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Elovl6はメカニカルストレスによる皮膚炎を軽減する

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Academic year: 2021

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全文

(1)

Elovl6はメカニカルストレスによる皮膚炎を軽減す

著者

中村 貴之

発行年

2017

学位授与大学

筑波大学 (University of Tsukuba)

学位授与年度

2016

報告番号

12102甲第8251号

URL

http://hdl.handle.net/2241/00147912

(2)

-

氏 名

中村 貴之

学 位 の 種 類

EA

博士(医学)

A

学 位 記 番 号

EA

博甲第 8251 号

A

学 位 授 与 年 月

EA

平成 29 年 3 月 24 日

A

学位授与の要件

EA

学位規則第4条第1項該当

A

審 査 研 究 科

EA

人間総合科学研究科

A

学 位 論 文 題 目

EA

Elovl6 はメカニカルストレスによる皮膚炎を軽減する

A

EA

筑波大学教授 博士(医学)

檜澤 伸之

EA

筑波大学教授 博士(医学) 柳沢 裕美

A

EA

筑波大学准教授 博士(医学) 工藤 崇

A

EA

筑波大学准教授 博士(医学) 斎藤 慎二

論文の内容の要旨

中村氏の博士学位論文は,メカニカルストレスによる皮膚炎における Elovl6 の役割を検討したもので ある。その要旨は以下のとおりである。 (背景と目的) 物理的,化学的な外力によって生じるメカニカルストレスは細胞増殖や分化など様々な因子を制御す る。常に外界と接する皮膚はメカニカルストレスに対して最も影響をうける組織であり,掻破や摩擦な どのメカニカルストレスはアトピー性皮膚炎など多くの皮膚疾患の重要な誘導因子として知られてい る。これらのメカニカルストレスがどのようにして皮膚炎を誘導するかという詳細なメカニズムは未だ 明らかになっていない。Elovl6 (Elongation of long-chain fatty acids family member 6)は小胞体 に存在する脂肪酸伸長酵素であり,パルミチン酸 (C16:0),パルミトレイン酸 (C16:1n-7)からそれぞ れステアリン酸 (C18:0),シスバクセン酸 (C18:1n-7)へと変換する機能を有する。Elovl6 は肝臓や脂 肪組織,脳とともに皮膚にも高発現していることが知られている。皮膚に豊富に含まれる脂質は,透過 性バリアや炎症反応など皮膚の恒常性維持に極めて重要な役割を果たしている。これらの背景を踏まえ, 著者は本研究において Elovl6 の皮膚における生理的な役割を明らかにするために,メカニカルストレス による皮膚炎モデルを用いて Elovl6 の役割を検討している。 (対象と方法) 著者は掻破を模倣するテープストリッピングによるメカニカルストレス誘導性の皮膚炎モデルを作 成し,このモデルにおける Elovl6 欠損マウスおよびケラチノサイト特異的 Elovl6 欠損マウス (Elovl6fl/fl K14-Cre)の病態を解析することで,Elovl6 によるメカニカルストレスに対する反応性制 御の有無およびそのメカニズムを検討している。さらに Elovl6 欠損マウスの表皮の脂肪酸組成を解析 することで,Elovl6 のメカニカルストレスに対する反応性を制御する脂肪酸の種類およびそのメカニズ ムを検討している。最後に,テープストリッピングを用いたアトピー性皮膚炎モデルを誘導して,疾患 モデルにおける Elovl6 の関与も検討している。

(3)

-

2 (結果) 著者はメカニカルストレス誘導性の皮膚炎モデルにて,Elovl6 欠損マウスは野生型マウスと比べ表皮 肥厚,好中球を主体とする炎症細胞浸潤が亢進し,皮膚炎が増悪することを確認した。Elovl6 は真皮に 比べ表皮ケラチノサイトに高発現し,ケラチノサイト特異的 Elovl6 欠損マウスでも同様にコントロー ルマウス(Elovl6fl/fl)と比べ表皮肥厚,好中球を含む炎症細胞浸潤の亢進を確認している。一方,トル

