• 検索結果がありません。

生産方式と原価管理の最近の動向--昭和61年調査の概要---香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "生産方式と原価管理の最近の動向--昭和61年調査の概要---香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
66
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

生産方式と原価管理の最近の動向***

−一昭和61年調査の概要−

和嘉信

浦中上

夫穂一

三田井

Ⅰ ほじめに ⅠⅠ調査活動とサンプリング ⅠⅠⅠ生産システムの変化 ⅠⅤ コストダウンの課題と原価構造への影響 Ⅴ 原価管理における金額管理と物量管理 ⅤⅠむすび Ⅰ わが国の技術革新の進展,企業間競争の継続,市場の多様化などを反映して, * 本稿は,昭和61年,62年度にわたって文部省科学研究費補助金の交付を受けた研究プロ ジ、エクト(研究代表者三浦和夫,研究分担名田中嘉穂,井上信一,安藤博子,喜田恵津 子)による研究成果の−・部である。本研究においては,三浦,田中,井上が主として全体 の企画,調査票の設計,面接調査,結果の分析,報告書の作成を担当し,安藤がコンピュ ータによる集計作業,喜田が調査票の発送・回収作業を主として分担した。 なお,本稿の執筆は三浦,田中,井上の協議によるが,主として三浦がⅠ,ⅤⅠを,田中 がⅠⅠⅠの3,Ⅴを,井上がⅠⅠ,ⅠⅠⅠの1および2,ⅠⅤを分担した。 ** このような成果をまとめるまでには,多くの方々の多大な御協力をいただいた。回答 を寄せていただき,また面接調査にも快く応じて下さった会社の担当者の皆様は言うま でもなく,予備調査の段階で,大薮修二」毛東条勲氏((株)多田野鉄工所),大西義孝 氏大西弘巳氏(大倉工業(株))から格別のご示唆を得た。また,資料の整理段階では, 二宮浩一・氏(四国電力(株)),黒川光雄氏(扶桑建設工業(株)),上田畏弘氏大森正裕 氏((株)両備システムズ),大西清文氏(高松法務局),金澤理恵子氏(本学経済学部技 官),岩倉幸宏氏倉田学覧氏高橋慎一氏川田由佳氏(本学経済学部学生)の御協力を 得た。ここに記して感謝の意を表したい。

(2)

香川大学経済学部 研究年報 27 J玖97 一2− この20年周の製造企業における生産方式の変革はめざま・しく,とりゎけ第一次, 第二次オイルショック以降の消費者ニーズの多様化のため,多品種少量・中量 生産化に向かわざるを得なかったのが現状であることは,われわれのこれまで の調査研究からも,容易にうかがうことが出来る。また,欧米では,近年MRP (資材所要量計画)システムなどの導入により多品種少量・中豊生産化に対応 しようとしてきていることは文献などを通じてもよく知られている。 このような変化,なかでも多品種少量・中量生産化の進行の現状を踏まえて, 近年あまり行われていない原価管理の体系的・包括的な調査,すなわち原価管 理の概念とその体系,原価管理の普及状況,原価管理組織,原価管理の方法, 予算原価・標準原価による原価管理の態様等についての調査研究を,この時期 に加えておくことは不可欠の課題であるように思われる。特に,経営組織内で の経理部の役割低下,生産管理志向の原価管理が叫ばれている現在,会計的手 法にもとづく原価管理の意義と限界をどのように把握しておくべきかが焦眉の 課題である。このような問題意識のもとに,わが国企業め生産方式と原価管理 の現状とその動向を検討したい。なお,ここでは紙幅等の関係で生産システム の変化,コストダウンの課題と原価構造への影響,原価管理における金額管理 と物量管理の問題について考察する。 ⅠⅠ 本稿で用いる調査データは,昭和61年の『生産方式と原価管理に関する調査』 を中心にしている。このほか,昭和56年の『原価管理に関する調査』及び一部 昭和57年の『会計システムと生産様式に関する調査』をも必要の都度使用する。 いずれの調査も,郵送調査法によるもので,調査対象は昭和56年七昭和57年調 査については東京証券取引所上場製造企業の悉皆調査であり,その調査対象企 業は,図表2−1に示すとおり,昭和56年は899社,昭和57年は908社であり, 昭和61年調査は全証券取引所上場製造企業及び資本金10億円以上の非上場製造 企業をも含む1,337社を対象にしている。その回収率は,昭56年調査では69.3%, 昭和57年調査では72‖5%そして昭和61年調査では58.2%である。回答企業の概 要は,図表2−2,図表2−3に示すとおりである1)。

(3)

生産方式と原価管理の最近の動向 −Jl一 図表2−1 回収状況 昭和56年 昭和57年 昭和61年 東 証 東 証 東 証 全企業 食料品製造業 64。0% 676% 54.1% 559 % 繊維工業 54.4 72‖3 531 481 衣服・その他の繊維 1000 66小7 40.0 400 パルプ・紙製品 727 606 455 451 出版・印刷 375 62.5 0 化学工業 83。6 743 612 623 石油・石炭 1000 909 66,7 73小7 窯業・土石 683 56“5 56小5 547 鉄 鋼 83.0 79い2 53.9 535 非鉄金属 765 744 583 577 金属製晶 515 655 733 492 一・般機械器具 76.9 791 56小7 583 電気機械器具 58小6 73“3 58小1 593 輸送用機械器具 787 77.9 746 741 精密機械器具 867 81.3 531 524 その他 553 564 649 642 全 体 693 725 58小6 582 郵送企業数 (n=899) (n=908) (n=926) (n=1337) 回答企業数 (n=623) (n=655) (n=533) (n= 763) 資料:昭和61年の調査による。以下[昭和61年]と略す。 1)なお,昭和56年及び昭和61年の調査についての詳細は,以下の論文を参照のこと。井上信 一「生産方式と原価計算(1)」,『香川大学経済論軌,第55巻第2号,昭和57年9月及び 同「データベース会計情報システムに関する一考察」,『香川大学経済論凱,第57巻第3号, 昭和59年12月。

(4)

香川大学経済学部 研究年報 27 図表2−2 回答企業の規模 ー4− J鎚ざ7 昭和56年 昭和57年 昭和61年 東証上場 東証上場 全企業 乗証上場 払込資本金(百万円)

8,106 7,956

9,571 11,959 売上高(百万円) 140,451 138,767 147,675 176,116 従業員数(人)

3,580 3,417 3,072 3,804

製造原価(百万円) 100,206 119,781 総工場数(工場)

463

454

5.27

(n=608) (n=646) (n=720) (n=513) 資料:[昭和56年],[昭和57年],[昭和61年]。 図表2−3 回答企業の指標(その他) 昭和56年 昭和61年 束証上場 全企業 東証上場 輸出比率

1318%

1364%

操業度 90小12%

8713%

87“86% 事業部制組織

3142%

31小90%

3695%

資料:[昭和56年],[昭和61年]。 ⅠⅠⅠ ここでは,生産システムの変化を近年めざましい技術革新に直面している生 産技術そのものの変化と生産方式の変化の二つの側面から考察してみたい。生 産システムの変化を検討する場合,その特徴を明らかにするために,ここでは 生産力式をその技術的特性により4つに分類して検討する。 生産方式は,工業の技術的特性により組立生産と進行生産に大きく分類され よう。組立生産(assemblyindustry)とは,「数種の構成部品がまずそれに固 有な諸種の加工作業によって製造され,次に,これが機械的手段によって結合 されて完成品が作りだされる場合」をいう。 それに対・Lて,進行生産(processindustr−y)とは,「一L種ないし数種の原材 料がすべて最初の工程またはそれに近い諸工程において投入され,それらがと

(5)

