• 検索結果がありません。

農業地域の救急・災害医療

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "農業地域の救急・災害医療"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

農業地域の救急・災害医療

誌名

誌名 日本農村医学会雑誌

ISSN

ISSN 04682513 著者

著者 成松, 英智

巻/号

巻/号 68巻6号

掲載ページ

掲載ページ p. 716-721 発行年月

発行年月 2020年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

(2)

教育講演

2: 

農業地域の救急・災害医療

成 松 英 智 *

要 旨

農業地域の救急医療および災害医療は,農村 地域特有の社会的・地理的要因に強い影響を受 けるため,都市部のそれらとは相違点が多い。

本総説では特に「病院での医療活動」および「患 者搬送体制」に着目し,農業地域の救急医療・

災害医療の現状を総説する。

一般に農業地域は(例外はあるが)非都市 部・少人ロ・低人口密度であることが多い。ま た災害時の被災状況も災害の種類・程度,地理 的条件,等により多様である。解説の状況設定 の複雑化を回避するため,以下,「農業地域」

を「非都市部・少人ロ・低人口密度」という特 徴を持つ地域として,また災害時の「被災状況」

は「一般論」として仮定し論ずる。

農業地域の救急医療 1.救急医療における時間的要因の短縮

一般的に医療の発展や治療成績向上は,該当 領域の医学の進歩によりもたらされる。しかし 緊急対応が求められる救急医療の発展と治療成 績向上には,救急医学の進歩に加えて時間的要 因の短縮,すなわち早期治療開始・治療時間短 縮が重要になる。

特に時間的余裕のない重症救急医療の治療成 績向上には,「高度・的確な医療」に加え「病 院到着前を含めた早期からの迅速な初期・専門

*〒0600804 北海道札幌市中央区南1条西16丁目 札幌医科大学医学部救急医学講座教授

高度救命救急センターセンター長

札幌医科大学北海道病院前・航空・災害医学寄附講座 兼任教授

医療の遂行」が求められる。これを具現化する ための時間短縮策として,病院前医療による治 療開始の早期化(ドクターカー・ヘリによる医 師出動,救急救命士処置範囲の拡大l)), 搬 送 時間の短縮(救急患者搬送システムの整備,航 空機搬送による搬送の高速化,社会的な道路網 整備),病院到着後の院内医療遂行時間の短縮

(院内救急医療システムの改善),等が広く行な われている。

2.農業地域の救急医療の現状

農業地域では,病院数,医師数,高次機能病 院高次救急病院が都市部と比較して少ないと いう一般的傾向がある。医師充足率が農業地域 で低い傾向と状況は全国で見られる。また直近 病院までの救急車搬送時間に長時間を要する地 域は全国に散在しているが,農村地帯を始め非 都市部に圧倒的に多い。

これらの状況は,緊急対応を求められる救急 医療特に特に重症救急医療に不利な影響を及 ほしている。居住地によらない医療の公平性の 実現という社会的需要からこの地域格差は是正 が求められ社会問題化しているが,未だ決定的 な打開策が得られていない状況にある(図1)。

3.農業地域の救急医療の特徴

都市部病院と比較して農業地域の病院に多い 特徴・傾向としては,比較的小規模でスタッフ が少数であること,重症・専門医療よりも総合 診療を得意分野としていること,通常診療に従 事しているスタッフが救急事案発生時に必要に 応じて救急医療を行なっていること,等が挙げ られる。このため農業地域の病院は一般的に軽

(3)

1社会的問題I

蔑業地域=非都市部・低人口密度

・病院数

喜 悶 : 能 病 院 ] 少 な い

•高次救急病院

居住地によらない医療の公平性

図1.農業地域の救急医療の現状

地域病院の特徴

・比較的小規模,少数

•総合診療>重症・専門医療

・通常診療+救急医療

得意分野:軽症・中等症・総合診療型救急医療 弱点領域:重症救急医療

図2.農業地域の救急医療の特徴

症・中等症救急医療や総合診療型救急医療を得 意 分 野とするが, 重症救急医療が弱点領域と なっていることが多い。重症救急医療の必要条 件である最短時間内の高度医療実施体制,医療 スタッフの専門性,高度医療設備,等や医師・

医療従事者数については,農業地域でば慢性的 な不足状態にある。このため,農業地域で救急 患者が発生した場合,軽症・中等症患者および 全身状態が不安定すぎて広域搬送不可能な重症 患者は現地病院で,重症だが全身状態的に広域 搬送可能な患者は都市部の救急病院で診療する 傾向がある(図2)。

