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ロックボルトの充填性診断法に関する研究

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Academic year: 2022

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(1)

ロックボルトの充填性診断法に関する研究

鹿島建設㈱ 正会員 ○伊達 健介 森 孝之 山本 拓治 横田 泰宏

(有)ツツイ電子 筒井 透

㈱ケー・エフ・シー 正会員 井本 厚

1.はじめに

山岳トンネル工事では,定着材にモルタルを用いた全面接着型のロックボルトが広く採用されている.しか しながら,岩盤亀裂への充填材の逸散や多量湧水区間での充填材流出などが懸念される箇所では,モルタル充 填が不完全となり支保機能の長期安定性を阻害する要因となることが懸念される.そこで,筆者らは充填状況 を簡易に把握し,ロックボルトの品質向上に貢献することを目的として,超音波計測を行う際に検出される微 小反射信号を明確に表示できる装置を開発した.本報告では,充填率をパラメータとした室内試験および現場 試験結果を報告する.

2.調査原理および開発装置概要

本調査手法は,超音波探傷システムでロックボルトの長さを測 定する技術に加え,ボルトと充填材の付着界面で発生する微小反 射信号に着目し,充填材の充填状況を把握する手法である.

図-1 は調査原理概要図である.充填状況が良好な場合,超音波 は付着界面では反射せず,ボルト内を直進してボルト先端で反射 する.一方,充填不良の場合は,空隙の存在により乱反射が卓越 し,観測されるデータ内に微小反射信号が多く含まれる.

写真-1 は開発した装置の外観である.送信パルスにバースト波 を用いることにより,基本周波数の純度が高く,出力の大きい超 音波を発生させることができる.さらに,微弱な受信信号を細か く表示できる LOG アンプを用いることにより付着界面で発生する 微小反射信号を検出可能な仕様とした.また,超音波は入力周波 数の違いによって指向性が異なるため,付着界面から受ける微小 反射信号にも差異が生じることを確認している

1)

.そこで,本装置 では計測ごとに異なる周波数の超音波を発生させ,複数の周波数 帯の入力信号から得られた反射信号を分析できる仕様とした.

3.室内試験結果

写真-2は室内試験状況写真,表-1 は試験ケースである.完全充 填モデルであるケース 1.1 は,3m ロックボルト(TD24)をスペー サにより溝形鋼に設置し,ボルト周囲が完全に充填されるようモ ルタルを打設した(充填率

F=100%)

.ケース 1.2 は,ケース 1 を 測定した後にロックボルトの先端側からモルタルを 50cm 削り,充 填率を 83.3%としたケースである.ケース 1.3 はさらにモルタルを 50cm(合計 100cm)削り,充填率を 66.7%とした.ケース 1.4 から 1.7 も同様にモルタルを削り測定を繰り返した.ケース 1.7 は完全 な未充填モデル(充填率 F=0%)である.また,ケース 2.1 から 2.7

❒充填良好

❒ 充填不良

-1 -0.5 0 0.5 1

0 500 1000 1500

反射 超音波 空隙空隙

超音波は乱反射が少なくボルト内を直進・反射する

超音波は空隙の存在により乱反射が卓越する

-1 -0.5 0 0.5 1

0 500 1000 1500

反射 超音波

ロックボルト ロックボルト 充填材

❒充填良好

❒ 充填不良

-1 -0.5 0 0.5 1

0 500 1000 1500

反射 超音波 空隙空隙

超音波は乱反射が少なくボルト内を直進・反射する

超音波は空隙の存在により乱反射が卓越する

-1 -0.5 0 0.5 1

0 500 1000 1500

反射 超音波

ロックボルト ロックボルト

-1 -0.5 0 0.5 1

0 500 1000 1500

反射 超音波

ロックボルト ロックボルト 充填材

図-1 調査原理概要図

探触子 主計測装置

(アンプ,送受信回路)

記録装置

(パソコン)

試験体(ボルト)

探触子 主計測装置

(アンプ,送受信回路)

記録装置

(パソコン)

試験体(ボルト)

写真-1 装置外観

未充填箇所 充填箇所

探触子 50cm

未充填箇所 充填箇所

探触子 50cm

写真-2 室内試験状況 表-1 室内試験ケース

キーワード 山岳トンネル,ロックボルト,健全性,超音波,充填率

連絡先 〒182-0036 東京都調布市飛田給 2-19-1 鹿島建設㈱技術研究所 TEL042-489-6610

完全未充填 0

2.7 完全未充填 0

1.7

手元 2.5m 16.7

2.6 先端 2.5m 16.7

1.6

手元 2.0m 33.3

2.5 先端 2.0m 33.3

1.5

手元 1.5m 50

2.4 先端 1.5m 50

1.4

手元 1.0m 66.7

2.3 先端 1.0m 66.7

1.3

手元 0.5m 83.3

2.2 先端 0.5m 83.3

1.2

完全充填 100

2.1 完全充填 100

1.1

未充填箇所 充填率F(%)

