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全文

(1)

発達障害領域における

「脳とこころの研究の進歩」

稲垣真澄

(独)国立精神・神経医療研究センター

精神保健研究所

知的障害研究部

国立精神・神経医療研究センター・メルボルン大学精神医学部門 合同シンポジウム

(2)
(3)

注意欠陥/多動性障害の病態

解明研究と新規介入法の提案

NCNP・メルボルン大学精神医学部門 合同シンポジウム

(独)国立精神・神経医療研究センター

精神保健研究所

知的障害研究部

稲垣真澄

2013-6-28

(4)

 ADHDとは?

 中核症状

 ADHDの病態

 注意機能の客観的評価

 実行機能障害に関する最近の成果

 新らしい介入法の提案

(5)

多動性、不注意、衝動性などの行動面における

症状を特徴とする発達障害の一つ

明らかな身体異常所見を示さず、行動の特徴か

ら同定される

個人間の症状に差違もあり、子ども一人ひとり

で症状の程度が異なる

社会的、認知的、学業面、家庭内、情緒的な発

達や適応の側面で様々な問題を生じうる

ADHD

(6)

19世紀 行儀の悪いフィリップ(1844年 絵本)

1902年 攻撃的な43小児例 ( Still Lancet Vol 1) 1917年 米国 脳炎後行動障害 1947年 先行する脳損傷がみあたらない が、同様の行動を示す子ども達 (Strauss et al) 1959年 微細脳損傷あるいは機能障害 1968年 DSM-II 「多動」 MPHの有効性指摘 1980年 DSM-III 「注意欠陥障害」 1987年 DSM-III-R 「AD/HD」の登場 1998年 日本で報道加熱 翌年研究班スタート ドイツ人 医師 Hoffmann作

ADHDの歴史

もじゃもじゃペーター

(7)
(8)

DSM-5

(2013)

Neurodevelopmental disorders

Intellectual Developmental Disorders

Communication disorders

Autism spectrum disorder

ADHD

Specific Learning disorder

Motor disorders

(9)

ADHDは、不注意、かつまたは多動衝動性により定義さ

れる神経発達症である

不注意症状としては、年齢あるいは発達段階に不相応な

程度で、作業に取り組み続けられないこと、聞こえていない

ようにみえること、なくし物が多いことなどが示される。

多動・衝動性は、過剰な行動、落ち着きのなさ、じっと座っ

ていられないこと、他人の行動に干渉すること、待てないこ

とが、上記と同様に年齢(発達段階)不相応にみられる。

小児期には、外在化障害とされる反抗挑戦性障害、素行

障害をしばしば重複する。

そしてADHDは、成年期にしばしば移行し、社会的、学術

的、職業的な機能障害を呈することがある。

(10)

ADHDの診断基準

(1)不注意

a. 学校の勉強で、細かいところまで注意を払わなかったり、 不注意な間違いをしたりする。 b. 課題や遊びの活動で注意を集中しつづけることが難しい。 c. 面と向かって話しかけられているのに、聞いていないよう に見える。 d. 指示に従えず、また仕事を最後までやり遂げない。 e. 課題や活動を順序立てて行うことが難しい。 f. 精神的な努力を続けなければならない課題(学校での勉 強や宿題など)を避ける。 g. 課題や活動に必要なものをなくしてしまう。 h. 気が散りやすい。 i. 日々の活動で忘れっぽい。 DSM-IV-TR

9項目中6項目以上該当

9症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は 不適応的で、発達の水準に相応しないもの

(11)

ADHDの診断基準 (2)多動性・衝動性

a. 手足をそわそわ動かしたり、着席していてももじもじしたりする。 b. 授業中や座っているべき時に席を離れてしまう。 c. きちんとしていなければならない時に、過度に走り回ったり、 よじ登ったりする。 d. 遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。 e. じっとしていない、または何かに駆り立てられるように活動する。 f. 過度にしゃべる。 g. 質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。 h. 順番を待つのが難しい。 i. 他の人がやっていることをさえぎったり、邪魔したりする。