4.農業地域病院の重症救急医療

農業地域病院での重症救急医療の向上は解決 が急がれる問題であるが,その解決策は容易な ものではない。現地病院の充実のための対策と しては,医師,等医療専門職数の増加,救急専 門医の配置,医療スタッフヘの重症救急専門性 の付与,遠隔医療整備,高度医療設備配置,等 が考えられる。不足している医師や救急専門医

717 

の配置は抜本的解決策であり政策的配慮もなさ れているが,医師数・専門医数の不足や自発的 希望者が少ないことから現状では困難である。 現地医療者への重症救急専門性の付与は教育修 練 が 必 要 で あ る が , 時 間 体 制 整 備 , 予 算 , 等 が必要で,卒後教育としての実施には限界があ る。遠隔医療は対応時に時間的余裕がない重症 救急医療には適用困難な部分も多く, また設備 投資が必要である。高度医療設備の整備は,農 業地域の小規模病院では困難である。

5.農業地域の救急隊活動

上述のように農業地域病院での重症救急医療 に関連する状況改善の目処は見えてきていない が, この状況を機能的に補足するため,救急隊 活動では都市部病院への広域搬送とメデイカル コントロール2)の充実が図られている。メデイ カルコントロールとは,病院前救護について医 師が救急隊に医療関連行為を委任し,救急隊員 が 医 療 行 為 を 医 師 指 示 下 で 実 施 す る 制 度 で あ る。農業地域におけるメデイカルコントロール は,農業地域の現場一現地病院間だけでなく,

現場一広域搬送先病院間および現地病院一ー広域 搬送先病院間でも有効活用され,搬送中の医療

の質向上に貢献している。

農村地域から都市部への患者広域搬送の達成 目標は,搬送により救命の見込みがある重症救 急患者の安全・確実な搬送と救命率向上である。

患者広域搬送では,迅速•安定的な患者搬送の

ための搬送手段確保や搬送路・施設の整備が必 要である。道路整備(一般・高速・高規格道路)

や高速搬送手段確保(航空機)による搬送時間 短縮,救急隊医療の充実(メデイカルコント

ロール,高規格救急車)や医師同乗による搬送 中医療の充実が図られている。患者搬送方法と

しては,陸上,航空海上それぞれの特徴や弱 点がある。これらの方法選定は,地域性,緊急 性 , 患 者 症 状 , 患 者 病 態 天 候 , そ の 他 状 況 判 断,等を基に総合的に行なわれる。

5‑1.陸上搬送(救急車)

救急車による陸上搬送は簡易に開始可能で搬

(4)

送中の医療行為も可能であるが,道路条件に大 きく影響される。目的地病院までの道路連絡 は,特に道路網が豊富でない過疎地系の農業地 域では問題となり易い。高速道路や高規格道路 は高速移動の有利性の反面,進入・退出経路(イ ンターチェンジ,等)が限定される。一般道路 でも搬送経路に側副路 (逃げ道)がない場合, 渋滞発生時,等に経路変更ができず,搬送が長 時間化する危険性がある。路面整備状況が悪い 場合には,振動が患者状態に悪影響を及ぼす可 能性がある。また特に人口が少ない農業地域の

自治体消防や消防組合では救急車の保有台数が.

限られているため,1台が広域搬送に供用され るだけで域内に残る救急車が不足する可能性が ある。

5‑2.航空搬送(航空機)

航空機は高速移動,長距離搬送,道路が不要 という絶対的利点を有する一方,天候や離発着 場所,等の運行条件に制限的な影響を受け易 い。また機内は (一部の大型機を除き)救急車 よりも狭く,搬送中の高度な医療行為は困難で あるため,搭乗前に可及的に患者状態を安定さ せてから搬送を開始することが望ましい。悪天 候, 日没後の運行(一部の夜間飛行可能な機体 を除く),火山噴火時の火山灰(吸引されると エンジン停止の原因となり得る)が主な運行困 難要因となり得るが,回転翼(ヘリコプター)

の方が固定翼 (飛行機)よりもこれらの影響を 強く受け易い。回転翼は,一定基準(面積,周 囲状況,等)を満たす離発着場が確保できれば 運用可能であるが,固定翼(飛行機)の離発着 には滑走路が必要である。運用の臨機応変性は 回転翼の方が高い一方,固定翼の方が長距離移 動に優れている。

5‑3.海上搬送(船舶)

船舶での患者搬送は,離島や道路交通網に乏 しい海岸地域で陸上・航空搬送よりも搬送上有 利と判断される場合に選択される。悪天候や海 上条件,等の航行条件悪化が主な搬送困難要因 となる。一部の高速船以外は低速移動となり長

