新宿駅構内線路直下における薬液注入工について
JR東日本 東京工事事務所 正会員 河田 誠
1. はじめに う場所打ち杭である。深礎工は、鉄道構造物に近接
し、地下水位以深であることから、止水および地盤 改良を目的とし、薬液注入工を実施した。薬液注入 工は、東京砂層(Tos層)に対し施工した。(図-2)
現在、JR新宿駅南口地区では、駅前広場機能の創 出、交通結節点機能の強化を目的として、線路上空
に約1.47haの人工地盤の新設工事をしており、交通
結節点機能強化に必要な電気室、機械室を埼京線直 下に集約するため、地下 2層の躯体の構築をしてい る。
キーワード:鉄道構造物近接、薬液注入工、計測管理
〒151-8512 東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-24-1 TEL 03-3341-8744 FAX 03-3341-9784 図-1工事断面図
本稿では、線路直下工事の内、鉄道構造物に近接 した状況下における薬液注入工の施工について報告 する。
2. 工事概要
3. 施工上の課題
薬液注入工は、営業列車が運行している状況下で の施工であり、施工する箇所は、工事桁を受けてい る仮橋脚の近接を注入するため(図-1,2)、軌道変状 が生じることにより営業列車に対して輸送障害を及 ぼす懸念があり、軌道変状に対して、どのようにし て計測管理を実施し、未然に大きな変位を防ぐか、
が課題となった。本施工では、薬液注入工の施工法 として、低流量による浸透注入を行うことによって 構造物への変状影響が小さい、DCI 多点注入工法を 採用した。
地下躯体を構築するために図-1 に示すように軌道 を工事桁に置き換え、工事桁およびホームを仮橋脚 で仮受し、施工空間を生み出すため、掘削(1 次掘 削)を行う。1次掘削面において、基礎杭を施工し、
鉄骨を架設後、仮橋脚から鉄骨へ軌道およびホーム を受け替え、最終床付け面まで掘削(2 次掘削)を 行う計画である。
4. 施工内容 4-1 施工方法
施工に先立ち、現場の対象とする砂層の最浅部、
中間部、最深部の 3 箇所において、注水試験を実施 し、浸透注入する注入量を算出した。本施工の注入 緒言は以下のとおりである。
基礎杭は、1 次掘削面での施工であることから、
鉄骨のベースプレート設置のため、かつ、軌道を受 けている仮橋脚への影響を抑えるため、深礎工を伴
注入量 約4,000m3(改良対象土量13,690m3)
薬液注入 深礎掘削
埼京線下における施工(薬液注入+深礎掘削)
11 10 9 8
仮橋脚 1次掘削面
(TP31.2)
2次掘削面
(TP25.5)
軌道階(TP36.5)
注入孔数 約1,600本 注入率 29.0%
注入速度 3.0L/min ゲルタイム60分以上
対象地盤 砂質土(東京砂層)
4-2 計測管理・注入管理体制
本施工では、軌道を受けた仮橋脚の近接を薬液注 入することからすべての仮橋脚および鉄道構造物
(全91箇所)に対し、水盛式沈下計を設置した。管 理値として、「仮設構造物設計マニュアル」により以 以下の値とした。(表-1)
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
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δa=0.2×δ0×L
δ0:11mm[整備基準値(静的)V=85km/h以下]
L:5m[前後の工事桁のスパンのうち、短い方]
一次管理値 工事中止値 限界値
0.6δa δa
2mm 6mm 11mm
管理値
水盛式沈下計の計測間隔が6 分となるため、計測 間隔時の軌道変状に対する計測管理体制として、薬 液注入施工時に近接する仮橋脚にターゲットを設置 し、レーザーレベルによる計測を実施した。レーザ ーレベルは、一次管理値(2mm)に達した時に警報 が鳴動するようにセッした。
また、計測で一次管理値に達した場合、および水 盛式沈下計による計測で連続して変位の上昇が見ら れた場合、注入速度を 0.5L/min 毎に減少させるよ うな注入管理体制とした。
4-3 施工結果
注入は、30箇所の同時注入とし(1本の杭に対し 6箇所注入し、5本の杭を同時に施工)、注入の際、
なるべく隣り合う杭は同時に施工しないよう注入箇 所を分散させた。また、注入圧管理として、初期注 入圧+0.5MPaを超えないよう注入圧管理を行った。
注入効果の確認として、注入完了箇所にコアボー リングを行い、確認試験を実施した(表-2)。なお、
サンプル数として、超多点注入工法技術マニュアル
(超多点注入工法研究会)に則り、7 箇所とし、任 意に抽出し、実施した。
改良効果の確認 三軸圧縮試験 粘着力(C)
≧60kN/m2 止水効果の確認 現場透水試験 透水係数(k)
≦1.0×10-4 全サンプリングに対して、改良効果、止水効果と も品質を満足する結果となった。
次に計測結果であるが、2mm~3mm 程度の仮橋 脚の変位(隆起)が見られた。
これは、注入を進めていくにつれ、対象地盤が注 入材で満たされてきたことにより仮橋脚に変位が生 じてきたものであると想定できる。変位が生じた時、
注入速度を落とす、または、注入を一時中断し、変 位が戻った後、再度注入を実施するなど、施工速度 を遅くするなどして対処し、施工を完了させた。
5. おわりに
軌道を受けた鉄道構造物が近接している条件下に 対し、変位を抑制させながら薬液注入工を無事完了 することができた。
表-1計測管理値
表-2品質確認項目 図-2 薬液注入工平面・断面図
山手貨物1番線 山手貨物2番線 山手貨物3番線 山手貨物4番線 山手貨物5番線
薬液注入箇所 仮橋脚
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
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