日本家禽学会誌, 42.・JI59JI64, 2005
茶殼の給与がブロイラーの肉質および脂質酸化抑制に及ぼす影響
金子国雄1) .迫宏一2) ・河原聡2) .古瀬充宏3) .六車三治男2)
! )福岡県立八女農業高等学校,八女市8340031 2)宮│崎大学農学部,宮lll奇市889‑2192 3)九州大学大学院農学研究院,棚mI li812‑8581
3週齢のブロイラーに茶殻あるいは茶葉の粉末を2.5%添加混合した配合飼料を5週間与え, IAl色調,
茶カテキン類の鶏肉中への移行,過酸化脂質生成および肉質の官能評価に及ぼす影響について検討し た。
ムネ肉とモモ肉の色調は,茶殻または茶葉給与区で,赤色度(a*値)と競色度(b*値)がともに高く なる傾向を示した。茶殻または茶葉給与区のムネ肉とモモ肉にエピガロカテキンとカテキンが硴認され た。脂質酸化は, ムネ肉とモモ肉ともに茶殻または茶葉給与区で対照区より抑制される傾向が認められ た。官能試験の臭気において,茶殼または茶葉給与区で鶏肉臭が抑制される結果が得られた。肉の硬さ は対照区に比較して茶殼または茶菓給与区で若干硬くなる傾lh1が認められた。 しかし,総合的評仙では 有意な差は見られなかった。
以上のように,茶殻の給与は鶏肉の色調を改善し,脂質酸化を抑制することから,鶏肉の高品質化に 有効な方法と考えられる。
キーワード:茶殻, ブロイラー# 肉色調, カテキン, |│旨質酸化抑制
るにもかかわらず,熱への茶殼あるいは杣出物給与が脂 質の酸化抑制に及ぼす影響を調べた報告は少ない。抗峻 化性の高い茶殻や茶葉をブロイラーに与え,鶏肉中の脂 質酸化を抑制することができれば保存性向上も期待で き, イ、j加ll llill ''[の高い鶏肉生産の開発と産業廃棄物として 処l'l!されている茶殻のlll利1IIが可能となる。
そこで今│ ' { │の実験では, ブロイラーに日本茶殼または 茶葉を5週│川給与し,鵡肉の脂質酸化抑附││能と色調に及 ぼす影轡について検紬した。
材料および方法
供試動物として3週齢のブロイラー雄(チャンキー)
45>Mを川いた。雛は' │J販前!UI川飼料で育I戊し, 3週齢で 体!Eが等しくなるように各│><15>l>lずつ31><に区分けし た。 iilfiは八久農業ll'I等学校の│刑放型平飼舎で行い, 1 lx:のl ilil,'iは3.3m2 (1 .8m×1 .8m) とした。飼料はCP 18%,ME3,170kcal/kgの市販ブロイラー後期用を自由 摂取させた。 l l本茶葉は八女農業高校で生産した煎茶を 仙川した。茶殻の洲製は茶葉を75℃温水で10分間抽州 し,茶殻を51IIMI天日乾燥させた。茶殻および茶葉は粉 水状(0.290mm以下)に淵整し,配合飼料巾に2.5%添 ノjⅡ混合し給与した。 'だ験期間1 ' 1の飼料・飲水は自由摂取
緒 言
ブロイラーの肉質改善や過嚥llな脂肪蓄積を抑制するた めに様々な方法が考案されている。著者らは前報(金子 ら, 2000, 2001, 2005)において, n本茶浸出/k,茶葉 および茶殻には腹腔内脂肪の蓄積抑制効果あることを報 告した。
茶葉には, カテキンが乾物' i !に1O〜15%も含有され ている(松崎と原1985,池ヶ谷, 1987)。カテキンの主 な作用には,抗酸化作用(松IIIAiと原, 1985, YoshilloGI aJ. 1994)や消臭(脱臭)作1=H (安m, 1992)等の多くの 報告がある。 しかも, 食物繊維, ビタミンEおよびタン パク質等の水イ<溶性成分が茶葉成分の6()〜65%(菅野,
1995)を占めている。 ここ数年来,茶葉成分の機能│γ│か 注目され,緑茶ドリンクの急速な需泌門ノ」│ │に{、い,生産 L程で生ずる茶殼も増加し, それを産業廃棄物として処 理する必要性が生じ環境│川題となりつつある。 しかし,
茶殻には上述のように有用な水不溶性成分が多く含まれ 2004年9月7日受付, 2005年5月17日受蝿 連絡者:金子国雄
〒8340031福岡県八女市大字本町2 160 福岡県立八女農業高等学校
J160 I=│本家禽学会砧 とした。
8週齢後に各区より無作為に7小lを選び, 1711寺│lll絶食 後,常法に従って解体し, ムネ肉およびモモ│炎1について は, ただちに分光色差計(CM500MINOLTA)でIリll"
