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817 原著 3D-FSE MRA 1 伊豆野勇太 4 野田誠一郎 2 肥合康弘 4 豊成信幸 2 米田哲也 5 酒本司 3 沖川隆志 6 市川和幸 3 太田雄 2 冨口静二 Code No Evaluation of the D

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Code No. 261 6熊本医療センター放射線科

Evaluation of the Detectability of Vascular Stenosis Using Non-contrast Magnetic

Resonance Angiography with Various Electrocardiographically-gated

Three-dimensional Fast Spin Echo Sequences

Yuta Izuno,1* Yasuhiro Hiai,2 Tetsuya Yoneda,2 Takashi Okigawa,3 Takeshi Ohta,3 Seiichiro Noda,4

Nobuyuki Toyonari,4 Tsukasa Sakemoto,5 Kazuyuki Ichikawa,6 and Seiji Tomiguchi2

1Graduate School of Health Sciences, Kumamoto University (Current address: Department of Radiology, Fukuoka University Hospital)

2Faculty of Life Sciences, Kumamoto University

3Department of Radiology, Saiseikai Kumamoto Hospital 4Department of Radiology, Kumamoto Chuo Hospital 5Department of Radiology, Kyushu Medical Center 6Department of Radiology, Kumamoto Medical Center

Received August 9, 2011; Revision accepted May 9, 2012 Code No. 261

Summary

Various three-dimensional fast spin echo (3D-FSE) sequences are used for non-contrast magnetic reso-nance angiography (MRA). Differences in the ability to detect vascular stenosis using these sequences, however, have not yet been evaluated. The purpose of this study is to evaluate the usefulness of each sequence for the detection of vascular stenosis by using a vascular phantom. The phantom consisting of silicon tubes with 30% and 70% stenosis of luminal diameter and fluids close to T2 value of blood were used for the study.

Non-contrast MRA with half-Fourier acquisition single-shot turbo spin echo (HASTE)-noncontrast magnetic resonance angiography of arteries and veins (NATIVE), sampling perfection with application optimized contrasts using different flip angle evolutions (SPACE)-NATIVE, fresh blood imaging (FBI) and triggered angiography non contrast enhanced (TRANCE) sequences was performed by using the phantom which can be varied in terms of the steady flow velocity. Each stenosis was quantitatively estimated by the stenosis index (SI) calculated from the signal intensities on acquired images. The signal intensity of the non-stenotic vascular site markedly decreased at more than a flow rate of 20 cm/s in all sequences. Significant decrease in the signal intensity was observed in the distal point from the stenosis area on these images acquired by using HASTE-NATIVE and FBI sequences. FBI and TRANCE sequences showed a more accurate SI for 30% stenosis than HASTE-NATIVE and SPACE-NATIVE sequences. SI for 70% stenosis was overestimated in all sequences at 5 cm/s of diastolic flow rate. In conclusion, the ability to detect vascular stenosis on non-contrast MRA image using 3D-FSE sequences depends on the image quality during diastolic phase in the cardiac cycle. FBI and TRANCE sequences are useful to detect the mild arterial stenosis.

Key words: non-contrast magnetic resonance angiography (MRA), noncontrast magnetic resonance

angiography of arteries and veins (NATIVE), fresh blood imaging (FBI), triggered angiography non contrast enhanced (TRANCE), stenosis

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緒 言

 血管を高信号に描出する magnetic resonance angiography (MRA)法には,gadolinium(Gd)造影剤を用いた造影

MRA法と用いない非造影 MRA 法がある.造影 MRA

法では撮像時間が短く,安定した画像が得られるとい う特徴がある.一方,目的とする血管を描出するために は造影剤が目的血管に到達するタイミングを考慮した撮 像を行う必要があり,検査の失敗によって再検査を行 うことはほぼ不可能であるといえる.また,米国食品医 薬 品 局(United States Food and Drug Administration; FDA)によって腎機能低下症例における Gd 造影剤の高 用量投与による腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis; NSF)の発症が警告され,特に透析が必要な腎 不全患者の造影 MRA 検査で発症しやすいと報告され ている1)  一方,非造影 MRA 法は造影剤を使用しないため, 非侵襲の MRA 検査として期待されている.また血管 描出が不良の場合には,撮像パラメータを変更するよう な再撮像も可能である.

