卒業論文
時間‐デジタル変換器と偶高調波
ミキサを用いる
AD
変換器の提案
北見工業大学電気電子工学科
集積システム研究室
在籍番号
1110800673
高橋 卓人
2015
年
2
月
25
日
目次
第1章 はじめに 1 1.1 背景と目的. . . 1 1.2 本論文の構成 . . . 3 第2章 時間‐デジタル変換 4 2.1 時間‐デジタル変換器の原理と特徴 . . . 4 2.2 フラッシュ型TDC . . . 5 2.2.1 構成 . . . 5 2.2.2 遅延量のばらつきによる出力の線形性の劣化. . . 7 第3章 偶高調波ミキサ 8 3.1 偶高調波ミキサの原理と特徴 . . . 8 3.2 EHMIXによって発生する時間差 . . . 11 3.3 発生時間差を拡大する方法 . . . 13 3.3.1 RF信号を差動入力とし発生時間差を拡大する方法 . . . 13 3.3.2 LO周波数と発生時間差の関係 . . . 15 3.3.3 LO周波数を下げて発生時間差を拡大する方法の問題点 . . . 18 3.3.4 RF信号を差動入力としLO周波数を変化させた入出力特性 . . . 22 第4章 提案するADCと他手法との比較 23 4.1 提案するTDCとEHMIXを用いるADCの原理と特徴 . . . 23 4.2 EHMIXをダイレクトコンバージョン受信機として用いたADCとの比較 . . 25 4.2.1 EHMIXをダイレクトコンバージョン受信機として用いたADCの原理 と特徴 . . . 25 4.2.2 提案ADCとの比較 . . . 25 4.3 他手法のTDCを用いたADCとの比較 . . . 274.3.1 小室氏の提案するADCの原理[1] . . . 27 4.3.2 提案ADCとの比較 . . . 28 第5章 シミュレーションによる確認 29 5.1 シミュレーション . . . 29 5.2 考察 . . . 34 第6章 結論 35 参考文献 38
第
1
章
はじめに
1.1
背景と目的
現在,私たちの生活で使われている家庭家電製品や携帯電話などといったほとんどのシステ ムは,アナログからデジタルへと移行させる動きがあり,次々にデジタル化が進んでいる.デ ジタルにする利点は,アナログよりも自動計測や記録,保存,出力に適しており.デジタル信 号処理技術との組み合わせで,高度な分析,解析,自動制御などが容易である点にある.また, 記録保存ではデータが劣化しにくく記録媒体の進歩により小型,軽量化できる点などが挙げら れる. デジタル化が進んでいるからといって内部システムがすべてデジタルというわけではなく, 一般的な製品ではアナログ回路とデジタル回路の両方が使われている.これは人間が五感で実 際に感じる情報はアナログな情報であるため入力部(あるいは出力部)ではアナログ情報であ る必要があるからである. したがってアナログ情報の入力をデジタル処理するため,アナログをデジタルに変換 (AD変換)することが必要になる.AD変換をする電子回路のことをADC(Analog-to-Digital Converter)といい,電子回路の中でも重要な回路であるがADCは半導体プロセスの微細化に よる問題も抱えている.近年の半導体プロセスの微細化の結果,回路全体の電源電圧の低下と いう効果が発生した.この効果はデジタル回路にとっては利点として働くが,アナログ回路に とっては必ずしもそうではない.特にADCでは電源電圧が低下しても素子値のばらつきは減 少しないので結果的に電圧分解能の低下を引き起こすという結果が起きる.半導体プロセスの 微細化によるADCの問題とはこの電圧分解能の低下のことである. 一方,微細化によるもう一つの効果として高速スイッチング化がある.この効果により従来 よりも高速で動作する回路を設計することで従来よりも精密に時間を測定することが可能になった.これは言い換えると時間分解能が向上したともいえる. 上記の2つのことから微細化によるメリットを生かし,デメリットを避けるADCとして 電圧分解能ではなく時間分解能により入力電圧をセンシングするADCに期待が集まってお り様々な研究がなされている[1].これらの動きを受けて,本研究では時間分解能を利用する ADCの新手法の提案を目標とした. 時間分解能を利用するADCを設計する場合,入力電圧に応じた時間差信号を出力する回路 と時間差信号をセンシングする回路が必要になる. 本論文では入力電圧に応じた時間差信号を出力する回路として偶高調波ミキサ(EHMIX)に 注目した.注目した理由は,EHMIXはミクサなのでミクサ出力をそのまま出力信号として扱 えれば信号の受信に必要な回路が少なくなりよい,という考えと局部発振器の周波数を変える だけで所望周波数を変更することができるという特徴からソフトウエア無線機への応用に適し ているという考えからである.しかし,EHMIXの出力を電圧出力として得る場合についての 研究[2]はされているが,時間差信号として得る場合についての研究はまだ十分にされていな いので本研究ではそれについての解析も行う. また,時間差信号をセンシングする回路として周波数カウンタがよく知られているが高い時 間分解能を要求すると高速のクロックで動作する必要があることから消費電力が大きくなる問 題があった.そこで高速のクロックを使わずに高い時間分解能を得られる回路として時間‐デ ジタル変換器(TDC)の研究が進んでおり,様々な研究がされている[1][3][4].この動きを受 け本研究ではTDCによる時間測定を選択した. 本論文ではまずTDCの原理と特徴について述べ,その後EHMIXを電圧‐時間変換器とし て使用した場合の特性について,まだ十分な研究がされていないので解析した.その結果,高 周波では入力に対する発生時間差が少ないという問題が出てきたため時間差を拡大する方法に ついても検討した. その後,提案する時間分解能を用いたADCを説明し他の手法のADCと比較して検討した. 最後に提案するADCのシミュレーションによる動作の確認を行った. 結果としてEHMIXを電圧-時間変換器として使用した場合の解析を進め,それを利用し発 生時間差を拡大する方法についての解析をすることができた.また提案ADCの検討とシミュ レーションによる動作の確認ができた.課題は高速動作では高い分解能を得ることが難しくな る点である.