患者搬送方法

ミ [ I 呑

1

E

1

図3.農村地域から都市部への患者広域搬送

直近医療施設

・多数傷病者の短時間殺到

・施設機能低下

最大多数傷病者への最大治療効率

I

搬送・治療計画

I

・患者の選別・配分 •初期治療・広域搬送

既存医療機能を最大限に発揮

図4.集団災害発生時の傷病者治療

時間搬送となるため,搬送先病院到着まで患者 状態を維持できる目処が船舶搬送を選択する前 提となる。航行条件が悪い場合には,揺れが患 者状態に悪影響を及ぽす可能性がある。船内を 広く確保できる場合には救急車や航空機と比較 して移動中の医療行為を行ない易い場合がある

(固3)

農業地域の災害医療 1. 集団災害発生時の傷病者治療

集団災害時には,多数傷病者の来院,被災に よる病院施設機能低下,一般患者(災害に無関 係に発生)への同時対応,等から,現地病院の 診療能力の限界超過が想定される。このような 場合,病院や医療行政は最大多数傷病者への最 大治療効率を最終目標に設定し,既存医療機能 を最大限に発揮させながら,搬送・治療計画立 案患者選別(トリアージ),必要最低限の初 期治療患者配分(搬送先の決定),必要に応 じた広域搬送および確定治療を行なう(図 4)。

(5)

2.災害現地病院の混乱と医療活動

災害により発生した多数傷病者が現地病院に 短時間内に来院した場合,最初に多数外来,多 数 入 院 非 通 常 診 療 , 等 に よ り 診 療 に 混 乱 が 発 生する。こ の 混 乱 に ス タ ッ フ の 参 集 困 難 ・ 不 足・離脱・過労,施設被災やインフラ障害,等 による診療環境悪化,薬剤・医療資器材不足,

流通障害,等が加わると,診療需要が診療能力 を上回る事態が発生する。このような状況下で 病院は,可能な限りの患者受入・治療を行ない つつ,被災状況によっては患者避難を同時並行 で実施しなければならない鬼

現地病院では,このような混乱的状況を前提 とした医療計画を設定する必要がある。念頭に おくべき問題点としては, 1) 全症例への十分 な医療行為が不可能となり,最大多数傷病者へ の最大治療効率を得ることに目標設定が変わる こと, 2) 通常診療している専門領域以外の診 療が求められ,医療環境が悪化すること, 3)  施設被災,スタッフ・医療資源,等の不足から 病 院 機 能 低 下 が 発 生 す る こ と , 等 が 挙 げ ら れ

る。

災害発生時には業務の平時からの質的変化を 伴う。医療者は平時には専門分野の最良な医療 を通常環境で安全・確実に実施すれば良い。し かし災害時には,需要発生領域の患者に対する 最大多数への最大治療効率が最終目標となる。 この場合,医療には内容的,時間的,収容的な 制限が伴い,医療環境も人的,医療資源的,施 設的に異常事態下となる。また指揮命令系統に も,上司に加えて病院災害対策本部や地域行政

多数多様重症度の被災者を同時平行で診療+混乱 問題点

・全症例への十分な医療行為は不可能

・専門外診療,医療環境悪化,患者・家族の自己中心的化

・施設被災,スタッ医療資源等の不足病院機能低下

平時 1 災苔時 業務 専門分野 需要発生領域 目 標 虜 個々に混良 最多数に最良 医療 1 確実安全 最大医療効率

制限 なし(通常) 制限的 (内容,時間,収容)

環 境 通常 異常エ態(人,白器材,施設)

指揮系統上位 直接上司 病院災害対策本部,行政

図5.災害現地病院の混乱と医療活動

719  の意図が大きく関与してくる(図5)。

3.災害時に発生が想定される諸問題

災害時に発生が想定され,対応すべき諸問題 を以下に示す。病院機能の面では, 1) 設備損 壊(病院被災),医療資源枯渇(薬品,医療資 器材,等),ライフライン途絶(電気•水道・

ガス,等)に対応した医療機能の維持,2) 人 的安全確認,職員健康管理,就労環境整備,就 労可能職員の招集・確保,等の人的問題, 3)  通常診療の可及的中止・延期,等がある。 また 情報管理面では, 1)情報途絶時(電話・イン ターネット・放送,等)の情報確保, 2) 情報 の経時変化に対する追随的対応, 3)内容的に は 病 院 間 の 連 携 に 関 わ る 情 報 交 換 , 患者情 報

