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ホワイトペーパー

肺リクルートメント手

HAMILTON-G5 P/V Tool Proを使用した肺リクルータビリティの評価とリ

クルートメント手技の実施

Munir A Karjaghli RRT, Clinical Application Specialist, Hamilton Medical

はじめに

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者に対するリクルートメン ト戦略では、無気肺損傷(atelectrauma)を防ぐため、リ クルートメント手技(RM)と呼吸終末陽圧(PEEP)を組み 合わせます。リクルートメント手技は肺圧差(PL)を一時 的に増加させる任意戦略であり、その結果含気量の少ない 虚脱した肺胞が再開通します。PEEPは、再開通した肺領域 を開いたまま維持することで、人工呼吸器誘発肺傷害 (VILI)を低下させる可能性があります。1 リクルートできる可能性のある肺の割合はARDS患者の間で 大幅に異なり、下側肺の虚脱して硬くなった肺胞領域をリ クルートするためには35~40 hPa以上の気道開放圧を頻繁 にかける必要があります。1 リクルートできる可能性のあ る肺の割合を知ることは、PEEPの治療効果を立証するため に重要となる場合があります。その割合とは無関係にPEEP レベルを設定すると、PEEPの効果が低減する可能性があり ます。また、リクルートできる可能性のある肺の割合が低 い患者で高いPEEPレベルを使用した場合、効果はほとんど なく、実際には有害となるケースもあります。2 P/V Tool Proは、ベッドサイドで簡単に肺リクルータビリ ティの評価とリクルートメント手技を実施できる方法で す。3, 4, 5 このホワイトペーパーでは、P/V Tool Proを使 用して肺リクルータビリティの評価とリクルートメント手 技を実施する手順について説明します。

適応

ARDS管理の初期段階で、血行動態状態がコントロールされ ているとき。

禁忌

1. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)および肺気腫 2. 不安定な血行動態 3. 高い頭蓋内圧 4. システムのリーク(患者または呼吸回路) 5. 右心不全

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手順

P/V Tool Proでリクルートメント手技を試みる前に、以下 の条件が満たされていることを確認します。 – 患者は挿管され人工呼吸を受けており、自発呼吸を行 っていない状態でなければなりません。ほとんどの患 者では、自発呼吸努力を抑制するため、深鎮静または 神経筋遮断薬が必要になります。 – ETTカフに加圧された圧力が、P/V Toolで設定された 最大圧より高いことを確認します。人工呼吸器、呼吸 回路、および人工呼吸器装着患者から成るシステム全 体にガス漏れがないことを確認してください。 – ネブライザが動作中であってはなりません。 – フローセンサが正しく校正されている必要がありま す。

low flow P/Vカーブ計測の実行

1. スタート圧 = 0~5 hPa 2. トップ圧 = 40 hPa 3. End PEEP = 0~5 hPa 4. 立上り速度 = 2 hPa/s 5. ホールド = 0 End PEEPの設定を変更すると、現在のPEEP、新しい PEEP、および「計測後のPEEP値を変更しますか?」と いうメッセージが表示されます。[いいえ]を選択し ます。 図 1: P/V Tool Proを使用したプレッシャー/ボリュームカーブ の設定 計測スタートを実行し、Paw/Flowタイプのグラフを表示し てP/Vカーブの妥当性をチェックします(図2)。いずれか のポイントでフローが±10 L/minの範囲から外れている場 合は、立上り速度が2 hPa/sに設定されていることを確認 します。呼吸システムの抵抗要素による圧力の変化を大部 分取り除くため、フロー速度が10 L/min未満であることを 確認する必要があります。6 図 2: Paw/Flowグラフ

肺のリクルータビリティの評価

基準1:吸気カーブの形状 リクルート不可能な肺では、P/Vカーブの吸気側は上方に 凸の形状になります(図3)。リクルート可能な肺では、 P/Vカーブの吸気側は上方に凹の形状になります(図4)。

