「わかる喜びのある読解指導
−説明的文章教材における学習過程の工夫−」
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研究主題「わかる喜びのある読解指導
−説明的文章教材における学習過程の工夫−」
東 京 都 教 職 員 研 修 セ ン タ ー 研 修 部 教 育 開 発 課 昭 島 市 立 中 神 小 学 校 教 諭 安 孫 子 佐 都 子
Ⅰ 研究のねらい
平成 20 年 1 月に、中 央教育審議 会から「幼 稚園、小学 校、中学校 、高等学校 及び特別支 援 学 校の学習指 導要領等の 改訂につい て」(答申 )が示され た。その中 で、今回の 学習指導 要 領 改訂では、 「現在の子 供たちの課 題への対応 」という視 点から6点 のポイント が示され 、 その 中でも「基 礎的・基本 的な知識・技能の習得 」「思考力・判断力・表現力等の 育成」「学 習 意欲の向上 や学習習慣 の確立」「 豊かな心や 健やかな体 の育成のた めの指導の 充実」の 4 点が 重要である としている 。
この4点の 視点の基盤 となるもの は「基礎的 ・基本的な 知識・技能 の習得」で ある。中 で も 説明的文章 の読解にお いては、教 師は子供に 段落の文章 を要約し、 段落間のつ ながりな ど の 文章構成を 理解する力 を習得させ 、自分の力 で文章を正 確に読み取 り「わかっ た」とい う 実感 をもたせ、 意欲を高め ていく指導 を考える必 要がある。
ま た、説明的 文章を読解 する力は、 情報を活用 し、これか らの社会を 生き抜くた めに土 台 とな るものであ る。大切な のは 、「わ かる」喜び を原動力と し、意欲を もち、活動 していくこ とだ と考える。
そこで、本 研究では、 特に説明的 文章の読解 の過程を、 子供が「わ かる」まで の構成要 素 とし て分析し 、その 構成要 素を基に学 習過程を工 夫すること によって基 礎的・基本 的な知識・
技 能を習得さ せ、その結 果、子供に 「わかる」 喜びが生ま れ「生きる 力」を身に 付けてい く こ とになると 考えた。こ のことは学 習意欲の向 上や思考力 ・判断力・ 表現力等の 育成の重 要 な条 件であると して、本研 究主題を設 定した。* 本 研 究 で は 、「 分 か る 」 は 「 わ か る 」 と 表 記 し た 。
Ⅱ 研究の内容と方法
1 基礎研究・・・「わかる」までの段階について(文献研究)
研究 の仮説
子 供 が 説 明 的 文 章 を 理 解 す る ま で の 段 階 と つ ま ず き に 対 す る 教 師 の 指 導 の 工 夫 の 在 り 方 を明 らかにし、そ れに基づ いて学習過 程を工夫す ることで、子 供に「わか った」とい う実感 をも たせ、読解 の目標を達 成させるこ とができる 。
研 究 の 内 容
1 「 わ か る 」 ま で の 段 階 を 明 ら か に し た 。
2 1 を 基 に 学 習 過 程 を 工 夫 し 、「 わ か る 」 た め に 必 要 な 手 だ て を 整 理 し た 。
3 「 わ か る 」 た め の 指 導 の 工 夫 を 明 ら か に し た 。
実 践 研 究
第 3 学 年 の 教 材「 す が た を か え る 大 豆 」 の 学 習 指 導 案 を 作 成 し 、「 わ か る 」ま で の 構 成 要 素 を 含 ん だ 学 習 過 程 の 工 夫 と 手 だ て の 有 効 性 に つ い て 検 証 授 業 を 行 っ た 。
・ 人 間 が 情 報 を 取 り 入 れ る 仕 組 み な ど か ら 「 わ か る 」 ま で の 段 階 を 分 析 し た 。
・ 認 知 の 脳 科 学 の 視 点 か ら 、「 わ か る 」 た め の 活 動 を 分 類 ・ 整 理 し た 。
・ 説 明 的 文 章 の 学 習 指 導 方 法 に 関 す る 先 行 研 究 を 分 析 し 、「 わ か る 」 た め の 構 成 要 素 ・ 段 階 を 整 理 し た 。
