地域高齢者におけるフレイルの進行度と運動および運動自己効力感の関連性について
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(2) 430. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 報告されている 7)。さらに,フレイル予防の運動介入に. 腰椎症,既存骨折,関節リウマチおよび骨粗鬆症につい. ついての近年のシステマティックレビューは,21 件の. て,今日までに診断を受けたことがあるか否か二者択一. RCT における 5,275 名の高齢者を検討した結果,集団. で回答させた。過去 1 年間での転倒歴については「転倒. で行う運動療法はフレイル改善効果を示した一方で,個. とは歩行や動作時に意図せずにつまずいたり,滑ったり. 別での運動は十分なエビデンスがないと報告してい. して床,地面もしくはそれより低い位置に手やおしりな. 2). る 。以上より,運動介入自体がフレイル進行予防に効. ど体の一部がついたすべての場合であり,階段からの転. 果があることは明確であるが,これらの介入研究の問題. 落,自転車などでの転倒は除く」と説明し,その有無に. 点も挙げられている。各研究によって運動の頻度や時. ついて回答させた。膝と腰部の痛みの度合いについては. 間,運動負荷量が異なることから,どのような運動プロ. それぞれ visual analogue scale(以下,VAS)を用いた。. グラムがもっとも効果的であるかについては明確でない. 10 cm の線上にて左端を「痛みなし」 ,右端を「これま. こと. 8). ,さらに運動を習慣化するのに重要な運動自己効. でに経験した,もっとも強い痛み」として,現在の痛み. 力感(運動 Self-efficacy:以下,運動 SE)が高い高齢者. の状況について該当する位置に線を引かせた。. が研究対象者に多く含まれていることも介入の結果に大. 運動については自己記入式アンケートにて「昨年の健. 9). 。よって,フレイ. 診後に運動をはじめたか」「運動は以前からしていたか」. ルの予防に必要な運動には,どれくらいの頻度や時間が. について問い,現在行っている運動の有無を確認した。. 必要か,また運動の種類はどれがもっとも有効なのか,. さらに普段運動をしている場合,週何回,一回あたり何. 運動 SE はどの程度フレイルの進行に影響しているのか. 分,どんな運動を行っているかについて記述させた。運. については検討の余地がある。. 動 SE については Oka ら. そこで本研究は,地域高齢者におけるフレイルの進行. ルを用いた。運動 SE は,困難な状況におかれても自信. 度と現在行っている運動やその頻度と時間および運動. をもってその運動を継続して行うことができる見込みと. SE の関連性を調査し,どのような運動がフレイル予防. 定義され,運動 SE が高いほど,運動に対する行動変容. に重要かを観察研究にて明らかにすることを目的とした。. 段階が上昇することから,運動習慣を身につけるきっか. きく影響していると指摘されている. 対象および方法. 10). の開発した運動 SE スケー. けや運動の継続に重要な働きがある. 10). 。運動 SE スケー. ルでは「以下の項目に示すような状況でも定期的に運動. 1.対象. をする自信がありますか」という質問に対して,「まっ. 本研究は平成 30 年 6 月に鳥取県日野郡日野町で開催. たくそう思わない」を 1 点,「かなりそう思う」を 5 点. された特定健診および後期高齢者健診(以下,集団健診). とした 5 項目の順序尺度で回答させた. 受診者を研究対象とし,フレイルの進行度と現在行って. 運動とは 1 回あたり 20 ∼ 30 分以上,週 2 ∼ 3 回以上行. いる運動の状況および運動 SE の関連性を調査した横断. うこととし,農作業等は含まないと定義されている。. 的観察研究である。