日本小児循環器学会雑誌 7巻4号 583〜584頁(1992年)
第11回群馬小児循環器学会研究会 時所長 日場会 平成3年5月17日(金)
前橋マーキュリーホテル 竹内東光
1.第1度〜第3度と多彩な房室ブロックを呈した 心内膜線維弾性症の1例
群馬県立小児医療センター循環器科 小林 敏宏,曽根 克彦 小林 富男,小須田貴史 同 病理科 平戸 純子 心内膜線維弾性症(以下EFE)は,一般的には乳児 期早期に心不全を来し,早期より強力な抗心不全療法 を施さなけれぽ死にいたる予後不良な疾患である.し かし,稀には本症と診断されずに乳児期を過ぎ,WPW 症候群や房室ブロックにて発見される症例もあり,日 常診療で見逃してはならない疾患の1つでもある.今 回われわれの経験した症例は,生後3ヵ月頃,気管支 炎との診断で某病院に2度の入院既往歴があり,その 後症状軽快し4歳の時,徐脈と心雑音を主訴に当院に 入院した.胸部レソトゲン写真は軽度の心拡大を示し,
心電図は1度〜3度と多彩な房室プロヅクで,断層心 エコー検査,心臓カテーテル検査では左室の拡張を認 め,拡張型心筋症様の所見であった.電気生理学的検 査では,AHブロックで,洞結節の回復時間は正常で あった.診断確定のために行った左室心内膜心筋生検 では,著明な心内膜肥厚と弾性線維,膠原線維の増生 を認め,EFEと診断した.本症例では,乳児期の呼吸 器感染症状がEFEの1症状であった可能性もある.
そして4歳の時に徐脈,高度房室ブロックにて発見さ れた興味ある症例と思われ報告した.
2.右肺動脈上行大動脈起始症の3歳男児例 群馬県立小児医療セソター循環器科 小林 富男,曽根 克彦,小林 敏宏 小須田貴史,篠原 真
一側肺動脈上行大動脈起始症は稀な疾患で,本邦で は現在までに約50例が報告されており,その約85%は 右肺動脈上行大動脈起始症である.本症は一般的には 乳児期早期に重篤な心不全,呼吸不全で発症し,約半 数が生後6ヵ月までに死亡すると云われている.たと え延命しても生後6ヵ月を過ぎると肺小動脈の閉塞性 病変が急速に進行する予後不良の疾患である.
我々は右肺動脈上行大動脈起始症の1例を経験し報 告した.症例は3歳10ヵ月の男児で,成長発達の異常 を指摘されたことはなく,3歳児検診で初めて心雑音 を指摘され当院で精査を施行した.心血管造影で主肺 動脈から左肺動脈のみが分岐し,上行大動脈の後方か ら右肺動脈が起始しているのが確認された.血圧の測 定結果では左右肺動脈圧は大動脈圧とほぼ等圧であ
り,左肺動脈血管抵抗値は19.6単位・m2と高度の肺高 血圧症を示し,右肺動脈上行大動脈起始症,肺高血圧 症と診断した.
3.肺高血圧症をともなうダウン症児3例の経験
(術前・術後経過を中心に)
済生会前橋病院小児科
佐藤 喜和,小野 真康 同 循環器外科
石原 茂樹,原 修二,前田 朋大 ダウン症候群に心疾患を伴った場合,左右短絡例で
は早期より肺高血圧を呈することが知られている.閉 塞性肺血管障害が進行した場合,術後死亡例もあり,
術後管理が問題となる場合がある.心室中隔欠損兼肺 高血圧症のダウソ症児3例に手術を施行し,うち1例 は術後低酸素血症が続き,その改善にプロスタグラソ ジンE1(PGE1)が有効であったので報告する.
