近畿アルミニウム表面処理研究会会誌№316 2019
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1.緒言
「炭素鋼の陽極酸化による防錆皮膜」はアルマイト会社の営業品目になるだろうか?一方、「ス テンレス鋼の陽極酸化」の更なる需要開拓として、「ステンレス鋼の陽極酸化による機能性皮膜」
は可能か?これらの課題に役立つ情報を紹介する。
2.「鉄鋼の陽極酸化」に関するインターネット情報、日本特許、米国特許の件数
各種の情報量を表1に示す。「cast iron(鋳鉄)」や「carbon steel(炭素鋼)」の情報件数は少ない。
ここで、「ステンレス鋼の陽極酸化」の事例として、図1と表2に示す吉村長蔵らの論文を紹介 する(近畿アルミニウム表面処理研究会会誌、148 号、7 ・11 ページ(1991-03-01))。この論文 題名をキーワードにして、インターネット検索すると、同論文がパソコン画面上に現れるので、
同論文を読める。なお、共著者の居相英樹は、その後、「自ら黒いステンレス」と宣伝している カラー・ステンレス鋼の会社(アベル株式会社)を設立している(図2)。
表1 インターネット情報、日本特許、米国特許の件数
図1 本研究会を創設した吉村長蔵教授らによる論文 3.「How to Anodize Steel(炭素鋼の陽極酸化)」のYouTube動画の紹介
こ の YouTube は「2015/10/08 に 公 開」で、「視 聴 回 数 81,045 回」で あ る(図 3、
https://www.youtube.com/watch?v=7g-azzYnMYo&t=9s)。YouTube の製作者は、New Mexico Tech, 材料/金属工学科のBurleigh教授である。なお、本稿で英文の「Steel」を「炭素鋼」と和訳した
表2 図 1 の吉村論文の一部分
図2 黒色ステンレス鋼の会社
(http://www.abel-s.co.jp)
理由は、米国電気化学会誌に掲載されている Burleigh 教授の論文、「Anodizing Steel in KOH and NaOH Solutions」で、「実験の大半は米国 鋼材規格の 1010 鋼板を使って行った。」と書 いてあるからである。米国規格の 1010 鋼は JIS 規格の「S10C」鋼に相当し、「用途は自動 車や家電製品の薄板、ブリキ板やトタン板な どの素材です」とのことである。
(http://www.toishi.info/sozai/sxxc/s10c.html)
図3 YouTube動画のトップ・ページ 4.YouTube動画、「How to Anodize Steel(炭素鋼の陽極酸化)」の主な画像
上映時間が 7 分 8 秒の YouTube から抜粋した画像を図4に示す。この動画を補足説明した記 述資料が 3 件あるので、7 分 8 秒の英語スピーチを聞き取れなくても問題は無い。
図4の 6 枚の動画について、以下の補足説明をする。● 画像(1)は「濃度 50%のNaOH高温 浴または KOH 高温浴で陽極酸化する実験条件」を図示している。 ● 画像(2)は「ヒーターで 加熱したガラス製ビーカによる実験の写真で、酸化銀が参照電極」である。
● 画像(3)は「50%水酸化ナトリウム浴中で浴温度と印加電圧を変化させて炭素鋼に 5 分間の 陽極酸化をした時の炭素鋼の色調」をカラー写真で示している。● 画像(4)は炭素鋼を陽極酸 化した皮膜の断面模式図である。アルマイト皮膜断面図に似ているので親近感がある。● 画像
(5)は腐食試験の結果である。100mLの純水に、各種条件で処理した炭素鋼板を 4 週間浸漬した。
最左翼の写真は 600 番のグリットで研磨しただけの試験片の腐食試験結果である。次の写真は 30℃の浴中、+2.1V で処理をした試料片の腐食試験結果である。左から 3 枚目の写真は 50℃の 浴中、+3.0V で処理をした試料片の腐食試験結果である。右端の写真は 90℃の浴中、+2.1V で 処理をした試料片の腐食試験結果である。● 画像(6)は「多くの用途があるだろう」とのコメ ントである。
図4 「How to Anodize Steel」のYouTube動画 5.YouTube画像を補足解説しているBurleigh教授の 3 件の資料
5.1 Burleigh教授が開設しているホームページ、「SteelAnodize.Com」
「How to Anodize Steel」の YouTube 動画を補足説明する為に開設されているホームページであ る。多数のカラー写真やグラフなどが5ページで説明されている。図5は炭素鋼上に形成された 陽極酸化皮膜断面のSEM写真である。
5.2 米国の電気化学会誌に掲載された 2 編の論文 「T.D. Burleigh, T.C. Dotson, K.T. Dotson, S. J.
