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招待講演「言語行為への言語学的接近 ―権利・きもち・非流ちょう性・面白さをめぐって―」

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Academic year: 2021

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招 待 講 演

講演者のプロフィール

定延

利之(さだのぶ としゆき)

【略歴】

1962 年大阪府生まれ。京都大学大学院博士課程修了。博士(文学)。

専門は言語学・コミュニケーション論。

神戸大学教養部講師,国際文化学部講師,助教授,教授,国際文化学研究科教授,

人文・人間科学系国際文化学域教授を経て,2017 年から京都大学教授(現職)。

神戸大学名誉教授。

【主要業績】

主な単著

『コミュニケーションへの言語的接近』

(ひつじ書房,2016)

『日本語社会 のぞきキャラくり』(三省堂,2011)

『煩悩の文法』

(筑摩書房,2008/凡人社,2016(増補版))

『ささやく恋人,りきむレポーター』

(岩波書店,2005)

『認知言語論』

(大修館書店,2000)

2018 年の編著

『限界芸術「面白い話」による音声言語・オラリティの研究』

(ひつじ書房,

2018)

「キャラ」概念の広がりと深まりに向けて』

(三省堂,2018)

2018 年の論文

・The “My Funny Talk” Corpus and Speaking Style Variation in Japanese. In.

David G. Hebert (ed.),

International Perspectives on Translation, Education

and Innovation in Japanese and Korean Societies

, pp. 133-147, Springer.

「枝分かれ」に関する覚え書き,日本語音声コミュニケーション,6,62-82.

・オノマトペと感動詞に見られる「馴化」,小林隆(編)『感性の方言学』45-64,

ひつじ書房.

(2)

言語行為への言語学的接近

― 権利・きもち・非流ちょう性・面白さをめぐって ―

定延 利之

(京都大学)

現代の言語学は「基本は音声言語」という理念を掲げながら,実際には文字言語研究に集中 しており,(音声それ自体の研究は別として)音声言語の研究は盛んではありません。いや, 最近では盛んと言うべきかもしれませんが,それらの研究は会話分析的・エスノメソドロジー 的ではあっても,いわゆる「言語学的」なものではあまりないようです。では,語句の形式・ 構造・意味にこだわる伝統的な言語学の姿勢で音声言語を眺めても,何も見えてこないのでし ょうか? この講演では,私自身の「言語学的」な日本語音声言語研究をもとに,音声言語の 中心をなす言語行為を論じるための4 つの観点として,「権利」「きもち」「非流ちょう性」「面 白さ」を提案してみたいと思います。以下,それぞれの観点を現象例とともに挙げておきます。 1.「権利」 乗り込んだレンタカーがなぜか動かない。車中の人間たちが原因を探るうち, 1 人が原因(運転座席の者がアクセルペダルと間違えてブレーキペダルを踏んでいる) を探り当てる。その時,「あ,ブレーキ踏んでる!」と言うことは,原因を発見すれば 誰でも(たとえば後部座席の子供でも運転手の足もとを指しながら)できる。だが,「あ, ブレーキ踏んでた!」と言うことはそうではない。それは原則として,運転座席に座っ ている者の特権的行為である。 2.「きもち」 明日は雨かと訊かれれば,「だ。」「です。」と答えるよりも「だな。」「ですね。」 などと答える方がより自然である。また,予想が外れて,なおも虚勢を張る者の発話「だ ろう。わかってたよ」の「だろう」は,下降調より上昇調の方が自然である。たしかに 伝統的な文文法の言うとおり,「だ」「です」「な」「ね」「だろう」のような付属的要素 (いわゆる「付属語」)だけでは「文」はできない。だが「発話」は,きもちの現れ次 第で(そして「応答発話」のような会話内の位置次第で)できる。 3.「非流ちょう性」 名詞「いっぱい」のアクセント型は平板型なので,「人がいっぱいだ」 と言う際の「だ」の音調は高い。だが,非流ちょうなコマギレ口調で「人がだな,いっ ぱいだな,来てだな,…」と言う際の「だ」の音調は決まって低い。 4.「面白さ」 異国の街を走る観光バスの中で,同乗者に「ときどきレストランがあるね」 と言うのは自然。だが,自宅付近の様子を他人に「うちの近所はときどきレストランが ありまして…」と教えるのは不自然。時間副詞「ときどき」が空間分布(あちこち)を 表せるのは,たとえば探索意識がかき立てられる,それなりに面白い経験の表現時のみ。 以上の提案に多少とも意味があるなら,音声言語に対する会話分析的・エスノメソドロジー 的な研究と伝統的な言語研究を結ぶ「発話の文法」が構築・追究可能と考えています。 -265-

参照

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