(症例1,2は省略)症例3は3歳女児,VSD単独
で平均肺動脈圧73mmHg,肺血管抵抗値10.8単位・M2と高値を示した.トラゾリン負荷で肺血管に対する反 応性が認められたため手術を施行した.術後血圧がや や不安定で,100%酸素投与にても低酸素血症(50〜60 mmHg)が持続した.そこでPGE1を0.01μg/kg/min で開始し0.02μg/kg/minまで増量したところ低酸素 血症が改善し,血圧も安定し,術後53時間後に人工呼 吸器から離脱できた.本患児の術後1ヵ月目の心カテ 検査では平均肺動脈圧が32mmHgまで低下しており,
さらにPGE1負荷に対して肺血管はよく反応した.肺 高血圧を伴う心疾患児の術後持続する低酸素血症に対
してPGE1が有効であると思われた.
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例
584−(82)
4.右胸心を合併した乳児早期の三心房心の1治験
群馬大学医学部第2外科
高橋 徹,飯島 哲男,吉田 浜田 芳郎,石川 進,柳沢 大谷 嘉巳,山田 敬之,石渡 森下 靖雄
郎 肇 隆 一
三心房心は比較的稀な先天性心疾患である.我々は,
三心房心に内臓逆位を合併した症例に対して,乳児期 早期に根治術を施行したので報告する.
症例は1ヵ月の男児で,生後に内臓逆位を指摘され た.経過観察中,心雑音及び体重増加不良を指摘され,
心エコー,心臓カテーテル検査より,右胸心を合併し た三心房心の診断で手術を施行した.副室は左房内で 心房中隔欠損孔に向かって開口していた.異常隔壁を 切除後,心房中隔欠損をパッチで閉鎖し,術後の経過 は良好であった.右胸心を合併した三心房心は極めて 稀で,本症は乳児期早期に開心術を必要とすることが
ある.
5.肺静脈描出におけるDSAの有用性について 群馬大学医学部小児科
田端 裕之,田代 雅彦 心血管造影において肺静脈の観察は時相のずれによ
る造影剤の重なり,量不足により困難なことが多い.
我々は2年程前より心血管造影時にDSAを併用して いる.今回,特に肺静脈の観察という点においてDSA が有用であった症例につき報告した.症例は心房中隔 欠損症+部分肺静脈還流異常症,動脈管開存症+部分 肺静脈還流異常症,内臓逆位+三心房心,総肺静脈還 流異常症(下心臓型)であった.いずれの症例におい
日小循誌 7(4),1992
ても肺静脈の観察がDSAを用いることにより非常に 容易となり,術前検討においても有用であった.
6.肺動脈弁欠損症を伴ったファロー四徴症(胸腺
欠損)
桐生厚生病院小児科
竹内 東光,桑島 信,本橋 和夫 荒木 千晶,野村 陽子,田端 雅彦 松本 芳郎
症例は日齢0の男児.呼吸不全とチアノーゼにて入 院した.直ちに気管内挿管し大量の羊水が吸引された.
胸部にてto and fro雑音3/6を聴取した.胸部レソト ゲン写真にて,心拡大と著しい肺動脈の拡張,心電図 にて,右室肥大優位の両室肥大を示した.PH7.14,
PCO272mmHg, PO244mmHgであった.心エコーに
て,拡張した肺動脈,大動脈騎乗,心室中隔欠損等が あり,肺動脈弁は欠損し,同部位にてMモードパルス ドップラー法においてto and fro雑音の成因を証明し た.ファロー四徴症に伴う肺動脈弁欠損症と診断し,抗心不全療法等施行したが,日齢1にて死亡した.病 理解剖にて,胸腺が認められず,心臓においては,大 動脈径7mm,肺動脈径22mm,心室中隔欠損(8mm)
であった.肺動脈弁は形成不全であり,1〜1.5mmの ゼラチン様構造を示し,弁口の径は約3mmであった.
死因は,①羊水吸引,及び肺動脈の主気管支に対する 圧排による換気不全,②肺動脈弁欠損症に伴う心不全
と診断した.
特別講演
「小児循環器疾患におけるMRI」
東京女子医科大学放射線科 近藤 千里
Presented by Medical*Online