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理論モデルの効果的な運用を目的とした巻取装 置に関する検討

ドキュメント内 Microsoft Word - 表紙.doc (ページ 79-115)

4.1 緒言

第 2 章では,巻取ロールの内部応力を考慮した巻取条件の最適化に関する理論モデル を提示,第 3 章において理論モデルの妥当性を提示した.本章では,この理論モデルを巻 取装置に適用する準備として,巻取理論の境界条件とその境界条件に影響を及ぼす実機 における諸現象を検討する.一般に,物流における輸送性の観点から,ウェブは適度な大 きさや重量に達するまでロール状に巻き取られる.そのため,連続的にウェブを巻き取り,

かつ,ウェブの搬送を停止させないことを目的に 2 軸ターレット巻取方式が多く用いられる.

図 4-1 は 2 軸ターレット方式の概要を示している.同図に見られるように,駆動軸に取り付け た巻き芯(同図 A1)により所定の長さに達するまでウェブを巻き取る.その後,ウェブの引き 継ぎを行い,もう一方の巻き芯(同図 A2)により新たな巻き取りを開始する.生産効率の観 点から,このような方式が用いられるが,ウェブ引き継ぎ時の作業時間は極めて短く,同図 に示すように安全性の観点において,操作者が巻取りロールの付近で巻き取られるウェブ の状態を調整することは難しい.したがって,例えば,ウェブ引継ぎ条件が不適切な場合や 部品の精度,あるいは強度が不適切な場合には,それらの影響として巻き始めの状態が不 安定になり易く,かつ調整が困難である.理論的に求められる内部応力は幾つかの仮定

(第 2.2.1 節参照)を置かれて求められるが,理論的手法において重要とされる境界条件,

すなわち巻き始めの状態(最内層の境界条件)を実機において安定的に扱うことは大変に 重要である.最内層付近は,ウェブが積層される上で土台ともなるべき箇所であり,しわの 発生を見積もるうえで接線方向の応力が最も負になりやすい領域だからである.一方,ウェ ブが新たに巻きつけられることによる境界条件(最外層の境界条件)も同様に重要である.

これは,一般的な巻取りロールであれば数千枚から数万枚ものウェブが積層されることから,

わずかな境界条件の乱れによっても累積される半径方向応力への影響は大きく,巻取ロー ルの全体の剛性に著しく影響を与えるためである.しかしながら,巻取装置ではそれら仮定 を乱す現象が発生し易い.そのため,理論的に求めた内部応力と実際の内部応力は異な る可能性が生じる.したがって,理論的に仮定された環境と実際のウェブの巻き取りにおけ る環境を適度に一致させることは,極めて重要な課題である.そこで,巻取装置における環 境を考慮し,理論的に内部応力を求める際に重要な境界条件に着目し,最内層に最も影 響するウェブの巻き始めの安定化,最外層に最も影響するウェブ巻き付け時の安定化を図 った.以下に詳細を順次述べる.

- 76 - 4.2 ウェブの引き継ぎ方法に関する検討

4.2.1 ウェブ巻き始めの安定化

多くの生産条件においてロール内部の接線方向応力が負(圧縮応力),すなわちしわに なる領域は巻き芯の近傍で発生する可能性が高い.このことは実際の製造現場でも良く経 験されるところであり,このようなしわを防ぐには巻き芯の近傍における内部応力を正確に 見積もることが重要である100),101).しかしながら,実機ではウェブの巻き始めにおいて巻き芯 近傍に外乱を与える次の不具合現象が発生し,前述の最内層境界条件を必ずしも満足し ない.

(a) 巻き芯と粘着テープの形状段差や粘着力の違いによりウェブの幅方向に張力変化が 発生し,ウェブに折れしわが発生する.

この現象により,ロール内部の幅方向に応力の不均一が発生し,場合によってはウェブ がいびつな形状で巻き芯に巻かれてしまう.巻き芯の近傍でこのような現象が発生した場 合には,順次ウェブが積層されていくため最外層にいたるまで幅方向の内部応力が不均 一になる.これら巻取初期の折れしわはロール内部の圧縮応力によるしわと異なり,張力お よびニップ荷重の操作では改善しにくい.

Fig. 4-1 General view of winder, showing safety problem

Driving shaft

Core(A2)

Driving shaft

High speed conveyance

Hazard of worker being caught up

Core(A1)

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そこで,前述の巻取理論モデルを実機に適用させるため,この不具合現象を回避し,境 界条件を整合させる方法を検討しておく.

