論文内容要旨
Accuracy of the FMF Bayes Theorem-based Model for Predicting Preeclampsia at 11-13 weeks of Gestation in a Japanese Population
(日本人集団における妊娠11-13週の妊娠高血圧腎症発症予測アルゴリズムの精度)
Hypertension Research 2020年 掲載予定
外科系 産婦人科学専攻 後藤未奈子 近年、妊娠高血圧腎症(PE)のハイリスク妊婦に対して妊娠16週以前から低用量アスピリンを 投与することでPE の発症を予防できることが報告されている。妊娠初期に PEのハイリスク妊 婦をスクリーニングするため英国でPE発症予測アルゴリズム(the Fetal Medicine Foundation (FMF) Bayes theorem-based model)が開発された。このモデルでは母体背景、平均血圧 (MAP)、
平均子宮動脈PI値 (UtA-PI)、および血清placental growth factor(PlGF)蛋白濃度を組み合 わせることで、早産期PE(妊娠37週未満で娩出に至るPE)と満期PE(妊娠37週以降で娩出に至
る PE)の発症確率を予測する。このモデルを用いて欧州で行われた多施設共同研究で早産期 PE
は偽陽性率水準10%で75%の検出率であった。この検討では主に欧州の白人が対象である。そこ で、本研究では、日本人集団においてこのモデルの発症予測精度を明らかにすることを目的とし た。研究対象は昭和大学病院で妊娠初期から管理した913人の妊婦で、前方視的に妊娠11~13 週に母体背景、MAP、UtA-PI、血清PlGF濃度を測定し、その後の妊娠転帰を観察した。結果的に 913人中26人(2.8%)がPEを発症し、そのうち11人(1.2%)が早産期PEであった。FMFモ デルでは263例(28.8%)は早産期PEのハイリスクとして分類され、615例(67.4%)が満期 PEのハイリスクと分類された。結果として早産期PEは10%の偽陽性率水準で検出率は91%、
満期PEは10%の偽陽性率水準で検出率は60%であった。本研究で特に早産期PEの検出率が既
存の報告より高かった理由としては、この集団におけるPEの発症率が2.8%で欧州(2.2%)よ りも高く、また早産期PEの発生率(1.2%対0.67%)も高かったことが推定される。また、先行 研究では早産期PEスクリーニングの最良の組み合わせは母体背景、MAP、UtA-PI、およびPlGF であることが示されているが、本研究では、母体背景、MAPおよびPlGFの組み合わせであった。
UtA-PIは、早産期PE発症者、満期PE発症者、PEを発症しなかった女性の間で有意な差を認め
なかった(2.0対1.3対1.8; p=0.06)。UtA-PI測定は厳密なプロトコルに準拠して行われるた め測定の不安定性はなく、本集団の特性を反映している可能性がある。このように、UtA-PI が 他のパラメーターと比較して、早産期 PE の予測における役割は限定的であったと考えられた。
結論として、このPE予測のFMFモデルは、妊娠初期における早産期PEと満期PEの発症予測に、
日本人集団においても適用可能であることを確認した。