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著者 杉山 健斗

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Academic year: 2022

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Chern‑Simons行列模型を用いた超弦理論の非摂動的 側面の研究

著者 杉山 健斗

発行年 2019‑12

出版者 静岡大学

URL http://doi.org/10.14945/00027499

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(課程博士・様式7)(Doctoral qualification by coursework,Form 7)

学 位 論 文 要 旨

Abstract of Doctoral Thesis

専攻:情報科学専攻 氏名:杉山 健斗

Course:Department of Information Science and Technology Name:Kento Sugiyama

論文題目:Chern-Simons行列模型を用いた超弦理論の非摂動的側面の研究 Title of Thesis:Non-perturbative Aspects of Superstring Theory

from Chern-Simons Matrix Models

論文要旨:

一般相対性理論と量子力学を統一する量子重力理論の構築は、現代の理論物理学における重要な課 題である。これに向けては様々な試みがこれまでに成されてきたが、現在その中で最も有力な候補が 超弦理論である。超弦理論は、物質を構成する基本要素を点状の粒子から広がりを持った“ひも”に拡 張した理論であり、ひもの励起状態の中に重力が含まれていることから量子重力の定式化になってい るのではないかと期待されている。

しかし超弦理論は、通常の点粒子の理論と比べて解析が非常に困難で、その全貌は未だ明らかでな い。特に超弦理論は、弦結合定数 gsに対する弱結合摂動展開による定式化が成されているものの、

摂動論を超えてきちんと超弦理論を定義することが出来ていない。通常の量子力学の摂動論が、理論 の真空周りの一側面しか記述しないこと等を踏まえると、超弦理論もまたその非摂動的な側面の理解 が重要である。特に1990年中旬頃から、超弦理論の摂動論を超えた領域には、Dブレーンと呼ばれ るひもを更に高次元に拡張した励起状態が存在することが明らかになり、その量子論的な振る舞いも 含めた理解が超弦理論における近年の課題となっている。

このような背景から、ゲージ/重力対応と呼ばれる双対性を用いて、重力を含まないゲージ理論の 解析から超弦理論の非摂動的側面を研究する試みが盛んに行われている。この試みの特色は、非摂動 的にきちんと定義付けられたゲージ理論の解析から、直接的な解析が困難な超弦理論の非摂動的側面 に迫れる点にある。

本研究では、ゲージ/重力対応から超弦理論やM理論の低エネルギー極限との双対性が期待されて いる 3 次元超対称 Chern-Simons-matter (CSM)理論に着目する。このクラスの理論の中には、

Aharony, Bergman, Jafferis, Maldacenaによって2008年に提唱されたABJM理論と呼ばれるIIA 型超弦理論や M理論の低エネルギー極限を記述する理論が存在している。従って、この解析から超 弦理論の非摂動的側面に迫れる可能性がある。

また ABJM理論を含む CSM理論は、量子場の理論として直接解析することが困難であるが、近

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年進展が著しい局所化と呼ばれる手法を用いることで、Chern-Simons (CS)行列模型と呼ばれる比較 的単純な N 個の行列固有値のダイナミクスにまで還元されることが明らかになっている。特に、

ABJM 理論を還元して現れる行列模型は、ABJM行列模型と呼ばれている。行列模型まで還元され たこれらの理論は、場の理論においてこれまでに発展してきた解析法を用いて、その非摂動効果を含 めた詳細な解析が可能である。

本研究の目的は、このCS行列模型の詳細な解析を通じて超弦理論の非摂動的側面を明らかにする ことである。本博士論文では、CS行列模型のラージN極限での新たな振る舞いを解析した私達の研 究結果を記載する。Nは行列模型の基本変数となる行列のサイズに相当し、ラージN極限とはその 自由度について無限大極限を取って理論の物理量を評価することを指す。またこの極限は、ゲージ/ 重力対応を通じて超弦理論の低エネルギー極限と対応することが期待される極限に相当しており、従 って CS 行列模型のラージN 極限での振る舞いに関する詳細な解析から、超弦理論の摂動論を超え た未解明部分に迫れる。

以下では、私達が新たに示した研究成果について記載する。一般的に行列模型のラージ N 極限で の振る舞いは、N 個の行列固有値に関する運動方程式の解によって特徴付けられる。これまでの ABJM 行列模型を含む CS 行列模型に関する運動方程式の解析では、その解析解の構成が幾つかの 先行研究によって成されていたものの、それは系の基底状態に対応する 1 種類しか発見されていな かった。

本研究では、この模型の解析解が新たに無限個存在することを示す。そしてこれら無限個の解につ いて、系統的な解析解の構成法を提案する。新たに構成されたこれらの解は、その解析解が持つ特徴 から“マルチカット解”と呼ばれる。このマルチカット解の発見、及びその解析解の構成が、本研究が 初めて明らかにした主な成果である。

特にABJM行列模型におけるマルチカット解の存在は、既存の解を系の基底状態とみなした場合、

これに対する非摂動的な励起状態の存在に相当すると考えられる。従ってここでゲージ/重力対応を 用いると、これらの励起状態は、Dブレーンのダイナミクス等、超弦理論の非摂動効果による寄与と 関係することが示唆される。

本論文の終盤では、この示唆の具体的で定量的な証拠を示すために、ABJM 行列模型に現れるマ ルチカット解の物理的な役割を考察した。特に本研究では、私達が新たに発見した ABJM行列模型 のマルチカット解の一部が、D2ブレーンインスタントンと呼ばれるIIA型超弦理論の非摂動的な励 起状態と定量的に関係することを示す。D2ブレーンインスタントンは、IIA型超弦理論の古典極限 に相当する IIA型超重力理論の解析から存在が知られていたDブレーンの非摂動的な励起状態であ り、この一致をもって私達のマルチカット解と超弦理論の非摂動的側面の関係を裏付けることが出来 る。

またこの定量的な証拠に基づき、本論文の最後にはABJM行列模型に限らないCS行列模型の様々 なマルチカット解が超弦理論の非摂動的側面を記述する可能性を議論する。

以上が、本博士論文の要旨である。

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