企画・司会・指定討論 伊 東 裕 司 ( 慶 應 義 塾 大 学) 企画・話題提供 佐 藤 浩 一 ( 群 馬 大 学) 企画・話題提供 下 島 裕 美 ( 杏 林 大 学) 話 題 提 供 楢 原 真 也 ( 児童養護施設子供の家) 話 題 提 供 山 本 晃 輔 ( 大 阪 産 業 大 学) 話 題 提 供 白 井 利 明 ( 大 阪 教 育 大 学) 企画趣旨 人間は,青年期を過ぎても発達し,学び,成長し続 ける存在である。その生涯を通しての成長にとって重 要な役割を果たすものの一つに,自身が経験した出来 事の記憶である自伝的記憶があげられる。自伝的記憶 には,自己を確立し維持する機能(自己機能),自らの 考え方や行動を方向づける機能(方向づけ機能),他者と の関係性を確認し維持,強化する機能(社会機能)など があると考えられている。これらの機能は,人生のさ まざまな時期において,個人を成長させ,安定させ, 生活の質を高める上で重要な役割を果たしていると考 えられる。 本シンポジウムでは,自伝的記憶の研究の流れを振 り返り,自伝的記憶の機能や自伝的推論などについて 整理をした上で,児童期から老年期に至る各ステージ において自伝的記憶がどのような機能を持ち,どのよ うな介入,はたらきかけが自伝的記憶の機能の十分な 発揮に繫がるのか,などについて考える。各話題提供 者には,生涯のさまざまなステージにおいて自伝的記 憶が果たす役割について,実践や実証的な研究をご紹 介いただきつつ議論していただく。これらにより,自 伝的記憶の機能についての理解を深め,自伝的記憶研 究を教育や支援に役立てる方法を明らかにし,記憶に 関わる基礎的な研究と実践的な研究や実践とを関連づ
準備委員会企画シンポジウム 3
自伝的記憶と成長との関係を考える
――生涯教育の様々なステージで――
The Relationship Between Autobiographical Memory and Growth:
At Various Stages of Lifelong Education
YUJI ITOH, KOICHI SATO, YUMI SHIMOJIMA, SHINYA NARAHARA, KOHSUKE YAMAMOTO AND TOSHIAKI SHIRAI
けることを目指したい。 自伝的記憶の機能と自伝的推論 佐藤浩一 自伝的記憶研究史 日常記憶研究の流れ(Cohen, ₁₉₈₉; Neisser, ₁₉₈₂)のな かで自伝的記憶が研究され始めてから(Conway, ₁₉₉₀; Linton, ₁₉₇₅; Wagenaar, ₁₉₈₆),₄₀ 年 近 く が 経 過 し て い る。自伝的記憶研究の初期には,検索プロセスや構造 を探る研究が行われ,レミニセンス・バンプ現象の 検討(Rubin, Wetzler, & Nebes, ₁₉₈₆)や,階層構造モデル (Conway, ₁₉₉₂, ₂₀₀₅)などの成果が得られた。
₁₉₉₀ 年代になると,自伝的記憶の機能を問う研究が 盛んになった。Singer & Salovey(₁₉₉₃)は「自己定義 的記憶」という概念を提案し,記憶が自己の基盤とな
ることを主張した。Pillemer(₁₉₉₈)は意味記憶(知識)
ではなく一回だけの経験のエピソード記憶が,その後 の判断や行動を方向づけることを示した。尺度も開発 され,高齢者の回想機能尺度(Webster, ₁₉₉₃)や Bluck & Alea (₂₀₁₁), Bluck et al. (₂₀₀₅) による TALE(Thinking About Life Experiences)が活用されている。₂₀₀₀ 年以降に なると,数年に一度の割合で,ジャーナルが自伝的記 憶の機能を特集するという状況になった(Applied Cogni-tive Psychology, ₂₀₀₉; Memory, ₂₀₀₃, ₂₀₁₃, ₂₀₁₅)。
自伝的記憶の機能 多くの研究成果が収束し,自伝的記憶には「自己」 「方向づけ」「社会」という三つの機能があると考えら れるようになった(佐藤, ₂₀₀₈a)。「自己」とは,記憶が 自己の一貫性を保証したり好ましい自己像を維持した りする機能である。「方向づけ」とは,問題解決や意思 決定に過去経験を生かすという機能である。「社会」と は,過去経験を会話の材料にしたり,他者との関係を
想起して絆を強めたりする機能である。 自伝的推論 自伝的記憶は適応的に生きていくのに不可欠である。 しかし,出来事やその記憶に,最初から特定の機能が 内在しているわけではない。想起する本人が,その経 験をどう意味づけるかによって,機能は変わる。例え ば,教育実習で授業がうまくできたという経験に対し て,「自分も意外とできるんだ」と意味づければ,肯定 的な自己像の形成につながる(自己機能)。「教材研究の 大切さを学んだ」と意味づければ,次も熱心に教材研 究を行うことになる(方向づけ機能)。「指導教員のアド バイスが参考になった」と意味づければ指導教員との 関係維持につながる(社会機能)。 このように想起と意味づけの過程を経ることで,自 伝的記憶は機能を発揮する。こうした意味づけは 「自伝的推論(autobiographical reasoning)」と呼ばれる (Habermas & Bluck, ₂₀₀₀; Habermas & Köber, ₂₀₁₅)。これは 過去を振り返り,出来事と出来事,出来事と自己を結 びつける内省的な思考であり,ライフストーリー,ス トレスフルな経験に対する意味づけ,心的外傷後成長, 高齢者の回想など,様々な研究領域のなかに見出され る。筆者はこれら諸研究をもとに,リハーサル(例:こ の出来事について何度も考えた),自己(例:この出来事は当時 の私を表している),転機(例:この出来事は私に大きな変化を もたらした),教訓(例:この出来事から大切なことを学んだ), 重要(例:この出来事は大きな意味を持つ)の ₅ 因子から構 成される自伝的推論尺度を作成した(佐藤, ₂₀₁₇)。 教育実習の経験に対する自伝的推論 筆者は教育学部の学生に,教育実習での成功経験と 失敗経験を振り返ってもらい,自伝的推論尺度への回 答を求めた。その上で半構造化面接により,意味づけ の内容を聞き取った(佐藤, ₂₀₁₉)。 協力者は教育学・教育心理学を専攻しており,教員 志望があまり強くない学生たちであった。しかし実習 中での成功・失敗ともに強く意味づけており,自伝的 推論のどの因子の評定も,₁―₇ の ₇ 段階で平均 ₅.₀ あ るいは ₆.₀ を越えていた。面接では三つの機能につな がる意味づけが詳しく語られた。想起された経験の多 くが,「未熟な自分」等,自己像を示すものとして語ら れた(自己機能)。また「授業には軸がないといけない という教訓が引き出された」等,経験が次に生かされ たという意味づけも語られた(方向づけ機能)。「指導教 員の期待に応えたかった」等,関係維持につながる意 味づけも語られた(社会機能)。 ただし個人差も大きく,意味づけの弱い人もいた。 ある協力者は実習での成功経験として,「児童から『授 業おもしろかった』『授業じょうずになったね』と言わ れた」ことをあげ,面接では「最初は,発問計画をす ごい見ちゃって。でも最後の方はチラ見くらいでなん とか」と語っていた。しかしこの成功経験に対する自 伝的推論尺度の評定値は低く(平均 ₄.₀),筆者の側から 「授業の流れと発問をモニタリングしながら,授業でき ていたということですよ。それはすごい成長ですよ」 と意味づけつつ,面接を進めた。 研究方法について 最後に,自伝的記憶の研究方法について二つ述べた い。第一に,近年,量的アプローチと質的アプローチ を統合する混合研究法(Creswell, ₂₀₁₅ 抱井訳 ₂₀₁₇)が広 がりつつある。これは自伝的記憶研究にも有効性が期 待できる。前項で紹介した佐藤(₂₀₁₉)も質問紙調査と 面接調査を併用し,自伝的推論と自伝的記憶の機能を 検討したものである。第二に,本シンポジウムの話題 提供で紹介された研究は,いずれもサンプリングに偏 りがある。こうした偏りは当然のことであり,むしろ 偏りのないサンプリングを追究することは現実的では ない。研究においては偏りの実態を示し,それに基づ いて考察することが大切である。同時に,それぞれが 独自性を持つ研究が集まり,妥当な知見へと統合され ることを期待したい(佐藤, ₂₀₀₈b)。 引 用 文 献
