• 検索結果がありません。

紗 糺同

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "紗 糺同"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

論文

土器製作者の認識と粘土の化学的性質

鐘ヶ江賢二l)

l)891‑0197鹿児島市坂之上8‑34‑l鹿児島国際大学

1.はじめに

筆者は,土器製作技術のうち,材料となる粘土の採取や 選択,素地の調整技術について研究をすすめてきた(鐘ヶ 江2007). しかしながら,過去の土器製作において, どの ように材料を採取し,選択したのか, という点については,

多くの課題が残されている.土器から考古学的情報化学 的性質を検討することは, これまで多くの研究の蓄積があ るが,過去の土器製作者の意図選択を現在のわれわれが 追究するためには,いまだ多くのハードルが残されている といえよう.

そこで,考古資料自体の分析とともに,民族調査や製作 実験など観察可能なデータを蓄積させ,考古資料と比較検 討することが,土器製作技術へのアプローチには有効であ ると考えられる.東南アジアのタイ王国の農村部などでは,

伝統的技術に基づく土器作りが継続して行われている集落 が散在しており, こうした集落の調査データは,先史時代 の土器製作を研究するうえで重要な手がかりとなりうる.

タイでは,小林正史氏の研究プロジェクトを中心とし て,伝統的土器製作技術および土鍋による調理方法の調査 データが蓄積されつつある(小林編2006・2011ほか).そ のプロジェクトにおいて,筆者もタイの村落を訪問し,調 査に参加する機会に恵まれた(2007年8月・2011年12月).

その後タイで使用されている土器や材料としての粘土を 分析し,土器製作技術,焼成温度と比較検討したことがあ り, この分析結果は学会で公表している(小林ほか2009.

2010).また,タイの土器製作時の混和材の意義についても,

顕微鏡分析により検討している(鐘ケ江2014).小論では,

これらの成果を基礎としつつ, タイで土器製作に使用され ている粘土の理化学的分析データを提示し,化学的性質に ついて若干の検討を行う.

現代タイの土器つくり集落における調査,および土器の 胎土分析は, 中園聡氏らによって精力的に分析がすすめら れている(中園ほか2009・2011 .2012ほか). 中園氏らの 分析研究は,北タイの集落において,主に製作者個人の技 術の安定性,混和材の元素分布に対する影響に焦点が向け られている.本稿は,蛍光X線分析およびX線回折によっ て,土器製作技術とそれに関する認識,粘土自体の化学的 性質との関係性に重点を置いて,分析データを提示するこ

とにしたい.

糺同

2. タイの伝統的土器作り

現在, タイ北部や東北部では,現代の陶芸で使われるよ うな電動ロクロ,窯などを用いず,手持ちタタキや野焼き など伝統的技術に基づく土器作りが継続して行われている が,経済発展と工業化にともなう金属製の鍋,金属製容器 の普及,および作り手の高齢化などによって伝統的土器作

オケオ村

図1 調査対象地点

(2)

X

、掴

図2ハンケオ地区の土練りのようす 図3ハンケオ地区の粘土帯横み上げのようす

温度 温度 温度

9m 900 900

H12220070831

◇Srima20080821

●Srima20080822 H11720070820

△A

‑ヴ

ロロ

ム鼻

8m 800 800

7 700

●●●●●●●●●●●●●●●●

700

柳。。.、。

●●

600 60,

GOO

・・e・p・・●p●。。

500 5 500

4 400 400

ロム

300 300

2 ロ■︲△ NSS EEW

20ロ 200

I

100 100

銅● 100

0 U

0 30 60 90 120 150 180 0

時間(分)

図4土器つくり世帯での焼成温度測定グラフ

(小林・北野2011より作成)

30 60 90 120 050 180

時間(分)

O 60 90 120 0 180

時間(分)

りは衰退してきている.そこで. こうした伝統的技術の記 録が急務となっているのである. またタイの土器作り技術 にはこれまでの調査から地域差がみとめられることが明 らかにされているこれは,各地域の生業形態や性的分業 野焼きの季節性などの違いに由来するとみられている(小 林ほか2007#小林・北野2011).

