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巻取装置への展開

ドキュメント内 Microsoft Word - 表紙.doc (ページ 115-137)

5.1 緒言

前章までに,巻取理論に基づいた巻取条件の最適化手法を構築し,環境温度を経時 変化させた上で内部応力を測定し,その理論モデルの妥当性を示した.本章では,理論 モデルを具体的に巻取装置で運用する手法を示す.また,既存の巻取装置に最適化機 能を搭載した上で,最適巻取条件の効果を検証し,巻取ロールの欠陥防止に対する有用 性を確認する.さらに,本節で示す実機サイズの実験により得られた試験データを元に新 たな生産機を製造した.ただし,新規に製作した生産機には従来から蓄積された技術的要 素が含まれること,また販売予定の製品に直結する最新技術であるため詳細は一部の記 述に留めることをご容赦願いたい.

5.2 最適化機能の実装

実際の製造ラインにおいては,対象とする最終製品によりウェブの幅や厚みが変更される.

そのため,広い範囲において巻取張力とニップ荷重が設定できることが望ましい.従来から 巻取条件の設定は経験に基づいて行われているが,特に一定のニップ力の下にロール半 径方向に張力を比例的に低下させる手法(テーパ張力)が広く浸透している.このようなテ ーパ張力方式は巻径の変動に対して,ウェブ引き継ぎ時の張力や内部応力の変化が少な く,さらに条件の設定は初期張力Toとテーパ率φの 2 つの設定値のみを扱えば良いことか ら実際の作業との対応がとりやすいという特徴を持つ.また,経験上多くの巻取環境におい て顕著な欠陥が発生しにくいことから慣例的に良く用いられている.しかし,ロール内部の 応力状態を最適に保つような巻取条件においては,巻き終わりの張力を上昇させるような 巻き方がより有効である.一方,ニップ荷重については巻き品質を最適に保つように巻込 み空気量を可変的に操作することが重要と考えられ,一義的に運転条件を固定化するシ ステムでは柔軟な対応ができない.そこで,本研究では図 5-1(a)に示すように前述の理論 モデルを用いて得た巻取条件を指示する方式を用いることとした.従来は図 5-1(b)に示す ような手動による入力方式が主で,多くは固定値で運転条件を設定している.一方,本方 式によれば,広い範囲において巻取条件を柔軟に与えることができる.検証実験では,図 5-2 に示すようなテープレス装置とニップローラを設けた巻取部から構成される装置に本方 式を実装し,ウェブの巻取りを実施した.なお,図 5-3 は既存の巻取装置の全体を示して おり,第 3 章で提示した巻取り理論の実機への適合性を高める手法を適宜用いている.

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(b) Manual regulation (a) Automatic regulation

Fig. 5-1 Schematic diagram of system

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Fig. 5-2 Devices used in theoretical model

Injection device of tape-less on web splice

Guide roller(Measures of the trough)

Nip-roller (Double supported beam)

Fig. 5-3 Overall views of devices

Winding Un-winder Coating

Printing Dryer

- 114 - 5.3 最適巻取条件の設定方法

巻取条件の最適化に際しては汎用的な 32 ビットパーソナルコンピュータを用いた.ソフト ウェアは,最適化に必要な前提条件の設定と演算結果を表示するユーザインタフェース部,

最適化の数値解析を行う演算部の 2 つに大きく分けられる.なお,最適化を実施する演算 部には高速処理に有利な FORTRAN を言語として用いており,ユーザインタフェース部に は画像などを扱うため Visual Basic を用いている.前提条件の設定および計算結果の確認 は,できる限り操作者の熟練度を要求しない操作方法が望ましいことから,グラフなどを用 いて視覚的に表示する方法とした.図 5-4 にシステム構成の外観図を,図 5-5 にユーザイ ンタフェース部の例を示す.最適化の条件に際しては,同図(a)に示す入力画面によりウェ ブなどの物性値を設定することができる.なお,操作者の設定手順を簡略化するために同 図(b)に示す入力画面によりあらかじめウェブやコアなどの物性値をデータベースとして登 録し,必要に応じて選択することができる.設定した値は,最適化で必要な各種パラメータ に変換され演算部で利用される.次に演算部で最適化された巻取条件の良否は,同図(c) に示すグラフなどを用いることにより視覚的に確認することができる.これらの処理によれば,

操作者は煩雑な計算式を意識することなく巻取条件を設定することができる.

