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意義をめぐって

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(1)

︑ 継 承 財 産 設 定 に は

︵ 厳 格 継 承 財 産 設 定 s t r i c t s e t t l e m e n t  

継承財産設定とは はじめに むすび

未確定残余権

C o n t i n e n t Re ma in de rs と遺贈将米権

Ex ec ut or y D e v i s e  

その仕組みも杜会の変化に対応して発展をとげている︒

伺 婚 姻 継 承 財 産 設 定 詞 売 却 信 託 t r u s t f o r   s a l e

婚姻継承財産設定

Ma rr ia ge S e t t l e m e n t の歴史的紅義をめぐって

単一の譲与により複数の連続的に継承される不動産権か設定される処分のことである︒継承財産

(2 ) 

設定そのものは中棋以来の歴史をもつものであり︑

用意規定

P r o v i s i o n の確立と地主家族

婚姻継承財産設定の現実的構造

はじめに

H

婚姻継承財産設定

M a r r i a g e

意義をめぐっ

S e t t l e m e n t  

近代におい

の歴史的

(2)

時期に土地所有の拡散を防止する法的技術として普及している︒厳格継承財産設定か︑

固定化するために

土地を集積する大地主達によって利用されたことは言うまでもない︒政治権力が土地所有によって 基礎づけられる社会において︑厳格継承財産設定が政治権力を掌握する大地主達の土地所有を支える法的基礎となって

いたことは︑戒能通厚︑椎名重明氏の研究によっても示されている︒ 地主達を犠牲にして推進されたことは 本稿の対象とする時期でもあるか︑ ばならないからである︒ 本稿において検討するハバカク

(3

) 

三種類かあるか︑本稿の対象となるのは最初の二つである︒厳格継承財産設定は︑十七世紀中頃にブリッジマン

0 .

ri dg em an

やパーマー

G . Pa lm er などによって考案されて急速に普及したところの︑﹁未確定残余権を保持する受

(4 )  託者達

t r u s t e e s t o  

p r e s e r v e c   on tm ge nt r   e m a i n d e r s

の方式は︑財産か夫と妻によってどのように享受され︑また財産か彼らの死亡によって彼らの子供達の間でどのように 分けられるのかを︑婚姻のときに定める婚姻継承財産設定においてとられるのか通例である︒婚姻継承財産設定におい て定められた土地の相続や用意規定

p r o v i s i o n などの合意事項か厳格継承財産設定の方式をとることによって確実に果 たされるようになったことに大きな意味があり︑

(5

) 

か︑実際にはこの二つは常に結合されているので︑本稿でも別々の扱いはせず両者を一体的なものとして検討したい︒

コモ

ン・

ロー

の無

遺︱

︱ 不‑ E

この両者を区別されるべき別の性格のものであるとする見解もある H .

 

J•

Ha ba kk uk も両者を区別することなく一体的なものとして扱っている︒

うのは︑婚姻継承財産設定か厳格継承財産設定の方式をとることによって︑

土地の保存と︑

産相続によって犠牲にされてきた用意規定の供与とを同時に実現することが法的に確立されたことに重大な発展をみね

一六

0

年から一七四

0

年にかけて少数の大地主達への土地所有の集中が中小の

(6 )  ハバカクの一連の研究によって指摘されている︒厳格継承財産設定もはぱ同じ

土地の移転の自由を奪い土地を

とい

を挿入して設定される継承財産設定の方式をさすか︑

(3)

婚姻継承財産設定

Ma rr ia ge S e t t l e m e n t の歴史的意義をめぐって

(2 ) 

(1 )  ベイカー小山貞夫訳﹃イングランド法制史概説﹄

一九七五年︑二六二頁︒ また︑大地主への土地所有の集中は︑当然のことながら土地が自由に売買される土地市場の存在が前提とされる︒移

転の自由が認められた土地が大量に市場に出回らない限り︑

定を受けている土地は︑その解除によって完全な移転の自由が認められ︑第三者への売却のために土地市場へもたらさ

れうることは言うまでもない︒従って︑厳格継承財産設定そのものは

か土地市場を通じて実現される土地集中を阻害しないような歴史的条件のもとで普及したところにこの時期の厳格継承

財産設定の特殊な機能かあると思われる︒しかし︑そうした歴史的条件のもとでの厳格継承財産設定の現実的構造は

紀前

半︶

土地所有の集中は実現されないであろう︒厳格継承財産設

土地の移転の自由を制限して土地を保存するこ

一面では自由な土地市場の成立を阻害する機能をもちうるものであるが︑厳格継承財産設定

単なる法的技術の説明からは明らかにならない性質のものであり︑我が国においてもこの時期︵十七世紀末から十八世

(8 ) 

の継承財産設定の現実的構造についての研究は十分とはいえない状態にある︒筆者がハバカクの研究とそれを

めぐる論争に注目するのは︑十七世紀末から十八世紀前半にかけての厳格︵及び婚姻︶継承財産設定の現実的構造を明

らかにする手がかりを与えていると思われるからである︒しかし︑厳格︵及び婚姻︶継承財産設定と大土地所有制の形

成との関連をめぐる論争には︑法制史になじまない論点も含まれているので︑論点全体をフォローすることは筆者のカ

(9 ) 