1.2
本論文の構成
第2章では時間‐デジタル変換器(TDC)の原理と特徴について簡単に述べる.また基本的 なTDCであるフラッシュ型TDCについて回路構成を示し詳しく説明する. 第3章では偶高調波ミキサ(EHMIX)の原理と特徴について簡単に述べ,EHMIXを電圧‐ 時間変換器として使用した場合の特性について解析する.また,入力に対して発生する時間差 を拡大する方法についても検討した. 第4章では本研究で提案するEHMIXとTDCを用いたADCの回路構成を示し,その動作 原理や特徴について説明し,他の手法のADCと比較しながら検討する. 第5章では提案ADCをシミュレーション上で構成し,その動作を確認する. 最後に第6章では結論として研究結果のまとめと今後の課題等について述べる.第
2
章
時間‐デジタル変換
2.1
時間‐デジタル変換器の原理と特徴
時間‐デジタル変換器とは時間間隔を測定する回路であり,TDC (Time-to-Digital Con-verter),タイムデジタイザとも呼ばれる.以下ではTDCと呼ぶ.この章ではTDCの原理と 特徴について簡単に述べる. TDCは大部分が低電圧動作の可能なデジタル回路で構成できるため微細CMOSプロセス での実現に適しており,現在数ピコ秒の時間分解能のものが報告されている [3].最近ではAll-Digital-PLL (ADPLL)の位相比較器やセンサインターフェイス回路,TDCベースADCな
どで使用されており,活発に研究開発が行われている[1][4].
TDC回路はフラッシュ型TDC,バーニア型TDC,デルタシグマ型TDCなど様々な種類が
ある[5][6].2.2節ではその中でも基本的なフラッシュ型TDCについて構成回路図等を示して
2.2
フラッシュ型
TDC
2.2.1
構成
3段のフラッシュ型TDCの回路構成を図2.2.1に示す.Start信号が入力されると遅延素子 を介し立ち上がり信号が伝搬する.Stop信号の立ち上がりタイミングで各フリップフロップ にStart信号の順次遅延された信号がラッチされ,エンコーダで符号化される.Start信号と Stop信号の立ち上がり時間差に応じて各フリップフロップの出力値は変化し,立ち上がり時 間差をデジタル値として出力する. 回路構成は遅延素子τの配列,入力信号がどの遅延素子まで伝搬したかを確認するためのD フリップフロップの配列,各Dフリップフロップの値を符号化するエンコーダで構成される. 実際に図2.2.1の回路に2τから3τの間の時間差の信号が入力された場合に出力値が得られ るまでの過程について図2.2.1と図2.2.2のタイミングチャートを使いながら説明する.Dは 出力デジタル値,τは遅延量である. $ % D E F G 図2.2.1 フラッシュ型TDCD
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図2.2.2 フラッシュ型TDCのタイミングチャート はじめにStart信号に注目する,Start信号波は図2.2.1のAの端子に入力される.図2.2.1 のa点ではStart信号は入力された瞬間に到達する.次に b点ではひとつ遅延素子を通過する ので τだけ遅延した後に信号が到達する.同じくc点ではふたつ遅延素子を通過するので2τ だけ遅延した後に信号が到達する.図2.2.1の回路図よりa点,b点,c点,の信号は入力さ れた信号がそれぞれの遅延時間分だけ遅延してから各Dフリップフロップに入力されるとわ かる.一方Stop信号についてみてみると,Stop信号はStart信号とは異なり図2.2.1のBの端子か ら入力される.Stop信号線は遅延素子などは一切ないので入力された瞬間にすべてのフリッ
プフロップに同時に入力される.DフリップフロップはStop信号が立ち上がった瞬間に入力 されていた値を出力に返す動作をするので図2.2.2ではD0,D1,D2は出力がHigh,D3はLow となる. つまりフラッシュ型TDCとはStart信号とStop信号の時間差が遅延素子ひとつ分の遅延量 (τ)の何倍より多く,何倍より少ないのかを温度計コードとして出力する回路だといえる. この回路の問題点として,個別遅延素子τの遅延量に相対ばらつきが発生した場合,出力の 線形性が損なわれることがある.この問題については2.2.2節で説明する.