(L議値),赤色度(a*{│g),黄色度(b*値)を測定した。
色調測定後, 80℃で冷凍保存した。ムネ肉とモモ肉は 脂質酸化測定, カテキン同定分析および官能試験に供し た。
カテキンの同定分析は寺田ら(1992)の方法に準じて,
高速液体クロマトグラフィー(HPLC) (島津製作所LC lOAD型)を用いて行った。なお, カテキンキット (フナ コシ社製)をマーカーとして川い同定した。
2−チオバルビツール酸反応物質(TBARS) II│!{は,
Yamauchi"(zI. (1980)の力.法に準じ,赤色の反応生成 物を水蒸気蒸留法により抽出して, 532nmにおける吸 光度を分光光度計(島津製作所BioSpecl600)により測 定し,吸光度からブランクの吸光度を差し引き, その値 に18.7を乗じてTBARS値を求めた。保存試験として は, ‑80℃で冷凍保存した状態から解凍し, 4℃で冷蔵 保存しTBARS値の経時変化(OR, 3FIおよび5 11111 保存)を求めた。
α−トコフェロールとβカ口テンの測定は 落合ら (1992)の方法に準じてHPLCで行った。
‑80℃で保存のムネ肉とモモ肉の試料を5℃で‑11it 放置し, 官能試験に供した。解凍後に皮を取り除き, 1 cm角に切り, 0.3%の食塩を加え180℃, 10分間オーブ ンで加熱し, サンプルの温度が室温に下がるまで待ち,
l試料につきパネリスト8名で風味, 柔らかさ, 食│味お
12&J3 }) (2005)
よび総合的評illli (好ましさ)について7段階の評点法で 官能試験を行った。
結果の有意差の検定は,分散分析の後にDLIncanの新 多重純│#│検定(新城1996), ′自能評価の検定はScheffe の一対比鮫法(Statview, 1998)で行った。
結果および考察
茶菓と茶般のα−トコフェロール, β一カ口テンの100g 1 l 1の含量は表lに示したとおりで,落合ら (1992)の茶 蛙についての報告の範│j│:l内であった。
茶殺と茶雌を給与したブロイラーのムネ肉(浅胸筋)
とモモ肉(大lliLE.頭筋)の色調は表2に示したとおりで,
茶典区と対照区の色調は前報(2001)と同様な傾向を示 した。また, 今回の茶殻区は茶葉区と似たような結果と なり,茶殻区のムネ肉の黄色度とモモ肉の赤色度および
表1. 茶葉と茶殼中のβ一カ口テンとα トコフェ ロールの含量(mg/100g)
Tablel. B‑caroten and"‑tocopherol contents oI green tea and used green tea leaves (mg/1009)
成分 Concentl−allon
β‑カ口テン B‑caroten
α一トコフェローノL q‑tocopherol 茶葉
Greentea 茶般 Usedgreentea
10.2 25.0
17.5 9− ()
表2. 茶殻の給与がブロイラ雌肉の色洲に及ぼす 影響
Table2. EffectsoILIsedgreenteaonmcatcoIorvalueoImalebroilel‑
ム ネ肉 Breastmeal
モモ肉 rhighmeat JM数
No.
ofbirds 黄色度(b*値)
Yellowness (b*value) リ1IIr(L*値)
Lightness (L*vallle)
Iド色腱(E'*仙)
RcdllGss
(a*valuc)
此色哩(b*│1 'lI) YeⅡowness
(b*valuC)
│リ│度(L*{III) Lightness
(L*value)
赤色度(a*li''i) Redness
(a*value)
内︒F己
543
1
21 +士士 311 054
11laa
662460
111
++士 683466 495213 +士十一 366 09 554
jソ
﹈
︲h
722
1
23 +士十一 977843
11
919646 000 ++士 524345 000 803234
+
+
+
648885 444 777
aet
n
eaee
r︲t
区9区︑
1%Ⅸ%醍 岼州稚吋轌恥
合切JOJ︑
排C茶2茶2
')平均値±標峠偏差
Means±Standarddeviation、
2)異符号を付した平均値には区間で有意差あり (p<0.05).
