東海大学大学院平成25年度博士論文
高機能プラスチックフィルムの
巻取装置の開発に関する研究
指導 橋本 巨 教授
東海大学大学院総合理工学研究科
総合理工学専攻
森川 亮
目 次
第 1 章 序論.......................................................1 1.1 本研究の背景.................................................1 1.2 巻取条件と内部応力の関係......................................7 1.3 巻取装置に関する諸問題.......................................11 1.3.1 巻取条件に関する従来特許...............................11 1.3.2 巻 取 ロールの欠 陥 の防 止に関 する従 来 特 許................. 12 1.4 巻取条件に関する従来の研究..................................14 1.4.1 巻 取 ロールの内 部 応 力 解 析 について...................... 15 1.4.2 巻 取 り直 後 に おける巻 取 条 件 に ついて.................... 16 1.4.3 環 境 温 度 の 経 時 変 化 に おける巻 取 条 件 について............ 17 1.5 本研究の目的と概要.........................................17 第 2 章 巻 取 ロ ー ル の 欠 陥 を 防 止 す る 理 論 モ デ ル の 提 示 .............. 20 2 . 1 緒 言 ............................................... 2 0 2.2 一 般 的 なウェブの巻 取 モデル............................... 22 2 . 2 . 1 巻 取 り 直 後 に お け る 巻 取 ロ ー ル の 巻 取 モ デ ル ............. 2 2 2 . 2 . 2 巻 取 り 後 の 熱 弾 性 特 性 を 考 慮 し た 巻 取 モ デ ル ............ 2 7 2 . 3 ウ ェ ブ 搬 送 の 安 定 化 を 目 的 と し た 巻 取 条 件 に 関 す る 検 討 ......... 3 0 2 . 4 巻 取 条 件 の 検 討 ....................................... 3 5 2 . 4 . 1 巻 取 り 直 後 に お け る 巻 取 条 件 の 最 適 化 ................. 3 5 2 . 4 . 2 巻 取 り 後 の 温 度 変 化 の 影 響 ......................... 4 3 2 . 4 . 3 環 境 温 度 の 経 時 変 化 を 考 慮 し た 巻 取 条 件 の 最 適 化 ........ 4 5 2 . 5 結 言 ............................................... 4 9 第 3 章 理 論 モ デ ル の 実 験 的 検 証 ............................... 5 0 3.1 緒 言 ................................................... 50 3.2 内 部 応 力 の 解 析 に用 いる物 性 値 の 測 定 ....................... 50 3 . 2 . 1 ウ ェ ブ の ヤ ン グ 率 に つ い て ............................. 5 0 3 . 2 .2 接 線 方 向 ヤ ン グ 率 の 測 定 .............................. 5 0 3 . 2 .3 半 径 方 向 ヤ ン グ 率 の 測 定 .............................. 5 2 3.2.4 ウェブのクリープ特 性 .................................. 54 3.3 巻取試験による内部応力理論モデルの実験的検証...................55 3.3.1 実験装置と方法.........................................553.3.2 加熱および冷却され場合における巻取ロールの内部応力.......57 3.4 環境温度の経時変化における巻取条件の最適化の実施例.........60 3.4.1 熱応力を考慮しない巻取条件における欠陥の発生............60 3.4.2 最 適 巻 取 条件 に期 待される効 果......................... 67 3.4.3 最適 巻取 条件 による実 験的 検証......................... 72 3 . 5 結 言 ................................................ 7 4 第 4 章 理論モデルの効果的な運用を目的とした巻取装置に関する検討...75 4 . 1 緒 言 ........................................... 7 5 4 . 2 ウ ェ ブ の 引 き 継 ぎ 方 法 に 関 す る 検 討 ..................... 7 6 4.2.1 ウェブ巻 き始 めの安 定 化 ............................... 76 4 . 2 . 2 粘 着 テ ー プ を 用 い な い ウ ェ ブ 引 き 継 ぎ 方 法 ............... 7 7 4.2.3 テープレス方 式 の実験 的 検 証........................... 77 4 . 3 巻 取 ロ ー ル へ の ウ ェ ブ 巻 き 付 け 時 に お け る ト ラ フ の 検 討 ......... 8 2 4 . 3 . 1 ト ラ フ の 軽 減 ................................... 8 2 4 . 3 . 2 ト ラ フ の 発 生 を 軽 減 す る た め の ア プ ロ ー チ ............... 8 4 4 . 3 . 3 ト ラ フ の 発 生 に 関 す る 実 験 的 検 証 ..................... 8 6 4 . 4 ニ ッ プ 部 に お け る 線 荷 重 の 均 一 化 ......................... 9 3 4.4.1 ニップローラの検討.....................................93 4.4.2 ニップ線荷重の分布...................................94 4.5 巻 取長 さの変更を考慮 した巻 取条 件 の検 討................... 101 4.5.1 巻取長さの変更に関する検討...........................101 4.5.2 対象とする巻取長さ...................................102 4.5.3 巻取長さの変更を考慮した巻取条件.....................103 4.5.4 最適化された巻取条件の解析例...........................105 4.6 結言.....................................................110 第 5 章 巻取装置への展開........................................111 5.1 緒言...................................................111 5.2 最 適 化 機 能 の実 装 ...................................... 111 5 .3 最 適 巻 取 条 件 の 設 定 方 法 ............................... 1 14 5.4 ウェブ引き継ぎ時におけるウェブ蛇行量の検証...................116 5.5 巻取直後における巻取条件の最適化の実施例....................118 5.5.1 従 来 の巻 取 条 件 における欠 陥 の発 生 .................... 118 5.5.2 最適巻取条件に期待される効果.........................120 5.5.3 最適 巻取 条件 による実 験的 検証........................ 123 5.6 環境温度の経時変化における巻取条件の最適化の実施例.........125