2.2.2
遅延量のばらつきによる出力の線形性の劣化
フラッシュ型TDCの回路上の問題点として,個別遅延素子τの遅延量に相対ばらつきが発 生した場合,出力の線形性が損なわれる. 図2.2.3(a)に理想的なタイミングチャートを,同図(b)に遅延素子における遅延量が増加し た場合のタイミングチャートを示す.τは平均遅延量,∆τは遅延量誤差(ばらつき),Dは出力 デジタル値である.時間差が2τと3τの間の時間差信号が入力された場合,理想的にはD0∼ D1はHigh,D3はLowとなる.図2.2.3(b)はばらつきによって2つ目の遅延素子の遅延量 だけが増加した場合である.その場合,D0,D1が出力値High,D2,D3が出力値Lowとな り,入力遅延差に対し出力値が減少し出力値に誤差が生じる(線形性が劣化する). 図2.2.3には遅延量が増加した場合を示したが,遅延量の減少する場合も同様にTDCの非 線形性を生じる.'
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図2.2.3 理想的なタイミングチャートと遅延量が増加した場合のタイミングチャート第
3
章
偶高調波ミキサ
3.1
偶高調波ミキサの原理と特徴
原理的に自己混合のないミクサとして偶高調波ミキサ(even-harmonic mixer)が知られてい る(以降EHMIXと呼ぶ[2]).この章ではEHMIXの原理と特徴について簡単に説明し,今回 の研究で使用するEHMIXのもつ電圧‐時間変換機能について説明する. 一般に,EHMIXは加算器と点対称な入出力特性を有する非線形素子とローパスフィルタ (LPF)を用いてモデル化できる.図3.1.1に非線形素子として理想リミッタを使い,単純化し たEHMIXのモデルを示す. EHMIXの原理は受信信号(RF)をその1/2の周波数の局部発振器の信号(LO)と加算するこ とで出力波形にRF信号の振幅に応じたデューティ比の変化を生じさせ,その変化を非線形素 子で顕在化させLPFで平均化し出力を得るというものである. EHMIXの大きな特徴として非線形素子の点対称性によりダイレクトコンバージョン受信方 式にとって大きな問題となる自己混合を原理的に生じないということがある.⌮࣑ࣜࢵࢱ
図3.1.1 EHMIXのモデル次に実際に図3.1.1のモデルに信号が入力された場合をもとにして動作原理について説明す る。図3.1.2は図3.1.1のモデルにLO信号として周波数 f の信号が,RF信号として周波数 2 f の信号が入力されたときの入力信号と出力信号を示した図である.LO信号(図3.1.2では オレンジ色)とRF信号(図3.1.2では青色)は加算器で加算され,その出力(図3.1.2では黄 緑色)がリミッタに入力され,最終的な出力は図中の緑色の矩形波状の信号となる.わかりや すくするためLO信号をリミッタに通した信号を赤で表すと,LO信号をリミッタに通した信 号(緑)は赤の信号よりデューティ比が小さくなっていることがわかる.仮に図3.1.2よりも入 力RF信号の振幅が増えれば図3.1.2よりリミッタ出力の正の期間が短くなり,負の期間が長 くなることがわかる.つまりEHMIXの出力は信号の振幅によってパルス幅変調(PWM)さ れた矩形波となるといえる. これらを言い換えるとRF信号の振幅によってRF信号とLO信号の合成波をリミッタに通 した信号の立ち上がり時間(又は立ち下り時間)と LO信号のそれとの違いが変化するとい える.この時間差をTDCを使ってセンシングしAD変換するというのが本研究のアイデアで ある. 図3.1.2 EHMIXの入出力波形
先ほど「EHMIXの出力は信号の振幅によってパルス幅変調(PWM)された矩形波となると いえる」と書いたが,従来のEHMIXの使い方はこの矩形波のデューティ比の変化をLPFを 通すことで平均化し直流電圧として出力とするという方式であった.この方式では誤差要因と して非線形素子のオフセットや非対称性が考えられるため,非線形素子には正確なゼロクロス 点と高い対称性が求められる.それに対して本研究はこのデューティ比の変化した矩形波の中 の1波について考え,立ち上がる時間(立ち下がる時間)を測定することで入力振幅を測定す るというアイデアである.つまり従来の方式のEHMIXと比べ誤差要因として非線形素子の非 対称性は問題にならなくなるため,非線形素子に求められる性質は正確なゼロクロス点だけに なるという利点が考えられる. 以上のことから本研究で用いるEHMIXに求める非線形素子は従来EHMIXで使われてい た非線形素子よりも容易に作成することが可能だといえる.