Gabay, T. Sloan, S.G. Ferrell, "Anodizing
Steel in KOH and NaOH Solutions,"(KOH 電 解 浴 や NaOH 電解浴での炭素鋼の陽極酸化)、Journal of the Electrochemical Society (Oct. 2007), 154, 10, 579-586.」と「T.D. Burleigh, P. Schmuki and S. Virtanen, "Properties of the Nanoporous Anodic Oxide Electrochemically Grown on Steel in Hot 50%
NaOH."(高温の 50%NaOH 浴で電気化学的に形
成 さ れ た ナ ノ 多 孔 質 陽 極 酸 化 皮 膜 の 性 質)、Journal of the Electrochemical Society, (Jan 2009), 156, 1, C45-C53」の 2 編が掲載された。2 番目の論文の「結論」の後半部分を読んで、佐藤敏 彦は衝撃を受けた。そして、本稿の執筆中止も考えた。「結論」の後半部分を日本語に翻訳して 以下に紹介する。
「・・・陽極酸化皮膜の耐食性を調べたところ、純水に対する優れた耐食性を示したが、空気 中の酸素が含まれている水溶液で腐食する。種々の方法を用いて陽極酸化皮膜の細孔を封止し、
明らかに孔に浸透した市販の腐食防止剤、WD-40 を陽極酸化表面に噴霧すると、塩水に対する 耐 腐 食 性 を 100 倍 以 上 に 高 め る こ と が 可 能 で あ る こ と が 判 明 し た」。な お、「腐 食 防 止 剤、
WD-40」の 1953 年以降の歴史や性能がウィキペディアで紹介されている。
上記の結論は、「陽極酸化した炭素鋼は蒸留水中では腐食しないが、普通の水中では腐食する」
である。「そのような陽極酸化皮膜に工業部品としての意味があるのか?」との疑問が生じる。
しかし、「アルマイト皮膜も封孔処理をしないと耐食性が悪いから、封孔処理や電着塗装などの 後処理がされている事例」を思い出した。なお、北海大学の金野英隆教授らの論文、「Formation of Porous Anodic Films on Carbon Steels and Their Application to Corrosion Protection Composite Coatings Formed with Polypyrrole(炭素鋼上への多孔質陽極酸化皮膜の形成と、ポリピロールの 腐食防止複合被覆をその酸化皮膜に適用)」が Journal of The Electrochemical Society, 163 (7) C386-C393 (2016) に掲載されている。陽極酸化の電解浴はフッ化アンモニウムと水を含むエチ レングリコール溶液である。
6.藤本慎司らの論文、「ステンレス鋼の陽極酸化皮膜による細胞挙動評価」の紹介
大阪大学の藤本慎司らによる図6の論文はインターネット上で読むことが出来る。この論文の
「緒言」には、「ステンレス鋼は,現在主に使用されている生体用金属材料の一つである」や「本 研究では,陽極酸化によって,ナノホール構造を付与した SUS316L ステンレス鋼表面上での細 胞の接着・増殖挙動やアルカリホスファターゼ(ALP)活性の調査を行った」などが書いてある。
2.1 節の「資料作成」の項で、「供試材は SUS316Lステンレス鋼とした。・・・陽極酸化には 白金を対極とする二電極電気化学セルを用い,電解溶液には 2.01 M NaClO4 を含むエチレング リコールを用いた。試料への電圧印加を 0 V から所定の電解電圧(20,30, 40 V)まで挿引速 度 0.1 V/s で挿引し,所定の電圧に到達後は 300 秒間定電位分極を行った。・・・」などが書 いてある。
図6 藤本教授らによる日本金属学会誌、第 82 巻、第 7 号(2018)269-276 の論文
2.4 節の「細胞形態」では、「形態係数の概要と算出方法」が解説されている(図7の①)。そして、
3.1 節の「SUS316Lステンレス鋼上に陽極酸化によって形成された自己組織化ナノホールの形態」
では、「陽極酸化電圧 20,30 および 40 V によって形成された自己組織化ナノホール構造を有す るSUS316Lステンレス鋼の SEM像(図 7 の②)と「典型的AFM像(図 7 の③)」が解説されている。
図 7 のパラメーターとの関連で、「3.2 節 細胞密度」、「3.3 節 ALP活性」、「3.4 節 細胞形態」
の実験結果が書いてあり、論文の「結言」を以下に示す。
図7 細胞形態と自己組織化ナノホール構造
「結言・・・陽極酸化によって SUS316L ステンレス鋼上に形成した自己組織化ナノホール構造 が細胞活性へ及ぼす影響を,MC3T3-E1 マウス骨芽細胞様細胞を用いて調査した。ナノホール構 造を有する試料上で培養した細胞密度は鏡面仕上げ試料上よりも高かった。特に,最小直径(26
nm)のナノホール試料上にて細胞密度は最も高かった。また,ALP 活性も,最小直径のナノホ
ール試料は他の試料よりも高い値を示した。鏡面仕上げ試料上にて培養された細胞は丸くなる傾 向があった一方,ナノホール試料上の細胞は仮足の形成が促進され,細胞の伸展が認められた。
これらの結果は,最小直径のナノホール構造の付与によって SUS316L ステンレス鋼上の細胞活 性を向上させたことを意味する。したがって,SUS316L ステンレス鋼への最適な直径の自己組 織化ナノホール構造形成は,ステンレス鋼をインプラント材料として適用するための有効な表面 処理であることが示唆された。」