「わかる喜びのある読解指導
−説明的文章教材における学習過程の工夫−」
②
子供 が「わかる 」ためには 、言葉の意 味や知識を 理解し もの ごとの関係 や規則性に 気付いてま とめ、全体 像のイメ ージ をもつこと が必要であ る。そこで 、それらの 構成要素 を右 の4点であ ると考えた 。
2 「わかる」ための教師の手だての明確化について (1) 「わかる」までの段階を基にした学習過程の工夫
読解 における学 習活動の目 標を達成さ せるために 、「 わかる 」までの段 階を基にし た説明的 文章 教材の学習 過程と具体 的な教師の 手だてを整 理した。教 師が見て「 わかる」ま での構成 要 素を 含んだ学習 指導計画及 び学習指導 案を作成し 、教師の具 体的な手だ てを取り入 れやすく し た。
「わかる」までの段階を基にした説明的文章教材の学習過程と具体的な教師の手だて
(2) わかるための指導の工夫について <導入の工夫と学習マップの提示>
「意 味がわかる 」段階では 、「 言葉の 意味がわか る」ことと 、何のため に学習する のか、つま り「 学習のめあ てがわかる 」段階が含 まれている 。何を学習 するのか、 何のために 学習する の かを 子供自身が 導入段階で しっかりと 把握するこ とが大切で ある。
そ こで「言葉 の意味がわ かる」ため に導入の段 階では、映 像の活用や 体験からの 想起など の イメ ージ化を重 点的に行い 、説明的文 章教材の学 習と自分と のかかわり を明確にす ることを 重 視し た。
ま た「学習の めあてがわ かる」ため に「学習マ ップ」を提 示すること とした。読 解の道筋 を 学ぶ ことは、自 力での読解 を行い主体 的に学習に 取り組むた めの見通し をたてる目 安になる 。
「わ かる」まで の段階別学 習過程を子 供用に表し 、導入時に 提示すると ともに段階 を確認し な がら 学習を進め た。説明的 文章教材に おける学習 の共通の道 筋として他 の教材でも 使用して い くこ とによって 、子供の中 に定着を図 っていくこ とが大切で あると考え る。
「わかる」までの段階 1「 意味がわか る」
2「 組み立てが わかる」
3「 まとめるこ とができる 」 4「 わかったこ とから考え る」
説 明 的 文 章 教 材 の 学 習 に お け る
「 わ か る 」ま で の 段 階 を 基 に し た 学 習 過 程
「 わ か る 」た め の 学 習 過 程 の 段 階 の 内 容 か ら 指 導 の 重 点 と 留 意 事 項 を 考 え る 。
学 習 過 程 と 指 導 の 重 点 を 踏 ま え 、
「 わ か る 」た め に 必 要 な 学 習 活 動 を 考 え る 。
「 わ か ら な い 」 状 態 を「 つ ま ず き 」 と し 、 活 動 に お け る そ の 姿 を 具 体 的 に 挙 げ る 。
「 つ ま ず き 」に 対 す る 克 服 の た め の 教 師 の 手 だ て を 挙 げ 、授 業 の 構 成 を 考 え て い く 。 段 階 を 基
に し た 学 習 過 程
指 導 の 重 点 と
留 意 事 項 学 習 活 動 予 想 さ れ る
子 供 の つ ま ず き
具 体 的 な 教 師 の 手 だ て
・新 出 漢 字 を 読 む 。
・新 出 漢 字 の 読 み
が わ か ら な い 。 ・ 読 み 方 を 教 え る 。
・ 絵 や 具 体 物 を 提 示 す る 。
・ 写 真 等 で イ メ ー ジ 化 を 促 す 。
・ 動 作 化 に よ り イ メ ー ジ 化 を 促 す 。
・ 国 語 辞 典 等 の 活 用 法 を 指 導 し 、 使 用 す る 時 間 を と る 。
・ 対 話 に よ り 、 意 味 を 教 え る 。 1 意 味 が
わ か る
( 意 味 を と ら え 知 識 を 得 る 段 階 )
