Vol. 8
2004 年度西澤ゼミ・学生論集
同志社大学法学部・政治学科
2005 年 3 月
はしがき
中国の学者・楊子(ようし)が、分かれ道が多くて、逃げた羊 を見つけることができなかったことを深く悲しんだ。「分かれ道 が多いために羊を逃してしまったのと同じように、学問の道もあ まりに多方面にわたっているために、真理を見失ってしまうこと を悲しんだのだ」と、後にその弟子の一人・心都子(しんとし) が説明したそうだ。 現代日本が抱える政治的な問題や日本あるいは外国の有権者の 投票行動・価値観について、多くの立場の研究に触れ、また、興 味を持った具体的な疑問点について、各自が独自な視点で分析を 行ったわけだが、それには1年はあまりにも短かった。おかげで、 政治のメカニズムが理解できたというより、むしろよけいに分か らなくなったというのが正直なところだろう。まさしく、「多岐亡 羊」である。 さて、今年の西澤ゼミには、聴講生を含めて、3・4 年ゼミには 8 名が、そして、政治学演習には 4 人が集まってくれた。それらの 諸君の努力の結晶がここに収められた論文である。 「『多岐亡羊』の論文が、毎年、充実していきますね」と、多く の卒業生から感想をいただいている。それは、たいへん嬉しいこ とである。でも、毎年のレベルアップというのは、必ずしも容易 な命題ではない。その「外圧」を感じていたのは私だけなのかも しれないが、第 8 巻目になるこの論集の各論文も、これまでの論 文にけっして劣ることのない力作ばかりである。ほんとうにおめ でとう。 所属する本ゼミの作業に専念するために、ここには投稿しなか った仲間もあるが、その人たちの「参加」も、この「共同研究」 の完成には不可欠であったことをここに記しておきたい。彼らの 貢献が、各論文をよりよいものにしてくれた。 今年のゼミでは、勉強以外にも、多くのことをした。恒例の春 の合宿やクリスマス・パーティの他に、映画「華氏911」の鑑賞・ 我が家での「映画&ピザ」パーティー・秋の「俳句イング」など。 私がそれらの「発起人」かのように思われているかもしれないが、 じつは、今年のゼミ生は、私をそんな気にさせるのが上手だった というのが真相である。それらのイベントに、卒業生の参加が多かったこと、また、卒業生やゼミ生の「significant other」の参加 があったのも今年の特長である。仲間の広がりを強く感じた。 今年の卒業生のうち、松岡・宮川の両君とはゼミが始まる前か ら一緒に勉強をしてきた。また、私を「避けて」きた大石君は、 今年になってからのお付き合いである。それぞれに、いろんな意 味で「世話」のかかった学生だったが、私のこれまでの経験では、 そんな学生諸君のほうが、私の心にはとりわけ印象的に長く残る ようである。これからの活躍に期待したい。 3 年生の 4 人はというと、ほんとうに勉強の好きなグループだっ た。アカデミック・ライティング(AW)の最初の学年であること から、もう 3 年のお付き合いである。担当者の私が言うのもなん だが、AW のおかげで勉強の仕方の基礎がしっかりしていることを、 今年は感じた。来年にはどんな仕事をしてくれるか、ますます期 待が膨らむ(と、すこしプレッシャーを掛けておこう)。 政治学演習の諸君のパワーには脱帽であった。報告論文をビデ オ番組としてまとめるのが課題であったが、人数が少なかったの で、秋学期の初めのことは、「できるかな」と正直なところ少し心 配をしていた。でも、ものすごい結束力で、みごとに課題をこな してくれた。一緒に仕事をしていて楽しかった。 さて、その間、TA として手伝ってくれた伊藤慎弐君と浅田啓太 君と、聴講生だった岡本和明君に感謝したい。毎回の教室の準備 などの「後方支援(ロジスティック)」の他に、論文の内容など実 質的な点についてまで、そして、また、研究者の「卵」としての よきアドバイザーであった。私の知らないところでも、いろいろ と相談相手になってくれていたようである。 大学で学ぶことの究極の目的は、「真理とは何か(あるいは人間 とはどういう生き物なのか)」という問いに対する答えを見いだす ことである。ただ、学生時代の 4 年間でその問いに答えを得るこ とのできる人は少ないだろう。つまり、社会に出ても、この問い に対して自問し続けることになる。大学は、その「最初の一歩」 にすぎない。「真理を問う」ことのおもしろさを体験した(と、私 は信じているが)在学生諸君は、残る時間を大切にして、今年以 上に勉学に励んでほしい。卒業するみんなについても、このゼミ で身につけた(と、私は信じているが)実証的な分析視角と物事 を批判的に見る態度を、ぜひ実社会で活かしてほしい。真理を見 極める道具として。 西澤由隆 2005 年 1 月 24 日 光塩館にて
もくじ
はしがき 西澤由隆 1 2 年生製作ビデオシナリオ 1. 投票率の地方・都市格差 ··· 池田俊介 4 西辻健一郎 角谷卓哉 田島裕一 3 年生論文 2. 誰がターゲットなのか? ··· 清水佐恵子 22 3. 保革イデオロギーと投票行動 ··· 三浦正裕 34 4 年生論文 4. 60 年安保反対運動の変化過程 ··· 大石昇平 49 5. 投票率をあげる方法 ··· 松岡信道 69 6. 何が「社会性」を構成するのか ··· 宮川佳也 82 ゼミメンバー紹介 ··· 92 編集後記 ··· 宮川佳也 107 「我が校の門をくぐりたるものは、政治家になるもよし、宗教家になるもよし、実 業家になるもよし、教育家になるもよし、文学者になるもよし、且つ少々角あるも 可、気骨あるも可、ただかの優柔不断にして安逸を貪り、いやしくも姑息の計を為 すが如き軟骨漢には決してならぬこと、これ予の切に望み、ひとえに希うところで ある。」 森中章光編『新島襄 片鱗集』より投票率の地方・都市格差
なぜ農村部の方が都市部よりも投票率が高いのか
池田俊介
西辻健一郎
角谷卓哉
田島裕一
1.導入部
池田:こんにちは。今、投票率の低下が問題となっています。 こちらのグラフ(1)をご覧ください。1
このグラフは、衆議院議員総選挙の投票率を表しています。ご覧の とおり、平成以降投票率は、以前よりも低い水準で推移しています。 きょうは、コメンテーターとして、西辻健一郎さんにおいでいただ いています。西辻さん、この投票率の推移をどうご覧になりますか。 西辻:はい。有権者の投票にしたがって議員を選ぶ「選挙」という プロセスは、民主政治の根幹といえます。しかも「衆議院議員総選 挙」は、日本という国家の政権を選択する選挙です。 投票率、それも政権選択の行われる衆議院議員総選挙における、投 票率が低迷していることに対しては、ご存知のとおり多くの方面か ら懸念の声が上がっています。 池田:ここで、こちらのグラフ(2)をご覧ください。 これらの曲線は、総選挙における市区・町村別の投票率を示してい ます。お分かりの通り、町村のほうが市区よりも投票率が高い、と いう一般的な傾向が見て取れます。西辻さん、都市規模の小さな地 区ほど投票率が高い、ということですね。
西辻:はい。こうした傾向、言いかえますと「農村部の方が、都市 部よりも投票率が高い」という傾向は、日本の選挙においてしばし ば指摘される論点となっています。 そこで今回私たちはこのような都市規模と投票率との負の関係が なぜ生じるのか、すなわち「なぜ都市部よりも農村部のほうが、投 票率が高いのか」、検証を試みました。 池田:そうした検証の意義は、いったいなんですか? 西辻:はい。今回の取り組みは、投票率の低下という問題を考える に当たっての、材料を提供するための検証です。 池田:それはどういうことでしょう。 西辻:少なくとも現段階で、農村部の方が都市部より、投票率が高 いことが分かっているわけですね。 池田:ええ、そうです。 西辻:それならば、農村部における投票率の高さはなぜ生じている のか、その要因をさぐることで、全体的な投票率の低下を抑制する、 あるいは低下を上昇に変える手段を構想する材料が得られるので はないでしょうか。私たちは、そうした観点から今回の検証作業を 思い立ちました。 池田:なるほど、そういうことですか。 西辻:はい。そして、農村部と都市部との間の投票率の違いを考察 するにあたって、私たちが注目した観点は次の2点です。第 1 に情 報格差、第 2 に共同体意識の違いです。 池田:情報格差と、共同体意識の違い、ですか。 西辻:はい。私たちはこれら2つの観点からそれぞれ 1 つずつ、計