Valueswithdiffel‑entalphabetical scriptshowthesignillcantdifference(p<0.05)
金子ら:茶殻ブロイ 黄色度が有意に高くなった。茶殻│茎と茶葉区の赤色度お よび黄色度が高くなったのは,茶殻と茶葉! │ 'の鉄分,
α・βカロテン (ビタミンAの前駆物質)ならびにキサ ントフィルなどの影響も考えられる。
茶殻および茶葉を給与したムネ肉とモモ肉のHPLC によるカテキンの定性分析結果パターンを図lに示し た。茶殻区と茶葉区ともにムネ肉, モモ肉中に(+) カ テキン(C), ( )エピガロカテキン(EGC)のピークが 確認された。また, ムネ肉,モモ肉の(+)C, ( )EGC ともに茶葉区に比べ茶殻区で含有量が小さくなる傾向が 認められたが, その要因としては茶葉LI」のカテキンが湯 による浸濱のために減少したためと推測される。 しか し, (−)エピガロカテキンガレート (EGCG), (‑)z ピカテキンガレート (ECG), (‑)エピカテキン(EC) は確認できなかった。
茶殻と茶葉給与によるムネ肉とモモ肉のTBARS値 の経時的変化を図2に示した。なお, TBARS値はマロ ンジアルデヒド換算量として示した。TBARS値は, 5 1]間4℃で保存したムネ肉で, 茶殼区0.54<茶葉区0.90
<対照区1.66, モモ肉では, 茶殼区0.95≦茶葉区0.95<
対照区l.41となった。対照区に比して茶殻区と茶葉区の 減少割合は, ムネ肉で‑675%と‑45.8%, モモ肉で−
ラー肉の脂質酸化抑fljil Jl61
32.6%と‑32.6%であった。対照区に対しての茶殻・茶 葉区のTBARS価は, 4℃で3日間以上保存することに
より低くなる傾向を示した。
松lll奇と原(1985)は, ラードに対する茶葉カテキンの 抗駿化作川について, サンブ、ルの等重量濃度では, ECG
<EC<EGCG<EGC,等モル濃度においてはEC<ECG
<EGC<EGCGのll頂となり, EGCに強い抗酸化作用が あると報告している。茶殻│Xと茶葉区に強い抗酸化作用 がみられたのは, ムネ肉とモモ肉中にEGCとCが確認 されたことと, 茶葉には表lで示した様にα トコフェ ノル, β‑カ口テン等の抗酸化成分が含まれるためと考 えられる。
佐野と富田(1990)は, m〃j"0での過酸化に対して α−トコフェロールの抗峻化効果は射いが, 〃]似加oでは 生体膜中に取り込まれて強い抗酸化効果を発現するとし ている。佐野ら(1996)は,茶葉または茶殻をブロイラー の飼料に3%混合給与した結果.胸筋中の脂質酸化の抑
制とα トコフェールおよびβ‑カ口テン含量の増加が認
められたと根告しており,脂質酸化の抑制は本実験結果 と一致している。山根ら (1992)",産卵鶏に緑茶温湯 抽出物を給与したところ,卵黄中のTBARS値が減少す ることを見いだした。カテキンの生体内抗酸化作用が卵ムネ肉 Breastmeat
te ea
E
一
15 20 25 15
保持時間(分)
Retentiontime(min)
20 25
モモ肉 Thighme
茶葉25%区 .5%│X
Usedgreentea EGCI I I IC 2.5%Greentea
−−−/廷
一
15 20 25 15 20 25
保持時間(分)
Retentiontime(min)
図1. 茶殻を給与したブロイラー肉から1111川したカテキンのIIPLCパターン
Fig. 1. HPLCpatternsofcatechinsGxtracted fromthemeatofbroliersgivvendietscontainingused greenteapowder.