9項目中6項目以上該当

9症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は 不適応的で、発達の水準に相応しないもの

(12)

実行機能システムの破綻 報酬系のシステム障害 報酬の遅延に耐えられずに 衝動的に代わりの報酬を選択する (衝動性) 報酬を得るまで、注意をほかのもの にそらす、気を紛らわす(多動・不注意) 抑制機能の障害 (衝動性・注意持続の障害) 意図したことを柔軟かつ計画的に 考えて、行動に移すことができない (注意欠如・注意散漫) 遅延嫌悪 実行機能障害 親の反応

ADHDの二重経路モデル

Sonuga-Barke 2003

Neurosci Biobehav Rev

(2003) 27: 593-604

心理過程

行動表出

(13)

ADHDの病態について

実行機能

・ 報酬系の障害

中核症状

多動・衝動 不注意

臨床症状

Psychosocial Comorbidity 不安障害 気分障害 ・・・ 低学力 低学歴 自己評価 ・・・

(14)

実行機能(Executive Function)とは・・・

高次の認知的制御能力であり、目標に到達するために不適切 な行動を抑制し、適切な行動の選択を可能にする能力である (Burges, 1986)

6つの

領域

(Pennington and Ozonoff, 1996)

・ 抑制機能

・ 作動記憶

(ワーキングメモリ)

・ 文脈依存記憶

・ 流暢性

・ 計画立案

(プランニング)

・ 認知シフティング

(柔軟な切り替え) 実行機能のうち特に抑制に関わる機能障害がADHDで注目

(15)

ADHD児は、干渉の抑制に脆弱で、

ささいな刺激でも敏感に反応

(16)

(Ozonoff et al.,1999)

(Wikipedia)

【先行研究】

(17)

・Stroop:課題の成績及び脳活動でADHD児 < TDC

課題の成績と年齢のみが相関

(Negoro et al.,2010)

・Reverse Stroop : 課題の成績がADHD児 < TDC

StroopではADHD児≒TDC

(Song and Hakoda, 2011)

【干渉の抑制】

抑制に関わる行動特性と生理指標(脳活動)との関連が不透明・・・

(Matsumoto et al.,2004) 干渉の抑制に関わる脳活動: ACCとLPFCのネットワーク

(18)

【課題】

・Stroop task、Reverse Stroop task ・SNAP (ADHDの重症度) ~親への質問紙~ ・RCPM(知能) ・EHI(利き手) ・K-ABC(文の理解) ・倫理委員会 研究参加の同意 (承認番号:A2011-003) 【仮説】 脳活動: ADHD < ASD ≒ TDC 行動: ADHD < ASD ≒ TDC

データの記録・解析

・干渉率

・誤答数

・反応時間

・NIRSによる脳活動

(19)

【課題】

・SNAP (ADHDの重症度) ~親への質問紙~

(20)

TDC (n = 15) ASD (n = 11) ADHD (n = 10) F value (df = 2, 33) p value 年齢(SD) 9.56 (1.51) 10.51 (2.30) 11.18 (2.23) 2.10 0.14 読解力(SD) 18.13 (3.98) 19.82 (4.29) 19.60 (5.87) 0.51 0.61 非言語性知能 (SD) 29.47 (4.05) 30.45 (5.15) 30.70 (2.41) 0.33 0.72 ADHD: 不注意 (SD) 6.33 (3.11) 16.91 (6.76) 15.40 (5.02) 17.38 < 0.001 TDC < ASD *** TDC < AD/HD *** ADHD: 多動・衝動性 (SD) 2.53 (2.56) 11.00 (5.98) 7.20 (5.10) 11.19 < 0.001 TDC < ASD *** TDC < AD/HD * ADHD: 反抗挑戦性 (SD) 3.87 (4.90) 12.45 (7.13) 8.70 (5.27) 7.21 0.003 TDC < ASD ** 対象 【方法】

(21)

