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中小建設業におけるリスクマネジメント推進アクションプログラムの具体的方策推進

独立行政法人労働安全衛生総合研究所 正会員 ○高木元也 同 正会員 中村隆宏

1.はじめに

建設業は労働災害が多く、特に中小建設業者の労働 災害発生率は高い状況にある。しかしながら、中小建 設業者が自主的な安全活動を推進することは経営資源 の不足等により困難が予想され、その推進方策を検討 する必要がある。特に、中小建設業者に対し安全確保 策を普及させていく仕組みを構築することは重要な課 題であり、課題解消には戦略的な取り組みが求められ る。

このため、平成19年度、中小建設業者を主会員とす る建設産業団体である社団法人全国建設業協会と連携 を図り、全国建設業協会を実施主体とする中小建設業 者を対象としたリスクマネジメント推進アクションプ ログラムを策定した。その骨子は表1のとおりである。

さらに、平成20年度においては、その中で提示したい くつかの具体的方策を推進した。本稿ではその概要を

紹介する。

2.具体的方策の推進

(1)リスクアセスメント等の普及促進のための教育ツ ールの作成・普及

a.リスク適正評価ガイドの作成

筆者らは 1),2)建設業においてリスクアセスメントの

導入を推進するためには、リスク評価の適正化に向け た支援が有効であることを示した。

中小建設業者の現場技術者や職長がいかに適正かつ 効率的にリスクを評価できるかは重要な課題である。

リスクを適正に評価するためには科学的根拠が必要 になる。自社で過去に発生した労働災害データの豊富 な蓄積がある大手建設業者は、それらの分析によりリ スク評価の科学的根拠を有することができるが、中小 建設業者は統計分析できる程、数多くの労働災害が発 生しているところは少ない。

表1 中小建設業者を対象としたリスクマネジメント推進アクションプログラム(骨子)

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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一方、公表されている労働災害データの分析結果は、

個別作業にまで踏み込んでおらず 2)、リスク適正評価 のための科学的根拠として活用するには限界がある。

そこで、建設業労働災害防止協会「建設業安全衛生年 鑑」に示されているその年の建設業で発生した全死亡 災害の発生状況データ(文章データ)を活用し、平成 16年~平成18年の死亡災害を対象に、リスクアセス メント手法に応じ各種作業別等に分析し、土木工事、

建築工事それぞれについて、特に重篤度が高い作業等 を抽出・整理した。また、一定条件の下、リフォーム 工事特有災害を抽出し、頻発災害は典型的リフォーム 工事特有災害として、その特徴とともに安全対策の方 向を示した。

さらに、建設業の労働災害防止に関わる主たる行政 施策を整理し、これらをとりまとめた(表2)。

表2 リスク適正評価ガイドの構成

リスク適正評価ガイド

~労働災害データ分析に基づく特に重篤度が高い作業一覧~

1.リスク適正評価ガイドについて

2.土木工事編:特に重篤度が高い作業一覧 3.建築工事編:特に重篤度が高い作業一覧 4.リフォーム工事特有災害について 5.行政施策から学ぶ労働災害防止対策

b.作業者教育用DVD制作

作業者教育のニーズが著しく高いことから、作業者 の安全意識向上、リスクアセスメントの普及促進等を 目的に、作業者教育用DVDを制作した。その構成を 表3に示す。

表3 作業者教育用DVDの構成

タイトル 安全は誰のために 構成

1.はじめに

2.労働災害の原因と安全のルール ・不安全な状態と不安全な行動

3.人間の特性を知ろう(ヒューマンエラーの原因)

・危険軽視/不注意/近道・省略行動本能/

場面行動本能/パニック/錯覚 等 4.労働安全衛生法の「6つの義務」

・安全状態を保つ義務 ・安全措置を講じる義務 ・保護具の着用・使用義務 ・危険行動の禁止義務 ・無資格就労の禁止義務

・車両系建設機械運転者に関わる義務 5.安全確保策

・リスクアセスメントとKY活動 6.まとめ

(2)ヒューマンエラー防止対策実践教育の試行

ヒューマンエラー防止対策実践教育プログラムを作 成するため、モデル現場を対象に実践教育を試行した。

ヒューマンエラー防止対策実践教育とは、ヒューマ ンエラーへの対応は原則オーダーメイドを基本コンセ プトとして、現場の実態を踏まえ、現場特性を考慮し、

現場の担い手が自ら実践する対策を構築するため、人 への働きかけ(=教育)を主たる柱に展開を図る活動 である。この教育は①課題・問題点の洗い出し、②重 点領域の絞込み、③具体的展開プラン検討、④現場で の実践・展開、⑤自己評価・改善点の洗い出しという 5 つの基本ステップから構成されるが、個々の現場状 況に応じて柔軟な運用を図るものとする。

これまで、表4に示す2箇所のモデル工事現場を対 象に活動を展開している。この活動を通じて得られる 成果や課題を検証し、他の現場への応用を図るととも に同様の活動を展開する上でのノウハウを整理し、汎 用性のある実践教育プログラムの作成を目指す。

表4 実践教育モデル現場について

モデル工事現場A:山岳トンネル工事

トンネル工事は、掘進が始まるとほぼ同じメンバーでほぼ 同じ内容の作業が繰り返される特徴をもつ。長期的な取組み を行う上では展開を図りやすい反面、新たな取組みに対して は特段の必要性が感じられなければ現場の反応は遅い。ただ、

一旦活動が波に乗れば長期的な取組みが期待できる。

モデル工事現場B:高層住宅における外構土木工事等 継続的な活動を展開するため、初期段階で教育に参加する 作業班を限定し、問題点も「重機接触災害防止のための合図」

に絞り込む。その上で、特定の課題について長期的な取組み を行う「重点KY」活動として展開を図る。

3.おわりに

平成21年度も引き続き、本アクションプログラムの 具体的方策を推進し、第11次労働災害防止計画の目標 である死亡者数 20%以上減、死傷者数 15%以上減等 の達成に貢献していきたい。

参考文献

1)高木元也・中村隆宏:中小建設業者の建設現場にお ける危険・有害要因の特定化に関する事例研究、土 木 学 会 建 設 マ ネ ジ メ ン ト 研 究 論 文 集 Vol.13、 pp153-160、2006

2)高木元也:中小建設業者における労働災害リスクの 適正評価に関する研究、土木学会安全問題研究論文 集Vol.2、pp155-160、2007

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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参照

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