以下では.小林正史氏を中心とするタイの民族調査の 記録・論考をもとに特に2007年と2011年の土器作り の状況について整理しておきたい(小林ほか2007;小林 2011 :小林・北野2011 ;庄田ほか2010 ;徳澤・小林2008 ほか).

北部タイの事例として.チェンマイ県ハンケオ地区の事 例を挙げるハンケオ地区は北タイ最大の都市であるチェ ンマイから南へ車で30分ほどに位置するハンケオでは.

クアン村(BallllGuall) . ライ村(BaanRai). ウァオライ 村(BaanWaorai)の3村で調査を実施することができ,

40〜50世帯の土器つくりに関するデータを得た.

ハンケオ地区の土器製作は.基本的には世帯を単位とし て行われる(小林ほか2007)土器製作のスケジュールと しては. 1年を通じて行われる場合(40軒調査のうち16軒)

だけでなく、季節的に行われる場合もあり、世帯によって 異なるまた土練りや燃料運搬など一部男性が手伝うのを 除くと.多くは女性が土器製作を担当している

土器製作の過程をみると.素地は集落一帯に流通してい る粘土を購入し,それに購入した砂を混ぜる混和する砂 2.1 北部タイの状況(図1)

ハンケオ地区

(3)

−々 , ,而溌

11

︐1■︐5BUOI﹃襲華

F

一一 11

乳⑪心

Z璽

葛等

.;

図6モンカオケオ村のタタキのようす 図5モンカオケオ村の土練りのようす

温度 温度 温度

900 函蝿姻岬姻諏靱麺獅岬0

900

H46-1 20070920 ■壷■屋■■■■■ H720070914 H242‑2

〆霞篭▲■

4#

▲眼

懐芳娯参 園:

■■

×鰍iム 。。。凧x×

■×

xAA

。。。、

.・・・

。 、%

●● ●、

000087

800

7“

ロrtO

■Apx

ムム画xx回〆︒︒︒■x△回×4臣回

×

600

知細如抑m ●■

耳●ロ● ■●回●回●ロ●回り■一

500 ●8

8●

400

3

200

1

×A

xA鍔回回回回

ロロ 日■

識ふぷ ●R率

▲…

■図g我

●●

・H7Rpnt

■H7Back

︑凹陸rがI

0 O 120 160 240 3町 360 420 480 540 6

時間(分)

0 。s塞霊索号霊率昌霊蕊§翠索索§認譲

〜ーーー−−−−ー一一ロ■■一

時間(分)

0 60 120 180 240 300

時間(分)

図7土器つくり世帯での焼成温度測定グラフ

(小林・北野2011より作成)

〜2時間程度で最高温度に達し. 2時間〜3時間経過後覆 い内部の温度が降下することが多いようである(図4)

器種構成をみると(小林北野2011).炊飯用鍋(現在 は骨壷として利用)のモータム.水尭モーナム.おかず調 理用小型鍋のモーケン.スープ用鍋モートムが中心であり.

トムヤムセットなど現在の食生活に合わせて新しい器種も 生み出されている.

モンカオケオ村

北タイのランパーム県に所在するモンカオケオ村でも訓 査を実施することができたハンケオ地区では土器つくり は基本的に女性であるが.モンカオケオ村では, フラワー ポットなどの新しい器種の製作で男性も参加することも多 く.女性が主に土器つくりを担当するハンケオと比較すれ ば.多様な土器製作の形態がみとめられるまたハンケオ は1mm以下のふるいにかけられ,製作者によって配合率

に違いはあるものの.最終的に粘土に対して3割程度の砂 が混ぜられる事例が多い砂が混ぜられた粘土は.足で練 りが行われる土練りは製作者が自ら行うこともあるが 村を巡回する専門の土練り職人もおり, 30分〜1時間程 度入念に練りが行われる(図2).

