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─宮城県心筋梗塞対策協議会データベースから─

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Academic year: 2021

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I.はじめに

 宮城県心筋梗塞対策協議会は,1979 年に当時の東北大 学内科学第一講座の故瀧島任教授が発案し,宮城県内で心 筋梗塞の診療に積極的に従事している主だった病院の医師 に呼びかけて設立された組織である.宮城県の救急医療の 一環として,緊急性が特に高い急性心筋梗塞症に適切に対 処し,その予後を改善することがその目的とされた.主な 活動は急性心筋梗塞症例の登録事業,年 1 回の医師向けの 啓蒙活動としてのパネルディスカッションの開催,主とし てコメディカル・スタッフを対象とした年 2 回の心臓病に 関する講演会などである.設立当時は約 20 施設の循環器 専門医が参加して協力体制が出来上がったが,入院中の死 亡率は 20%に達していた.今日では 42 施設が参加し,入 院中の死亡率は 5〜7%台と顕著な改善がみられている.

本稿においては,宮城県における急性心筋梗塞症の変遷に つき,同協議会のデータベースに基づいて得られた成果を 交えて紹介する.

II.急性心筋梗塞患者数と年齢構成の推移

 図 1 に宮城県心筋梗塞対策協議会が発足した 1979 年から 2006 年までの急性心筋梗塞患者の登録数の推移を示す.

2002 年までは,ほぼ直線的に増加しているが,それ以降 はほぼ横ばいの状態である.登録数が必ずしも宮城県にお ける急性心筋梗塞発症数を正確に反映しているとは断言で きない.特に,初期の登録数の増加は加盟病院のカバー率 が増加したためである可能性を否定できない.しかし,近 年は加盟病院が宮城県全体を完全にカバーしており,ここ に示した数字はほぼ宮城県における発症数に等しいと考え られる.2006 年 6 月 1 日時点の宮城県の推定人口は約 236 万人であるから,同年の急性心筋梗塞の発症率は人口 10 万人当たり約 47 人である.また,男女比は 2.7 対 1 であ

る.仙台市(人口約 103 万人)の患者に限ってみると人口 10 万人当たりの発症率は約 43 人であり,宮城全体の値より もやや少ない.これは年齢構成の違いなどによる可能性が あると思われる.

 図 2 に 1980 年から 5 年毎にみた登録患者の男女別年齢構 成を示す.年齢が 80 歳を超える患者の割合が年々増加し ているが,この傾向は女性で特に顕著である.高齢化社会 の到来とともに,急性心筋梗塞患者に占める高齢者の割合 の顕著な増加が明らかとなっている.

III.急性心筋梗塞発症の日内変動

 図 3 に 2002 年から 2006 年の 5 年間に発症した急性心筋 梗塞患者 5551 人のうち,発症時刻が明らかな 4932 人の発 症時刻別の分布を示す.8 時台から 10 時台に明らかなピー クを形成しており,さらに 18 時台から 20 時台にも前者よ り小さなピークがある.これは大阪地区や海外の報告とも 一致している1,2).この午前中の発症ピークは,アスピリ 3)b遮断薬4)を投与された患者では明らかではないと する報告があり,朝の血圧の一過性上昇,交感神経系の活 性化,あるいは血小板凝集能の亢進などの関与が示唆され ている.

IV.入院死亡率の推移と再灌流療法

 図 4 に急性心筋梗塞患者の入院中の死亡率の推移を示 す.常に女性の死亡率が男性の死亡率を上回っている.こ の原因の少なくとも一部は,図 2 に示したように発症者に 占める高齢者の割合が明らかに女性のほうが高いことによ り説明できると思われる.一方,死亡率は性別によらず明 らかに減少してきている.調査開始時の 1980 年代初頭は 17〜26%と極めて高い死亡率であったが,最近の 10 年間 は 5.7〜8.3%と明らかに改善がみられている.この死亡率 の低下には,冠動脈形成術を主体とする急性期の再灌流療 法が寄与していることをわれわれは報告している5).図 5 に示すように 1985 年から 1989 の 5 年間の入院中死亡率は 12.7%であり,これは 1997 年から 1999 年の 3 年間に冠動脈

― 126 ― 東北大学大学院医学系研究科循環器病態学分野(〒 980-8574 仙 台市青葉区星陵町 1-1)

冠疾患誌  2008; 14:  126-129

総説

宮城県における急性心筋梗塞症の変遷

─宮城県心筋梗塞対策協議会データベースから─

加賀谷 豊,下川 宏明

Kagaya Y, Shimokawa H: Alteration in characteristics of acute myocardial infarction in Miyagi prefecture: analysis of data from Registry of Miyagi Study Group for AMI. J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 126-129

(2)

インターベンション(primary PCI)による再灌流療法を急 性期に受けなかった患者の死亡率 12.7%と一致している.