5.6.1 エージング処理を考慮した実施例........................125 5.6.2 最 適 巻 取 条 件 による実 験 的 検 証 ....................... 128 5.7 新型生産機への展開......................................129 5.7.1 新型生産機の概要....................................129 5.7.2 新型生産機に関わる知的財産権........................132 5.8 結言..................................................132 第 6 章 結 論 ............................................... 133 謝 辞 .................................................. 1 3 6 記 号 .................................................. 1 3 7 文 献 ................................................... 1 4 0
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-第1章 序 論
1.1 本研究の背景
我が国は,成長戦略を社会全体で再構築すべき時期に直面している.日本の経済成長 はバブル崩壊の後,約 20 年にわたり極めて低い水準にとどまり,その間,企業収益は圧迫 され,貿易収支にも悪影響が及んでいる.過去 10 年間,日本の実質成長率は平均で 1%を 下回り,OECD 諸国の中で最低の水準にとどまった1).また,2011 年には未曾有の東北地 方太平洋沖地震に遭遇し,深刻なエネルギー制約にも直面した.こうした中で,強い経済 を目指した「日本再生戦略」2)が政府より示され,その取り組みを震災の復興につなげること により,さらに活力にあふれる国家として再生する戦略が示されている.この戦略の基本方 針の一つとして「グリーン・イノベーション」2),3)が挙げられており,クリーンエネルギーへの構 造転換を強力に進める成長戦略が明確に打ち出されている.現在,電源に占める再生可 能エネルギーは約 10%であるが,これを今後 20 年弱の間に 25%以上にまで拡大し,産業活 動によるエネルギー消費量を今よりも 20%程度削減することを目標としている.こういった背 景からエネルギーに関する技術的アプローチはいずれの分野においても,我が国の経済 発展を牽引していく重要な要素であり,とりわけ,次世代自動車(電気自動車)などのリチウ ムイオン電池の高性能化が重点施策として設定されている.リチウムイオン電池はこれまで 携帯電話やノート PC などの小型の携帯端末器に使用され,世界的な市場を形成してきた. さらに近年においては,リチウムイオン電池を搭載した次世代自動車の市場が立ち上がり つつあり,自動車 1 台に搭載されるリチウムイオン電池の量が携帯端末に搭載される量より も多く,その注目度合いが必然的に高まっている4),5)(図 1-1).このように,新たな市場が形 成されるその一方で,近年の日本経済を牽引してきた,例えば,小型携帯端末やテレビに 代表される液晶ディスプレイ(LCD)などの製造に関する業界の淘汰・再編は世界規模で 進行し,円高の影響にも起因して海外メーカとの市場競争が激しくなっている(図 1-2).当 然ながら,リチウムイオン電池のような新たな市場でも海外メーカの躍進が続き、価格競争 のみならず技術力の面でも脅威になりつつある 6).そのため,ビジネスとして成功するため には,これまで以上のコストダウンもしくは更なる高付加価値が必須である.そして,近年の こういった新しいタイプのデバイスでは,薄くて柔軟であるプラスチックフィルムが様々な用 途に広く利用されており,それらデバイスの性能とコストを決定する重要なキーマテリアルと なっている(図 1-3).これは,プラスチックフィルムは柔軟であり,重量が軽いために大量生 産に適しており,製造工程や輸送工程,一般消費者が利用する上での省エネルギー化と いう観点からしても利点を有しているからである.さらに,プラスチックフィルムはウェットコー ティングや蒸着,スパッタリングなどの表面処理 7)-9)を施すことによって防湿や遮光,光学 的・電気的特性などの様々な付加価値を付与することが可能だからである(図 1-4).例え ば,小型携帯端末の薄型化に貢献している ITO フィルムや液晶テレビの大型化および薄-
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- 型化に寄与した PVA フィルム,TAC フィルムは良く知られるところである10).今後は電子ペ ーパのようなフレキシブルディスプレイに代表される柔軟なデバイスの開発も進んでおり,部 品としてプラスチックフィルムが担う役割は大きい.このように,プラスチックフィルムは様々 な製造プロセスにおいて供されているが,一般にプラスチックフィルムは,連続的な媒体とし て多数のガイドローラと呼ばれるローラにより連続的に搬送され最終工程において,巻取装 置により巻き取られる(図 1-5).その後,巻き取られたプラスチックフィルムはデバイスに見 合った適当なサイズに切断され最終製品として出荷される.したがって,最終製品の品質 を保つには,部材として供給される巻取ロールの欠陥を極力防止する必要がある.巻取り 時にはプラスチックフィルムに巻取張力を与え,ニップローラと呼ばれる押えローラでニップ 荷重を与えながら巻き芯に巻き取る.主な巻取条件として作用するこれら張力とニップ荷重 は巻取ロールの内部応力と密接に関連している 11).なお,ニップ荷重とは巻き取られるウェ ブを押えローラにより押さえつける際の線荷重であり,これによって巻取ロールに巻き込ま れる空気量を制限し,内部応力を調整する重要な役割を果たしている.したがって,巻取 条件が不適切な場合には,ロールにスリップや型崩れ,しわなどが発生するため最終的な 品質が著しく低下し,大きな経済的損失につながる.そのため,プラスチックフィルムの品 質を保つ上で巻取時の不具合を防止することが極めて重要である.このような柔軟な連続 媒体であるプラスチックフィルム(以下ウェブと称す)の性能を損なうことなく搬送する技術の ことを「ウェブハンドリング技術」と呼び,学術的な研究が進められている 12),13).しかしながら, ウェブハンドリング技術の学術的な研究に関する歴史はまだ浅く,1980 年代に,オクラホマ 州立大学がウェブハンドリングリサーチセンター(Web Handling Research Center)を設立し, 第 1 回国際ウェブハンドリング学会が開催されてから 30 年ほどしか経過していない.日本に おける学術的研究も同様であり,1990 年代に,精密工学会の産学協同研究協議会に「柔 軟媒体搬送技術と学理に関する研究協力分科会」が設置され,企業や大学の研究者の 積極的な情報交換と共同研究の場が提供されてから 20 年ほどしか経過していない 14).近 年においては,ウェブ上に電子印刷やコーティングを施して高機能化を図る技術(プリンテ ィッド・エレクトロニクス技術)の確立を目指して東海大学橋本教授の研究成果 15)を中心に 研究が活発になっているものの,ウェブハンドリング技術に関する決定論的な方法は確立 されておらず装置メーカや操作者による経験や勘に基づいて製造条件を確立している.巻 取工程に関しては,巻取駆動方式による装置上での制約や生産速度,あるいは巻き取り 後における環境温度の変化を考慮した上で巻取条件を適切に設定する必要がある.また, ウェブをロール状に巻き取ることから,フィルム層間における空気巻込み量に起因する巻取 ロールの内部応力の変化も考慮しなければならない.こういった状況の中で,操作者は巻 取ロール内部の応力状態を適切に保つために過去の不具合や経験的な情報に基づき解 決を図っている.しかしながら,益々進化するデバイスに併せてウェブの品質要求も高くな ってきており,従来手法による対策では技術的問題に対処することは困難になってきてい る.また同時に,ウェブを搬送する製造装置にも同様の要求が突き付けられ,さらなる高性 能化とユーザの負担を軽減する装置が求められている.しかしながら,従来の経験的な技-
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- 術の延長では,スリップやしわなどの欠陥が生じない巻取条件や巻取装置を確立すること は難しく,操作者の感覚に頼る部分も多いため安定した巻取品質を求めることは極めて困 難な状況にある.そのため,このような状況に対処するためには定量的な評価に基づいた ウェブハンドリング技術の導入が必要不可欠である.生産される最終製品にもよるが,巻取 ロールに関する欠損は,実に生産量の 5%~80%にも相当するという.とりわけ,磁気テープ や液晶フィルムなどの高機能材料においては,高品質な部材を要求されることから検査の 基準も厳しく,製造コストも高価であることから経済的損失は大きい(図 1-6).すなわち,巻Fig.1-1 Trend and projections of global market in lithium ion secondary batteries
Lithium ion secondary battery
(a) Year on year trend in global market size
(2012 矢野経済研究所集計5))
(b) Year on year trend in separator market
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-取ロールの欠陥の防止が日本メーカの価格競争力を向上させ,原材料の消費という環境 問題の観点においても重要な技術となる.そこで本論文では,学術的なバックグラウンドを 基礎として,理論モデルをソフト化し,実際の巻取装置に具体的に組み込むことにより欠陥 を防止する巻取装置の開発を目的とした.