生産力式と原価管理の最近の動向 −5− もに−・定の過程を進行することによって製品が完成する場合」をいう。そして, 進行生産は,機械的進行生産と化学的進行生産にわけられる。機械的進行生産 (mechanicalprocessindustry)とは,「−L種ないし数種の原料が諸種の工程 を進行して,その形態のみを変化させる生産方式」をいい,化学的進行生産 (chemicalprocessindustry)とは「数種の原料がすべて最初の工程ないしそ れに近い諸工程において混入され,進行中にその同一惟を喪失し、そいく生産方 式」2)をいう。そして,上記のいずれの生産方式にも含めることが難しいもの を「その他の生産方式」としてまとめた。 具体的には,業種と生産方式の関係は,回答企業については図表3−1のと おりである。 図表3−1 業種と生産方式の関連 組立生産 機械的進行 化学的進行 その他 食料品製造業 53% 29小8% 298% 35小1% 繊維工業 74 667 11.1 148 衣服・その他の繊維 143 429 0 429 パルプ・紙製品 0 688 25小0 6.3 化学工業 4“0 80 792 88 石油・石炭 0 53 947 0 窯業・土石 0 371 429 20。0 鉄鋼 2‥9 91ノノ4 57 非鉄金属 0 714 21小4 71 金属製品 66一7 333 0 一L般機械器具 869 10一7 24 電気機械器具 878 92 3.1 輸送用機械器具 900 43 14 4小3 精密機械器具 957 43 0 その他 42“1 228 17‖5 17“5 全体 425 24・0 24“0 9.5 資料:[昭和61年]。 2)生産方式の分類及び定義は,向井武文「生産方式と作業形態」(藻利重隆費任編集『経営 学辞典』,東洋経済新報社,1967年のうち)に基本的に拠っている。

(6)

エ躯7 香川大学経済学部 研究年報 27 一一(ブー

1生産技術の一面−FMS化

ここでは,生産技術の変化の一面を,とりわけ多品種少量・中豊生産に適し

ているといわれている弾力的生産システム(flexiblemanufacturingsystems;

以下,FMSという)の導入状況の程度によって検討してみたい。なお,ここで FMSとは,「工作機械(NC工作機),自動搬送装置(コンベアベ)t/ト,ロボッ ト,その他)とコンビニ、一夕を組合せたシステムであり,機械自体,機械間の フレキシビリティを目差すもので,同山生産ラインでもって多品種の製品(あ るいは部品)を作ることのできるシステム」をいう。FMSの導入状況は,図表 3−2のとおりである。 図表3−2 FMSの導入状況 単純平均 加重平均 企業 工場 企業 工場 組立生産 40% 13% 64% 25% 機械的進行生産 22 7 31 12 化学的進行生産 9 4 10 4 その他 20 6 22 5 全体 26 8 44 18 資料:[昭和57年]。加重平均は売上高ウエイト。

多品種少・中豊生産の技術的基盤であるFMSの導入状況は,製造企業全体の

企業数では単純平均によると約1/4強の企業で,売上高で加重平均すると44%の

企業で導入されている。工場数では,単純平均で8%,加重平均で18%の工場

で導入されている。以上,製造企業全体では規模の大きい企業での導入比率が

高くなっていることがわかる。生産方式別には,組立生産での導入が他の生産

方式に比較して,FMSの導入が圧倒的に進んでいることが図表3−2からよ

く読み取れる。それは,企業単位でみてもまた工場単位でみても同様であり,

かつ規模の大きい企業での導入割合が高くなっていることが理解出来る。次に

導入比率が高いのは機械的進行生産であり,企業規模の大きい企業で導入が多

くなっているのは組立生産の場合と同様である。化学的進行生産は,生産方式

(7)

−7− 生産方式と原価管理の最近の動向 の性格からしても導入が低くかつそ・の必要性も低いようである3)。 2 生産方式多様化の要因と傾向 消費者ニーズの個性化・多様化がいわれ,そのような消費者ニーズの個性化・ 多様化を反映した生産方式が求められているが,わが国企業の現状はどのよう になっているのであろうか。ここでは,業種の構造変化,輸出比率の割合及び 生産方式,特に企業の生産している生産品目数,それぞれの生産品目の年間生 産量,及び劇回の生産におけるロットサイズの側面から,生産方式の多様化の 一・面を検討してみたい。 (1) 業種の構造変化 まず,最抑こ業種別,及び生産力式別の企業数の変化を見てみよう。業種別 の企業数の変化は,図表3−3のとおりである。それによると,大きくは電気 機械,金属製品,輸送用機械,−・般機械の業種の企業数が増加し,繊維,窯業・ 土石,パルプ・紙,鉄鋼,非鉄金属などの業種が減少傾向にあることがわかる。 また,生産方式別に検討してみると,それぞれの企業数は図表3−4のとお りである。表からもわかるとおり,組立生産と機械的進行生産の割合の増加傾 向が著しく,逆に化学的進行生産の減少傾向もまた著しいことがよくあらわれ ている。 このことは,後述するように,組立生産での多品種少量・中量生産化が最も 著しく,化学的進行生産ではその道の傾向にあるという結果を考慮すると,組 立生産,機械的進行生産の企業の割合が増加傾向にあることは,すくなくとも, 製造企業全体としてはそれだけ多品種少量・中量生産化が進行している一・要因 になるであろう。 3)FMSの導入状況の詳細は,以下の論文を参照のこと。井上信一劃「フレキシプル生産シス テムの導入と多品種少量生産化」,『地域経済高度情報化のための管理科学的手法の開発』 (文部省特定研究報告書),香川大学経済学部,昭和61年3月,及び同「FMSと多品種少 量生産」,『香川大学経済論革山 第59巻第2号,昭和61年9月。

(8)

香川大学経済学部 研究年報 27 Jガ7 −β− 図表3−3 業種の移動(1) 昭和56年 昭和61年 食料品製造業 73(8小1%) 74(8.0%) 繊維工業 61(6“7%) 58(6。2%) パルプ・紙製品 27(30%) 25(27%) 化学工業 146(161%) 150(161%) 石油・石炭 13、(14%) 13(14%) 窯業・土石 47(52%) 44(47%) 鉄鋼 51(56%) 51(55%) 非鉄金属 36(40%) 35(3小8%) 金属製品 31(34%) 35(3“8%) −・般機械器具 127(140%) 133(14.3%) 電気機械器具 148(163%) 157(169%) 輸送用機械器具 66(73%) 70(75%) 精密機械器具 31(34%) 32(34%) その他 50(55%) 52(56%) 全体 907(100%) 929(100%)

資料:東京証券取引所『FACT BOOK1981』,同『FACT BOOK

1986』。 図表3−4 業種の移動(2) 昭和56年 昭和61年 組立生産 248(41小8%) 226(440%) 機械的進行生産 109(18“4) 136(265) 化学的進行生産 161(271) 105(205) その他 75(126) 46(90) 全体 (n=593) (n=513) 注)時系列的に使用する昭和61年の調査データは,昭 和56年との関連性を保つため東証上場の製造企業 (513社)に限った。以下同様。なお,回答のあった全 企業720社の生産力式別の企業数は,組立生産(306 社),機械的進行生産(173社),化学的進行生産(173 社),そしてその他(68社)である。 資料:[昭和56年],[昭和61年]。

(9)