 非造影 MRA 法には gradient echo 法を用いた time of flight(TOF)法 や phase contrast(PC)法,steady state

free-precession(SSFP)シーケンスの撮像法などが使われ

ていたが2),心電図同期 3 dimensional-fast spin echo

(3D-FSE)差分法である fresh blood imaging(FBI)法3)

どが開発され,心電図同期 3D-FSE 差分法が非造影躯 幹部 MRA 法に使用されるようになった3∼6).これらの 撮像シーケンスは SE 法の血液の流速によって信号強度 が変化する特徴を利用するもので,拡張期と収縮期の 3Dデータを冠状断で取得し,拡張期像,収縮期像およ び差分画像を得る方法である.動脈の血流は心時相に よって流速が大きく異なっており,拡張期には動静脈と もに血流が遅いため高信号に,収縮期には流速が速く なることで動脈のみ信号が低下し,拡張期像から収縮 期像を差分することによって動脈だけが高信号に描出 される.現在,各装置メーカが心電図同期 3D-FSE 差 分法を提供するようになった.しかし,施設や撮像シー ケンスの違いで臨床で使用される頻度に差があり,血 管描出能に差があるのではないかと考えた.  今回,われわれは異なる撮像シーケンス間における血 管描出能を比較検討するために心電図同期 3D-FSE 差 分法である noncontrast magnetic resonance angiography of arteries and veins(NATIVE)法,FBI 法,triggered angiography non contrast enhanced(TRANCE)法,以上 三つの手法に対して,血管狭窄ファントムによる比較実 験を行った.

1.方 法

1-1 使用機器

 MRI 装置は,MAGNETOM Avanto 1.5 T:slew rate (SR)200 mT/m/ms,傾斜磁場振幅 45 mT/m(シーメンス 社),Excelart Vantage 1.5 T Power Plus Package:SR 200 mT/m/ms,傾斜磁場振幅 33 mT/m(東芝社),Achieva 1.5 T R2.6:SR 160 mT/m/ms,傾斜磁場振幅 30 mT/m (フィリップス社)を使用した.  撮像に使用したファントムは,内径 6 mm の模擬血 管に 10∼90%の狭窄をもつシリコン製血管狭窄ファン トム(アールテック社)[Fig. 1(a),(b)]と T2値を血液に 近く7)なるように Gd 造影剤 0.5 mmol/l で調整した溶液

Fig. 1 Vascular stenosis phantom.

(a) Picture of vascular stenosis phantom

(b) Illustration of vascular stenosis phantom (section view)

(c) Overall picture of vascular stenosis phantom and steady flow pump

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(T2値:269.7 ms,T1値:482 ms)を用いた.血管狭窄 ファントムとしては軽度狭窄である 30%狭窄血管と高 度狭窄である 70%狭窄血管を使用し,周波数エンコー ド方向は流れの方向と同一に設定した.ファントム実験 ではタンクに溜めてある擬似血液を定常流ポンプに通 してシリコンチューブに流し,前述の模擬血管に流速の 異なる定常流が流れ込むような循環経路を作り撮像を 行った[Fig. 1(c)].心電図同期 3D-FSE 差分法の対象の 一つである総腸骨動脈3∼6)の平均流速が 20 cm/s 前後で あること8),そして予備実験において流速が 25 cm/s 以 上であればどのシーケンスにおいても信号がほとんど消 失したことから,設定した定常流は 0,5,10,20 およ び 25 cm/s とした(Table).拡張期相当の流速は 0 また は 5 cm/s とし,それぞれの収縮期相当の流速を 0 cm/s の場合は 5,10,20,25 cm/s,5 cm/s のときは 25 cm/s とした. 1-2 撮像方法  撮像パラメータを Table に示す.これらの撮像条件は 各施設が通常の撮像時に使用しているもので,可能な 限り撮像パラメータは統一した.  撮像に使用した各シーケンスは心電図同期 3D-FSE 差分法である.シーメンス社の装置では variable flip angleを再収束パルスに使用している sampling perfection with application optimized contrasts using different flip angle evolutions(SPACE)-NATIVE 法と従来の single-shot fast spin echo(SSFSE)法である half-Fourier acquisition single-shot turbo spin echo(HASTE)-NATIVE 法の両方 で撮像を行った.東芝社の装置では half-Fourier 法を