C: (+)カテキン, EGC: ( )エピロカテキン C: (+)catechin,EGC: ( )epigallocatechin
J162
H本家禽学会誌黄形成中にも働いていたことを示唆する報告である。後 藤ら(1995)は,茶殻抽出物を添加したタラ肝油に抗酸 化作用を認め,茶殻中に存在するカテキンによる効果と 報告している。これらの報告からも,茶殼や茶葉には,
鶏肉中脂質の酸化を抑制し, 保存性向上に効果があるこ とが示唆される。
茶殻と茶葉給与によるブロイラー雄肉の官能試験を表 3に示した。官能試験では, モモ肉の硬さに有意な差が 認められた。ムネ肉では,茶殻区と茶葉区が対照区より も匂い(風味)が少なく、鶏肉具が押えられる様な傾li'l
42巻J3号(2005)
を示し,肉の硬さは対照区に此鮫すると茶殻区および茶 葉区で若干硬くなった。また,食味と総合評価(好まし さ)に有意な差はなかった。モモ肉の匂いは, ムネ肉と 同じ傾向となったものの,風味および総合評価では対照 区の評l'lliが高くなる傾向が見られた。安田(1992)はカ テキン類には消臭作用があることを報告しているが,本 実験においても茶殻に含まれるカテキン類の作用で鶏肉 臭が消臭されたことが推測される。
前報(金子ら, 2005)において,茶殻給与は飼料摂取 も良好で,成長を増進させ, |│哩腔内脂肪を抑制すること
ムネ肉 Breastmeat
モモ肉 Thighmeat
2 対照区 2
一◆一Control 一◆−Control対照I又
‑←澱;蕊r…
茶殻2.5%区 2.5%Usedgreentea
茶葉2.5%区 2.5%Greentea
10 515
手︵如封︑︑︹員︶
① で 澆 昌
① で
︷ 両 戸 で
﹇
﹇
︹
︶
﹇ 飼
︼ 言
圭U︐トミ卜斌入口形
515 10
︵如望﹃即︹眉︶
①でシヨ①で︷飼戸でロC﹇甸已言竺型・トミト公入ロト
÷
0 0
0 3 5 0 3
保存期間(日) 保存期間(H)
Preservationperiod(day) Preservationperiod(day)
図2 茶殻を給与したブロイラー肉のTBARS測定の経時的変化 DaycoursesofusedgreenteaonTBARSreactiveinmalebl‑oilers.
5
2g
o心14F
表3. 茶殼の給与がブロイラ雄肉の官能評{llliにおよぼす影響 I、able3. Effectsofusedgreenteaonpalatabilityofmalebroilel
ム ネ肉 Breastmeat
モモ肉
、l0 1 d
lrll目nmCaI
総合評Ⅲ Overall Palatabilit)
総合評価 Overall palatabilit]
風味 Flaval
食味 Palatabiiliu
硬さ 食味
TendernessPalalabiilill
風味 Flaval
破さ
旬、 1
1en〔lerness
河. . 、、ー
」‑'11月灰
4.25i0.71 3.75=t0.46 4.25±0.46 4.00±() .53 5. 14±1 .076. 14士1 .07(! ' ) 2) 5.14±1 .57 5.29±1 .25 Control
茶殻25%区
3.88±1 . 133.75±0.71 4.00±0.76 [1 . 13±0.83 4.29±0.76 4.71±0.95I) 4.71=t0.95 4.86士0.90 2.5%used91℃entea
茶葉2.5%区
3.75±0.71 3.25±1 .04 4.38±1 . 19 4. 13±0.99 4.00±1 .29 5.57±0.98;I I) 4.71=t1 . 11 4.71士1 .11 2.5%greentea
' )平均値±標準偏差
Means=tStandarddeviation.
2)異符号を付した平均値には区間で有意差あり (p<0.05).
Valueswithdifferentalphabetical scriptshowthesignincantdifference(p<0.05)
金子ら:茶殻ブロイ を報告した。本実験の結果からも, ブロイラーへの茶殻 の給与は茶葉以上に脂質酸化を抑制し,高I1l11質化が期待 された。今l lの緑茶ドリンクブームにより大量の茶殻が 産業廃棄物として排出される中で, | │水は飼料を輸入に 依存しており,茶殻を鶏あるいは他の家畜の飼料に添加 服│川Iすることにノくきな意義があると思われる。
本研究を行うに際し,茶葉と茶殻のα−トコフェロー ル, βカ口テンの分析でご協力, ご助言をIHいた久留米
リサーチパークの木下主任に感謝の意を表します。
ラー肉の脂質酸化抑制 Jl63
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1164
EffectsofDietaryUsedGreen'1baPowderonMeatlngredient andSuppressionofLipidOxidationinBroilers
KunioKaneko'),HirokazuHazama2),SatoshiKawahara2),ManabuTobisa3),
へ、 句、
MitsuhiroFurusejノandMichioMuguruma4ノ
' )YameAgricultul・alHighSchool,Yame‑shi8340031 z)FacultyofAgl・icultul・e,UniversityofMiyazaki,Miyazaki‑shi889‑2192
3)GraduateSchoolofBiol・esourceandBioenvil・onmentalSciences, KvushuI−ヌniversitv,Fukuoka−shi812−8581