総
説
異常プリオン蛋白検出法の変遷
―神経変性疾患の病態解明に向けて―
九州大学大学院医学研究院 神経病理学分野
佐 々 木
健
介
はじめに
プリオン病は,正常型プリオン蛋白(PrPC)がβ-シートに富む異常型プリオン蛋白(PrPSc)に高次構 造が変換し,脳内に蓄積して発症する進行性致死性の神経変性疾患である.今日,protein-only theory を 主旨とした Prusiner のプリオン仮説が広く受け入れられるようになって病態の解明に大きな進歩をもた らした.これは,高次構造の変化により生じた異常蛋白を神経変性の原因とする「コンフォメーション病」 の要件を満たし,Alzheimer 病とも共通する病態を背景としている.ヒト・プリオン病には,原因不明で 発症する孤発性の Creutzfeldt-Jakob 病(CJD)や,遺伝性の Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病(GSS), 致死性家族性不眠症(FFI)などが含まれる.また,本疾患は感染性を有するという点が他のコンフォメー ション病と異なり,硬膜移植例や変異型 CJD が注目される.プリオン病研究は神経変性疾患全般に共通 した病態機序を解析するのに有用なモデルになると考えられ,我々はプリオン蛋白の重合度変化が神経の 変性や感染過程にどのように影響しうるか検討している.本稿では,プリオン病研究の歴史を振り返りな がら,異常プリオン蛋白がどのように病態に関与しているのか概観し,Alzheimer 病を含む他の神経変性 疾患にも共通した病態解明の可能性を展望する.プリオン病研究の歴史(表1参照)
1)疾患単位の確立プリオン病は従来「伝達性海綿状脳症」transmissible spongiform encephalopathy(TSE)と呼ばれ,実 験的伝播が可能であり(伝達性),病理学的に神経細胞内や大脳皮質のスポンジ状の空胞変性を特徴とし (海綿状),脳炎のような炎症反応を伴わない亜急性進行性の脳症を示す一群である.今で言うプリオン病 の最初の記述は,18 世紀,ヒツジのスクレイピー(scrapie;柵などで皮膚を掻いて[scrape]毛が抜ける 症状による名称)の報告までさかのぼる.1936 年には,Cuillé らによってスクレイピーの伝播実験が行わ れ,その感染性が確認された(総説参照1)).ヒトについては,Creutzfeldt と Jakob が 1920 年代に記載し た大脳皮質の海綿状変化を特徴とする亜急性脳症が存在することが知られていたが,1957 年にはニューギ ニア高地の Fore 族に多発する kuru(現地語で「震える」という意味で神経症状からつけられた名称)が報 告された2).その後 kuru と scrapie の臨床病理学的類似性が指摘され,Gajdusek らがチンパンジーへの 感染実験を行ったところ,kuru 症例の脳乳剤を脳内接種後約2年で発病したことから,ヒトのプリオン病 でも感染性が初めて証明された3).結局 kuru は Fore 族の食人儀式によりヒトからヒトへ伝播したもので あることが判明して,その習慣を廃止したところ発症を根絶することに成功した.その後 CJD もチンパ ンジーに伝播可能であることが示されて4),「伝達性海綿状脳症」の疾患単位が確立され Gajdusek は 1976 年にノーベル医学生理学賞を受賞した. Kensuke SASAKI
Department of Neuropathology, Neurological Institute, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University