7.その他の研究者よる「ステンレス鋼の陽極酸化による機能性皮膜」の紹介
日本金属学会の講演大会では「表界面生体機能化」の講演部門がある(図8)。2018 年春期講 演大会では、「MAO処理によりチタン表面に導入した抗菌元素の状態分析とその抗菌作用」や、「硝 酸塩電解液陽極酸化被膜の表面形状及び結晶構造における溶媒効果」の発表などがあった。また、
Google Scholarの検索エンジンに、「ステンレス鋼、陽極酸化、機能性皮膜」のキーワードを入力
すると、350 編の論文が検出された。
図8 「表界面生体機能化」の講演部門
8.Googleでの「画像検索」の手法の紹介 「画像検索」と言う検索方法を紹介す る。図9の矢印が示す場所の「画像」ボ タンをクリックすると、画像が現れる。
図10は「陽極酸化と 2018」のキーワ ードと「画像」の機能ボタンで検出され た画像の一部分である。図 10 の紳士の 画像をクリックすると、図11の大きい 画像が現れた。この写真はアルマイト会 社の社長がインタビューを受けた雑誌記
事に掲載されている。また、図12と図13は「anodized steel(陽極酸化した鋼)」などで検索 した製品である。
図10 「陽極酸化と 2018」のキーワードで Google の「画像検索」をした結果
図11 雑誌記者が社長を取材 図12 「anodized carbon Steel」で画像検索
図13 Anodized iron や Anodized Steelのキーワードで画像検索した部品と製品
9.結言
安易な挑戦ではないが、炭素鋼の陽極酸化や陽極酸化皮膜の後処理を研究すればアルマイト会 社のニュービジネスの可能性があるだろう。また、藤本教授の研究の前段部分である、「陽極酸 化により形成した自己組織化ナノホール構造を有するステンレス鋼」に類似の機能性皮膜を受託 加工するビジネスは可能だろうか?なお、藤本論文の「緒言」に書いてある「ステンレス鋼は、
現在主に使用されている生体用金属材料の一つである」は「鉄は国家なり」と教育されていた
82 歳の筆者にとって驚きである。 前回では、酸や塩基の種類により滴定終点(完全中和点)での溶液の液性が、
1) 完全中性になる場合。
2) 弱酸性になる場合。
3) 弱アルカリ性になる場合。
などがあること。またこれらのことより、より正確に反応の終点を知るためには、上記それぞれ において使用する指示薬の種類が異なることや、終点における pH 飛躍が大きい場合と小さい場 合とでも使用する指示薬の種類が異なること(同じ場合もあります)などについて述べてきまし た。横道にそれましたが中和滴定に於いて、酸と塩基の種類によりどの様な指示薬を使用すれば よいかをおおよそお解りいただけたと思います。
既に全硫酸、遊離硫酸、溶存アルミなどの分析方法や関連事項について述べてきました。本題 名は「硫酸電解液の化学分析について」となっていますが、今回は、硫酸電解液と同じようにア ルミニウムの陽極酸化用電解液として使用されていますしゅう酸電解液についても、併せて、全 しゅう酸、遊離しゅう酸の分析方法について述べます。
13.しゅう酸電解液の分析
既に当講座(Ⅱ)10. 中和反応の項で参考として述べましたので詳細については省略します。
また、しゅう酸電解液中の溶存アルミニウムの定量法は、本講座は初級者を対象としているため、
分析操作上で少し危険な操作を伴うことや換気装置が必要なことなどから省略します。
13.1 しゅう酸電解液の全しゅう酸の定量
全しゅう酸の容量分析による定量法は、過マンガン酸カリウム標準溶液を用いて滴定します。
終点は、過マンガン酸カリウムの極薄いピンク色に着色した時です。従って、この場合は、指示 薬を使用する必要はありません。この反応は硫酸酸性で行いますが、最初の反応が遅いため約 70℃で滴定する必要があります。最初の 1 滴により過マンガン酸カリウムのマンガンが還元され て生じた二価マンガン [(Mn2+)またはマンガン(Ⅱ)と書くこともあります ] により、これ が触媒となって以後の反応は迅速に進行します。被滴定液の温度が 80℃を超えるとしゅう酸が 分解するので注意する必要があります。反応によって生じる二価マンガン は、濃度が濃い場合、
薄い肉色を呈しますがここでは 0.1mol/L の過マンガン酸カリウム標準溶液を使用しますので、
二価マンガンによる着色への影響は全くありません。
1) 分析用試料溶液
しゅう酸電解液約 50mlを汲み取る 2) 分析用試薬
0.1mol/L - KMnO4 標準溶液(過マンガン酸カリウム標準溶液)
3) 分析用器具
以下に示す分析用器具の数は、余分に示してあるものもあります。
ホールピペット 10 ml 2 本 コニカルビーカ 300 ml 3 個
メスシリンダ 100 ml 1 本(又は 200 ml 1 本)
ビーカ 100 ml 3 個
ビュレット 25 ml 又は 50 ml 1 本 ピペッター 2 個
ピペット台 1 台 ビュレット台 1 台 ロート 2 個 洗びん(純水用) 1 本 加熱用ヒーター(電熱器等) 1 台 100℃のアルコール温度計 1 本 4) 分析手順
① しゅう酸電解液10mlを、ホールピペットでコニカルビーカに採る。
↓
② 純水約 150mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れる。
↓
③ 1:1 硫酸 10mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れて良く振り混ぜる。
↓
④ ヒーターを用いて 70℃ ~ 80℃未満になるまで加熱する。
↓