Fig. 5-4 Implementation of optimization functions

2arm turret System

Control console

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Fig.5-5 An example of interface

(b) Physical property

(c) Calculation result

Boundary codition

(a) Input data

Conditions for nip roller

Conditions for core Conditions for web

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5.4 ウェブ引き継ぎ時におけるウェブ蛇行量の検証

提案する最適巻取条件はしわとスリップを防止するとともに,ウェブ引き継ぎ時における ウェブの蛇行を可能な限り防止することを目的としている.そこで,巻取ロールの欠陥に対 する最適張力の効果を判定する前段階として,実機でのウェブ引き継ぎ時におけるウェブ の蛇行量について検証を行う.本研究で提案する巻取装置では,ウェブ引き継ぎ時の安 定的な搬送を目的として,巻き始めの張力と巻き終わりの張力の差を可能な限り小さく決 定している.さらに,内部応力への影響を鑑みて,粘着テープを用いないテープレス方式 を採用しており,ウェブ引き継ぎ時に予めウェブを巻き芯へ押えローラで押し付けた上でウ ェブを切断する.そのため,このような手法を用いることにより,ウェブ引き継ぎ時の張力変 動が抑制され,ウェブの搬送が安定的な状態に保たれる.そこで,本研究で提案する手法 について,搬送の安定化に関する効果を検証するために,巻き始めの張力と巻き終わりの 張力の差を小さくした場合におけるウェブの蛇行量を計測する.図 5-6 はウェブ引き継ぎ時 のウェブの蛇行量lmの測定結果である.蛇行量は CD 方向(ウェブの幅方向)におけるウェ ブの変位量と定義し,ウェブ引き継ぎ時におけるウェブ幅方向の片端位置を図 5-7 に示す レーザ変位計にて計測している.図 5-6 の実線は本開発で提案したウェブ引き継ぎ方式を 示している.ここで,ウェブ引き継ぎ時における巻き終り張力と巻き始め張力は共に同じ

Tw=200N/mとし,押えローラを予めウェブに押しつけた状態で蛇行量を計測した.一方,同

図の破線は従来のウェブ引き継ぎ方式を示している.ここで,ウェブ引き継ぎにおける巻き 終り張力はTw=40N/m,巻き始め張力はTw=200N/mとし,押えローラは予めウェブに押しつ けていない.同図の結果から,本開発で提案したウェブ引き継ぎ方式は安定しており,ウェ ブ引き継ぎ時におけるウェブの蛇行を解決している.なお,搬送中のウェブの状態は数値 で比較できない項目が多く,さらに,ウェブには様々な種類があることから,代表例として,

PET フィルムを用いた場合のウェブの蛇行量を一例として示している.

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5 10 15 20

-3 -2 -1 0 1 2 3

Present method

Conventional method

Web splice

Time ,s

Fig. 5-6 Result of variation amount Move distance from the center lm , mm

Fig. 5-7 Schematic of measurement

Wound roll

Displacement measuring device

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5.5 巻取直後における巻取条件の最適化の実施例

5.5.1 従来の巻取条件における欠陥の発生

巻 取 条 件 の設 定 が不 適 切 な場 合 には巻 取 直 後 に巻 取 ロールにしわが発 生 する.図

5-8(a)は従来の巻取条件の事例として,破線は初期張力 Tw0=200N/m(テーパ張力)での

巻取張力を,一点鎖線は同じく初期張力 Tw0=140N/m(テーパ張力)による巻取張力を示 している.同図(a)のテーパ張力おいて,低減率 φ は 30%としている.この値はしわやスリッ プの発生状況から決定され,試行錯誤的に広く用いられているものである.同図(b)は同図 (a)に示した各張力に対応したニップ力を示している.なお,同図(b)におけるテーパ張力に おけるニップ荷重は N=70N/m(経験的に定めた固定値)としている.このような巻取条件に 対して前述で述べた巻取理論を用いて解析した結果を図 5-9 に示す.なお,計算に用い た諸条件を表 5-1 に示す.同図(a)は接線方向応力を,同図(b)は層間摩擦力をそれぞれ

