幾何学 II 演習問題
担当 : 中島 啓 2006 年 10 月 4 日 ( 水 )
今回は, 微分形式, Stokesの定理についての復習を行う.
問題 1. 3次元ユークリッド 空間 R3 上の, 三つのC∞級関数の組F = (F1, F2, F3) に対 して,
ω1 def.
= F1dx+F2dy+F3dz, ω2 def.
= F1dy∧dz+F2dz∧dx+F3dx∧dy
と定義する. dω1, dω2 を計算し, 電磁気学におけるdivF = ∇ · F, curlF = ∇ × F (∇= (∂/∂x, ∂/∂y, ∂/∂z))が,現れることをチェックせよ.
時間があれば,古典的な湧き出し量定理 Z
M
divF dxdydz= Z
∂M
(F, ~n)dσ
が, Stokesの定理の特別な場合であることを確かめよ.ただし,Mは,R3内の滑らかな境界∂Mを持つ領域であ り,~nは単位法線ベクトル,dσは面積要素であり,境界∂Mに接した二つの接ベクトルX~1,X~2に対して,それら の作る平行四辺形の面積を向きを込めて考えたものをS(X1, X2)∈Rとするときに,dσ(X1, X2) =S(X1, X2) で定義されるものである. (このnotationにも係わらず,∂M上の完全形式ではない.)
問題 2. 2次元ユークリッド 空間R2 ={(x, y)|x, y ∈R}から原点0を除いた空間R2\ {0}
を,ユークリッド 空間の開集合として自然にC∞級微分可能多様体とみなす. R2\ {0}上の 1次微分形式を
ωdef.= −y
x2+y2dx+ x x2+y2dy で定義する.
(1) R2\ {0}上の極座標 (x, y) = (rcosθ, rsinθ)を用いて, ω を dr, dθ で表わせ.
(2) dω = 0を証明せよ.
(3) ω =dF となるようなR2\ {0}上のC∞級関数 F は存在するか?
問題 3. (代数学の基本定理) n ≥1とし,f(z) =zn+a1zn−1+· · ·+an をn次多項式とし, f:C∼=R2 →C∼=R2というC∞級写像とみなす. R > 0に対して, DR ={z ∈ C| |c| ≤ R}で原点を中心とする半径Rの円周(の境界と内部)とする. ωを問題2.のC\ {0}上の1 次微分形式とする.
(1) 十分大きなRを取ると(特に f(∂DR)は原点を通らない), 1
2π Z
∂DR
f∗ω=n
となることを示せ. ヒント: f0(z) =zn とし, fとf0をつなげてみよ.
(2) 上のような大きなRに対して f(z) = 0が, DRで零点を持たないと仮定するとき,
Stokesの定理を用いて
1 2π
Z
∂DR
f∗ω = 0
となることを示し,このようなことがあり得ないことを証明せよ.
略解 1.
divF =∇ ·F = ∂F1
∂x + ∂F2
∂y + ∂F3
∂z は, dω2 = divF dx∧dy∧dz として現れる.
curlF =∇ ×F = (∂F3
∂y − ∂F2
∂z ,∂F1
∂z − ∂F3
∂x ,∂F2
∂x −∂F1
∂y ) であるから, dω1 の dy∧dz, dz∧dx, dx∧dy 成分を取れば, curlFが現れる.
湧き出し量定理の部分は, ω2の∂Mへの制限が(F, ~n)dσで与えられることを見ればよい.
これは容易にチェックできる.
略解 2. (1) ω =dθ (2) 略
(3) ω= dF とすると, (1) より, F と θ の差は定数である. ところが, θは原点の回りを一 周すると2πずれてしまうので,R2\ {0}上の関数としては well-definedではない. よって, このような F は存在しない.
略解 3. (1) M =∂DR×[0,1]という円柱を取り,境界つき二次元多様体と考える. (∂M =
∂DR× {0} t∂DR× {1}である.) F(z, t) =tf(z) + (1−t)f0(z)によって, F:M →Cを定 義する. Rを十分に大きく取れば, F は, 0を取らず, C\ {0}への写像を定める. したがっ て F∗ωは, M 上のC∞級1次微分形式である. よってStokesの定理より
0 = Z
M
F∗(dω) = Z
M
dF∗ω= Z
∂M
ω= Z
∂DR
f∗ω− Z
∂DR
f0∗ω となる. R
∂DRf0∗ω は, 具体的に計算して2πn である.
(2) fが, DRで零点を持たないと, fはDR →C\ {0}という写像となり, f∗ωは, DR上 のC∞ 級1次微分形式となる. したがって DRに Stokesの定理を用いて
Z
∂DR
f∗ω = Z
DR
d(f∗ω) = 0 となって矛盾する.