⑤ 直ちに、良く振り混ぜながら 0.1mol/L-KMnO4標準溶液で滴定。過マンガン酸カリウム の薄いピンク色に着色したとき終点。
↓
⑥ ビュレットの目盛を 2 桁目迄読み取る(以下省略する)。 ↓
⑦ この時の過マンガン酸カリウム標準溶液の滴定量をVmlとする。
↓
⑧ 全しゅう酸の濃度計算は、次の式を用いて行う。
全しゅう酸濃度(g/L) = V × f × 2.25 V : 0.1mol/L-KMnO4標準溶液の滴定量 f : 0.1mol/L-KMnO4標準溶液のファクター 2.25 : 係数(下記参考 1 を参照)
【参考 1】
過マンガン酸カリウムとしゅう酸の反応は、下記反応式のように、過マンガン酸カリウム 2 モルに対してしゅう酸 5 モルが反応します。
過マンガン酸カリウム しゅう酸 硫酸 2KMnO4 + 5H2C2O4 + 3H2SO4
硫酸カリウム 硫酸マンガン 水 二酸化炭素 ―→ K2SO4 + 2MnSO4 + 8H2O + 10CO2
しゅう酸は次に示した分子量になりますので、上式の過マンガン酸カリウム 2 モルとしゅう酸 5 モルの反応を要約して、過マンガン酸カリウム 1 モル(以下 1molまたは溶液の場合 1mol/Lの ように記す)としゅう酸 2.5 モルの反応に置き換えますと、
しゅう酸(H2C2O4)の分子量 : 90.036
1mol - KMnO4 1L ≒ 90.035 × 2.5 = 225.09gのH2C2O4
( ≒ は反応する又は相当するの意味 )
この滴定で使用する過マンガン酸カリウム溶液の濃度が 0.1mol/L 溶液であるため、
0.1mol/L - KMnO4 1L ≒ 22.509gのH2C2O4
0.1mol/L - KMnO4 1ml ≒ 22.509mgのH2C2O4 となります。次に、
① しゅう酸電解液を10ml 採取している。
② 上記 ⑧全しゅう酸濃度(g/L)の計算式は既に述べたように、 全しゅう酸濃度(g/L) = V × f × 2.25(mg)
で表されるが、
V は過マンガン酸カリウム標準溶液の滴定量。 f は過マンガン酸カリウム標準溶液のファクター。
であり、いずれも変数であるため、定数である2.25mgについて次の計算を 行う。
1mol/L - KMnO4 1ml ≒ 22.509mg H2C2O4
の関係から、しゅう酸電解液を 10ml採取しているために、
1L中の量に換算するために、100 倍し、g単位 ( 1g = 1000mg ) に換算すると、 22.509mg × 100 = 2250.9mg ≒ 2.2509(g)
2.2509(g) ≒ 2.25(g)
になる。以上、上式の遊離しゅう酸の濃度を求める式の係数が求まる。
13.2 しゅう酸電解液の遊離しゅう酸の定量
しゅう酸は弱酸ですので、遊離しゅう酸の定量では中和反応を利用し、水酸化ナトリウム標準 溶液を用いて滴定を行います。
1) 分析用試料溶液
しゅう酸電解液約 100mlをビーカに汲み取る。 2) 分析用試薬
1mol/L - NaOH 標準溶液(水酸化ナトリウム標準溶液) 10% フッ化カリウム溶液
フェノールフタレイン指示薬 3) 分析用器具
以下に示す分析用器具の数は、余分に示してあるものもあります。 ホールピペット 20 ml 2 本
コニカルビーカ 300 ml 3 個
メスシリンダ 100 ml 1 本(水用・ガラス製)
メスシリンダ 50 ml 1 本(フッ化カリウム溶液用・ポリエチレン製) ビーカ 100 ml 3 個
ビュレット 25 ml 又は 50 ml 1 本 ピペッター 2 個
ピペット台 1 台 ビュレット台 1 台 ロート 2 個 洗びん(純水用) 1 本 4) 分析手順
① しゅう酸電解液20mlを、ホールピペットで 300mlコニカルビーカに採る。 ↓
② 純水約 70mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れてよく混ぜる。 ↓
③ 10% フッ化カリウム溶液 10mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れて良く降り 混ぜる。
↓
④ フェノールフタレイン指示薬を 2 ~ 3 滴加えて良く振り混ぜる。 ↓
⑤ 良く振り混ぜながら、1mol/L-NaOH標準溶液で滴定。薄いピンク色の着いたときが終点。 ↓
⑥ この時の水酸化ナトリウム標準溶液の滴定量をVmlとする。 ↓
⑦ 遊離しゅう酸の濃度計算は、次の式を用いて行う。
遊離しゅう酸濃度(g/L) = V × f × 2.25 V : 1mol/L-NaOH標準溶液の滴定量 f : 1mol/L-NaOH標準溶液のファクター 2.25 : 係数(下記参考 2を参照)
【参考 2】
しゅう酸と水酸化ナトリウムの反応式は次のようになります。水酸化ナトリウム 2mol とし ゅう酸 1molが反応して、丁度過不足なく中和されます。
水酸化ナトリウム しゅう酸 しゅう酸ナトリウム 水 2NaOH + H2C2O4 → Na2C2O4 + 2H2O
しゅう酸(H2C2O4)の分子量 : 90.036
1mol – NaOH 1L は 45.018g(90.036÷2)のH2C2O4 と反応する。 1mol – NaOH 1ml = 45.018mg のH2C2O4 と反応する。
① しゅう酸電解液を 20ml 採取している。
② 遊離しゅう酸の濃度を求める計算式は既に述べたように 遊離しゅう酸濃度 (g/L) = V × f × 2.25
で表されるが、Vは水酸化ナトリウム標準溶液の滴定量で、 fは水酸化ナトリウム標準溶液のファクターであり、いずれも 変数であるため、定数である2.25について次の計算を行う。 1mol/L NaOH 1ml ≒ 45.018mg H2C2O4