2つの仮説を立て、検討を行いました。
2.仮説 1 の検証
池田:それでは、情報格差に観点をおいた仮説 1 について報告をお 願いします。 西辻:はい。今回立てた仮説 1 は「農村部の有権者達は、地元議員 の情報を多く得ており、それが政治に対する強い期待を生み、結果 として投票率が高くなる」というものです。 池田:西辻さん、この仮説の論理構成はどうなっているのでしょう か? 西辻:それについては、こちらの図をご覧ください。 図:仮説1の見取り図 Å C B この仮説 1 は A・B・C で示した諸関係から成り立っています。順に 説明しますと、「農村部ほど地元立候補者の情報を多く得ている」 という A、「政治家の情報の多さが政治への信頼感の高さにつなが る」という B、そして、「政治への信頼感が投票率の高さにつなが る」という C、以上の三つです。 池田:なるほど。ということは、仮説を検証するためにはこれら3 つの関係を全て検証する必要がある、というわけですね。では、そ の検証方法にいったい何を用いたのでしょうか。 地元立候補者の情報が 多い 農村部 投票率が高い 政治への信頼が大きい西辻:今回は仮説の検証に、世論調査データの統計分析を用いまし た。対象としたデータは、1996 年の世論調査である jeds96(3)と、 2003 年のグロープ調査 2003(4)の以上2つです。どちらも衆院選前 後に調査をしたものです。 池田:わかりました。では、データ分析の結果報告をお願いします。 西辻:はい、ではまず、農村部と地元候補者情報との関係につい ての検証報告を行います。表1をご覧ください。これはjeds96にお ける有権者の回答を表しています。有権者の人々に、彼らの地元選 挙区において公示が一番早かった立候補者の名前を示したうえで、 その人をどれぐらい知っているかをたずねたものです。 表1:公示が一番早かった候補者の認知度(jeds96調査) 認知程度(%) 都市規模 よく ある程度 名前だけ 13大都市 17.1 33.8 49.1 人口10万以下 24.9 34.3 40.8 池田:農村部と都市部で、差が出ていますね。 西辻:そうです。農村部は都市部と比べて、選挙が始まる前から候 補者がどのような人であるかをすでに把握している人が多いとい う結果が出ています。 池田: なるほど、確かにこれは先ほどの仮説のAの部分、つまり農 村部ほど候補者の情報を多く得ている、という論理を補強する有力 なデータであるといえますね。 西辻:はい、その通りです。
池田:では、Bの部分の検証に移りましょう。政治家の情報量と政 治への信頼感との関係ですね。 西辻:ええ。それについては表2をご覧ください。このデータも jeds96によるものです。これは、先ほどの質問で「候補者をよく知 っている」と答えた人が、「地元の候補者に投票することと永田町 の政党を信用することのどちらを選ぶか」、という別の質問を出し、 どのように答えたかを表にしたものです。 表2:地元候補投票か政党信用か(jeds96調査) 回答(%) 都市規模 地元候補者 政党 13 大都市 42.4 57.6 人口10万以下 50.0 50.0 池田:これを見ますと、農村部有権者たちは、都市部有権者に比べ て地元候補者への期待が大きい、といえますね。 西辻:そうです。そしてこの傾向は別の質問項目を通じても確認す ることが出来ました。表3をご覧ください。これは、グロープ調査 2003のデータによるものです。「自分の求めていることを最もよく 実現してくれそうなもの」を、表に挙げた三つの中から選択しても らいました。ここでは、地元国会議員を推す人の割合が農村部と都 市部とでかなり離れています。 表 3:自分の要求を一番実現する主体(グロープ 03) 回答(%) 都市規模 地元議員 内閣 政党 13大都市 38.0 10.4 51.5 人口10万以下 53.1 11.5 35.4
池田:なるほど、これを見るとデータの裏づけは十分あるようにみ えますが、どうでしょう 西辻:正直なところをいえば、統計的な問題は一部残っています。 しかしいずれにせよ、仮説のBの部分を確認するための非常に有益 な調査結果として、この結果を評価することは可能です。 池田:わかりました。それでは最後にCの部分の分析結果をお願い します。 西辻:はい。仮説のCの部分とは、政治への信頼感と投票率との関 係でした。ここで再び表3に戻りたいのですが…、この表ですね。 この表を見れば分かるのですが、農村部の有権者は永田町の政党を 信用するよりも地元候補への投票を選ぶ割合が高いのです。 池田:はい。ここからもある程度、農村部の高投票率の理由が伺え ますね。 西辻:実はここで私たちは、この問題を検証するために違った観点 からの分析を試みました。 池田:それはどういうことですか? 西辻:つまり、実際に投票した有権者ではなく、投票を棄権した有 権者の世論調査を使っての検証です。 池田:いわば発想の逆転、ということですね。 西辻:そうです。すると、なかなか興味深い結果が出ました。表4 をご覧ください。このデータはグロープ調査2003によるものですが、 これを見ると、農村部では選挙を棄権した理由として、他の用事と 答えた割合が都市部よりも高いのです。
表 4:投票棄権理由は他の用事(グロープ 03) 回答(%) 都市規模 あてはまる あてはまらない 13大都市 62.5 37.5 人口10万以下 67.8 32.2 そして、表5を見て欲しいのですが、他方、投票所に行くまでの手 間を棄権理由とした割合は農村部では低くなっているのです。 表5:棄権理由は投票所に行く手間(グロープ03) 回答(%) 都市規模 あてはまる あてはまらない 13大都市 25.0 75.0 人口10万以下 15.3 84.7 池田:西辻さん、この結果から一体何が読み取れるのでしょう? 西辻:そうですね、2つのことがよみとれると思います。1点目は 農村部の人たちは投票に行くことをおっくうがる人の割合は低い ということ。2点目は、仮に棄権するとしても、それは他の用事と いうやむをえない理由によるものである、ということです。 池田:ということは、これらをまとめると、都市部と比べて農村部 には、有権者の政治参加を妨げるような内的な要素が薄い、という ことですね。 西辻:そうです。この点から、農村部の有権者達の中には、地元議 員への信頼と実際の投票行動とが都市部よりもより強く結びつい ている、ということが導き出せるのです。 池田:なるほど、これで仮説のCの部分が検証できたわけですね。 ではここで一度、最初に提示した見取り図を確認してみましょう。 さて西辻さん、これまで仮説1についてABCの各部分の分析報告を行
ってきたわけですが、最後に結論をお願いします。 西辻:はい、我々は最終的に、先に提示した仮説1には妥当性が認 められる、という判断にいたりました。 しかしながら、厳密に仮説が証明されているとはいえません。その 理由は2つあります。第1にはサンプルの総数が少ないこと、そし て第2には資料の年代が複数にまたがっていることです。この点に 関しては、さらなるデータの獲得と、それをもとにしたいっそうの 分析が必要だということになります。
3.仮説 2 の検討