生産方式と原価管理の最近の動向 −.9− (2) 輸出比率の増加 日本の主要製品の輸出高に占める構成比の推移は,図表3−5のとおりであ る。表からもわかるとおり,1960年代から−・質して増加傾向にあるのは自動車, 電気機械等の機械類(組立生産による製品)でアジア,北米,欧州を中心に輸 出されており,現在では輸出の70%を超えている。また,鉄鋼のような機械的 進行生産による製品は1960年代−1970年代にかけては増加傾向にあり輸出の十 数パーセントを占めていたが,現在では減少に転じ輸出の8%弱に減少してい る。化学製品のような化学的進行生産による製品は,1960年代以来4∼6%の間 で推移しており,余り変化がみられない。 図表3−5 主要商品別輸出入通関状況 繊維・ 非金属・ 食料品 同製品 化学製品 鉱物製品 鉄 鋼 機械類 合 計 1960 63% 30小2% 45% 42% 96% 255% 4,055 1965 41 18“7 6‖5 31 153 352 8,452 1970 34 125 64 19 147 46り3 19,318 1975 14 67 70 13 183 53.8 55,753 1980 12 49 52 1“4 119 62小8 129,807 1985 7 36 4.4 12 7小7 71.8 175,638 注)各商品の品目の下の数字は,輸出高に対する構成比を示す。合言十欄の数字は,U S$Millionによる絶対額である。 また,食料品(魚介類等),繊維・同製品(合成繊維糸,綿織物,合成繊維織物), 化学製品(化学肥料,人造プラスチック等),非金属鉱物製品(陶磁器等),金属・同 製品(金属製品,鉄鋼等),機械類(紡織機械・ミシンその他の部分品,テレビ受像 機,ラジオ受信機,テープレコーダー,自動車,二輪自動車,車両船舶・その他部分 品等)が,それぞれの主要な構成商品である。 資料:叩召和60年経済統計年報』,日本銀行調査統計局,1986年。 上記の傾向を,生産方式別に総生産に占める輸出比率の側面から検討したも のが,図表3−6である。表からもみられるように,組立生産での輸出比率は 361%(加重平均)で飛び抜けて高く,ついで機械的進行生産がその約半分, 化学的進行生産は更に少なくなっているのは,商品別の輸出比率と対応するも のである。また,規模別には,組立生産,機械的進行生産で,しかも規模の大

(10)

香川大学経済学部 研究年報 27 図表3−6 生産方式別の輸出比率 J9β7 一∼り− 単純平均 加重平均 組立生産 2006% 36.05% 機械的進行生産 9.96 1902 化学的進行生産 8小14 673 その他 5小41 697 全体 1364 2469 資料:[昭和61年]。 きい企業での輸出比率が高くなっているのも目立った特徴である。 以上のような輸出比率の増加傾向は,当然輸出仕向け国の多様化をもたらし, アジア,北米,欧州を中心に,多い企業では百数十ケ国に製品を輸出している。 そのことは,それぞれの仕向け国のこ−ズ,仕様に合った製品を製造しなければ ならないことを意味し,製品品種の多様化をもたらし,製品1品種毎の生産量 を少量化せざるを得ない原因になり,結果的に企業が多品種少量・中量生産化 に向かう重要な要因の一つになっている。 (3) ニーズの多様化一製品種類,生産量,ロットサイズの変化 ここでは,上記の業種の変化,輸出比率の増大及びニーズの多様化に対応せ ざるを得ない製造企業の生産方式の変化を,製造している製品の品種,−・品種 当たりのある一・定期間の生産量及び,各品種の・・・・一一回の生産当たり生産量,すな わちロットサイズの3つの側面から時系列的に検討する。勿論,回答結果は各 企業の回答者による主観的,質的判断によっているのであるが,時系列的に比 較して見ることにより,製品品種,生産量,ロットサイズの変化をある程度把 握出来るであろう。 製造企業全体については,図表3−7に示すとおりである。昭和56年と昭和 61年とでは,調査票の質問形式が劇部異なるため一部解釈を含めて推測しなけ ればならないが,一応次のように理解できる。まず,昭和56年,昭和61年とも, 製品品種はほぼ3/4の企業が多品種化しており,小ロット化についても約7割の 企業が小ロット生産であり,時系列的にみると現在もなお多品種化,小口ツト

(11)

−ノブ− 生産方式と原価管理の最近の動向 国表3−7 製品種類,生産量,ロットサイズの変化 (製造企発全体) (製品種類の変化) (生産皇の変化) (ロットサイズの変化) 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 多品種生産 740% 744% 少量生産 395% 45L7% 個 別 生 産 ……沖1%) 三…輝7%) 中品種生産 119 中量生産 345 232 小口ツー生産 少品種生産 226 127 多盟生産 226 284 中ロツト生産 262 そ の 他 34 10 そ の他 34 28 大口ツト生産 87 大量生産 43 その他 16 (製品種類の変化) (生産虫の変化) (ロットサイズの変化) 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 多品種生産 880% 792% 少盈生産 512% 576% 個 別 生産 ≡芸…%)(806%) ……;%)(845%) 中品種生産 124 中盈生産 368 210 小口ツト生産 少品種生産 91 皿 多孟生産 91 187 中ロツト生産 116 そ の 他 29 皿 そ の他 29 13 大口ツト生産 31 大腰:生産 4 その他 4 (機械的進行生産) (製品種類の変化) (生産量の変化) (ロットサイズの変化) 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 多品種生産 736% 754% 少豊生産 321% 385% 個 別 生 産 …芸;%ト%) 三…;%)(564%) 中品種生産 119 中庭生産 415 259 小ロット生塵 少品種生産 255 119 多量生産 255 341 中ロツト生産 241 そ の 他 8 そ の他 ロ 15 大ロット生産 15 8 大盤生産 3L7 その他 0 (化学的進行生産) (製品種類の変化) (生産盟の変化) (ロットサイズの変化) 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年

多品種生産 494% 610% 少孟生産 190% 317% 個 別 生 産 3;…%)(452%) 。言‡%ト81%) 中品種生産 105 中盈生産 304 192 小ロット生産

少品種生産 455 2L76 多放生産 455 462 中ロツト生産 183 そ の 他 51 10 そ の他 51 29 大口ツト生産 13 5 大意生産 14 4 その他 58 資料:[昭和56年],[昭和61年]。

(12)

香川大学経済学部 研究年報 27 J.財7 一J2−

化している傾向がうかがえる。一・品種当たりの生産量は,昭和56年,昭和61年

とも少量生産の割合が高いが,時系列には少量生産と多量生産の割合が増加し

ており,中量生産の割合が減少傾向にあるのは注目すべき傾向である。

次に,生産力式別に,製品種類,生産量,ロットサイズの変化をより詳細に

検討してみよう。まず,組立生産においては,昭和56年の時点で既に多品種生

産であると回答した企業が90%近くあり,多品種化に対応しなむナればならない

企業は既に充分多品種化しており,昭和61年にはむしろ若干品種が整理される

傾向も見られる。生産量については,昭和56年,昭和61年とも少量生産の割合

が過半数を超えているが,時系列的には製造企業全体の傾向と同じく,少量生

産を中心に,多量生産もまた増加傾向にあり,逆に中量生産は減少傾向にある。

また,ロットサイズについては,昭和56年に既に小口ツト生産(個別生産も含

めて)の企業数が既に8割を超えていたが,昭和61年には85%近くなり,今な

お小ロット生産化が進行している傾向が顕著である。

次に,機械的進行生産では,昭和56年時点で約3/4近くの企業が多品種化して

おり既にかなり多様化しているが,それ以降も多品種化が進行していることが

わかる。生産量については,組立生産の場合に比べると少量生産の割合は製造

企業全体の場合と同様に少なく,時系列的には少量生産と多量生産が増加傾向

にあり,中量生産が減少傾向にあることは製造企業全体の場合と同様である。

また,ロットサイズは,小口ツト生産が若干減少傾向にあり,逆に大ロット生

産がやや増加傾向にあるのは組立生産の場合とは逆の傾向にあり,注目する必

要がある。すなわち,機械的進行生産では,製造企業全体の傾向と同じように,

少量生産化している企業あるいは製品がある一・方で,生産方式及び製品の性格

からして,製品として最終消費者にわたる製品とともに,組立生産などに供給

される製品も比較的多く,一・方で少量生産化とともに他方大壷生産している企

業あるいは製品も多く,それらの製品,部品が納入される組立生産などの産業

のニーズに迅速に答えるため幾分多い目に製品在庫を確保している必要がある

であろうことは,後述の棚卸資産の在高,特に製品在庫期間の長さにも窺える。

化学的進行生産は,産業の性格からして,組立生産,機械的進行生産に比べ

て多品種化,少室生産化,小口ツト生産化が最も行われていない業種であるが,

(13)

