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宇都宮都市圏における他市町村からの通勤移動実態

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宇都宮都市圏における他市町村からの通勤移動実態

著者 倉田 知秋

雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学

巻 56

ページ 123‑130

発行年 2016‑03

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009368/

(2)

はじめに

 通勤移動は常住地から従業地への日々の移動である.就 業者に対する地域経済政策を考えるとき,行われる地域が 常住地であるか従業地であるかによってその効果は異な る.1)たとえば,就業者の常住地において企業誘致などの 政策を行ったとしても,地域の住民の雇用に関して思うよ うな効果が得られないかもしれない.また,従業地で同じ ような政策を行っても,その利益が常住地へ流出してしま うだろう.したがって,地域経済政策を考えるとき,通勤 移動の実態を捉えることは重要であると考える.そのよう な観点から本稿では通勤移動の実態を統計的に明らかにす る.また,地域経済政策は通常自治体の範囲で行われる場 合が多い.地域経済政策の有効な範囲を考えるために,他 市町村からの通勤移動に注目し分析を行う.

 本稿では総務省統計局の定義する都市圏内での通勤移動 を分析対象とする.総務省統計局では,国勢調査において 広域的な都市地域を規定するために統計的な都市圏の地域 区分を設定している.2)大都市圏と都市圏があり,中心市 とその周辺市町村で構成される.大都市圏では中心市が東 京都特別区部及び政令指定市に限られている.この場合,

きわめて中心市の規模が大きく都市圏内の経済活動も活発 であると思われる.しかし,それによって都市圏の通勤移 動が相互に多くなりその特徴が不明瞭になってしまう可能 性が考えられる.そこで,本稿では都市圏を取り扱うこと にする.都市圏は,人口 50 万以上の中心市と社会・経済 的に結合している周辺市町村から構成される.その周辺市 町村は中心市への 15 歳以上の通勤・通学者数の割合が当 該市町村の常住人口の 1.5%以上であり連接していること

と定義されている.その定義において現在4つの都市圏が 存在している.定義上では,通学も含まれているため,他 市町村への通勤移動の割合は都市圏の定義より大きくなる と思われる.本稿では,この中から特に宇都宮都市圏に注 目して通勤移動の実態を実証的に明らかにする.また,宇 都宮都市圏と比較するために,松山都市圏の状況について も簡潔に示す.

 第1節において,4つの都市圏を比較することで宇都宮 都市圏の特徴を明らかにし,本稿で宇都宮都市圏を中心的 に取り上げる理由を述べる.第2節で宇都宮都市圏の通勤 移動の特徴と比較するために,松山都市圏の他市町村から の通勤移動の状況を簡潔に検討する.そのうえで,第3節 で宇都宮都市圏の通勤移動の実態を統計的に示す.昼夜間 就業者人口比率から常住地と従業地の就業者数がどれだけ 変化しているかを表す.3)さらに,2010 年国勢調査から常 住地による従業地別就業者数からその移動数を示すことで 就業者通勤移動の実態を明らかにする.そして,その移動 の要因として就業構造の相違から検討する.第4節では,

宇都宮都市圏にける特徴をまとめるとともに,そこに見ら れる他市町村への就業者の通勤移動の特徴を考察する.最 後に,分析結果をまとめ今後の課題を明確化する.

Ⅰ 都市圏の比較

 はじめに4つの都市圏を基本的な統計で比較することか ら宇都宮都市圏の特徴を示す.表1に宇都宮都市圏の基本 的な統計を示した.宇都宮都市圏には栃木県の 27 市町村 中 23 が含まれ,栃木県人口の 84.35%(169 万人)をしめる.

都市圏に含まれる市町村数は熊本都市圏より少ないが,県 の市町村数と比較してその割合は大きい.つまり,県の市 町村のほとんどが宇都宮都市圏に含まれていることにな

宇都宮都市圏における他市町村からの通勤移動実態

倉田 知秋

(平成 28 年1月 14 日査読受理日)

The Employees Movement from Other Municipalities in Utsunomiya Metropolitan Area

K

URATA

, Tomoaki

(Accepted for publication 14 January 2016)

キーワード:宇都宮都市圏,通勤移動,就業構造

Key words:Utsunomiya Metropolitan Area,employees movement,employment status

共通教育推進室 非常勤講師

(3)

る.宇都宮都市圏の就業者数も県全体と比較して 84.2%を しめている.その可住地面積も県内の 86.8%であり,宇都 宮都市圏は栃木県のほとんど範囲を含んでいることがわか る.

 現在,宇都宮都市圏のほかに,松山都市圏,熊本都市圏,

鹿児島都市圏の3つの都市圏が存在する.宇都宮都市圏の 規模は他3つの都市圏と大きく異なる.就業者数ともに宇 都宮都市圏が最も多い.宇都宮都市圏の可住地面積は鹿児 島都市圏よりはかなり小さいが,松山都市圏と熊本都市圏 の合計程度の大きさであり,宇都宮都市圏が広範囲にわ たっていることがわかる.

 他市町村への通勤移動を見ると,宇都宮都市圏では 279,039 人が移動している.これは宇都宮都市圏就業者の 33.9%である.他の都市圏と比較してきわめて大きい.市 町村を超えた通勤移動の活発な状況が明らかである.

 一方,宇都宮都市圏と逆の特徴を示すのが松山都市圏で ある.松山都市圏の人口は愛媛県人口の 50.1%であり都市 圏の中で最も少ない.他市町への通勤移動割合も 17.8%と 小さく,宇都宮都市圏の特徴と大きく異なる.このような 宇都宮都市圏の特徴を明確するために,次節では倉田

(2015)に基づいて簡潔に松山都市圏の通勤移動の特徴を 示すことにする.