鳥取県日野郡は鳥取県西部の山間部. フレイルについては Fried. に位置する人口 3,119 人(平成 31 年 1 月)の自治体で. とに作成された日本版 Cardiovascular Health Study Index. ある。事前に集団健診該当者に本研究の概要を郵送した. 11). 10). 。この場合の. の提唱した表現型をも. (以下,J-CHS 基準)を判別に使用した. 12). 。本研究でも. 後,実際に集団健診を受診し,かつ本研究に参加の意思. J-CHS 基準通りに「6 ヵ月間で 2 kg 以上の体重減少が. があるものに対して口頭にて研究の注意事項を説明し,. あったか」,「握力低下(男性 26 kg 未満,女性 17 kg 未. 書面で研究参加の同意を得た。研究に参加した 239 名中,. 満)」,「ここ 2 週間わけもなく疲れたような感じがする. 取り込み基準として 1)65 歳以上,2)日常生活が自立. か」,「歩行速度低下(1.0 m/ 秒未満)」,「軽い運動・体. しているもの,要介護認定者を除外基準とした 212 名. 操をしているか。定期的な運動・スポーツをしている. (男性 85 名,女性 127 名,平均年齢 76 歳)が本研究に. か」の 5 項目を評価した. 12). 。6 ヵ月間で 2 ∼ 3 kg 以上. 参加した。本研究は,鳥取大学医学部倫理審査委員会の. の体重減少と,疲労感および定期的な運動の有無につい. 承認を得て行った(No.2354)。. ては質問紙にて「はい」「いいえ」の二択で聴取した。 歩 行 速 度 に つ い て は 光 学 式 歩 行 分 析 装 置 Opto gait. 2.方法. (Microgate 社製,イタリア)を使用して評価した。Opto. 対象者の基本属性として年齢,性別,身長,体重およ. gait は 2 本の bar から構成されており,2 本の bar 間を. び BMI を集団健診の結果より抽出した。自己記入式ア. 対象者が歩行することで,床面から 3 mm の高さで横. ンケートにて痛み止め,睡眠導入剤,利尿剤,骨粗鬆症. 10 mm ごとに配置された Opto gait 内の高感度光学セ. 治療薬,ステロイド剤の服用の有無を二者択一で回答さ. ンサーから得られる信号によって正確に各歩行周期時間. せた。併存疾患については高血圧,脂質代謝異常,心疾. および歩行速度が測定できる。まず,10 m の歩行路の. 患,糖尿病,変形性膝関節症,変形性股関節症,変形性. 中間に 3 m の Opto gait の 2 本の bar を設置し,その間.
(3) フレイルと運動および運動自己効力感. 431. 表 1 行っている運動の種類 運動種類カテゴリ名. 自由記載された運動の種類. ストレッチング. ストレッチ,壁に向けて背を伸ばす,入浴ストレッチ,膝ストレッチ. 集団体操. 公民館や集いの場等で行っている集団体操(ご当地体操). 筋力トレーニング. お風呂で体操,四股を踏む,ロコモ体操,踵上げ下ろし,ラジオ体操,筋ト レ,筋肉運動,腹筋,首肩の運動,足上げ,スクワット,体操,ゴムバンド, 五種類の運動,テレビ体操,ペダル運動,階段昇降,手足の運動,足の屈伸, 足と腰あげ. 散歩やウォーキング. ウォーキング,歩く,ノルディックウォーキング,押し車を押して歩く,散歩, 自転車,有酸素運動. ジム. 水中歩行,フィットネスクラブ,機器を使った運動. 軽スポーツ. ジョギング,ボーリング,卓球,グランドゴルフ. を対象者に歩行させた。検査者は対象者に歩行開始前に. た場合とした。行っている運動の種類についての 6 つの. 「普段歩く速度でまっすぐ歩きましょう」と指示し,歩. カテゴリへの振り分け判断については 1 名の整形外科医. 行路手前 1.5 m 位置から 13 m 歩行させた。Opto gait. と 2 名の理学療法士が協議して実施した(表 1) 。フレ. からの情報を Opto gait 本体に接続されたケーブルを通. イルの分類については J-CHS 基準通りに,上述した 5. して直接パソコン内の専用ソフトウェアで解析し平均歩. 