ーヱβ− 生産方式と原価管理の最近の動向 時系列的に昭和56年と昭和61年を比較して見ると,次のようになっている。ま ず,製品の種類は,昭和56年に比べて昭和61年には多品種化している企業の割 合が十数パーセント増加しており,多品種化の傾向が特に顕著である。生産量 についても,今なお多量生産の割合が45%前後と最も多いが,この5年周にお ける少量生産化の傾向が顕著であり,少量生産の企業が約13%も昭和56年から 昭和61年の間に増加している。それだけ中量生産の割合が減少しており,多量 生産の比率にはほとんど変化がみられない。ロットサイズについても,この5 年間に小口ツト生産化がかなり進行しており,その企業数が半数近くになって いる。他方,(単種)大量生産の企業の割合も20%近く減少しており,その減少 傾向は著しい4)。 以上,生産方式の変化を,製品種類,生産量,ロットサイズの側面から分析 した。 3 生産方式の多様性とその代表的形態 (1) 生産方式の基本型 原価計算や原価管理の在り方は,おそらく事業活動の中心にある製造活動の 基本的特性と直接・間接に係わっているであろう。そこで,われわれは,製造 活動の基礎的な形態を「生産方式」と呼ぶこととし,その特徴を捉えてきたが, 本節では,これまで柔軟な生産体制へ向けて経営努力された結果,現状におい て生産方式のいかなるパターンが確立しているかを確かめたい。その捉え方に よっては,原価計算や原価管理に対するそれの影響も,評価が分かれうるであ ろう。 ここでは,「生産方式」を5つの側面で捉えたが,改めて掲載すると, 4)図表4−11も参照のこと。ただ,これまでの調査では,企業,業種,生産方式別での,多品 種化,少量生産化,と小口ツト化については検討がなされているが,各企業における代表 的な製品とその他の製品における傾向にわけては調査がなされていない。詳しくは業種に ょる特性と共に各企業で生産している製品の種類(各企業の主要製品での傾向,およびそ の他の製品での傾向)に分けて検討する必要があろう。調査票では,製造している製品の うち,各企業の「代表的な製品」について回答を依頼した。各企業の主要製品での傾向が 上述のような結果であることを考慮すると,主要製品以外の製品では,多品種少量・中豊 生産化がより進んでいることは,推測される。

(14)

J.9β7 香川大学経済学部 研究年報 27 ーーノ▲ノー ①製造技術的特性(組立,機械的進行,化学的進行) ②品種の特性 (少品種,中品種,多品種) ③生産量の特性 (少量,中量,大量) ④ロットサイズの特性 (単品,混合,小口ツト,中ロツト,大口ツト,単 種大量) ⑤市場的特性 (注文,その他,見込)

であった。これらの諸形態は,次のような関連にあるものと見ておきたい。−

般に経営は,大なり少なり同業他社との競争的環境下におかれており,当面す る競争状態を意識しながら具体的に事業が展開される。かかる事業活動を規制 する要因の捉え方は多様であろうが,ここでは製造事業の二大要因として,導 入可能な生産技術的な実施体制つまり①の問題と潜在的・顕在的な市場からの 製品に対する要請の受入体制つまり(診の問題であると捉え,そのいかんによっ て,事業基盤のかなりの部分が規制されるものと思われる。そのような基盤の 上に経常的な製造活動が調整され,例えば品種,生産量,ロットなどを考慮し た一・定の方式つまり②,③,④が定着し,あるいは新方式へと改変されるであ ろうと見ることができる。 まず「品種,生産量,ロット」の形態を取り上げると,その多様な組合せに より,製造活動の細分化の程度が異なる各種のパターンが生ずるが,そのよう なパターンのうち適用会社数の多いものから全体の80%弱になるまでをピッ クアップすると,図表3−8のようである。 得られた代表的なパターンは9種類であるが,これでも全体の傾向を把握す るのにはやや散漫な印象を与えるから,製造活動の細分化ないしは柔軟性の違 いという観点からこれをさらに集約して,図表のように4種類にグループ化す ることを試みた。現在の生産体制の向かいつつある方向が,市場環境の比較的 短期的な変化に対しても微妙に即応できるような「製品と製造活動の小刻みな 適応」の確立にあるという見方に立つとすれば,一斉の極に,これまでの典型 とされた「少品種一大量一大型ロット」生産があり,他方の極には,これ

と反対の「多品種一少量一小型ロット」生産があるといえよう。このよう

な見方から,代表的パターンを試みにこの4種類に分類し,それぞれを現状に

(15)

生産方式と原価管理の最近の動向 図表3−8 製造活動の形態 ーJ5− 基本形態 代 表 的 形 態 会 社 数(%) 多品種一少量十小型ロット 製品細分型 単品生産 混合生産 88 56 小口ツト生産 122 266(369) 少品種一少量一小型ロット(変形) 単品生産 18 287(399%) 小ロット生産 3、21(29) 多品種−−中塩一小型ロット ロット細分型 単品生産 8 (中間型ⅠⅠ) 混合生産 26 小口ツト生産 22 56(78) 中品種一中豊一小型ロット 単品生産 3 混合生産 9 小ロット生産 8 20(28) 多品種一大量一小型ロット 単品生慮 9 混合生産 29 120(167) 小口ツト生産 6 44(61) 品種多様型 (中間型Ⅰ) 多品種一中量一中ロツト 49(68) 中品種一中豊一中ロツト 76(106) 27(38) 少品種一大量一大型ロット 製品一 括型 大口ツト生産 20 単種大量生産 38 58(81) 多品種一大量一大型ロット(変形) 大ロット生産 23 88(122) 単種大量生産 7 30(42) その他の形態 149(207) 計 720(100%) おける「基本形態」であると位置づけてみた。製品一一・括型→品種多様型(中 間型Ⅰ)→ロット細分型(中間型ⅠⅠ)→製品細分型となるにつれて,品種, 生産量,ロットの面で市場への「生産の柔軟性」が一層確保されることになる といえよう。

(16)

J9β7 香川大学経済学部 研究年報 27 −J6− それぞれの基本形態の特徴をうかがうと,次のようなものであると予想され る。 <二製品細分型> 豊富な品種の品揃えをするとともに,それが高じて,品種別生産量がか なり少量化しているため,ロット的にもかなり小分けして生産せざるをえ ない方式である。機械,装置,作業者を汎用化して,できるだけ生産ライ ンを簡潔に集約する努力が進められるとともに,総じて日常活動は,小刻 みに細分化して行われるため,経常的な市場変化に対してかなり柔軟に応 じられる体質を備えている。 われわれは,これを,製品を主体とする製造活動の細分化がもっとも進 んでいるという意味で,「製品細分型」と名付けておきたい。

細かく見ると,これにも「多品種一少量一小型ロット」と「少品種

一少量一小型ロット」の2種類がある。前者がこのグループの典型で

あり,会社数も全体の1/3強を占め,大きな領域を占めるが,実質的には後 者もこのジャンルに含めてもいいものと考えている。これは,一偏ト「品が 特殊性のある大型製品であるか,非常に複雑ないしは精密な加工を要する 製品であるために,同時にまたは短期に扱う製品は少品種であって,その つど特殊な製品の製造に専念するケースであると思われる。このようなケ ースでは,同時にまたは短期に扱う製品は少品種であっても,長期には多 品種であって,製造活動の細分化という点からは,実質的に「多品種一 少量一小型ロット」生産に近いと見られるのではないか。 この分類に属する経営は,両者を含めて40%弱(287社)で最も多く,今 日の主流を形成している。 <ロット細分型> ここでも品種はそれなりに豊富な品揃えが用意されているが,幸い量的 にはまだある程度まとまった生産量が確保されているケースである。それ だけに,量産方式を堅持できる余地はまだ残っているにもかかわらず,生 産ラインはできるだけ汎用性を保ち,製造期間もできるだけ短縮するよう に工夫がなされ,ロットを小刻みに区切って生産するという方式である。