(a) Enterprises’ shares of polarizing plates used in smartphones
(2012 矢野経済研究所集計データによる5))
Fig.1-2 Enterprises’ shares regarding electronic devices
(b) Enterprises’ shares in domestic smartphone market
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-Fig.1-3 Products composed of plastic film
(a) Lithium ion secondary battery
(b) Liquid crystal display
Reflection prevention film
Polarization
Retardation film Color filter
Glass Electrode
Liquid crystalline layer Spacer Electrode Glass Orientation Retardation film Polarization Reflection film Light source Diffusion plate Prism sheet Luminace improved film
Laminate film
Cathode material
Separator
Anode material
Electrolytic liquid
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-Fig.1-4 Manufacture of lithium ion secondary battery
Coating deviceCoating device
(b) Manufacture of lithium ion secondary battery
(a) Manufacture of material for lithium ion secondary battery
Separator Anode Separator Cathode
Core Separator Anode Separator Cathode Electrode
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-1.2 巻取条件と内部応力の関係
現在,巻取装置として実用に供されている巻取駆動方式は概ね(1)中心駆動巻取,(2) 表面駆動巻取,(3)併用駆動巻取の 3 種類に分類され(図 1-7),空気の透気性が低いウ ェブに関しては中心駆動巻取りが多く用いられている13),16).図 1-8 は一般的な中心駆動方 式を示しており,ウェブは張力とニップ荷重を掛けた状態で巻き取られる.これは,ウェブ層 間の摩擦力が低いことに起因する搬送中の蛇行やスリップ,あるいは外的な力が巻取ロー ルに加わることによって発生するロール形状の変形(図 1-9)を防止することを目的としてい る.張力が弱い場合には,ウェブ層間の形成される空気層の影響によりウェブ間の摩擦係 数が大きく低下し,かつウェブ層間の押し付け力として作用する半径方向応力も総じて小¥5,000,000,000/month × 5%(Loss)
※= ¥250,000,000/month(Loss)
Fig.1-6 Economical loss by defect of wound roll
Trial product ¥500/m2~
High functionalized ¥100/m2~¥500/m2 Medicine ¥100/m2~¥500/m2
Soft packaging ¥50/m2~¥100/m2
Approximate value of web
¥5,000,000,000/month
※Sales/month
Loss
= ¥3,000,000,000/year(Loss)
※
User provision information
Fig.1-5 Production apparatus
Sales
-
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- さいため「テレスコープ」あるいは「巻きズレ」と呼ばれるスリップが生じやすくなる.したがっ て,スリップが発生しないような張力とニップ荷重が経験的に与えられている.当然ながら, ウェブの破断やクリープ,あるいは塗工された積層膜に対する破壊応力を考慮した場合に は,製品素材であるウェブには張力やニップローラの押し付け力などの負荷が極力掛から ない状態が好ましい.しかしながら,巻取ロールの取り扱い易さを考慮した場合には,いわ ゆる「適度な巻き固さ」を得る必要があり,ウェブ層間の摩擦力の低下を防止する適切な巻 取張力が必要である.一方,ウェブに張力を大きく掛けた状態で巻き取った場合には,ウェ ブ層間の押し付け力が強くなりすぎるため「菊模様」あるいは「スターディフェクト」と呼ばれ るしわが発生する.代表的な例としては図 1-10 に示すように,巻き芯の内層付近にしわが 発生する現象である.これは,順次外層から積層されるウェブによって巻き芯付近の内部 層の接線方向応力が負の応力に転ずるためである.図 1-11 は接線方向応力が負に転ず る概念図を示している.同図に示すように新たに巻き始めたウェブの押し付けによりその内 側の層は巻き芯に向かって圧迫されるため各層のウェブは張力とひずみを減少させながら, 外層から新たに加えられる力と平衡状態を保とうとする.そのため,巻き始めは引張り応力 が作用しているものの,外層から新たに積層されるウェブによって接線方向の応力が減少 し,ついには圧縮方向へ転ずることになる.この状態がいわゆる「巻き締り」と呼ばれるもの で,巻取ロールと巻き芯の径比(巻取径/巻き芯径)が大きくなると発生しやすいことが知ら れている 17).また,巻取り時の設定パラメータのうち巻取張力についで重要なニップ荷重に ついても条件が不適切であれば同様の欠陥が発生する.ニップ荷重は巻取ロールに巻き 込まれる空気量を制限し,内部応力を調整する重要な役割を果たしている.大気中で巻き 取られたロールの層間には薄い空気層が何層にもわたり形成されており,その空気の量が 巻取ロールの剛性に大きく影響する.したがって,巻き込み空気量が少ない場合には,巻 取ロールの剛性が高くなるため巻きが固くなり,巻き込み空気量が多い場合には,巻きが 柔らかくなる.このように,巻取ロールに発生するしわやスリップなどの欠陥はロール内部の 応力状態と密接に関連しており,不適切な巻取条件が不具合の主な原因であることが知ら れている18).Fig.1-7 Classes of winders
(a)Center
Nip Wound roll
Core Motor Nip load (b)Surface (c)Combination Nip load Motor
Nip Wound roll
Core Nip load
Motor Motor
Core
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-Fig.1-9 Occurring of slippage
※※Occurring with our company’s machinery
Slippage
Shape loss
Fig.1-8 Outline of center driven winding
(b) Winding condition
(a) Outline of winding method
Winding condition Tension Tw Nip load N Air entrainment Wound roll Nip roll Web
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-Fig.1-11 Compression by tangential stress
Core Core First layer Second layer Tangential stress
The core is a base that supports the web, and layers of web are stacked over it one after another.
Radial stress that attempts to push inward the core’s outer
diameter acts through the first layer
Wrinkles arise from the compressive action in the tangential direction
The radial pressure that acts through the second layer has the effect of reducing the first layer’s tension and strain.