量を越えている︒従って︑筆者としてはハバカクをはじめとする研究から厳格︵及び婚姻︶継承財産設定がどのよう

な歴史的条件のもとで機能し︑それか当時の地主社会にどのような変化をもたらしたかをさぐることを課題としたい︒

従って︑十七世紀末から十八世紀前半にかけての継承財産設定を実証的に研究することも本稿の課題ではない︒

﹁条件附贈与法は︑裁判所によって解釈されたごと<限嗣封土権者の直系卑属か存続する限り土地か永久に移転されないような方

法で土地所有者がその土地を継承財産設定することを可能にしたからである︒﹂

A .

W .  

B .   S im ps on .  A n  I n t r o d u c t i o n   t o   t h e   Hi st o 

とを目的としているから︑

(4)

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("1') W. Blackstone, Commentaries on the Laws of England,1765‑1769, Book II, reprint, 1966, PP.171‑172. 

(LD) t‑< 0i" 

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Settlement of Land in Nineteenth‑Century England, The American Journal of Legal History, vol. 8. 1964. PP. 214‑215. 

('‑") H.J. Habakkuk,"English Landownership 1680‑1740:'(The Econ. Hist. Rev. vol. X, no.], 1940) 如芝⇒{:; , 三弄淀至『+<

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Transactions of the Royal Historical Society, 4th ser. vol.XXXII, 1950 (芸

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Marriage Settlement心窃遥ヤ1‑0);do., "Lando‑

wners and the Civil War", Econ. Hist. Pev. 2nd ser. vol.XX III. no. 1, 1965; do., "The Rise and Fall of English Landed 

Families .1600‑1800", T. R.H. S. 5th ser. vol.XXIX, 1968 (弐

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English Landed Families心窃淫ヤ1‑0);C. Clay," Marriage, 

Inheritance and the Rise of Large Estates in England. 1660‑1815", Econ. Hist. Rev., 2nd ser., vol. XXL, 1968; J. V. Be‑

(5)

ckett, "English Landownership in the Later Seventeenth and Eighteenth Centuries", Econ. Hist Rev., 2nd ser. vol. XX 

X, 1977; L. Bonfield, "Marriage Settlements and the Rise of Great Estates", Econ. Hist. Rev., 2nd ser. vol.XXXII, 1979; 

B. English & J. Saville, "Comment. Family Settlement and the Rise of Great Estates;・Econ. Hist. Rev., 2nd ser. vol.:X 

XXII¥ no.4. 1980; L. Bonfield. "Marriage Settlements and the Rise of Great Estates.A Rejoinder". Joe; J.P. Cooper, 

Patterns of Inheritance and Settlement by Great Landowners from the 15th to the 18th Centuries, (J. Goody, J. Thirsk 

& E. P. Thompson (ed.), Family and Inheritance, 1976) ; 

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(6)

(イ) (i) 

であ

る︒

(3 )  を生じるように限定された残余権の有効性が承認されている︒しかし︑コモン・ローは︑未確定残余権を次のような厳

(4 )  格な準則のもとで承認した︒い残余権の限定は︑確定した自由土地保有権

f r e e h o l d からなる部分不動産権

p a r t i c u l a r e s t a t e

  (通常は生涯不動産権

l i f e e s t a t e ) の限定によって先行されねばならない︒国未確定残余権は先行する部分不 動産権を短縮するように効力が生じてはならない︒圃未確定残余権は︑先行する部分不動産権の終了する前に︑もしく

シージン

s e i s i n

に中断かあってはならないからである︒

地主達は︑以上のような準則のもとで未確定残余権を運用して継承財産設定をせねばならないために︑未確定残余権 は設定されてもこれらの準則を充たさない限り事後的に無効とされる不安定性を常にともなっていた︒

さらに︑未確定残余権は永久拘束禁止の準則

t h e r u l e   a

g a i n s t   p e r p e t u i t i e s  

(5 )  と の 関 連 で 規 制 を 受 け て い た

︒ 土 地 (6 )  の移転の自由を擁護し︑永久拘束の設定を防止する目的で︑未確定残余権は次の二つの準則の規制を受けた︒︵未確定 残余権を破棄しうるものとする準則と︑国未確定残余権かあまりに遠い将来の期日に確定するのを禁止する準則がそれ

未確定残余権を破棄しうるものとする準則から次のことか生じる︒

未確定残余権は︑先行する部分不動産権に依存するために︑未確定な事実が発生する前に未確定残余権か依存し ている部分不動産権を破棄したり︑消滅させたりすることによって無効とされうる︒生涯不動産権の消滅は︑生涯不動 産権者の死亡によるばかりでなく︑移転譲渡もしくは他の方法によってもなされうる︒生涯不動産権者は未確定残余