の関係から、しゅう酸電解液を 20ml採取しているために、 1L中の量に換算するには、50 倍し、g単位に換算すると、 45.018mg × 50 = 2250.9mg ≒ 2.25g
になる。上式の遊離しゅう酸の濃度を求める式の係数が求まる。
以上を以って硫酸およびしゅう酸電解液の分析についての講座を終わります。次回は、アルミ 表面処理工程の順序から言えば逆になりますが、前処理液、主に脱脂液およびエッチング液の分 析方法について解説いたします。
− 基礎講座 −
※2)元近畿大学
野口 駿雄 ※2)
硫酸電解液の化学分析について(Ⅲ)
- 初級者対象講座 -
近畿アルミニウム表面処理研究会会誌№316 2019
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1.緒言
「炭素鋼の陽極酸化による防錆皮膜」はアルマイト会社の営業品目になるだろうか?一方、「ス テンレス鋼の陽極酸化」の更なる需要開拓として、「ステンレス鋼の陽極酸化による機能性皮膜」
は可能か?これらの課題に役立つ情報を紹介する。
2.「鉄鋼の陽極酸化」に関するインターネット情報、日本特許、米国特許の件数
各種の情報量を表1に示す。「cast iron(鋳鉄)」や「carbon steel(炭素鋼)」の情報件数は少ない。
ここで、「ステンレス鋼の陽極酸化」の事例として、図1と表2に示す吉村長蔵らの論文を紹介 する(近畿アルミニウム表面処理研究会会誌、148 号、7 ・11 ページ(1991-03-01))。この論文 題名をキーワードにして、インターネット検索すると、同論文がパソコン画面上に現れるので、
同論文を読める。なお、共著者の居相英樹は、その後、「自ら黒いステンレス」と宣伝している カラー・ステンレス鋼の会社(アベル株式会社)を設立している(図2)。
表1 インターネット情報、日本特許、米国特許の件数
図1 本研究会を創設した吉村長蔵教授らによる論文 3.「How to Anodize Steel(炭素鋼の陽極酸化)」のYouTube動画の紹介
こ の YouTube は「2015/10/08 に 公 開」で、「視 聴 回 数 81,045 回」で あ る(図 3、
https://www.youtube.com/watch?v=7g-azzYnMYo&t=9s)。YouTube の製作者は、New Mexico Tech, 材料/金属工学科のBurleigh教授である。なお、本稿で英文の「Steel」を「炭素鋼」と和訳した
表2 図 1 の吉村論文の一部分
図2 黒色ステンレス鋼の会社
(http://www.abel-s.co.jp)
理由は、米国電気化学会誌に掲載されている Burleigh 教授の論文、「Anodizing Steel in KOH and NaOH Solutions」で、「実験の大半は米国 鋼材規格の 1010 鋼板を使って行った。」と書 いてあるからである。米国規格の 1010 鋼は JIS 規格の「S10C」鋼に相当し、「用途は自動 車や家電製品の薄板、ブリキ板やトタン板な どの素材です」とのことである。
(http://www.toishi.info/sozai/sxxc/s10c.html)
図3 YouTube動画のトップ・ページ 4.YouTube動画、「How to Anodize Steel(炭素鋼の陽極酸化)」の主な画像
上映時間が 7 分 8 秒の YouTube から抜粋した画像を図4に示す。この動画を補足説明した記 述資料が 3 件あるので、7 分 8 秒の英語スピーチを聞き取れなくても問題は無い。
図4の 6 枚の動画について、以下の補足説明をする。● 画像(1)は「濃度 50%のNaOH高温 浴または KOH 高温浴で陽極酸化する実験条件」を図示している。 ● 画像(2)は「ヒーターで 加熱したガラス製ビーカによる実験の写真で、酸化銀が参照電極」である。
● 画像(3)は「50%水酸化ナトリウム浴中で浴温度と印加電圧を変化させて炭素鋼に 5 分間の 陽極酸化をした時の炭素鋼の色調」をカラー写真で示している。● 画像(4)は炭素鋼を陽極酸 化した皮膜の断面模式図である。アルマイト皮膜断面図に似ているので親近感がある。● 画像
(5)は腐食試験の結果である。100mLの純水に、各種条件で処理した炭素鋼板を 4 週間浸漬した。
最左翼の写真は 600 番のグリットで研磨しただけの試験片の腐食試験結果である。次の写真は 30℃の浴中、+2.1V で処理をした試料片の腐食試験結果である。左から 3 枚目の写真は 50℃の 浴中、+3.0V で処理をした試料片の腐食試験結果である。右端の写真は 90℃の浴中、+2.1V で 処理をした試料片の腐食試験結果である。● 画像(6)は「多くの用途があるだろう」とのコメ ントである。
図4 「How to Anodize Steel」のYouTube動画 5.YouTube画像を補足解説しているBurleigh教授の 3 件の資料
5.1 Burleigh教授が開設しているホームページ、「SteelAnodize.Com」
「How to Anodize Steel」の YouTube 動画を補足説明する為に開設されているホームページであ る。多数のカラー写真やグラフなどが5ページで説明されている。図5は炭素鋼上に形成された 陽極酸化皮膜断面のSEM写真である。
5.2 米国の電気化学会誌に掲載された 2 編の論文 「T.D. Burleigh, T.C. Dotson, K.T. Dotson, S. J.