Applied Cognitive Psychology (₂₀₀₉). Special issue: Baddeley revisited: The functional approach to auto-biographical memory. Applied Cognitive Psychology, 23(₈). doi:₁₀.₁₀₀₂/acp.₁₆₀₉
Bluck, S., & Alea, N. (₂₀₁₁). Crafting the TALE: Con-struction of a measure to assess the functions of autobiographical remembering. Memory, 19, ₄₇₀-₄₈₆. doi:₁₀.₁₀₈₀/₀₉₆₅₈₂₁₁.₂₀₁₁.₅₉₀₅₀₀
Bluck, S., Alea, N., Habermas, T., & Rubin, D. C. (₂₀₀₅). A tale of three functions: The self-reported
uses of autobiographical memory. Social Cognition, 23, ₉₁-₁₁₇. doi:₁₀.₁₅₂₁/soco.₂₃.₁.₉₁.₅₉₁₉₈
Cohen, G. (₁₉₈₉). Memory in the real world. Hove and London, UK: Lawrence Erlbaum Associates.
Conway, M. A. (₁₉₉₀). Autobiographical memory: An introduction. Buckingham, UK: Open University Press.
Conway, M. A. (₁₉₉₂). A structural model of autobio-graphical memory. In M. A. Conway, D. C. Rubin,
H. Spinnler & W. A. Wagenaar (Eds.), Theoretical perspectives on autobiographical memory (pp. ₁₆₇-₁₉₃). Dordrecht, The Netherlands: Kluwer Academic Publishers.
Conway, M. A. (₂₀₀₅). Memory and the self. Journal of Memory and Language, 53, ₅₉₄-₆₂₈. doi:₁₀.₁₀₁₆/ j.jml.₂₀₀₅.₀₈.₀₀₅
Creswell, J. W. (₂₀₁₅). A concise introduction to mixed methods research. London: Sage Publications.(クレ スウエル, J. W. 抱井尚子(訳)(₂₀₁₇). 早わかり混 合研究法 ナカニシヤ出版)
Habermas, T., & Bluck, S. (₂₀₀₀). Getting a life: The emergence of life story in adolescence. Psychological Bulletin, 126, ₇₄₈-₇₆₉. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₃₃-₂₉₀₉.₁₂₆.₅. ₇₄₈
Habermas, T., & Köber, C. (₂₀₁₅). Autobiographical reasoning is constructive for narrative identity: The role of the life story for personal continuity. In K. M. McLean & M. Syed (Eds.), The Oxford handbook of identity development (pp. ₁₄₉-₁₆₅). New York: Oxford University Press. doi:₁₀.₁₀₉₃/oxfordhb/ ₉₇₈₀₁₉₉₉₃₆₅₆₄.₀₁₃.₀₁₀
Linton, M. (₁₉₇₅). Memory for real-world events. In D. A. Norman & D. E. Rumelhart (Eds.), Explora-tions in cognition (pp. ₃₇₆-₄₀₄). San Francisco, CA: Freeman.
Memory (₂₀₀₃). Special issue: Autobiographical Mem-ory: Exploring its functions in everyday life. Mem-ory, 11(₂).
Memory (₂₀₁₃). Special issue: The costs and benefits of finding meaning in the past. Memory, 21(₁). Memory (₂₀₁₅). Special issue: Going global: The
func-tions of autobiographical memory in cultural context. Memory, 23(₁).
Neisser, U. (₁₉₈₂). Memory observed: Remembering in natural contexts. San Francisco, CA: W. H. Freeman. Pillemer, D. B. (₁₉₉₈). Momentous events, vivid
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Rubin, D. C., Wetzler, S. E., & Nebes, R. D. (₁₉₈₆). Autobiographical memory across the lifespan. In D. C. Rubin (Ed.), Autobiographical memory (pp. ₂₀₂-₂₂₁). New York: Cambridge University Press. 佐藤浩一(₂₀₀₈a). 自伝的記憶の機能 佐藤浩一・越 智啓太・下島裕美(編著) 自伝的記憶の心理学 (pp. ₆₀-₇₅)北大路書房 佐藤浩一(₂₀₀₈b). 自伝的記憶研究の方法と収束的妥 当性 佐藤浩一・越智啓太・下島裕美(編著) 自 伝的記憶の心理学(pp. ₂-₁₈) 北大路書房 佐藤浩一(₂₀₁₇). 成功経験と失敗経験に対する自伝的 推論とアイデンティティ発達,適応との関連 認知 心理学研究, 14, ₆₉-₈₂. doi:₁₀.₅₂₆₅/jcogpsy.₁₄.₆₉ 佐藤浩一(₂₀₁₉). 教育実習の振り返りにおける自伝的 推論―自伝的記憶の ₃ 機能と主題的一貫性に着目し て 群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編, 68, ₁₅₇-₁₇₈.
Singer, J. A., & Salovey, P. (₁₉₉₃). The remembered self: Emotion and memory in personality. New York: The Free Press.