権を無効にしうる地位にいるわけである︒例えば︑未出生の長男に対する限嗣残余権をともなう生涯不動産権者がいて︑

彼が彼の息子が生まれる前に彼の生涯不動産権を譲渡した場合︑生涯不動産権者はその方法によって彼の息子の限嗣残余

権を無効にすることができる︒

というのは︑部分不動産権が終了したときに彼の息子は実在しておらず︑残余権はその

はそれの終了と同時に確定されねばならない︒

(7)

限嗣封土権か馴合不動産回復訴訟

co mm on r e c o v e r y によって廃除されて︑移転の自由か認められた単純封土権に転 換されうることは十五但紀末に認められた限嗣封土権の屈性である︒現有の限嗣封土権者は︑彼の不動産権を単純封 土権に転換することによって︑彼の不動産権に付着する残余権などを破棄することかできたわけである︒従って︑この 転換を禁止するような文

束を設定するものとみなされ︑

無効であることは︑十六世紀末から卜七世紀初期にかけての判例によって確立されたコモン・ロー上の︑及びエクィテ

婚姻継承財産設定

M a r r i a g e S e t t l e m e n t

の歴史的止息義をめくって

(口) (イ) (ii) 

子に生涯不動産権を︑

(7

) 

ときに確定することができないからである︒回混同

me rg er によっても未確定残余権は破棄される︒例えば︑父親か息 そして孫︵未出生︶に残余権としての限嗣封土権を与える継承財産設定をしたとしよう︒生涯不

動産権者である息子は︑もしも彼が長男であるならば

父親の死後に不動産法定相続

i n h e r i t a n c

e によって単純封土権

としての復帰権を承継することになる︒同一人物に生涯不動産権と単純封土権とが帰属するとき混同か生じて︑生涯不 動産権はそれよりも大ぎい不動産権である単純封

t

権に吸収されて消滅する︒未確定残余権は︑

(8   の先行する牛涯不動産権の消滅によって破棄されることになる︒

一 四 それか依存するところ

未確定残余権を破棄しうるものとする準則のために︑永久に移転されることなく土地を縛りつける目的で継承財産設 定かなされても︑継承財産設定は︑生涯不動産権者か未確定残余権を破棄することによって容易に解除されてしまうこ

とになり︑﹁未確定残余権を保持する受託者達﹂か導入される以前の継承財産設定の欠陥となっていた︒

(9 )  未確定残余権かあまりに遠い将来の期日に確定するのを禁止する準削は次の三つの準削から構成されていた︒

残余権は先行する部分不動産権か消滅するときに確定しようとしないならば︑効力を生じないという準則︒

限嗣封土権者に限嗣封土権を廃除させないことを意図した但書は全て無効であるという準則︒

を付して設定された限嗣封土権は︑廃除不能な限嗣封土権

u n b a r r a b l e e n t a i l として永久拘 無効とされた︒廃除不能な限嗣封土権によって永久拘束を設定しようとする企てか全て

(8)

(1 ) 

7I

永久拘束を受けた自由土地保有権は十六世紀後半にたびたび設定されている︒﹁A

に生

涯間

生涯

間︑

利用されれば効力を生じなかったりするので︑

m

初期コモン・ローによって承認されたもの︒復帰権と残余権︒

移転ユース

S

t i n g us e

︑発生ユース

sp ri ng in g us e

遺贈将来権︒

その残余権を彼の息子に その残余権をその息子の息子に生涯間︑等々無限に﹂というように生涯不動産権を連続させる限定方式がこれ

にあたるか︑最初の生涯不動産権の消滅よりも前に確定しなければ効力を生じないと考えられた︒

涯不動産権か残余権か依存する不動産権だがらである︒従って︑永久拘束を受けた自由土地保有権によって永久拘束を 設定しようとしても︑最初の生涯不動産権者の生涯の範囲内で確定した残余権のみが認められるにすぎない︒

継承財産設定によって土地を縛りつけることを願望する地主にとって︑未確定残余権はコモン・ロー上の厳格な規制 のもとで運用されるために大きな危険をともなうものであった︒未確定残余権は︑先行する生涯不動産権者によって容 易に破棄されたり︑廃除不能な限嗣封土権や永久拘束を受けた自由土地保有権などによって永久拘束を設定するように

土地を縛りつける方法としては極めて不完全なものであったと言える︒

圃ユース法

St at ut e o f   U

se s 

(

St at ut e of   Wi ll

s  (

0

年︶によってコモン・ローにもちこまれたもの︒

圃純粋にエクィティ上の将来権︒ユース法や遺言法の制定後に生じたエクィティの諸原則の発展によって生じたもの︒また︑将米

ex ec ut or y in te re st

は復帰権︑残余権以外のものをさし︑動産に設定されたものも含まれる︒

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W.   Ho ld sw or th , 

Hi st or y  of   E ng li sh  L aw ,  1 9 2 4 ,   r e p r i n t . 1   9 6 6 , o   v l . V I I . P . 1 1 6 .  