2)プリオン仮説 Gajdusek のノーベル賞受賞時にまとめられた総説5)にもある通り,伝達性海綿状脳症の病因について当 時は,麻疹ウイルスによる亜急性硬化性全脳炎,JC ウイルスによる進行性多巣性白質脳症などと同じく, ウイルスの慢性感染によるスローウイルス感染症としてとらえられていた.一方で,感染因子が核酸分解 酵素や紫外線照射でも失活しないなど,通常のウイルス感染とは明らかに異なることも指摘されていた. 感染因子の抽出,精製を繰り返して解析していた Prusiner は,長年のデータの蓄積から,「感染因子中に 核酸は存在しない」と結論づけ,感染粒子は蛋白質のみで構成されているとして,これを蛋白質性感染性 粒子(proteinaceous infectious particle),略して prion と名付けた6).罹患脳に異常な蛋白の蓄積を認める ことは事実だが,しかし,感染成立する上で核酸を持たない蛋白が自己複製する可能性を考えることは分 子生物学のセントラル・ドグマに反するため,プリオン仮説は 1982 年の発表当初は懐疑的に受け止められ た.まもなく,感染因子中の主要構成蛋白,いわゆるプリオン蛋白(PrP)をコードする遺伝子が同定され, それが正常細胞でも発現していることが確認された7).もともとの正常な細胞,組織で発現している蛋白 なので感染とは無関係であるとプリオン仮説を否定する研究者たちがいる中で,Prusiner らは,一次構造 は同じでも正常型 PrP(cellular PrP = PrPC)とスクレイピー型異常 PrP(scrapie PrP = PrPSc)では蛋白 生化学的性質が顕著に異なることを示した.その後,遺伝性を示す GSS 家系でプリオン蛋白遺伝子に点 変異が同定され,遺伝性プリオン病の原因が同定された8)9).ついで PrP ノックアウトマウスが作出され, スクレイピー株の接種実験が行われたが,全く発病しなかったことから,感染成立のためには PrPCの存在 が不可欠であることが分かった10)11).また,PrPCと PrPScの高次構造の違いが示され12),プリオン病の感 染因子は「自己複製」するのではなく,異常蛋白が周囲の正常蛋白を巻き込んで異常型に「構造変換」す る,という特殊な感染過程が想定されるようになった.こうして,プリオン仮説が広く受け入れられるよ うになり,Prusiner は 1997 年にノーベル医学生理学賞を受賞した. 3)コンフォメーション病としての位置づけ 高次構造の変化により生じた異常蛋白を神経変性の原因とする「コンフォメーション病」という概念は, アミロイドβ蛋白やリン酸化タウ蛋白が脳に異常蓄積した Alzheimer 病,CAG リピートでコードされた ポリグルタミン鎖をもつ蛋白が蓄積した Huntington 病や脊髄小脳変性症,α-シヌクレイン蛋白が凝集し て封入体(Lewy 小体)を形成する Parkinson 病など,他の多くの神経変性疾患の病態と重なる(総説参 照13)).プリオン病は「感染性」を有する点がユニークであるが,もともと構成的に発現する蛋白が,遺伝 Prusiner 1982 1症例報告 Creutzfeldt Jakob 5症例報告 1920 研 究 者 内 容 1921 発表年 表1 プリオン病研究の歴史 1936 1957 1966 1968 1977 1985 1989 1993 1992 プリオン仮説 Gibbs 立石 → 1997 年 ノーベル医学生理学賞受賞 Hsiao Büeler プリオン蛋白の立体構造変化を指摘 Pan プリオン蛋白遺伝子をクローニング Oesch GSS 症例にプリオン蛋白遺伝子変異を発見 プリオン蛋白ノックアウトマウスの作出 Gerstmann-Sträussler-Scheinker Gajdusek-Zigas Gajdusek → 1976 年 ノーベル医学生理学賞受賞 遺伝性症例の報告 Kuru の報告 Kuru の実験的伝播 CJD の実験的伝播 小動物への実験的伝播(福岡1株) new varient CJD の報告 Will 1996
子変異あるいは未知の原因により構造異常をきたして,不溶化し容易に分解除去されず沈着して神経細胞 障害をきたすという機序は共通している.そこで,PrPScがどのような性質を持ち,PrPCとどのような点 が異なるのか,病態と関連づけて解析することにより,病態解明につなげていくことが期待される.