3.2
EHMIX
によって発生する時間差
実際にEHMIXを通信に使うとするとどの程度の時間差が発生するのか,仮に現在携帯電話 などで使われている周波数である2 GHzで考えてみる.2 GHzのRF信号が入力された場合 に発生する時間差をMathematicaを使って解析した結果を図3.2.1に示す.EHMIXはLO信 号の振幅に対するRF信号の振幅に感度があるため,いまLO信号の振幅をα,RF信号の振 幅をβとすると横軸はβ/αとなり,縦軸が発生する時間差である.またこの入出力特性の線形 性について議論するため1dBコンプレッションポイント(P1dB)と3次インターセプトポイン ト(IP3)を求めたところ P1dBは0.274...,3次入力インターセプトポイント(IIP3)は0.852... であった.図中の赤い破線がP1dB,黒い線が3次入力インターセプトポイント(IIP3)である. 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 2. ´ 10-11 4. ´ 10-11 6. ´ 10-11 8. ´ 10-11ߚȀߙ
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図3.2.1 EHMIXの入出力関係 図3.2.1より2 GHzのRF信号が入力された場合に一般的に最大で入力されるであろうP1dB まで入力された場合に発生する時間差は40 ps程度だとわかる.現在のTDCによる時間分解 能は最新のプロセスで作る最小値で10 ps 程度であるから,これでは遅延4個分,すなわち 2-bitの分解能しか実現できない. この時間差を十分通信に使えるような分解能を確保できるようにセンシングするためには非 常に高精度なTDCが要求される.それを避けるため次節では時間差を拡大する方法について 述べる. 時間差を拡大する方法としてRF信号を差動入力とする方法が考えられる,この方法につい ては3.3.1節で説明する.またEHMIXによって発生する時間差は使用するLO信号の周波数fLOに依存するので fLOを下げることで発生時間差を拡大することができる,この方法につい
3.3
発生時間差を拡大する方法
3.3.1
RF
信号を差動入力とし発生時間差を拡大する方法
図3.3.1は通常のEHMIXとRF信号を差動入力とした場合のEHMIXの入出力波形である. 以降これを使いながら説明する.図3.3.1の(a),(b)中とも青色はRF信号,赤色はLO信号, 紫色は RF信号とLO信号の合成波である.(b-2)中の青色の破線は RF信号を反転させた信 号,紫色の破線はLO信号と反転RF信号との合成波である. 前節で説明したように通常のEHMIXで発生するRF信号に対応した時間差とはRF信号と LO信号の合成波をリミッタに入力した場合の立ち上がる時間(立ち下がる時間)とLO信号 をリミッタに入力した場合の立ち上がる時間(立ち下がる時間)の時間の差のことを言う,つ まり図3.3.1(a)ではt1のことである. これに対してRF信号を差動入力とし時間差を拡大する方法とは,EHMIXにRF信号が入 力された場合の合成波をリミッタに入力した立ち上がり時間(立ち下がる時間)と逆相RF信 号が入力された場合の合成波をリミッタに入力した立ち上がり時間(立ち下がる時間)の時間 の差(図3.3.1(b)のt2)をRF信号の振幅によって発生する時間差として考える方法である. 図3.3.1より明らかなようにこの方法を使えば同じ振幅のRF信号に対して通常のEHMIX で時間差を出力するより2倍の時間差出力を得ることができる,つまり図3.3.1ではt2= 2×t1 の関係にある. また,RF信号を差動入力とすると発生時間差が拡大するだけで無く,差動入力となるため 偶数次の歪みを打ち消せるという利点もある.D㏻ᖖࡢ(+0,;ቑሙྜࡢ
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0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 ƚϭ ƚϮE5)ಙྕࡀධຊࡉࢀࡓ
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図3.3.1 通常のEHMIXとRF信号を差動入力にした場合のEHMIXの入出力波形の比較3.3.2
LO
周波数と発生時間差の関係
通常のEHMIXでは受信する信号であるRF信号をRF信号の1/2の周波数のLO信号と合 成して出力を得る.つまりRF信号の周波数を fRF,LO信号の周波数を fLOとすると式(3.3.1) のように表せる. fLO = 1 2fRF (3.3.1) これに対してEHMIXではLO信号の周波数をRF信号の1/2の周波数ではなく,より低い 周波数であるRF信号の1/4,1/6,1/8,の周波数と合成しても正常に動作するだけでなくRF 信号の1/2の周波数と合成した時よりも大きな時間差出力を得ることができる. 具体例を挙げて説明する. 図3.3.2はEHMIXにRF信号(青色)として周波数2 Hzの余弦波が入力されたときにLO 信号(赤色)として 1 2fRF, 1 4fRF, 1 6fRF, 1 8fRF のLO信号が入力された場合の入出力波形であ る(振幅はLO信号が1,RF信号が0.3). 図3.3.2から 1 2 fRF, 1 4fRF, 1 6fRF, 1 8fRF と変化させていくと出力時間差も増えていくことが 分かる.0.5 1.0 1.5 2.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 0.5 1.0 1.5 2.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 0.5 1.0 1.5 2.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 0.5 1.0 1.5 2.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 ;ĂͿ݂ܴܨ ൌଵଶ݂ܮܱ䛾ሙྜ ;ďͿ݂ܴܨ ൌଵ ସ݂ܮܱ䛾ሙྜ ;ĐͿ݂ܴܨ ൌଵ ݂ܮܱ䛾ሙྜ ;ĚͿ݂ܴܨ ൌ ଵ ଼݂ܮܱ䛾ሙྜ 図3.3.2 LOをさらに低くした場合のEHMIXの入出力波形