将来不動産権には三種類ある︒ 未確定残余権による永久拘束を受けた自由土地保有権

( 1 1 )  

ィ上の基本原則となっている︒

香川法学

というのは最初の生

p e r p e t u a l   f r e e h o l d

の設定を防止する準則︒

(9)

たい地主達に新しい方法を提供した︒

遺︱

=口

の自

由は

中世

コモ

一四 五

・ローにおいては認められなかったが︑

遺百によって設定される遺贈将来権が土地を縛りつけ

( 1 2 )  

( 1 1 )  

( 1 0 )  

(9 ) 

(8 ) 

(7 ) 

(6 ) 

( 5 )  

(4 ) 

(3 ) 

( 2 )   A .  

W.   H.  

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P.   20 1 

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P. 82

92

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  │2

8 .  

﹁永 久拘 束﹂

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e r p e

t u i t

y "

.   とは︑概括的には︑・封土権の移転を永久に︑ないしは法が認めている以上の長い期間にわたって︑防

止するという趣旨の継承財産設定のことである︑

二頁

︶︒ W.

  Ho

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P 

P. 10 9

2 8

A .

  W . 

B .  

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p .   c

i t .  

` 

P .2 01  

限嗣封土権がどの程度移転不能であるかは︑条件附贈与法以後︑常に問題とされてきている︒

いものとされたが︑十五世紀末には︑限嗣封土権が馴合不動産回復訴訟によって廃除され︑単純封土権に転換しうることが確立さ

c f ,

A  

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. 

B .  

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PP. 

7 7  

│ 

82 `ベイカー、小山貞夫訳rイングランド法制史概説』二五七—二五八頁。

c f .  

W. o   H

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PP. ,  

20 4

20 8.

未確定残余権はコモン・

れた

W.   Ho

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P. 20 4 

W.   Bl a c

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W.   Ho l

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P. 20 3.  

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.8 2,   P. 88 . 

W.

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  •.

P. 16 9 

地主達は遺言によって継承財産設定を行

十四世紀中頃には永久に移転しえな と言ってよいであろう︵ベイカー︑小山貞夫訳rイングランド法制史概説﹄二六

ロー上の厳格な規制のもとにおかれているために︑

うことで厳格な規制にとらわれない別の方法を見い出している︒

婚姻継承財産設定

M a

r r

i a

g e

S e

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の歴史的意義をめぐって

一 五 四

0

年の遺

(10)

確定を条件として移転されうることになる︒ わけである︒

言法によって法認され︑一六六

0

年の軍事的土地保有態様等廃止法

M i l l i t a r y Te nu re s  A b o l i t i o n ' s   Ac t によって確立 されたことはこれまでの研究かホすところである︒

(2

) 

遺贈将来権は遺言法によって生じたコモン・ロー上の権利であるか︑土地の遺贈将来権は︑不動産権か遺言者の死亡

(3

) 

で確定するのでなく︑ある将来の不確定な事実にもとずいてのみ確定するような遺言による不動産権の処分である︒

遺贈将来権か遺言によってのみ設定されることは言うまでもないか︑遺言にまって設定される将来権か全て遺贈将来 権となるのではない︒未確定残余権として効力を生じることかできない遺贈将来権だけか遺贈将来権となるのであって︑

遺 ︱ ︱

mによって設定された将来権であっても未確定残余権として効力を生じうるものは遺贈将来権としてでなく︑未確

(4 )  定残余権として効力を生じねばならないと考えられた︒

(5

) 

ブラックストーンは遺贈将来権を次の三点で残余権から区別している︒

先行する不動産権の消滅のときに確定する必要もないし︑先行する不動産権の消滅などによって破棄されることもない 遺贈将来権はそれを支えるいかなる部分不動産権をも必要としない︒従って︑先行する不動産権かある場合でも 余権の場合は︑先行する不動産権を短縮するように効力を生じることかできないし︑単純封土権の贈与のあとに残余権

(6 )  を限定することはできないか︑遺贈将来権の場合には︑先行する不動産権か単純封土権であってもある未確定な事実の

遺贈将来権によって︑単純封土権もしくはそれに劣る他の不動産権か単純封土権のあとに限定される︒未確定残 動産であっても限定される︒遺贈将来権は︑自由土地保有権に対しても︑また定期賃借権に対しても設定されるわけで

遺贈将来権によって︑残余権は同時に設定される生涯間の部分不動産権

a

p a r t i c u l a r   e s t a t e   f o r   l i f e

のあとに

香川法学

(11)

十七世紀の遺贈将来権の発展の歴史は︑

この時期に発展する︵定期賃借権と︵自由土地保有権の遺贈将来権の特質を簡単に指摘するだけでとどめねばならない︒

︵定期賃借権の遺贈将来権によって継承財産設定を行う方式は一六

0

九年の

Ma ni ng Ca se

において認められ︑

(7 ) 

一六︱二年の

L a m p e t ' s Ca se

で強化された︒十六世紀には︑遺贈将来権を含めて将来権

e x e c u t o r y i n t e r e s t s は ︑ (8 )  確定した不動産権をもつ人々によって︑未確定残余権と同じく自由に破棄されてきた︒また︑定期賃借権は動産である

