日本小児循環器学会雑誌 11巻2号 196〜198頁(1995年)
第28回東北小児心臓病研究会
時 所 人 話
日場世 平成6年12月3日
宮城県医師会館
小野木 宏(国立仙台病院小児科)
1.高周波力テーテルアブレーションが著効した,
運動誘発性上室性頻拍の1例
仙台市立病院小児科 村田 祐二 同 循環器科
小田倉弘典,八木 哲夫,滑川 明夫 症例は12歳男児,WPW(A)として経過観察されてい たが,運動負荷により頻拍が誘発されたため当科紹介 となった.負荷により再現性をもって上室性頻拍が誘 発され,プロプラノールが発作の予防に有効であった.
EPSの結果,ケント束は左側側壁にあり,そのERPは 200msec以下と短くハイリスク例と考えられた.本人 の運動部継続とハイリスク例であることを考慮しカ テーテルアブレションを施行した.
使用機種はRadionics社製RFG−3で, CSカテーテ ルでマッピング,大腿動脈より逆行性に挿入したEPT large tip cath.を用いケント東電位を認めた部位で25 WのRF通電を行った.通電後0.5secでデルタ波の消 失をみとめたが,引き続き30secの追加通電を行った.
その後,イソプロテレノール負荷でもデルタ波の出 現や,室房伝導はなく,無投薬で運動制限もなく経過 観察中である.
2.新生児重症エプスタイン奇形の2例 中通病院小児科
高田 修,三浦 靖徳 赤羽 連子,赤羽 仁三 いわゆるwall to wallの著明な心拡大を伴う重症 Ebstein奇形を2例経験し報告した.
1例目は女児.在胎33週で胎児エコーで心拡大を指 摘され当院へ.エプスタイン奇形,肺動脈閉鎖の診断 で両親と相談し在胎39週で帝切で出生後すぐlipo−
PGE1開始. CTR O.91で聴診上肺野の音は聴取不可能 だった.生後2日にBAS施行.生後5口間はacidosis 無く呼吸数70前後で落ち着いていたが次第にCO2蓄 積し生後8日目挿管,生後11日目死亡.2例目も女児.
在胎40週で出生し重度のチアノーゼあり当科へ.Xp 上CTR O.83のエプスタイン奇形で重度PRも合併.
児も始めの2週は呼吸状態は落ち着いていた.生後15
日よりCO、蓄積し生後25日呼吸停止し死亡.
2例とも始めの1週は呼吸状態保たれ,肺低形性の 臨床所見無く,呼吸不全は増強する右心拡大による気 道と左心系の圧迫によるものと推定された.
3.第5大動脈弓遺残を伴うファロー四徴症の1例 秋田大学医学部小児科
田村 真道,伊藤 忠彦,原田 健二
4.Hemophagocytic syndromeを合併した大動
脈炎症候群の1例東北大学医学部小児科
小澤 晃,大野 忠行,田中 高志 柿澤 秀行,相川純一郎
Viral associated hemophagocytic syndrome(以 下,血球貧食症候群)を併発したために偶然発見され た大動脈炎症候群の一例を経験した.大動脈は著しい 拡張あるいは狭窄病変を呈し,また冠動脈の拡張病変
もありながら自覚症状が無く,理学的所見上も有意な 所見のないearly prepulseless phaseの例であり,画 像診断を中心に報告した.臨床経過上血球貧食症候群 の再燃によると思われる発熱と炎症反応の増悪は難治 性で,大動脈炎症候群の活動性の評価も難しく,慎重 な治療と管理が必要と考えられた.
5.当科における心筋炎の臨床病理学的検討 明和会中通病院小児科
三浦 靖徳,高田 修 赤羽 道子,赤羽 仁三 最近5年間で当科で経験した心筋炎は7例で,起因
ウイルス又は起因菌の推測できた症例はinfluenza A,
coxsackie B3, EB, diphtheria各々1例であった.剖 検1例を除き右室心内膜心筋生検を行っている.興味 深い経過を辿った以下の3例について,心筋病理所見
を中心に述べた.
1.8歳,chronic persistent EB virus infection,
AR, MR, LVEF O.54,心筋生検では単核細胞の浸潤,
myocytolysisが著しい. emdornyocarditisといえる 所見でAR, MRは心内膜炎に由来したものと思われ
た.
Presented by Medical*Online
日小循誌 11(2),1995
2.21歳,diphtheria,ダウン症.
呼吸困難,DICを合併し入院4日で死亡.剖検で左 右心房を中心に好中球や好酸球を含む高度の細胞浸潤
を認めた.
3.12歳,心電図異常.
LVEF,左室壁運動,冠動脈造影等に異常は無いが,
心筋生検像では斑状の心筋細胞の脱落,線維化と極く 軽度の単核細胞の浸潤を認めた.