First layer
Fig.1-10 Wrinkles near the winding core
※ WrinkleCore
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-1.3 巻取装置に関する諸問題
1.3.1 巻取条件に関する従来特許
ウェブの多様化・多機能化や,より高速・高精度な巻き取りが求められるなど,近年になり その難易度が高くなっている.巻取条件が不適切な場合には巻取ロールにスリップや型崩 れ,しわなどの不具合が発生する.これは巻取ロールに発生する不具合が,ロール内部の 応力状態と密接に関連しているためである.そのため,巻取条件の設定に関する問題が重 要になり,近年になり巻取条件の設定に関する特許 19)-31)が出願され始めている.巻取条 件の改善に向けた課題は,大きくは操作者の自助努力によって解決可能なものと外部条 件によって左右されるものに分けられる(図 1-12).前者の代表が巻取り時における張力とニ ップ荷重であり,経験や実測データを参考に各社が取り組みを行っている.一方,後者は ウェブ材質やウェブ幅,あるいは巻き芯材質や巻取速度などで,顧客先の要求仕様や経 済的な制約などに大きな影響を受ける.そのため,限られた設定範囲の中で操作者は適 切な張力とニップ荷重を設定せざるを得ない状況にある.また,総じて学術的なバックグラ ウンドの乏しさから度重なる失敗を元に経験的な設定条件を構築するため,欠陥が発生し た場合のみにおける対処が主となり巻取条件単体では理論的な手法に基づく特許は出願 されていない. 巻取条件を定量的に設定するものとしては,巻取径に応じて張力やニップ荷重を増減 する方法 32)-35),巻出張力を基準に巻取張力を増減する方法 36)などが考案されている.し かしながら,広報に開示された方法では,ウェブの種類や厚さ,巻き芯の材質の条件の範 囲が限定的であるため,その適用範囲が狭いという問題がある.また,適切な張力を設定 するためにあらかじめデータを取得し,巻取条件とマッチングさせるものとして,サンプルフ ィルムの伸びと張力の相関関係を利用し張力を算出する方法 37),一定の張力で巻き取っ た巻取ロールのロール形状を測定し張力に反映する方法 38)などが考案されている.これら の方法によれば適切な巻取条件を設定できるが,あらかじめ実際のサンプルで計測を行う 必要が生じ,予定された巻取径が変更される場合や巻き芯やニップローラなどの機械的条 件が変わった場合には即座に対応できない問題が生じる.一方,学術的なバックグラウンド に基づいて巻取条件を設定するものとしては,Altman の巻取方程式を利用する方法39)もあ るが,巻取半径方向の応力に限定しており,しわの発生に関する接線方向応力については 言及しておらず巻取ロールの欠陥を理論的に予測し,防止することはできない.また,巻取 ロールの接線方向応力を予測できる解析プログラムを提供する特許 40)もあるが,内部応力 の提示にとどまっており,製造プロセスにおける具体的な巻取条件を提供するものではな い.そのため,巻取品質を決定する巻取条件を簡便かつ理論的に決定することができない という課題が残されている.したがって,様々なウェブの特性や装置の特性の違いに着目し, スリップとしわの両方を同時に解消できる適用範囲の広い巻取条件を理論的に提供するこ とが重要になる.-
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-1.3.2 巻取ロールの欠陥の防止に関する従来特許
巻取ロールの欠陥の防止に関する特許は 1980 年代から今日まで 8000 件以上出願され ている(図 1-13).巻取に関する学術的なアプローチは少ないものの我々の身の回りで巻 き取られて利用されている分野は意外に広く様々な工夫が取り組まれている.古くは製紙 業界に始まり,繊維,包装,鋼板,炭素複合材,光学系など薄い柔軟媒体が巻き取られる 範囲は広い.そのため,巻取方式として多くの方法が提案され利用されている.その中でも, とりわけ包装用途の包装材料や光学用途などの機能性材料の巻取方式としては 2 軸ター レット方式かつ中心駆動巻取方式が一般に多く用いられる.2 軸ターレット方式(図 1-14)と は,2 つの軸を交互に駆動させることによってウェブを巻き取ることができる方式である.そ のため,ウェブの搬送を停止させることなく連続的に生産できることから経済性が高いという 大きな特徴を持つ.また,中心駆動方式は,モータにより巻取ロールの中心軸を駆動する ものであり,この方式はスリップし易いウェブや巻取り径が 2m 未満のウェブを巻き取る場合 に広く用いられている.そして,そのようなウェブの代表例が「プラスチックフィルム」である. 当然のことながらプラスチックフィルムも様々な種類や厚さ,幅などがあるが総じて数ミクロン から厚くても数百ミクロンという厚さである.そのため,剛性が低くキズやしわが入り易いとい う欠点があることから,ウェブの損傷を防止する方法が重要となる.したがって,従来から巻 き芯のたわみ量を予め考慮する方法 41)やニップローラ(あるいはタッチローラと呼ばれる)を 複数個設ける方法 42),ニップローラの振動を防止する方法 43)-45)など多種多様なものが考 案されている.これは,ウェブを巻き取る際の張力やニップ荷重などの巻取条件以外の要 因,例えば機械の精度や構造的な制約などによりウェブにダメージを与える可能性がある からである.したがって,張力やニップ荷重などの巻取条件のみならず,既存の巻取方法 においてもウェブに必要な品質を考慮した上で適切な巻取方法を提供する必要がある.た だし,これら巻取方法に関する機械的な構造や電気的な制御に関する仕様は,要求されFig.1-12 Main winding conditions that affect quality of wound roll
Conditions that are alterable
・Winding tension
・Nip load
Main winding conditions that affect quality of wound roll
Conditions that are
problematic to alter
・Web width
・Winding length
・Web thickness
・Young’s modulus of web
・Shape of the core
※・Young’s modulus of core
※・Winding velocity
※ ※Generally held to be fixed
values due to economic and
other process constrains
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- る品質,あるいは装置の製造コストに左右されるものであることから,都度個別に検討され ている.ところで,従来,ウェブを巻き芯に巻き取る場合,巻取張力は経験的に決定してお り,その巻取張力の主な張力パターンとしては巻取径の増大に伴って減少するテーパ張力 (図 1-15)が多く用いられている.張力の低減方法として,このように直線的に沿う方法では, 巻き終り時の張力は巻き始めの張力に比較して低い値となる.そのため,搬送中のウェブ を新しい巻取巻き芯に切り替える場合(以後この作業を”ウェブ引き継ぎ”と呼ぶ)にはウェ ブの張力を低張力から高張力に急激に切り替える作業を伴う.この場合,一般的な 2 軸タ ーレット方式ではウェブに過大な付加がかかり,ウェブの搬送が不安定になるという問題が ある.こういった問題に対して,巻取装置における対策として,ニップローラの接圧方式を変 更することによるウェブ引き継ぎ時における張力変動の抑制 46),あるいは特別な検出装置 の追加によって張力の応答性を改善する方法 47)が出願されている.しかしながら,これらの 特許は張力の変動に対応することが基本であり,その変動の原因となり得る張力差を根本 的に抑えるものではない.また,特別な張力検出器などの装置の追加が必要である.従来 から経験的に得られた巻取条件によれば,巻取径の増大に伴って張力が減少するテーパ 張力方式が良いとされている.一方,ウェブを引き継ぐ場合には,巻初めと巻終わりの張力 差による張力変動などが巻き姿に悪影響を及ぼすという一因となり,巻き姿を改善するため の何かしらの特別な装置の追加や巻取方式の変更が必要となる.Fig.1-13 Year on year trend in published patents