言 葉 の 意 味 と 知 識 理 解 を 重 視 し 、辞 書 を 引 く こ と と と も に 対 話 や 動 作 化 、具 体 的 な 写 真 の 提 示 等 を 行 い 、イ メ ー ジ 化 を 進 め て い く 。
・ 言 葉 の 意 味 を 理 解 す る
・ 言 葉 の 意 味 が わ か ら な い 。
・知 識 に 関 す る 発 問 に 答 え ら れ な い 。
・ 子 供 同 士 の 話 し 合 う 場 を 設 定 す る 。
「わかる喜びのある読解指導
−説明的文章教材における学習過程の工夫−」
③ 3 実践研究(検証授業)
(1) 学習指導計画の作成
(2) 段階別の指導の工夫
① 「意味がわかる」段階
「 すがたをか える大豆」 の文章を読 み、わから ない言葉を 見付け、意 味を調べる 学習 活 動の 時間をとっ た。子供の つまずきは 、主に言葉 の意味がわ からず、イ メージがも てな い こと である。そ れに対して 視覚的な資 料の提示や 対話を取り 入れ、子供 の体験と結 び付 い た知 識となるた めに動作化 を取り入れ た。
② 「組み立てがわかる」の段階
段落 を「はじめ 」「 中」「終 わり」に分 ける話し合 い活動を取 り入れた 。「何 を基に 分ける のか がわからな い。段落の 役割に気付 かない。指示語 、接続 語の役割を 知らない 。」と いう つま ずきに対し て文章が3 部構成にな っているこ とを初めに 示し、指示 語・接続詞 の役 割 に気 付かせ、段 落を分ける 視点を明確 にした。段 落の内容と 関連した絵 や図を使い 、子 供 と共 に内容にお いてのまと まりやつな がりを確認 しながら、 ワークシー トにまとめ た。
③ 「まとめることができる」段階
手 だてとして 段落の中か ら大切な文 を選ばせ、 その理由を 考えさせた 。キーワー ド及 び その 探し方がわ からないと いうことが つまずきと して挙げら れるので、 キーワード を見 付 ける 視点を与え 、段落の内 容をワーク シートに整 理していっ た。筆者が 読者に伝え たい こ とが あって書い た文章であ ることを確 認し、題名 との関連、 具体物との 関連、繰り 返し 出 てく る言葉など から大切な 言葉を見付 けていく視 点を示した 。
④ 「わかったことから考える」段階
筆 者の言いた いことを考 えさせるた め、選択肢 を提示し、 文章に基づ き選んだ理 由を 話 し合 わせた。読後の感想が もてないと いうつまず きに対して は、「食べ物 はかせ」の素晴 ら しい ところや教 えてくれた ことをどう 思うかなど の視点を与 え、考えさ せた。
(3) 自己評価の活用
授業 分析から、意欲の高ま りの変化に ついて見る ことができ 、その要因 について考 察した。
説明的文章教材「すがたをかえる大豆」(3年)の指導計画(全7時間)
時 学 習 段 階 ね ら い 学 習 活 動
①
② 意 味 が わ か る
○ 「 食 べ 物 は か せ 」 に な る た め に 、 大 豆 に つ い て 関 心 を も ち 、 自 分 の 知 識 や 体 験 と 言 葉 の 意 味 を 結 び 付 け 、 イ メ ー ジ を も つ 。
・ 「 食 べ 物 は か せ 」の イ メ ー ジ を も ち 大 豆 に つ い て 知 っ て い る こ と を 発 表 す る 。
・ 文 章 を 読 み 、 わ か ら な い 言 葉 の 意 味 を 調 べ る 。
③
④
組 み 立 て が わ か る
○ 説 明 文 を 読 み 、 段 落 の つ な が り と 構 成 を 理 解 す る 。
・ グ ル ー プ で 文 章 全 体 の 段 落 を 「 は じ め 」
「 中 」「 終 わ り 」 に 分 け 、 分 け た 理 由 に つ い て 話 し 合 う 。
⑤
⑥
ま と め る こ と が で き る
○ 「 す が た を か え る 大 豆 」 を 読 み 、 形 式 段 落 の キ ー ワ ー ド を 基 に 、 内 容 を 理 解 す る 。
