様式第19 別紙ロ 科学研究実践活動のまとめ 1. タイトル 植物の香り成分を使った防虫効果の検証と分析 2. 背景・目的 昨年先輩方が行った実験結果から、キンモクセイが低い値となっており(図 1)、またユリ、ネギ、ヨモギ、が 低い値になっていることがわかる。(図 2) これらの植物(キンモクセイ、ユリ、ネギ、ヨモギ)に含まれている香り成分(表 1)うち、防虫効果があると 思われる 4 種類の成分(amphor,eucalyptol,3-hexen-1-ol,borneol)選択し調査した。 上述した 4 つの成分の選択理由は、以下のとおりである。 camphor…たんすの防虫剤(きものしょうのう)に含まれている1 borneol …構造式が camphor に似ている5 eucalyptol …毒性のあるユーカリに含まれている2 ユーカリオイルを使った虫除け剤の野外 試験で蚊に対して最大 4 時間の 防虫効果が示さ れている3 3-hexen-1-ol …多くの雑草に含まれており4 防虫効果が見られれば天然の防虫剤を簡単に作ることが出 来る 整理番号 SG150069 活動番号 002 図 1 虫食いのある葉の枚数の割合 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16
虫食いのある葉の枚数の割合
図 2 虫食いのある葉の面積の割合 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 1回 2回虫食いのある葉の面積の割合
表 1 各植物の精油成分 3. 方法 【準備物】 ・ハクサイ ・肥料(カリウム、鶏糞) ・土 ・霧吹き ・純水 ・メスシリンダー ・ガラス棒 ・ビーカー ・駒込ピペット 成分 ・camphor (カンファー) ・3-hexen-1-ol (ヘキセン) ・eucalyptol (ユーカリプトール) ・borneol (竜脳) 【実験方法】 前述の薬品 4 つを希釈し、その希釈した水溶液をハクサイに散布した。そして、定期的に薬品の散布と観 察を3週間に渡って続けた。 薬品の希釈方法は各精油成分を、市販の農薬であるオルトラン水和剤中のアセフェートの mol 濃度と同 様の 0.18×10-2 mol/L に揃えて希釈した。昨年の実験と条件を揃えるために、昨年の実験で使用された、オ ルトラン水和剤を参考にこの mol 濃度に設定した。ハクサイの散布方法は、以下の図 3 のように、右から 物質名 キンモクセイ 3-hexen-1-ol 3-hexenyl acetate copaene α-cadinol ユリ camphor p-menth-i-en-8-ol benzothiazole 3.7-dimethl-1.6-octadien-3-ol ネギ dipropyl disulfide camphor 2-undecanone 2-tridecanone ヨモギ hexen-1-ol eucalyptol thujone borneol caryophyllene germacreneD
1camphor, 2 eucalyptol, 3 3-hexen-1-ol, 4 borneol, 5 水のみ と番号をふり、奥側の畝には 1 プッシュ、手前の畝には 2 プッシュ霧吹きで薬品を散布した。また、1 プッシュ あたりの散布量は約 1.43 ml である。 図 3 それぞれの薬品を散布したハクサイの位置 この作業を毎日一回ずつ、雨が降った日は翌日に、散布と水やりを行った。そのときにハクサイの様子を 1 株ずつ写真で記録した。以下の写真はその記録である。 なお、以下の写真は 1 camphor 1 プッシュ 2 eucalyptol 1 プッシュ 3 3-hexen-1-ol 1 プッシュ 4 borneol 1 プッシュ 5 水のみ 6 camphor 2 プッシュ 7 eucalyptol 8 3-hexen-1-ol 2 プッシュ 9 bornaol 2 プッシュ 10 水のみ とする。
11 月 12 日 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 月 19 日
1 2 3
4 5 6
7 8 9
11 月 26 日
1 2 3
4 5 6
7 8 9
12 月 5 日 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 10
ハクサイの散布は 3 週間に渡って行い、ハクサイを収穫した。ハクサイは 1 枚 1 枚切り取って洗い、全て の葉をスキャナーで取り込み、印刷した。印刷した用紙にさらに 0.5 cm × 0.5 cm の方眼を印刷し、その升 目を数えることでのハクサイの虫食い面積を計算した。(図 4) 図 4 方眼を印刷したハクサイの写真 4. 結果 図 5 薬品ごとの虫食いの割合 それぞれの薬品を散布したものと、水飲みのものとを比較した。(図 5) camphor…1 プッシュと 2 プッシュに大きな差が見られない。また、水との差はほぼ無いと考えられる。 eucalyptol…1 プッシュでは虫食い面積が水と比べて大きいが 2 プッシュでは虫食い面積が水よりも 小さいことがみられる。 3-hexen-1-ol…1 プッシュ、2 プッシュとも水よりも虫食い面積が少ないことが見られる。 borneol…水との差はほぼ無いということがわかる。
0
0.002
0.004
0.006
0.008
0.01
0.012
0.014
camphor eucalyptol 3-hexen-1-ol borneol 水
1プッシュ 2プッシュ 二株の平均