この結果をさらにわかりやすくするために fRF = 2 GHz,β/α = 0.3としてLOの周波数を 変化させていったときの発生時間差を Mathematicaで計算した結果を表3.1 と図3.3.3に示 した. 表3.1 LO周波数とEHMIXで発生する時間差出力の関係 LO信号の周波数 発生時間差∆[ps] 1 2 fRF 41.7909 1 4 fRF 65.4419 1 6 fRF 78.8497 1 8 fRF 87.3341 1 10fRF 93.1718 ϰ͘ϬϬͲϭϭ ϱ͘ϬϬͲϭϭ ϲ͘ϬϬͲϭϭ ϳ͘ϬϬͲϭϭ ϴ͘ϬϬͲϭϭ ϵ͘ϬϬͲϭϭ ϭ͘ϬϬͲϭϬ
ϭͬϮZ& ϭͬϰZ& ϭͬϲZ& ϭͬϴZ& ϭͬϭϬZ&
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図3.3.3 LO周波数とEHMIXで発生する時間差出力の関係 これらより,LOの周波数を下げれば発生する時間差を拡大することができると分かった. しかし,この方法で発生する時間差を拡大するには大きな問題がある,それについては3.3.3 節で説明する.3.3.3
LO
周波数を下げて発生時間差を拡大する方法の問題点
3.3.2節よりLOの周波数を下げれば発生する時間差を拡大することができると分かった, しかしこの方法にはLOの周波数を下げると入力可能な範囲が狭くなるという問題がある.こ れについて以降説明する. EHMIXを電圧-時間変換器として使用する場合の入力範囲は出力波形の1周期にゼロクロ ス点が立ち上がりと立下りの2つである間に限られる,これはEHMIXを時間-デジタル変換 器として使用する場合,出力される信号の立ち上がりか立ち下りのゼロクロス点の変化を測定 するからである. 例をあげて説明する.図3.3.4はLO信号として 1 2fRF と 1 4fRF の周波数の信号を使った場合 のEHMIXの入出力波形をRF信号の振幅が0.5,1,1.5の場合について示したものである. 図中の赤色はLO信号,青色はRF信号,紫色はRF信号とLO信号の合成波である. 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 2.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 -1 1 2 0.5 1.0 1.5 2.0 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 0.5 1.0 1.5 2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 2.0 0.5 1.0 1.5 2.0 -2 -1 1 2;ĂͿ݂
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D5)ᖜ D5)ᖜ D5)ᖜE5)ᖜ E5)ᖜ E5)ᖜ
図3.3.4の(a)は fLO = 21fRF のときの入出力波形である.RF振幅が0.5のとき(a-1)はゼ ロクロス点は立ち上がりと立ち下りの2つであることがわかる.RF振幅が1のとき(a-2)も 同じくゼロクロス点は 2つである.RF 振幅が 1.5 のとき (a-3)は図をみればわかるように (a-1)(a-2)と異なり中央にも合成波のピークが発生している(赤い矢印),これによってこれま での立ち上がりと立ち下り以外に出力波の中央にも立ち上がりと立ち下りが発生しゼロクロス 点は4つであることがわかる,これではLO信号をリミッタに入力した赤い矩形波と紫色の矩 形波との時間差を測定する際に,現状ではどのゼロクロス点との時間差を測定しているのか判 別できず,正しい時間差を検出できないと考えられる. 同じく図3.3.4の(b)は fLO = 41fRFのときの入出力波形である.RF振幅が0.5のとき(b-1) は(a-1)と同じくゼロクロス点は立ち上がりと立ち下りの2つであることがわかる.RF振幅 が1のとき(b-2)は(a-2)と違い,すでに2つの初めはないピーク(赤い矢印)が発生しており, それにより4つのゼロクロス点が発生していることがわかる.上記のようにこれでは時間差の 測定はできない.RF振幅が 1.5のとき (b-3)は言うまでもなく多数のゼロクロス点が発生し ており時間差の測定はできない
図3.3.4からも明らかなように fLOが低くなるほど,このゼロクロス点が2つ以上になる入 力振幅が下がるという特性がある,これはつまり fLOが低くなるほど入力可能な範囲が低下す るということである.Mathematicaを用いて fLOと入力可能な振幅範囲との関係を解析した. 具体的な方法は,LOの振幅を 1としRFの振幅を0から1まで 0.01ずつ増加させながら RFとLOの合成波を符号化関数に入力したものを1周期で積分し,その積分値が単調増加(あ るいは減少)ではなくなる(つまり1周期のゼロクロス点が2つ以上になり,積分値の変化が 以前までと変わる)RFの振幅を最大で入力可能な範囲とし,それを fLO の値を 12fRF, 14fRF, 1 6fRF, 1 8fRF, 1 10fRF と変化させた場合について求めた. 結果を表3.2と図3.3.5に示す. 表3.2 LO周波数と入力可能な振幅範囲の関係 LO信号の周波数 入力可能な振幅範囲[β/α] 1 2fRF 1 1 4fRF 0.68 1 6fRF 0.47 1 8fRF 0.36 1 10fRF 0.29
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Ϭ Ϭ͘Ϯ Ϭ͘ϰ Ϭ͘ϲ Ϭ͘ϴ ϭ ϭ͘ϮϭͬϭϬĨZ&ଵ ϭͬϴĨZ& ϭͬϲĨZ& ϭͬϰĨZ& ϭͬϮĨZ&
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>K 図3.3.5 LO周波数と入力可能な振幅範囲の関係3.3.2節で fLO を低くした方が同じ入力信号に対して発生する時間差が大きくなることにつ
いてはすでに述べたが,上記の結果から fLO を低くすると入力可能な振幅範囲は減っていく
と分かる.これらの結果よりEHMIXを電圧‐時間変換機として利用する場合の fLO は予想
される入力信号の振幅と求める時間差とを考慮した上で最も望ましいものを選ぶべきだと分 かった.