プリオン病の病理変化
典型的な孤発性 CJD の進行例では,脳萎縮が顕著である.Alzheimer 病とは対照的に,海馬の病変が軽 いのが特徴で,一般に系統発生学的に古い部位がよく保たれ,大脳皮質など新しい部位が強く障害される 傾向がある.日本人の平均脳重量約 1300g に対して,孤発性 CJD では平均 960g,特に萎縮が進むと脳重 量 485g という症例もある(当施設データ).組織学的には,病期の進行にともない,大脳新皮質を始め, 大脳基底核,視床,小脳皮質などにおいて神経細胞の著明な脱落を認め,反応性にアストロサイトなどグ リア細胞の増生(グリオーシス)を認める.大脳皮質全層にわたって空胞形成が見られ,いわゆるスポン ジ状の海綿状変化を示す(図1A).比較的早期例や生検標本でも海綿状変化を示す部位では GFAP 免疫 染色にてアストロサイトの太い突起形成が目立つことが特徴で,末期には細胞質の豊かな肥胖型アストロ サイトの形態をとる(図1B).進行すると基質の粗鬆化が高度となり,大脳皮質が菲薄化する.PrP に対 する抗体を用いた免疫染色で,神経細胞脱落や海綿状変化を生じた灰白質に PrP の異常沈着を認める.孤 発性 CJD では,シナプス部位に一致した細顆粒状のシナプス型沈着を示すことが多い(図1C).病型に よっては,斑状のプラーク型沈着(図1E,H)や融合傾向のある空胞の周囲に強調された空胞周囲型沈 着(図1F),神経細胞の胞体や樹状突起を取り囲んだ神経細胞周囲型沈着(図1I)などのバリエーショ ンがある. 遺伝性プリオン病の点変異部位による病型の違いだけでなく,プリオン蛋白遺伝子コドン 129 番の正常 多型や,PrPScの生化学的性質の違いによるタイプ分類によって,同じ孤発性 CJD とされる症例の中でも 臨床的病理学的に病型が異なる多様性が生じることが知られている14)15).遺伝子変異や多型の有無は蛋 白の高次構造に影響を及ぼすし,高次構造の違いが蛋白生化学的性質を変化させ,表現型の異なる病原株 として分類されている.異常プリオン蛋白の検出
プリオン病における PrPScの生化学的特徴を,PrPCと比較して表2(文献16)より引用改変)に示す. WHO 診断基準で,プリオン病の確定診断には「特徴的な病理所見を有する又はウェスタン・ブロット法 や免疫染色法で脳に異常型 PrP を検出する」と記載されているが,ウェスタン・ブロット法にて検出され る従来の指標でいう異常 PrP とは,プロテアーゼ抵抗性 PrP(protease-resistant PrP = PrPres)のことで ある.PrPresのことを protease-resistant PrPSc= rPrPScと表記することがある.PrPCは蛋白分解酵素(プ ロテアーゼ)で容易に分解されるのに対して,異常型はプロテアーゼ抵抗性が増し,N 末側のみが部分消 化されてフラグメントが残り,ウェスタン・ブロット法により確認できる(図2).無糖鎖型フラグメント の分子サイズの違いにより,21kDa の type 1 と 19kDa の type 2 に分けられる.症例によっては PrPresの 量が微量なため,リンタングステン酸による濃縮の過程を要することがある17). βシート rPrPSc sPrPSc αへリックス βシート PrPC PrPSc 主な立体構造 表2 PrPScの生化学的性質 PrP エピトープ 90-125 リンタングステン酸沈澱 PrP 27-30 PK 分解(37℃) PrP 27-30 沈澱 埋没 PK 分解(4℃) あり 露出 沈澱せず 分解 分解 埋没 沈澱 分解 PrP 22-24 あり なし 感染性図1 プリオン病の病理変化 A-C:孤発性 CJD,大脳皮質.A:海綿状変化.B:反応性アストロサイトの 増生.C:シナプス型プリオン蛋白沈着.病期の進行とともに神経細胞脱落, 反応性グリアの増生が顕著となり,基質は粗鬆化する.D,E:GSS,小脳. D:アミロイド・コア(矢頭).E:Kuru 斑型のプリオン蛋白沈着.F: PrPresが type 2 の孤発性 CJD,大脳皮質.空胞周囲型プリオン蛋白沈着が 特徴的で,type 1 PrPresの場合と病型が異なる.G,H:変異型 CJD,大脳皮 質.G:花弁状プラーク (florid plaque).H:花弁状プラーク型プリオン蛋 白沈着.空胞周囲型沈着と共存している.I:硬膜移植 CJD,大脳皮質.神 経細胞周囲型プリオン蛋白沈着.(A,D,G:ヘマトキシリン・エオジン染 色,B:GFAP 免疫染色,C,E,F,H,I:PrP 免疫染色)