Ⅱ 松山都市圏の特徴

 表2では松山都市圏市町における 2010 年就業者数を常 住地と従業地の人口を比較している.この比較は就業者の 昼間人口と夜間人口を示しており,昼夜間人口比率は常住 地就業者数に対する従業地就業者数の割合である.増減は 従業地人口から常住地人口を差し引いた値であり,就業者 の純流入数を表す.100 を超えれば従業地の就業者数のほ うが多いことになる.松山都市圏において昼夜間人口比率 が 100 を超えるのは松山市,大洲市,東温市,松前町であ る.したがって,これらの市町は他市町村への通勤移動よ りも他市町村からの移動の方が多い.しかし,これは就業

者人口の変化を示しているにすぎず,どれほどの就業者が 移動しているかはわからない.そこで常住地から従業地へ の移動数と常住就業者数に対する割合を表3に示した.就 業者のうち他市町村で従業している人口が多いのは伊予市 7,905 人(42.8%),東温市 6,864 人(43.4%),松前町 7,760 人(55.4%),砥部町 5,965 人(56.4%)である.これは市 町の就業者数のおよそ半数が他市町村へ移動しているとい うことになる.そのほとんどは松山市への移動である.し かし,多くの就業者が移動しているにもかかわらず,表2 の増減はこれほどの大きさにはなっていない.これは双方 向の移動が生じているということである.特に,東温市は 昼夜間人口比率が 100 を上回っているので,むしろ他市町 村への移動を超える就業者が市内に通勤してきていること を意味する.

 一方,大洲市,久万高原町,内子町は就業者のほとんど がその市町に常住している.他市町からの通勤者が少なく 松山市との通勤移動もそれほど大きくない.

 ここでは通勤移動と市町の就業構造の関係を検証する.

松山都市圏の通勤移動の特徴と産業の関係を見るために表 4のように産業別に特化係数を算出した.特化係数は1を 上回ると全国と比較して就業者集中していることを示し,

その産業がその市町の中心であることを意味する.松山市 は他市町と比較すると,卸売業・小売業や宿泊業・飲食サー ビス業が大きく,いわゆる観光業が大きな産業となってい

常住地 従業地

松山市 234365 237868 101.5 3503

大洲市 21379 22005 102.9 626

伊予市 18477 15674 84.8 -2803

東温市 15820 17085 108.0 1265

久万高原町 4088 4383 107.2 295

松前町 14021 12865 91.8 -1156

砥部町 10582 8538 80.7 -2044

内子町 8618 7583 88.0 -1035

増減(人)

就業者数(人) 昼夜間人口 比率(%)

2010 年国勢調査より作成.

表2 松山都市圏の就業者数

宇都宮都市圏 松山都市圏 熊本都市圏 鹿児島都市圏

23(27) 8(20) 26(45) 11(43)

人 1,693,419 717,687 1,476,435 1,152,748

% 1) 84.35 50.14 81.24 67.56

822,664 327,350 681,628 523,178

% 1) 84.19 50.24 81.71 67.33

k㎡ 2,589.2 666.8 1,972.4 59,467.0

% 2) 86.84 39.99 72.19 62.20

279,039 58,390 180,800 72,524

% 3) 33.92 17.84 26.52 13.86

都市圏人口

可住地面積 都市圏の市町村数

(県の市町村数)

常住地就業者数

他市町村への移 動総数

2010 年国勢調査,総務省統計局「統計でみる市区町村のすがた 2015」.

1)県全体に対する割合.

2)県可住地面積に対する割合.

3)都市圏常住地就業者数に対する割合.

表1 都市圏の基本的な特徴 倉田 知秋

(4)

る.久万高原町と内子町では農業の特化係数が7を上回っ ており他の市町と比較してもきわめて大きくなっている.

通勤移動と就業構造を組み合わせて考えると,農業中心の 自治体では他市町との相互的な通勤移動割合が小さいこと が推測される.また,松山市を除く市町で農業の特化係数 が1を上回っている.農業中心であることによって他市町 への通勤移動割合が小さくなるとすれば,松山都市圏全体 の他市町への通勤移動割合が小さいことはこのような就業 構造のためであると考えられるだろう.しかし,どのよう な産業が通勤移動をもたらすのかは明確ではない.この事 実を踏まえ,宇都宮都市圏の特徴を見ていくことにする.

Ⅲ 宇都宮都市圏の通勤移動 1.他市町への通勤移動

 宇都宮都市圏には定義上 23 市町が含まれ広範囲となっ ている.都市圏に入っていないのは足利市,佐野市,岩舟 町,那須町の4市町だけである.4)那須町は地理的に宇都 宮市から遠いため移動割合は約 0.97%と定義より小さい.

しかし,那須塩原市には 10.7%,大田原市には 2.9%と隣 市への移動は大きい.また岩舟町は宇都宮市へ 1.1%移動 しているが,隣接する栃木市(11.6%)と佐野市(9.6%)

への移動は多い.一方,足利市と佐野市は宇都宮市への移 動はそれぞれ 0.2%,0.6%と小さく,この二市は,他県,

松山市 大洲市 伊予市 東温市 久万高原町 松前町 砥部町 内子町 234364 21379 18477 15820 4088 14021 10582 8618 自市町村 86.95 81.64 56.70 54.48 91.88 43.55 42.21 73.74 他市町村 10.13 16.81 42.78 43.39 7.78 55.35 56.37 26.06