Wagenaar, W. A. (₁₉₈₆). My memory: A study of auto-biographical memory over six years. Cognitive Psychology, 18, ₂₂₅-₂₅₂. doi:₁₀.₁₀₁₆/₀₀₁₀-₀₂₈₅(₈₆) ₉₀₀₁₃-₇
Webster, J. D.(₁₉₉₃). Construction and validation of the reminiscence functions scale. Journal of Geron-tology: Psychological Sciences, 48, ₂₅₆-₂₆₂. doi: ₁₀.₁₀₉₃/geronj/₄₈.₅.P₂₅₆ 付 記 本研究は JSPS 科研費 ₁₇K₀₄₃₄₂ の助成を受けた。 児童養護施設におけるライフストーリーワーク 楢原真也 本報告では児童養護施設(以下,施設)におけるライ フストーリーワーク(以下,LSW)の実践を紹介し,児 童期における自伝的記憶への取り組みを述べる。 ライフストーリーワークの必要性 教育現場で行われる ₁₀ 歳での一律な ₁/₂ 成人式の実 施に多くの子どもたちは抵抗を示さないが,自伝的記 憶やアイデンティティが揺らいでいる子どもにとって は,そうした試み自体が傷つきや脅威になりうる。 施設で暮らす子どもたちは,自分の意志とは無関係 に,住み慣れた地域や慣れ親しんだ友人たちと離れ, 生活をしている。なぜ施設で暮らすのか理解していな かったり,自分が悪いから施設に来たと考えている者 もいる。入所前の度重なる分離・喪失体験や養育者の 交代,慢性的な被虐待体験などによって,自伝的記憶 に空白や混乱があったり,自己評価・自尊心が大きく 低下していることもある。容易に打ち明けられない秘 密を抱えてしまうことによって,他者との疎外感や隔
絶感を抱えてしまうこともあれば,自分を構成するご く基本的な情報さえ知らず,アイデンティティの曖昧 さに苦しんでいることもある。LSW は,こうした子ど もたちの混乱を解消し,子どもたちの自己物語を形成 するための支援である(楢原, ₂₀₁₅)。 LSW は,これまでの経過のなかで,手続きの形骸化 や,支援者側の一方的な情報の伝達,過去の矮小化な どの反省から,大人主導ではなく,「子ども自身が」物 語を紡ぐ過程が大切にされるようになっている。日本 において,LSW が社会的養護の現場に導入されたのは 最近のことであり,今後多くの現場の実情に沿った形 で普及していくことが望ましい。 ライフストーリーワークの 3 つの段階 LSW は,日常とは異なる時間と場所を設定して子ど もと継続的な面接を行っていくものである。しかし, 日々の生活でのかかわりや治療的な取り組みも,広い 意味で捉えた時に LSW と地続きの実践になる。この 過程は,①子どものストーリーを聴く,②事実の説明 と共有,③治療的な LSW の ₃ 段階に整理できる。子 どもひとり一人に応じたオーダーメイドの支援が求め られるが,ここではその概略を紹介したい。 最初に求められるのは,子どもの話に耳を傾け,子 ども自身がどのようなストーリーを抱いているのかを 共有する「子どものストーリーを聴く」段階である。 不適切な養育を受けた子どもたちにとっては,自分 の歴史をまとまった物語として語ること自体が困難で ある。そのため,まずは日常生活の持つ治癒力に目を 向け,子どもが安心して自分を表現できる環境を整え ていくことが大切になる。こうしたなかで,子どもた ちはふと家族や家庭にまつわる話をしてくることがあ る。 次の「事実の説明と共有」の段階では,児童相談所 や家族と協働し,子どもや家族に関する客観的なライ フヒストリーを収集する。事前に様々な書類を見直し, 不明な点を再確認する。同時に,様々な文書や写真を 入手したり,子どもや家族に関係する人たちから過去 の子どもの様子を聞く。得られた情報を子どもに伝え る前には,「今の時点で伝えることが本人の利益になる のか」という検討が必要である。そして子どもの意向 や周囲の状況について,支援者間で吟味する。 事実を共有する具体的な方法としては,写真やアル バムを一緒に眺めたり,家の見取り図を描いてもらう, 移動図を描きながら生活の変遷を辿る,年表を作成し て子どもの歴史を時間軸に沿って再構築する,ジェノ グラムを用いて家族の構成や力動を整理する,エコ マップを使って諸機関の役割を説明するなどの手法が ある。子どもにゆかりのある場所を訪問することもあ れば,年少児向けに世界に一冊だけの絵本を作成する など,それぞれの子どもに応じた工夫が求められる。 LSW の実施に際しては,子どもの発達段階や理解度 に応じて,徐々に詳しい事実を伝えていく。 子どもの抱える課題によっては,「治療的な LSW」 が必要になることもある。慢性的な虐待を体験した子 どもは,トラウマとなる出来事を筋道の通った物語と して構成できず,記憶の欠落や解離傾向と結びついて, 過去と現在をひとつの物語として構成することが困難 になる。そのため,強い回避や,フラッシュバック, 解離症状などがあり,日常的なかかわりの範囲で扱う ことのできないトラウマ記憶については,護りのある 時間と空間を設け,心理治療的なかかわりを取り入れ ていくことが必要になるのである。トラウマを扱う諸 技法に倣って,トラウマについての心理教育や,リラ クセーションの方法,感情のコントロールの方法,考 えや感情が行動に及ぼす影響などを子どもと話しあっ ておくことが重要になる。また,言語的な表現ばかり に頼るのではなく,箱庭や描画,遊びなどの象徴的な 方法も用いられる。 まとめ 今回のシンポジウムを通して,「自伝的記憶」をキー ワードとして,さまざまな研究や実践が蓄積されてい ることにあらためて気づかされた。今後,基礎研究お よび多分野で行われている知見を活かして,施設で暮 らす子どもたちへの支援に役立てていく必要があろう。 また,諸外国においてケアリーバー(care leaver; 社会 的養護経験者)と呼ばれる人々が,₄₀ 代以降に自分にま つわる事実を求めて関係機関を訪れるといったことも 考慮し,青年期以降の支援を考えていくことも重要な 課題である。 引 用 文 献 楢原真也(₂₀₁₅). 子ども虐待と治療的養育―児童養護 施設におけるライフストーリーワークの展開 金剛 出版 青年期の自伝的記憶における自己機能と アイデンティティ 山本晃輔 アイデンティティの確立は,青年期の発達を考える 上で極めて重要な課題である。アイデンティティの形 成に関わる要因には様々なものが考えられるが,なか
でも自伝的記憶はその集合体が個人のアイデンティ ティを形成しており(e.g., Cohen, ₁₉₉₆; Conway, Singer, & Tagini, ₂₀₀₄),個人が自己の同一性や連続性を保つのに, ₁ つの本質的な役割を果たしている(清水, ₂₀₁₁)。我々 は,青年期に入ると「自分は何者であるのか」という 問いを自分に課し,その答えを導きだそうとする。こ のような過程の中でこれまでの生涯を振り返り,自伝 的記憶を想起し,過去の自分を再認識する。そして, 過去および現在における自分と社会が認めかつ期待し ている自分とを統合することを通して,アイデンティ ティを確立させていく。このようなプロセスは自伝的 記憶における自己機能の一端であると考えられる。本 稿では,自伝的記憶の自己機能に注目し,アイデン ティティと自伝的記憶の双方向性を検討した研究と, 動機づけへの影響を検討した研究を紹介する。 アイデンティティと自伝的記憶の双方向性 従来の研究では,アイデンティティと自伝的記憶と が互いに影響し合う双方向の関係性が主張されてきた (e.g., Conway, ₂₀₀₅; Wilson & Ross, ₂₀₀₃)。