使った SSFSE 法である fast advanced spin echo(FASE) 法を応用した FBI 法を使用し撮像した.フィリップス社 の装置では volumetric isotropic T2-weighted acquisition

(VISTA)法を応用し,variable flip angle を再収束パル スに使用している TRANCE 法を使用し撮像した.  撮像は模擬血管部がピクセルに対して center alignment か shifted alignment になるかによって描出能への影響 を考慮し,撮像する際に field of view(FOV)をランダム に数 mm 動かし撮像中心座標を変えて 3 回行った.そ して差分画像の模擬血管全体が含まれる厚さで加算平 均画像を作成し,評価の比較には 3 枚の加算平均画像 から得られたそれぞれの値の平均値を用いた9) 1-3 各撮像シーケンスの流速による影響の検討 1-3-1 正常血管部の信号強度への影響  各画像で乱流などの影響の少ない模擬血管流入部に region of interest(ROI)を取り,シーケンスごとに流速に 対する相対信号強度変化のグラフを作成し,各撮像 シーケンスの流速変化に対する信号強度変化を検討し た.相対信号強度は最も信号強度が高い流速 0 cm/s 時 の信号強度を基準として以下の式で算出した.

Relative signal intensity= 各流速における信号強度 流速 0 cm/s 時の信号強度 1-3-2 狭窄部の信号強度への影響

 狭窄部の中心を通る長軸方向に平行なプロファイル カーブの狭窄部における最小値を A,乱流などの影響 の少ない流入部の平均値を B とし,以下の式から狭窄 指標(stenosis index; SI)を算出し,この値が実際の狭窄

FOV (mm) 380 380 380

Echo space (ms) 3.12/4.0 5.0 3.9

Echo train length 49/80 76 51

Fat saturation pulse STIR STIR off

Parallel imaging on off on

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率の値に近いほど狭窄描出能がよいと評価した9) SI=(1−A/B)×100(%)  撮像シーケンスごとの狭窄描出能は血流静止状態で ある 0 cm/s を拡張期相当流速として,30%狭窄血管と 70%狭窄血管における撮像シーケンスごとの流速変化 による SI のグラフで検討した.拡張期が血流静止状態 ではない場合の狭窄描出能は拡張期相当流速を 5 cm/s とし,同じ収縮期相当流速(25 cm/s)で拡張期相当流速 が 0 cm/s の場合の SI と比較し検討した. 2.結 果: 各撮像シーケンスの流速による影響の 検討 2-1 正常血管部の信号強度への影響  流速変化による正常血管部の信号強度変化のグラフ (Fig. 2)から,各シーケンスに共通して流速の増大に 伴って信号強度の低下がみられた.すべてのシーケン スで 20 cm/s 以上ではほぼ同程度に信号強度は低下し たが,HASTE-NATIVE 法および SPACE-NATIVE 法 では遅い流速の状態でも信号強度が低下する傾向を認 めた.実際に撮像した画像を Fig. 3 に示す.Variable

flip angleを使用していない HASTE-NATIVE 法および

FBI法において,狭窄遠位部にアーチファクトとして著 明な信号強度の低下部位が認められた. 2-2 狭窄部の信号強度への影響  Fig. 4 に拡張期相当:0 cm/s で,収縮期相当流速が 5 cm/sと 25 cm/s の場合の 30%狭窄血管における差分 画像を示す.5 cm/s では血管が全体的に細く狭窄を描 出できていないが,25 cm/s では拡張期相当と変わらな い血管像となり,狭窄が明瞭に描出された.Fig. 5 は拡 張期相当流速を 0 cm/s としたときの収縮期相当流速の

Fig. 2 The result: variation in signal intensity for change in flow velocity.