松山市 2.23 27.61 35.56 4.48 40.86 40.52 3.64

今治市 0.82 0.07 0.22 0.58 0.46 0.40 0.03

宇和島市 0.08 0.54 0.14 0.05 0.02 0.10 0.05 0.20

八幡浜市 0.08 4.23 0.21 0.05 0.15 0.09 0.89

新居浜市 0.15 0.04 0.10 0.34 0.15 0.11 0.07

西条市 0.29 0.15 0.15 1.38 0.05 0.26 0.38 0.10

大洲市 0.17 1.22 0.18 0.05 0.48 0.23 15.68

伊予市 1.25 0.77 1.07 0.20 7.53 3.83 2.11

四国中央市 0.05 0.02 0.02 0.09 0.03 0.04 0.01

西予市 0.05 2.04 0.06 0.04 0.02 0.07 0.07 0.59

東温市 2.72 0.39 1.73 0.39 1.93 4.47 0.31

上島町 0.00 0.01 0.02

久万高原町 0.13 0.02 0.14 0.11 0.18 1.19 0.70

松前町 1.89 0.27 8.03 0.97 0.15 2.95 0.41

砥部町 1.12 0.12 1.91 1.63 1.20 2.18 0.80

内子町 0.04 3.83 0.45 0.06 0.10 0.09 0.26

伊方町 0.02 0.68 0.06 0.02 0.02 0.04 0.05 0.07

松野町 0.00

鬼北町 0.00 0.04 0.02 0.01 0.02

愛南町 0.00 0.01 0.01 0.01

他県 0.39 0.15 0.21 0.38 0.34 0.36 0.20 0.12

常住地 常住就業者数(人)

2010 年国勢調査より作成.空欄は通勤就業者数がゼロであることを示す.

表3 松山都市圏の常住地から従業地への就業者移動割合

松山市 大洲市 伊予市 東温市 久万高原町 松前町 砥部町 内子町

農業,林業 0.86 2.98 4.59 2.31 7.10 1.87 2.86 7.02

漁業 0.55 2.50 6.43 0.00 0.15 0.84 0.00 0.09

鉱業,採石業,砂利採取業 0.11 0.61 0.00 2.05 1.23 0.00 1.26 1.06

建設業 1.09 1.25 1.05 0.53 1.24 1.22 1.08 1.43

製造業 0.54 0.68 1.32 1.06 0.38 1.69 1.14 0.91

電気・ガス・熱供給・水道業 0.85 0.90 0.68 0.65 1.67 0.47 0.22 0.06

情報通信業 0.99 0.12 0.04 0.34 0.03 0.09 0.27 0.03

運輸業,郵便業 0.89 0.84 0.77 1.66 0.49 0.88 0.87 0.53

卸売業,小売業 1.17 0.97 0.85 0.83 0.62 1.16 1.16 0.76

金融業,保険業 1.43 0.63 0.46 0.35 0.37 0.39 0.30 0.43

不動産業,物品賃貸業 1.03 0.35 0.30 0.32 0.06 0.26 0.56 0.14

学術研究,専門・技術サービス業 0.91 0.77 0.34 0.40 0.84 0.41 0.76 0.24

宿泊業,飲食サービス業 1.23 0.87 0.57 0.67 0.83 0.84 0.94 0.68

生活関連サービス業,娯楽業 1.14 1.11 0.76 1.06 0.87 0.91 0.63 0.95

教育,学習支援業 1.09 1.05 0.82 1.67 1.23 0.85 1.11 1.01

医療,福祉 1.28 1.47 1.12 1.84 1.26 0.88 1.05 0.97

複合サービス事業 1.19 2.81 2.51 1.19 4.04 1.13 1.39 2.48

サービス業 1.08 0.68 0.59 0.49 0.57 0.73 0.61 0.64

公務 1.09 1.12 0.97 0.95 1.96 0.57 0.80 0.98

表4 松山都市圏の産業別特化係数

2010 年国勢調査より作成.

(5)

特に群馬県への移動がそれぞれ 10.1%,3.4%と大きくなっ ている.したがって,岩舟町,那須町は宇都宮都市圏との つながりが強いと思われるが,足利市と佐野市は独自の地 域性を持っていると考えられる.5)そのため,都市圏の定 義には含まれないが,岩舟町と那須町は分析の対象とする.

 表5では宇都宮都市圏の市町別に常住地と従業地の就業 者数を示した.宇都宮都市圏において,昼夜間人口比率が 100 を上回っているのは,宇都宮市,小山市,真岡市,大 田原市,上三川町,芳賀町である.その中でも芳賀町は 253.02 と大きな値をとっている.6)常住地就業者数は常住 地就業者数を 13,366 人上回っており,宇都宮市に次いで かなりの増加となっている.次に大田原市では 3,747 人増 加している.一方,減少しているのは栃木市(5,783 人),

那須塩原市(4,530 人),高根沢町(4,400 人)となっている.

 しかし,第2節で述べたように,その移動規模は昼夜間 人口比率だけでは明確にはできない.そこで,各市町村の 他市町村への通勤移動の状態を明らかにするため,常住地 から各従業地への移動割合を示したのが表6と表7であ る.表の割合は常住地就業者数のうち自市町村と他市町村 に従業する割合である.中心市の宇都宮市に流入割合が大 きい市町は,鹿沼市(15.6%),日光市(10.4%),真岡市

(11.0%),さくら市(19.8%),那須烏山市(13.7%),下

常住地 従業地

宇都宮市 241,950 258,263 106.74 16313

栃木市 66,490 60,707 91.30 -5783

鹿沼市 50,561 49,546 97.99 -1015

日光市 45,149 42,580 94.31 -2569

小山市 78,582 79,788 101.53 1206

真岡市 42,119 43,141 102.43 1022

大田原市 38,327 42,074 109.78 3747

矢板市 17,287 16,528 95.61 -759

那須塩原市 59,140 54,610 92.34 -4530 さくら市 20,885 18,873 90.37 -2012 那須烏山市 14,481 12,837 88.65 -1644