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図 3: 上方に凸の形状の吸気カーブ。肺リクルートメントの可能 性が低いことを示す 図 4: 上方に凹の形状の吸気カーブ。肺リクルートメントの可能 性が高いことを示す 基準2:線形コンプライアンス(CLIN) コンプライアンスとは、吸気プレッシャー/ボリュームカ ーブの傾きを意味します。加えられた圧力の範囲内で傾き が一定の場合、コンプライアンスは線形になります。線形 コンプライアンスを見ることで、圧力増加中にどの程度の 肺胞が開通するかを判断できます。CLINが高い(> 50~60 mL/hPa)場合は、リクルートできる可能性のある肺の割合 が高いことを示します(図5)。3, 7 C LINを測定するには、 吸気カーブの低位変曲点(lower inflection point)より

上、高位変曲点(upper inflection point)より下にある 最も直線的な部分を探し、その部分の低位ポイントにカー ソル1を、高位ポイントにカーソル2を配置します。 図 5: CLINが50 mL/hPaを超えている 基準3:ヒステリシス リクルータビリティは、プレッシャー/ボリュームカーブ のヒステリシス(吸気カーブと呼気カーブで囲まれた領 域)、すなわち圧力が20 hPaの時点のボリュームの差に基 づいて推定できます。実際には、ボリュームの差が400 mL より大きい場合は肺リクルートメントの可能性が高いとみ なすことができます(図6)。5 図 6: 圧力が20 hPaの時点のボリュームの差が大きい。これは肺 リクルートメントの可能性が高いことを示す

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図 7: 20 hPaの時点のボリュームの差が小さい。これは肺リクル ートメントの可能性が低いことを示す 上記の3つの基準(吸気カーブが上方に凹の形状、低位変 曲点より上のCLINが高い、ヒステリシスが大きい)のうち2 つが満たされている場合は、リクルートメント手技を実施 すると効果的である可能性が高いといわれています。 図 8: リクルートメント戦略に関する決定

リクルートメント手技の手順

ステップ1 – 初回のRMの前に、SpO2の値が92%程度になるまでFiO2 を下げます。 – スタート圧:それまで設定していたPEEP

– End PEEP:20~25 hPa(デクリメントPEEPトライアル を実施する場合*) End PEEPの設定を変更すると、現在のPEEP、新しい PEEP、および「計測後のPEEP値を変更しますか?」と いうメッセージが表示されます。[はい]を選択しま す。 – 立上り速度:5 hPa/s – ホールド:10秒 – トップ圧:40 hPa ステップ2 トップ圧(カーブの最後)でリクルートされたボリューム を測定します。リクルートされたボリュームが2 mL/kg PBWまたは200 mLを超えていて(図9)、初回RMの直後に SpO2が99%~100%まで増加した場合は、リクルートメント 手技が効果的であると判断し、PEEPタイトレーション(調 整)を開始します。 図 9: リクルートされたボリュームが200 mLを超えている ステップ3 リクルートされたボリュームが2 mL/kg PBWまたは200 mL 未満で、40 hPa時点のRMが血行動態的に十分許容可能であ り、なおかつSpO2の増加が96%~97%にとどまった場合は、 トップ圧を50 hPaに設定してステップ1を再度実施しま す。 ステップ4 ステップ2に戻ります。 ステップ5 リクルートされたボリュームが2 mL/kg PBWまたは200 mL 未満で、50 hPa時点のRMが血行動態的に十分許容可能であ り、なおかつSpO2の増加が96%~97%にとどまった場合は、 トップ圧を60 hPaに設定して(図10)ステップ1を再度実 施します。その後PEEPタイトレーション(調整)を開始し ます。 食道内圧測定用にカテーテルが留置されている場合は、生 理学的な上限値となる25 hPaの経肺圧(transpulmonary pressure)を目標としてリクルートメント手技を実施しま す。これはPaw-Paux/Vタイプのグラフを選択・表示するこ とで確認できます。

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図 10: 60 hPaのトップ圧、21 hPaのPaw-Paux *最近のエビデンスでは、デクリメントPEEPトライアルに 基づいてPEEPを設定する方が、LIP、PDR、またはヒステリ シスに基づいてPEEPを設定するよりも生理的である可能性 があることが示唆されています。8