Fig. 3 Images of each sequence.

Fig. 4 Subtraction images acquired by different systolic velocity (30% stenosis).

変化による SI 変化を示したものである.流速が 20 cm/s までは速いほど SI は大きくなったが,それ以上の流速 があれば変わらなくなった.また,NATIVE 法の 2 法 では流速の遅い 10 cm/s から狭窄を描出していた.拡張 期相当:0 cm/s,収縮期相当:25 cm/s 時の SI の評価 結 果 を Fig. 6 に 示 す.30 % 狭 窄 血 管 で は FBI 法 と

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TRANCE法における狭窄部の描出が実際の狭窄率であ る 30%に近い値を示したが,撮像シーケンス間での差 は少なかった[Fig. 6(a)].70%狭窄血管ではいずれの 撮像シーケンスでも過大評価となったが,30%狭窄血 管の結果と同様に撮像シーケンス間での差は少なかった [Fig. 6(b)].Fig. 7 は拡張 期相当:5 cm/s,収 縮期相 当:25 cm/s 時の 30%狭窄血管における SI の評価結果 で,拡張期時はすべてのシーケンスで過大評価となった が,TRANCE 法が最も実際の狭窄率に近い値を示した. 3.考 察: 各撮像シーケンスの流速による影響の 検討 3-1 正常血管部の信号強度への影響  流速の増大に伴い信号強度が低下している原因とし ては二つの現象が考えられる.一つは high-velocity

signal lossと呼ばれる現象で,FSE 法を含む SE 法で認

められる10).SE 法は 90˚ 励起パルスと 180˚ 再収束パル スによってエコーを生み出すが,流速がある場合,180˚ 再収束パルスを受ける際には 90˚ 励起パルスを受けた プロトンがスライス面外へ流出し,逆にスライス面内に 90˚励起パルスを受けていないプロトンが流入するため に 180˚ 再収束パルスを受けてもエコーを生じない現象 である.もう一つは,流れによる位相シフトが考えられ (a) 30% stenosis (b) 70% stenosis a b a b

Fig. 6 The result: stenosis index (diastolic velocity: 0 cm/s, systolic velocity: 25 cm/s). (a) 30% stenosis

(b) 70% stenosis

Fig. 7 The result: stenosis index of 30% stenosis (diastolic velocity: 5 cm/s, systolic velocity: 25 cm/s).