下野市 29,480 25,608 86.87 -3872

上三川町 16,333 17,379 106.40 1046

西方町 3,362 3,271 97.29 -91

益子町 12,362 8,657 70.03 -3705

茂木町 7,204 5,448 75.62 -1756

市貝町 6,443 5,225 81.10 -1218

芳賀町 8,735 22,101 253.02 13366

壬生町 19,461 16,309 83.80 -3152

野木町 12,596 8,863 70.36 -3733

塩谷町 6,449 4,426 68.63 -2023

高根沢町 15,923 11,523 72.37 -4400

那珂川町 9,345 7,641 81.77 -1704

就業者数(人) 昼夜間人口

比率(%) 増減(人)

表5 宇都宮都市圏の就業者数

2010 年国勢調査より作成.

表6 各市就業者の従業地別割合

2010 年国勢調査より作成.

宇都宮市 栃木市 鹿沼市 日光市 小山市 真岡市 大田原市 矢板市 那須塩原市 さくら市 那須烏山市 下野市 241950 66490 50561 45149 78582 42119 38327 17287 59140 20885 14481 29480 75.28 64.20 71.24 79.13 61.41 67.87 68.16 55.39 65.85 50.81 61.29 44.99 22.30 35.42 28.39 20.29 37.09 32.12 31.10 44.20 32.57 48.30 38.56 53.98 うち県内 17.22 27.97 25.76 17.91 18.96 26.18 28.07 41.44 28.13 46.16 36.29 43.82

宇都宮市 0.00 4.30 15.63 10.35 3.72 10.99 2.34 8.66 2.29 19.83 13.71 13.29

足利市 0.07 0.97 0.10 0.03 0.41 0.04 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.22

栃木市 0.53 0.00 2.48 0.51 4.87 0.37 0.04 0.09 0.03 0.07 0.05 2.90

佐野市 0.14 4.39 0.27 0.04 1.04 0.05 0.01 0.02 0.02 0.04 0.01 0.40

鹿沼市 2.62 1.64 0.00 4.38 0.27 0.29 0.10 0.41 0.08 0.56 0.18 1.00

日光市 1.01 0.16 2.41 0.00 0.06 0.05 0.24 0.99 0.24 0.62 0.12 0.18

小山市 0.87 7.60 0.71 0.20 0.00 1.97 0.07 0.14 0.12 0.21 0.17 11.08

真岡市 1.26 0.29 0.25 0.05 0.70 0.00 0.04 0.10 0.03 0.46 0.74 3.13

大田原市 0.31 0.03 0.10 0.22 0.09 0.05 0.00 9.08 14.93 2.69 2.14 0.11

矢板市 0.34 0.02 0.09 0.38 0.02 0.04 3.28 0.00 2.34 6.28 1.22 0.03

那須塩原市 0.26 0.03 0.12 0.31 0.05 0.03 16.28 7.44 0.00 1.64 0.81 0.08

さくら市 0.81 0.02 0.17 0.33 0.05 0.16 1.69 8.83 0.82 0.00 4.64 0.16

那須烏山市 0.19 0.00 0.04 0.04 0.01 0.14 0.47 0.45 0.15 1.85 0.00 0.03

下野市 1.00 1.38 0.40 0.07 3.46 1.77 0.03 0.15 0.03 0.12 0.08 0.00

上三川町 1.25 0.46 0.45 0.12 0.89 3.21 0.05 0.14 0.03 0.43 0.26 5.65

西方町 0.06 1.16 1.06 0.09 0.06 0.03 0.00 0.01 0.00 0.01 0.00 0.11

益子町 0.12 0.02 0.01 0.01 0.03 2.42 0.01 0.01 0.00 0.06 0.26 0.08

茂木町 0.08 0.01 0.01 0.01 0.01 0.51 0.02 0.02 0.01 0.05 0.57 0.04

市貝町 0.24 0.01 0.03 0.00 0.02 1.20 0.01 0.04 0.00 0.12 0.53 0.12

芳賀町 3.94 0.06 0.21 0.12 0.11 2.11 0.13 0.43 0.09 5.09 2.55 1.02

壬生町 0.86 2.24 1.01 0.12 0.67 0.42 0.02 0.04 0.01 0.07 0.03 3.58

野木町 0.02 0.47 0.02 0.00 1.77 0.02 0.01 0.01 0.01 0.00 0.01 0.31

岩舟町 0.02 2.64 0.05 0.00 0.61 0.02 0.00 0.01 0.00 0.01 0.01 0.08

塩谷町 0.08 0.00 0.02 0.38 0.00 0.00 0.16 2.77 0.14 1.02 0.08 0.00

高根沢町 1.07 0.03 0.09 0.10 0.03 0.28 0.16 0.87 0.07 3.96 3.27 0.19

那須町 0.02 0.01 0.01 0.04 0.00 0.00 1.62 0.36 6.40 0.08 0.06 0.02

那珂川町 0.04 0.00 0.01 0.02 0.00 0.02 1.30 0.36 0.26 0.85 4.77 0.00

他県 2.44 6.45 1.40 1.06 16.17 5.35 1.13 1.19 1.87 1.35 1.18 7.59

常住就業者数(人)

(

)%

自市町村 他市町村

倉田 知秋

(6)

野市(13.3%),上三川町(22.8%),市貝町(20.9%),芳 賀町(28.6%),高根沢町(27.9%)であり,三割近くが宇 都宮市へ通勤している市町もある.宇都宮市への移動の大 きさが際立っている.