項目のうち,3 項目以上に該当した場合をフレイル,1. 行速度を算出した。その結果より歩行速度 1.0 m/ 秒未. ∼ 2 つに該当した場合をプレフレイル,1 つも該当しな. 満のものを抽出し「歩行速度低下」と判定した。握力は. い場合をロバストと定義しフレイルの進行度を 3 群に群. 握力計(竹井機器社製,T.K.K 5401)を用いて計測した。. 分けした。. 対象者は立位で握力計を把持し,肘伸展位,肩関節を 20 度程度外転させた位置で握力を計測した。握力は左. 3.統計的分析方法. 右 2 回ずつ計測し,最大値を代表値とし男性 26 kg 未満,. ロバスト群,プレフレイル群,フレイル群の 3 群の量. 女性 17 kg 未満のものを「握力低下」と判定した。. 的変数に関して Shapiro-Wilk 検定にて正規性の確認を. 運動に関する自己記入式アンケートの分析方法につい. 行った。3 群ともに正規性が認められた変数については. て,まずアンケートに記載された運動 1 回あたりに要し. 一元配置分散分析を実施し,事後検定として Tukey 法. た時間に週の運動回数を乗じ,週の運動時間(分)を算. または等分散が仮定されなかった場合は Games-Howell. 出した。現在行っている運動については,「身体活動以. 法を用いて解析した。3 群のいずれかに正規性が認めら. 外で体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実. れなかった場合は Kruskal Wallis 検定を実施した。群. 4)13). と判断できる記述があるものと. 間の変数比較で名義尺度のものについてはカイ二乗検定. し,「農業」や「仕事での活動」「家事」などを記載した. を 行 い, 群 間 差 は Bonferroni 法 を 用 い て 補 正 し p 値. ものは「運動なし」と判定した。運動の種類については,. 0.0166 未満の場合に有意差ありと判定した。フレイルの. 施しているもの」. 2). において高齢者に対する運動として. 進行度と週の運動回数と運動時間,運動の種類および運. 推奨されている「ストレッチング」,「散歩やウォーキン. 動 SE の関連性を調べるために多項ロジスティック回帰. まず健康日本 21. 14). グ」,「筋力トレーニング」,「軽スポーツ」. の 4 つの. カテゴリを作成した。さらにフレイル予防に効果のある 2). 分析を実施した。従属変数はロバストを基準としたフレ イルの 3 群,独立変数は運動週 2 ∼ 3 回,週の運動時間,. について記載があった場合. 散歩やウォーキング,筋力トレーニング,集団体操およ. を「集団体操」,フィットネス等で計画的に意図された. び運動 SE 合計点とした。統計解析には SPSS Statistics. プログラムを行っていると記載したものは「ジム」とし,. Ver24(IBM)を使用し有意水準は 5% とした。. とされる集団で行う運動. 6 つの運動の種類のカテゴリを準備した。それぞれのカ テゴリの定義は,ストレッチングについては“ストレッ. 結 果. チ”“伸ばす”等の記載があるもの,筋力トレーニング. 研究参加者 212 名のうち,1 項目でもフレイル判別の. については運動負荷量を問わず,足腰に関する運動や体. 項目に記載がなかったもの,行っている運動の種類につ. 操について記述がありかつ集団で実施されていないと研. いて未記入であったものおよびその他のデータ欠損が. 究者が判断したもの,軽スポーツはジョギング,ボーリ. あった 34 名を除外した 178 名(平均年齢 76.3 歳,男性. ング,卓球,グランドゴルフ等,「集団体操」は町が介. 67 名,女性 111 名)を解析対象とした。対象者全体に. 護予防事業として実施しているご当地体操の記載があっ. おいてロバストは 72 名(40.4%) ,プレフレイルが 94 名.