池田:それでは引き続いて、共同体意識の違いに観点をおいた仮説 2について、報告をお願いします。 西辻:はい、こちらの図をご覧下さい。 図:仮説2の見取り図 仮説2は、 農村部の有権者は、都市部と比較して「共同」での作 業および決定への志向が強いため、公式の意思決定である選挙に参 加する確率、すなわち投票率も高い というものです。 池田:なるほど。その仮説2はどのような手段で検証したのでしょ うか。 西辻:それに関しては仮説 1 の場合と同様に、世論調査データの統 計分析を行いました。対象としたデータは、jeds96 の公開データ 共同作業・共同決定への 志向が強い 農村部 投票率が高いです。 池田:わかりました。では、データ分析の結果報告をお願いします。 西辻:はい。今回私たちが「共同」での作業および決定への志向を はかる尺度として用いたのは、2 つの質問項目に対する有権者の回 答です。 第 1 には「職場や地域、町内で自分の思い通りに物事を進めるには、 実力があり顔も聞く人に頼った方がよいか、それとも他人に頼らず に何もかも自分でやっていった方がよいか」という質問項目です。 第 2 には、「社会の調和を保つために従来のしきたりを守るべきか、 それともしきたりにこだわらずに個人の判断に従うべきか」という 質問項目です 池田:ところでこれらの質問への回答は、どのような形式になって いるのでしょうか。 西辻:はい、これら2つの質問項目は、どちらも、共同体での営み に関系する、A・B2 通りの見解を提示して、自分の考えがどちらに 近いか、回答をしてもらう形になっています。 さらに、これら 2 つの質問項目はいずれも「A に近い」「どちらか といえば A に近い」「B に近い」「どちらかといえば B に近い」とい う 4 通りの回答を行うかたちになっています。 ただ、今回の私たちの検証では「どちらかといえば近い」との回答 も「近い」との回答に含めて、作業を行いました。 池田:わかりました。では、データの分析結果について説明をお願 いします。 西辻:はい。まずは、1 つ目の質問項目への回答から分析結果を報 告していきます。 こちらの表をご覧下さい。この質問に対する都市規模ごとの回答の 分布は、このようになっています。
表1 : 物事を進めるにおいて(jeds96 調査) 回答(%) 都市規模 有力者に依存 自力で 13 大都市 60.2 39.8 20 万人以上 53.0 47.0 10 万人以上 58.3 41.7 その他の市 61.7 38.3 町村 64.6 35.4 表 1 をご覧になってお分かりの通り、都市規模の小さい町村部では 「何もかも自分で」という回答の割合は、35.4%と最も小さくなっ ています。 次に、この 1 つ目の質問項目での回答と、1996 年衆院選における 投票参加との関係を見てみましょう。こちらの表 2 から判断する限 り、回答と、投票参加との間に大きな関係を見出すことは、できま せん。 表2 :質問項目 1 の回答と投票参加(jeds96 調査) 投票参加(%) 回答 した しなかった 有力者に依存 86.3 13.7 自力で 85.2 14.8 池田:そうですね。どうやらこの回答状況を見ますと、仮説の検証 は難しそうですね。 西辻:はい、私たちも、この 1 つ目の質問項目を尺度とした場合に は、仮説は検証されないと判断しました。 池田:では、もう 1 つの質問項目についてはどうだったのでしょう。 西辻:はい、2 つ目の質問項目からの分析結果を報告します。
この質問に対する都市規模ごとの回答の分布は、この表 3 のように なっています。こちらを見てお分かりのとおり、個人の判断よりも 共同体のしきたりを重視する回答の割合は、町村部で最大となって います。 表 3 : しきたり重視か、個人で判断か(jeds96 調査) 回答(%) 都市規模 しきたり重視 個人で判断 13 大都市 38.8 61.2 20 万人以上 30.9 69.1 10 万人以上 36.7 53.3 その他の市 39.3 60.7 町村 47.6 52.4 次に、この 2 つ目の質問項目での回答と投票参加との関係ですが、 それに関しては表4をごらんください。個人の判断を重視する見解 よりも、共同体のしきたりを重視する A の見解に近いとした回答者 のほうが、幾分投票参加の確率は高くなっています。 表 4 :質問項目 2 の回答と投票参加(jeds96 調査) 投票参加(%) 回答 した しなかった しきたり重視 86.3 13.7 個人で判断 85.2 14.8 池田:先ほどの質問項目①の場合と比べて、分析結果が異なってい ますね。ここから何がよみとれるのでしょう。 西辻:そうですね、2点指摘できると思います)。まず第 1 には、 都市規模が小さいところで、個人の判断よりも共同体のしきたりを 重視する傾向がみられました。さらに第 2 には、しきたりを重視す る回答者の投票率が高くなる傾向にありました。
この 2 つのことから私たちは、「個人の判断よりもしきたりを重視 する」という要素が、農村部における投票率の高さにある程度寄与 しているものと判断しました。 池田:そうですか。それでは、仮説2の検証について総括をお願い します。 西辻:はい。私たちは、以上のように世論調査データの分析結果に 基づいて、仮説2を検討しました。 先ほど述べましたように、この仮説を検証するために、二つの観点 からのアプローチを試みました。つまり、「共同体の有力者への依 存度」という尺度と「共同体のしきたりの重視」という尺度です。 そして、この後者、つまり共同体のしきたりの重視に関する質問項 目を用いた分析から、仮説の妥当性を示す結果を得ることが出来ま した。 池田:この「しきたりの重視」という意識が、都市規模の小さい地 域において高く、さらに、この意識の高さが投票参加と正の連関関 係を持っていることが確認できた、ということですね。 西辻:はい。そういうことになります。 池田:ということは西辻さん、この第2の分析から仮説2が検証で きたと考えてよいのですね。 西辻:いえ。そう結論付けることは出来ません。今回は、「しきた りの重視」という、たった 1 つの尺度からしか分析を行っていませ んから、これだけでは検証が出来たとはいえません。仮説の検証の ためには、より多くの尺度を採って分析結果を集積してゆくことが 必要です。 いずれにせよ私たちは、今回の作業によって 1 つの議論の出発点を 提供することができたと、確信しています。
4.結論
池田:それでは西辻さん、以上、2 つの仮説についての検討結果を 踏まえて、今回の研究の結論をお願いします。 西辻:はい。まずは仮説についての検討結果をもう 1 度振り返って みます。 お伝えしてきたとおり、私たちは「なぜ都市部と農村部の投票率に 差が認められるのか」、すなわち「なぜ農村部は都市部よりも投票 率が高いのか」、調査しました。調査にあたっては「仮説を設けて、 それを検討する」という方式を採りました。 池田:今回、仮説は 2 つあって、どちらの検討においても「世論調 査データの分析」というアプローチがされていましたね。 西辻:はい。今回検討した仮説は、今おっしゃったとおり 2 つあり ました。仮説 1 は、都市部と農村部の間の情報格差に注目したもの で、仮説 2 は、都市部と農村部の間の共同体意識の違いに注目した ものでした。 さらに、これら仮説の検証にあたっては、衆議院議員総選挙前後の 世論調査データの、統計的な分析を行いました。 池田:そしてその結果、2 つの仮説いずれについて、一定の妥当性 が確認されましたね。 西辻:はい。 池田:まず仮説 1 ですが、こちらの仮説は 3 つの部分から成り立っ ていましたね。 西辻:ええ、こちらの図に示されているとおりです。「農村部の有 権者達は、地元議員の情報を多く得ており」、「それが政治に対する 強い期待を生み」、「そうした強い期待から、投票率が高くなる」と いうものです。池田:他方、仮説 2 についてですが、こちらは共同作業および共同 決定への志向と、投票率との関係を提起したものでしたね。 西辻:その通りです。「しきたりの重視」という指標を使うことで、 この仮説の妥当性を見出すことができました。 池田:しかし、以上の検討においては若干の問題点もありましたね。 西辻:はい確かに、複数の問題点が指摘できました。 まず仮説 1 については 2 点。第 1 には、用いたデータのサンプル数 が少なかったことと、第 2 には、データの年代が複数にまたがって いたことです。 次に、仮説 2 については、仮説の妥当性が認められたのが「しきた りの重視」という、たった 1 つの尺度においてのみだった、という 点が挙げられます。 池田:それでは、以上のような分析結果から最終的な総括をおねが いします。 西辻:はい。今回我々は、都市規模と投票率との間になぜ一定の関 係が成立するかを検証しようとしました。そしてその理由として、 第 1 に情報格差、第 2 に共同体意識の違いというものを提起し、分 析を行いました。そして結果、一定の妥当性ありとの結論を下しま した。しかしこの分析は、先ほど述べたようにまだ十分なものでは ありませんので、今後もさらなる検討作業が必要です。また、今回 取り上げたもの以外の理由や要素についても、考える必要がありま す。 池田:なるほど、ところで西辻さん、今回こうした調査を行ったき っかけというものは、いったい何だったのでしょう?冒頭でもお聞 きしましたが、もう一度お答えください。 西辻:それは一言で言うと、投票率の低下に対する問題意識です。