 その移動も含め常住就業者の他市町への移動割合が 50%を上回るのは,下野市(53.98%),上三川町(53.1%),

西方町(57.9%),益子町(53.2%),市貝町(62.3%),芳 賀町(52.0%),壬生町(53.8%),野木町(66.7%),塩谷 町(53.1%),高根沢町(61.3%)の 10 市町である.昼夜 間人口比率では純移動数しかわからなかったが,それぞれ の移動状況を見ることで実際には常住している就業者の半 数以上が移動している市町が多い.松山都市圏と比較して も市町数・割合ともに大きく,宇都宮都市圏の活発な移動 の状況が表れている.この中で昼夜間人口比率が 100 を上 回っていたのは上三川町と芳賀町である.これらの町は他 市町村への移動が 50%以上と多くの就業者が他市町村に 従業しているにもかかわらずそれを上回る就業者が他市町 村から流入していることを意味する.上三川町にはその南 に位置する真岡市や下野市からの移動が多い.芳賀町では 周辺のすべての市町から移動している.宇都宮市 3.9%で ある一方,さくら市 5.1%,那須烏山市 2.6%,上三川町 2.5%,

益 子 町 4.6 %, 茂 木 町 4.5 %, 市 貝 町 10.8 %, 高 根 沢 町

13.7%となっている.宇都宮市の割合は周辺市町と比較す ると小さいが,流入人口は 9,529 人と最大となっている.

芳賀町の総人口は 16,030 人と小都市であるが,周辺地域 にとっては一つの中心となっていると思われる.

 他市町村への通勤移動が活発な宇都宮都市圏において,

逆にその移動割合が最も小さいのが宇都宮市の 22.3%と なっている.宇都宮市の他市町村への移動で最も多いのは 芳賀町である.次いで,鹿沼市 28.4%,日光市 20.3%となっ ている.この宇都宮市,鹿沼市,日光市の三市で互いの移 動は活発であるが,それ以外の市町への移動割合は極めて 小さい.このことが全体としてこれらの市における移動割 合が小さい要因として考えられる.

 逆に,昼夜間人口比率が小さく他市町村への移動が多い のは野木町と益子町である.この二町は宇都宮都市圏内で も他市町村への移動割合が大きく,周辺地域のベッドタウ ン化している可能性がある.しかし,その役割は異なり,

益子町は県内通勤が常住就業者の 48.8%であるのに対し,

野木町は 20.4%でしかない.他の宇都宮都市圏内の市町村 も県内の市町とのつながりの方が強い.しかし,野木町は 45.4%が他県への通勤となっており,他県との経済的関係 の強さを示している.そこで宇都宮都市圏から隣接する茨 城県市町村の通勤移動を表8で示した.この野木町と小山 表7 各町就業者の従業地別割合

2010 年国勢調査より作成.

上三川町 西方町 益子町 茂木町 市貝町 芳賀町 壬生町 野木町 塩谷町 高根沢町 那珂川町 岩舟町 那須町

16333 3362 12362 7204 6443 8735 19461 12596 6449 15923 9345 9280 12417 46.62 42.06 46.49 53.50 37.59 47.95 45.62 33.26 46.89 37.51 59.78 39.91 65.91 53.13 57.94 53.18 46.50 62.25 52.02 53.82 66.67 53.11 61.32 40.19 59.87 33.92 うち県内 48.72 54.76 48.79 41.42 58.59 50.19 48.85 20.37 51.05 59.26 38.62 51.42 28.63 宇都宮市 22.78 7.47 12.02 10.05 20.92 28.56 18.74 2.25 13.79 27.93 5.21 1.61 1.10