この主張によれ ば,アイデンティティの達成の程度に応じて,それぞ れに想起される自伝的記憶の質や特性が変動し,その 一方で,自伝的記憶が想起されることによってアイデ ンティティの達成が影響を受けることになる。前者の 仮説を検討した研究では,参加者を自我同一性地位や 自我同一性達成度に基づいて群分けを行い,それぞれ に想起される自伝的記憶の特徴等が検討されてきた (e.g., レビューとして,佐藤, ₁₉₉₈)。たとえば,山本(₂₀₁₃) は大学生を対象にアイデンティティの感覚に関する尺 度を用いて,そこで測定される値をアイデンティティ の達成度とみなし,その個人差によって想起される自 伝的記憶の特性が異なるかどうかに注目した。その結 果,アイデンティティ達成度の高群では低群と比較し て,鮮明でかつ情動的であり,快で重要な自伝的記憶 が想起されることが示された。同様の結果は,大学生 よりもアイデンティティ達成度が低いと考えられる高 校生を対象とした場合にも確認されている(山本, ₂₀₁₅a)。 一方,後者の仮説を検討した研究として,山本 (₂₀₁₅b)は重要度が高い,あるいは低い自伝的記憶の想 起を求め,その前後でアイデンティティ達成度が変化 するかどうかを検討した。その結果,重要度の高い自 伝的記憶を想起した群では,想起前から想起後にかけ てアイデンティティの達成度が上昇した。一方,重要 度の低い自伝的記憶を想起した群ではこの変化はみら れなかった。また,ポジティブな自伝的記憶がネガ ティブな自伝的記憶よりもアイデンティティの達成度 に貢献することが示された。しかし,自伝的記憶に付 随する情動とアイデンティティとの関係については議 論があり,たとえネガティブな自伝的記憶であったと しても,反復される回想の過程において,ポジティブ な意味や重要性が見出された場合には,自己の成長や 自身の人生におけるポジティブな変化に貢献すると考 えられている(e.g., Folkman, ₂₀₀₈; Watanabe, ₂₀₁₇)。この点 については,経験時と想起時において付随する情動が 異なる可能性があり,それらの点を考慮する必要があ る。 動機づけへの影響 アイデンティティは個人の様々な心理的要因に影響 するが,特に近年では動機づけへの影響に関心が高 まっている(e.g., 畑野・原田, ₂₀₁₄; 溝上, ₂₀₁₀)。この点に 注目した山本(₂₀₁₇)は,過去の成功経験に関する自伝 的記憶がアイデンティティと関係するという報告(佐 藤, ₂₀₁₇)を参考に,成功・失敗経験に関する自伝的記 憶の想起が学習動機づけに及ぼす影響を検討した。実 験では,努力を伴った過去の成功あるいは失敗経験に 関する自伝的記憶の想起を求め,その前後における学 習動機づけ尺度の変化に注目した。その結果,成功お よび失敗経験想起群の両方で,想起前から想起後にお いて学習動機づけ尺度が向上した。すなわち,成功や 失敗に関係なく,努力を伴った経験の想起が学習動機 づけを促進させることが示された。また,山本(₂₀₁₈) は,人生のターニングポイントとなった自伝的記憶の 想起を求め,その記憶が自身のアイデンティティやラ イフストーリーの中心部分になっている程度を Rubin & Berntsen(₂₀₀₈)による出来事中心性尺度(CES; The Centrality of Event Scale)で評価させ,それと自伝的記憶 の機能尺度(落合・小口, ₂₀₁₃)および達成動機尺度との 関連性を検討した。その結果,自伝的記憶の自己およ び方向づけ機能は CES を介して,達成動機のなかでも 自分自身にとって価値のあることを成し遂げようとす る自己充実的達成動機に影響することが示唆された。 今後は,これらの知見を活かし,自伝的記憶の想起 を通したアイデンティティの達成をサポートするプロ グラムを開発し,学校不適応の児童・生徒における心 理的支援,キャリアカウンセリング,進路指導などへ の応用的展開が期待される。 引 用 文 献
Cohen, G.(₁₉₉₆). Memory in the real world (₂nd ed.). East Sussex, UK: Psychology Press.
of Memory and Language, 53, ₅₉₄-₆₂₈. doi:₁₀.₁₀₁₆/ j.jml.₂₀₀₅.₀₈.₀₀₅
Conway, M. A., Singer, J. A., & Tagini, A.(₂₀₀₄). The self and autobiographical memory: Correspondence and coherence. Social Cognition, 22, ₄₉₁-₅₂₉. doi: ₁₀.₁₅₂₁/soco.₂₂.₅.₄₉₁.₅₀₇₆₈
Folkman, S.(₂₀₀₈). The case for positive emotions in the stress process. Anxiety, Stress & Coping, 21, ₃-₁₄. doi:₁₀.₁₀₈₀/₁₀₆₁₅₈₀₀₇₀₁₇₄₀₄₅₇ 畑野 快・原田 新(₂₀₁₄). 大学生の主体的な学習を促 す心理的要因としてのアイデンティティと内発的動 機づけ―心理社会的自己同一性に着目して 発達心 理学研究, 25, ₆₇-₇₅. doi:₁₀.₁₁₂₀₁/jjdp.₂₅.₆₇ 溝上慎一(₂₀₁₀). 現代青年期の心理学 有斐閣 落合 勉・小口孝司(₂₀₁₃). 日本語版 TALE 尺度の作 成および信頼性と妥当性の検討 心理学研究, 84, ₅₀₈-₅₁₄. doi:₁₀.₄₉₉₂/jjpsy.₈₄.₅₀₈
Rubin, D. C., & Berntsen, D.(₂₀₀₈). How memory for stressful events affects identity. 仲 真紀子(編) 自己心理学 ₄ 認知心理学へのアプローチ(pp. ₁₀₅-₁₁₅) 金子書房(ルビン, D. C.・バーンツェン, D. 仲 真紀子(訳)(₂₀₀₈). ストレスフルな出来事の記 憶―アイデンティティへの影響 仲 真紀子(編) 自己心理学 ₄ 認知心理学へのアプローチ(pp. ₁₁₈-₁₂₉) 金子書房) 佐藤浩一(₁₉₉₈). 「自伝的記憶」研究に求められる視 点 群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編, 47, ₅₉₉-₆₂₈. 佐藤浩一(₂₀₁₇). 成功経験と失敗経験に対する自伝的 推論とアイデンティティ発達,適応との関連 認知 心理学研究, 14, ₆₉-₈₂. doi:₁₀.₅₂₆₅/jcogpsy.₁₄.₆₉ 清水寛之(₂₀₁₁). 自伝的記憶の発達 子安増生・白井 利明(編) 発達科学ハンドブック ₃ 時間と人間 (pp. ₂₇₄-₂₉₂) 新曜社
Watanabe, H.(₂₀₁₇). The mediating effects of benefit finding on the relationship between the identity cen-trality of negative stressful events and identity achievement. Identity, 17, ₁₃-₂₄. doi:₁₀.₁₀₈₀/₁₅₂₈₃ ₄₈₈.₂₀₁₆.₁₂₆₈₅₃₆