(4) 432. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 表 2 対象者の基本属性. 年齢(歳) 性別(男 / 女) 身長(cm). ロバスト (n=72). プレフレイル (n=94). フレイル (n=12). p値. 事後検定注 1). 75.9(5.2). 75.5 (6.1). 84.1 (5.8). <0.001. b) ,c). 22/50. 38/56. 7/5. 0.113. 153.5 (7.0). 154.7 (9.2). 154.3 (11.3). 0.691. 体重(kg). 54.0 (9.5). 55.9 (9.2). 50.1 (12.0). 0.109. BMI(kg/m2). 22.8 (2.9). 23.2 (2.6). 20.7 (2.8). 0.015. c). 痛み止め. 16.9. 21.3. 50.0. 0.036. b). 睡眠導入剤. 12.7. 11.7. 25.0. 0.433. 服薬(%). 利尿剤. 5.6. 5.3. 16.7. 0.298. 骨粗鬆症治療薬. 22.5. 19.1. 16.7. 0.821. ステロイド剤. 0.0. 3.2. 0.0. 0.260. 高血圧. 44.4. 39.4. 58.3. 0.424. 脂質代謝異常. 27.8. 27.7. 25.0. 0.979. 並存疾患の有無(%). 心疾患. 1.4. 6.4. 33.3. <0.001. 糖尿病. 5.6. 8.5. 0.0. 0.473. 変形性膝関節症. 20.8. 10.6. 25.0. 0.133. 変形性股関節症. 2.8. 4.3. 0.0. 0.697. 変形性腰椎症. 8.3. 17.0. 16.7. 0.253. 既存骨折. 18.3. 14.9. 16.7. 0.841. 関節リウマチ. 4.2. 1.1. 0.0. 0.351. 骨粗鬆症. 22.2. 22.3. 8.3. 0.522. 転倒歴(%). 19.4. 20.2. 41.7. 0.204. 膝 VAS(mm)†. 2 (0 ‒ 95). 0 (0 ‒ 74). 24 (0 ‒ 72). 0.192. 腰 VAS(mm)†. 2 (0 ‒ 97). 6 (0 ‒ 87). 29 (0 ‒ 92). 0.037. b) ,c). b). 注 1):a)ロバストとプレフレイル間,b)ロバストとフレイル間,c)プレフレイルとフレイル間 平均値(標準偏差) X2 検定および一元配置分散分析(事後検定は Tukey 法または Games-Howell 法) † Kruskal-Walllis 検定 中央値(最小値 ‒ 最大値) VAS: visual analouge scale. 表 3 プレフレイル,フレイル該当者におけるフレイル各要因の割合 プレフレイル (n=94). フレイル (n=12). 体重減少 (%). 22.3. 50.0. p値. 易疲労性 (%). 34.8. 83.3. 0.001. 握力低下 (%). 8.5. 58.3. <0.001. 歩行速度低下 (%). 12.8. 75.0. <0.001. 活動量低下 (%). 58.5. 58.3. 0.991. 0.038. 2. X 検定. (52.8%),フレイルは 12 名(6.7%)に分類された。また. たものが多かった。さらにロバストと比較した場合,痛. 全対象者におけるフレイル要因の各項目についての割合. み止めの服用が多く腰部の VAS 値も高かった。プレフ. は,体重減少該当者が 15.4%,易疲労性が 23.9%,握力. レイルと比較した場合,BMI が低かった。. 低 下 が 8.4%, 歩 行 速 度 低 下 が 11.8%, 活 動 量 低 下 が. 表 3 にプレフレイルとフレイル該当者のフレイル要因. 35.4% であった。. の割合について示す。プレフレイル,フレイルともに活. 表 2 に対象者の基本属性を示す。フレイルはロバスト,. 動量低下は 58% で群間差はなかった。その他の要因に. プレフレイルと比較し有意に高齢で心疾患の診断を受け. ついて,フレイル群は有意に高値を示した。.