足利市 0.07 0.21 0.00 0.00 0.02 0.01 0.17 0.19 0.00 0.03 0.00 2.70 0.02

栃木市 1.22 21.42 0.18 0.11 0.12 0.16 9.02 2.79 0.14 0.13 0.02 20.36 0.01

佐野市 0.16 1.61 0.01 0.04 0.03 0.08 0.68 0.83 0.00 0.02 0.02 17.52 0.02

鹿沼市 0.90 13.62 0.22 0.24 0.12 0.31 4.37 0.11 0.68 0.44 0.12 0.54 0.06

日光市 0.13 0.39 0.06 0.03 0.14 0.11 0.31 0.02 10.56 0.24 0.06 0.04 0.07

小山市 3.77 2.83 0.75 0.18 0.54 0.41 4.11 12.35 0.11 0.34 0.10 6.31 0.06

真岡市 6.64 0.57 21.28 9.90 11.41 7.69 1.21 0.17 0.17 1.33 0.24 0.18 0.02

大田原市 0.07 0.03 0.06 0.15 0.17 0.15 0.08 0.05 2.76 0.73 8.68 0.02 5.52

矢板市 0.08 0.09 0.04 0.07 0.20 0.14 0.04 0.01 11.35 1.42 1.71 0.00 0.53

那須塩原市 0.08 0.06 0.03 0.07 0.12 0.16 0.10 0.02 2.47 0.67 3.36 0.02 20.68

さくら市 0.19 0.09 0.19 0.33 0.56 0.88 0.10 0.03 6.79 6.23 3.81 0.01 0.19

那須烏山市 0.05 1.43 0.34 2.57 1.63 0.86 0.02 0.01 0.26 3.50 12.89 0.00 0.05

下野市 7.32 0.62 0.52 0.17 0.34 0.30 5.74 0.79 0.12 0.30 0.01 0.46 0.01

上三川町 0.00 0.00 1.89 1.01 1.27 1.13 2.64 0.20 0.26 0.58 0.17 0.20 0.02

西方町 0.05 0.00 0.02 0.00 0.03 0.00 0.61 0.02 0.06 0.01 0.00 0.24 0.01

益子町 0.23 0.09 0.00 6.45 5.37 1.99 0.06 0.00 0.03 0.21 0.13 0.00 0.02

茂木町 0.04 0.00 2.35 0.00 3.04 0.74 0.02 0.00 0.03 0.17 0.27 0.01 0.01

市貝町 0.23 0.00 3.58 4.79 0.00 3.95 0.06 0.00 0.06 0.58 0.18 0.00 0.00

芳賀町 2.52 0.12 4.59 4.48 10.77 0.00 0.33 0.03 0.31 13.74 0.37 0.04 0.06

壬生町 1.76 3.51 0.13 0.07 0.20 0.25 0.00 0.18 0.11 0.09 0.03 0.61 0.02

野木町 0.07 0.03 0.01 0.01 0.00 0.01 0.11 0.00 0.03 0.01 0.00 0.52 0.00

岩舟町 0.01 0.48 0.01 0.00 0.00 0.03 0.20 0.29 0.00 0.00 0.01 0.00 0.00

塩谷町 0.01 0.00 0.01 0.01 0.00 0.01 0.00 0.00 0.00 0.27 0.14 0.00 0.02

高根沢町 0.31 0.12 0.48 0.44 1.38 2.13 0.11 0.02 0.79 0.00 0.81 0.00 0.05

那須町 0.02 0.00 0.02 0.00 0.02 0.02 0.01 0.00 0.06 0.05 0.27 0.01 0.00

那珂川町 0.01 0.00 0.02 0.24 0.17 0.08 0.02 0.00 0.09 0.24 0.00 0.00 0.11

他県 3.07 2.53 3.14 4.28 1.43 1.29 2.84 45.47 0.71 1.34 1.20 7.70 3.91

常住就業者数(人)

(

)%

自市町村 他市町村

(7)

市は隣接する茨城県古河市に 2,000 人以上が通勤している.

常住地就業者数の割合では小山市の 2.7%,野木町の 18.8%となっており,その移動の影響は大きいと思われる.

また,小山市は結城市に 2,439 人(3.1%),筑西市 1,192 人

(1.5%),真岡市は筑西市 1,097 人(2.6%)移動している.

この移動は県内の政策効果が県外へ流出する可能性を示す ことになる.

 ここまで通勤移動の状況を見てきたが,その要因として どのようなものが考えられるだろうか.移動割合が比較的 大きい市町では宇都宮市への移動が大きい.これは都市機 能の特化の結果である可能性が考えられる.ただし,芳賀 町や上三川町のようにむしろ就業者の流入の方が大きい都 市もあり,産業発展の度合いによっても異なる状況を示し ている.そこで,次に各市町の就業構造を明らかにする.

2.就業構造からみた通勤移動の特徴

 就業者通勤移動の要因として市町村の就業構造を捉え る.表9は昼夜間人口比率が 100 を上回っている,すなわ ち,流入超過になっている市町について特化係数を示して いる.中心的な産業を特化係数から見ると,他市町からの 移動の多い市町において共通の特徴は製造業の特化係数が

1を上回っていることである.また,農林業の特化係数は 宇都宮市を除くすべての市町で1を上回っている.松山都 市圏での分析では農業中心の自治体は移動が小さかったが 宇都宮都市圏では移動割合が大きい.松山都市圏のそのよ うな町は農業のみであったのに対し,宇都宮都市圏では製 造業の特化係数が特徴的である.したがって,この相違は 製造業を中心としたその他の産業が発展しているためであ ると考えられる.

 また,他市町からの移動が多かった芳賀町は学術研究・

専門・技術サービス業の特化係数が 14.32 ときわめて大き くなっており特徴的な就業構造を持っている.2012 年経 済センサス活動調査によれば,芳賀町の学術・開発研究機 関の従業者数は 9,533 人となっている.芳賀町には製造業 を中心とした工業団地があるうえに,自動車会社関連の研 究所の雇用がこれら特化係数の結果に結びついていると思 われる.

 他市町から移動している就業者の産業別割合を表 10 で 表した.ほとんどの市町で製造業の割合が最も大きくなっ ている.異なるのは宇都宮市で卸売業・小売業,芳賀町の 学術研究,専門・技術サービス業である.宇都宮市はこの 都市圏の中心市であり,芳賀町は特殊な状況を持っている 小山市 真岡市 大田原市 那須烏山市 益子町 茂木町 野木町 那珂川町

古河市 2130 41 2 6 1 2368

結城市 2439 162 3 10 3 162

笠間市 12 31 3 25 78 1 3

常陸大宮市 1 8 5 37 3 48 24

筑西市 1192 1097 8 89 15 49 5

桜川市 56 202 1 1 104 20 3 3

城里町 3 1 2 14 2

大子町 1 27 8 30

表8 栃木県から隣接する茨城県への通勤就業者数(人)

2010 年国勢調査より作成.空欄は通勤就業者数がゼロであることを示す.

表9 市町の産業別特化係数

2010 年国勢調査より作成.