我々は常に、このことを念頭において調査を行ってきました。 池田:では西辻さん、今回の調査結果から、投票率低下という問題 に対してどのような提言ができるでしょうか。 西辻:はい。まず、都市規模が小さいほど投票率が高い、という事 実が存在しますがしかし、だからといって、例えば都市を農村に変 えてしまえば問題が解決するのかといえば、そんな無茶なことはあ り得ないわけです。 池田:そうですね。仮に、都市部の投票率を農村部並みに高める、 という発想をとるのであれば、今回のような研究で導き出された調 査結果を参考にして、何らかの対策を講じることが現実的ですね。 西辻:まさにその通りです。例えば、今回の仮説1において、候補 者についての情報量という要素が指摘されました。ならば、この結 果を利用して投票率低下に対する何らかの対策を打てばよいので す。 池田:なるほど。 西辻:しかし、これは非常に重要なことなのですが、投票の「量」 的側面のみならず、「質」的側面にも注目することが必要です。例 えば・・・実は、今回、検証することはできませんでしたが、日本 の農村部における投票率の高さの背景には「動員」のメカニズムが 働いている、との解釈があります。 池田:動員、ですか。 西辻:はい。つまり、農村部の方が有力者からの投票の働きかけが 強いために、投票率も高いのではないか、との見方です。 池田:そうした投票のはたらきかけというものが、必ずしも健全な 民主主義のルールに背くとは限りませんよね。
西辻:ええ。ところが、農村における動員メカニズムについての見 解では、むしろ強制的な動員が想定されていることが多いようです。 池田:そうですか。とすると、「投票さえ行われればそれでよい、 というわけではない」ということもいえそうですね。 西辻:はい。しかし先ほど申し上げたとおり、私たちは今回こうし た動員のメカニズムについての分析を試みることはできませんで した。私たちはこうした点についても、これから研究を続けてゆき たいと考えています。 池田:わかりました。西辻さん、本日はどうも、ありがとうござい ました。 西辻:ありがとうございました。 池田:ここまで西辻健一郎さんの解説で、「なぜ農村部の方が都市 部よりも投票率が高いのか」というテーマでお送りしてまいりまし た。 この報告が、みなさん 1 人 1 人が投票参加について考えるひとつの きっかけとなれば、幸いに思います。 ここまでご覧いただいたみなさん、どうもありがとうございました。 注 (1) グラフ「衆院総選挙投票率の推移」は、明るい選挙推進協会ホー ム ペ ー ジ の 「 衆 議 院 議 員 総 選 挙 に お け る 総 選 挙 の 推 移 」 (http://www.akaruisenkyo.or.jp/tohyo/t_01.html)に第 42 回総 選挙の数値を追加して加工したものである。 第 42 回総選挙の投票率については、総務省のホームページ「選挙 制度改革」の「第 43 回衆議院議員選挙結果(15.11.9 執行)(PDF)」 〈http://www.soumu.go.jp/senkyo/index.html)を参考にした。 (2)グラフ「市区・町村別 総選挙投票率の推移」は、蒲島郁夫『政治 参加』東京大学出版会、1988 年、138 ページ図 7‐1 を加工したも
のである。 (3)jeds96(「衆議院選挙に関する世論調査」)データは、調査者の 1人である同志社大学法学部西澤由隆教授より提供を受けた。 (4)JSS-GLOPE(「開かれた社会に関する意識調査」)データは、調査 者の 1 人である同志社大学法学部西澤由隆教授より提供を受け た。
誰がターゲットなのか?
−ネガティブ・アドの効果−
清水佐恵子
Ⅰ.はじめに
アメリカ大統領選挙では莫大な資金が集められ、それらの多く はキャンペーン、特にテレビコマーシャル(以下テレビ CM)の製 作と放送に費やされる。その中でも、最近利用が目立つのは「ネ ガティブ・アド(Negative-Ad)」である。1 ネガティブ・アドと は、自分に対立する候補を批判・中傷する内容の広告のことであ る。これは、どのような視聴者にどのような影響を及ぼしている のだろうか。 本稿の目的は、「選挙におけるテレビ CM の利用がどのような視 聴者にどのような効果を与えるのか」を明らかにすることである。 より具体的には、1) 最近、その利用が多くなっているネガティ ブ・アドについて、それが期待しているとおりの効果が実際にあ るのか。そして、2) 仮にあるとしても、(おしなべてすべての有 権者に対して同じ効果があるとは考えられないので、)どのような タイプの視聴者に対して、その効果がより強く認められるのかの 2 点について検討したい。まず、前者を検討するために「ネガティ ブ・アドは、視聴者の候補者に対する好意度を降下させる」とい う命題を検証する。そして、後者を検討するために「政治的リー ダーを、その政策や能力ではなく、その「イメージ」で評価する 傾向の強い視聴者に対しては、ネガティブ・アドはより効果的で ある」・「政治関心の程度の高い視聴者より、政治関心の程度の低 い視聴者に対して、ネガティブ・アドはより効果的である」とい2
う命題を検証する。検証のためのデータは、2004 年大統領選挙で 実際に使われたテレビ CM を用いた実験によって得られたものを使 用する。 次節以下、次の順に議論を進めていく。まず 2 節でアメリカ大 統領選挙におけるメディアの利用と政治広告について説明し、3 節 で命題と仮説を提示する。そして、4 節で仮説検証のための実験の 内容と手順を説明し、5 節で実験結果の分析を行う。そして、6 節 で考察を行う。
Ⅱ.メディア重視の選挙-アメリカ大統領選挙における政治広告-
冒頭でも述べた通り、アメリカ大統領選挙では支援集会やイン ターネットを通じた寄付で莫大な資金が集められ、それらの多く はテレビ CM の製作・放映に費やされる。2004 年選挙では 2004 年 4 月 1 日から 9 月 30 日までに、ブッシュ・ケリー両候補合わせて 約 2 億 5580 万ドルがテレビ CM に充てられた。2 両候補の選挙資 金の総額が 6 億 9000 万ドルで、統計の期間に差があることを考慮 すると、資金のおよそ半分がテレビ CM の製作・放映に充てられた といえる。3 今日のアメリカ大統領選挙において、テレビ CM が キャンペーンの中で重要な位置を占めているのだ。4 さて、キャンペーン中に有権者が目にする政治広告には様々な スタイルがあり、様々な視点から分類することが可能だが、今回 はポジティブ・アドとネガティブ・アドという分類にしたがって 議論を進めていく。今回、仮説とした「イメージ評価の傾向・政 治関心の程度」と政治広告の関係を考えるのに、それが有用な指 標となるからである。 それぞれの特徴を簡潔に整理するとすれば、次のようになる。 ポジティブ・アドとは、候補者の長所を訴える広告のことで、実 績の強調・自身の資質の強調といった内容について、候補者自身 の語りかけや市民・有名人が候補者を語るというスタイルで構成 されるのが一般的である。ネガティブ・アドは、対立する候補者 を攻撃する内容である。 ネガティブ・アドはテレビ広告時代の初期から放映されていた が、攻撃した側の候補者の支持率をも下げることになるとあまり 利用が増えなかった。しかし、1980 年代になると攻撃した側の候補者の支持率をそれほど下げず、攻撃された側の候補者の支持率 を下げるという効果を政治コンサルタントが発見したことで、ネ ガティブ・アドの利用が発展してきた(飽戸 1994, p.250)。今年 の選挙をみてみると、ケリー候補はテレビ CM の約 50%が、ブッ シュ候補は約 60%がネガティブ・アドであった。5 ネガティブ・ アドがいかに多く使われているかを示す事実である。