(17)

生産方式と原価管理の最近の動向 ーヱ7一 結果的には受注量がある程度確保されたとしても,できるだけ受注が確実 になってから少量ずつ生産するという,それなりの柔軟性を備えている。 生産量はある程度確保されるから,必ずしもロットの小型化を強制され るわけではないが,製品在庫の圧縮など何らかの必要性から,いち早くロ ットの小型化が進められているため,これを「ロット細分型」と呼んでお きたい。全体的には,両極のタイプに挟まれて,「製品細分塾」の方に近い 中間型であると位置付けられよう。

その内訳として「多品種一中量一小型ロット」「中品種一中量一

小型ロット」「多品種一大量一小型ロット」によるタイプが含まれよう。 このような方式は16.7%(120社)あり,それなりにかなり分散して見ら れる形態である。 く品種多様型> ここでも品種的にはかなり多様な品揃えがあるが,幸い各品種の生産量 は,上と同様少なくとも中程度には確保されているから,加工ロットは中 程度に束ねて生産される方式である。もともと量産に適した環境にめぐま れた製品であるなど小ロット化の必要性があまりないか,あるいは解決に 時間を要する製造技術上の課題があるため,専用ラインや段取替えがあま り調整ないしは改変されず,ロットの小型化があまり進んでいないのであ ろう。品揃えはそれなりに配慮されているが,全体的に見ると,柔軟な体 制の確立という点では,中程度にとどまっている。 柔軟な体制の確立という点では,品種の多様化を先行させているから, これを「品種多様型」と呼んでおきたい。「製品−・括型」に近い中間型であ ると位置付けられよう。その意味で,これを「中間型I」とすると,前述 の「ロット細分型」は「中間型ⅠI」と位置づけることができよう。

これには,「多品種一中量一中ロツト」「中品種一中量一中ロツ

ト」が含まれ,実施会社数のウェイトは10,.6%(76社)で,各所に点在し た形態であるといえよう。 <製品−・括型> 量的に大きな生産量が確保されているため,各種製品が大ロットまたは

(18)

ヱ9∂7 香川大学経済学部 研究年報 27 −Jβ一 持続的な反復生産によって生産される方式である。製造活動は,品種的に も,生産量・ロット的にも大きな単位で実施され,各製造活動は相対的に 専業的かつ単調に継続される傾向があるといえよう。これまで近代的な生 産方式の代表的なタイプとして描かれてきたものに相当するであろう。 この方式では,製品や製造活動を品種,生産量,ロットにおいてかなり 大きな単位で一・括的に扱う傾向があるから,、「製品−L括型」と名付けた。 この分類の典型は,「少品種一大畳一大型ロット」生産であるが,こ の変形として「多品種一大量一大型ロット」のタイプもこれに含ま.れ るものと考えた。後者は,品種的にはかなりのバラエティを擁しているが, もともと生産量が大量な製品であって,比較的小さな専用ラインを多く擁 して各品種を並行的に生産するか,あるいは最終またはそれに近いエ程で 品種が細かく枝分かれするが,それまでは限られた品種を量産するといっ たケースが考えられる。かかる方式も,やはり生産体制の柔軟性という点 からは,事実上「製品d・括型」の変形と見てもいいのではなかろうか。 この分類に所属する経営は12.2%(88社)で,それなりにまとまったジ ャンルを構成してはいるが,もはや主流を形成するというほどではない。 これ以外に上記の4つのタイプに該当させることが難しい生産方式が20%強 (149社)あり,「その他の形態」として一・括しているが,それらは,典型的な タイプというほどには数がまとまっていない。 単年度のデータだけから断定するわけにはいかないが,概して生産体制は, 例えばFMSに象徴されるような生産手段の改変を内包しながら,「製品一・括

型」→「品種多様塾」→「ロット細分型」−→「製品細分型」へと,製造

酒動の細分化と柔軟性の確保が緩やかに進行しているとみてもよいのではなか ろうか。 (2) 生産の柔軟性と技術,市場 前節3−2の分析からうかがうところによると,製造活動の細分化・柔軟化 の傾向は,単に製造技術的な実施体制(組立生産,進行生産)の違いや市場か らの個別的要請の受入体制(見込,注文)の違いのいずれかに限られたもので

(19)

−J9− 生産方式と原価管理の最近の動向

はなく,それを越えた全般的な傾向となっているといえる。中でも品種の多様

化とロットの小型化が,ほぼ並行して,全体の傾向を先導しているようであり,

品種やロットを介して市場に即応する体制が確立されてきたといえる。粗っぽ

いいい方をすれば,この傾向は全体のおよそ70%の製造業を巻き込んでいると

いえよう。

しかし,かかる製造活動の細分化の傾向は,全般的な潮流であるばかりでな

く,生産の技術的特性や市場的特性によって相対的に違うという側面も含んで

おり,図表3−9および10からその様相を概観することができ=ろ。

図表3−9によると,化学的進行生産→機械的進行生産一→組立生産とな

るにしたがって,総じて製造活動の細分化が進んでいることがわかる。おそら

く,一局の製造技術的条件によって,必要な素材やその構成,作業場所の連続

移動の必要性など,物理的.に作業酒勤を束縛する要因が少なくなるほど,製造

の細分化が進めやすくなるといった事情が反映しているといえるのではなかろ うか。

また,図表3−10によると,見込生産一→その他(中間的な形態であろうと

想定している。)→注文生産になるほど,細分化が促進されるという相対的な

傾向がうかがえる。市場からの製品に対する流動的かつ個別的な要請を受入れ

る経営ほど,製造活動をその要請に柔軟に添わせていることがうかがえる。

以上見てきたように,生産体制の細分化の方向は,技術基盤や受注体制の違

いによってある程度の相対的な遅速はあるものの,どの分野においても指向さ

れており,すでにその方向は総じてかなり浸透しており,現在もその途上にあ

るといえる。

(20)

J鎚77 香川大学経済学部 研究年報 27 図表3−9 製造技術的特性別の製造活動の形態 −20− 型 ロット細分型 品種多様型 製品−・括型 多中多 lコにl口 ロロロロロロ 種種種 種種 曹曽 ロロロロ 種種 ロロロロ l】」 I I t I 中中 大大 小小小 中中

その他の 形 態 計

型型型 ロ1コ 型型 1コロロ ツツ ロロ ツツツ トトト トト ツツ トト 組立生産 15017 167 (546) (196) (78) (33) 機械的進行生産 571 58 16 313 32 17 5 22 1214 26 35 202 四 100 (335) (185) (127〉 (15d) () (〉 化学的進行生産 361 37 (214) (98) (110) (272) その他 23 2 25 (36$〉 (162) (162) (74) (235) 全 体 26621 287 (399) (167) (106) (122) 60 80 0 20 40 組 立 機械的進行 化学的進行 そ の 他 全 休 18.5 12.7 15.0 9.8 11.0 27.2 16.2 7.4 23.5 36.8 16.2 16.7 10.6 12.2 20.7 ロソト品種製品 細分型 多様型一偏型 製品細分型

(21)

−2ムー 生産方式と原価管理の最近の動向 図表3一川 市場的特性別の製造活動の形態 製造活動の 多中多 【コ【コlコ 口ロロロロロ 多中 ロ【コ ロロロロ Pロロロ 種種種 1−l 種種 I I 中中 種種 ll 大大 小小小 中中 大大

その他の 形 態 計

型型型 ロロロ ロロ 型型 ロロ ツツツ トトト ツツ トト ツソ トト 注文生産 16919 188 (575) (150) (76) (52) その他 9 0 9 3 (474) (105) (158) (105) (158) 見込生産 88 2 90 (243) (186) (129) (183) 不明・無記入 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 (333) (667) 全 体 26621 287 (399) (167) (106) (122) 0 20 40 60 80 注 文 その他 見 込 無記入 10.5 15.8 47.4 10.5 15.8 24.3 18.6 12.9 18.3 25.9 0.0 33.3 66.7 39.9 16.7 10.6 12.2 20.7 様持 その他 製品細分型