1975 1985 1989 1998 2008 2012 S50 S60 H1 H10 H20 H24 Method of indicating tension and nip load Example)特開S58‐162458 Example)特開H09‐40247 Example)特開H10‐67449 Example)特開2002‐114418 Example)特開H09‐52285 Example)特開2011‐178251 Method of storing wound rolls Method of setting tension and nip load in a particular range Method of controlling amount of air entrained Method of designing core Method of designing web
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-1.4 巻取条件に関する従来の研究
巻取条件は巻取ロールの性質を決定する重要な因子の一つである.巻取ロールにおけ るしわやスリップは巻取ロールの内部応力と強い因果関係にある.そのため,ウェブの巻取 条件と巻取ロールの内部応力の関係についてはさまざまな研究が行われてきた.巻取ロー ルは薄いウェブを何層にもわたって巻き付け,その際の巻取条件,すなわち張力とニップFig.1-14 2-arm turret
Wound roll
50
100
150
200
250
300
0
100
200
300
Fig.1-15 Summary of the taper tension
The difference of tension
Radial position [mm]
W
inding t
e
nsion [N/m]
Taper tension
Initial tension
-
15
- 荷重に起因する径方向への圧縮応力によって巻取ロールの内部応力の状態が逐次変化 するという特徴的なプロファイルを示す.そのため,巻取条件に起因した巻取ロールの内部 応力を見積もるための理論モデルについては近年において様々な研究が行われている. 以下では,全般的な巻取ロールの内部応力解析と巻取条件について記述するが,どれも 巻取ロールの最適な巻取条件を導出するに際して基礎となりうるものばかりである.1.4.1 巻取ロールの内部応力解析について
巻取ロールの内部応力の解析に関する歴史はまだ浅く,Gutterman48)と Catlow49)らによ るロール内部の応力解析モデルが提示されてから 50 年ほどしか経過していない.継続的 に現在までいくつかのモデルが報告 50)-52)されているが,その中でも Altman53) や Hakiel54) が提示した解析モデルが今日の巻取理論の基本を成している.これは,主に欧米の写真 フィルムメーカや磁気テープメーカを中心として巻取に関する理論開発が行われてきたこと に由来する.1968 年に Altman はロール内部のヤング率の異方性を考慮して,巻取ロール を厚肉円筒とみなしたときの内部応力の公式を与えた.Altman の公式は一般的な積分公 式で計算できるまでに簡単化されており巻取ロールの内部応力の傾向や物性値などのパ ラメータがどのような影響を与えるかを調査する場合には大いに有効であった.そのため, Altman の公式は実際の製造現場においても,巻取ロールの欠陥を抑制する上での有効 なツールとして利用されている.しかしながら,Altman の公式はロール内部のヤング率の異 方性を考慮しているものの巻き取られたウェブ間に介在する空気層によるヤング率への影 響や半径方向ヤング率の非線形性などを考慮していない.そのため,定性的な予測は可 能であったものの実測値と大きく異なり定量的な予測としては不十分なモデルであった. 1987 年に Hakiel は半径方向におけるヤング率の非線形性を考慮した非線形巻取理論を 定式化し,その数値解析方法を導いた.実際の巻取ロールでは薄いウェブを積み重ねるた めに半径方向ヤング率は層間圧力に大きく依存する.この半径方向ヤング率の非線形性 について 1981 年に Pfeiffer55)は薄いウェブを積み重ねた場合の半径方向ヤング率を実験 的に導出する手法を示している.この手法は K2ファクターテストと呼ばれ,ウェブ素材を数 百枚以上積層させ,圧縮試験により応力とひずみの関係を測定することで半径方向ヤング 率が得られることを示した.その測定により得られる層間圧力と半径方向ヤング率の関係は 概ね非線形であり,今日の巻取モデルと呼ばれる Hakiel モデルはこの実験的手法に基づ くことで巻取ロールの内部応力の非線形性を扱うことができる.実際,このモデルは古くから 新聞紙など通気性が良く空気の影響が無視できる紙類に対してはその有効性が確認され ている.これは,Pfeiffer による K2 ファクターテストはウェブ層間に空気を含まない環境下で の圧縮試験であるため実際の巻取ロールの状況と一致しているからである.しかしながら, プラスチックフィルムを巻き取る場合には空気を透過しないためにウェブに巻き込まれた空 気が弾性体として半径方向ヤング率に大きく影響し,理論的に求められた内部応力と実際 の内部応力が一致しない.これは,ウェブに巻き込まれた空気は大気側へ即座に放出され ることなく,巻取ロール内に留まっているためであり,その巻き込まれた実際の空気量につ-
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- いては Taylor と Good56)により実験的に示されており理論モデルとの整合性を示している. なお,一般的に巻き込まれる空気量は,ニップローラにより調整される.このニップローラに よる空気の巻き込み量に関して,Hamrock ら57)あるいは Chang ら58)はニップ部における空 気の圧縮性およびニップローラの弾性変形を考慮し,弾性流体潤滑理論を取り入れたモ デルへと拡張した.さらに佐々木ら59),60)はその考え方を発展させ,ニップローラの表面形状 に対応したより緻密な空気巻き込み量の式を提唱している.このような空気巻き込み量の 問題を定式化できるようになるにつれ谷本ら 61)は,半径方向等価ヤング率として空気の巻 き込み量を考慮し,巻取ロールの剛性変化を含めた巻取方程式を導出している.さらに, 2010 年に神田62)らは巻き込み空気がロール端部から流出する効果を考慮した巻取ロール の内部応力状態の理論予測モデルを提示し,理論予測モデルのウェブの幅に対する適用 範囲を明らかにした.このように空気を巻き込んだ巻取ロールの半径方向等価ヤング率や ロール端部からの空気の流出量が考慮されることによりロールの内部応力状態を把握する 精度も次第に改善された.しかし,これらの研究ではロールの内部応力に対する解析モデ ルの適用は解決しているが,生産に必要とされる巻取条件への展開がなされていないとい う問題が残されていた.1.4.2 巻取り直後における巻取条件について