なお,プロテアーゼに感受性でありながら,感染性や神経細胞毒性を示すプリオン分子が存在すること が知られるようになり(protease-sensitive PrPSc= sPrPSc),PrPresはプリオンの一部しか反映していない 可能性が指摘された.例えば,ウシ海綿状脳症のサンプルを脳内接種したマウスは全て神経症状を発症し て継代伝播も可能であったが,そのうち 55%以上の個体で PrPresは検出できなかった18).このため,プロ テアーゼ処理をせずに,従来のプロテアーゼ抵抗性とは別の指標で PrPScを検出する方法が開発された. Prusiner らの研究室からは,PrP エピトープ 90-125 が PrPCでは分子表面に露出しているのに対して, PrPScでは埋没しているという高次構造の違いを指標として,conformation-dependant immunoassay (CDI) 法が有用であることが報告された19)∼22).その他,conformational biosensor を合成して PrPScのβ シート構造を検出する試み23)や,fluorescence correlation spectroscopy24)あるいは改変版サンドイッチ ELISA 法25)で異常に重合した PrP 粒子を検出する試みが報告されている.重合状態の変化とはすなわち 界面活性剤存在下での可溶性をあらわし,PrPScは界面活性剤難溶性である,という性質を指標としている. 蛋白重合度の違いを検出する方法として,ショ糖密度勾配遠心法やゲル濾過クロマトグラフィーにより分 子密度やサイズごとに分画することができる26)27).感染性の指標として,実験動物に接種して発症や病理 変化の有無を見るバイオアッセイ法が鋭敏であるが,発症までに時間を要する欠点がある.そこで PrPC を PrPScに変換させるための鋳型としての性質を で評価する protein misfolding cyclic amplifica-tion(PMCA)法が開発されている28).
PrP オリゴマー
従来の指標で検出する PrPScは,アミロイド線維を形成するような高度に重合した状態と考えられる. 一方で,分子量にして 300∼600kDa,14∼28 量体程度の比較的低分子状態の重合体(PrP オリゴマー)の ほうが,感染性が強く,神経細胞毒性も強いことが報告されている29)30).神経細胞毒性に関しては他の神 経変性疾患においても同様に,原因蛋白質のオリゴマー分子が病態に強く関与する31)∼34).前述の sPrPSc や PrP オリゴマーといった「中間的な」異常蛋白質を検出するためには,従来の基準とは異なる性質を指 標として検討することが必要である.そこで我々は,遠心ゲル濾過カラムを用いた蛋白のサイズ別分画に 図2 PrPresの検出A:PrPresフラグメントのシェーマ.PrP は C 末側の GPI アンカーを受けて細胞膜に局在する.N 型糖鎖修飾を受け
るアスパラギン残基が2カ所あり,無糖鎖型,1糖鎖型,2糖鎖型で分子量が異なるためウェスタン・ブロット法で は3本バンドとして検出される.プロテアーゼ(PK)処理により N 末側が分解されるが,type 1 と type 2 では切断 部位が異なる.B:ウェスタン・ブロット法.プロテアーゼ処理をしていないサンプル(full-length)に比べ,プロテ アーゼ処理後は異常 PrP の未分解断片が残り,バンドが分子量の小さい方(下方)にシフトする.糖鎖結合のない一