Wilson, A., & Ross, M.(₂₀₀₃). The identity function of autobiographical memory: Time is on our side. Memory, 11, ₁₃₇-₁₄₉. doi:₁₀.₁₀₈₀/₇₄₁₉₃₈₂₁₀ 山本晃輔(₂₀₁₃). アイデンティティ確立の個人差が意 図的および無意図的に想起された自伝的記憶に及ぼ す影響 発達心理学研究, 24, ₂₀₂-₂₁₀. doi:₁₀.₁₁₂₀₁/ jjdp.₂₄.₂₀₂ 山本晃輔(₂₀₁₅a). 高校生と大学生におけるアイデン ティティ達成度の個人差と自伝的記憶との関連性 大阪産業大学人間環境論集, 14, ₁-₁₀. 山本晃輔(₂₀₁₅b). 重要な自伝的記憶の想起がアイデ ンティティの達成度に及ぼす影響 発達心理学研究, 26, ₇₀-₇₇. doi:₁₀.₁₁₂₀₁/jjdp.₂₆.₇₀ 山本晃輔(₂₀₁₇). 成功・失敗経験に関する自伝的記憶 の想起が学習動機づけに及ぼす影響 大阪産業大学 人間環境論集, 16, ₁-₁₀. 山本晃輔(₂₀₁₈). 自伝的記憶の機能と達成動機との関 連性 大阪産業大学人間環境論集, 17, ₁-₁₁. 付 記 本研究は JSPS 科研費 ₁₇K₁₃₉₂₄ の助成を受けた。 青年期から中年期の人生の語り直しと時間的展望 白井利明 話題提供者は ₂₇ 年間に及ぶ縦断研究行っているが, そのうち ₂₀ 代と ₄₀ 代に同じ出来事について繰り返し 聞いてきたことから考えたことを述べてみたい。 ここでは ₁ 人の女性の事例を紹介する。このひとは アイデンティティ・ステイタスが縦断研究協力者のな かでは比較的高いひとである。アイデンティティ・ス テイタスとはアイデンティティの達成の状態を示す一 般的な指標である。また,縦断研究協力者の平均的な 傾向では ₂₀ 代から ₄₀ 代にかけて過去受容は低下する 傾向があるが,このひとは上昇している。このひとの 場合,過去をどのように思い出して語ることで,過去 を受容する方向へと変わっているのだろうか。 このひとは教師になりたかったが,採用試験に不合 格だったため,いったん企業に就職し,₂₄ 歳で教師に 転職した。₄₂ 歳では共働きで子どもが ₃ 人いる。面接 調査は,卒業時(₂₂ 歳),卒 ₂ 年目(₂₄ 歳),卒 ₅ 年目 (₂₇ 歳),卒 ₈ 年 目(₃₀ 歳),卒 ₂₀ 年 目(₄₂ 歳)の ₅ 回, 行われた。調査のしかたなどの詳細は白井(₂₀₁₇)を参 照いただきたい。 その時々のキャリア(仕事)はいずれもその時々の時 点で「満足」だった(₂₄ 歳は企業,₂₇ 歳・₃₀ 歳・₄₂ 歳は教 師を念頭に置いて回答された)。現在の状況が快であるため, 自伝的記憶は過去の快のものが想起されやすいと考え られる。現在の仕事に満足しており後悔がないなら, その仕事に就くこととなった起点となる職業選択や就 職活動にも満足をもたらすものが想起されるであろう し,もし仕事に不満があり後悔しているなら職業選択
や就職活動に疑問を感じるものがあがりやすくなるだ ろうと予想される。ところが,実際には,いずれの時 点でも就職活動は「不満」と否定的な評価が下され, 予想とは違っていた。「不満」の理由は ₂₂ 歳では「妥 協した」,それ以降は一貫して「中途半端」だった。教 師を目指しながらも採用されず,教員採用試験の勉強 を頑張らなかったことを後悔しているようである。 このように一貫して「不満」としているのは,その 根底に「不満」となるような記憶があり,それが支え ているのではないかと想像できる。自伝的記憶は自己 を方向づけ,自己は逆に自伝的記憶の想起を左右する が,両者は一致する方向で動くと考えられるためであ る。そこで,₄₂ 歳の時に,当時(大学卒業時)はどう 思っていたか,と評価の想起を求めた。ところが,予 想に反して,「満足(企業に夢を持っていた)」と答えた。 実際には,大学卒業時では「不満(妥協した)」と答え ていたので,逆の方向だった。記憶が変容したのであ ろうか。現在における当時の就職活動の意味づけは 「不満」なのだから,それと一致する「不満」のままで 変容しないはずである。なぜ当時は「満足」という方 向に記憶が変容したのか。 Bartlett(₁₉₃₂, p. ₂₂₇ 宇津木・辻訳 ₁₉₈₃, p. ₂₅₉)は,まと まりのある構図(settings)のなかに心理的な材料や反応 を落とし込み,互いが結合し合うことで新たな意味が 生まれる,という。このことを参考にすると,ひょっ としたら「今は不満」に対して「当時は満足」を対置 させることで,たとえば「卒業時の就職活動について, 当時は満足していたが,今は満足していない」(当時は 考えかたが甘かった)ということを表していたのかもしれ ない。もしこのように解釈できるなら,記憶の ₁ つひ とつの変容ではなく,現在の構図のなかに ₁ つひとつ の記憶が落とし込まれるとき,その落とし込みかた, つまり意味の生じかたに応じて,選択される記憶が変 化するのではないかと思われる。 卒業時の就職活動について,やり直したいか,と聞 いていたので,それも加味して考える。₂₄ 歳(企業を退 職し,教員採用試験を受験中)だけは「やり直したい」と 答えたが,それ以外は否定した。₂₂ 歳と ₂₇ 歳はやり 直さない理由として「企業に満足」だからと,当時の やりがいで答えた。₃₀ 歳になると「企業に就職したこ ともよかった」と,教師になった現在から振り返って 回答した。さらに ₄₂ 歳では「企業を辞めて教師になっ たから,後悔しない」というように,現在から振り 返って逆行的に意味づけたものを当時から現在に至る という順行的なものに直して回答している。卒業時の 就職活動は「中途半端」だったとしても,現在は「教 師になる(子育てと両立させる)」という目標が実現して いるため「後悔しない」としたのであろう。以上は, 自分が持っていた目標の実現度に応じて,後悔の感情 が減少していったことを示す。ただし,卒業時の将来 の目標は「いろいろな見方のできる人」であり,₃₀ 歳 で「いい教師になる。家庭をちゃんと守っていこう」 というように ₄₂ 歳につながる目標が出てきた。目標そ れ自体も経過のなかで構成されてくることは付記して おきたい。 後悔は,選択しなかった別の状態が顕在化し,選択 した状態と比較して起こる(楠見, ₁₉₉₉)。言い換えれば, 後悔とは望ましい「ありうる世界」「ありえた世界」と いう可能世界との対比で生じる感情である。₄₂ 歳では 「後悔しない」と述べていることから,自分の目標が実 現した,この時点でようやく現実世界が可能世界を上 回ったのだと考えられる。 唯一「やり直したい」とした ₂₄ 歳の時は教員採用試 験を受験中だった。これは「教師になる(子育てと両立 させる)」という目標を達成できていないのが現実のた め可能世界を否定できないので後悔が生じたのであろ う。それは進路の変更を動機づけたのである。そして, 今度は後悔しないために教員採用試験一本に絞った。 後悔は,条件が整えば,目標の実現の行動へと駆り立 てることがわかる。 以上から,人生の意味づけは,過去の自伝的記憶に 基づいて「ありうる世界」と「ありえた世界」を想定 し,それとの対比で時々の現在を捉えることで生じる と言えよう。 引 用 文 献
Bartlett, F. C.(₁₉₃₂). Remembering: A study in experi-mental and social psychology. London, UK: Cambridge University Press.(バートレット, F. C. 宇津木 保・ 辻 正三(訳)(₁₉₈₃). 想起の心理学―実験的社会 的心理学における一研究 誠信書房)doi:₁₀.₁₀₁₇/ CBO₉₇₈₀₅₁₁₇₅₉₁₈₅ 楠見 孝(₁₉₉₉). 意思決定における後悔の認知的分析 過去をどうふりかえるか―過去展望の心理学的意味 日本発達心理学会第 ₁₀ 回大会ラウンドテーブル,発 表資料 白井利明 (₂₀₁₇).現在のキャリア満足は過去の就職 活動の意味づけを肯定化するか―青年期から中年期 への縦断研究(Ⅰ) 日本心理学会第 ₈₁ 回大会発表 論文集,p. ₁₆.