巻取条件は巻取ロールの内部応力と密接な関係にある.そのため,巻取条件は巻取ロ ールの品質を決定する上で重要な因子の一つである.巻取ロールの内部応力はウェブの 物性値やウェブの幅,あるいは,運転速度が因子として絡んでいるが,それらの多くは最終 製品の仕様や客先の要求仕様によるため変更することは難しい.そのため,機械の操作者 が変更できる因子は意外に少なく,とりわけ張力とニップ荷重の調整により巻取ロールの欠 陥を防止する対応策を検討することになる.こういった問題に対する対策手法の要望は従 来からあるものの巻取ロールの内部応力に関する学術的バックグラウンドが少ないことから 欠 陥 を 防 止 す る 巻 取 条 件 に 対 す る 研 究 も 皆 無 に 等 し い . わ ず か な が ら , 2007 年 に M.Boutaous ら63)により,テーパ張力方式を利用すると仮定した上で,しきい値として設定し た内部応力を満足するように巻取張力の範囲を決定する研究がなされている.また,同年 C.W.Lee ら 64)により,ヘビサイド関数を用いたテーパ張力方式を基本とし,巻取中のウェブ の蛇行を考慮した上で巻取欠陥を防止する方法が提案されている.しかしながら,いずれ もテーパ張力方式に限定したものであり,ウェブを巻き取る際に重要な巻き込み空気量を 制限するニップ荷重に関しては検討がなされていない.さらに巻取り直後のスリップ(いわゆ る巻きズレ)に対する対策は考慮されていないため,スリップの原因となる輸送などによる何 かしらの外力が加わるような実際の生産現場への適用は難しい.こういった問題に対して, 橋本ら 65)はトライボロジーの観点から考察し,フォイル軸受理論 66)を展開してウェブ層間に おけるロール内部応力とスリップの関連を導き,ウェブ層間の摩擦係数を極めて簡便でか つ適用性の高い公式としてまとめた.さらに,ロール内部応力としわの関係を考慮した上で-
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- 最適化問題として巻取り直後における巻取ロールのしわとスリップを同時に防止する巻取 条件を提示67)68)し,実験によりその有効性を示している.最適化された張力によれば,簡単 に所望した品質の巻取ロールを得ることができる.しかし,これらの研究では巻取り直後に おける巻取ロール内部におけるしわとスリップの問題は解決しているが,環境温度の変化 における内部応力の変化が考慮されていないという問題が残されていた.さらに,巻取り時 の設定パラメータのうち巻取張力に次いで重要なニップ荷重についての検討はなされてい ないため,このような手法を空気の透気性が低いプラスチックフィルムに展開することができ ないという課題が残されている.1.4.3 環境温度の経時変化における巻取条件について
一般に巻き取られた巻取ロールは様々な熱的環境の変化にさらされる.製造工程にお けるエージング過程,物流工程における出荷・保管による季節的な環境の温度変化などで ある.そのため,環境温度の変化の特徴としては,その都度の状況によって加熱あるいは 冷却されることにある.古くから巻取ロールを扱ってきた生産者は熱的環境によってしわや スリップなどの欠陥が発生し,ウェブの品質に悪影響を及ぼすことを把握していた 69)70).し かしながら,熱的環境に起因する内部応力の変化は直接数値的に評価する適当な手法も 見当たらず,また緩やかに変化することも多いため生産コストの都合から実験的手法による 解決も難しいという問題が残されていた.このような状況を踏まえて,1997 年に Qualls ら71) は熱弾性理論に基づく巻取方程式を用いてロール内の温度が均一に分布し,時間的に 変化しないと仮定したときの内部応力を計算し,実験結果との比較を行っている.これに対 して Lei ら72)はロール内部の温度が時間的に変化する場合のモデルを提案しているが,単 なるモデルの提示に終始しており,内部応力の具体的な計算や実験的検証はなされてい ない.そこで神田ら 73)はその考え方を発展させ熱伝導に及ぼす巻き込み空気の影響を考 慮した非定常状態の巻取りロールの内部応力に関する理論予測モデルを提案している. この理論予測モデルは実験的検証によって加熱された環境温度の変化に対して精度良く 一致することが示されている.さらに,ウェブのクリープコンプライアンスの応力・温度依存性 を詳細に調査した上で解析対象を粘弾性問題に拡張し,任意の温度における粘弾性を考 慮した上で巻取りロールの内部応力を解析する手法を提案している 74)75).しかしながら,こ れらの研究では内部応力の状態を予測することに着目されており,実際の熱的環境の影 響を考慮した上で巻取条件を決定することができないという問題が残されていた.1.5 本研究の目的と概要
今後の成長が期待されるウェブハンドリング市場であり,案件数の増加や大型化は企業 にとっては望ましいことではあるが,良質な巻取ロールの安定供給を継続するためには相 応の対策が必要となる.また,品質や納期などを含め,委託側の要求は高まっているため, 更なる巻取ロールの欠陥に対する対策が大きな課題となっている.実機での巻取試験は,-
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- 試験コストが高価な割に得られる情報量が少なく,内部応力の計測では作業者の巻き込ま れに対する安全性の確保やクリーンルームの清浄度の維持管理などを考え合わせると,実 験的手法によって巻取条件を決定する取り組みは実際の製造現場において困難を極める. そのため,学術的なバックグランドを背景にして,最適な巻取条件を簡便に決定することが 必要である.一方,理論的手法は非線形の微分方程式を含んでいるために式が複雑であ り,実際の製造現場で簡単に用いることが難しい.したがって少なくとも,製造プロセスを妨 げない程度の設定手法の登場が望まれる.例えば,広く使用されているテーパ張力方式な どは,初期張力とテーパ率の設定のみであり一般的な関数電卓で計算でき,生産情報とし て簡単に管理されていることからも明らかである.さらに,巻取ロールの品質はウェブを引き 継ぐ際のウェブ引き継ぎ条件などにも影響されることから,巻取装置の開発には,巻取装 置の特性や生産時における制約条件を鑑みた上で,しわやスリップなどの巻取の不具合を 最小限に防止する巻取条件を設定できることが重要となる. 本論文では,学術的なバックグラウンドを基礎として,最適巻取手法を拡張した上でこれ をソフト化し,実際の巻取装置に具体的に組み込むことにより欠陥を防止する機能を持た せることを目的としている.なお,最適巻取手法を巻取装置に組み込むに際して,プラスチ ックフィルムの巻取で一般的に用いられている 2 軸ターレット方式かつ中心駆動巻取方式 を対象とし,ウェブ幅は,販売実績が多い 1m 以上 2m 未満とした. 第1章は序論であり,主に生産者の立場から考察し,巻取ロールの欠陥に大きく関連す る巻取条件の諸問題に触れた.巻取装置における特許上の歴史的背景をまとめ,巻取装 置において最適な巻取条件を簡単に設定できる機能の追加の必要性について述べ,本 研究の目的を明らかにした. 第2章では最適な巻取条件を決定する上で必要な理論モデルの整備を行い,巻取装置 に適用する最適化機能のソフト化を図った.まず,内部応力の理論予測モデルを整備し, 巻取り直後におけるしわとスリップの欠陥を防止するための巻取条件の最適化機能を構築 した.同時に,2軸ターレット方式における巻取方法の特徴とその巻取方法に関わるウェブ 搬送の安定性に関する問題点を指摘し,ウェブ搬送の安定性を高めることを目的とした上 で巻取張力の取り扱いを検討し,最適化機能として定式化した.次に,環境温度の経時変 化における内部応力の理論予測モデルを整備し,巻取り直後における最適化手法の応用 展開を図った.実際の製造プロセスにおける環境温度の変化を調査し,実用的な解釈を 加えた上で最適な巻取条件を決定する最適化機能を構築した.構築した機能により保管 や輸送環境により環境温度が加熱・冷却された双方の場合において巻取欠陥の発生を抑 制できる巻取条件を決定することが可能となった. 第3章では第2章で導いた理論モデルの定量的な検証を行った.巻取り直後から保管・ 輸送された場合における環境温度の変化を考慮した内部応力の理論予測モデルの実験 的検証はほとんど実施されておらず,ウェブのヤング率の温度依存性による内部応力への 影響は十分に把握されていない.そこで,ウェブのヤング率の温度依存性を調査した上で, ヤング率の温度依存性が内部応力に及ぼす影響を明らかにし,内部応力の予測理論モ-
