応
捨
法 服、 著 俗 衣裳
。 然 後 行婬
、復
応
生念
。 婬 欲 因 縁、非
我
過 咎 。如
来在
世、 亦有
比 丘、習
行
婬欲
、得
正解
脱 」 ( 同 − 三 〇 七 左h
を 根拠
) の 文 は 、如
来
在世
の 語 は 「 後 世 の 人 の 言 ふ 所 」 。 「 況 ん や 欲 行婬
、 応捨
法服
、 著 俗 衣 裳 と い ふ に 於 て を や 」 。 第 二 十 理 由 (十
三 ) 。 空仮
中
の こ と を 説 く 。 「 空 仮中
の名
義
が 井 然 と し て成
立 し た の は 天 台 以降
な る こ と 異論
な か ら う 」 ( 同 − 三 一 九 左 上、 三 二 一 左 下 を根
拠
) 。 第 二 十 一 帰 結 。 内外
か ら の 観察
に よ り 、 「 ど う も 此経
は 日 本 作 の 偽 経 の や う に 見 え る 」 。 第 二 十 二 拈 華 。 「古
来 拈 華 の 公案
に は 一 定 の 文 字 が確
立 し て 居 ら ぬ 」 ( 同 − 三 〇 三 左 上 を根
拠
) 。拈
華
の時
処 も 、 「 或 は 霊 山 と な し、 或 は 涅槃
会 上 と な し 、或
は 多 子 塔前
と す る 、 拈 華 の 時 も 或 は 『 涅 槃 』 と 同時
と し、 或 は 『 法 華 』 の 後 『 涅槃
』 の前
と し 、 或 は 『 阿含
』 の 時 と し て 一 も確
『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑 経 』 を め ぐ っ て ( 石 井 ) 定 せ ぬ 」 。 第 二 十 三付
法
。拈
華 を 除 い て付
法 と す れ ば 、 『涅
槃
経 』 の 説、 『雑
阿 含 』 「 華 手経
』 等 の 分座
、 『 舎 利弗
問
経
』 『 大 悲 経 』 『付
法 蔵 伝 』等
に よ る こ と に な る 。 「併
し 正 法眼
蔵 の 熟 字 は諸
大
乗
経
に な い 」 。 第 二 十 四注
意
。 「禅
宗
の 真価
は 此経
の真
偽
と 少 し も関
係 は な い 、 拈華
付
法 の 事 は 宗 門 の 面授
相
伝
で あ る か ら経
文 に 記 し て あ る筈
は な い 」 。 「 予 が 此論
文 は禅
門
に害
を与
へ る も の と 誤解
し て は 困 る 」 。 以 上 の 紹介
で忽
滑 谷 説 が い か な る も の で あ る か を、 ほ ぼ 知 る こ と が で き る が、 先 に言
う よ う に忽
滑 谷 氏 が 全 く ふ れ な い 問 題 点 は 、 大 き く 二 つ に ま と め ら れ よ う 。 (1
) 一 巻 本 『 大 梵 天 王 問 仏 決 疑経
』 に つ い て 。 (2
) 一 巻 本 と 二 巻本
と の 関 係 に つ い て 。 こ の 問 題 は後
述
す る こ と に し た い 。 五 、 面 山 ・ 諦 忍 の 日 本 撰 述 説 に つ い て 忽 滑 谷 氏 の第
五 の古
説 の紹
介
に お い て、 そ の出
典
が 論 文 で は は っ き り し な い と こ ろ が あ る の で、忽
滑 谷氏
が 基 づ い た も の か、 あ る い は そ の 後 に活
字
化 さ れ た資
料
の出
典箇
所 を 紹 介 し な が ら 、 面山
瑞
方
・諦
忍律
師 妙 龍 の 日本
撰
述
説 を 中 心 に 確あ さ か わ 認 し て い こ う 。
忽
滑 谷 氏 は 『 禅 学 思 想 史 』 に お い て は 、 朝 川 二 〇 一分 付 摩 訶 大 迦 葉 、 此 経 多 談 帝 王 事 仏 請 問、 所 以 秘 蔵 世 無 聞 者 く 「 宗 門 雑 録 」 を 引 き て 云 く、 王 荊 公、 仏 慧 泉 禅 師 に 問 う て 云 く 、 禅 家 の 所 謂 る 世 尊 の 拈 花 は 何 の 典 に 出 つ る や 。 泉 云 く 、 蔵 経 に も 亦 た 載 せ ず 。 公 曰 く、 余、 頃 ろ 翰 苑 に 在 り て、 偶 た ま 『 大 梵 ち な み 天 王 問 仏 決 疑 経 』 三 巻 を 見 る 。 因 に 之 れ を 閲 す る に 、 経 文 に 載 す る 所 甚 だ 詳 し 。 梵 王、 霊 山 に 至 り、 金 色 の 波 羅 花 を 以 て 仏 に す 献 じ、 身 を 舎 て て 床 座 と 為 し、 仏 に 請 う て 衆 生 の 為 に 説 法 せ し む 。 世 尊 座 に 登 り て、 花 を 拈 じ て 衆 に 示 す に、 人 天 の 百 万、 悉 く 皆 な 措 く こ と 罔 し 。 独 り 金 色 の 頭 陀 の み 有 り て 、 破 顔 微 笑 す 。 世 尊 云 く 、 吾 に 正 法 眼 蔵 、 涅 槃 妙 心、 実 相 無 相 有 り 、