Gabay, T. Sloan, S.G. Ferrell, "Anodizing
Steel in KOH and NaOH Solutions,"(KOH 電 解 浴 や NaOH 電解浴での炭素鋼の陽極酸化)、Journal of the Electrochemical Society (Oct. 2007), 154, 10, 579-586.」と「T.D. Burleigh, P. Schmuki and S. Virtanen, "Properties of the Nanoporous Anodic Oxide Electrochemically Grown on Steel in Hot 50%
NaOH."(高温の 50%NaOH 浴で電気化学的に形
成 さ れ た ナ ノ 多 孔 質 陽 極 酸 化 皮 膜 の 性 質)、Journal of the Electrochemical Society, (Jan 2009), 156, 1, C45-C53」の 2 編が掲載された。2 番目の論文の「結論」の後半部分を読んで、佐藤敏 彦は衝撃を受けた。そして、本稿の執筆中止も考えた。「結論」の後半部分を日本語に翻訳して 以下に紹介する。
「・・・陽極酸化皮膜の耐食性を調べたところ、純水に対する優れた耐食性を示したが、空気 中の酸素が含まれている水溶液で腐食する。種々の方法を用いて陽極酸化皮膜の細孔を封止し、
明らかに孔に浸透した市販の腐食防止剤、WD-40 を陽極酸化表面に噴霧すると、塩水に対する 耐 腐 食 性 を 100 倍 以 上 に 高 め る こ と が 可 能 で あ る こ と が 判 明 し た」。な お、「腐 食 防 止 剤、
WD-40」の 1953 年以降の歴史や性能がウィキペディアで紹介されている。
上記の結論は、「陽極酸化した炭素鋼は蒸留水中では腐食しないが、普通の水中では腐食する」
である。「そのような陽極酸化皮膜に工業部品としての意味があるのか?」との疑問が生じる。
しかし、「アルマイト皮膜も封孔処理をしないと耐食性が悪いから、封孔処理や電着塗装などの 後処理がされている事例」を思い出した。なお、北海大学の金野英隆教授らの論文、「Formation of Porous Anodic Films on Carbon Steels and Their Application to Corrosion Protection Composite Coatings Formed with Polypyrrole(炭素鋼上への多孔質陽極酸化皮膜の形成と、ポリピロールの 腐食防止複合被覆をその酸化皮膜に適用)」が Journal of The Electrochemical Society, 163 (7) C386-C393 (2016) に掲載されている。陽極酸化の電解浴はフッ化アンモニウムと水を含むエチ レングリコール溶液である。
6.藤本慎司らの論文、「ステンレス鋼の陽極酸化皮膜による細胞挙動評価」の紹介
大阪大学の藤本慎司らによる図6の論文はインターネット上で読むことが出来る。この論文の
「緒言」には、「ステンレス鋼は,現在主に使用されている生体用金属材料の一つである」や「本 研究では,陽極酸化によって,ナノホール構造を付与した SUS316L ステンレス鋼表面上での細 胞の接着・増殖挙動やアルカリホスファターゼ(ALP)活性の調査を行った」などが書いてある。
2.1 節の「資料作成」の項で、「供試材は SUS316Lステンレス鋼とした。・・・陽極酸化には 白金を対極とする二電極電気化学セルを用い,電解溶液には 2.01 M NaClO4 を含むエチレング リコールを用いた。試料への電圧印加を 0 V から所定の電解電圧(20,30, 40 V)まで挿引速 度 0.1 V/s で挿引し,所定の電圧に到達後は 300 秒間定電位分極を行った。・・・」などが書 いてある。
図6 藤本教授らによる日本金属学会誌、第 82 巻、第 7 号(2018)269-276 の論文
2.4 節の「細胞形態」では、「形態係数の概要と算出方法」が解説されている(図7の①)。そして、
3.1 節の「SUS316Lステンレス鋼上に陽極酸化によって形成された自己組織化ナノホールの形態」
では、「陽極酸化電圧 20,30 および 40 V によって形成された自己組織化ナノホール構造を有す るSUS316Lステンレス鋼の SEM像(図 7 の②)と「典型的AFM像(図 7 の③)」が解説されている。
図 7 のパラメーターとの関連で、「3.2 節 細胞密度」、「3.3 節 ALP活性」、「3.4 節 細胞形態」
の実験結果が書いてあり、論文の「結言」を以下に示す。
図7 細胞形態と自己組織化ナノホール構造
「結言・・・陽極酸化によって SUS316L ステンレス鋼上に形成した自己組織化ナノホール構造 が細胞活性へ及ぼす影響を,MC3T3-E1 マウス骨芽細胞様細胞を用いて調査した。ナノホール構 造を有する試料上で培養した細胞密度は鏡面仕上げ試料上よりも高かった。特に,最小直径(26
nm)のナノホール試料上にて細胞密度は最も高かった。また,ALP 活性も,最小直径のナノホ
ール試料は他の試料よりも高い値を示した。鏡面仕上げ試料上にて培養された細胞は丸くなる傾 向があった一方,ナノホール試料上の細胞は仮足の形成が促進され,細胞の伸展が認められた。
これらの結果は,最小直径のナノホール構造の付与によって SUS316L ステンレス鋼上の細胞活 性を向上させたことを意味する。したがって,SUS316L ステンレス鋼への最適な直径の自己組 織化ナノホール構造形成は,ステンレス鋼をインプラント材料として適用するための有効な表面 処理であることが示唆された。」
7.その他の研究者よる「ステンレス鋼の陽極酸化による機能性皮膜」の紹介