(5) フレイルと運動および運動自己効力感. 433. 表 4 フレイルの進行度と行っている運動および運動 SE. 運動あり(%) 注 2). ロバスト (n=72). プレフレイル (n=94). フレイル (n=12). p値. 事後検定注 1). 100.0. 41.5. 41.7. <0.001. a) ,b). 運動週 1 回. 9.7. 7.4. 16.7. 0.553. 運動週 2 ∼ 3 回注 2). 37.5. 12.8. 8.3. <0.001. 運動週 4 回以上. 注 2). a). 51.4. 22.3. 16.7. <0.001. a). 週の運動回数(日). 4 (0 ‒ 7). 0 (0 ‒ 7). 0 (0 ‒ 7). <0.001. a),b). 週の運動時間(分). 90 (0 ‒ 420). 0 (0 ‒ 840). 0 (0 ‒ 420). <0.001. a) ,b). 48.6. 11.7. 8.3. <0.001. a) ,b). 筋力トレーニング. 33.3. 17.0. 16.7. 0.042. a). 集団体操. 15.3. 4.3. 16.7. 0.039. a). ストレッチング. 11.1. 8.5. 0.0. 0.448. 軽スポーツ. 9.7. 5.3. 0.0. 0.335. ジム. 2.8. 0.0. 0.0. 0.226. 項目 1. 3 (1 ‒ 5). 3 (1 ‒ 5). 1 (1 ‒ 5). 0.009. b). 項目 2. 3 (1 ‒ 5). 3 (1 ‒ 5). 1 (1 ‒ 4). 0.004. b),c). 項目 3. 3 (1 ‒ 5). 3 (1 ‒ 5). 1 (1 ‒ 5). 0.023. b). 項目 4. 4 (1 ‒ 5). 3 (1 ‒ 5). 1 (1 ‒ 4). 0.003. b),c). 3 (1 ‒ 5). 3 (1 ‒ 5). 2 (1 ‒ 5). 0.005. b). 17 (5 ‒ 20). 14 (5 ‒ 20). 7 (5 ‒ 19). 0.004. b). 運動の種類(%) 散歩やウォーキング. 運動の SE(点). 項目 5 注 3). SE 合計. 注 1:a)ロバストとプレフレイル間,b)ロバストとフレイル間,c)プレフレイルとフレイル間 注 2:運動習慣のある対象者についての割合 注 3:項目 4 を除いた 20 点満点 X2 検定,Kruskal-Walllis 検定 中央値(最小値 ‒ 最大値) SE: self-efficacy. 表 4 にフレイルの進行度別の行っている運動および運. J-CHS 基準もしくは CHS 基準でフレイルを調査した他. 動 SE を示す。プレフレイルはロバストと比較し週の運. の報告. 動時間が少なく,散歩やウォーキング,筋力トレーニン. ルは 8.3 ∼ 11.2% と報告されている。以上より,本研究. グ,集団体操をしているものが少なかった。フレイルで. の解析対象者はこれらの過去の報告と同等,もしくは若. はロバストと比較し週の運動回数と時間が少なく,ウォー. 干健康度の高い高齢者群であったと推察できる。一方で. キング習慣が少なかった。フレイルでは運動 SE がすべ. 本研究ではフレイルの 5 つ要因の中で,定期的な運動な. ての項目でロバストと比較し有意にスコアが低かった。. し(活動量低下)に該当するものが全体の 35.4%と全体. 多項ロジスティック回帰分析を実施した結果,プレ. の 1/3 を占め,プレフレイルでは 58% が該当した。フ. フレイルでは散歩やウォーキングなし(Odds: 11.521,. レイルの各項目の有症率についてまとめたレビュー論. 95%CI: 4.217 ‒ 31.474) ,筋力トレーニングなし(Odds:. 文. 6.526,95%CI: 2.462 ‒ 17.227) ,集団体操なし(Odds: 10.089,. された研究において,定期的な運動なし該当者は 12.7. 95%CI: 2.524 ‒ 40.329) が, フ レ イ ル で は 運 動 SE 合 計. ∼ 67% と報告されている。これらの先行研究と比較す. (Odds: 0.826,95%CI: 0.714 ‒ 0.955)のみが有意に関連. ると本研究の対象者は定期的な運動をしていないものが. 12). 12)16). でもプレフレイルは 51.9 ∼ 65.2%,フレイ. では,本研究と同様の 75 歳前後の対象者で実施. 比較的多く,さらにそれがプレフレイル該当の大きな要. した(表 5)。. 因となっていると考えられる。. 考 察. ロバスト,プレフレイル,フレイル群の基本属性を比. 本研究ではプレフレイルは全体の 52.8%,フレイルは. 較した結果,ロバストと比較した場合,プレフレイル,. 6.7%が該当した。12,054 名の一般住民を対象に CHS 基. フレイルでは心疾患の診断率と腰部の VAS 値が高かっ. 準を用いてフレイルを判別した Yamada らの報告. 15). で. た。心疾患とフレイルの関連性は多く報告がある一方 17). ,腰痛の度合いとフレイルの関連についての報告. は男性 59.8%,女性 64.7% がプレフレイルに該当し,フ. で. レ イ ル は そ れ ぞ れ 9.9%,10.0% が 該 当 し た。 さ ら に. は少ない。高齢者における身体の慢性疼痛とフレイルと.