Fig. 5-8 Conventional winding condition

(b) Nip load

(a) Winding tension Radial position r, mm

Winding tension Tw , N/m

Taper tension T

w0

=200N/m , N=70N/m

Taper tension T

w0

=140N/m, N=70N/m

Nip-load N , N/m

Nip-load of T

w0

=140N/m and 200N/m

Radial position r, mm

40 60 80 100 120 140 160 180 200 0

100 200 300

40 60 80 100 120 140 160 180 200 0

100

200

300

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示している.同図(a)にみられるように,初期張力Tw0=200N/mによるテーパ張力を用いた場 合(破線)には接線方向応力が負となる領域(r/rc=1.1~2.5)が存在し,この領域においてし わが発生する可能性が高いことわかる.これはいわゆる「巻き締まり」の状態に相当している.

これに対して,初期張力 Tw0=140N/m によるテーパ張力を用いた場合(一点鎖線)では巻 取張力が総じて低いために負となる領域が見当たらない.

同図(b)は層間摩擦力を示している.この値が高いほど「巻きズレ」と呼ばれるウェブのス リップ現象が発生し難くなる.後述する最適化計算において臨界摩擦力FcrFcr=50kNと している.これは,巻取りロールをクレーンで吊り上げ,巻き取られたロールがある程度移動 してもスリップが発生しないような摩擦力を想定している.比較のため同図中に臨界摩擦力

40 60 80 100 120 140 160 180 200 -1.0

0 1.0 2.0

(b) Friction force (a) Tangential stress

Fig. 5-9 In-roll stress under the conventional condition

Radial position r , mm

Taper tension Tw0=200N/m , N=70N/m Taper tension Tw0=140N/m, N=70N/m

Tangential stress σθ , MPa Friction force F , kN

Taper tension Tw0=140N/m, N=70N/m Taper tension Tw0=200N/m , N=70N/m

Critical friction force Fcr=50kN

Radial position r , mm

40 60 80 100 120 140 160 180 200 0

20

40

60

80

100

- 120 -

Fcrを示す.同図より,初期張力Tw0=200N/mを用いた場合(破線)には,最外層付近まで臨 界摩擦力以上を保っている.すなわち,同等の外力が発生する輸送環境などであれば,ス リップに対しても効果を示していることがわかる.これに対して,初期張力 Tw0=140N/m によ るテーパ張力を用いた場合(一点鎖線)では巻取張力が総じて低いために臨界摩擦力を 大きく下回っている.すなわち,同等の外力が発生する輸送環境などであれば,スリップの 危険性が高いことを示している.このように,しわとスリップは常にトレードオフの関係にあり,

欠陥を同時に防止するための具体的な初期張力やテーパ率は試行錯誤により設定される ことになる.テーパ張力の利点は,最終巻終わり径が変化した場合において,切断時にお ける巻取張力と内部応力の変化量が少ないことにある.そのため,テーパ張力方式はウェ ブの巻取り長さの変更が見込まれる生産プロセスにおいて古くから利用されている.

5.5.2 最適巻取条件に期待される効果

従来のテーパ張力による問題に対して,最適化張力を提案する.最適化を行った際の 与条件を表 5-2 に示す.なお,与条件は生産時における仕様によって適宜変更される値 である.

図 5-10 は前述の巻取条件に対して具体的に巻取張力とニップ荷重の最適化計算を行 った事例について示している.同図(a)において実線は最適化した巻取張力を示している.

一方,同図(b)は同図(a)に示した張力に対応した最適ニップ力を示している.図 5-11 に最 適巻取り条件で巻き取った場合における内部応力の解析結果を示す.同図(a)は接線方 向応力を,同図(b)は層間摩擦力をそれぞれ示している.同図(a)にみられるように,最適化 した張力とニップ荷重を用いた場合(実線)には,いずれの領域においても圧縮応力を生じ ていないことがわかる.

Maximum radius about web length 4000m rmax, mm 0.185

Web Thickness hw , μm 25

Web width W,m 1.0

Young’s modulus in radial direction of wound roll Er=Aσnr ,

Pa A=123

n=1.0 Young’s modulus in circumferential direction of wound roll Eθ ,

Pa

5.18

×109

Young’s modulus of core Ec, Pa 17.0

×109

Core radius rc, m 0.05

Winding velocity V, m/min 100

Friction coefficient μeff 0.3

Table 5-1 Prescribed optimization conditions for calculating

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