1次成形の段階では,紐積みが行われる最初に底部と して粘土円盤を用意し,一段目は円撚の周りに巻きつける ようにして粘土帯を接着させる. ただし, 円盤と周りに付 ける粘土帯の密着は弱く,最初の段階では円盤と粘土帯の 間には隙間もみられる粘土帯は,全体で6段以上積み上 げることになる.積み上げ後の二次成形は,手持ちタタキ による成型で.丸底の形状に仕上げられる(図3)

焼成は密閉度の高い覆い型野焼きである点火後, 1

(4)

司陛』

︑.

浄トP

1E■弓1陰

p

・■

,』

B

心彦 1癌

I1=1

静脇

I

図8モー村のチュア製作のようす 図9モー村の円筒状成形のようす

温度

900 ■■

■■ H91 20061226

800 ■■

700

600 ■■

■■■

500

'一.

400

300

200

100

0

0 10 20 30 40 50 60

時間(分)

図10土器つくり世帯での焼成温度測定グラフ

(小林・北野2011より作成)

と同様に, 1年を通じて土器つくりを行う世帯が多い(80 軒調査中. 44軒)が,世帯によって違いもある

土器製作のための材料について.粘土は隣接する村の丘 陵地にある採掘場で採取された粘土を購入する.製造者が 粘土を販売する際は.採取した粘土がそのまま販売される こともあるが,専用の粉砕機によって乾燥した粉末状態に して販売されることが多い.

なお,モンカオケオ村では土器製作の際に異なる色の粘 土の粉末を使用することがあるが.特に赤土が好まれ、赤

土と白土を混ぜることも多い色の異なる粘土は,同じ採 取地から採取でき,採取する層の違いが粘土の色に反映さ れている.モンカオケオ村の場合は,赤土はより深い地点 から採取していた.

粘土を混ぜることについて製作者にインタビューしたと ころ. さまざまな返答が得られたが,全体的に赤みを帯び た製品が好まれるようである赤が好まれる点については,

色合いのよさや,赤土を入れることで焼きしまりをよくす る効果などが理由として挙げられていた. また白土を混ぜ

(5)

を高める効果が想定される(cfRicel987). したがって,

チュアの混和は昇温時の衝撃の緩和だけでなく,変形度の 大きいタタキに耐えうる可塑性に富んだ素地作りを目的と

した可能性がある(小林ほか2010).

焼成では,低密閉・薪多用型の覆い型野焼きを行うのが 特徴である.ただし薪燃料の上に設置された土器には,最 初の時点で覆いはかけられない.ハンケオ,モンカオケ オと比べると多量の薪を用い,薪への点火によって急激 な温度上昇が観察される.点火後, しばらくして藁で覆い をかける.点火から30分程度で最高温度に達し, 2時間 程度と短い時間で取り出されることが多いようである(図

10).

器種構成としては,水甕のモーナム,小型鍋のモーケン,

モーフン,大型鍋のモーサオ・ロ−が中,し,であるが,近年 の需要の変化に応じて新たな器種も生み出されている.

る場合は,赤土は入手が困難な際に白土で代用するという 理由も挙げられた.粘土と砂は,世帯によって異なるもの の2: lの割合で混ぜられることが多い.

土練りについては,土器製作者が自ら練ることも多いが,

土練り専門の職人もいる.土練りは,ハンケオとは異なり 手で行うが5分程度の短時間の手練りであり,成形直前に 仕上げの練りも行う (図5).

成形は,ハンケオと同様に最初に底部の粘土円盤を用意 する. ただし,ハンケオとは異なり円盤に粘土紐を接着さ せ,底部と粘土紐の間の隙間はみられない.粘土紐は, 6 段以上積み上げる事例が多く,台上で丸みをもたせるよう に成形する.手持ちタタキで丸底に仕上げる(図6).