(6) 434. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 表 5 多項ロジスティック回帰分析 Odds プレフレイル. 有意確率. 運動週 2 ∼ 3 回. 2.004. 0.821. 4.895. 0.127. 0.998. 0.994. 1.001. 0.146. 11.521. 4.217. 31.474. <0.001. 6.526. 2.472. 17.227. <0.001. 集団体操なし. 10.089. 2.524. 40.329. 0.001. 運動 SE 合計. 0.970. 0.908. 1.037. 0.376. 運動週 2 ∼ 3 回. 2.380. 0.241. 23.496. 0.458. 週の運動時間. 0.998. 0.992. 1.004. 0.429. 散歩やウォーキングなし. 9.010. 0.839. 96.757. 0.070. 筋力トレーニングなし. 3.341. 0.529. 21.098. 0.200. 集団体操なし. 2.192. 0.308. 15.62. 0.433. 運動 SE 合計. 0.826. 0.714. 0.955. 0.010. 筋力トレーニングなし. . 上限. 週の運動時間 散歩やウォーキングなし. フレイル. 95% 信頼区間 下限. 2. モデル X 検定 p<0.01. の関連性を調査した報告では両者に関連があることを示. 性を示唆したもののオッズが 6.526 と他の運動よりも影. したが,その因果関係は明らかでないと報告されてい. 響度は大きくないことがわかった。高齢者に対して. 18)19). 。地域住民における 2 年後のフレイル発生の要. ウォーキング介入と筋力トレーニングとストレッチ介入. 因について調査した前向き研究では運動習慣がないこと. を比較した RCT では,ウォーキング介入群のみにおい. に加えベースライン時のロコモティブシンドローム(ロ. て精神的 QOL の向上が見られている. る. 3). 21). 。特にウォーキ. ,運動器の. ングは身体能力の維持のみならず,外部との接触や社会. 劣化がフレイルと直接的に関連すると考えられる。本研. 交流のきっかけにもなると考えられることから,ロバス. 究では運動器疾患の診断率に群間に有意差はなかったも. トからプレフレイルへの進行を予防するのに重要な運動. のの,運動器の痛みの悪化は移動能力を低下させ,生活. になると考える。. コモ)もその発生に関与していたことから. の質に大きく影響を与えることから. 20). フレイルの進行. 一方で,フレイルへの進行に運動の種類は関連しな. と関連していると推察できる。. かった。その理由として,フレイル群は高齢であること. ロバストを基準とした多項ロジスティック回帰分析で. から意識的に健康維持のために個別の体操を行っていた. は,プレフレイルでは散歩やウォーキング,筋力トレー. り,行政や地域住民から介護予防事業や集いの場への誘. ニング,集団体操を行っていないことと関連し,週の運. いなどが意図的に行われていることが背景にあると推察. 動回数や運動時間は関連しなかった。多くのフレイルの. できる。また,フレイルと運動 SE が関連したことは,. 進行をアウトカムにしたフレイル予防の運動介入研究で. フレイル高齢者は運動を開始し,継続することについて. は,運動の頻度や時間は,週に 1 回から 5 回,1 回あた. 困難があることを示していると考える。プレフレイル高. 2). 。本研究では多くの住. 齢者に対して 1 年間週 4 回以上のウォーキングや筋力ト. 民が定期的に運動をしていないことでプレフレイルに該. レーニングを実施しフレイル予防効果を検証した RCT. 当したと考えられることから,週 1 回でも運動を行うこ. では,慢性疾患をもったものや身体機能が低く,うつ傾. とがフレイル進行予防に重要であることが示唆された。. 向にあるものは運動プログラムの受け入れや継続が悪. その中でも集団体操とウォーキングのオッズ比はそれぞ. 6) かったことを報告している 。本研究でも,フレイル高. れ 10.089 と 11.521 とフレイル進行予防のために影響度. 齢者では心疾患や痛みを抱えており,身体機能の問題か. が大きいことを示している。前述したフレイル予防の介. ら運動習慣を身につけさせることは容易ではないと考え. り 20 ∼ 60 分とばらつきがある. 入方法を検討したシステマティックレビュー. 2). でも,. る。運動をはじめるためには運動に対する行動変容段階. 集団での運動は効果的であることを示していることか. を上位へ上げることが重要であり,それにはまず運動. ら,社会的交流を伴う集団体操はフレイル予防に有用な. SE を高めることが必要である. 運動方法のひとつとなることが地域高齢者の実態からも. 歳の高齢者 253 名に対して身体活動にかかわる因子を調. 明らかとなった。一方で,本研究では個別に行う筋力ト. 査した研究においても,運動 SE や運動に対する前向き. レーニングでもフレイルの進行予防には重要である可能. な期待感が高いことが身体活動を高める要因と報告され. 10). 。また,平均年齢 79.