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- デルの妥当性を示した.さらに,理論的に求められた最適巻取条件による解析値と実測値 の比較を行い,内部応力に対する最適巻取条件の効果と妥当性を提示した.提案する最 適化機能によれば,環境温度の変化に対してもあらかじめ内部応力を予測し,欠陥を防止 する最適な巻取条件を理論的に決定できることを提示した. 第4章では第3章で検証した理論モデルを巻取装置に適用する上での問題点とその対 策手法を検証した.巻取ロールの内部応力を理論的に予測する基礎研究は従来から実施 されてきたものの,幾つかの仮定に基づいた実験的規模における解析や実験であることか ら,実際の巻取装置に対する適用性については検証されていない.そのため,最適な巻取 条件の効果を発揮するに際して,理論予測モデルによる内部応力の解析結果と実際の巻 取装置の内部応力との適合性を図った上で巻取条件を操作者に提供する必要がある.そ こで,理論予測モデルの解析結果と巻取装置による巻取試験の計測結果を比較検証した 上で,理論モデルの境界条件の安定性について着目した.巻取装置は境界条件に外乱 を与える要因が多く,理論モデルとの適合性を図るためには最内層境界条件に相当する ウェブの巻き芯への巻き始めと最外層境界条件に相当する巻取ロール最外層へのウェブ 巻き付け時の安定化を図る必要がある.そこで,具体的な外乱の防止方法を提案し,巻取 装置への応用展開を図ることによって,理論予測モデルと巻取装置の適合性を図った. 第5章では,第4章で導いた境界条件の外乱を防止する対処法を実機規模の巻取装置 に適用した上で最適化機能の巻取欠陥に対する効果を検証した.まず,第2章で示した最 適化機能を最適巻取制御ソフトとして巻取装置に組み込み,さらにユーザインターフェース を備えることで操作者が簡単に操作可能なシステムとして構築した.さらに,実機規模での 巻取試験を実施し,巻取り直後のみならず輸送・保管を含めた環境温度の変化に対しても 効果的にしわとスリップの欠陥を予測し,防止することが可能となることを提示した.一例と して,従来から経験的に生産に用いられている巻取条件の場合には,巻取全量に対して 約 3%の欠陥が確認されたものの,本最適巻取条件によれば欠陥は発生しないことを提示 した. 第6章は本論文の総括として結論を述べた.20
第2章 巻取ロールの欠陥を防止する理論モデルの提示
2.1 緒言
実際の製造ラインにおいては,対象とする製品が数種類,多い場合には数百種類にも 及ぶ.そのため,多種多様なウェブが扱われ,さらに新たなウェブも次々に市場に投入され ることから適切な巻取条件を導出する取り組みは難しく,多くの生産現場では実績のある 類似製品の巻取条件を修正することによって対応を図っている.実験的に巻取条件を決 定する場合には,クリーンルームの清浄度の維持管理や実験に際しての人員確保,あるい は生産ラインの停止などの必要性が生じるためコストの観点から困難な場合が多い.そこで, 不具合の中でも比較的発生頻度の高いしわとスリップの効果的な防止方法について,巻 取条件の最適化理論の観点から検討を加える.本章では橋本らが提案するウェブの巻取 張力の最適化手法 76)に基づき,実機に適用する際の問題点を洗い出し対策手法を提示 する.なお,橋本らにより提示されている最適化手法はニップ荷重についての最適化の検 討はなされていないため,様々な種類のウェブを取り扱う実製造においては生産対象が限 定されてしまう.そこで,巻取り時の設定パラメータのうち巻取張力に次いで重要なニップ 荷重についても検討し,巻取張力とニップ荷重の 2 つのパラメータを最適化の対象として扱 う.ニップローラのない中心駆動巻取りは古くから実用に供されているが,この方式は巻取 張力のみをウェブに与えた状態で巻き取るものである.したがって,ウェブを押し付ける層 間圧力が低いためにスリップが生じ易い.紙などの通気性が良く空気の影響が無視できる 紙種に対しては有効であるが,プラスチックのような非透過性のウェブでは巻き込まれる空 気厚さを調整することは重要である.図 2-1 は後述の巻取理論モデルを用いて表 2.1 に示 す巻取条件においてニップ荷重のみを変化させた場合における層間摩擦力を比較したも のである.同図(a)はニップ荷重を与えない場合(N=0N/m)を,同図(b)はニップ荷重を与え た場合(N=70N/m)を示している.同図を見ると明らかなようにニップ荷重の変化に対して層 間摩擦力の違いが大きいことがわかる.したがって,適用範囲の広い巻取条件を得るため には巻取張力とニップ荷重の両方を最適化の対象とすることが必要である.さらに,本章で は巻取ロールを扱う上でもうひとつの重大な課題である巻取り後の熱的環境についても検 討する.一般に巻き取られたウェブは次工程に移送され最終製品に至る加工が順次施さ れていく.とりわけ,近年の高機能デバイスの製造工程ではウェブに塗工や印刷などの 様々な加工が施され,製品によってはエージングなどの熱処理が施される.また,巻き取ら れたロールは製造者や輸送者の都合により様々な状態で保管・輸送されるため,大きな環 境温度の変化にさらされる場合がある.巻取ロール内部の応力状態はこのような温度変化 と密接に関連しており,熱的環境に起因するしわやスリップの発生が大きな問題となってき ている.今後,高機能デバイスは様々な熱的環境下での製造が予想されるため,熱的環境 の影響を考慮した上で巻取条件を決定することは,極めて重要である.そこで,様々な熱21 的環境に対処することを目的として,神田らにより提示された非定常状態における巻取ロー ルの内部応力に関する理論モデル 73)を巻取条件の最適化問題として拡張する.なお,本 研究で対象とする 2 軸ターレット方式は,ウェブの引き継ぎが行われるためステップ状の張 力変化が負荷される.この場合,ステップ状の変化には制御の応答遅れが生じ易く,急激 な変化によりウェブの搬送が不安定に陥りやすい原因となり得る.そのため,ウェブ引き継 ぎ時においてウェブの巻芯への巻き付けが不安定となり,理論的に求められた内部応力と 実際の内部応力に差が生じ,最適化巻取条件の効果を充分に発揮できない可能性が生 じ得る.そこで本章では,生産時に起こり得るこの種の問題を解決するためにしわとスリップ を同時に防止しながらウェブ引き継ぎ時におけるウェブ搬送の安定化を図る機能を最適化 の一つとして巻取条件の検討に取り入れた. 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 100 200 300 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 100 200 300
Fig.2-1 Comparison of nip-load affects
(a) Without nip-load N=0N/m
Radial position r, mm
Friction force
F
, kN
Radial position r, mm
Taper tension Tw0=200N/m, Taper 30%
Nip-load N , N/m W inding te nsio n Tw , N/m Friction force F , kN (b) Nip-load N=70N/m Nip-load N=70N/m Const.