焼成は,高い密閉度の覆い型野焼きであり,薪の量はや や多い.密閉度の高さから,昇温はゆるやかで,最高温度 に達するまで6時間〜8時間程度かかることが多いが,密 閉度がより高い場合は20時間程度かかることもある.点 火後焼きあがった土器を翌日取り出す様子も観察された

(図7).

東北部タイ・モー村

東北部タイのモー村で調査を行うことができた.モー村 は,マハサラカム市街地から北に約lOkmに位置する.モー 村では,水稲耕作が主たる生業である.東北タイの農業は,

天水田による稲作が中心であり,土器つくりは,農閑期の 乾季に集中して行うことが多い. この点で,都市近郊に位 置するハンケオ地区やモンカオケオ村とは様相が異なる.

土器作りの際の粘土は,人工の池の底から採取する.粘 土の採取は,男性が担当しボートに乗って素潜りで底から 採取する.人工池が造られる以前は,村から東約500mの 湿地から採取していたとのことである.

粘土には,チュアと呼ばれる混和材を混ぜる. これは 粘土と籾殻をl : lあるいは1 :2の割合で混ぜ, lOcm

20cm程度の大きさのボール状に成形したものを1時間程 度焼き,焼成後に木製の縦杵と臼で粉砕したものである(図 8).粘土とチュアを混ぜる割合は,世帯によって若干違い はあるがおよそ3: 1の割合で混ぜられる.

チュアが混和された粘土は, 円筒状に整えられた後に,

複数の台上タタキ,手持ちタタキの工程を経て成形され,

工程に応じて道具も細かく使い分けられる.ハンケオやモ ンカオケオの粘土帯の積み上げとは異なり, 円筒状の粘土 塊からタタキによって丸底の形状に仕上げることから, 当 初の形からの変形の度合いは大きい(図9).

チュアは籾殻が混ぜられるが,有機物には粘土の可塑性

3.理化学的分析による現代タイ土器つくり粘土の性質 次に,以上のタイでの土器つくりの状況をふまえ,北部 タイのハンケオ地区とモンカオケオ村,東北部タイのモー 村の粘土の理化学的分析データを示し,化学的性質と土器 製作技術について若干検討する.調査を実施したハンケオ 地区,モンカオケオ村,モー村それぞれで使用されている 粘土を分析したが,特にモンカオケオ村では,土器製作時 に「赤」「白」という色による粘土の認識,機能的区別が 行われている.そこで色に応じた化学的性質を検討するた め, 「白」は粘土採掘と販売を営むモンカオケオ村のY氏 とJ氏から粘土を提供いただき, 「赤」はM氏から提供い ただいた粘土を分析することにした.

3.1 分析方法

蛍光X線分析とX線回折を実施し,元素分布と粘土鉱 物の組成から土器に使用された粘土の特性を明らかにする ことを試みた.蛍光x線分析は,福岡教育大学のリガク 社製RIX‑2000を使用した. X線強度から元素組成を算出 する方法は,低希釈率(3倍)ガラスビードを用いた検量 線法である.分析試料は, ステンレス乳鉢による粗粉砕の 後,めのう乳鉢で微細粉末にした. ガラスビード作成の際 は,試料1.50gと融剤(LizB407)3.00gを混合し1250℃で溶 融させた.各元素の質量濃度測定のための検量線作成にお いては.標準試料として地質調査所(現・地質調査総合セ ンター)の火成岩シリーズ全てを用いた.励起光は, ロジ ウム(Rh)をターケットとするX線管球に50kVL50mAを印

(6)