一方,1997 年から 1999 年の 3 年間に primary PCI による再

灌流療法を急性期に受けた患者の入院中死亡率は,わずか 3.6%に留まっていた.

 さらにわれわれは,1992 年から 2000 年までに急性心筋 梗塞のために発症から 6 時間以内に入院した患者 3,258 人 を対象として,再灌流療法の有無あるいはその方法により 入院中の死亡率に差があるか否かを検討した6).現在日本 では,急性心筋梗塞患者は入院時に primary PCI を施行さ れることが多い.調査期間である 1992 年から 2000 年にか けて,primary PCI の頻度は急速に高まった(図 6).1992 年から 1994 年にかけてその施行頻度は 26%に留まってい たが,1995 年から 1997 年の期間では 48%に,1998 年から 2000 年までの 3 年間では 75%に達していた.Primary PCI に 加 え て 静 脈 内 投 与 に よ る 血 栓 溶 解 療 法(IV  thrombolysis),冠 動 脈 内 投 与 に よ る 血 栓 溶 解 療 法(IC  thrombolysis),さらには血栓溶解療法後に再灌流が十分 でない場合や高度狭窄病変が残った場合に行う冠動脈形成 (rescue PCI)の効果を検討した.

 年齢,性別,梗塞部位,心筋梗塞の既往,高血圧または 糖尿病の合併,および再灌流療法の手段を共変量として,

多変量ロジスティック回帰分析を行い,30 日以内の入院

― 127 ―

J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 126-129

1 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院における急性心筋梗

塞患者の男女別登録数の推移

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3 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院における急性心筋梗

塞の発症時刻別患者数(2002 年〜2006 年)

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4 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院における急性心筋梗

塞患者の男女別入院中死亡率の推移

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2 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院における急性心筋梗

塞患者の男女別年齢構成の推移 男性

女性

5 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院における primary 

PCI の有無と入院中死亡率:Primary PCI 時代以前との比較(文 献 5 より改編)

PCI:経皮的冠動脈インターベンション.

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(3)

中の死亡に関与する因子を検討した(図 7).その結果,死 亡 率 を 減 少 さ せ る 因 子 は,primary  PCI(補 正 オ ッ ズ 比 0.38,95%信頼区間 0.28-0.52)と IC thrombolysis(補正オッ ズ比 0.30,95%信頼区間 0.15-0.60)であった.一方,死亡 率を増加させる因子は,高年齢,前壁梗塞,および再発性 心筋梗塞であった.IC thrombolysis は有意に死亡率を減 少させたが,再灌流が不十分だったり高度狭窄病変が残っ たりしたために rescue PCI を施行した症例はこの群には 含まれておらず,かつ rescue PCI 自身は有意に死亡率を 減少させてはいない.したがって,発症 6 時間以内に搬送 された急性心筋梗塞に対する再灌流療法としては,pri- mary PCI の優位性が示唆される.

V.急性心筋梗塞患者の在院日数の推移

 図 8 に最近 10 年間に急性心筋梗塞にて入院し,生存退院 した患者の在院日数の推移を示す.3 週間未満の入院が増 加し,一方 3 週間以上の入院,特に 1 カ月を超える入院が 明らかに減少している.Primary PCI により患者の入院後 の経過が安定したこと,心臓リハビリテーション・プログ ラムの普及,さらには包括医療の導入など複数の要因が関 与している可能性があると思われる.最近の医療情勢とし て,あらゆる疾患に関して在院日数短縮の圧力が強くなっ てきている.急性心筋梗塞も例に漏れることなく,今後も 在院日数のさらなる短縮の傾向は続くと思われる.