番下のバンドの分子量が 19kDa に相当する type 2 PrPresは致死性家族性不眠症(FFI)症例のサンプルで,無糖鎖型
より,PrP オリゴマーの簡便な検出に取り組んできた.市販の遠心ゲル濾過カラムキット,BD CHRO-MA SPIN + TE-200 カラム(Clontech 社)を用いて,界面活性剤を含む溶解バッファーにて調製したヒト 孤発性 CJD 症例のサンプルをサイズ分画したところ,早期に溶出した分画(図3A,分画2,3)には分 子サイズの大きい PrP オリゴマーが含まれ,遅れて溶出した分画(図3A,分画6∼8)にはモノマーの PrPCが検出された.病期の異なる症例ごとに比較検討したところ,病理変化の軽い症例でもオリゴマー分 子の存在は明らかであり(図3A短期例,分画2,3),病理変化の進行に伴い異常オリゴマーが増加して, 正常モノマーは著明に減少していた(図3A長期例).これらの分子種の動的な変化が病態に関与してい る可能性が高いと考えられた35).実験モデルマウスを用いた経時変化の検討で,PrPresの出現に先行して PrP オリゴマーが増加し,この sPrPScの蓄積時期が海綿状変化を生じる時期にむしろ近いことを示した (図3B).同じサイズのオリゴマー分子でも病末期になるとプロテアーゼ抵抗性を獲得することが示され, 多面的な指標で PrPScを検出,解析する必要性がある36). また,我々の研究室でもプリオン病の治療法開発に取り組んできたが37)∼39),一般に治療候補薬のスク リーニングにおける効果判定はプリオン持続感染細胞株への薬物投与後,PrPresが減少することを目安と してきた.その後,感染モデルマウスに応用して, で延命効果と病理変化の低減を確認する.しか し培養細胞と動物実験とでは効果が一致しないことがしばしば生じる.治療に対する反応性がプロテアー ゼ抵抗性という指標と蛋白重合度という指標では異なる場合がある可能性がある.治療反応性についても 単にプロテアーゼ抵抗性を指標にするだけでは十分でなく,オリゴマーの存在等より多面的な指標で評価 することが必要であろう.
神経変性疾患の病態解明に向けて
これまでに我々は,clusterin(apolipoprotein J)がプリオン病罹患脳で反応性に高発現し,末梢組織から の感染ルートであるリンパ組織において,PrPScと高率に共存していることを明らかにし,高次構造依存的 に両者が相互作用する可能性を示した40)41).プリオン病研究では PrPScが鋳型となって PrPCを PrPScに 変換する際に,蛋白の折りたたみ構造を変化させる分子シャペロン様因子(protein X)が介在するという 仮説がある.こうした分子シャペロンは,コンフォメーション病に共通して病態に関与する可能性がある. 図3 PrP オリゴマーの検出 A:孤発性 CJD の PrP 分画パターン.ゲル濾過カラムで分画後,サンプルバッファーで処理してモノマー化し,ウェ スタン・ブロットにて検出した.分画2,3のシグナルは分子サイズの大きい異常オリゴマーに相当する.短期例: 罹病期間2ヶ月,長期例:10ヶ月.B:NZW マウスに福岡1株プリオンを脳内接種したモデルマウスにおける PrPSc の経時的変化.異常オリゴマー(白丸)は接種後 90 日で有意に増加しているのに対して,PrPres(灰色菱形)は 105 日から遅れて増加する.プリオン病はヒトでは稀な疾患であるが,遺伝病あるいは感染症としての側面も有して,それぞれに有用 なモデル動物の実験系が確立されており,Alzheimer 病を含む神経変性疾患の病態をコンフォメーション 病という共通の概念で検討するのに適したモデルを提供している.今後さらに,蛋白の高次構造の違いや 重合状態の変化,正常蛋白から異常型への構造変換能など様々な指標で PrP の動態を解析して,神経変性 に至る病態機序を解明したいと考えている.