ハンケオ地区採取粘土 モンカオケオ村Y氏粘土 モンカオケオ村J氏粘土 モンカオケオ村M氏粘土 モー村粘土

64.129 72.924 57.894 61.93

l.025 0.754 1.01 1.17

18.084 14.024 23.066 20.732

6.754 5.097 6.705 1.727

0.084 0.092 0.06 0.047 0.02

0.801 l.161 0.86 l.181 1.014

0.495 0.495 0.327 0.333 0.562

0.325 0.372 0.246 0.413 0.196

2.446 2.306 1.865 2.318 1.125

0.057 0.069 0.034 0.051 0.039

25

20

15

10

60

50 70

SiO2(wt.%)

80

SiO2(wt.%)

2 0.5

4300

︵巽一琴︶○母三

1

0.2

1 0.1

50 60 70 80

SiO2(wt.%) SiO2(wt.%)

1.0

0.8

Oハンケオ地区

■モンカオケオ村Y氏 ロモンカオケオ村J氏

▲モンカオケオ村M氏

×モー村

○︒+○吋⑯之︑○吋¥

0.6

0.4

0.2

0.0

6 図11 タイの土器つくり粘土の元素分布

2 3 4 5

SiO2/AI203

(7)

加した.

X線回折分析については,九州大学理学研究院の分析装 置を用いた. タイで採集した粘土に対して,遠心分離機を 用いた沈降法によって特定範囲の粒径の懸濁試料を抽出

し,分析に供した.

長石/斜長石の割合の変化が,風化に起因することが理解 される. ただしモンカオケオ村J氏粘土はK20の割合が 高いにもかかわらず, SiOz/A1203では粘土化がすすんでい ることを示し,やや異質な状況となっている.

X線回折(図12)

X線回折では,いずれの粘土においても石英,長石,雲 母とともに,粘土鉱物としてカオリナイト,モンモリロナ イトが検出された.組成として大きな違いはみられないが,

モンカオケオ村J氏粘土からはモンモリロナイトが, モン カオケオ村M氏粘土からはカオリナイトがやや強い強度を 示している. またモー村は,全体的に検出強度のピークが やや低い傾向がみられる.

3.2分析結果

蛍光x線分析(表1.図11)

元素組成をみると, SiO2はモンカオケオ村のJ氏白色粘 土が72%強と高い強度を示しており,石英,長石類のケ イ素を多く含み花崗岩などに由来する材料であることが推 測される.一方, 同じモンカオケオ村のM氏赤色粘土は,

57%と低い値を示している. ほかの粘土は,60%台を示し,

花崗岩など酸性岩に由来する材料であったことが考えられ る. モンカオケオM氏粘土は, 中性岩に由来する粘土を 使用していたと評価できるかもしれないが,モンカオケオ 村の場合は採取地点が同じであっても,採取地点の深さの 違いで質が異なっており, より深い地点は風化が進んでい

ることを示すようである.

粘土を構成する主要元素A1203は,モンカオケオ村のM 氏赤色粘土が高い値を示し,粘土の割合が多く風化の度合 いが高い材質であることがわかる.モンカオケオ村のJ氏 白色粘土や,ハンケオ地区の粘土はAl203の値が低く,風 化の度合いが低く粘土の割合が低いことが, このデータか

らうかがえる.

粘土の色に関して,色を決定するもっとも重要な元素 は鉄すなわちFezO3である. FezO3の値をみると,モンカ オケオ村のY氏白色粘土と,M氏赤色粘土が高い値を示 している.色が異なると認識される粘土が,元素の値とし てはさほど変わらない点は興味深い.逆にモー村粘土は,

Fe203がもっとも低い値を示している.