ために︑自由土地保有権のように期間権として切り刻むことは認められなかった︒すなわち︑ある人に生涯間︑

余権を別の人にと定期賃借権を遺贈した場合に︑最初の生涯間の受遺者が定期賃借権全体を受けとるとされていたか︑

一 六

0

九年の

Ma ni ng Ca se は定期賃借権の遺贈将来権を有効なものとし︑生涯間の受遺者によって破棄されないもの (9 )  としている︒定期賃借権の遺贈将来権を破棄しえないものとし︑動産である定期賃借権を期間権として分割することが 認められたが︑定期貨借権の遺贈将来権を生涯不動産権よりも大苔な権利︵例えば︑限嗣封土権︶のあとに設定するの は認められなかった︒この判決以後︑定期賃借権の遺贈将来権によって継承財産設定を行う方式か急速に普及すること

になり︑十七世紀の継承財産設定の典型的な方式となったと言ってよい︒

婚姻継承財産設定

Ma rr ia ge S e t t l e m e n t の歴史的意義をめぐって

ことなしに実現されないものでもある︒ カの所産であった︒弾力性にとんだ遺贈将来権の発展は︑ あ

る︒

一四 七

この時期の継承財産設定の現実をみるうえで重要と思われるが︑本稿では︑

その残

また︑従来の永久拘束禁止の準則の緩和も継

これを規制する原理である永久拘束禁止の準則の緩和を促す プラックストーンによって示された遺贈将来権の上記の特質は十七世紀初期においては必ずしも明確ではない︒は別の方法によって土地を縛りつける方式を追求する地主達の意を受けた不動産譲渡専門弁護士達 むし

ろ︑十七世紀の判例を通じて未確定残余権から区別されるに至ったものである︒遺贈将来権の発展は︑未確定残余権と

c o n v e y a n c e r s

の 努

(12)

( 1 1 )  

承財産設定のこの方式をめぐって実現される︒

. •I

I 

'.~し 自由土地保有権の遺贈将来権が認められたのは︑民訴裁判所における一六二

0

年の P e l l s v s B   ro wn

判決におい

てである︒この判決において自由土地保有権の遺贈将来権が︑未確定残余権と性質を異にする﹁破棄しえない将来権︱

an i n d e s t r u c t i b l e   e

x e c u t o r y

」レJ~-+:;.;.!interestことで︑古き判決からの大転換かはかられたと言えよう︒しかし︑ 

の判決が将来権を未確定残余権と同じく自由に破棄しうると考えてきた先の法律からの突然で思いがけない離脱であっ たために︑不動産譲渡専門弁護士の間ばかりでなく︑裁判官達の間でさえもかなりの疑問が根強く残された︒自由土地 保有権の遺贈将来権は︑単純封土権を先行させたあとに未確定な事実の確定を条件として効力を生じたり︑先行する不

動産権もなしに未確定な事実の確定を条件として効力を生じたりしうるので︑

に転換された移転ユースや発生ユースの性質に類似したものと言えよう︒

遺贈将来権は︑厳格な規制のもとにおかれた未確定残余権と比べれば弾力的に運用されるし︑馴合不動産回復訴訟な どによっても破棄されない将来権と考えられたか︑遺贈将来権の法認はそれによって無限に土地を縛ることを認めたわ けではない︒遺贈将来権も永久拘束禁止の準則による規制を受けざるをえない︒しかし︑遺贈将来権か﹁破棄しえない 将来権﹂とされる過程は︑永久拘束禁止の準則の認定規準が﹁権利が確定される時間の最大限の範囲﹂へと転換され︑

展を受けて︑十七世紀末の その範囲が定められる過程でもある︒将来権の限定は︑短期間︵ある生存せる人の一生涯の間︶に確定しうるものであれば︑従来は永久拘束を設定すると考えられていた限定であっても有効なものと考えるように緩和された︒これらの発

において定められ︑全裁判所で採用されることになる近代的

な永久拘束禁止の準則では︑将来権は設定のときに生存している人ないしは複数の人の生涯の間に確定されねばなら

( 1 8 )   ないとされた︒この準則は旧来の永久拘束禁止の準則の緩和であり︑移転の自由の原則と土地の将来的処分によって土

香川法学

Du ke   of N   o r f o l k ' s C   a s e ( 1 6 8 3 )  

ユース法によってコモン・ロー上の権利

(13)

(5 ) 

(4 ) 

W .  

H o

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s w

o r

t h

,  

p .  

c i t .

,   P

. 1 2 7 ,   P . 1 4 2 .  

(3 ) 

W .  

B l

a c

k s

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,   o

p .  

c i t .

P ,   .1 72 . 

(2 ) 

W .  

H o

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s w

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t h

.   o

p .  

c i t .

P .

,  

1 1 6 .  