付 記 本研究は JSPS 科研費 JP₁₇H₀₂₆₃₄ の助成を受けた。 エンディングノートにおける 中高年の自伝的記憶の機能 下島裕美 自分に「もしも」のことがあったときのために家族 や周囲の人に伝えておきたいことを記しておくノート をエンディングノートという。下島(₂₀₁₅)は,多くの エンディングノートには自分の過去の思い出(自伝的記 憶)の記入欄があることを示している。まだ元気なう ちに自分の最期を展望するのは難しいことだが,思い 出を記入しながら自分の過去を整理することによって 将来自分に確実に訪れる死を冷静に展望することがで きるかもしれない。しかし実際に中高年の人々に話を 聞いてみると,思い出の記入欄は必要ないと答える人 が多い。そこで ₅₀―₇₀ 代の男女計 ₄₅₀ 名を対象にエン ディングノートに関する Web 調査を実施した。 その結果,₈₈%の参加者がエンディングノートを 知っており,₇₈%の参加者がエンディングノートを書き 始めているか,書こうと思っていると回答した。₁₅― ₆₉ 歳を対象とした国境なき医師団(₂₀₁₆)による「終 活と遺贈に関する意識調査 ₂₀₁₆」でも ₈₉.₅%の参加者 がエンディングノートを「準備しておくことは大事」 だと回答しており,法的拘束力はないもののエンディ ングノートが広く知られていることがわかる。思い出 の必要性については,「自分が家族に残すエンディング ノート」に思い出が必要だという回答は ₂₈%,「家族 が自分に残すエンディングノート」に思い出が必要だ という回答も ₂₈%であった。思い出が必要だと回答し た群(自伝的記憶必要群)と必要ではないと回答した群 (不必要群)における TALE 尺度(落合・小口, ₂₀₁₃)の自己 継続機能,行動方向づけ機能,社会的結合機能得点を 比較したところ,必要群における TALE 尺度得点は不 必要群よりも ₃ 因子全てにおいて有意に高かった。 本調査では項目として思い出が必要かどうかとは別 に,思い出の記入も求めていた。自伝的記憶研究では 多くの参加者が過去エピソードを記入するため今回も 記入率は高いだろうと予想していたが,思い出を記入 したくない人も一定数はいるだろう。その場合は記入 しない理由を書いてもらおうという程度の気持ちで 「記入したくない場合はその理由を記入してください」 という選択肢を用意した。しかし結果は予想と全く異 なり,思い出を記入する人も ₂₉%しかいなかったので ある。「記入しない理由」は書いてあるので思い出の記 入が面倒だったという理由は当てはまらないだろう。 思い出を書かない理由は「過去は人それぞれの心にと どめておけばよいと思うから」「過去は過去で残してお く必要はない」「たいした思い出がない」などであり, 未記入群は自伝的記憶の ₃ 機能を必要とせず過去肯定 が低いことがうかがえた。 自伝的記憶の研究者としてこの結果を見た時,思い 出を必要とすることが精神的に健康な証であり,思い 出を必要としないことは不適応であるかのようなネガ ティブな印象を持ってしまった。しかし果たしてそう だろうか。Holland & Rabbitt(₁₉₉₁)は,現在が忙しく 活動的な人は古い記憶をじっくり思い出す必要はなく, 現在が単調な人は古い記憶を反芻し,自己概念を確認 する必要があるという。自分自身のことを考えてみて も,毎日が忙しいと自分の過去など回想しないことに 気づく。地域の公開セミナーで時間的展望地図課題を 行ったときも,毎日を忙しく過ごす ₄₀―₅₀ 代は自分の 過去や未来を展望することに困難を示していた。過去 を回想せず現在を精一杯生きる中年は不適応なのだろ うか。 物語論では,物語が求める着地点は「平衡状態」の 後に「非常事態」が生じ「あらたな平衡状態」つまり これ以上特筆すべき要素がない状態に至ることである (千野, ₂₀₁₇)。自伝的記憶は自己の物語という要素もあ るので,自伝的記憶の再構成もまた同様のプロセスを 経ると考えられる。多忙で瞬間としての「現在」が 次々に過去にたまっていく時,「平衡状態」から「非常 事態」への移行が意識されないため自伝的記憶の再構 成は開始されないだろう。一方で穏やかな毎日が続く ときも「平衡状態」の後の「非常事態」が生じないた め自伝的記憶の再構成は必要ない。自伝的記憶の再構 成は「非常事態」が起きた時に必要なのであって,日 常生活ではそこまで重要ではない可能性がある。 回想が精神的健康にプラスの影響を与えることが当 然のように研究を行ってきたが,ここで一度立ち止ま り,そもそも中高年は日常生活において自伝的記憶を 必要としているのか再考してみたい。終活として持ち 物の整理をする高齢者が増えているが,思い出も同様 ではないだろうか。自伝的記憶には ₃ つの機能がある とされている。自己機能(自己やパーソナリティの基盤にな る),方向づけ機能(価値観や判断基準となり行動を方向づけ る),社会機能(対人関係の形成や維持に役立つ)である(佐 藤, ₂₀₁₄)。人生後半になると,身体的・認知的衰えを強 く感じ,若い頃と現在との違いを実感するようになる。
人間関係も大きく変化し,昔の思い出を共有する知り 合いに会うことも稀である。そのような中で,過去エ ピソードは現在における自己・方向づけ・社会機能を 果たすことができるのか疑問である。 自伝的記憶の発生については多くの研究が蓄積され ている。生後 ₁₈ か月頃には過去へ言及し始め,₂ 歳頃 には遠い過去の出来事に言及するようになる(Nelson & Fivush, ₂₀₀₄)。自伝的記憶は児童期にかけて発達し,青 年期にかけてライフストーリーを語るようになる (Habermas & Paha, ₂₀₀₁)。では自伝的記憶はそのままずっ と蓄積され再構成を重ね,₃ 機能を果たし続けていく のだろうか。年を重ねれば記憶力は衰える。ある時期 になったら,膨大な量に膨れ上がった自伝的記憶の更 なる蓄積と再構成への執着を放棄するのは自然な流れ であろう。自分の記憶容量相当に自伝的記憶を取捨選 択し,現在のアイデンティティとは切り離し「なつか しい過去」を第三者的視点で客観的に鳥瞰する時期が あるのではないか。記憶の中の自分は,身体的・認知 的に今の自分よりはるかに精力的で若々しく,年を重 ねた現在の自分は「思い出と戦っても勝て」ないので ある(内舘, ₂₀₁₅)。年をとってから振り返る若い頃の記 憶は,現在において何らかの機能を果たしたり再構成 を繰り返したりするものではなく,ただ第三者の視点 でなつかしく走馬灯のように振り返ればいいものなの かもしれない。 引 用 文 献