VI.ま と 

 宮城県心筋梗塞対策協議会の約 30 年に渡る急性心筋梗 塞患者の登録事業により,高齢化社会の到来に起因すると 思われる患者数の増加,特に女性の高齢者の患者増加が明 らかとなった.一方,心筋梗塞の急性期死亡率は著明に改 善したことも示された.この急性期の予後改善に最も貢献 したものは,primary PCI であることが示唆された.Pri- mary PCI の普及はおそらく入院期間にも影響を与えてい ると思われる.一方,心筋梗塞患者の長期予後も改善して きているかどうかは,今後検討していかなければならない 重要な課題である.心筋梗塞患者の予後の改善,さらには 急性心筋梗塞の一次・二次予防のためには,医師,コメ ディカル・スタッフ,さらには一般市民に対する啓蒙活動 を十分に行っていく必要があり,今後も登録事業と併せて これらに力を注いでいくことが重要であると考える.

文  献

  1)  Kinjo K, Sato H, Sato H, Shiotani I, Kurotobi T, Ohnishi Y,  Hishida E, Nakatani D, Ito H, Koretsune Y, Hirayama A,  Tanouchi  J,  Mishima  M,  Kuzuya  T,  Takeda  H,  Hori  M; 

Osaka  Acute  Coronary  Insufficiency  Study (OACIS) 

Group: Circadian variation of the onset of acute myocar- dial infarction in the Osaka area, 1998-1999: characteriza-

― 128 ―

J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 126-129

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Rescue PCI IC-thrombolysis IV-thrombolysis

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6 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院に発症から 6 時間以

内に入院した急性心筋梗塞患者の再灌流療法の有無とその方法 の推移(文献 6 より改編)

IV:静脈内,IC:冠動脈内,PCI:経皮的冠動脈インターベン ション.

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8 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院に急性心筋梗塞にて

入院後,生存退院した患者の在院日数の推移

7 宮城県心筋梗塞対策協議会加盟病院に発症から 6 時間以

内に入院した急性心筋梗塞患者の入院後 30 日以内の死亡に関 与する因子(文献 6 より改編)

年齢,性別,梗塞部位,心筋梗塞の既往,高血圧または糖尿病 の合併,および再灌流療法の手段を共変量とした多変量ロジス ティック回帰分析の結果を示す.補正オッズ比と 95%信頼区間 を示す.

IV:静脈内,IC:冠動脈内,PCI:経皮的冠動脈インターベン ション.

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(4)

tion of morning and nighttime peaks. Jpn Circ J 2001; 65: 

617-620

  2)  Hjalmarson A, Gilpin EA, Nicod P, Dittrich H, Henning H,  Engler R, Blacky AR, Smith SC Jr, Ricou F, Ross J Jr: Dif- fering circadian patterns of symptom onset in subgroups  of  patients  with  acute  myocardial  infarction.  Circulation  1989; 80: 267-275

  3)  Muller JE, Stone PH, Turi ZG, Rutherford JD, Czeisler CA,  Parker C, Poole WK, Passamani E, Roberts R, Robertson  T: Circadian variation in the frequency of onset of acute  myocardial infarction. N Engl J Med 1985; 313: 1315-1322   4)  Ridker PM, Manson JE, Buring JE, Muller JE, Hennekens 

CH: Circadian variation of acute myocardial infarction and  the  effect  of  low-dose  aspirin  in  a  randomized  trial  of 

physicians. Circulation 1990; 82: 897-902

  5)  Watanabe J, Iwabuchi K, Koseki Y, Fukuchi M, Shinozaki  T, Miura M, Komaru T, Kagaya Y, Shirato K, Kitaoka S,  Ishide N, Takishima T: Declining trend in the in-hospital  case-fatality  rate  from  acute  myocardial  infarction  in  Miyagi Prefecture from 1980 to 1999. Jpn Circ J 2001; 65: 

941-946

  6)  Sakurai K, Watanabe J, Iwabuchi K, Koseki Y, Kon-no Y,  Fukuchi M, Komaru T, Shinozaki T, Miura M, Sakuma M,  Kagaya  Y,  Kitaoka  S,  Shirato  K:  Comparison  of  the  effi- cacy  of  reperfusion  therapies  for  early  mortality  from  acute  myocardial  infarction  in  Japan:  registry  of  Miyagi  Study Group for AMI (MsAMI). Jpn Circ J 2003; 67: 209- 214

― 129 ―

J Jpn Coron Assoc 2008; 14: 126-129

参照

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