日本金属学会の講演大会では「表界面生体機能化」の講演部門がある(図8)。2018 年春期講 演大会では、「MAO処理によりチタン表面に導入した抗菌元素の状態分析とその抗菌作用」や、「硝 酸塩電解液陽極酸化被膜の表面形状及び結晶構造における溶媒効果」の発表などがあった。また、
Google Scholarの検索エンジンに、「ステンレス鋼、陽極酸化、機能性皮膜」のキーワードを入力
すると、350 編の論文が検出された。
図8 「表界面生体機能化」の講演部門
8.Googleでの「画像検索」の手法の紹介 「画像検索」と言う検索方法を紹介す る。図9の矢印が示す場所の「画像」ボ タンをクリックすると、画像が現れる。
図10は「陽極酸化と 2018」のキーワ ードと「画像」の機能ボタンで検出され た画像の一部分である。図 10 の紳士の 画像をクリックすると、図11の大きい 画像が現れた。この写真はアルマイト会 社の社長がインタビューを受けた雑誌記
事に掲載されている。また、図12と図13は「anodized steel(陽極酸化した鋼)」などで検索 した製品である。
図10 「陽極酸化と 2018」のキーワードで Google の「画像検索」をした結果
図11 雑誌記者が社長を取材 図12 「anodized carbon Steel」で画像検索
図13 Anodized iron や Anodized Steelのキーワードで画像検索した部品と製品
9.結言
安易な挑戦ではないが、炭素鋼の陽極酸化や陽極酸化皮膜の後処理を研究すればアルマイト会 社のニュービジネスの可能性があるだろう。また、藤本教授の研究の前段部分である、「陽極酸 化により形成した自己組織化ナノホール構造を有するステンレス鋼」に類似の機能性皮膜を受託 加工するビジネスは可能だろうか?なお、藤本論文の「緒言」に書いてある「ステンレス鋼は、
現在主に使用されている生体用金属材料の一つである」は「鉄は国家なり」と教育されていた
82 歳の筆者にとって驚きである。 前回では、酸や塩基の種類により滴定終点(完全中和点)での溶液の液性が、
1) 完全中性になる場合。
2) 弱酸性になる場合。
3) 弱アルカリ性になる場合。
などがあること。またこれらのことより、より正確に反応の終点を知るためには、上記それぞれ において使用する指示薬の種類が異なることや、終点における pH 飛躍が大きい場合と小さい場 合とでも使用する指示薬の種類が異なること(同じ場合もあります)などについて述べてきまし た。横道にそれましたが中和滴定に於いて、酸と塩基の種類によりどの様な指示薬を使用すれば よいかをおおよそお解りいただけたと思います。
既に全硫酸、遊離硫酸、溶存アルミなどの分析方法や関連事項について述べてきました。本題 名は「硫酸電解液の化学分析について」となっていますが、今回は、硫酸電解液と同じようにア ルミニウムの陽極酸化用電解液として使用されていますしゅう酸電解液についても、併せて、全 しゅう酸、遊離しゅう酸の分析方法について述べます。
13.しゅう酸電解液の分析
既に当講座(Ⅱ)10. 中和反応の項で参考として述べましたので詳細については省略します。
また、しゅう酸電解液中の溶存アルミニウムの定量法は、本講座は初級者を対象としているため、
分析操作上で少し危険な操作を伴うことや換気装置が必要なことなどから省略します。
13.1 しゅう酸電解液の全しゅう酸の定量
全しゅう酸の容量分析による定量法は、過マンガン酸カリウム標準溶液を用いて滴定します。
終点は、過マンガン酸カリウムの極薄いピンク色に着色した時です。従って、この場合は、指示 薬を使用する必要はありません。この反応は硫酸酸性で行いますが、最初の反応が遅いため約 70℃で滴定する必要があります。最初の 1 滴により過マンガン酸カリウムのマンガンが還元され て生じた二価マンガン [(Mn2+)またはマンガン(Ⅱ)と書くこともあります ] により、これ が触媒となって以後の反応は迅速に進行します。被滴定液の温度が 80℃を超えるとしゅう酸が 分解するので注意する必要があります。反応によって生じる二価マンガン は、濃度が濃い場合、
薄い肉色を呈しますがここでは 0.1mol/L の過マンガン酸カリウム標準溶液を使用しますので、
二価マンガンによる着色への影響は全くありません。
1) 分析用試料溶液
しゅう酸電解液約 50mlを汲み取る 2) 分析用試薬
0.1mol/L - KMnO4 標準溶液(過マンガン酸カリウム標準溶液)
3) 分析用器具
以下に示す分析用器具の数は、余分に示してあるものもあります。
ホールピペット 10 ml 2 本 コニカルビーカ 300 ml 3 個
メスシリンダ 100 ml 1 本(又は 200 ml 1 本)
ビーカ 100 ml 3 個
ビュレット 25 ml 又は 50 ml 1 本 ピペッター 2 個
ピペット台 1 台 ビュレット台 1 台 ロート 2 個 洗びん(純水用) 1 本 加熱用ヒーター(電熱器等) 1 台 100℃のアルコール温度計 1 本 4) 分析手順
① しゅう酸電解液10mlを、ホールピペットでコニカルビーカに採る。
↓
② 純水約 150mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れる。
↓
③ 1:1 硫酸 10mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れて良く振り混ぜる。
↓
④ ヒーターを用いて 70℃ ~ 80℃未満になるまで加熱する。
↓
⑤ 直ちに、良く振り混ぜながら 0.1mol/L-KMnO4標準溶液で滴定。過マンガン酸カリウム の薄いピンク色に着色したとき終点。
↓
⑥ ビュレットの目盛を 2 桁目迄読み取る(以下省略する)。 ↓
⑦ この時の過マンガン酸カリウム標準溶液の滴定量をVmlとする。
↓
⑧ 全しゅう酸の濃度計算は、次の式を用いて行う。