宇都宮市 小山市 真岡市 大田原市 上三川町 芳賀町 他市町村からの移動総数(人) 63,888 28,811 14,301 14,941 9,504 17,863

農業,林業 0.4 0.4 0.8 1.3 0.5 0.8

漁業 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

鉱業,採石業,砂利採取業 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

建設業 9.0 7.3 6.3 5.5 4.8 1.4

製造業 18.8 28.2 44.3 42.2 51.2 26.4

電気・ガス・熱供給・水道業 0.8 1.0 0.5 0.9 0.4 0.1

情報通信業 2.6 2.5 0.5 1.9 0.2 1.2

運輸業,郵便業 6.0 7.4 5.8 3.8 9.8 3.2

卸売業,小売業 19.6 17.2 10.9 10.1 13.1 3.0

金融業,保険業 3.7 3.1 2.0 1.9 0.6 0.4

不動産業,物品賃貸業 1.5 1.3 0.7 0.4 0.2 0.7

学術研究,専門・技術サービス業 3.8 2.4 2.0 2.5 1.3 55.1

宿泊業,飲食サービス業 4.0 4.1 2.4 2.9 2.2 1.4

生活関連サービス業,娯楽業 3.7 3.2 2.5 2.8 1.0 0.6

教育,学習支援業 4.8 5.2 4.5 5.3 3.0 0.6

医療,福祉 8.7 7.6 8.0 9.9 5.0 1.3

複合サービス事業 0.5 0.5 1.0 0.6 0.3 0.2

サービス業 6.5 5.8 4.0 3.3 4.7 2.8

公務 4.2 1.4 2.7 3.3 0.7 0.4

倉田 知秋

(8)

ので例外とすることができるだろう.したがって,製造業 が就業者の移動をもたらす産業分野であると推測される.

 これまでの分析から,宇都宮都市圏は栃木県の市町のほ とんどがその中に入っており,芳賀町のような他市町から の移動が多い町や他県への移動の多い野木町などが存在し ており,通勤移動に関して多くの特徴を有していたことが 見られた.これらの結果を踏まえ次節で市町村を越えた通 勤移動について考察する.

Ⅳ 通勤移動の要因に関する考察

 これまでの分析から通勤移動について考察する.通勤移 動は,産業育成,企業誘致などの地域政策の効果を考える 際に重要な点である.この観点から宇都宮都市圏の通勤移 動の現状を統計的に明らかにした.宇都宮都市圏の通勤移 動は非常に活発であり,特に中心市の宇都宮市への移動が 多い.常住地就業者の半数以上が移動している市町も多く 存在した.その中で,特に芳賀町は他市町への移動も多い が,それを上回るほど周辺市町からの移動が見られた.さ らに,近隣の他県市町への移動が小山市や野木町で見られ た.他市町からの移動の多い市町は製造業に従事する就業 者が多く,製造業についての雇用の増加は就業者の流入を もたらす可能性がある.

 一般的に,通勤移動が生じる理論的な説明として賃金格 差に注目する.人々は賃金の低い地域から高い地域に移動 すると考えられている.あるいは都市発展段階として都市 の役割の中で人々が移動すると考える.しかし,これらの 考えには問題がある.第一に,その移動は長期的な変化を 説明したものである.つまり,通勤移動ではなくそれは移 住のモデルである.7)長期的な移住にはそのような傾向が 見られるかもしれない.しかし,通勤移動の状況を説明で きない.第二に,一方向の移動しか説明できないことであ

る.ここまでで明らかにしたように,通勤移動は都市間で 双方向であり,このような現状を理論的に解明できていな い.

 これまで明らかになった事実から都市圏における通勤移 動の相違は産業発展の状況が要因として考えられる.通勤 移動に就業構造の特徴がみられた.松山都市圏で見られた ように,就業者通勤移動が小さい市町村は農業などの第一 次産業に特化しているところが多い.一方,今回の分析で 明らかになったのは,製造業の特化係数が大きい都市はそ の移動が大きい.したがって,どの産業を中心とした都市 であるかによって都市圏全体の移動が異なってくることに なる.製造業などの産業の就業者が多いと,行政境界を越 える移動が増加する傾向にあり,他市町村から通勤する就 業者が増大すると思われる.

今後の課題

 通勤移動が活発な状況を見てきたが,就業者の移動は居 住地から従業地への移動であり,居住地の選択の結果とし て従業地と異なる市町村となった場合が今回の分析対象で あった.なぜ人々は他市町村に居住するのか.他市町村か らの通勤は必ずしも長距離通勤を意味しているわけではな い.むしろ自市町村内よりも近い場合もあり距離の問題は ない.また,他市町村からの通勤者数が多いことが居住地 としての魅力のないことを意味するわけではない.実際に,

他市町村からの通勤が多くてもそれを上回る他市町村への 通勤が多いため流出超過となっている市町村もある.居住 地の決定要因としては,上記で可能性を指摘した交通の利 便性のほかに,アメニティや消費地へのアクセスなどが指 摘されている.県外からの移住者か県内移住者かのような 移住者のタイプによっても異なる場合も考えられる.しか し,通勤移動は双方向に活発な状況が今回の分析から見ら 表 10 都市圏の産業別他市町村からの就業者移動割合

2010 年国勢調査より作成.