3.3.4
RF
信号を差動入力とし
LO
周波数を変化させた入出力特性
3.3.1節,3.3.2節,3.3.3節の内容を受けてRF信号を2 GHzとしたときLO周波数を変化 させた場合のEHMIXの電圧‐時間変換器として使用した入出力特性を図3.3.6に示す. 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 5. ´ 10-11 1. ´ 10-10 1.5 ´ 10-10οݐ
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ͳ ʹ ܴܨ ͳ Ͷ ܴܨ ͳ ܴܨ ͳ ͺ ܴܨ ͳ ͳͲ ܴܨ 図3.3.6 RF信号を差動入力としLO周波数を変化させた入出力特性 図3.3.6を見ればわかるようにLO周波数を低くしたほうが同じ入力振幅でも発生する時間 差∆tは大きくなり,入力可能な範囲は狭くなることがわかる. また、LO周波数を変化させても発生する∆tの最大値に大きな違いはないことがわかる.こ のことからEHMIXを電圧‐時間変換器として使用した場合,最大発生∆tは入力される信号 の周波数にのみ依存するといえる.そのため求める最大発生時間差が決まっていれば入力信号 の周波数の上限も決めることができる.第
4
章
提案する
ADC
と他手法との比較
4.1
提案する
TDC
と
EHMIX
を用いる
ADC
の原理と特徴
この節では本研究で提案するTDCとEHMIXを用いるADCの動作原理と特徴について説 明する.提案するADCの回路図を図4.1.1に記す. 提案方式の動作原理は,受信したRF信号による発生時間差を大きくとるため差動入力と し.EHMIX部でRF信号の振幅に応じた立ち上がり時間差を持つ2つの信号を生成する.そ の発生時間差をTDCを用いて測定することで入力されたRF信号の振幅を測定するというも のである.この時の注意として図4.1.1のEHMIX部のままではEHMIX部の出力として,先 に出力される信号と後に出力される信号が一周期の間に交互に入れ替わってしまうという問題 があるため,実際にはEHMIX部の出力をTDCに入力する際はTDCのStart端子に入力されるEHMIX信号とStop端子に入力されるEHMIX出力を交互に入れ替える必要がある.その
方法としてはアナログ的にスイッチを用いて切り替え処理を行う方法と,ADCを2系統用意 し,デジタル出力した結果を取捨選択する方法が考えられる.
E n c o d e r
EHMIX
TDC
6WDUW 6WRS 図4.1.1 提案するTDCとEHMIXを用いるADCの回路図 提案方式ADCの特徴として,受信信号をオーバーサンプリングしている点がある.これは EHMIXがダイレクトコンバージョン受信機であることから受信信号はEHMIXの出力の時点 で直流電圧にまでダウンコンバージョンされており,提案ADCはこの直流付近の情報をTDC を用いて測定しているため直流付近の情報を fLOでサンプリングしているのと同じだと言える からである. また,もう一つの特徴は受信周波数を変化させてもTDC部では回路に特別な変更をするこ となく時間差を測定することができるという点がある,これらの特徴から提案方式は受信周波 数を変動させることの必要なソフトウエア無線機に向いていると考えられる.4.2
EHMIX
をダイレクトコンバージョン受信機として用いた
ADC
との比較
この節では従来からあるEHMIXをダイレクトコンバージョン受信機として使用した場合の ADCの動作原理と特徴を説明し,提案方式と従来方式を比較して検討する.4.2.1
EHMIX
をダイレクトコンバージョン受信機として用いた
ADC
の原理
と特徴
従来からあるEHMIXをダイレクトコンバージョン受信機として使用した場合のADCの回 路図を図4.2.1に記す. 従来方式の動作原理は,EHMIXの働きにより受信したRF信号の振幅に応じてデューティ 比の変化した矩形波信号をLPFに入力し,LPFでそのデューティ比の変化した矩形波信号を 平均化し直流電圧にし,その直流電圧をADCでデジタル値に変換するという原理である.そ のため後段のADCに入力される信号は低周波数のベースバンド信号であるためサンプリング レートの低いADCで構わないという特徴がある./3)
$'&
/2
5)
図4.2.1 EHMIXをダイレクトコンバージョン受信機として使用した場合のADCの回路図4.2.2
提案
ADC
との比較
従来方式と提案方式を比較する.まず回路規模について考えると,従来方式の回路構成に含 まれているLPFは直流以外の信号をできるだけカットできるものが求められるため次数の大 きいものが求められ,その結果大きくなる,それに対して提案方式はLPFがないので従来方 式よりLPFの分回路規模を小さく設計できるという違いがある. 次に,消費電力の観点でみると,提案方式のEHMIX部では精度が求められるため大きな電流を流す必要があることから従来方式のEHMIX部よりも消費電力は大きくなる.また,従来 方式のLPF部の消費電力はLPFをパッシブフィルタで構成するかアクティブフィルタで構成 するかで大きく異なる.提案方式のTDC部の消費電力は遅延素子τによって変化する. 最大の違いは,従来方式ではEHMIX部の出力である矩形波信号を LPFに入力してべース バンド信号を得るため,異なる周波数の信号を受信したい場合LPFのカットオフ周波数や次 数を変化させる必要があるのに対して,提案方式では,EHMIX部の出力である矩形波をTDC に入力するため,出力では矩形波の情報がデジタル値として出力されるので矩形波の低周波成 分を抽出するLPFをデジタル値の変化,つまりソフトウェア的に構成できる.この特徴から 提案方式は従来方式よりも受信周波数の変動が容易であるといえる.