(22)

香川大学経済学部 研究年報 27 エ9β7 −22− ⅠⅤ ここでは,原価管理の課題の−・面を,ライフサイクル・コスト,コストダウ ンの課題およびその手法の検討を通じて明らかにしたい。また,それらの原価 要素別の製造原価と棚卸資産の在庫期間の変化への影響をもあわせて検討す る。 1 コストダウンの対象と手法 (1) ライフサイクル・コスト a)製品のライフサイクル ⅠⅠⅠで考察したように多品種少量・中量生産化の傾向が進んでいる時代には, コストダウンの問題も,どのライフサイクルの段階の製品をどの位企業がもっ ているか,すなわち製品のライフサイクルの短い製品を多く抱えているか,ま たその道であるかは,原価管理の課題を考える際も重要な問題である。そこで, ここではまず製品のライフサイクルと,製品ライフサイクルという面から製造 原価の管理を考えた場合,ライフサイクルのどの段階で製造原価のどの位が管 理可能であると担当者は考えているか,を検討する。 製品のライフサイクル別の売上高に占める構成比は,図表4−1のとおりで ある。製造企業全体については,単純平均では6年以上の製品が約6割,3年 未満,3年以上6年未満の製品はそれぞれ約2割である。生産方式別には,祖 国表4−1製品ライフサイクル別の売上高の構成比 3年未満 3年以上6年未満 6年以上 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 組立生産 2693% 36“39% 3040% 4000% 4367% 23.62% 機械的進行生産 15.05 1230 1326 12小16 7169 75小54 化学的進行生産 1.4。62 9.72 1179 686 7360 8342 その他 23.35 22“76 1392 1789 6274 59.35 全体 2103 25.03 20小77 2604 5820 48小93 資料:[昭和61年]。

(23)

−2ヲー 生産方式と原価管理の最近の動向 立生産で3年未満,3年以上6年未満という比較的新しい製品の割合が際立っ て多くなっている。 加重平均によると,製造企業全体と組立生産では,新製品の販売開始からの ライフサイクルの新しい製品の割合が多くなっており,逆に機械的進行生産と 化学的進行生産では6年以上の製品の割合が多くなっている。 以上のことは,生産方式の変化において組立生産,とりわけ規模の大きい組 立生産の企業で多品種少量・中量生産化の傾向が顕著であったのと同様に,ここ でも組立生産では製品ライフサイクルの短い製品を多く抱えており,それだけ 新製品を多く市場に短いサイクルで投入する必要性が高いことを示しているの であろう。また,そのため原価管理においても,ライフサイクルの短い新製品 を多く抱えている状況に見合った管理方法が要請されるであろう。 b)ライフサイクル・コストによる管理 製造原価を,製品のライフサイクルの観点から考察することは,ブランチャ ード『ライフサイクルコストの実際』(1978年)で詳述されており,そこでは製

品企画,構想設計,詳細設計等の業務の重要性が力説されてい

る。また,日本

でも東京理科大学の田中雅康教授等が精力的に取り組んできており,現在のよ うに製品のライフサイクルが短縮化してきている時代には,原価管理にとって はとりわけ重要であろう。 ここでは,製造原価の管理をライフサイクル,すなわち製品企画,基本設計, 詳細設計,製造準備と製造段階の5つの業務に区分していずれの管理段階で, どの位が管理可能であると企業の担当者が考えているか主観的な判断を尋ね た。 製品のライフサイクルの観点から,製造原価の管理可能性の現状についての 回答者の主観的な判断をパーセントで示したのが,図表4−2である。製造企 業全体についての各段階のウエイトは,重要性の高い順に,製品企画,基本設 計,製造,詳細設計,製造準備段階になっている。生産方式別には,組立生産 では基本設計,詳細設計を含めた設計の段階をとりわけ重視しており,それだ け製造段階の重視度が低くなっている。逆に,機械的進行生産,化学的進行生 産では製造段階の重視が目立っている。

(24)

J9β7 香川大学経済学部 研究年報 27 図表4−2 製造原価の管理可能性(現状) −ユノー 製品企画 基本設計 詳細設計 製造準備 製 造 組立生産 2422% 2508% 19.27% 1478% 16。65% 機械的進行生産 23.05 1917 17.09 14“72 25.97 化学的進行生産 24.82 17.23 15小31 18.66 2398 その他 26.54 1540 16小21 17.44 24小40 全体 2424 21.23 17.70 15.71 21.11 注)調査票の構成比を合計して回答企業数で除したパーセントである。 資料:[昭和61年]。 また将来,製品のライフサイクルのどの段階を重視すべきかについての担当

者の回答は,図表4−3のとおりである。図表4−3は,重視度をポイントで

示したものであるが,傾向的には現状と良く似ており,製品企画,基本設計の 重視が目立っている。とりわけ,組立生産における製品企画,基本設計,詳細 設計の段階を重視する傾向が現状より更に強くなっている。 図表4−3 製造原価の管理における重視段階(将来) 製品企画 基本設計 詳細設計 製造準備 製 造 組立生産 3“94 4.05 313 230 1。72 機械的進行生産 351 3小40 287 239 2“16 化学的進行生産 3小45 3小16 2.63 280 161 その他 3。77 3。42 280 2.22 151 全体 373 367 2小94 2.40 198 注)付録の調査票の質問にあるように,それぞれの重視段階に順位を付けていただき, 1位→5点,い,5位→1点として,それぞれの段階の得点合計を回答企業数で除 して点数を算出した。 資料:[昭和61年]。 (2) コストダウンの課題 ここでは,コストダウンを日常使用されている広義の意味で使用している。 すなわち,コスト・コントロールの局面での狭義のコストダウンとコスト・プ ラニングにおけるコストリダクションとを併せたコスト・ミニマイゼーション

(25)

−25− 生産方式と原価管理の最近の動向

の意味で用いている5)。コストダウンの課題を,製造企業全体と生産方式別に,

示したのが図表4−4(1)(2)である。以下図表によりながら,特徴的な点だ

けを指摘したい。

製造企業全体では,原材料の購買管理が昭和56年も昭和61年のいずれでも最

重要課題であると考えられており,いずれの場合も1位でしかも昭和61年には

重要度(ポイント)が上昇してきている。これは,いずれの生産方式でも同様

の傾向にあり特に注目しておく必要がある。

次に,製造企業全体では,品質管理(TQCを含む)が第2位であり,これも

この5年周に重要度が上がっている。このことも,いずれの生産方式でも同様

の傾向にありコストダウンのために企業にとって大切な活動であることがわか 図表4−4、コストダウンの課題(1) (製造企業全体) 昭和56年 昭和61年 原材料の購買管理 1“96(1) 2.28(1) 品質管理(TQC) 1“42(4) 1.72(2) 歩留りの向上 1り81(2) 1.48(3) 機械設備の更新 1小27(6) 131(4) 適切な操業度の維持 1。43(3) 114(5) 設計の合理化 111(7) 108(6) 工場経費の節減 1り11(7) 1い02(7) 作業時間の短縮 139(5) 1,00(8) 在庫管理 77(10) 71(9) 原材料の転換 て4(11) 68(10) 外注管理 67(11) 工程組合せの合理化 78(9) 66(12) 作業の標準化 55(12) 44(13) 製品品種の合理化 39(13) 37(14) 研究開発管理 36(15) その他 26(14) 09(16) 5)詳しくは,三浦和夫「生産管理におけるコスト・マネジメント」,『経研香川山 第2号, 昭和54年8月,44−46ページを参照のこと。

(26)