Habermas, T., & Paha, C. (₂₀₀₁). The development of coherence in adolescents' life narratives. Narrative Inquiry, 11, ₃₅-₅₄. doi:₁₀.₁₀₇₅/ni.₁₁.₁.₀₂hab
Holland, C. A., & Rabbitt, P. M. A. (₁₉₉₁). Ageing memory: Use versus impairment. British Journal of Psychology, 82, ₂₉-₃₈. doi:₁₀.₁₁₁₁/j.₂₀₄₄-₈₂₉₅.₁₉₉₁. tb₀₂₃₈₀.x
国境なき医師団(₂₀₁₆). 終活と遺贈に関する意識調査 ₂₀₁₆ Retrieved form https://www.msf.or.jp/ information/detail/info_₃₁₈₄.html(₂₀₁₈ 年 ₁₁ 月 ₁ 日)
Nelson, K., & Fivush, R. (₂₀₀₄). The emergence of autobiographical memory: A social cultural develop-mental theory. Psychological Review, 111, ₄₈₆-₅₁₁. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₃₃-₂₉₅X.₁₁₁.₂.₄₈₆ 落合 勉・小口孝司(₂₀₁₃). 日本語版 TALE 尺度の作 成および信頼性と妥当性の検討 心理学研究, 84, ₅₀₈-₅₁₄. doi:₁₀.₄₉₉₂/jjpsy.₈₄.₅₀₈ 佐藤浩一(₂₀₁₄).自伝的推論―概念ならびに評価方法 の整理と包括的な枠組みの提案 群馬大学教育学部 紀要 人文・社会科学編, 63, ₁₂₉-₁₄₈. 下島裕美(₂₀₁₅). 終末期に向けた思考整理ツールとし てのエンディングノート 杏林大学研究報告教養部 門, 32, ₁-₇. 千野帽子(₂₀₁₇). 人はなぜ物語を求めるのか 筑摩書 房 内舘牧子(₂₀₁₅). 終わった人 講談社 付 記 本研究は JSPS 科研費 ₁₆K₀₄₃₁₄ の助成を受けた。 指定討論 構成主義者(constructivist)の立場から 伊東裕司 指定討論者は,自伝的記憶を専門的に研究している わけではく,目撃者の記憶や顔の記憶などを中心に研 究している。この立場から話題提供全体に対してのコ メントを付し,疑問点を示したい。 目撃記憶の研究では,目撃者になんらかの形で事後 情報が与えられた場合や,質問の仕方が暗示的である 場合などには,想起内容が変わってしまうことがよく 知られている(Loftus, ₁₉₇₉)。また,顔記憶の研究では, 同定テストの直前に覚えている顔の言語記述を求める とテスト成績が影響を受ける(多くの場合悪くなる)現象
も知られている(Schooler & Engstler-Schooler, ₁₉₉₀)。さら に,虚記憶と呼ばれる現象では,実際には経験しな かった自伝的な出来事の記憶を作り出すことが可能で あり,実験的に作り出された自伝的記憶が,実際に経 験した出来事と同程度に確信を持ってありありと想起 されることがあることも示されている(Loftus & Pickrell, ₁₉₉₅)。このように,記憶は経験をそのまま記録するよ うなものではなく記憶主体が構成したものであり,想 起もその都度保持されている材料と一般的な知識や文 脈を用いて再構成を行った結果であると考えられてい る。 このような記憶の性質を念頭に置いて,自伝的記憶 とアイデンティティの関係を考えてみよう。自伝的記 憶がアイデンティティを支えていること,すなわち自 伝的記憶の機能の一つとして自己機能があることには 疑いはないであろう。一方,自伝的記憶も構成,再構 成されるものであり,想起の文脈によって想起内容が 変わったり,虚記憶が生起したりするものである。虚 記憶を生起させることにより,食べ物の好みという些
細なものではあるが,アイデンティティが変化するこ とを示す実験も報告されており(Bernstein, Laney, Morris, & Loftus, ₂₀₀₅),実験的に示すことは研究倫理的に難し いが,虚記憶によってアイデンティティの中核を変え ることも可能であると考えるべきであろう。 一方,話題提供においては,自伝的記憶が年月とと もに変わりうるものであるとする見方は見られるが, 比較的安定しており,ゆっくりと変化するものと見て おられるような印象を受けた。自伝的記憶が想起の文 脈によりころころと変化するものであれば,自己機能 にとっては不都合であるように思われ,また方向付け 機能,社会的機能にとっても好ましくないように思わ れる。 そこで第 ₁ の疑問(質問 ₁)であるが,それぞれの話 題提供において自伝的記憶の安定性についてはどのよ うな見方をされているのであろうか。しっかりと安定 して簡単には変化しないものなのか,あるいは短時間 のうちにも変化しうるものなのだろうか。自伝的記憶 の解釈や意味づけが変わることはあっても自伝的記憶 自体は変化しないのだろうか。アイデンティティがしっ かりと確立されるためには自伝的記憶は安定したもので あるように思われるが,人が成長するためには自伝的記 憶も変化しうることが望ましいとも考えられる。自伝的 記憶の安定性という性質は,それぞれの研究,実践とど のように関わるのかについても知りたいと感じた。 もう一つの疑問(質問 ₂)は,自伝的記憶の中に実際 には経験していない出来事の記憶を「植えつける」こ とができ,それによりアイデンティティも変化しうる, という虚記憶の研究からの示唆に関係する。教育や臨 床的な援助の場面での介入において虚記憶を作り出す ことはありうる,あるいは許されるのであろうか。こ のような疑問については,記憶の研究が教育的な実践 と関わりを持っていく上で,十分に議論されなければ ならないものと考えられる。 引 用 文 献
Bernstein, D. M., Laney, C., Morris, E. K., & Loftus, E. F. (₂₀₀₅). False memories about food can lead to food avoidance. Social Cognition, 23, ₁₁-₃₄. doi: ₁₀.₁₅₂₁/soco.₂₃.₁.₁₁.₅₉₁₉₅
Loftus, E. F.(₁₉₇₉). Eyewitness testimony. Cambridge, MA: Harvard University Press.