(7) フレイルと運動および運動自己効力感. ている 22)。一般的に奨励されている週 2 回以上,20 ∼ 30 分の運動を継続するためにも運動 SE を高める心理的, 教育的介入がフレイル予防には重要であると考える。 本研究の限界として,研究デザインが横断的観察研究 であるためフレイルと運動および運動 SE についての因 果関係は不明である。また一般的に運動習慣の定義は「1 年以上運動を継続しているもの」が該当するが,本研究 では運動を継続して行っていたかどうかには聴取できて いないことから,今後前向き研究にて 1 年間以上の運動 習慣のあるものとそうでないものでフレイルの進行に差 があるのかを調査する必要がある。またデータ欠損が 34 名と多かったことはサンプリングバイアスとなって いる可能性もある。さらに,住民が行っている運動種類 の聴取についてはアンケート調査であったため,実際の 運動強度は明らかでない。今後は活動量計等を用いて実 際の活動量や運動負荷量を計測することで,実際の活動 量とフレイル進行予防との関連性を調査する必要がある。 結 論 地域高齢者におけるフレイルの進行度と現在行ってい る運動および運動 SE の関連性を調査した結果,プレフ レイルでは散歩やウォーキング,筋力トレーニングおよ び集団体操の習慣がないこと,フレイルでは運動 SE が 低いことが関連した。プレフレイルの予防には運動頻度 は問わず,地域の通いの場などで実施される集団運動へ の参加,散歩やウォーキングが重要である可能性を示唆 し,フレイル予防には運動習慣とともに運動 SE を高め る心理的,教育的なサポートが重要である。 利益相反 萩野浩 講演料;旭化成ファーマ(株) ,アステラスアムジェン (株) ,第一三共(株) ,中外製薬(株) ,ファイザー(株) 奨学寄付金;中外製薬(株) 謝辞:本研究に対して貴重なご意見,ご指導をいただき ました鳥取大学医学部整形外科教授永島英樹先生,同地 域医療学講座教授谷口晋一先生また鳥取大学医学部附属 病院リハビリテーション部,大山リハビリテーション病 院,三朝温泉病院の調査スタッフおよび日野町健康福祉 課,地域包括支援センタースタッフ,鳥取大学基礎看護 学科池原良子様に深く感謝いたします。本研究は平成 30 年度鳥取大学地域参加型研究プロジェクトの助成を 受けて行われたものである。 文 献 1)厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)総括 研究報告書 後期高齢者の保健事業のあり方に関する研. 435. 究.https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00. do?resrchNum=201504009A(2019 年 6 月 24 日引用) 2)Apostolo J, Cooke R, et al.: Effectiveness of interventions to prevent pre-frailty and frailty progression in older adults: a systematic review. JBI Database System Rev Implement Rep. 2018; 16: 140‒232. 3)Tanimura C, Matsumoto H, et al.: Self-care agency, lifestyle, and physical condition predict future frailty in community-dwelling older people. Nurs Health Sci. 2018; 20: 31‒38. 4)Booth FW, Roberts CK, et al.: Lack of exercise is a major cause of chronic diseases. Compr Physiol. 2012; 2: 1143‒ 1211. 5)平成 28 年国民健康・栄養調査報告.https://www.mhlw. go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h28-houkoku-05.pdf(2019 年 3 月 31 日引用) 6)Serra-Prat M, Sist X, et al.: Effectiveness of an intervention to prevent frailty in pre-frail community-dwelling older people consulting in primary care: a randomised controlled trial. Age Ageing. 2017; 46: 401‒407. 7)Yamada M, Arai H: Self-Management Group Exercise Extends Healthy Life Expectancy in Frail CommunityDwelling Older Adults. Int J Environ Res Public Health. 2017; 14: 531. 8)de Labra C, Guimaraes-Pinheiro C, et al.: Effects of physical exercise interventions in frail older adults: a systematic review of randomized controlled trials. BMC Geriatr. 2015; 15: 154. 9)Freiberger E, Kemmler W, et al.: Frailty and exercise interventions: Evidence and barriers for exercise programs. Z Gerontol Geriatr. 2016; 49: 606‒611. 10)Oka K: Stages of change for exercise behavior and selfefficacy for exercise among middle-aged adults. Nihon Koshu Eisei Zasshi. 2003; 50: 208‒215. 11)Fried LP, Tangen CM, et al.: Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001; 56: M146‒M156. 12)Satake S, Shimada H, et al.: Prevalence of frailty among community-dwellers and outpatients in Japan as defined by the Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria. Geriatr Gerontol Int. 2017; 17: 2629‒2634. 13)健康づくりのための運動指針 2006.http://www.nibiohn. go.jp/files/guidelines2006.pdf(2019 年 6 月 24 日引用) 14)厚生労働省ホームページ 健康日本 21(身体活動・運動). https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/ b2.html(2019 年 6 月 24 日引用) 15)Yamada Y, Nanri H, et al.: Prevalence of Frailty Assessed by Fried and Kihon Checklist Indexes in a Prospective Cohort Study: Design and Demographics of the KyotoKameoka Longitudinal Study. J Am Med Dir Assoc. 