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る.これは前述の 90˚ 励起パルスと 180˚ 再収束パルス の両方を受けてエコーが出るが,プロトンの移動によっ て位相がずれる現象である.これによってボクセル内の 位相の分散が起こり,信号強度が低下する.これら二 つの原因によって信号強度が低下あるいは消失し,造 影剤を使用しなくても差分法によって動脈の描出が可 能となる.正常な人体内では動脈中の流速は 25 cm/s 以上と考えられるので,すべてのシーケンスで十分な信 号強度の低下が得られると考えられる.  また撮像シーケンスごとに信号強度の低下の割合に 違いがみられたことに関して,high-velocity signal loss は撮像シーケンスの信号サンプリング時間の違いによっ て起こると考えられる.しかし位相シフトに関しては信 号サンプリング時間も影響を与えるが,それ以上に FSE 法のように 90˚ 励起パルス後に再収束パルスを続けて 次々と印加する場合,偶数番目のエコーでは流れによる 位相シフトが再収束(偶数番エコー再収束)するという 現象の影響が大きいと考える.本実験では再収束パル スはすべての撮像シーケンスで 120˚ に統一したが,再 収束パルスをかけるまでの傾斜磁場の配置や RF パル スの形状が装置メーカによって異なっており,これに よって位相の再収束に違いが起こったと考える.今回, 必ずしも信号サンプリング時間が長い撮像シーケンスの 信号強度の低下が大きくなっていないことを考慮する と,high-velocity signal loss よりも位相シフトによる信 号強度低下が大きく影響していると考えられる. 3-2 狭窄部の信号強度への影響  拡張期相当:0 cm/s,収縮期相当:5 cm/s 時におけ る差分画像の血管像が細く観察されたのは,差分画像 上で血管中心部の信号が残り,血管壁付近の信号強度 が低下しているためである.通常,明らかな乱流などの 影響がない場合には血管内は層流である.層流は血管 の中心で最も速く,辺縁ほど遅くなる11)ため,平均流速 を本実験のように収縮期相当:5 cm/s と遅くした場合に は血管中心部の流速だけが速くなり,信号強度が低下 し血管像が欠損する.また狭窄部では血管径が細くな るため流速が急に変化し,流れによる位相シフトが大き くなり信号強度の低下が生じる.この二つの現象がその 原因と考える(Fig. 4 上段中央).このとき,流速に対す る信号強度の低下が大きい NATIVE 法では収縮期相当 時の血管の信号強度が他のシーケンスと比べてより低 下したため,収縮期相当流速が 5 cm/s と遅くても実際 の狭窄率に近い値を示したと考える.  一方,収縮期相当:25 cm/s のときの差分画像が差分 前の拡張期相当画像と変わらずに観察されたのは, 3-1-1の理由によって流速が速いことで血管全体の信号 強度がなくなった(Fig. 4 下段中央)ためである.収縮期 相当:20 cm/s 以上のときの狭窄の描出は良好であった が SI が過大評価傾向となった.これらの収縮期相当時 にはすべてのシーケンスにおいて血管の信号強度が十 分に低下しており,拡張期相当時には流れがないた め,流れ以外の要素である signal to noise ratio(SNR)や ピクセルサイズなどによる空間分解能の差や使用した SIの式が信号強度による算出であるためノイズなどに よって生じた誤差が原因と考えた.  拡張期相当流速が静止状態の 0 cm/s であることが理 想的であるが,患者によっては静止状態になるとは限ら ないため拡張期相当流速が 5 cm/s の場合も検討した. 差分法にて狭窄を描出する際には,5 cm/s 程度のわず かな流速があった場合でも信号強度低下が小さいシー ケンスの方が撮像には有利と考えられる.今回の検討 では TRANCE 法および FBI 法で 5 cm/s での信号強度 低下が小さく,実際この 2 法がより実際に近い SI を示 した.またすべての撮像シーケンスで過大評価となった が,これは拡張期相当時に流れがあることで正常血管 部より流れが速くなる狭窄部で流れによる位相シフトが 増加し信号強度低下が著明となったためと考える12, 13) したがって,今回の検討では TRANCE 法および FBI 法が拡張期をうまく捉えられない患者における狭窄病 変の診断には有用と思われた.  FBI 法では収縮期での動脈の信号強度をより低下さ せるために,spoiled gradient pulse を傾斜磁場に印加す

るなどの工夫を行っている2, 5).一方で施設によっては 臨床で使用するときに流速補正を行って信号強度の低 下を防いでいる場合もある.特に 3.0 T の装置を使用す る場合は,流れのアーチファクトの影響が大きくなるこ とで信号強度が低下し,拡張期に流速補正をするなど の工夫が必要という報告がある9).これらのことはシー ケンスや装置の違いに応じた工夫をしなければならない ことを示している.  また,その他の考えられる工夫として本実験では拡 張期相当と収縮期相当の再収束パルスを同一に設定し たが,拡張期で大きい角度の再収束パルスを印加する ことで拡張期の血液信号を保ち,収縮期で小さい角度 の再収束パルスを印加することで収縮期の血液信号を 低下させることができる.このため,拡張期と収縮期で 異なる再収束パルスを組み合わせることで拡張期と収 縮期の信号差が大きくなり,狭窄部の描出能が向上す ると考えられる.しかし,この方法は背景信号強度の変 化が考えられるため差分処理で荷重係数をかけるなど の工夫も必要となる.