4.3
他手法の
TDC
を用いた
ADC
との比較
この節では他の手法のTDCを用いるADCと提案方式とを比較して検討する.ここでは他 の手法のTDCを用いるADCとして小室貴樹氏の提案するADC[1]を選択する4.3.1
小室氏の提案する
ADC
の原理
[1]
図4.3.1に小室氏の提案するAD変換器の構成を,図4.3.2にタイミングチャートを示す. 図中のAin が入力信号,Vrefが基準余弦波,CLKが周期Tのクロック信号,T/Hはトラック・ ホールド回路である. 基準余弦波Vref(t)の振幅はAref で,周期はクロック信号と同じTとし,また,クロックの 立ち上がりエッジでVref(t)の位相は0とする. 動作原理は,基準余弦波(Vref)が最大値となるタイミングでトラック・ホールド回路は入力 信号をサンプリングして,そのときの入力電圧を保持する(Vhold).この保持された電圧と基準 余弦波が交差するタイミング(t1,t2,t3,・・・)は,後続のコンパレータとTDCによりデジ タル値として得られる.基準余弦波の振幅Aref,周波数 f のパラメータは,事前の校正操作に より既知とすることができるので,各タイミングtn における基準余弦波の電圧は式(4.3.1)か ら求められる.Vref(tn)= Arefcos
( 2πtn T ) (4.3.1) 入力アナログ信号Ain(t)と基準信号の余弦波Vref(t)をコンパレータで比較する.クロックの 立ち上がりエッジから(クロック周期T内に最初に現れた)コンパレータの出力波形が立ち上 がるまでの時間差をTDCにより測定する.この時間と基準余弦波信号から,その時間におけ る入力信号の振幅を求めることができる.nT≤ t < (n + 1)Tにおいて Arefcos ( 2πtn T ) = Ain(t) (4.3.2) 故に tn = Tarccos ( Ain(t) Aref ) (4.3.3) tn をデジタル化したものがTDCの出力Tout(n)であり,AD変換器のデジタル出力Dout(n) は
Dout(n)= Arefcos ( 2πTout(n) T ) (4.3.4) となる. V\QFKRURQL]HG dͬ, 9KROG d $LQW 9UHI &/. 7RXW 図4.3.1 小室氏の提案するADCの回路図 sƌĞĨ dƌĂĐŬ ,ŽůĚ dƌĂĐŬ ,ŽůĚdƌĂĐŬ ,ŽůĚ ƚϭ ƚϮ ƚϯ ŝŶ ^ĂŵƉůŝŶŐ ^ĂŵƉůŝŶŐ ^ĂŵƉůŝŶŐ ŽŵƉĂƌĂƚŽƌ KƵƚƉƵƚ >< ;^ĂŵƉůŝŶŐůŽĐŬͿ d ŵĞĂƐƵƌĞŵĞŶƚ 図4.3.2 小室氏の提案するADCのタイミン グチャート
4.3.2
提案
ADC
との比較
本研究で提案するADCと小室氏の提案するADCを比較する. 本研究で提案するADCと小室氏の提案するADCは非常に似ているが,大きな違いとして 小室氏の提案するADCには一様サンプリングのためにトラック・ホールド回路がついている ことが挙げられる. 結果としてトラックホールド回路のない分,消費電力は本研究で提案するADCの方が少な く済み,優れているといえる.しかしデメリットとして,本研究で提案するADCはEHMIX の出力を交互に切り替えてTDCに入力しなければならないという問題がある. また,小室氏は低周波数の入力信号をAD変換することを想定しているのに対して本研究は 入力信号をダウンコンバージョンしてAD変換するため通信機に用いるADCに向いていると いう違いがある.第
5
章
シミュレーションによる確認
5.1
シミュレーション
提案するEHMIXとTDCを組み合わせたADCをLTspice 上で構成し,動作を確認した.
EHMIXはビヘイビア電圧源と理想バッファを用いて構成し,TDCの1つの遅延素子の遅延 量は10 psとし抵抗とコンデンサと理想バッファを用いて構成した. その LTspice 上での回路図を図 5.1.1 に,その回路図の部分ごとの拡大図を図 5.1.2,図 5.1.3,図5.1.4に示す.また,図5.1.1の入出力波形を図5.1.5に示す.図5.1.5の一番上の枠 はRF信号とLO信号の合成波と反転RF信号とLO信号の合成波,それぞれをリミッタに通 した信号を表示している.2番目の枠はエンコーダ出力の1ビット目の出力,3番目の枠はエ ンコーダ出力の2ビット目の出力,4番目の枠はエンコーダ出力の3ビット目の出力,5番目 の枠はエンコーダ出力の4ビット目の出力である. この時,入力されている信号はRF信号が2 GHz振幅0.15 LO信号が1 GHz振幅1である.
(+0,;
7'&
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図5.1.1 LTspiceで構成した提案ADCの回路図
図5.1.3 LTspiceで構成した提案ADCの回路図のTDC部分
図5.1.5の一番上の枠よりこの時発生している時間差は45 ps程度だと分かる.その時の出 力は2∼5枠目から1ビット目が1,2ビット目が0,3ビット目が 1,4ビット目が0だと分 かる.これらより出力値は5だと読み取れる.図5.1.1より TDCの1つ目の出力は無遅延と 比較しているため実際の遅延量は4遅延より多く5遅延より少ないと判定できる.今1遅延 は10 psなのでこの結果は正しい.以上より提案ADCがLTspice上で動作することが確認で きた.