参 考 文 献
1) Brown P : Reflections on a half-century in the field of transmissible spongiform encephalopathy. Folia Neuropathol. 47 : 95-103, 2009.
2) Gajdusek DC and Zigas V : Degenerative disease of the central nervous system in New Guinea; the endemic occurrence of kuru in the native population. N Engl J Med. 257 : 974-978, 1957.
3) Gajdusek DC, Gibbs CJ and Alpers M : Experimental transmission of a Kuru-like syndrome to chimpanzees. Nature. 209 : 794-796, 1966.
4) Gibbs CJ, Jr., Gajdusek DC, Asher DM, Alpers MP, Beck E, Daniel PM and Matthews WB : Creutzfeldt-Jakob disease (spongiform encephalopathy) : transmission to the chimpanzee. Science. 161 : 388-389, 1968.
5) Gajdusek DC : Unconventional viruses and the origin and disappearance of kuru. Science. 197 : 943-960, 1977.
6 Prusiner SB : Novel proteinaceous infectious particles cause scrapie. Science. 216 : 136-144, 1982.
7) Oesch B, Westaway D, Walchli M, McKinley MP, Kent SB, Aebersold R, Barry RA, Tempst P, Teplow DB, Hood LE, Prusiner SB, Weissmann C : A cellular gene encodes scrapie PrP 27-30 protein. Cell. 40 : 735-746, 1985.
8) Hsiao K, Baker HF, Crow TJ, Poulter M, Owen F, Terwilliger JD, Westaway D, Ott J and Prusiner SB : Linkage of a prion protein missense variant to Gerstmann-Sträussler syndrome. Nature. 338 : 342-345, 1989. 9) Doh-ura K, Tateishi J, Sasaki H, Kitamoto T and Sakaki Y : Pro → leu change at position 102 of prion protein is the most common but not the sole mutation related to Gerstmann-Str?ussler syndrome. Biochem Biophys Res Commun. 163 : 974-979, 1989.
10) Büeler H, Fischer M, Lang Y, Bluethmann H, Lipp HP, DeArmond SJ, Prusiner SB, Aguet M and Weissmann C : Normal development and behaviour of mice lacking the neuronal cell-surface PrP protein. Nature. 356 : 577-582, 1992.
11 Büeler H, Aguzzi A, Sailer A, Greiner RA, Autenried P, Aguet M and Weissmann C : Mice devoid of PrP are resistant to scrapie. Cell. 73 : 1339-1347, 1993.
12 Pan KM, Baldwin M, Nguyen J, Gasset M, Serban A, Groth D, Mehlhorn I, Huang Z, Fletterick RJ, Cohen FE and Prusiner SB : Conversion of α-helices into β-sheets features in the formation of the scrapie prion proteins. Proc Natl Acad Sci U S A. 90 : 10962-10966, 1993.
13) Carrell RW and Lomas DA : Conformational disease. Lancet. 350 : 134-138, 1997.
14 Parchi P, Giese A, Capellari S, Brown P, Schulz-Schaeffer W, Windl O, Zerr I, Budka H, Kopp N, Piccardo P, Poser S, Rojiani A, Streichemberger N, Julien J, Vital C, Ghetti B, Gambetti P and Kretzschmar H : Classification of sporadic Creutzfeldt-Jakob disease based on molecular and phenotypic analysis of 300 subjects. Ann Neurol. 46 : 224-233, 1999.
15) Gambetti P, Kong Q, Zou W, Parchi P and Chen SG : Sporadic and familial CJD : classification and characterisation. Br Med Bull. 66 : 213-239, 2003.