イジンブルーによる皮膚透過性テストおよび TEWL (Transepidermal water loss)では,いずれも Elovl6

欠損マウスと野生型マウスとの間で差を認めていない。著者は Elovl6 欠損マウスにおいてテープスト リッピング後のケラチノサイトからの IL-1β,CXCL-1 の産生増加を確認し,IL-1 受容体アンタゴニス ト,CXCR-2 アンタゴニストの投与によって Elovl6 欠損マウスの表皮肥厚,好中球浸潤が軽減すること を確認した。著者がテープストリッピング後の組織所見を解析したところ,Elovl6 欠損マウスではテー プストリッピング後に壊死を生じたケラチノサイトが増加し,HMGB-1 の細胞外への放出も増加していた。 脂肪酸組成解析を行ったところ,野生型マウスと比較して Elovl6 欠損マウスの表皮ではシスバクセン 酸が著増していた。さらに,著者はシスバクセン酸を培養ケラチノサイトへ添加またはマウス皮膚に塗 布することによって,いずれもケラチノサイトの細胞死を誘導することを確認している。一方,オレイ ン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,パルミトレイン酸やシスバクセン酸の異性体であるトランスバク セン酸の添加ではケラチノサイトの細胞死は生じないことも確認している。引き続き,著者はテープス トリッピングと卵白アルブミン(OVA)塗布によるアトピー性皮膚炎モデルを誘導している。このモデ ルにおいても Elovl6 欠損マウスおよびケラチノサイト特異的 Elovl6 欠損マウスではそれぞれ野生型お よびコントロールマウスと比較して皮膚炎が増悪し,浸潤する表皮内リンパ球数,血清 IgE 値,所属リ ンパ節の IL-4, IL-17 の mRNA 発現が増加することを確認している。著者はこのモデルにおいても IL-1 受容体アンタゴニストの投与が Elovl6 欠損マウスにおける表皮内リンパ球数,血清 IgE 値を低下させ ることを確認している。 (考察) 著者は本研究の結果がケラチノサイトに発現する Elovl6 がメカニカルストレスで誘導される皮膚炎 に対して防御的な役割を有することを示すものと考察している。著者は IL-1β,CXCL-1 が Elovl6 欠損 マウスにおけるメカニカルストレス誘導性の皮膚炎の亢進に重要な因子であることを示し,さらに Elovl6 欠損マウスの表皮に著増するシスバクセン酸が in vitro, in vivo ともにケラチノサイトに対し 細胞死を引き起こすことを確認することで,表皮にシスバクセン酸が著増した Elolv6 欠損マウスではテ ープストリッピングによるケラチノサイトの壊死が亢進することによって,DAMPs (Damage-associated molecular patterns)放出が促進され,結果として IL-1β,CXCL-1 の産生が亢進すると考えている。

審査の結果の要旨

(批評) 著者は本研究において Elovl6 欠損マウスではテープストリッピングにより壊死に陥ったケラチノサ イトから放出されるシスバクセン酸が,周囲のケラチノサイトのさらなる細胞死を誘導し,その結果メ カニカルストレスに対する反応性が増強され,さらにはアトピー性皮膚炎モデルの重症度も悪化するこ とを示した。これらの知見から,本研究は Elovl6 の皮膚における生理的な役割を明らかにすると同時 に,ケラチノサイトにおけるシスバクセン酸の産生阻害がアトピー性皮膚炎を含む様々な皮膚疾患の新 たな治療標的となる可能性を示した重要な研究である。 平成28年12月22日,学位論文審査委員会において,審査委員全員出席のもと論文について説明 を求め,関連事項について質疑応答を行い,最終試験を行った。その結果,審査委員全員が合格と判定し た。 よって,著者は博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認める。

参照

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