Ⅲ.命題と仮説−ネガティブ・アドの効果−
これほどの資金が費やされているテレビ CM、特にネガティブ・ アドはどのような視聴者にどのような影響を与えるのだろうか。 命題の提示の前に、ネガティブ・アドと態度変化に関する研究の 先例として、ギャラモーン(1984)の研究を紹介する。ギャラモー ンの研究結果は以下の 2 点である。1 点目は、①攻撃した候補者を 支持/不支持②教育の程度③年齢④選挙への関与という要因によっ て、ネガティブ・アドの影響を受ける程度が違うということである。 2 点目は、どの候補者に投票するか決めておらず、かつ、教育程度 が高く、かつ、選挙への関与が強い人については、攻撃された候補 に対する好意度を下げるということである。 今回は前節で挙げた命題を検証するために①「ネガティブ・アド は、攻撃された候補者に対する好意度を降下させる」、特に②「政 治的リーダーを「イメージ」で評価する傾向の強い視聴者の好意度 を降下させる」、そして③「政治関心の程度の低い視聴者の好意度 を降下させる」という 3 つの仮説を立てる。 以下、便宜上、ネガティブ・アドを製作した候補者、つまり攻撃 をした候補者のことを「発信者」、攻撃された側の候補者のことを 「対立候補」と呼ぶこととする。 まず命題①では、ネガティブ・アドに期待される効果、つまり、 視聴者の対立候補への好意度を降下させるという効果があるのか を確認する。ネガティブ・アドを見ていない人より、見た人の方が 対立候補に対する好意度が下がるということが分かれば、その効果 は確認できる。 次に命題②について説明する。「イメージ評価をする傾向の強い人」とは、「政策・争点重視の人」と対照に位置する人である。こ の「政策・争点重視の人」たちは、自らの政策・争点立場を認知し、 候補者の政策・争点立場を認知するため情報収集を行い、それらを 判断するという労力と時間をかけている。このような人々は 15∼ 60 秒の CM という少ない情報量で大きな態度変化が起こるとは考え にくい。一方、「イメージ評価に依存する」の場合、十分な情報を 持ち合わせない人でも簡単にイメージを作り上げることができる ので、それほど労力・時間・知識などがかからない。そのような人 は、ネガティブ・アドを見ることによって手に入る少ない情報だけ でも、簡単に判断を変えるということが考えられるのではないだろ か。 ウィーバーらが行った調査の中で、ある回答者が次のように回答 している(ウィーバー 1998, p.32)。 「だれも争点なんか気にしちゃいない。ほんとに問題なのは、 どんなやつが国を動かすのか、そいつは事が起こったとき、う まくやってくれるかってことさ。公約じゃなくて、そこにいる 人間を信じるんだ。誠実さとかさ、行動力とか、資質とか。そ れこそが、みんなにとっての本当の争点なのさ」 この調査はどのようなメディアにどの程度接触し、何を覚えていた かを聞き取り調査したものである。この調査においても、被験者た ちは争点に関する内容より、候補者に対するイメージに関する内容 の方をよく想起したことが指摘されている(ウィーバー 1988, p.32)。 以上より、ネガティブ・アドの視聴前後の対立候補への態度変化 を見たときに、「政策評価の傾向」の大きい視聴者より、「イメージ 評価の傾向」の大きい視聴者の方が変化の程度が大きければ、この 命題は証明される。 また、「政治関心の程度」とネガティブ・キャンペーンの効果の 間にも関係が見られるのではないだろうかと考えたのが、命題③で ある。政治関心の高い人はそれなりに知識を持ち合わせ、それで判 断しようとするだろう。しかし、政治関心の低い人は概して政治に 関する知識を持っておらず、持とうとする気持ちもあまりないと考 えられる。それゆえに、テレビ CM のような、分かりやすい情報か
らの影響を大きく受けるのではないかと考える。対立候補への態度 変化をネガティブ・アドの視聴前後で比べたとき、政治関心の程度 の高い人より、低い人の方が変化の程度が大きければ、この命題は 証明される。 以上3つの仮説を図示すると図1のようになる。 図 1.ネガティブ・アドの効果についての仮説モデル図 ネガティブ・アド ① 態度変化 ②イメージ評価の傾向 ③政治関心の程度
Ⅳ.実験の内容と手順
前節で提示した仮説を検証するための実験の内容と手順を説明 する。 実験の内容は、被験者に 2004 年アメリカ大統領選挙で実際に使 われたテレビ CM を視聴してもらい、質問票の好意度の変化から、 視聴前後の態度変化を測定するというものである。 テレビ CM は全てケリー候補の公式サイトからダウンロードした もので、ポジティブな内容のテレビ CM(以下 P-AD)はケリー候補 をプラス評価するもの、ネガティブな内容のテレビ CM(以下 N-AD) はブッシュ候補をマイナス評価するものであった。なお、被験者 に見てもらった CM は英語でしか用意できなかったので、英語のス クリプトとそれを日本語に訳したものを配布した。6 つまり、今 回の実験で被験者に直接刺激を与えたものは2つ、映像による視 覚的情報とスクリプトによる内容である。 質問票の内容だが、事前調査では以下の 4 つの項目について質 問した。それは 1)イメージ重視か政策重視か、2)政治関心の程 度、3)それぞれの候補者の政策立場に対する認知、4)それぞれ の候補者への態度である。事後調査では、以上のうち 3)4)のみ を質問した。 実験の手続きは以下のとおりである。被験者は、同志社大学学 生 310 人であった。講義を担当されている先生方に了解を得て、授業時間の一部に実験を実施した。7 まず、被験者には、「政治的リーダーシップについての調査」と いう名目で事前質問票に回答してもらった。その後、昼休み直前 のクラスの場合は、そのクラスの終了の時点に事前調査を行い、 昼休み終了後にテレビ CM の視聴と事後調査を実施し、通常の授業 では、授業最初に事前調査を行い、そして 1 時間半ほど時間を置 き、テレビ CM の視聴と事後調査を実施した。テレビ CM を見ても らう前に「アメリカ大統領選挙のテレビ CM を見てもらう」と説明 してから実験に入った。 テレビ CM の内容は、グループ 1(統制群)には P-AD を 2 種類、 グループ 2(実験群)には統制群と同じ P-AD を 2 種類と N-AD を 1 種類の計 3 種類を見てもらった。その順番は P-AD①→P-AD②→N-AD ①(N-AD①は実験群のみ)であった。テレビ CM を視聴する前に、 30 秒∼1 分 30 秒の時間をとり、P-AD①のスクリプトを読んでもら い、その後 1 番目の CM を見てもらった。刺激がきちんと与えられ るよう、スクリプトはまず日本語を読むように依頼した。スクリ プト→テレビ CM という流れを 2 回(グループ 2 は 3 回)繰り返し た後に、事後質問票に回答してもらった。 グループ 1 には P-AD を 2 種類、グループ 2 にはそれらに加えて N-AD を 1 種類見せているので、もしも両者の態度変化(好意度の 変化)の程度に差があれば、それはこの刺激の差、即ち N-AD の効 果といえる。
Ⅴ.実験結果の分析