地の保存をはかりたい地主達の願望との間の妥協の産物であったと言えよう︒

この時期の継承財産設定において︑定期賃借権の遺贈将来権であれ︑自由土地保有権の遺贈将来権であれ︑実際には ユースを付して利用されるのがほとんどである︒特に︑定期賃借権に遺贈将来権を設定する継承財産設定の方式は︑厳

格継承財産設定の方式が普及する以前の支配的な方式であるが︑

ン・ロー上の権利に転換されないので大法官裁判所の管轄下におかれることになる︒また︑

から信託への発展という古くて新しい問題に関連せざるをえない︒

ティの果たした役割が重要視されねばならないことは言うまでもないが︑本稿の趣旨と筆者の力量から省略せざるをえ ( 2 0 )  

なし

一五 四

0

年の遺言法において︑条件付きながら遺言処分が認められ︑鋤奉仕保有地ではその全てが︑騎士奉仕保有地ではその三分

の二が遺言処分を認められたが︑国王に対する封建的附随負担はそのまま維持されている︒

上法は封建的附随負担を廃止し︑騎士奉仕保有地を遺言処分の認められている鋤奉仕保有地に転換することによって︑自由土地

保有地の遺言の自由を確立することになった︒詳しくは︑戒能通厚r前掲書﹄特にーのニイギリス封建制の崩壊と土地法の構造と︑

井上彰﹁イギリス封建制度の崩壊とユースの発展﹂第三節︵法学新報八五巻十・十一・十二合併号・一九七九年︶が参照される

べき であ る︒

W .  

B

l a

c k

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c i .  

t . ,  

PP .1 72

1 7 4 .

婚姻継承財産設定

M a

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i a

g e

S e

t t

l e

m e

n t

の歴史的意義をめぐって

(1 ) 

か課されている場合︵能動ユース

a c

t i

v e

  u se )

も同様である︒

一四 九

一六 六

0年の軍事的土地保有態様等廃 ユース法以後の継承財産設定の歴史においてエクィ

これらの問題は大法官裁判所によってなされたユース

ユース受託者に能動的義務 これにユースが付された場合︑ユース法によってコモ

(14)

氏口三迅見~$!RIu$!R I rr)t> i.qQ 

('°) A. W. B. Simpson, op. cit., PP.199‑200. 

(r‑‑) 1JGS茎玉芝益l"‑Gt,(睡如摘臣W. Holdsworth, op. cit., PP.125‑132; A. W. B. Simpson,op. cit., PP.216‑210; G. L. 

Haskins, Extending the Grasp of the Dead Hand. Univ. of Pennsylvania Law Rev, vol.126, 1977. PP.33‑35. 

(00) W. Holdsworth, op. cit., P.127. 

(oi) cf. W. Holdsworth, op. cit., PP.125‑132; A. W. B. Simpson, op. cit., PP.206‑207; G. L. Haskins, op. cit., PP.33‑35. 

(0) ,... W. Holdsworth, op. cit., PP.143‑144; A. W. B. Simpson, op. cit., PP.209‑210. 

(;::::  l 

The Duce of Norfolk's Case (1683)旦ミこ日臣砂ミ心坦ピ匂*~=否紅廷心茫孟旦fBir-0呪やG-*~=酌紅年荘妥盃は翌ヤ心三

~G四心~~忍梨臣江主:'!G要奎興咲生如$シぐヤゃ全ぐど〇cf.G. L. Hkins,叩叩.,P. 

(~) cf. W. Holdsworth, op. cit., PP.132‑134; A. W. B. Simpson, op. cit., PP208‑210; G. L. Hoskins, op. cit., PP.32‑35. 

(巴)G. L. Haskins, op. cit., P. 33. 

(::!:) cf. Ibid .,PP.34‑35. 

(~) W. Holdsworth, op. cit., P.143. 

(;:;) lbid.,P.216 

(~) i: 

恙器-~~G~釜葵咲送さ'挙忌旦¾+i~~devisefor life知枢亡足‑<Gザ要S巨旦湮悛初,:;:;r-01-.~._f'さ七姦:‑'v

.;:;'till<

ほ#ヤr‑0‑<!J, 

ヰベ心,:;:;r-0至:::--'¾令公%旦サ要翌奎約ミ心J刃旦匂ぐ父゜丑苺茶→妥G~心旦釜Lt,G溢如心r‑O‑!JI!‑ffi+i芸送~:'!G宰咲送旦ぐこい

s

即赳.;p'考足G:mt-葉茶+i~~G¾+1+¢G~国ぞや姦兵如¾+i,,:̲), 戸応~-sさ#姦心米叫<·-I':.0cf. A. W. B. Simpson, op. cit., P.210. 

(四',(""'食ー'-Sヨご米沓『苺主生』11-\Ji(~'~ロ:'~-P‑t‑函益沓『ヤや::‑‑t< +i妾如

1~'<Ollt-' 1  11<~

総臣翌1-.~谷-~

11 I 

叶忍['II'I'(約ご父゜

(2:;) G. L. Haskins, op. cit., P.46; A. W. B. Simpson, Entails and Perpetuities, The Juridical Rev., vol.24, Part I, 1979, P.18. 