J5泌7 −26− 香川大学経済学部 研究年報 27 図表4−4 コストダウンの課題(2)一生産方式別 (組立生産) (機械的進行生産) (化学的進行生産) 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 原材料の購買管理 231(1) 260(1) 歩留りの向上 250(1) 2飢(1) 原材料の購買管理 179(2) 221(1) 設計の合理化 208(2) 188(2) 原材料の購買管理 157(3) 184(2) 歩留りの向上 285(1) 218(2) 品質管理(T−QC) 133(4) 179(3) 品質管理(TQC) 161(2) 170(3) 機械設備の更新 122(6) 182(3) 作業時間の短縮 198(3) 128(4) 機械設備の更新 152(4) 131(4) 適切な操業度の維持 164(3) 158(4) 機械設備の更新 119(6) 111(5) 適切な操業度維持 131(5) 112(5) 品質管理(TQC) 148(5) 155(5) 外注管理 98(6) 工場経費の節減 116(7) 111(6) エ場経費の節減 161(4) 141(6) 適切な操業度の維持 126(5) 94(7) 作業時間の短縮 129(6) 96(7) 原材料の転換 116(7) 91(7) エ程の合理化 86(7) 71(8) 在庫管理 93(8) 71(8) 在庫管理 85(8) 81(8) エ場経費の節減 68(8) 69(9) エ程の合理化 79(9) 70(9) 作業時間の短縮 63(9) 52(9) 在庫管理 5L7(9) 65(10) 59(10) 設計の合理化 29(12) 40(10) 研究開発管理 53(11) 注)数字は,重要性のポイントを示す。括弧内の数字は,重要性の順位である。なお, ポイントは,1位→5点,・,5位→1点に換算し,それぞれの項目毎に集計し回 答企業数で除して計算した。 資料:[昭和61年]。 る。 三番目には,製造企業全体では歩留りの向上が重要であり,生産方式別には 機械的進行生産,化学的進行生産ではそれぞれ1位,2位であり,しかもその 重要度が飛び抜けて高くなっている。 また,設計の合理化は,全体では6位(昭和61年)であるが,組立生産では 設計の合理イヒは第2位と,ライフサイクルコストのところで既に述べたように, コストダウン対策上とりわけ重要な課題である。 五番目には,機械設備の更新という設備投資の問題が最近のFA化,FMS化 を反映して一層重要になってきており,いずれの生産方式でも重要視されてい る。 その他,昭和56年の調査にはなかった項目であるが,組立生産における外注 管理も注目すべき課題である。 (3) コストダウンの手法 コストダウンの手法にも,会計的な手法だけでなく生産管理的な手法を含め

(27)

生産方式と原価管理の最近の動向 −27− て色々な手法が利用されているが,ここでもそれらの手法がどのくらい利用さ れ,またコストダウンの目的のために企業にとっていかほど重要であるかを調 べた。結果は,製造企業全体,生産方式別に,図表4−5(1)(2)に示すとお 図表4−5 コストダウンの手法(1) (製造企業全体) 1234567891011121314 2 2 9 2 4 1 5 9 1 7 4 3 1 9 3 8 5 9 7 6 3 1 0 3 1 1 1 0 7 4 4 3 3 3 3 3 2 予算編成・統制 原価企画,原価見積 全社的品質管理(TQC) 実際原価計算 生産管理的物量標準の設定 標準原価計算 価値工学,価値分析 目標管理(MBO) IE シュミレーション・モデル

PERT●CPM

回帰分析 数理計画法 その他 図表4−5 コストダウンの手法(2ト生産方式別 (組立生産) (機械的進行生産) (化学的進行生産) 予算編成・統制 690(1) 予算編成・統制 719(1) 予算編成・統制 789(1) 原価企画・見積 670(2) 全社的品質管理 487(2) 生産管理的な物量標準 512(2) 価値工学・価値分析 506(3) 生産管理的な物盃標準 450(3) 実際原価計算 421(3) 全社的品質管理 450(4) 実際原価計算 406(4) 全社的品質管理 419(4) 実際原価計算 355(5) 標準原価計算 3∴70(5) 標準原価計算 370(5) 標準原価計算 344(6) 原価企画・見横 342(6) 原価企画・見積 294(6) 目標管理 3。33(L7) 目標管理 326(7) 目標管理 269(7) 注)数字は重要性のポイントをしめす。括弧内の数字は,重要性の順位である。なお, ポイントは,1位から14位まで企業で採用している手法に順位を付けてもらい,1位 →14点,1…,14位→1点に換算し,それをそれぞれの項目毎に集計し回答企業数で 割り,10/14倍した。以下同様。 資料:[昭和61年]。

(28)

香川大学経済学部 研究年報 27 一三好一 J.9β7 りである。 \製造企業全体で採用されているコストダウンの手法のうち,最も重要性の高 いのは,予算編成・統制であり,飛び抜けている。これは,−・方で予算編成・ 統制が広く企業に普及しており80%以上の企業が採用していると共に,予算が 企業全体を一元的に評価出来る指標として,狭義の利益管理志向の原価管理で は中心的に重要なためであろうか。 広義の利益管理志向の原価管理手法で次に重要と考えられている手法は,原 価企画,原価見積や全社的品質管理であり,55%前後の企業で利用されている。 実際原価計算,標準原価計算という伝統的な会計的手法や,生産管理的な物量

標準も40∼46%の企業で利用されており,また,VE・VA,目標管理,IE等も

かなり広く利用されていることがわかる。(なお,紙幅の関係で,表は省略した。) 生産方式別に特徴的な点は,組立生産で原価企画,原価見積やVE・VAがコ ストダウンのための手法として特に重要視されていることである。また,生産 管理的な物量標準が進行生産,とりわけ化学的進行生産で重要であるのが目立 った点である。 2 原価構造への影響 (1) 製造原価の変化 a)直接労務費 昭和56年七昭和61年の労務費の構成比の変化を,直接労務費と間接労務費に わけて推移をみてみよう。直接労務費についての結果は,図表4−6のとおり である。表からは,直接労務費の構成比は単純平均では若干減少気味であり, 加重平均では若干増加気味とこの5年間ではいずれか一つの方向に推移してい るとはT概には言い難い。 他方,回答者の主観的な判断によると,直接労務費の増減率(昭和61年時点 での)は,次のとおりである。〔ここでは,回答者に直接労務費が過去5年間あ るいは将来5年間に増加,減少あるいは同じのいずれであるかを尋ね,同じを 除き(増加の企業数/減少の企業数)を増減率とした。従って,増減率が1よ り大きければ増加の方が多いし,逆に1より小さければ減少の企業数が多くな

(29)

生産方式と原価管理の最近の動向 図表4−6 直接労務費の構成比の推移と増減率 −29− 構 成 増 減 率 単純平均 加重平均 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 過 去 将 来 組立生産 13.30% 1228% 916% 11一16% 0.89 0.58 機械的準行生産 1179 11.97 1128 11,44

137 078

化学的進行生産 10.35 10小01 8小01 614

118

070

その他 1317 13.75 13小46 1217 1.33 0小55 合計 12小14 11。87 936 1045 110 0小65 注)加重平均は製造原価ウエイトによる。以下同様。増減率は,「増加回答企業数/減 少企業数」で計算した。増減率は昭和61年の調査によるものである。以下,増減率に ついては同様。 資料:[昭和56年],[昭和61年]。 っていることを示す。また,増減率の大小は両者の割合を示している。〕直接労 務費の増減率は,過去には組立生産では若干減少が多いが,他の方式では増加 が多くなっている。また,将来については,いずれの方式でも減少するであろ うと予測している。 b)間接労務費 間接労務費の結果は,図表4−7のとおりである。間接労務費については, 昭和61年のデータだけしかないが,構成比はいずれの方式でも規模の大きいと ころで割合が小さくなっていることがわかる。 また増減率は,過去にはいずれの方式でも増加していると答えた企業が1.5倍 から2倍近くあり,逆に将来については,いずれの方式でも減少すると回答し ている企業数が多くなっている。 以上のデータだけからは,充分には実証出来ないが,傾向として過去には少 なくともコンピュータ要員等の間接労務費は増加し,将来的には直接労務費, 間接労務費のいずれも減少の方向に向かうであろうことが推測できる。