宇都宮市 小山市 真岡市 大田原市 上三川町 芳賀町

農業,林業 0.57 1.04 2.84 2.87 2.28 2.11

漁業 0.03 0.03 0.02 0.10 0.04 0.00

鉱業,採石業,砂利採取業 0.80 0.61 1.25 0.32 0.31 0.00

建設業 1.04 0.95 0.95 0.84 0.78 0.35

製造業 0.95 1.51 2.20 1.92 2.66 1.45

電気・ガス・熱供給・水道業 1.02 1.22 0.65 0.91 0.55 0.20

情報通信業 0.69 0.60 0.12 0.40 0.07 0.39

運輸業,郵便業 0.82 1.09 0.82 0.54 1.34 0.61

卸売業,小売業 1.15 1.03 0.74 0.69 0.76 0.26

金融業,保険業 1.20 0.89 0.56 0.55 0.20 0.16

不動産業,物品賃貸業 0.96 0.80 0.35 0.31 0.21 0.40

学術研究,専門・技術サービス業 1.12 0.73 0.52 0.58 0.36 14.32

宿泊業,飲食サービス業 1.02 0.99 0.70 0.75 0.52 0.32

生活関連サービス業,娯楽業 1.09 1.00 0.80 0.87 0.44 0.30

教育,学習支援業 1.05 0.91 0.76 0.97 0.59 0.17

医療,福祉 0.86 0.72 0.71 0.81 0.48 0.18

複合サービス事業 0.71 0.83 1.50 1.18 0.63 0.50

サービス業 1.04 0.94 0.73 0.59 0.73 0.54

公務 1.21 0.56 0.69 1.08 0.40 0.26

(9)

れた.居住地の決定が一意的な傾向を示していない.近隣 市町村に居住しそこから通勤することをなぜ選択している かは地域の都市開発や都市発展にかかわる問題であり,居 住地選択に関して人々がどのような意思決定を行っている のかは今後分析していかなければならない課題だろう.

 また,今回の分析では明らかにできなかったが,通勤移 動の集中する地域と自治体の範囲が異なる場合,地域政策 を自治体単独で行うことによってその効果は自治体外に流 出してしまう可能性が高くなる.企業誘致などによる雇用 の発生が域内ではなく他市町村に発生してしまう可能性が ある.その場合の解決方法としては,合併や広域行政が考 えられる.宇都宮都市圏のような広範囲で移動が活発な場 合は県の政策で対応も考えられる.しかし,県単位のよう なさらに広い範囲で政策を行ったとしても,第3節で県外 への移動を示したように,特に県境では他県へその効果が 流出してしまう可能性がある.したがって,これらの対応 が常に望ましいとは限らない.現在の状況において,政策 を効率的に行うためには自治体間の協力が不可欠である.

特に,宇都宮都市圏のような通勤移動が活発な地域ではそ の実態を把握したうえで政策を行う必要があるだろう.

参考文献

大友篤:「通勤通学移動と昼間人口の動向」,統計,47,

pp.29-35(1996).

大友篤:「通勤通学移動と昼間人口」,統計,52,pp.36-41

(2001).

長田進:「都市圏設定に関する一考察―日本・アメリカ合 衆国・英国の定義を比較する」,慶應義塾大学日吉紀 要 社会科学,16,pp.15-28(2005).

金本良嗣,徳岡一幸:「日本の都市圏設定基準」,東京大学 空間情報科学研究センター・ディスカッションペー パー,37(2001).

倉田知秋:「松山都市圏における就業者の移動―他市町村 からの通勤移動者の就業構造―」,『社会と統計』,立

教大学社会情報教育研究センター,1,pp.17-30(2015).

Armstrong, H., and J. Taylor : Regional Economics and Policy Third Edition, Wiley-Blackwell(2000)(佐々木公明訳:

改訂版 地域経済学と地域政策,流通経済大学出版会

(2005)).

1)本稿において地域政策とは産業育成,企業誘致などの 雇用政策を想定する.

2)都市圏は,都市化によって行政境界を越えた複数の市 町村にまたがる経済活動を捉えるために設定される.

このような都市圏に関する研究はさまざま存在する.

金本・徳岡(2001)では,中心都市と郊外地域の性質 に着目して「都市雇用圏」を設定している.また,長 田(2005)では,アメリカ,ヨーロッパと日本の都市 圏の定義を比較して整理している.

3)通常,就業者分析は従業地ベースで行うが,本稿の分 析は両者を比較することで行う.従業者ベースでの分 析の重要性は大友(1996)や大友(2001)を参照.

4)西方町と岩舟町はそれぞれ 2011 年,2014 年に栃木市 と合併している.しかし,2010 年の国勢調査では当 然個別に公表されており,2010 年においてはそれぞ れの市町であるので分析上では栃木市とは合算してい ない.また,後に見るように,栃木市との関係が強く それぞれの人口が小さいため,合併による分析上の影 響はほぼないと思われる.

5)本稿での分析は県内市町村の移動が対象であるが,後 の議論で提示するような問題において,県外への移動 は重要である.自治体の経済政策の効果が県外へ流出 してしまう可能性を示していることになる.

6)総人口で昼夜間人口比率を見ると,芳賀町は 180.1 と 全国でも第 12 位の大きさである.

7)移住モデルについては Armstrong and Taylor(2005,

pp.181-213)が詳しい.

Abstract

This paper statistically examines the workers who commute between municipalities in Utsunomiya Metropolitan Area.

Evidently these employees affect the local economies. It is necessary to observe not only net commuting movement across borders, but also gross commuting movement in order to analyse the impact on the economies. I will focus on employment status of these employees and examine the influence on municipalities. I have two results. First, it is observed that in some municipalities, commuters from other municipalities account for roughly half of employees. Second, it is considered that there is inflow of employees from other municipalities in municipalities specialized manufacturing industry. Finally I hope to show the proper state of regional policy from the result of my analysis.

倉田 知秋

参照

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地域 い 新産業ン新事業を創出 地域経済 活性 を図るた 中堅ン中 企業 よる新分 進出. やパンチホヴ企業 よる新規創業

地域別計 主要施策事業

雇 用や生 活に 係る 官民の ネッ トワー クを 構築 するこ とで 、大 都市圏か らの 人材

        市町村が地域ケア会議を開催する上で課題と考えること(市町村) 課題

 注

 人口移動には、居住地の移動をともなう長距離の移