16 Tremblay P, Ball HL, Kaneko K, Groth D, Hegde RS, Cohen FE, DeArmond SJ, Prusiner SB and Safar JG : Mutant PrPScconformers induced by a synthetic peptide and several prion strains. J Virol. 78 : 2088-2099, 2004.
17) Wadsworth JD, Joiner S, Hill AF, Campbell TA, Desbruslais M, Luthert PJ and Collinge J : Tissue distribution of protease resistant prion protein in variant Creutzfeldt-Jakob disease using a highly sensitive immunoblotting assay. Lancet. 358 : 171-180, 2001.
18) Lasmézas CI, Deslys JP, Robain O, Jaegly A, Beringue V, Peyrin JM, Fournier JG, Hauw JJ, Rossier J and Dormont D : Transmission of the BSE agent to mice in the absence of detectable abnormal prion protein. Science. 275 : 402-405, 1997.
19) Safar J, Wille H, Itri V, Groth D, Serban H, Torchia M, Cohen FE and Prusiner SB : Eight prion strains have PrPScmolecules with different conformations. Nat Med. 4 : 1157-1165, 1998.
Serban H, Groth D, Burton DR, Prusiner SB and Williamson RA : Measuring prions causing bovine spongiform encephalopathy or chronic wasting disease by immunoassays and transgenic mice. Nat Biotechnol. 20 : 1147-1150, 2002.
21) Bellon A, Seyfert-Brandt W, Lang W, Baron H, Groner A and Vey M : Improved conformation-dependent immunoassay : suitability for human prion detection with enhanced sensitivity. J Gen Virol. 84 : 1921-1925, 2003.
22) Safar JG, Geschwind MD, Deering C, Didorenko S, Sattavat M, Sanchez H, Serban A, Vey M, Baron H, Giles K, Miller BL, Dearmond SJ and Prusiner SB : Diagnosis of human prion disease. Proc Natl Acad Sci U S A. 102 : 3501-3506, 2005.
23) Tcherkasskaya O, Davidson EA, Schmerr MJ and Orser CS : Conformational biosensor for diagnosis of prion diseases. Biotechnol Lett. 27 : 671-675, 2005.
24) Birkmann E, Schafer O, Weinmann N, Dumpitak C, Beekes M, Jackman R, Thorne L and Riesner D : Detection of prion particles in samples of BSE and scrapie by fluorescence correlation spectroscopy without proteinase K digestion. Biol Chem. 387 : 95-102, 2006.
25) Vasan S, Mong PY and Grossman A : Interaction of prion protein with small highly structured RNAs : detection and characterization of PrP-oligomers. Neurochem Res. 31 : 629-637, 2006.
26) Cali I, Castellani R, Yuan J, Al-Shekhlee A, Cohen ML, Xiao X, Moleres FJ, Parchi P, Zou WQ and Gambetti P : Classification of sporadic Creutzfeldt-Jakob disease revisited. Brain. 129 : 2266-2277, 2006.
27) Yuan J, Xiao X, McGeehan J, Dong Z, Cali I, Fujioka H, Kong Q, Kneale G, Gambetti P and Zou WQ : Insoluble aggregates and protease-resistant conformers of prion protein in uninfected human brains. J Biol Chem. 281 : 34848-34858, 2006.
28) Saborio GP, Permanne B and Soto C : Sensitive detection of pathological prion protein by cyclic amplification of protein misfolding. Nature. 411 : 810-813, 2001.
29 Silveira JR, Raymond GJ, Hughson AG, Race RE, Sim VL, Hayes SF and Caughey B : The most infectious prion protein particles. Nature. 437 : 257-261, 2005.
30) Simoneau S, Rezaei H, Sales N, Kaiser-Schulz G, Lefebvre-Roque M, Vidal C, Fournier JG, Comte J, Wopfner F, Grosclaude J, Schatzl H and Lasmezas CI : In vitro and in vivo neurotoxicity of prion protein oligomers. PLoS Pathog. 3 : 1175-1186, 2007.