(30)

J9β7 香川大学経済学部 研究年報 27 図表4−7 間接労務費の構成比と増減率 −J()− 構 成 比 増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 組立生産 5β9% 3.71% 1.78 0.82 機械的進行生産 433 265 1“93 0.85 化学的進行生産 3‖37 176 146 0小82 その他 5,32 429 300 0.69 全体 4い96 314 182 081 注)直接労務費の注と同様。 資料:[昭和61年]。 C)減価償却費 減価償却費の構成比の推移と増減率は,図表4−8に示すとおりである。

減価償却費の構成比については,FMS化あるいはFA化により減価償却費の

構成比は,過去5年間に化学的進行生産を除いてはいずれの方式でも,また規 模の大小に係わらず増加傾向にあることが,はっきりしている。 また,減価償却費の増減率については,回答者は過去,将来ともに増加する であろうと判断している企業が,いずれの方式でも高くなっているが,とりわ け組立生産でその傾向がはっきりしている。 図表4−8 減価償却費の構成比の推移と増減率 構 成 比 ■増 減 率 単純平均 加重平均 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 過 去 将 来 組立生産 2.96%, 3.66% 326% 385% 3小47 344 機械的進行生産 3.64 478 617 656 3小32 2“07 化学的進行生産 438 640 436 423 3.80 2.05 その他

303 491 4.21 445

1小73 2小00 合計

3.47 463 411 463

3小26 2.54 注)直接労務費の注と同様。 資料:[昭和56年〕,[昭和61年]。

(31)

生産方式と原価管理の最近の動向 −3J− d)外注加工費 外注加工費の構成比は,図表4−9に示すごとく,過去5年間に組立生産で は減少傾向にあり,機械的進行生産では逆に増加傾向にあるようである。化学 的進行生産では余り変化が見られないようである。 ま.た,増減率についでは,過去にはいずれの方式でも増加したと回答してい る企業が多く,将来については方式により異なる。 図表4−9 外注加工費の構成比の推移と増減率 構 成 比 単純平均 加重平均 増 減 率 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 過 去 将 来 組立生産 1298% 11小05% 1162% 787% 158

103

機械的進行生産 573 902 674 947

2.77 090

化学的進行生産 228

252 279 246

2い54 2.00 その他 797 756 4.29 6.86 2。11 475 合 計 8小30 848 7小67 7。34

201

1小20 注)直接労務費の注と同様。 資料:[昭和56年],[昭和61年]。 e)製造間接費 製造間接費=製造原価−[直接材料費+直接労務費+直接経費(外注加工費)] として,その構成比の増減傾向を時系列的に調べたのが,図表4−10である。 図表4一川 製造間接費の構成比の推移 単純平均 加重平均 昭和56年 昭和61年 昭和56年 昭和61年 組立生産 16小79% 19小68% 16一35% 19.06% 機械的進行生産 20.99 23“92 2769 26‖19 化学的進行生産 2550 2547 2494 16.96 その他 1837 2505 3405 23い76 全体 2022 2246 21小76 20て4 注)直接労務費の注と同様。 資料:[昭和56年],[昭和61年]。

(32)

J9β7 香川大学経済学部 研究年報 27 一品Z− 単純平均では,製造間接費はいずれの方式でも増加傾向にあるようであるが, 加重平均してみると,細立生産では増加傾向にあるが,他の方式とりわけ化学 的進行生産では規模の大きい所での減少傾向が著しいことがわかる。 (2) 棚卸資産の在高の変化 最近,特にかんばん方式等により製造原価の管理のため棚卸資産の縮減がい われている。ここでも,棚卸資産の在庫を,原材料在庫,仕掛品在庫,製品在 庫,及びそれを合わせた棚卸資産在庫に別けて,在高の現状および将来の方向 を考えてみた。勿論,業種によりある在庫水準が必要であるため,単純にその 在庫期間の長短を比較することは出来ないが,大数的な傾向を見ておきたい。 a)原材料在庫期間 原材料の在庫期間(月数)(ここでは,原材料の期末在高/年間売上高×12を 原材料在庫期間という。以下,各種の在庫期間は同様の算式による。)は,図表 4−11からわかるように,組立生産での在庫期間が短く,機械的進行生産,化 図表4−11棚卸資産在庫期間 原材料在庫期間 仕掛品在庫期間 製品在庫期間 棚卸資産在庫期間 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 組立生産 27 15 95 93 69 65 191 173 機械的進行生産 40 74 61

85 ′132 75 233 235

化学的進行生産 40 50 36 34 77 63 153 147 その他 31 23 33 19 74 75 139 117 全体 33 36 69 76 88 6L7 190 180 注)在庫期間の数字は,在庫月数である。加重平均は売上高ウエイトによる。 資料:[昭和61年]。 学的進行生産で長くなっている。また,組立生産では,規模の大きい企業での 原材料の在庫期間が短く,逆に機械的進行生産,化学的進行生産では規模の小 さい企業での在庫期間が長くなっている。

(33)

−ヱヲー 生産方式と原価管理の最近の動向 図表4−12 棚卸資産の増i成率 原材料在庫 仕掛品在庫 製品在庫 組立生産 012 015 012 機械的進行生産 0“09 017 0.13 化学的進行生産 0小07 008 0.11 その他 02b 006 037 全体 011 014 011 注)増減率は,直接労務費の注に同様。 資料:[昭和61年]。 原材料の在庫期間の将来の推移については,図表4−12に示すとおり,いず れの生産方式でも短くなると考えている企業が多くを占めている。 b)仕掛品在庫 仕掛品の在庫期間とその将来の推移については,図表4−11,12のとおりで ある。仕掛品の在庫期間は,業種の特性によりそれぞれの生産方式の差異を最 も反映し,業種によりある一・定の水準を必要とすると思われる。在庫期間は, 組立生産で最も長く,機械的進行生産がそれに続いている。化学的進行生産は, 装置産業であるという業種の特性を反映してか仕掛品の在庫期間は最も短い。 仕掛品の在庫期間の将来の推移については,いずれの生産方式でも在庫期間 が短くなると考えている企業がほとんど大部分を占めている。 C)製品在庫 製品の在庫期間とその将来の推移は,図表4−11,12に示すとおりである。 製品の在庫期間は,製造企業全体では,規模の大きいところで若干短くなって おり,その傾向は組立生産,機械的進行生産,化学的進行生産のいずれの方式 でも同じであるが,機械的進行生産で顕著である。 製品の在庫比率の将来の推移は,いずれの生産方式でも減少すると考えている 企業が多くなっている。

参照

Outline

関連したドキュメント

他方、今後も政策要因が物価の上昇を抑制する。2022 年 10 月期の輸入小麦の政府売渡価格 は、物価高対策の一環として、2022 年 4 月期から価格が据え置かれることとなった。また岸田

燃料・火力事業等では、JERA の企業価値向上に向け株主としてのガバナンスをよ り一層効果的なものとするとともに、2023 年度に年間 1,000 億円以上の

キャンパスの軸線とな るよう設計した。時計台 は永きにわたり図書館 として使 用され、学 生 の勉学の場となってい たが、9 7 年の新 大

最近一年間の幹の半径の生長ヰま、枝葉の生長量

平成 30 年度介護報酬改定動向の把握と対応準備 運営管理と業務の標準化

経済的要因 ・景気の動向 ・国際情勢

 活動回数は毎年増加傾向にあるが,今年度も同じ大学 の他の学科からの依頼が増え,同じ大学に 2 回, 3 回と 通うことが多くなっている (表 1 ・図 1

SFP冷却停止の可能性との情報があるな か、この情報が最も重要な情報と考えて