Loftus, E. F., & Pickrell, J. E.(₁₉₉₅). The formation of false memories. Psychiatric Annals, 25, ₇₂₀-₇₂₅. doi:₁₀.₃₉₂₈/₀₀₄₈-₅₇₁₃-₁₉₉₅₁₂₀₁-₀₇
Schooler, J. W., & Engstler-Schooler, T. Y.(₁₉₉₀). Ver-bal overshadowing of visual memories: Some things are better left unsaid. Cognitive Psychology, 22, ₃₆-₇₁. doi:₁₀.₁₀₁₆/₀₀₁₀-₀₂₈₅(₉₀)₉₀₀₀₃-M 指定討論への回答 佐藤浩一 質問 ₁ 具体的なエピソード情報とそこから抽象化 された情報を対比して考えてみる。具体的なエピソー ド情報ほど変化しやすい。一方,具体的なレベルで変 化があっても,抽象的な自己スキーマのレベルで安定 していれば,自己機能にとって大きな問題はない。ま た自己機能にとっては,個々の記憶内容だけでなく, どの記憶を選択的に想起するかという意味での安定性 も重要である。これは青年期より中年期以降の方が安 定しており(佐藤, ₂₀₀₈),青年期におけるアイデンティ ティの探求と,その後の安定化を反映しているのかも しれない。具体的なエピソード記憶が方向づけ機能を 果たすこともあるが,そこから抽象化された教訓や知 恵やライフテーマの方が,様々な状況に生かしやすい。 質問 ₂ 外からの介入で虚記憶を作ることは,それ がポジティブなものであっても好ましくない。一方, 記憶そのものではなく,その解釈や意味づけに介入す ることは,内省支援(中原, ₂₀₁₀)として教育的な意味を 有する。ただしこの場合も,意味づけるのはあくまで 本人であることに留意しなければならない。 楢原真也 質問 ₁ 施設の実践のなかでは,子どもの語る事実 は,その時の本人の状況や発達段階,他者との関係性 など様々な要因によって,その都度変化していく。さ らに,LSW においては,事実を語り捉えなおす際に, 子どもと対話する他者とのあいだで物語が再構成され ていくことを重視している。そのため,個人の内部で 想起される記憶というよりも,信頼できる支援者・養 育者とのあいだで想起した記憶を,見直し,意味づけ, 再構成していく過程が大切なのだと考えている。その 意味では,子どもの語る内容は揺らぐものでよいし, 揺らぐ物語が成長と共に徐々に定まっていくプロセス に寄り添うようでありたいと考えている。 質問 ₂ 虐待対応の歴史のなかでは,抑圧された虐 待の記憶の想起が治療に繫がるという考えに基づいて 実際にない事実を思い出させたことが,冤罪事件に発 展した。そうした経緯から,forensic interview などの 技法が開発されたという事情もある。そのため,偽記
憶を故意に作ったり,誘導することは虐待対応におい ては,最も避けるべき事項のひとつであろう。LSW に おいても過去の経緯のなかで支援者側からの一方的な 介入に対する反省がなされてきたように,物語を紡ぐ主 体は本人である。可能な限り子どもにとってプラスとな る要素を事実のなかから見つけ,伝えていくように意識 しているが,嘘を伝えることは慎まなくてはならない。 山本晃輔 Erikson(₁₉₅₉ 小此木訳編 ₁₉₇₃)によれば,アイデン ティティの確立は青年期を一つの区切りとしながらも, その後も何度も見直され,生涯にわたって発達し,達 成していくものである。実際に,縦断研究による報告 では,青年期前期から後期にかけて拡散の割合が減少 し,達成の割合が増加するものの,退行的な変化を示 すものや変化しないものが多いことが報告されている (Meeus, van de Schoot, Keijsers, Schwarts, & Branje, ₂₀₁₀)。ま た,岡本(₁₉₉₄)によれば,斉一性と連続性の感覚を脅 かすライフイベントがあれば,アイデンティティはそ の都度何度も見直され,再構成される。このようにア イデンティティは最終的に達成されるとしても,自己 の状態やその時の状況等により,紆余曲折を経て,変 動しながら発達するものであると考えられる。 このことを前提に,先に取り上げた自己と自伝的記 憶の双方向性を考慮すると,第 ₁ の指摘に関して,軸 となる自伝的記憶の想起は安定しているかもしれない が,その周辺情報は想起時の自己の状態等によってそ の都度柔軟に再構成され,変動すると考えられる。第 ₂ の指摘に関して,人為的に虚記憶を植えつけること は望ましいとはいえないが,そもそも未経験の出来事 である虚記憶がそのまま自己機能を有することは難し いと考える。ただし,実際に経験された出来事であれ ば,方向づけや教示によって出来事の細部や当時の感 情を変動させ,それが自己を支える要素となる可能性 はあるかもしれない。 白井利明 質問 ₁ 過去は美化されるという言いかたがされる が,縦断研究で聴き取ったところでは,必ずしも美化 されるようには思われなかった。このひとは就職活動 について一貫して否定的に語っている。変わっていな い現実の過去が自己の裏付けとなり(下島, ₂₀₀₇),その うえで過去の個々の事実の重み付けが変化するため(白 井, ₂₀₀₈, pp. ₁₄₅-₁₄₆),記憶が変容しているように見える のではないだろうか。このひとの事例からすると,想 起する時点での構図が変化することで自伝的記憶が変 容すると考えられるので,自伝的記憶の安定性はそれ 自体では問えず,構図の安定性と切り離せないのでは ないかと思われる。 質問 ₂ 「植え付ける」とは,教育者ないし支援者が 本人によかれと思って行うものであろうが,本人に自 己決定権があることからして,それを犯す危険性があ る。自伝的記憶は語り手と聴き手の相互作用のなかで 構成されるものであるから,本人が自ら語り直す自由 を保障し,両者の関係性の質を高めていくなかで,本 人がよりよく語ることのできるよう支援することが必 要ではないだろうか。 下島裕美 質問 ₂ 薬の場合,効果が期待できる反面,重篤な 副作用が起きるリスクもある。心理療法においても同 様ではないか。現代の医療ではインフォームド・コン セントが当然となっている。記憶は自然に変容するも のではあるが,本人が意図しない第三者による意図的 な記憶の植え付けには,良い面と悪い面の両方がある ことに十分配慮する必要があるだろう。 引 用 文 献
Erikson, E. H. (₁₉₅₉). Identity and the life cycle: Selected papers. Psychological Issues, 1, ₁-₁₇₁.(エ リクソン, E. H. 小此木啓吾(訳編)(₁₉₇₃). 自我同一 性―アイデンティティとライフサイクル 誠信書房) Meeus, W., van de Schoot, R., Keijsers, L., Schwartz, S.
J., & Branje, S. (₂₀₁₀). On the progression and sta-bility of adolescent identity formation: A five-wave longitudinal study in early-to-middle and middle-to-late adolescence. Child Development, 81, ₁₅₆₅-₁₅₈₁. doi: ₁₀.₁₁₁₁/j.₁₄₆₇-₈₆₂₄.₂₀₁₀.₀₁₄₉₂.x 中原 淳(₂₀₁₀). 職場学習論―仕事の学びを科学する 東京大学出版会 岡本祐子(₁₉₉₄). 成人期における自我同一性の発達過 程とその要因に関する研究 風間書房 佐藤浩一(₂₀₀₈). 自伝的記憶の構造と機能 風間書房 下島裕美(₂₀₀₇).指定討論 佐藤浩一・白井利明・杉 浦 健・下島裕美・太田信夫・越智啓太 自伝的記憶 研究の理論と方法(₄) 日本認知科学会テクニカル レポート, 61, ₁₈-₂₀.doi:₁₀.₄₉₉₂/pacjpa.₇₀.₀_WS₀₁₅ 白井利明(₂₀₀₈).時間的展望と自伝的記憶 佐藤浩 一・越智啓太・下島裕美(編) 自伝的記憶の心理学 (pp. ₁₃₈-₁₄₈) 北大路書房