(来院動向・数・質,等),職員・患者家族との 連絡,情報信憑性の確認,等が挙げられる。

4.集団災害時の病院機能分担と患者治療 一般的に多数傷病者の治療は,平時から各病 院が持つ病院機能を最大限に利用できるよう重 症患者は災害拠点病院や高次機能病院で,中等 症はこれら以外の地域の中核病院で,また軽症 患者は一般病院で行なう(図6)。

現地病院における災害患者の治療では,最初 に患者の生理学的安定化と重症度・病態評価を 行なう。この評価と現地病院の診療能力や総合 的 状 況 広 域 搬 送 先 候 補 病 院 の 状 況,さらには 搬送中の全身状態安定性(見込み)評価に基づ いて確定治療を行なう病院を最終決定(自院残

トリアージポイント

重症患者 ̲ ̲  広域搬送可能‑‑‑+遠方の災害拠点病院 --広域搬送不可能—>地域中核病院残留

図6.集団災害時の病院機能分担

(6)

腰業地域=非都市部・低人口密度

・病院数

•高機能病院]少ない

院があるのか?

可能なのか?

全身状態が搬送に耐えられるか?

図7.農業地域の災害患者治療

留か転院搬送か)する。搬送先病院選定や搬送 決定には, 1)搬送先候補病院が応需可能か,

2)搬送自体が手段的に可能なのか, 3)患者 全身状態が搬送に耐えられるか,等を総合的に 考慮する(図 7)。

5.農業地域の災害医療の問題要因

ここまでは農業地域を含めた災害医療の一般 的事項について述べた。特に農業地域に特徴的 な災害医療の問題要因としては, 1)現地病院 では医師・職員が元々少数のことが多いため,

発災時には参集困難も加わってマンパワー不 足,過重労働,過労が発生し易いこと, 2)常 勤の災害専門医療者 (DMAT,JMAT, 等の有 資格者)が不在の場合が殆どで, 自力のみでの 事態対処が容易でないことが挙げられる。これ らの要因に前述の農業地域特有の救急医療の弱 点(小規模病院少数スタッフ,救急専従者不 在,等),病院数や高次機能病院が少ないこと,

被災の影響(多数傷病者,病院機能低下,搬送 障害,等),等の多くの要因も加わり,農業地 域の災害医療の混乱の原因となる4)。現地医療 者への災害医療の専門性付与は望ましいが,こ れ に は 事 前 教 育 (DMAT/JMAT研 修 等 ) とその後の継続的技能維持が必要なことから実 施には限界がある。遠隔医療による現地病院の 支援は状況がある程度落ち着いた後の災害慢性 期であれば適用の可能性はあるが対処に迅速 性が求められ混乱を伴い通信環境が不安定にな りがちな超急性期や急性期では適用困難であ る。

6.農業地域の現地病院の医療活動

農村地域が被災地の場合,平時から重症患者 を受け入れている災害拠点病院や高次機能病院 が近隣にない場合が多い。このため災害発生直 後に患者を重症度別に配分し病院収容する場 合,地域の中核病院は中等症患者に加え,早期 治療開始が必要な重症患者をも収容する必要が ある。そ の 後 重 症 患 者 の 確 定 治 療 を 行 な う 病 院を最終決定する(上述)。すなわち農村地域 では,重症災害患者は広域搬送可能であれば遠 方の災害拠点病院や高次機能病院へ搬送とな り,それが不可能であれば現地病院で治療が行 なわれる場合が多い。

7.災害時救急搬送体制

上述のように農業地域では,災害重症患者に 広域搬送が必要となる場合が多い。災害により 多数傷病者と多数避難民が同時に発生すると患 者搬送経路と住民避難経路が重複し得る。これ に農業地域では元来少ない道路網や災害による 道路破壊,等の要因が加わると緊急車両の走行 が困難になる。これに対しては,幹線道路の緊 急車両優先化(警察対応),航空機(回転翼)

搬送場合によっては道路以外をも走行可能な 特殊車両(自衛隊車両,等)の動員を依頼し対 応する。

救急隊活動における災害発生時の問題要因と して, メデイカルコントロールの困難化と救急 隊の人的・物的不足状態が挙げられる。被災に よる通信困難が発生すると,メデイカルコント ロールが困難となる。このような状況下では,

現地救急隊は特定行為,等の高度な救急活動が 制限される。また農業地域に限らず,救急隊の 人的・物的規模は平時の需要が主に勘案されて 決められている。このため災害発生時に域内需 要が増大すると,救急隊活動は域内活動までが 事実上の限界となり,原則的に患者搬送は収容 現場から地元病院までに限定される。この場 合都市部病院への広域搬送は,病院救急車,