粘土の生成で議論される,長石類の組成や風化を示す元 素が, KzOやNazO, CaOである. K,OやNa20をみると,

ハンケオ地区やモンカオケオ村Y氏,M氏粘土はK20が 高い値を示し, モー村は低い.NazOでは,モンカオケオ 村M氏, Y氏粘土が高い値をとり,モー村はやはり低い 値を示す. さらに,長石類の組成,風化や粘土化との関係 を検討するため, K/Na+Ca (松本2001),SiO2/A1203の 軸で検討すると, モンカオケオ村M氏粘土がもっとも低 い値を示し,風化の度合いが大きく粘土化がすすんでいる ことを把握でき, グラフが右上がりの正の相関を示すこと から, ケイ素/酸化アルミニウム(粘土)の割合と, カリ

4.考察

以上のように, タイで土器つくりに用いられる粘土の分 析データを示した.今回のデータと,実際の土器つくり技 術や製作者の認識との関連がどのようなものがあったか,

明確に関連付けるかどうかは現状では判断が困難な部分が 多い.

タイでは,上述したように,土器の製作技術について地 域性が看取でき,土器製作時に混ぜる混和材についても,

東北タイのモー村のチュアの事例のように,特異な技術も みられる.チュアは,粘土と籾殻を混ぜて焼成したもので,

土器の材質に近い混和材であることが大きな特徴であると いえる.

モー村は, 円筒状の粘土塊からの成形,および焼成時の 急激な温度上昇と短時間の焼き上がりが,他の地域とは異 なる技術的特徴である. したがって,モー村のチュアの混 和は,点火後の急激な短時間での焼成との関連が想定され るが,チュアは成形時,焼成時のストレスに耐えるための 意図が想定される(小林ほか2010). またモー村の粘土自 体が,風化が進み粘土の割合が大きいため,混和物によっ てその割合を調整する意図もあるかもしれない。

また,モンカオケオ村では, 「赤土」と「白土」と認識 される粘土も,化学組成からみると赤の発色に影響を与え るFezO3,すなわち鉄の量はさほど違いがみられない場合 があり,むしろAI203の割合が,土器製作者にとっての粘 土の質感の違いとして色に反映され認識されている可能 性もある. また, X線回折のデータからは,粘土鉱物自体 の組成はそれぞれの集落間でさほど違いはみられないもの の,土器製作技術自体には地域差が看取される.そうした 地域差は,粘土の化学的性質とは別のメカニズムによって

(8)

I( 囚18)

I(c側、18)

卿知唖知噸知皿諏04332211 知邸蜘唖麺蜘麺0332211

0

27伽WT肥1,(山g) 2ThOt8/T肋ね(deg)

I( 叩18) I(c…18)

呪腿開聞醐閲随

蜘皿唖

0

50 10.0 15 0 200 25p 3qO 35.0 40 0

2T純ta/T晩t、《晩g)

0

2T随t8/Thel8(dep

l…い)唖岬唖郵趣0

0

2T脆廸(随18《由沙

図12各地で採取した粘土のX線回折パターン図 K:カオリナイト M:モンモリロナイト

司氏,徳澤啓一氏,長友朋子氏, 中村大介氏,設楽博巳氏 に多くのご協力とご教示をいただいた.

また,理化学的分析では,福岡教育大学の棟上俊二氏,

九州大学大学院理学研究院の上原誠一郎氏にご協力いただ いた.末筆ではあるが,厚く感謝申し上げたい.

生じている可能性がある.粘土の化学組成と土器製作者の 認識がどのように一致し,あるいはずれが生じるのか,化 学的性質と関連する部分はあるのか, という点も,今後追 究すべき問題として残されている.

謝辞

小論は,小林正史氏(北陸学院大学)の研究プロジェク トに参加する機会をいただいたことによる成果であり, れまで公表された一連の研究を基礎として理化学的分析 データを加えて提示したものである. タイの民族調査に参 加する機会を提供していただいた小林正史氏に心から感謝 申し上げたい. またタイ調査中では,庄田慎矢氏,北野博

文献

鐘ケ江賢二2007『胎土分析からみた九州弥生土器文化の 研究」九州大学出版会

鐘ケ江賢二2014「土器製作における素地選択と調整技術 の基礎的検討一現代タイと弥生土器との比較から−」

『東アジア古文化論孜」 l 高倉洋彰先生退職記念論集

(9)