ⅰ.変数の作業定義 各変数の作業定義はつぎのとおり。 1.好意度変化(従属変数・200 点尺度) 事前・事後調査の各候補者に対する感情温度を、好意度の指標 として、その変化をみた。感情温度とは、対象への気持ちを温度 にたとえたもので、最も温かい場合を 100 度、最も冷たい場合を 0 度、温かくも冷たくもない中立の場合を 50 度として回答を求めた。 「温度変化」は、「視聴後の感情温度」−「視聴前の感情温度」で 求めた。よって、温度変化がマイナスであることで「好意度降下」を表している。 2.「ネガティブな内容のテレビ CM 視聴」の有無(独立変数) N-AD を見た被験者には有=1 を、見ていない被験者には無=0 のダ ミー変数を用意した。 3.「イメージ」評価の程度(媒介変数 1・12 点尺度) 事前調査で「政治的なリーダーを評価するときに大切だと思う ものを上位3つ」回答してもらい、順位ごとにポイントをつけた。 (1 位=3 点、2 位=2 点、3 位=1 点、他=0 点)。選択肢は、「イメー ジ評価」に関するものと「政策評価」に関するものが互いに排他 的になるように用意した。 イメージ的項目(人柄・外見的な魅力・信頼性・力強さ・正直 さ)に順位がつけられた場合はプラスの、政策・争点立場的項目 (経歴・実行力・判断力・政策立場・所属政党)に順位がつけら れた場合はマイナスのポイントとして合計した。例えば、「1 位= 人柄・2 位=経歴・3 位所属政党」の場合、3−2−1=0 となり、「イ メージ」評価の程度は 0 ということになる。 4. 政治関心の程度(媒介変数 2・10 点尺度) 事前調査で 6 つの選択肢(政治に関すること・スポーツ/芸能の こと・趣味のこと・社会に関すること・授業/勉強に関すること・ 最近身の周りで起こったこと)の中から「あなたが日頃よく話題 にすることを上位3つ」回答してもらい、順位ごとにポイントを つけた。(1 位=3 点、2 位=2 点、3 位=1 点、他=0 点)。「政治」「社 会」はプラスのポイント、その他の選択肢はマイナスのポイント として合計した。例えば、「1 位=政治・2 位=社会・3 位スポーツ /芸能」の場合、3+2-1=4 となり、政治関心の程度は 4 ということになる。 5.インターアクションターム インターアクションタームとは、交互効果を表す変数である。 これは、2つの条件がそろったときに、期待される効果がより強 く現れるかを見るときに有効な変数となる。なぜならば、どちら
か一方からの影響を受けない場合、変数値は全て「0」となり、両 方から受ける場合のみ「1」となるからである。 「イメージ評価の程度(マイナス=0、プラス=1)」と「N-AD の有無(無し=0、有り=1)」をかけ合せたもの・「政治関心の程度 (マイナス=0、プラス=1)」と「N-AD の有無(無し=0、有り=1)」 をかけ合わせたものそれぞれをインターアクションタームとして 用いる。今回の仮説では、「N-AD を視聴し、かつ、イメージ評価の 程度が高い人」にのみ変数値「1」が与えられ、彼らの好意度降 下の程度が、彼ら以外の被験者より大きければ、N-AD と「イメー ジ評価」の2つが関連をもち、かつ、好意度の変化により強い影 響を与えるということが分かる。 ⅱ.仮説の検証 ①N-AD の態度変化に与える影響、②「イメージ」評価の傾向の 程度と N-AD による態度変化の関係、③政治関心程度と N-AD によ る態度変化の関係という順で検証する。 まず、N-AD の有無が態度変化に与える影響を度数分布で表すと、 表1のような結果となった。 表1.態度変化と N-AD の有無の関係 ブッシュに対する態度変化 ケリーに対する態度変化 N-ADの有無 N-ADの有無 態度変化 なし あり 態度変化 なし あり マイナス 10.5 25.0 マイナス 5.3 9.8 変化なし 84.2 68.9 変化なし 59.6 49.2 プラス 5.4 6.1 プラス 35.1 41.0 % 100 100 % 100 100 N 57 132 N 67 132 この表から 3 つのことが確認できる。 1.N-AD の有無・候補者の違いに関わらず、変化なし が最も多い。 2.実験群の方が、統制群に比べて 15%変化した人が多いが、その大 部分(14%)がマイナスの方向に働いている。つまり、N-AD を見 ていない人より見た人の方が、ブッシュに対する好意度が下がっ ている割合が多い。これより、N-AD は攻撃された側に対する好意 度を下げることに強く影響しているということが言える。
3.P-AD と N-AD の両方を見て、ケリーに対する感情温度に変化があ った人は 50%で、P-AD しかみていない人のそれ(40%)より、 10%多い。しかし、その 10%の人はプラス・マイナスにほぼ半数 ずつ変化しているので、N-AD が攻撃側に対する好意度上昇・降下 のどちらかに偏っていない。 また、T 検定で統計的危険率を検証したところ、表 2 のようになっ た。 ブッシュに対する温度変化に影響していることは統計的に有意 と言ってよいだろう。対ケリーついては、危険率が高いので統計 的に有意だとはいえない。 表 2.T 検定による統計的危険率の検討
温 度 変 化 の 平 均 値 (度
対 ブ ッ シ ュ
対 ケ リ ー
ネ ガ テ ィ ブ ア ド 無 し
-1.11
4.68
ネ ガ テ ィ ブ ア ド 有 り
-3.42
4.15
t値
1.701
0.338
危 険 率 (% )
9.1
73.5
次に命題②を確認する目的で回帰分析をおこなった。本稿では 「イメージ評価の傾向が大きい」視聴者がネガティブ・アドの影 響をより強く受けるという仮説を立てたので、①N-AD の有無、② 「イメージ評価の傾向」③「N-AD の有無×イメージ評価の傾向」 のインターアクションタームの 3 つを変数として投入した。なお、 先の T 検定で有意と考えられる、ブッシュに対する温度変化のみ を従属変数としたため、結果の式は 1 つで、yはブッシュに対す る温度変化の程度を示す。結果は式 1 のようになった(変数名下 は危険率)。 式1. イメージ評価の傾向が態度変化に及ぼす影響 8 y=−0.521−2.314×N-AD の有無−0.251×イメージ評価の傾向−0.117×IT (23.5%) (70.4%) (96.0%) インターアクションタームの部分がマイナス、つまり「N-AD を 見て、かつ、イメージ評価の傾向が強い」人の好意度が降下する予想だったが、この結果からはその効果は確認されなかった。 同様に命題③を確認した。変数は、①N-AD の有無、②「政治関 心の程度」③「N-AD の有無×政治関心の程度」のインターアクシ ョンタームの 3 つである。こちらも命題②と同じ理由で、ブッシ ュに対する温度変化のみを従属変数とした。結果の回帰式を式 2 に示す(変数名の下は危険率)。 式2. 政治関心の程度が態度変化に及ぼす影響 y=−1.063−2.452×N-AD の有無−0.149×政治関心の程度+2.915×IT (10.5%) (92.4%) (55.4%) こちらも、インターアクションタームの部分がマイナス、つま り「N-AD を見て、かつ、政治関心の低い」人の好意度が降下する 予想だったが、この結果からはその効果は確認されなかった
Ⅵ.考察