ケース 未充填箇所 充填率F(%)

ケース

完全未充填 0

2.7 完全未充填 0

1.7

手元 2.5m 16.7

2.6 先端 2.5m 16.7

1.6

手元 2.0m 33.3

2.5 先端 2.0m 33.3

1.5

手元 1.5m 50

2.4 先端 1.5m 50

1.4

手元 1.0m 66.7

2.3 先端 1.0m 66.7

1.3

手元 0.5m 83.3

2.2 先端 0.5m 83.3

1.2

完全充填 100

2.1 完全充填 100

1.1

未充填箇所 充填率F(%)

ケース 未充填箇所 充填率F(%)

ケース

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑197‑

Ⅲ‑099

(2)

までは完全充填モデルのロックボルトの手元側からモルタルを削り,測定を実施したケースである.全てのケ ースにおいて発振周波数は 2.18MHz,3.00MHz,3.88MHz の 3 種類とした.

図-2は代表的な取得波形である.横軸は振動子からの距離(超音波伝播速度×反射時間/2 として計算),縦 軸は LOG アンプを介して出力される相対振幅レベルである.図-2(a)(b)(c)を見ると,充填率が低下する(空 隙が増加する)に従って,乱反射が卓越し観測データ内に微小反射信号が顕著に生じることが分かる.次に発 振周波数の違いに着目すると,充填率が高い場合は,周波数によらず各波形は一定であるのに対し,充填率が 低下すると発振周波数ごとに得られた波形がばらつくことが確認できる.これは,発振周波数ごとに超音波の 指向性が異なり,付着界面から得られる反射信号にも差異が生じたためと考えられる.また,図-2(d)は充填 率が 83.3%と比較的高いケースであるにも関わらず,大きな微小反射信号が確認された.発生させた超音波は 振動子から離れるにつれて音圧が小さくなるため,口元付近では超音波の音圧が相対的に大きく,そこで発生 した微小反射信号も大きくなるためと考えられる.これらの結果より,本装置によって得られた微小反射信号 を分析することで,モルタル充填率や未充填箇所を推定できる可能性を示すことができた.

4.現場試験結果

次に,本装置を現場へ適用した結果を示す.本現場では,標 準的な地質区間と湧水区間において適用した.写真-3は計測状 況である.図-3は充填率に違いがあると判断した取得波形の一 例である.図-3(a)は標準区間で取得された波形であり,微小反 射信号が小さく,発振周波数によらず各波形は一定であること が分かる.一方,図-3(b) は湧水部で取得された波形であり,

微小反射信号が大きく,発振周波数の影響が顕著に見られるこ とが確認された.室内試験から得た知見を考慮すると,図-3(a) は充填良好と判断され,図-3(b) は充填不良と推定された.

このように,本システムは実現場においても充填材の充填状 況を推定することができ,ボルトの健全性評価に利用できる可 能性を示すことができた.

5.まとめ

筆者らは,ロックボルトの品質向上を目的とし,超音波反射 法を用いた健全性評価システムの開発を目指した検討を実施し てきた.今回,室内および現場試験から以下の知見を得た.

・ 室内試験より,充填率が低下すると微小反射信号が顕著に見 られ,発振周波数ごとのばらつきが大きくなった.手元側が 未充填の場合,未充填量が少なくても大きな微小反射波形が 見られた.

・ 現場試験より,実現場においても充填状況の推定を行うこと ができた.

以上より,本手法を用いることで充填率や未充填位置を推定 し,ボルトの健全性を評価できる可能性を示すことができた.

今後も研究開発に努め,支保の品質向上に貢献したい.

参考文献

1)森孝之,中嶌誠門,筒井透:超音波反射法によるロックボル トの充填性診断法に関する基礎的検討,第 36 回岩盤力学に関す るシンポジウム講演論文集, pp.97-100,2007.

0 1 2 3 4

0 1 2 3 4

微小反射波形

先端反射

F=100%

先端空洞

0 1 2 3 4

0 1 2 3

4 2.18MHz

3.00MHz 3.88MHz

F=50%

先端空洞

(a)ケース 1.1 (b)ケース 1.4

0 1 2 3 4

0 1 2 3 4

F=0%

先端空洞

0 1 2 3 4

0 1 2 3 4

F=83.3%

手元空洞

(c)ケース 1.7 (d)ケース 2.2 図-2 代表的な取得波形(室内試験)

写真-3 現場測定状況

0 1 2 3 4

0 1 2 3 4

0 1 2 3 4

0 1 2 3

4 2.18MHz

3.00MHz 3.88MHz

(a)標準区間 (b)湧水部 図-3 取得波形一例(現場試験)

超音波 ロックボルト

※ F:充填率

※ F:充填率

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑198‑

Ⅲ‑099

参照

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