5.2
考察
5.1節では RF信号の振幅により発生する時間差をTDCを用いて測定しデジタル値にする ことに成功した. しかしここで図3.2.1と図3.3.6をもう一度見るとRF信号が2 GHz fLO = 12fRF のときに P1dBまで入力した場合,発生する最大時間差は80 ps程度だと分かる. 現在,フラッシュ型TDCで使われる遅延素子は最新のプロセスで作成した場合の最小値で も1つ分の遅延量は10 ps程度なのでこれでは最大で 8値しかセンシングすることができな い.このままでは最大でも3ビット程度しかセンシングできないという事であり通信に使うの に十分なビット数を確保できるとは言えない. この問題の解決策としては今後の技術発展によるTDCの高性能化やEHMIXでの発生時間 差の拡大などが考えられる. また4.1節で述べたように提案方式のADCの特徴として受信信号をオーバーサンプリング しているという点があるため,エンコーダ出力を移動平均しダウンサンプリングすることで実 際に得られた情報よりも精度のよい情報を得るという方法が考えられる. 今後の課題として実際にダウンサンプリングするとどの程度精度のよい情報が得られるのか の検討や,ダウンサンプリングの方法としてエンコーダ出力を移動平均するのではなく提案方 式ADCのエンコーダ前のTDCの出力は温度計コードなので,温度計コードのまま移動平均 する手法も考えられるため,その手法についての検討が考えられる.第
6
章
結論
半導体プロセスが微細化し電源電圧の低下と高速スイッチング化が進んでいく中でその利点 を利用し欠点を避けることから時間領域での情報センシングが期待されており,様々な研究が されている.それに関連して,時間分解能を用いるADCについても多くの研究が進んでいる. 以上の動きを受け,本研究は時間分解能を利用するADCの新手法を提案するものである. 提案ADCは電圧-時間変換器として所望周波数の変動の容易さ,ミクサ出力をそのまま出力 信号として扱えるなどの利点からEHMIXを利用し,時間測定器として周波数カウンタよりも 消費電力が少ないTDCを利用するものとした. 研究では,まずTDCの動作原理と特徴について調べ,次にEHMIXの原理と特徴について 述べた. また,EHMIXを電圧-時間変換器として利用した場合については研究が十分に進んでいない ため解析した.この解析の中で高周波では入力に対する発生時間差が少ないという問題が出て きたため時間差を拡大する方法として,差動入力を用いる方法,LOの周波数を下げることで 発生時間差を拡大する方法を用いて発生時間差を拡大することに成功した.その後,提案する ADCの原理と特徴を述べ,従来からある EHMIXを利用した ADCと 他手法のTDCを用いるADCと比較して検討した.その結果,提案方式ADCは従来方式の
EHMIXを用いるADCと比較すると受信周波数の変更の面で,他手法のTDCを用いるADC
と比較すると消費電力の面で優れていると分かった. また,提案ADCをシミュレーション上で作成し,提案するADCが動作し入力信号に応じ たデジタル値を出力することを確認できた. 提案するADCの特徴として回路に特別な変更を加えずに受信周波数を変更でき,また受信 信号をオーバーサンプリングして受信するという点がある.これらの特徴からソフトウエア無 線機などの分野での利用が考えられる.
謝辞
本研究を行うにあたり,日頃より多くの御助言,御指導いただいた谷本洋教授,吉澤真吾准 教授に深く感謝いたします.日頃から親身になって相談に乗っていただいたM2の杉本俊貴 氏,同じ学部生である三浦和也氏,鈴木優太氏ならびに研究を進める中で,様々な御助言をい ただきました,集積システム研究室の大学院生の皆様,研究室の同期の皆様にも感謝いたし ます.参考文献
[1] 小室貴紀,清水一也,真鍋亘,小林春夫「タイムデジタイザを用いたAD変換器の展開と 高性能化」,電気学会 電子回路研究会,ECT-08-39 豊橋 (2008年3月)
[2] 谷本洋,山路隆文,藤本竜一,板倉哲郎,「高周波アナログ回路技術の研究」 北見工業大 学 社会連携推進センター2001年
[3] Stephan Henzler,Siegmar Koeppe,Winfried Kamp,Hans Mulatz,Doris Schmitt-Landsiedel,
“90nm 4.7 ps-Resolution 0.7-LSB Single-Shot Precision and 19 pJ-per-Shot Local Passive Interpolation Time-to-Digital Converter with On-Chip Characterization”,Proc. Symp.VLSI Circuits,pp.168–169,Jun.2007
[4] Robert Bogdan Staszewski,Poras T. Balsara著 山田庸一郎 訳 小林春夫 監訳「完全ディ ジタルPLL回路の設計」,CQ出版,9月,2010年 [5] 清水一也,金田雅人,小林春夫,高井信和,堀田正生,「少量ハードウェア タイムデジタ イザ回路」電気学会 電子回路研究会,ECT-08-38 豊橋(2008年3月) [6] 上森聡史,土井佑太,小林春夫,小林修,松浦達治,新津葵一,「シグマデルタ型タイムデ ジタイザ回路の検討」,電気学会電子回路研究会,ECT-11-077,長崎(2011) [7] Behzad Razavi,黒田忠広 監訳,「RFマイクロエレクトロニクス」,丸善,3月,2002年