刊行会pp.437‑450

小林正史編2006『黒斑からみた縄文・弥生・土師器の野 焼き方法」平成16年・ 17年度科学研究費補助金(c) 研究成果報告書

小林正史編2011 「土器使用痕研究一スス・コゲからみた 縄文・弥生土器・土師器による調理方法の復元一言I北陸 学院大学

小林正史・徳澤啓一・長友朋子・北野博司2007「稲作農 耕民の伝統的土器作りにおける技術と生産様式の結びつ

き」 『北陸学院短期大学紀要」 39:219‑276

小林正史・鐘ヶ江賢二・棟上俊二・上原誠一郎2009「土 器焼成温度の意味:稲作農耕民の覆い型野焼き民族誌に おける焼成温度の分析」 『文化財科学会第26回大会研究 発表要旨」

小林正史・鐘ケ江賢二・棟上俊二・上原誠一郎2010

「東南アジアの伝統的土器つくりにおけるチュア(シャ モツト)の役割」 「文化財科学会第27回大会研究発表要 旨』

小林正史・北野博司2011 「稲作農耕民の土器作り民族誌 における技術選択:素地作り ・成形・野焼き方法の結び つき」土器と窯業の民族考古学ワークショップ関西大

松本建速2001「五所川原産須恵器の胎土分析」『物質文化」

71 : 1‑21

中園聡・黒木梨絵・川宿田好見・平川ひろみ・池平壮峻・

重信美那子・江神めぐみ・中村有希2009「タイ北部土 器作り村における土器および素材の蛍光X線分析」 「日 本文化財科学会第26回大会研究発表要旨j 298‑299 中園聡・川宿田好見・黒木梨絵・平川ひろみ・太郎良真

妃・中村有希・江神めぐみ2011 「北タイの土器製作村 における製作者の個人内変異と個人間変異一土器の形態 と胎土一」『日本文化財科学会第28回大会研究発表要旨』

246‑247

中園聡・平川ひろみ・川宿田好見・太郎良真妃・三辻利一 2012「北タイ伝統的土器製作村の素地作りにおける個人 内安定性一蛍光X線分析を用いた検討を中心として一」

『国際文化学部論集』第13巻第3号:235‑254

Rice,RM・ 1987PotteryAnalysis:ASourcebook.Chicago:

UniversityofChicagoPress.

庄田慎矢・安部久・能城修一・徳澤啓一・小林正史2010「土 器作り叩き板の考古民族植物学的研究」 『考古学と自然 科学」 60:39−54

徳澤啓一・小林正史2008「北タイにおける伝統的土器製 作とOTOP‑タイ王国チェンマイ県ハンドン郡ハンケオ 地区の伝統的水甕製作を中心として−」 『岡山理科大学『岡山理科大学 紀要, B,人文・社会科学」 44: 13‑32

参照

関連したドキュメント

●文化財資料科学分析  当協会は文化財 資料の科学分析を 行っています。加 速器質量分析法に よる土器付着物や 木製品等の放射性 炭素年代測定(図

2.室内で作製したセメント固化処理土の表面粗さと土粒子径の関係 土粒子径と実改良杭の表面粗さの関係を明らかにするために 4

高 木   萌 日本とタイの心の教育 ─タイにおけるいじめの調査結果分析を中心として─

2.素 キ ジ ド 地土の準備

XAFS測定光学系 多素子検出器を用いた蛍光法により,Ti-K 及び Mo-K 吸収端 のスペクトルを測定 ビームサイズ 1 x 12mm 試料 多素子蛍光X線

20代/常勤/経験3年未制 4i、:I〈軍均45分/回) 学生の話を聞けるようになり,学生のこ

 新田栄治氏は、日本出土のタイ産陶器に、①商品としての陶器、②商品である内容物の容器としての

科学的に分析する方法として高く評価した。また連盟自