以上の結果から、先に挙げた仮説①は確認され、②と③は確認さ れなかった。つまり、ネガティブ・アドは相手に対する好意度を下 げるが、「イメージ評価の傾向」と「政治関心度」は、その降下の 程度に影響を及ぼす原因であるとは必ずしも言えないというのが、 今回の実験から得られた結論である。 しかしながら、ネガティブ・アド視聴者全員にではなく、一部の 視聴者のみについて好意度降下が見られたのだから、そこには何か しらの原因があると考えられる。今後も引き継がれるべき研究課題 である。 今回の実験で結果に影響を及ぼしたと考えられる問題点を 2 つ 指摘する。 1 つ目は、刺激の与え方である。英語でしか CM が用意できなか ったため、テレビ CM から目からの情報は得られたであろうが、耳 からの情報は得にくくかった。さらに、テレビ CM そのものからで はなくスクリプトから、内容的な刺激を得ることになったというこ とである。2 つ目は、質問表の設計である。過去に行われた同様の実験の質 問票や今回の実験で刺激として与えたテレビ CM を見ながら、適切 な選択肢を用意したつもりではあるが、ここも改良の余地があるだ ろう。例えば、「イメージ評価」か「政策評価」の質問を選択方式 ではなく、自由回答方式(被験者自身が思いつく言葉で回答しても らう)に変えることで、より被験者の重視するものが明確になると 考える。 最後に今後のネガティブ・アドについて考えてみたい。アメリカ では最初に見たとおり、これからも増加傾向にあると考えられる。 日本ではどうだろうか。公職選挙法の関係でアメリカ大統領選のよ うに多額の費用はかけられないものの、ネガティブ・アドは何度か 選挙時に使われている。1996 年 10 月の総選挙から明示的なネガテ ィブ・キャンペーンが行われるようになり(池田 2004, p. 43)、 2004 年 7 月に行われた参議院選挙でも、自民党が民主党に対する ネガティブ・アドを新聞(全国紙)の全面広告として掲載したこと は、今後、日本においてもネガティブ・キャンペーンがより盛んに なる可能性があることを示唆するものだと私は考える。9
謝辞
今回の研究にはデータ収集のための実験が不可欠であった。実験 実施を快諾してくださった東良彰先生(マクロ経済学)、池田太臣 先生(社会学概論)、そして回答に協力してくださった受講生の皆 さんに感謝を申し上げたい。 1 これの反対は「ポジティブ・アド(Positive-Ad)」である。説明 は後述。2 a TNS Media Intelligence/CMR company 編,2004 年
http://www.tnsmi-cmag.com/ 2004 年 10 月 30 日参照 3 TRKCINC 編,2004 年 http://www.tray.com/cgi-win/pml1_sql_efview.exe?DoFn=C00383 6532004&server=PML2 2004 年 12 月 14 日参照。なお、CM にかか った費用は2004 年 4 月から 9 月の合計、選挙資金総額は 2004 年 1 月から 11 月である。 4 その具体例として、民主党予備選挙中のネガティブ・キャンペー ンに対する、ブッシュの反撃キャンペーンが挙げられる。日経新聞 2004 年 3 月 6 日 5 CM の総数・種類は以下のウェブサイトに掲載されていたものを
集計・分類した。Cable News Network 編,2004 年
http://www.cnn.com/ELECTION/2004/special/president/campaign .ads/ 2004 年 11 月 3 日参照 6 スクリプトの一部・CM の一部を資料として添付しているのでご参 照いただきたい。なお CM は以下のウェブサイトから入手した。 Kerry-Edword2004Inc 編,2004 年,http://www.johnkerry.com/ 2004 年 10 月 7 日参照。また、使用可能なテレビ CM の都合上、 候補者は共和党・G.W ブッシュ候補、民主党・J.ケリー候補の 2 人に限定した。 7 調査対象:同志社大学 2004 年度秋学期開講クラス 「マクロ経 済学-2」受講生 100 人(統制群)・「社会学概論-2」受講生 210 人(実験群)。なお実験は2004 年 10 月 28 日に行った。 8 スペースの都合上、回帰式の中ではインターアクションタームを 「IT」と表記する。 9 この自民党の全面広告は、日経新聞の場合、2004 年 7 月 7 日に 掲載された。 《参考引用文献リスト》
Garramone,C.M 1984. Voter response to negative political Ad. Journalism Quaterly 61, 250−259 飽戸弘,1994. 『政治行動の社会心理学』福村出版 飽戸弘,1989. 『メディア政治時代の選挙』筑摩書店 池田謙一編,2001 年. 『政治行動の社会心理学』北大路書房 D.ウィーバー,1988 『マスコミが世論を決める―大統領選挙とメデ ィアの議題設定機能―』勁草書房
資料:テレビCM・スクリプトの内容(一部抜粋) P-AD①Ingenuity より 「仕事を生み出すために、私たちは、 小企業を支援しなければなりません。 そのじゃまをするなんてもってのほか です。(中略)壮大な計画、より強いア メリカのために・・・」 P-AD②Lifetime より 「(前略)奉仕と力強さに満ち溢れた半 生、大統領にふさわしい、ジョン・ケ リー・・・」 N-AD①Right track より 「(前略)ジョージ・ブッシュには、イ ラクの混迷から抜け出す計画がありま せん。ジョン・ケリーにはあります。」
保革イデオロギーと
投票行動
三浦正裕
1.はじめに
1990 年代における社会主義・共産主義の崩壊によって、保革イ デオロギーは消滅した、もしくはこれから消滅するであろうといっ た議論がある。「イデオロギーの終焉論」は 1950 年代から存在し ており、そして今、まさに「保守‐革新」という対立軸が失われよ うとしていると様々な議論で論述されている。日本においても、 1993 年 7 月に非自民8党派の連立政権が発足し、1994 年 6 月 29 日には自社さ連立政権という、それまでイデオロギー的な距離にお いて遠く離れた自民党と社会党の連立という事態が生じた。こうし た時代の流れの中で、保革イデオロギーは失われていったと言われ ている。 しかしながら、その一方で、現在も様々な論文の中で、政党や有 権者が「保守系‐革新系」という対立軸で捉えられているのも事実 である。それらのなかには、例えば加藤・レイヴァーによる政治専 門家調査がある。i この専門家調査を用いて著者らは左‐右イデオ ロギー軸上の各政党の位置付けを表1−1 のとおり行っている(加 藤・レイヴァー 2003, 132)。このように、政治学の専門家が政 党をいまだに左‐右のイデオロギー軸に当てはめて捉え得るのな らば、一般有権者においても左‐右のイデオロギー対立軸は投票に3
おける指標として有効ではないかという疑問が生じた。というのは、 そうした保革イデオロギーというのが、長い間、日本における有権 者にとって投票における意思決定の非常に安価な指標であったか らである。 表1−1.専門家調査による 1996 年及び 2000 年における各政党の保革位置 自民 新進 民主 共産 社民 公明 自由 1996年 15.35 16.15 9.28 2.75 7.25 2000年 15.08 9.53 2.98 5.24 11.91 16.89 *最も左翼的な立場=1;最も右翼的な立場=20 そこで、本稿では、まず2 節で先述の疑問を晴らすべく、一般有 権者において保革イデオロギーがどれほど有効であるかについて 検証していく。そして3 節ではもしそれが有効であるならば、なぜ 有権者自己認識レベルで「中道化」が生じているのか、という点に ついて考える。そして、4 節では本稿の内容に振り返り、総括をし たいと思う。
2.保革イデオロギーの有効性