哀)

ri  ‑

t<令心寒溢<G媒幽旦ぐニャS$JGg~...J¥‑‑'竺,(,...)旦淫...J+c!~遥#:..YiliG車忍ぷ如も‑00

(15)

つい

て︑

銭による用意と並んで譲与されていたことは

婚姻継承財産設定の現実的構造

外の息

f

達に用意

p r o v i s i o n

一 五

中世コモン・ローにおいて不動産は無遺言法定相続による長子相続

p r i m o g e n i t u r e

が準則とされていたが︑長男以

として不動産権を譲与する慣行も同時に存在している︒地主の多くか遺言処分を行うこと か一般的となった十七恨紀前半においても︑長男以外の息

f

達に不動産権を譲与する慣行をみることかできる︒もっと

(l

) 

も︑ジェントリの間の相続慣行には﹁地域的偏差

l o c a l v a r i a t i o

﹂かあり︑単純な一般化は注意せねばならない︒n

ケントのような均分相続

g a v e l k i n d

の伝統が根強く残った地域もあるか︑長

f

相続のもとでの用意として︑不動産権か金 これまでの研究にホされている︒十六・七世紀において︑長男が不動産 の最大の分け前をとる一方で︑長男以外の息子達は自分達の死亡で長男に復帰するわずかな不動産を与えられるか︑も

(2 )  しくは自分達の死亡で終了する年金を与えられるかのいずれかであった︒しかし︑十七世紀初期以後︑長男以外の息子 達に新しい専門職業への道が開かれたために︑不動産権よりも︑年金や地代負担

r e n t c h a r g e の供与を用意する傾向が (3 ) 

強まりつつあったことも指摘されている︒

しかし︑不動産権を与えるのであれ︑金銭を与えるのであれ︑弟達や姉妹達に対する用意規定か定められていても︑

それがその通り常に実行されてきたことを意味しない︒

十七世紀初期の継承財産設定においては︑用意規定は夫と妻に

(4 )  委ねられており︑用意規定を婚姻のときに明記することはそれはど慣習的ではなかった︒この時期の用意規定の実情に

ハバカクは次のように説明している︒

﹁+七世紀初期に普及した婚姻継承財産設定では︑地主には彼の長男以外の子供達に明記されたもの全てを与える法律上

の義務はなかった︒優しい父親さえも︑彼か長男以外の子供達に用意規定を与へるべきときが到来したときに︑彼らを犠

婚姻継承財産設定

Ma rr ia ge S e t t l e m e n t の歴史的意義をめぐって

(16)

牲にして節約したい気でいたかもしれない︒実際に︑用意規定はピンチに臨んで切りつめられうる地主の数少ない大支出

( 5 )  

そのうえ︑多くの長男以外の子供達の場合︑用意規定は結局のところ長兄の裁量に委ねられた︒﹂

項目のひとつであった︒

また︑定められた用意規定を守ろうとしない長男達への不満が中小ジントリの長男以外の息子達の間で特に強かった

 

こと

サースクの指摘するところである︒弟達に用意規定を供与するという長男達の伝統は遵守するよりも破るはう

(6 )  が名誉なこととして受けとめられていたという︒しかし︑その一方で全ての息子達に用意規定を供与するという伝統か 根強く残る地域もある︒特に

C a m b r i d g e s h i r e

では︑中小の地主達の間にも全ての息子達に用意規定を与えるという伝

統が維持されている︒長男以外の息+達への土地もしくは金銭という形の用意規定︑娘達への嫁資

d o w r i e s

︑妻への扶

(7 ) 

m a i n t e n a n c e

など全てか土地保有から生じる将来の利益から捻出され︑これらの負担を土地を相続する長男か父親の

遺言によって負わされるために︑長男が長男以外の全ての家族員に用意を与えるという伝統の強さが︑

(8 ) 

をもたらす要因となったことも指摘されている︒ 土地保有の危機

﹁地域的偏差﹂があるとはいえ︑ジェントリ以上の階層においては継承財産設定による長子相続の慣行か浸透してい

たが︑ジェントリ以下の階層にこの慣行がどの程度浸透していたのかは今後の研究を待つところが多いと思われる︒しか

し︑概して下層階級の人々は︑必ずしも平等にではないが︑彼らの息子達の間で︑時には娘達の間で財産を分割してい

(9 )  たようである︒長子相続制がジェントリ以下の階層ではとられていないことは︑サースクの指摘するところでもある︒

地主が彼の長男の婚姻のときに継承財産設定した不動産が︑その婚姻から生まれた長男に手をつけることなく伝わり︑

さらに長男以外の子供達に用意規定が供与されることを願望して継承財産設定かなされたとしても︑十七世紀前半の継 承財産設定には地主の願望の実現を困難にする欠陥があった︒すでに述べたように生涯不動産権は︑没収はもちろん 生涯不動産権者自身による破棄を免れないからである︒地主が彼の長男に長男の婚姻のときに生涯不動産権を︑

その婚

(17)