DMAT車 両 緊 急 消 防 援 助 隊 (域外からの救 急隊の応援),等が代行して担う場合が多い(図

8)

(7)

721 

救急隊搬送活動

図8.災害時救急搬送体制

8.被災時の支援 一受援関係の構 築

農業地域が被災地となった場合,現地病院,

介護施設,避難所,等は他の地域からの人的・

物的な災害医療支援を受けることになる。支援 側は使命感を持って現地活動を行なうが, これ までの災害事例でも現地医療機関,等との間に 多くの「支援一受援関係」上の問題が経験され ている。この問題の根底には,支援側,受援側 の両者が関係している。支援側要因である災害 医 療 支 援 シ ス テ ム ・支 援 内 容 の 高 度化, 現 地 ニーズの把握活動,等は,実災害時の経験と従 来からの議論 ・反省の積み重ねから近年著しく 進歩・洗練されてきてはいるが,未だ改善の余 地を残している。

事前体制準備が可能な支援側とは異なり,あ らゆる地域の全ての病院は突然受援側の立場に なる可能性がある。しかし支援システムに対応 した受援側の系統的な準備は進んでいないのが 現 状 で あ る。受 援 側 に 求 め ら れ る 事 項 と し て は, l)災害医療支援の基本的理解, 2)支 援 者への的確な情報提供, 3)支援者への適切な 意志表示,等が挙げられる。被 災して受援側と なった場合には,(日本の)災害医療支援シス テム,支援者側の基本的な考え方,支援の可能 範囲と限界を支援活動開始前までに(可能であ れば平時から)理解しておくことが望ましい。

また支援側に提供すべき情報の内容を整理し,

受 援側の 需 要 と 希 望 優 先 度 を 伝 え る 必 要 が あ る。こ の 場 合 不 必 要 か つ 過 度 な 我 慢 や 遠 慮 が あると,必要な情報とそのニュアンスが支援側 に十分には伝わらず,その後の活動上の問題や 混乱の原因となり,需要に合った高度な受援を 受けることが困難になる。

結 語

農業地域において, 1)救急・災害医療では,

医師不足,重症患者対応,広域搬送および多数 傷病者対応が問題化する, 2)事態対処には,

現存する医療資源の効率活用が求められる, 3) 今後の建設的対応には,救急 ・災害医療の現状 理解と状況分析が必要である。

本総説の内容の一部は,第68回日本農村医学 会学術集会(令話元年 10 月 17~18 日,帯広市)

で講演した。

著者のCOi開示

本論文発表内容に関連して特に申告なし

l)横田裕行. 救 急 医 療現 状 と 課 題】日常医療を 支える救急医療 救急救命士による処置範囲拡大 の意義. PharmMed.  2015 ; 33 : 19‑22.  2) 田溢晴山. 救 急 医 療 に お け る メ デ イ カ ル コ ン ト

ロールとは? 医 学 的 な 質 を 保 障 す る 取 り 組 み。

救急救命士への実習 教育や搬送先病院 搬送手 段の選定などを行なう (Q&A).医事新報 2017;  4875 : 63‑64. 

3)原田正公,高橋 毅.「大地震における国立病院 機構の役割 東日本大霙災 熊本地震における活 動を検証して」 熊 本 地 震 に つ い て 医 療 2019;  73 (4) : 202‑205. 

4) 太 田 圭 祐 災 害 医 療 対 策 の 現 状 と 今 後 へ の 提言 地 域 の 実 情 に 合 っ た 対 策 を 講 じ て 大 災 害 に 備 え コミュニテイケア 2017 ; 19 : 67‑70. 

参照

関連したドキュメント

第1 初動医療救護 医療救護対策部

勉強会を毎月行い,若手医師や看護師の教育を

 長崎市では1997年から救急車搬送時にプレホスタルコードと救急実態調査表からなる救急

132 (3)災害医療コーディネーター ●

救急搬送傷病者数がますます増加すること が想定される中、その大半を受入れる二次救 急医療機関の体制強化はわが国にとって喫緊 の課題である。平成 24 年

松原  全宏 1 , 佐藤  元 2 , 井口  竜太 3 , 中島  勧 1 ,  矢作  直樹 1 , 軍神  正隆 3. 1)東京大学医学部附属病院  救急部・集中治療部

当院は救命救急センターであるとともに、地域医療支

地域の救急医療を.