2−1.保革イデオロギー まず保革イデオロギーについて説明をする。政治イデオロギーは 「国家、階級、政党そのほかの社会集団が国際ないし国内政治にた いしていだく表象、願望、確信、展望、幻想などの諸観念の複合体」 とされている(中村・丸山・辻 1954)。その定義に従って、本稿 では、社会集団が各々の政治的立場をより明確にするために用いら れる集団の信念といったものとして捉える。 こうしたイデオロギーの中で、「①政党や候補者をこの対立軸に 沿って位置づけることが比較的容易であり、②支持なし層を含めて自分自身の立場も比較的明確である場合が多く、さらに、③さまざ まな争点対立を統合する軸として政策評価の影響を部分的に吸収 し、④感情的な反応も引き起こしやすい」といった点から重要な役 割を果たしてきたものとして保革イデオロギーがある(平野ほか 2001, 182)。保革とは「保守‐革新」のことであり、現代日本に おいて通常、保守は右翼もしくは反動的とされ、革新は左翼や社会 主義もしくはそれに近い概念として捉えられている(蒲島・竹中 1996, 31)。この保革イデオロギーは有権者にとって情報処理の 負担が小さな意思決定を可能とする投票の指針となりやすかった。 さて、本稿で保革自己認識を作業上扱うために用いる保革自己イ メージについてここで説明をしておく。世論調査では、一般的に、 被調査者に対して「あなたご自身を保守系支持者と思われますか、 革新系支持者と思われますか」といった質問をして、保守―革新の 尺度上に自己位置づけをしてもらう。その結果として出てきた一次 元尺度の保守―革新次元を、三宅は保革自己イメージと名付けてい る(三宅 1985, 203)。本稿で保革イデオロギーを考える際には、 この保革自己イメージを用いる。 2−2.保革イデオロギーと政党支持 それでは、有権者において保革イデオロギーは指標としてどのぐ らいの有効性を保持しているのかという疑問点について実際に検 証する。より具体的には、次の2つの検討をする。1)保革イデオ ロギーと政党支持の関係と、2)保革イデオロギーと実際の投票政 党の関係である。ii なお、本稿では一貫して、明るい選挙推進協会(以下、明推協) の選挙後調査データを用いる。それは、「保革自己イメージ」の変 化を時系列的に見る事が出来るためである。そのうち、ここでは、 1996 年衆議院選挙・1998 年参議院選挙・2000 年衆議 院選挙・
2001 年参議院選挙の四選挙後の調査データを使用した。 保革イデオロギーと政党支持についてクロス集計を行ったもの が表2−1 になる。表の数字は「革新・やや革新・中間・やや保守・ 保守」といった五つの自己イデオロギー尺度に基づいたグローブご との各政党支持の割合(%)である。例えば1996 年衆議院選挙の ものを見れば、イデオロギー尺度が「革新」に人のうち 26%が新 進党、6%が自民党、20%が共産党を支持しているということに なる。 表2−1.イデオロギーと政党支持(%) 1996 年衆議院選挙 1998 年参議院選挙 革新 やや革新 中間 やや保守 保守 革新 やや革新 中間 やや保守 保守 新進 26 17 14 13 7 自由 0 3 0 2 1 自民 6 11 28 56 80 自民 4 8 21 57 71 民主 6 7 4 5 1 公明 5 7 7 2 0 社民 19 14 4 3 1 民主 5 20 11 7 6 共産 20 10 3 1 0 社民 14 11 4 2 2 その他 2 1 2 2 2 共産 40 11 2 1 1 支持なし 22 40 46 21 8 その他 5 1 2 0 0 N(人数) 65 234 702 431 300 支持なし 28 40 53 29 19 N(人数) 81 304 742 417 238 (小数点第1 位で四捨五入しているので、100%にならない箇所がある。以下同様) 2000 年衆議院選挙 2001 年参議院選挙 革新 やや革新 中間 やや保守 保守 革新 やや革新 中間 やや保守 保守 自由 2 7 3 4 2 自由 3 2 2 5 1 自民 2 9 21 48 86 自民 13 20 28 57 81 公明 2 2 6 4 2 公明 5 4 10 5 2 民主 21 26 17 15 2 民主 21 17 10 6 1 社民 15 9 4 2 1 社民 6 10 3 1 1 共産 32 9 2 1 0 共産 21 6 3 0 0 その他 1 0 0 0 0 その他 0 2 1 1 1 支持なし 24 39 46 26 8 支持なし 31 39 43 26 12 N(人数) 91 294 676 485 326 N(人数) 67 268 717 432 296 まず、1996 年の場合を見てみると、「革新」系の人は第1に新進 党を支持し、第2に共産党を支持し、第3に社民党を支持している。 また「やや革新」系においては社民党と共産党を合計して 24%の
支持を得ている。結局のところ革新政党とされる、共産党と社民党 の「革新」「やや革新」系における支持は約4 分の1から約 3 分の 1である。それに対し、「保守」系では80%もの割合で自民党が支 持を得ており、「やや保守」系でも過半数で支持を得ている。つま り「保守」系における自民党支持は「革新」系における社民党・共 産党支持に比べて相関が非常に強いと言える。この傾向は98・00・ 01 年における結果を見ても明らかである。 しかし、表2−1 をそれぞれ横に見てみると、自民党においては 「革新」から「保守」まで直線的に政党支持が伸びており、明瞭な 相関関係が窺える。また、社民党と共産党のいずれにおいても、「革 新」から「保守」まで直線的に政党支持が減少している。つまり相 関関係を捉える事ができるのである。つまり拘束力の強弱こそ存在 するものの、「保守」と自民党支持、「革新」と社民党または共産党 支持にはそれぞれ相関関係がみられ、よって政党支持においてはい まだ保革イデオロギーが有効な指標であることが分かる。 2−3.保革イデオロギーと投票政党 次に、投票政党が保革イデオロギーによってどの様に異なるかを 見てみよう。この検証に用いるデータも明推協選挙後調査である。 ここでは、保革イデオロギーと投票政党のクロス集計を行った。そ の結果をまとめたものが表2−2 である。iii 表2−2.イデオロギーと投票政党(%) 1996 年衆議院選挙(小選挙区) 新進 自民 民主 社民 共産 その他 N(人数) 革新的 34 20 5 9 32 0 56 やや革新的 31 16 16 10 21 7 166 中間 34 37 12 3 6 7 448 やや保守的 23 60 8 2 2 7 336 保守的 13 76 2 0 2 7 249 r = 0.33
1996 年衆議院選挙(比例代表区) 新進 自民 民主 社民 共産 その他 N(人数) 革新的 33 9 12 16 30 0 57 やや革新的 31 11 20 13 21 4 175 中間 34 32 17 6 7 5 453 やや保守的 25 55 13 2 2 3 337 保守的 13 75 3 1 3 5 249 r = 0.35 1998 年参議院選挙(選挙区) 自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数) 革新的 0 7 5 10 10 55 15 62 やや革新的 5 10 5 35 9 23 12 224 中間 3 32 10 26 6 11 13 486 やや保守的 4 58 4 23 2 3 7 306 保守的 1 73 2 14 2 4 6 199 r = 0.47 1998 年参議院選挙(比例代表区) 自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数) 革新的 0 5 11 11 13 57 3 62 やや革新的 6 8 11 35 15 23 2 228 中間 4 26 16 33 8 10 3 477 やや保守的 5 53 5 27 4 3 2 319 保守的 1 72 2 17 2 4 2 194 r = 0.46 2000 年衆議院選挙(小選挙区) 自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数) 革新的 1 8 3 31 13 39 6 72 やや革新的 7 12 2 50 7 17 4 218 中間 5 36 6 36 7 6 5 443 やや保守的 3 59 3 22 2 3 8 393 保守的 2 88 1 6 0 0 2 282 r = 0.52 2000 年衆議院選挙(比例代表区) 自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数) 革新的 1 3 4 29 19 39 6 70 やや革新的 13 8 4 46 13 16 1 227 中間 7 27 12 38 8 7 2 445 やや保守的 7 47 7 29 3 4 2 394 保守的 2 83 4 9 1 0 1 280 r = 0.47