しろ あか きいろ みどり ろ ど 10 (s) 30 (s) 10 (s) あか きいろ みどり しろ みどり しろ きいろ あか み い ・・・ りあろ しろ あか きいろ みどり し ろ 30 (s) あか きいろ みどり しろ みどり しろ きいろ あか きいろ ・・・ みどり Correct Correct Neutral Incongruent Stroop task (文字の色を選ぶ課題 = 意味干渉)

(22)

きいろ 10 (s) 30 (s) 10 (s) しろ ・・・ みどり し ろ 30 (s) きいろ ・・・ みどり Correct Correct Neutral Incongruent

Reverse Stroop task (文字の意味を選ぶ課題 = 色干渉)

(23)

23

【計測】

Rest Task

20秒 5秒

(24)

Task TDC ASD ADHD F, p value 干渉率(%) ストループ 逆ストループ 8.30(11.13) 8.94(4.11) 10.82(9.81) 8.35(8.61) 12.94(15.76) 17.87(9.15)** 0.44, 0.646 5.83, 0.007 誤答数 (n) ストループ 逆ストループ 0.433(0.56) 0.33(0.59) 0.50(0.50) 0.41(0.58) 0.75(0.63) 0.95(0.64)* 0.98, 0.385 3.45, 0.043 反応時間 (ms) ストループ 逆ストループ 1.73(0.40) 1.32(0.19) 1.94(0.49) 1.36(0.36) 1.99(0.63) 1.43(0.39) 1.07, 0.355 0.41, 0.664 正答率 (%) ストループ 逆ストループ 96.4(5.14) 98.13(3.28) 95.32(5.96) 97.29(4.02) 93.28(6.48) 93.58(5.35)* 0.90, 0.417 3.80, 0.033 ストループ課題 ・群間で主効果なし 逆ストループ課題 ・干渉率・誤答数・正答率においてTDCと比較してADHD児で有意に低い

※干渉率 = (Neutral - Incongruent) / Neutral × 100

【結果】

(25)

0.0 0.5 1.0 1.5 TDC ASD ADHD Error ( n) 0 5 10 15 20 25 TDC ASD ADHD In te rfe re nce (% )

*

干渉率

*

誤答数

Reverse Stroop taskの結果

(26)

【結果】 画面を4領域に分割 エラーの種類を 干渉と非干渉に分類 (F(2,33)=3.03, p=0.053) ADHD<TDC:p=0.099 ADHD<ASD:p=0.064 非干渉エラーは0~0.2の範囲内 Reverse stroopにおける干渉エラー 干渉エラー 非干渉エラー

(27)

ストループ課題 逆ストループ課題 ch 4:ADHD < TDC 課題中の脳活動 ストループ課題 群間で主効果なし 逆ストループ課題 ・ch 4(右LPFC)においてTDCと比較してADHD児で 有意に低い ・ADHD児のみで左に限局した脳活動 【結果】 (t(18) = 2.31, p = 0.033)

(28)

TDC ASD ADHD Time course(s) ch 4 z -score F(2,33)=3.71, p=0.035 ADHD < TDC, p=0.033 -10 -5 0 5 10 15 0 30 -10 -5 0 5 10 15 0 30 z -sc ore Time course(s)

Stroop Reverse Stroop 課題遂行中の脳活動

(29)

inattention c h 4 (z -sc ore) r=-0.60, p=0.068 不注意の重症度と脳活動 (ADHD児) 不注意の重症度と負の相関 (有意傾向) 【結果】

(30)

・逆ストループで干渉が大きい(Stroopでは差なし:言語能力 統制のため) →ADHD児は色干渉を抑制することが困難 ・右LPFC近傍の賦活低下、不注意の重症度と相関 ・衝動性の高い人ほど右DLPFCの活動が小さい(Asahi et al., 2004) ・右LPFCは抑制機能との関わりが強い (Aron et al., 2004) →右LPFC近傍の賦活低下が不注意や衝動といったADHDの 問題と関連がある可能性 ・限局した脳活動 →右前頭前野の低賦活の代償を左前頭前野で行おうとしてい る可能性 ・ADHD児のみで行動成績及び脳活動が特異的 →ASD児は抑制課題では顕著な困難さを示さない