31) McLean CA, Cherny RA, Fraser FW, Fuller SJ, Smith MJ, Beyreuther K, Bush AI and Masters CL : Soluble pool of Aβ amyloid as a determinant of severity of neurodegeneration in Alzheimer's disease. Ann Neurol. 46 : 860-866, 1999.
32) Walsh DM, Klyubin I, Fadeeva JV, Cullen WK, Anwyl R, Wolfe MS, Rowan MJ and Selkoe DJ : Naturally secreted oligomers of amyloid β protein potently inhibit hippocampal long-term potentiation in vivo. Nature. 416 : 535-539, 2002.
33) Kaylor J, Bodner N, Edridge S, Yamin G, Hong DP and Fink AL : Characterization of oligomeric intermediates in α-synuclein fibrillation : FRET studies of Y125W/Y133F/Y136F α-synuclein. J Mol Biol. 353 : 357-372, 2005.
34) Takahashi Y, Okamoto Y, Popiel HA, Fujikake N, Toda T, Kinjo M and Nagai Y : Detection of polyglutamine protein oligomers in cells by fluorescence correlation spectroscopy. J Biol Chem. 282 : 24039-24048, 2007.
35 Minaki H, Sasaki K, Honda H and Iwaki T : Prion protein oligomers in Creutzfeldt-Jakob disease detected by gel-filtration centrifuge columns. Neuropathology. 29 : 536-542, 2009.
36 Sasaki K, Minaki H and Iwaki T : Development of oligomeric prion-protein aggregates in a mouse model of prion disease. J Pathol. 219 : 123-130, 2009.
37) Murakami-Kubo I, Doh-ura K, Ishikawa K, Kawatake S, Sasaki K, Kira J, Ohta S and Iwaki T : Quinoline derivatives are therapeutic candidates for transmissible spongiform encephalopathies. J Virol. 78 : 1281-1288, 2004.
38) Doh-ura K, Ishikawa K, Murakami-Kubo I, Sasaki K, Mohri S, Race R and Iwaki T : Treatment of transmissible spongiform encephalopathy by intraventricular drug infusion in animal models. J Virol. 78 : 4999-5006, 2004.
39) Ishikawa K, Doh-ura K, Kudo Y, Nishida N, Murakami-Kubo I, Ando Y, Sawada T and Iwaki T : Amyloid imaging probes are useful for detection of prion plaques and treatment of transmissible spongiform encephalopathies. J Gen Virol. 85 : 1785-1790, 2004.
and mouse brains infected with transmissible spongiform encephalopathies. Acta Neuropathol. 103 : 199-208, 2002.
41) Sasaki K, Doh-ura K, Ironside J, Mabbott N and Iwaki T : Clusterin expression in follicular dendritic cells associated with prion protein accumulation. J Pathol. 209 : 484-491, 2006.
(参考文献のうち,数字がゴシック体で表示されているものについては,著者により重要なものと指定された分です.) 佐々木 健介(ささき けんすけ) 九州大学助教(大学院医学研究院神経病理学分野).医博. ◆略歴:1970 年福岡県に生る.1996 年九州大学医学部卒業.同年同大学精神科神経科入局.2002 年同大学院医学系研究科博士課程修了.2003 年英国国立 CJD サーベイランス・ユニット客員研究 員.2004 年より同大学院医学研究院神経病理学分野助手.2008 年より現職. ◆研究テーマと抱負:本稿のタイトルにある通り神経変性疾患の病態解明が研究のテーマであり, 対象疾患はプリオン病だけでなく,久山町研究室と共同でアルツハイマー病やレビー小体型認知症 などメジャーな認知症性疾患の神経病理学的解析も行っています.九州大学病院の脳の健康クリ ニック(もの忘れ外来)の診療にも携わっており,認知症の予防から解剖まで幅広く対応します. ◆趣味:お酒をたしなむことと,6∼7月は,山笠. プロフィール