5. 考察 camphor 結果から防虫効果があるとは言えない。だが、一般的には、屋内の防虫剤に使用されているため、 屋内の虫に対しては防虫効果があると考えられる。今回防虫効果が見られなかった原因として、今 回の散布量は camphor が最も効果を発揮するものではなかったことと、camphor が屋外の虫に対し ては効果がないという可能性があると考えられる。 eucalyptol 結果から 2 プッシュ以上で防虫効果があり、1 プッシュでは誘因効果があると言える。更に 2 プッ シュ時では同じ散布量で camphor より高い防虫効果を示したため、eucalyptol の方が強力な防虫効 果があると考えられる。 3-hexen-1-ol 結果から camphor より、更に強力な防虫効果があると言える。 borneol 結果から防虫効果はない。または、今回の実験では borneol は溶解しきらなかった。よってこのこ とから、効果が発揮されなかったと考えられる。 散布量が少なかった可能性も考えられる。 6. 結論 これらのことから、eucalyptol は 2 プッシュでは防虫効果がある。また、3-hexen-1-ol は1プッシュ以 上で、防虫効果があるといえる。 7. 今後の展望 どの薬品でも、1 プッシュ時よりも 2 プッシュ時のほうが高い防虫効果を示した。このことから、 ・散布量と防虫効果の比例関係の有無 ・今回の散布量が防虫効果の限界値であったのか という二点を調査する必要がある。それぞれの薬品については以下に記す。 camphor 考察で述べたように、今回は屋外の虫に対しての防虫効果を検証していたため、屋内の虫を対象に防 虫剤として使用されている camphor は防虫効果を示さなかった可能性が考えられる。そこ camphor を散布 したハクサイに寄ってきた虫をガムテープで捕まえ、その虫の種類を調べ、camphor が効果を示す虫と比 較する。そして、camphor はハクサイの害虫に効果を示す防虫剤であるのかを調査する。 eucalyptol 散布量による誘因効果の有無の調査が必要であると考えられる。 borneol 今回の実験では borneol が溶解しきらなかったことが防虫効果に影響したという可能性が考えられる。 borneol は界面活性剤を使うと溶解することができると大学教授に伺ったため、それを踏まえたうえでの再 実験が必要であると考えられる。
図9 eucalyptol 8 構造式 図8 camphor 7 構造式 図 6 物質の粒子を囲む界面活性剤 ※界面活性剤には水になじみやすい親水基と、水になじみにくい疎水基(親油基)が存在する。界面活性 剤を加えると、疎水基がその物質の粒子に吸着して取り囲み、親水基が外側に並ぶことで水になじむよう になる。6 図 7 界面活性剤による物質の分離 香り成分の構造式の種類と防虫効果 今回使用した 4 つの香り成分以外に、防虫効果のある香り成分が存在しないかを調査する必要があ る。4 つの成分のうち、camphor, eucalyptol, bornaol の 3 つは、2 つ以上のイソプレン(*)から構成されて いるテルペン類に属する。10 一方、3-hexen-1-ol は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の 3 種類の原子で構 成され、炭素原子が鎖状につながった一方の端にカルボキシル基(-COOH)がついている脂肪族に属 する。(図 11)11(図 8,9,10) 6. 結論で述べた通り、3-heoxen-1-ol は防虫効果を示した。このことから、 3-hexen-1-ol と同じ脂肪族である香り成分には防虫効果がある可能性が考えられる。よって、脂肪族で ある香り成分が植物中に存在するかを調査し、あればその成分に防虫効果があるのか検証したい。 (*)イソプレン…炭素 5 つと二重構造 2 つをもつ炭化水素 図10 bornaol 12構造式 テルペン類 粒子 界面活性剤 を強く混ぜると…
3-hexen-1-ol の実用性 雑草を刈り取った後の廃棄物などから抽出し、防虫剤を作ることが可能である。これを利用して、天然由 来の防虫剤を手軽に、低コストで作ることが可能になる。 8.参考文献等 1 化学大辞典編集委員会.化学大辞典.811.(1960) 2 化学大辞典編集委員会.化学大辞典.396.(1960) 3 医薬品情報 21 http://www.drugsinfo.jp/2007/08/10-173000 4 化学大辞典編集委員会.化学大辞典.302.(1960) 5 職場の安全サイト.厚生労働省 http://anzeninfo.mhlw.go.jp/ 6 日華化学株式会社 http://www.nicca.co.jp/05recruit/iaa.html 7 Cis-3-Hexen-1-ol|東京化成工業株式会社 http://tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/B0567/ 8 Eucalyptol=1.8-Cineole=Cajeputol|470-82-6| フナコシ| http://www.funakoshi.co.jp/contents/162899 9 ChemicalBook http://www.chemicalbook.com/Search_JP.aspx?keyword=928-96-1 ⒑テルペン|成分情報|わかさ生活 http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/terpene/ ⒒脂肪酸|農林水産省 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/fatty_acid.html 12. 東京化成株式会社 http://tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/B1012/ 9. 成果発表実績 1. 平成 28 年 1 月 14 日 課題研究実践発表会(会場:京都府立園部高校)研究発表(10 分) 図11 3-hexen-1-ol 9 脂肪族