【考察】

(31)

結論

・ADHD児の抑制機能を評価するために、ストループ

ならびに逆ストループ課題を施行中の脳血流を

前頭部において光トポグラフィーで計測した。

・ADHD児は逆ストループ課題でとくに色干渉に脆弱

性が認められた。

・ADHD児のうち、不注意の著しい例は右前前頭部

の脳活動低下が観察された。

(32)
(33)

ニューロフィードバック法を用いた

ADHD児の注意訓練プログラム

(34)

ニューロフィードバック(NF)

自身の脳活動をリアルタイムでモニタリングしながら、脳活動のセ ルフコントロールを促進させる行動トレーニングの一形態 (Heinrich et al., 2007) (Strehl et al., 2006) 上:Negative訓練 下:Positive訓練

SCP(slow cortical potentials:緩徐波)DCポテンシャル・トレーニング 0.5Hz以下の非常にゆっくりと変動する脳波のコントロール Sensorimotor responseトレーニング、β波トレーニング ネガティブ方向のシフトは皮質細胞の脱分極を反映し、興奮を抑制する 投 薬 必 要 例 の 見 極 め あ る い は 、 減 量 化 へ

(35)

薬物治療

およそ8割のケースは、薬物治療を受けている

→しかし、副作用もみられる

(消化器系、体重減少、成長障害、睡眠障害など)

行動療法

行動療法も用いられている

→しかし、長期的効果には限界も指摘されている

e.g., Barbaresi et al. (2002)

e.g., Dopfner & Lehmkuhl et al. (2002)

ニューロフィードバック法は副作用の報告が

皆無、また長期持続効果の可能性も指摘

(36)

ADHD児の脳波特性

theta: 4 - 8 Hz

beta: 13 - 30 Hz

CNV (Contingent

negative variation)

P300

Waismann et al. (2003) 予期・集中に関与する ⇒ theta の振幅が大きく,beta の振幅が小さい。

El-Sayed et al. (2002); Barry et al. (2003, 2009)

⇒ 振幅 (面積) が小さい。

Satory et al. (2002); Banaschewski et al. (2003)

⇒ 振幅が小さい。

(37)

NF 訓練の種類 SCP (

slow cortical potential

) training

活動を制御させる訓練 (positive / negative 条件)。 Heinrich et al. (2004) ⇒ 活動を抑制させることが注意資源の配分につながる。 Heinrich et al. (2007) SCP training は CNV に影響 を及ぼすが,P300 には影響 を及ぼさない。 (SCP training が他の周波数帯に影響を及 ぼすか否か,は明らかになっていない) SCP: 0.5 Hz 以下 (100μV-1mV) のゆっくりとした脳波。 CNVが指標となる Heinrich et al. (2004) Doehnert et al. (2008)

(38)

NF training: SCP (

slow cortical potential

) training

ADHD 重症度スケール(母親評定、教師評定)

知的機能(ウェクスラー系知能検査)

注意機能( 持続処理課題: Continuous Performance Test もぐらーず検査)

上記項目がSCPトレーニングで改善することが知られている

Heinrich et al. (2004); Strehl et al. (2006); Drechsler et al. (2007); Wangler et al. (2011)

(39)
(40)

NF 訓練のメリット

ー 非侵襲的 ー 服薬ストレスの低減 ー 学業成績の変化の検討 ー 長期持続性 (6 か月: Strehl et al., 2006)

NF 研究の問題点

ー 長期持続性 (6カ月~) の検討 ー 実際生活の変化の検討 ー 投薬効果との比較 今後,様々な生理・心理指標を 用いて,より多面的な観点から NFの効果を実証する必要があ る。

(41)

併存症

なし

反抗挑戦性

不安症

行為障害 素行障害 チック症

(42)

ADHD病態の解明への一層の努力

=実行機能評価尺度の開発

真に有効な治療法・介入法の開発

参照

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