4.2.2 粘着テープを用いないウェブ引き継ぎ方法

巻取り時におけるウェブの引き継ぎでは一般に図 4-2 に示すような粘着テープが用いら れているため,巻き芯と粘着テープとの粘着力の差によりウェブの幅方向に不均一な張力 が発生し易い.また,巻き径が増大するにしたがってロールの最内層付近に高い半径方向 応力が発生し,粘着テープの厚さの違いに起因してウェブの幅方向に不均一な応力分布 が発生する可能性が高まる.このような不具合現象を回避するためには,予め粘着テープ の位置や厚さが巻取ロールの内部応力へ及ぼす影響を考慮し,かつ巻き取られる直前の ウェブに折れしわが生じないように考慮する必要がある.しかしながら,搬送中のウェブの状 態は数値で比較できない項目が多く,さらに,粘着テープには様々な種類があることから,

これらの特性を定量的に扱うことは不可能に近い.なお,機能性材料のように微小な欠陥 も許されないウェブの場合には,目に見えないようなわずかな形状の変化も許容できない.

とりわけ,ウェブを巻きつける上で土台とも言える最内層は特に重要であり,最内層での幅 方向における形状や応力の均一化は重要である. したがって,本開発で扱う巻取装置で は粘着テープを用いない方式として,図 4-3 に示す水滴噴霧を用いる装置(以降,テープ レス方式と呼ぶ)を採用した.なお,一般的なウェブ引き継ぎでは,ウェブが搬送されながら カッタで切断され,押えローラにより新しい巻き芯(粘着テープ)へ押しつけられる.これら一 連の作業は100ms程度のサイクルタイムで実施され,ウェブの切断時には張力の急激な変 動が発生し,ウェブの搬送が不安定になる可能性を有している.このような張力の安定化に 対しては一般的な張力制御では対応が難しく,従来から巻取に不具合を生じる要因として 考えられていた46),47).そこで図 4-4 に示すように,ウェブの切断前にあらかじめ新たな巻取 軸に押えローラを押しつける機構を採用した.テープレス方式では,粘着テープを用いな いために切断前に予めウェブを巻き芯へニップローラで押しつけることができる.まず,搬 送中のウェブを押えロール(同図 A1)と巻き芯(同図 A2)により挟み込む.次に,カッタ(同図 A3)を動作させ,切断ポイント(同図 P1)にてウェブを切断する.これらの作業により,ウェブ の新たな巻き芯(同図 A2)への引き継ぎが完了する.従来はウェブの切断後に押えローラを 動作させており,ウェブの巻き芯への貼り付きが不安定であったが,この方式によれば安定 した状態で貼り付けることが可能となる.

4.2.3 テープレス方式の実験的検証

本開発で提案したテープレス方式と従来の粘着テープ方式とによる外観検査を実施し た.図 4-5 に示すように円筒度0.05mmにて製作した透明なポリカーボネート製の巻き芯を 用いてウェブ引き継ぎを実施した.その後,図 4-6 に示すように内視鏡カメラを用いて巻き 芯内部における外観検査を実施した.なお,ポリカーボーネード材の剛性は大きくないた め巻取径が大きくなる場合には,ウェブの重量により巻き芯のたわみが発生する.そのため,

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巻き芯の変形による内部応力への影響を考慮した上で,巻取径φ150mm まで巻取りを実 施した.なお,巻取り速度Vは100m/minとし,張力Twとニップ荷重Nの巻取り条件はそれ ぞれTw=100N/mおよびN=70N/mの一定値とした.図 4-7 は粘着テープを用いてウェブ引 き継ぎを行った場合の巻取ウェブの最内層付近の状況である.結果を見ると明らかなように 円周方向にわたって均等に圧縮ひずみが発生していることが見て取れる.一方,粘着テー プの領域(青色部)においては,圧縮ひずみが発生していない.これは,粘着テープにより 円周方向のウェブの移動が抑制されることが原因と予想され,粘着テープを用いることによ り幅方向における不均一性が発生していることがわかる.

図 4-8 はテープレス方式を用いた結果であり,ウェブが綺麗に巻き付いていることがわか る.これは,粘着テープを用いないことにより,局部的な応力集中が緩和されたためである と考えられる.さらに,図 4-9 にウェブの幅方向にわたる実験結果の比較を示す.実験では PET ウェブにて最大ロール直径 200mm までの巻き取りを行った.この時,直径 100mmの 位置に感圧紙を挿入し幅方向の応力分布を目視にて観察した.写真は,巻取り後にウェ ブを巻きほどいたときの結果である.粘着テープを用いる場合には,内部応力の変化やし わの発生が確認されるのに対して,本方式ではしわや応力の変化はほぼ生じていないこと がわかる.このことから,本方式により,前述の項目(a)で述べた巻取開始時のしわを防止す ることができる.

Fig. 4-2 State of the web with the adhesive tape

Wrinkle

Adhesive tape

Core

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