姻から生まれる長男に限嗣残余権を継承財産設定するという方式が︑すでにこの時期の継承財産設定においてとられて おり︑この時期の継承財産設定の方式が多くの点で厳格継承財産設定の方式に類似していたことは︑ハバカクも指摘し

ている︒しかし︑継承財産設定のこの方式からは次のことが生じて設定者の願望はくじかれてしまう︒

﹁夫が生涯不動産権者になったあとでも︑夫は彼の婚姻から生存せる息子が生まれない限り︑彼の生涯不動産権を自 由土地保有権

f r e e h o l d に拡大することができた︒かくして︑夫は彼の弟達や姉妹達に対する義務から免れ︑彼の意の

ままに自由に不動産を処分するようになった︒﹂

こうした事態を免れるために利用されたのが遺言であった︒未確定残余権よりも将来的弾力性をもつ遺贈将来権がこ

の時期の継承財産設定において頻繁に利用されたのはそのためである︒﹁地主は︑彼の長男に男系の法定相続人が生まれ

るま

で待

ち︑

そのあとで家族の不動産を彼の長男に継承財産設定した︒すなわち︑地主は︑彼が死亡するまでは長男の 扶養と妻の寡婦給与だけを長男の婚姻のときに定め︑家族の不動産の最終的な処分を彼の遺言に委ねた﹂わけである︒

長男の不動産権と長男以外の子供達の用意規定とを遺言によって定めることで︑彼の願望が破られるのを回避しようと したわけである︒また︑この方式に十八世紀に普及する継承財産再設定

r e s e t t l e m e n t

との技術的類似性をみることも

できる︒十八世紀に土地を固定化する方法として利用される継承財産設定とその再設定の技術的内実は︑この時期の継

承財産設定のなかで別々の方式としてであるが︑準備されていたと言える︒

破棄されることのないより厳格な継承財産設定の方式は︑地主達によって十六世紀末以来︑常に追求され続けてきた ものであるか︑革命期か継承財産設定の歴史において大きな画期となったというハバカクの主張は注目されねばならな い︒﹁未確定残余権を保持する受託者達﹂を挿入する厳格継承財産設定の方式は︑革命期の特殊な社会情勢から地主達 の要請を受けて︑破棄されることのない継承財産設定の方式として考案され︑それ以後急速に普及したものだからであ

婚姻継承財産設定

Ma rr ia ge S e t t l e m e n t の歴史的意義をめぐって

一五

(18)

たために破棄されてしまうわけである︒ る︒特に国王派地主は不動産没収や革命政府に対するホ談金

f i n e

の支払いなどから生じる損害を少ないものにし︑さら

に残された家族への影響を弱いものにするために︑新しい方式の考案を願っていたわけである︒

所領を差押えられ︑

没収を受けた国王派地主達かぷ談金を支払ってこれを解除してもらうとぎ 産権者とするような継承財産設定かなされてあれば︑ホ談金を軽いものとすることかできた︒ホ談委員会

th e

c o m m i t t   は.不談にあたって地主達の不動産権を詳細に調在し︑彼らの犯罪と不動産権の性質に応じて ホ談金を在定している︒すなわち︑国王派地主の犯罪の程度に応じて︑

土地価格の十分の一︑六分の一︑三分の一と在 定されたか︑このぷ談金はその地主の不動産権か単純封土権の場合であって︑生涯不動産権の場合にはその半額と在定 されている︒従って︑所領を守るためには︑現在の所有者の権利が生涯不動産権に限定されることが望ましいことにな

これまでの継承財産設定の方式と異なり︑生涯不動産権者か彼の権利を拡大することかできないような継承財 調在し︑継承財産設定の条項か生涯不動産権者か自分の権利を拡大する可能性を保持している場合には︑委員会はぷ談

金の在定においてその生涯不動産権者を限嗣封土権者と同じ条件で扱っているからである︒

地主か自分自身を生涯不動産権者とし︑ というのは

地主自身を生涯不動 ホ談委員会は生涯不動産権者のコモン・ロー上の権利を正確

その残余権を限嗣残余権として彼の息子に与える継承財産設定を行ったか︑

その息

f

の残余権か未確定残余権であるときに︑ 産設定の方式が追求されねばならなかった︒ る

ので

ee

f o

 

r  

c o m p o u n d i n g  

その地主か内戦で死亡したり

f

の残余権は効力を生じない︒未出生の

f

供達の権利︵未確定残余権︶か︑

その地主の所領か革命政府によって差 押えや没収を受けたりすることは未確定残余権か確定する前に先行する部分不動産権か消滅することになり︑

それを支える生涯不動産権か早期に消滅し

こうした危険の防止か︑﹁未確定残余権を保持する受託者達﹂を挿入した厳格継

承財産設定か考案された理由のひとつとなっている︒それによって︑未確定残余権が保護されるばかりでなく︑同時に

その息

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7 ) Henri Focillon, ‘L’Eau-forte de reproduction en France au XIXe siècle’, Revue de l’art ancien et moderne, 28/ 1910,