PEEPの設定

デクリメントPEEPトライアルの前にSpO2が92%程度になる までFiO2を下げてから、5~10分ごとにPEEPを2 hPaずつ下 げます。SpO2をモニタリングし、PEEPタイトレーション (調整)によって酸素化が低下したら(SpO2が2%低下した ら)直ちにPEEPを前の値に戻します。最後のRMを繰り返し てから(RMの最後のステップで使用したのと同じリクルー ティング圧力を使用します)、デクリメントPEEPトライア ルによって決定された最適なPEEP値にPEEPを設定します。

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参考資料

1. Borges, João et al."Reversibility Of Lung Collapse And Hypoxemia In Early Acute Respiratory Distress Syndrome".Am J Respir Crit Care Med 174.3 (2006): 268-278.

2. Gattinoni, Luciano et al."Lung Recruitment In Patients With The Acute Respiratory Distress Syndrome".New England Journal of Medicine 354.17 (2006): 1775-1786.

3. Maggiore, Salvatore et al."Alveolar Derecruitment At Decremental Positive End-Expiratory Pressure Levels In Acute Lung Injury".Am J Respir Crit Care Med 164.5 (2001): 795-801.Web.

4. Grasso, Salvatore et al."Effects Of High Versus Low Positive End-Expiratory Pressures In Acute Respiratory Distress Syndrome".Am J Respir Crit Care Med 171.9 (2005): 1002-1008. 5. Demory, Didier et al."Recruitability Of The

Lung Estimated By The Pressure Volume Curve Hysteresis In ARDS Patients".Intensive Care Med 34.11 (2008): 2019-2025.

6. Lu, Qin et al."A Simple Automated Method For Measuring Pressure–Volume Curves During Mechanical Ventilation".Am J Respir Crit Care Med 159.1 (1999): 275-282.Web.

7. Gattinoni, Luciano et al."Pressure-Volume Curve Of Total Respiratory System In Acute Respiratory Failure: Computed Tomographic Scan Study".Am Rev Respir Dis 136.3 (1987):

730-736.Web.

8. Kacmarek, Villar et al."Open Lung Approach for the Acute Respiratory Distress Syndrome: A Pilot, Randomized Controlled Trial".Crit Care Med.2016 Jan;44(1):32-42.

ELO20170201S.00 . © 2017 Hamilton Medical AG. 複製転載禁止。

Hamilton Medical AG

図 3:  上方に凸の形状の吸気カーブ。肺リクルートメントの可能 性が低いことを示す 図 4:  上方に凹の形状の吸気カーブ。肺リクルートメントの可能 性が高いことを示す 基準2:線形コンプライアンス(C LIN ) コンプライアンスとは、吸気プレッシャー/ボリュームカ ーブの傾きを意味します。加えられた圧力の範囲内で傾き が一定の場合、コンプライアンスは線形になります。線形 コンプライアンスを見ることで、圧力増加中にどの程度の 肺胞が開通するかを判断できます。C LIN が高い(> 50~60 mL
図 7:  20 hPaの時点のボリュームの差が小さい。これは肺リクル ートメントの可能性が低いことを示す 上記の3つの基準(吸気カーブが上方に凹の形状、低位変 曲点より上のC LIN が高い、ヒステリシスが大きい)のうち2 つが満たされている場合は、リクルートメント手技を実施 すると効果的である可能性が高いといわれています。 図 8:  リクルートメント戦略に関する決定 リクルートメント手技の手順 ステップ1 – 初回のRMの前に、SpO2の値が92%程度になるまでFiO2 を下げます。 – スタート圧:
図 10:  60 hPaのトップ圧、21 hPaのPaw-Paux *最近のエビデンスでは、デクリメントPEEPトライアルに 基づいてPEEPを設定する方が、LIP、PDR、またはヒステリ シスに基づいてPEEPを設定するよりも生理的である可能性 があることが示唆されています。 8 PEEPの設定 デクリメントPEEPトライアルの前にSpO2が92%程度になる までFiO2を下げてから、5~10分ごとにPEEPを2 hPaずつ下 げます。SpO2をモニタリングし、PEEPタイトレーション (調整)によって

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