・ 段 落 か ら キ ー ワ ー ド を 見 付 け 、内 容 を ま と め 、 整 理 し て い く 。
⑦ わ か っ た こ と か ら 考 え る
○ 文 章 全 体 か ら 筆 者 の 言 い た い こ と が わ か り 、 調 べ 学 習 な ど に つ な が る 自 分 の 考 え を も つ 。
・ 文 章 全 体 を 読 ん で 筆 者 の 伝 え た い こ と を 考 え 、 自 分 の 感 想 を も つ 。
「わかる喜びのある読解指導
−説明的文章教材における学習過程の工夫−」
④
ま た 、 本 時 の ね ら い に 関 す る 理 解 に つ い て の 自 己 評 価 と 教 師 の 評 価 の 差 異 を 分 析 シ ート に記 入 し た 。 評 価 の 差 異 に つ い て は 、 子 供 の 努 力 を 認 め た り 、 個 別 指 導 や 次 の 時 間 に 確 かめ の活 動を 入れたりす る等、評価 を具体的に 伝えること で学習指導 に生かした 。
Ⅲ 研究の結果と考察 1 授業の分析方法
学 習活動をビ デオ撮影と 授業観察記 録を基に授 業を分析・ 整理した 。「学 習活動 」「 教師の 発 問と 子供の反応 及び考察 」「 意欲の高ま りの変化(5段階 )」「学 習のねらい についての 理解とそ の反 応」を視点 としワーク シートに自 己評価も記 入させた上 で教師の評 価との差異 も分析した 。 教師 の評価と子 供の自己評 価の差異か ら手だての 有効性を検 証し指導の 改善を図る こととした 。 2 考察
(1) 意味がわか る段階では 子供が絵や 写真を基に 体験を 想起 して言葉を イメージし たり子供同 士の対話か ら言 葉の 意味をとら えたりする ことができ た。動作化 も意 味の 理解を助け ていた。ま た、子供の イメージは 教師 の発 問に左右さ れることが 多く、どの 段階におい ても 十分 な意図をも ち発問を練 り上げてお くことが必 要で ある ことを再認 識した。
(2) 組み立てが わかる段階 では友達の 意見を聞き 、話し 合っ たりする活 動から「わ かった」と 実感する子 供が 多く 見られた。 段落構成の 視覚的資料 も有効であ った。
(3) まとめるこ とができる 段階では、 音読によっ て様子
を 表す言葉を 確認してい くことによ り、言葉の 意味とイメ ージをつな ぎ、段落の 構成や内 容 の理 解を深め、 まとめる活 動を助けた 。
(4) わかったこ とから考え る段階では、文章全体 を振り返り 段落内容を クイズ形式 で確認する 、 筆 者の伝えた いことを理 解するため に選択肢を 選び理由を 考える、と いった学習 活動によ り
「わ かった」こ とが整理さ れ、まとま っていった 。 3 成果
(1) 「意味がわ かる」の段 階から意欲 が高まり、 日ごろ、理 解が十分で ない子供も まとめの 確 かめ テストでは 、正しい答 えを出すこ とができ、 段階別学習 の効果があ った。
(2) 「組み立て がわかる」 では、段落 分けの理由 を指示語、 接続語から 考えること ができ、構 成を 考える上で の視点が増 えた。
(3) 自己評価と 教師の評価 の差異を分 析すること で、見やす くなり評価 と指導の一 体化のポ イ ント が明確にな った。
Ⅳ 今後の課題
1 文章の構成 や文中から 筆者の言い たいことを 見付けるた めの手だて の工夫 2 子供の自己 評価と教師 の評価の差 異を縮めて いく手だて の改善
わかるまでの段階
(1)意 味 が わ か る
・ 対 話 ・ 動 作 化 ・ 体 験 (3)ま と め る こ と が で き る
・ 音 読
・事 実 や わ か っ た こ と の 確 認
(4)わ か っ た こ と か ら 考 え る
・ ク イ ズ 形 式
・ 選 択 肢 確 認
(2)組 み 立 て が わ か る
・ 話 し 合 い ・ 対 話
・ 視 覚 的 資 料 の 活 用