Taper tension Tw0=200N/m, Taper 30%
Without nip-load W inding te nsio n Tw , N/m Nip-load N , N/m Radial position r, mm Radial position r, mm 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 20 40 60 80 100 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 20 40 60 80 100
22
2.2 一般的なウェブの巻取モデル
2.2.1 巻取り直後における巻取ロールの巻取モデル
巻取ロールの内部応力解析は本研究の全体におよび骨格を成す内容となる.巻取条 件は巻取ロール内部の応力状態と密接に関連している.そのため,内部応力を理論的に 求めることにより,事前にしわやスリップなどの不具合現象を予測し,かつ防止することが可 能と考えられる.ウェブの巻取りにおける諸現象を考慮した巻取ロールの内部応力に関す る巻取理論は橋本らに提示された理論モデル76)を巻取装置に適用する.本理論モデルは ウェブを巻き取ることにより逐次変化する巻取ロールの内部応力に関する Hakiel モデルを 修正した数値解析モデルであり,実験によりその妥当性が示されている.なお,Hakiel モデ ルとは今日の巻取ロール内部応力解析の基本を成したものであり,ウェブが順次巻かれて いくときの内部応力の変化を薄肉円筒に作用する応力の重ね合わせで表現したものであ る.本理論モデルを用いることにより任意の巻取張力とニップ荷重に対する内部応力の状 態を逐次予測することができる.なお,理論モデルの定式化にあたっては,以下に示す仮 定を設けている. (1) スパイラル状に巻かれたウェブは薄肉円筒ウェブとウェブ層間に巻き込まれた空 気層との積層ウェブとして扱う (2) 薄肉円筒ウェブは完全な円筒形状を保ち,ウェブ幅,ウェブ厚さ,ウェブ表面粗さ などは変化しないものとする. (3) ウェブ層間におけるせん断応力は無視でき,ウェブ層間すべりは無視できるもの とする. (4) 巻取駆動方式は中心駆動巻取り方式とする. (5) ロール内部の半径方向応力と接線方向応力はいずれも半径方向座標の関数で あり,接線方向や軸方向座標には無関係とする.すなわち,解析モデルは平面 応力を前提とし,実質的に1次元として扱う. このような仮定に基づいて,まず巻取ロールの内部応力を求めるためにスパイラル状に巻Maximum radius rmax[m] 0.1845
Web width W[m] 1.0
Web Thickness hw[m] 25
Young’s modulus in radial direction of web Er=Aσnr ,
[Pa] 1.0 123 = = n A
Young’s modulus in circumferential direction of web Eθ
[Pa]
5.18 ×109
Friction force μeff[-] 0.3
Core radius rc[m] 0.05025
Young’s modulus of core Ec[Pa] 17.0×10
9
Winding velocity V[m/min] 100
23 かれたウェブを図 2-2 に示す薄肉円筒ウェブとウェブ層間に巻込まれた空気層との積層ウ ェブとして扱う.その際,ウェブの厚さ hw は均一で,巻き取られたロールの幅は最大巻き径 に比べて十分に大きく,ロール形状は真円で完全軸対称と仮定すれば,巻取ロール内部 の半径方向応力σrは式(2.1)によって計算できる54). 0 1 3 2 2 2 = ⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ − + + r r r r E E dr d r dr d r
σ
σ
θσ
(2.1) 式(2.1)を解くに際しては半方向応力σrに関する次の 2 つの境界条件を設定する必要が ある.まず最内層における境界条件として,ウェブの第 1 層と巻き芯における変位量が等し いことから次式を得る. c r r r c tE
r
r
=
=
δσ
=cε
(
)
(2.2) 式(2.2)よりロール最内周における境界条件として次式を得る.なお,巻取ロールの内部 応力の解析に関しては,ポアソン比は通常無視して扱うことができる60).0
=
−
= =c c r r r r r cE
E
θ θδσ
δσ
(2.3) ここでロール内部の応力の釣り合い方程式から次式を得る. c c r r r r r rdr
d
r
= =⎟
⎠
⎞
⎜
⎝
⎛
+
=
δσ
δσ
δσ
θ (2.4) 式(2.3)を式(2.4)へ代入して次の最内層の境界条件式(2.5)を得る. c r r r c r r r r E E dr d c c = = ⎟⎟⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ − = δσ δσ θ 1 (2.5) 一方,巻取張力が巻取ロールの最外層に作用するときは,新たなウェブが付加されること24 による半径方向応力増分は,最外層に作用する圧力と等しいと考えて良いことから,最外 層の境界条件式は次式で与えられる.
s
T
s
d
T
w s r w s r r=
−
∫
=
−
= =π
θ
δσ
π2
2 0 (2.6) 一般にプラスチックフィルムは空気を透過しないことから,空気層が生成され易くスリップ が生じ易い.そのため,ニップローラと呼ばれるローラによりニップ線荷重を与えることにより 巻き込み空気量h0を調整している.そのため,ニップ荷重を受けながらウェブが巻き取られ る際,ニップ部を通過した後のウェブの張力はニップローラとウェブ間の摩擦により変化す る77).そこで,本論文ではこの現象に対してGood78)79)により得られた次式を適用する. s r s r w w T N T = = +μ
= (2.7) 摩擦係数μはニップ部におけるウェブ間の有効摩擦係数であり,橋本65)によって示された 次式を用いて求められる. ⎪ ⎪ ⎩ ⎪ ⎪ ⎨ ⎧ < ≤ ≤ ⎟ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎜ ⎝ ⎛ − < = ) 3 ( 0 ) 3 ( 3 2 ) ( 0 0 0 0 ff ff ff ff ff ff ff h h h h σ σ σ σ μ σ μ μ (2.8) ここで,ニップ部における初期の空気巻き込み量厚さh0は次に示す Hamrock と Dowson57) の結果を利用する. 23 . 0 2 65 . 0 0 7.73 − ⎟ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎜ ⎝ ⎛ ⎟ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎜ ⎝ ⎛ = eq eq eq eq eq R E N R E V R h η (2.9) なお,Reqは式(2.10)に示す巻取ロールとニップローラの等価半径であり,Eeqは式(2.11)に 示す等価ヤング率である.25 nip eq R s R 1 1 1 + = (2.10) nip nip s r r eq E E E 2 1 1 1 ν − + = = (2.11) また,σffは次式で定義されるウェブの合成自乗平方根粗さである. 2 2 2 1 f f ff σ σ σ = + (2.12) ただし,添字 1,2 はそれぞれウェブ表面および裏面での粗さを示す. 巻取完了後において最外層には新たなウェブが追加されないので,最外層における境 界条件は次のように設定できる. 0 = = s r r σ δ (2.13) 式(2.2)~(2.13)に示した境界条件を適用して巻取方程式(2.1)を解くことにより,ロール内部 の半径方向応力を求めることができる.その際,巻取ロールの第i 層での半径方向応力 σri は第(i+1)層から第 n 層(巻取の最終層)までの応力増分を式(2.14)のように加算して求めら れる.