2017; 18: 733.e737‒733.e715. 16)Shirooka H, Nishiguchi S, et al.: Cognitive impairment is associated with the absence of fear of falling in community-dwelling frail older adults. Geriatr Gerontol Int. 2017; 17: 232‒238. 17)Nadruz W Jr, Kitzman D, et al.: Cardiovascular Dysfunction and Frailty Among older Adults in the Community: The ARIC Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2017; 72: 958‒ 964. 18)Wade KF, Marshall A, et al.: Does Pain Predict Frailty in Older Men and Women? Findings From the English Longitudinal Study of Ageing (ELSA). J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2017; 72: 403‒409. 19)Hirase T, Kataoka H, et al.: Impact of frailty on chronic pain, activities of daily living and physical activity in.
(8) 436. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. community-dwelling older adults: A cross-sectional study. Geriatr Gerontol Int. 2018; 18: 1079‒1084. 20)Hirano K, Imagama S, et al.: Impact of low back pain, knee pain, and timed up-and-go test on quality of life in community-living people. J Orthop Sci. 2014; 19: 164‒171. 21)Awick EA, Wojcicki TR, et al.: Differential exercise. effects on quality of life and health-related quality of life in older adults: a randomized controlled trial. Qual Life Res. 2015; 24: 455‒462. 22)Suh SR, Kim YM: Factors associated with physical activity of women aged over 75 in South Korea. J Exerc Rehabil. 2018; 14: 387‒393.. 〈Abstract〉. Relationship between Exercise, Self-efficacy for Exercise, and Grade of Frailty in Community Dwelling Older Adults: A Cross-sectional Observation Study. Hiromi MATSUMOTO, PT, PhD, Hiroshi OSAKA, PT, PhD Department of Rehabilitation, Faculty of Health Science and Technology, Kawasaki University of Medical Welfare Kazuoki INOUE, MD, PhD, Park Daeho, MD Department of Community-Based Family Medicine, Tottori University, Faculty of Medicine Park Daeho, MD Daisen Clinic Hiroshi HAGINO, MD, PhD School of Health Science, Faculty of Medicine, Tottori University. Purpose: The purpose of this study was to clarify the relationship between exercise, self-efficacy for exercise, and grade of frailty in community dwelling older adults. Methods: A total of 212 subjects older than 65 years who lived independently and did not have nursing care insurance were included in the study (85 males, 127 females; mean age, 76 years). Exercise habits were assessed using a self-administered questionnaire and self-efficacy for exercise by the scale of selfefficacy for exercise. The Japanese Cardiovascular Health Study Index was used to classify the grade of frailty in the subjects as either robust, pre-frailty, or frailty. Results: Multiple logistic analysis showed that the factors that related significantly with pre-frailty were no walking habit (odds ratio 11.521), no muscle training(odds ratio 6.526), and not participating in group exercise (odds ratio 10.089). The lower values of the self-efficacy scale for exercise were the only values that showed a relationship with frailty (odds ratio 0.826, 95% CI 0.714 ‒ 0.955). Conclusion: This study showed that exercise habit, and psychological and educational support was important for preventing progression of frailty in older adults who lived in the community. Key Words: Frailty, Exercise, Self-efficacy scale for exercise.
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