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〈真にするもの〉の形而上学とトロープ存在論

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Academic year: 2021

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〈真にするもの〉の形而上学とトロープ存在論

――秋葉剛史『真理から存在へ』を読む――

オーガナイザー/司会:鈴木生郎(慶應義塾大学)

提題者:秋葉剛史(成城大学)

北村直彰(慶應義塾大学)

金杉武司(國學院大學)

分析的形而上学はこれまで、様々な形而上学的問題――たとえば物質的対象、出来 事、性質などの存在をめぐる問題や、因果とは何かといった問題――について、理論 構築とその吟味を繰り返すことで知見を深めてきた。こうした営みがいまも精力的に 続けられていることにはもちろん変わりはない。しかし他方で、分析的形而上学にお いて近年顕著なのは、形而上学のあり方を問い直そうという動きである(こうした動 きは「メタ形而上学」という分野に結実しつつある)。そこで問われるのはたとえば、

形而上学が目指すべきなのは存在者の網羅的なリストの作成ではなく、存在者が織り なすより深い秩序(基礎的なものと非基礎的なものの階層構造)の解明ではないかと いった問いや、ある種の形而上学の論争は単なる言葉の問題にすぎないのではないか、

形而上学を展開する上での適切な方法論はどのようなものなのか、といった問いであ る。すなわち、個別の形而上学的問題(「一階の」問題)だけでなく、形而上学の目的 や方法に関する問題(「二階」の問題)が問われており、さらに両者が組み合わされる ような仕方で議論が進むというのが分析的形而上学の現状なのである。

DM・ ア ー ム ス ト ロ ン グ ら に よ っ て 精 力 的 に 展 開 さ れ た 〈 真 に す る も の

(truthmaker)〉の形而上学は、まさにこうした背景のもとで、現在多くの哲学者の 注目を集めている(ただし、その発想の基礎は一時期のラッセルや初期ウィトゲンシ ュタイン、さらには初期現象学の一部にも遡りうる)。この形而上学の基本的なポイン トは次のようにまとめられよう。真理――とりわけ、偶然的なことがらについての真 理――は、究極的には実在のうちに根拠づけられている。すなわち、偶然的事実につ いての命題が真であるのは、その根拠となり、その命題を「真にする」存在者が実在 のうちに含まれているためなのだ。〈真にするもの〉の形而上学が目指すのは、こうし た実在論的な真理観に基づいて、命題を真にする存在者(こうした存在者は、命題と 対応関係に立つ「命題的構造をもつ存在者」であることが求められる)とはどのよう なものなのか、〈真にする〉という関係はどのように振る舞うのかといった問いに答え ることである。この形而上学が興味深いのは、こうした試みが、標準的ないわゆる「ク ワイン的」形而上学から離れる側面をもつと考えられ、したがって、何が存在するの かに関する一階の問いだけでなく、形而上学のあり方に関する二階の問いをも惹き起 こすからである。他方で、この形而上学の細部がどのような形をとるべきか、それは

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本当に受けいれられるべきものなのかという問いは、いままさに係争中の問題である。

さらに、この新たな形而上学が、形而上学内外の様々な哲学的問題とどう結び合わさ れることになるのかも興味深い問題として残されている。

こうした観点から見るならば、秋葉剛史氏の新著『真理から存在へ:〈真にするもの〉

の形而上学』(春秋社、2014 8月)は、とりわけ時宜にかなった著作だと言えるだ ろう。なぜなら、本書はまさに、〈真にするもの〉の形而上学が孕む問題に体系的に答 えようとする試みだからである。本書には、大別して二つの目的がある。ひとつは、

〈真にするもの〉の形而上学を動機づけ、既存の批判に応え、その枠組みを洗練させ ることである。こうした試みは、本書前半部第一章〜第五章で展開される。本書のも うひとつの狙いは、トロープ――すなわち、〈ソクラテスの青白さ〉のような、特定の 対象にもたれるかぎりでの個別的性質――こそが、(偶然的な)命題を真にするものと してもっともふさわしい存在者だと論じることである。こうしたトロープの存在を擁 護する試みは、本書後半部第六章〜第八章の課題となる。また、その過程で、〈真にす るもの〉をめぐる議論は、物質的対象の一致の問題(第六章)、命題的存在者の統一性 の問題(第七章)、心的因果の問題(第八章)といった広範囲の哲学的問題とも結びつ けられる。

本ワークショップの目的は、分析的形而上学内外の専門家をコメンテーターに迎え、

以上のような本書の試みを吟味することである。具体的には、ワークショップは以下 のように進められる。まず、冒頭に著者である秋葉氏に、本書の目的と内容、そして 残された課題について概説を与えていただく。次に北村氏には、分析的形而上学内部 の観点から、〈真にするもの〉の形而上学一般に関する議論(本書前半部)に関する疑 問提起をお願いする。続いて金杉氏には、現代の心の哲学の観点から、本書のおそら くもっともユニークな試みである「トロープ存在論に基づく心的因果の問題の解決(第 八章)」を中心に、批判的に検討していただく。そして、著者とコメンテーターの間で 議論を戦わせていただいた後に、フロアとの全体討論に移ることとしたい。全体討論 では、様々な分野の方々に積極的に議論に加わっていただくことを期待する。こうし た活発な議論によって「〈真にするもの〉の形而上学とトロープ存在論について実り豊 かな対話がもたらされた」という命題を真にすることができるならば、本ワークショ ップの目的は十分に達成されたといえるだろう。

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