6.動脈管依存性心疾患におけるプロスタグランジ ン投与下の肺動脈形態の変化一心エコー法による検討
秋田大学小児科
伊藤 忠彦,田村 真通,原田 健二 極型ファロー四徴症3例を含む動脈管依存性心疾患
5例を対象に,心エコー法によりPGE1開始前から短 絡手術(平均投与期間52日)まで経時的に左右肺動脈 の形態を観察した.右肺動脈は平均2.9mmから4.8 mmと1.7倍の太さに,左肺動脈は2。8mmから4.1と 1.5倍の太さに発育し,PAindexは67から151まで増大 した.更に細かく経時的に検討すると,PGE1投与後数 日間は,急激に増加する肺血流量に対応し,左右肺動 脈は急激に太くなり,その後はゆっくりと発育した.
以上より,本疾患群においてもPGE1によって増加す る肺血流量に対し,生後1〜2カ月までの間に左右肺 動脈は形態的に適応し太さを増す.したがって,症例 によっては短絡手術を左右肺動脈が形態的に適応する まで待つことも1つの選択肢と思われる.
7.主肺動脈欠損例に対する肺動脈形成術の経験 山形大学医学部第二外科
深沢 学,折田 博之 広岡 茂樹,鷲尾 正彦 山形大学医学部小児科
秋場 伴晴,中里 満,佐藤 哲 右主肺動脈欠損2症例に対し,cyanosisの軽減・
Fontan手術の可能性を追求する目的で葉間肺動脈を 用いた肺動脈形成術を行った.症例1はFontanの1 期手術としてのTAPVC(la)修復, Glen,右B−T shunt 部狭窄patch形成術後右肺動脈血栓・閉塞例であり,
症例2は左B−Tshunt術後遠隔期の傍動脈管閉塞例 である.2症例とも右肺門部まで肺動脈は消失してお
り,剥離した葉問肺動脈にグルタルアルデヒド処理豚 心膜patchによる袋を縫合,右主肺動脈を形成し,こ れに対してB−Tshunt術を行った.2例ともcyanosis の軽減・活動性の向上が得られ,現在Fontan手術適応
197−(91)
を検討中である.
8.Jatene術後の肺動脈狭窄に対する外科治療 東北大学医学部胸部外科
佐藤 香,近江三喜男,田林 胱一 9.生後24日目に経皮的バルーン大動脈弁形成術を 施行した大動脈弁狭窄症の1例
山形大学医学部小児科
鬼海安都子,中里 満 佐藤 哲,秋場 伴晴 長井市立総合病院小児科 佐藤 哲雄 症例は日齢23の男児.主訴は心雑音,多呼吸,哺乳 不良.日齢13から多呼吸や哺乳不良が出現し,近医で 心雑音を指摘され当科に入院した.第3肋開胸骨左縁 にLevine 3度の収縮期雑音を聴取し,肝臓を2cm触知 した.心エコー検査では左室収縮能の低下と,肥厚し た大動脈弁のdomingを認めた.重症大動脈弁狭窄症
と診断し,日齢24に全身麻酔下に経皮的バルーン大動 脈弁形成術(BAV)を施行した.大動脈弁輪系は7.9 mmであった.7mmのバルーンカテーテルを逆行性に 挿入し,waistが消失するまで拡張した.左室大動脈圧
較差は術前49mmHgから術直後27mmHgに低下し,
左室造影像から計測した左室駆出率も30%から39%に 改善した.合併症としては3度の大動脈弁逆流が出現 したが,臨床的には多呼吸や哺乳力の改善がみられた.
重症大動脈弁狭窄症に対しBAVは有効であると思わ
れた.
10.経皮的バルーン肺動脈弁形成術を施行した末梢 性肺動脈狭窄の6例
山形大学医学部小児科
佐藤 哲,中里 満 鬼海安都子,秋場 伴晴 山形大学医学部第二外科
折田 博之,深沢 学,鷲尾 正彦 長井市立病院小児科 佐藤 哲雄 末梢性肺動脈狭窄を有する先天性心疾患患児6例に 対し,7回のバルーン肺動脈形成術(BPA)を施行し た.年齢は3歳から12歳で,基礎心疾患は肺動脈閉鎖 兼心室中隔欠損2例,ファロー四徴症2例,純型肺動 脈閉鎖症1例,両大血管右室起始症1例で,全て根治 手術後の症例であった.狭窄部位2.2mmから7.Omm
(平均5.3mm)に対して,その190から318%(平均 266%)のバルーンを用いてBPAを行い,狭窄部径は 6.5mmから11.5mm(平均7.7mm)に拡大し,拡大率 は103%から200%(平均150%)であった.狭窄部の圧
Presented by Medical*Online
198−(92)
較差はBPA前平均18mmHgからBPA後平均9
mmHgに低下した.狭窄部径の拡大率が150%以上得 られた症例をBPAの有効例とすると,有効率は57%
であった.1例でバルーンカテーテルが嵐径部から抜 去不能となり静脈切開を必要としたが,他にBPAに 関連した合併症は認めなかった.末梢性肺動脈狭窄に 対して,BPAは試みるべき価値のある手技であると思
日本小児循環器学会雑誌 第1]巻 第2号
われた.
特別講演
座長 佐藤 哲雄(長井市立病院小児科)
「先天性心疾患に対する外科手術とカテーテル・イ ンターベンションの共同治療」
埼玉医科大学小児科(小児心臓科)
小池 一行教授
Presented by Medical*Online