全しゅう酸濃度(g/L) = V × f × 2.25 V : 0.1mol/L-KMnO4標準溶液の滴定量 f : 0.1mol/L-KMnO4標準溶液のファクター 2.25 : 係数(下記参考 1 を参照)
【参考 1】
過マンガン酸カリウムとしゅう酸の反応は、下記反応式のように、過マンガン酸カリウム 2 モルに対してしゅう酸 5 モルが反応します。
過マンガン酸カリウム しゅう酸 硫酸 2KMnO4 + 5H2C2O4 + 3H2SO4
硫酸カリウム 硫酸マンガン 水 二酸化炭素 ―→ K2SO4 + 2MnSO4 + 8H2O + 10CO2
しゅう酸は次に示した分子量になりますので、上式の過マンガン酸カリウム 2 モルとしゅう酸 5 モルの反応を要約して、過マンガン酸カリウム 1 モル(以下 1molまたは溶液の場合 1mol/Lの ように記す)としゅう酸 2.5 モルの反応に置き換えますと、
しゅう酸(H2C2O4)の分子量 : 90.036
1mol - KMnO4 1L ≒ 90.035 × 2.5 = 225.09gのH2C2O4
( ≒ は反応する又は相当するの意味 )
この滴定で使用する過マンガン酸カリウム溶液の濃度が 0.1mol/L 溶液であるため、
0.1mol/L - KMnO4 1L ≒ 22.509gのH2C2O4
0.1mol/L - KMnO4 1ml ≒ 22.509mgのH2C2O4 となります。次に、
① しゅう酸電解液を10ml 採取している。
② 上記 ⑧全しゅう酸濃度(g/L)の計算式は既に述べたように、
全しゅう酸濃度(g/L) = V × f × 2.25(mg) で表されるが、
V は過マンガン酸カリウム標準溶液の滴定量。
f は過マンガン酸カリウム標準溶液のファクター。
であり、いずれも変数であるため、定数である2.25mgについて次の計算を 行う。
1mol/L - KMnO4 1ml ≒ 22.509mg H2C2O4
の関係から、しゅう酸電解液を 10ml採取しているために、
1L中の量に換算するために、100 倍し、g単位 ( 1g = 1000mg ) に換算すると、
22.509mg × 100 = 2250.9mg ≒ 2.2509(g)
2.2509(g) ≒ 2.25(g)
になる。以上、上式の遊離しゅう酸の濃度を求める式の係数が求まる。
13.2 しゅう酸電解液の遊離しゅう酸の定量
しゅう酸は弱酸ですので、遊離しゅう酸の定量では中和反応を利用し、水酸化ナトリウム標準 溶液を用いて滴定を行います。
1) 分析用試料溶液
しゅう酸電解液約 100mlをビーカに汲み取る。 2) 分析用試薬
1mol/L - NaOH 標準溶液(水酸化ナトリウム標準溶液) 10% フッ化カリウム溶液
フェノールフタレイン指示薬 3) 分析用器具
以下に示す分析用器具の数は、余分に示してあるものもあります。 ホールピペット 20 ml 2 本
コニカルビーカ 300 ml 3 個
メスシリンダ 100 ml 1 本(水用・ガラス製)
メスシリンダ 50 ml 1 本(フッ化カリウム溶液用・ポリエチレン製) ビーカ 100 ml 3 個
ビュレット 25 ml 又は 50 ml 1 本 ピペッター 2 個
ピペット台 1 台 ビュレット台 1 台 ロート 2 個 洗びん(純水用) 1 本 4) 分析手順
① しゅう酸電解液20mlを、ホールピペットで 300mlコニカルビーカに採る。 ↓
② 純水約 70mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れてよく混ぜる。 ↓
③ 10% フッ化カリウム溶液 10mlをメスシリンダで測り、コニカルビーカに入れて良く降り 混ぜる。
↓
④ フェノールフタレイン指示薬を 2 ~ 3 滴加えて良く振り混ぜる。 ↓
⑤ 良く振り混ぜながら、1mol/L-NaOH標準溶液で滴定。薄いピンク色の着いたときが終点。 ↓
⑥ この時の水酸化ナトリウム標準溶液の滴定量をVmlとする。 ↓
⑦ 遊離しゅう酸の濃度計算は、次の式を用いて行う。
遊離しゅう酸濃度(g/L) = V × f × 2.25 V : 1mol/L-NaOH標準溶液の滴定量 f : 1mol/L-NaOH標準溶液のファクター 2.25 : 係数(下記参考 2を参照)
【参考 2】
しゅう酸と水酸化ナトリウムの反応式は次のようになります。水酸化ナトリウム 2mol とし ゅう酸 1molが反応して、丁度過不足なく中和されます。
水酸化ナトリウム しゅう酸 しゅう酸ナトリウム 水 2NaOH + H2C2O4 → Na2C2O4 + 2H2O
しゅう酸(H2C2O4)の分子量 : 90.036
1mol – NaOH 1L は 45.018g(90.036÷2)のH2C2O4 と反応する。 1mol – NaOH 1ml = 45.018mg のH2C2O4 と反応する。
① しゅう酸電解液を 20ml 採取している。
② 遊離しゅう酸の濃度を求める計算式は既に述べたように 遊離しゅう酸濃度 (g/L) = V × f × 2.25
で表されるが、Vは水酸化ナトリウム標準溶液の滴定量で、 fは水酸化ナトリウム標準溶液のファクターであり、いずれも 変数であるため、定数である2.25について次の計算を行う。 1mol/L NaOH 1ml ≒ 45.018mg H2C2O4
の関係から、しゅう酸電解液を 20ml採取しているために、 1L中の量に換算するには、50 倍し、g単位に換算すると、 45.018mg × 50 = 2250.9mg ≒ 2.25g
になる。上式の遊離しゅう酸の濃度を求める式の係数が求まる。
以上を以って硫酸およびしゅう酸電解液の分析についての講座を終わります。次回は、アルミ 表面処理工程の順序から言えば逆になりますが、前処理液、主に脱脂液およびエッチング液の分 析方法について解説いたします。
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