(7)

3-3 狭窄遠位部のアーチファクト  Fig. 8 は血管内の狭窄によって起こる血行力学的変化 の模式図である.この模式図にも示すように,血管狭窄 部から遠位では乱流が発生する.今回の実験におい て,狭窄遠位部に発生した信号低下部位(Fig. 3)は模式 図に示されている乱流発生部位に相当すると考えられ る.このような信号低下が発生する原因について次のよ うに考察した.  乱流の起こりやすさを示す指標としてレイノルズ数 (Reynold’s number; Re)が以下の式で表される.

Re= ρ×v×d η  ρ: 流 体 密 度(g/cm3),v: 流 速(cm/s),d: 血 管 径 (cm),η:流体の粘性率(g/cm·s)である.一般的に,こ のレイノルズ数が 2100 よりも大きくなるときに乱流が 起こるとされている10).したがって,上式より粘性率が 低いほど乱流は起こりやすい.今回使用した血液の T2 値と等価の擬似血液は蒸留水が溶媒であるため粘性率 が低く,上述の式から擬似血液のレイノルズ数は高い 値となるため本実験系では乱流が起こりやすい条件で あったといえる.一方,蒸留水よりも粘性の高い実際の 血液ではレイノルズ数が本実験で使用した擬似血液よ りも低いため,乱流の影響による信号低下が発生する 可能性は低くなると考えられた.また,本実験において variable flip angleを使用していない HASTE-NATIVE 法と FBI 法を用いた場合,信号低下する現象が顕著に 発生したことから推察すると信号収集時において流体 に対して variable flip angle の併用手法が何らかの影響 を及ぼすことが示唆された. 4.結 語  現在臨床において,非造影 MRA 法の 3D-FSE 差分 法がほとんどの装置メーカにおいて撮像できるように なった.しかし,装置メーカによって使用頻度に大きな 差がある.これは最適なデータ収集タイミングで得られ た画像における血管描出能で差が生じるのではなく, 撮像する患者に依存してうまく収集タイミングを捉えら れないときに血管描出に差が生じるためと考える.  最適なデータ収集タイミングで撮像したときには,撮 像シーケンス間で SI に大きな差は生じなかった.一 方,患者の状態などによって撮像タイミングがずれたと き,つまり本実験のように拡張期相当に 5 cm/s 程度の わずかな流れがある状態では,流速に対する信号強度 低下が小さいシーケンスで拡張期相当における信号強 度が保たれるため,狭窄をより実際に近い SI で描出で きた.本実験はファントムを使用した基礎的な検討によ るもので,各シーケンスの特性を完全に捉えられたわけ ではないが撮像シーケンスの流速に対する信号強度変 化の違いが血管の描出に差を生じさせる大きな因子で あることを示した.  臨床上,拡張期流速を 0 cm/s の静止状態として捉え ることは難しく,わずかな流れがあることも多い.この わずかな流れがあっても信号強度低下が起こらず,常 に正確な動脈像を捉えることが,どのような患者を撮っ ても安定した画像を提供できることにつながる. 謝 辞  本研究にご協力していただいた済生会熊本病院中央 放射線部,熊本中央病院放射線部,熊本医療センター 放射線科の皆さまに深く感謝申し上げます.  なお,本論文の要旨は日本放射線技術学会第 38 回 秋季学術大会(2010 年,仙台)にて報告した.

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Fig. 1  Vascular stenosis phantom.
Fig. 2  The result: variation in signal intensity for change in flow velocity.
Fig. 7  The result: stenosis index of 30% stenosis (diastolic  velocity: 5 cm/s, systolic velocity: 25 cm/s).
Fig. 8  Illustration of hemodynamics at outflow region.

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