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保革イデオロギーの有効性

ドキュメント内 untitled (ページ 37-44)

おける指標として有効ではないかという疑問が生じた。というのは、

そうした保革イデオロギーというのが、長い間、日本における有権 者にとって投票における意思決定の非常に安価な指標であったか らである。

1−1.専門家調査による1996年及び2000年における各政党の保革位置

自民 新進 民主 共産 社民 公明 自由

1996年 15.35 16.15 9.28 2.75 7.25

2000年 15.08 9.53 2.98 5.24 11.91 16.89

*最も左翼的な立場=1;最も右翼的な立場=20

そこで、本稿では、まず2節で先述の疑問を晴らすべく、一般有 権者において保革イデオロギーがどれほど有効であるかについて 検証していく。そして3節ではもしそれが有効であるならば、なぜ 有権者自己認識レベルで「中道化」が生じているのか、という点に ついて考える。そして、4節では本稿の内容に振り返り、総括をし たいと思う。

自分自身の立場も比較的明確である場合が多く、さらに、③さまざ まな争点対立を統合する軸として政策評価の影響を部分的に吸収 し、④感情的な反応も引き起こしやすい」といった点から重要な役 割を果たしてきたものとして保革イデオロギーがある(平野ほか 

2001,  182)。保革とは「保守‐革新」のことであり、現代日本に

おいて通常、保守は右翼もしくは反動的とされ、革新は左翼や社会 主義もしくはそれに近い概念として捉えられている(蒲島・竹中 

1996,  31)。この保革イデオロギーは有権者にとって情報処理の

負担が小さな意思決定を可能とする投票の指針となりやすかった。

さて、本稿で保革自己認識を作業上扱うために用いる保革自己イ メージについてここで説明をしておく。世論調査では、一般的に、

被調査者に対して「あなたご自身を保守系支持者と思われますか、

革新系支持者と思われますか」といった質問をして、保守―革新の 尺度上に自己位置づけをしてもらう。その結果として出てきた一次 元尺度の保守―革新次元を、三宅は保革自己イメージと名付けてい る(三宅  1985,  203)。本稿で保革イデオロギーを考える際には、

この保革自己イメージを用いる。

2−2.保革イデオロギーと政党支持

      それでは、有権者において保革イデオロギーは指標としてどのぐ らいの有効性を保持しているのかという疑問点について実際に検 証する。より具体的には、次の2つの検討をする。1)保革イデオ ロギーと政党支持の関係と、2)保革イデオロギーと実際の投票政 党の関係である。ii

      なお、本稿では一貫して、明るい選挙推進協会(以下、明推協)

の選挙後調査データを用いる。それは、「保革自己イメージ」の変 化を時系列的に見る事が出来るためである。そのうち、ここでは、

1996年衆議院選挙・1998年参議院選挙・2000年衆議  院選挙・

2001年参議院選挙の四選挙後の調査データを使用した。

保革イデオロギーと政党支持についてクロス集計を行ったもの が表2−1になる。表の数字は「革新・やや革新・中間・やや保守・

保守」といった五つの自己イデオロギー尺度に基づいたグローブご との各政党支持の割合(%)である。例えば1996年衆議院選挙の ものを見れば、イデオロギー尺度が「革新」に人のうち 26%が新 進党、6%が自民党、20%が共産党を支持しているということに なる。

2−1.イデオロギーと政党支持(%)

1996年衆議院選挙        1998年参議院選挙

革新 やや革新 中間 やや保守 保守 革新 やや革新 中間 やや保守 保守

新進 26 17 14 13 7 自由 0 3 0 2 1

自民 6 11 28 56 80 自民 4 8 21 57 71

民主 6 7 4 5 1 公明 5 7 7 2 0

社民 19 14 4 3 1 民主 5 20 11 7 6

共産 20 10 3 1 0 社民 14 11 4 2 2

その他 2 1 2 2 2 共産 40 11 2 1 1

支持なし 22 40 46 21 8 その他 5 1 2 0 0

N(人数) 65 234 702 431 300 支持なし 28 40 53 29 19

N(人数) 81 304 742 417 238

(小数点第1位で四捨五入しているので、100%にならない箇所がある。以下同様)

2000年衆議院選挙        2001年参議院選挙

革新 やや革新 中間 やや保守 保守 革新 やや革新 中間 やや保守 保守

自由 2 7 3 4 2 自由 3 2 2 5 1

自民 2 9 21 48 86 自民 13 20 28 57 81

公明 2 2 6 4 2 公明 5 4 10 5 2

民主 21 26 17 15 2 民主 21 17 10 6 1

社民 15 9 4 2 1 社民 6 10 3 1 1

共産 32 9 2 1 0 共産 21 6 3 0 0

その他 1 0 0 0 0 その他 0 2 1 1 1

支持なし 24 39 46 26 8 支持なし 31 39 43 26 12

N(人数) 91 294 676 485 326 N(人数) 67 268 717 432 296

       

まず、1996年の場合を見てみると、「革新」系の人は第1に新進 党を支持し、第2に共産党を支持し、第3に社民党を支持している。

また「やや革新」系においては社民党と共産党を合計して 24%の

支持を得ている。結局のところ革新政党とされる、共産党と社民党 の「革新」「やや革新」系における支持は約4分の1から約3分の 1である。それに対し、「保守」系では80%もの割合で自民党が支 持を得ており、「やや保守」系でも過半数で支持を得ている。つま り「保守」系における自民党支持は「革新」系における社民党・共 産党支持に比べて相関が非常に強いと言える。この傾向は98・00・

01年における結果を見ても明らかである。

      しかし、表2−1をそれぞれ横に見てみると、自民党においては

「革新」から「保守」まで直線的に政党支持が伸びており、明瞭な 相関関係が窺える。また、社民党と共産党のいずれにおいても、「革 新」から「保守」まで直線的に政党支持が減少している。つまり相 関関係を捉える事ができるのである。つまり拘束力の強弱こそ存在 するものの、「保守」と自民党支持、「革新」と社民党または共産党 支持にはそれぞれ相関関係がみられ、よって政党支持においてはい まだ保革イデオロギーが有効な指標であることが分かる。

2−3.保革イデオロギーと投票政党

      次に、投票政党が保革イデオロギーによってどの様に異なるかを 見てみよう。この検証に用いるデータも明推協選挙後調査である。

ここでは、保革イデオロギーと投票政党のクロス集計を行った。そ の結果をまとめたものが表2−2である。iii

2−2.イデオロギーと投票政党(%)

1996年衆議院選挙(小選挙区)

新進 自民 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 34 20 5 9 32 0 56

やや革新的 31 16 16 10 21 7 166

中間 34 37 12 3 6 7 448

やや保守的 23 60 8 2 2 7 336

保守的 13 76 2 0 2 7 249

r = 0.33

1996年衆議院選挙(比例代表区)

新進 自民 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 33 9 12 16 30 0 57

やや革新的 31 11 20 13 21 4 175

中間 34 32 17 6 7 5 453

やや保守的 25 55 13 2 2 3 337

保守的 13 75 3 1 3 5 249

r = 0.35

1998年参議院選挙(選挙区)

自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 0 7 5 10 10 55 15 62

やや革新的 5 10 5 35 9 23 12 224

中間 3 32 10 26 6 11 13 486

やや保守的 4 58 4 23 2 3 7 306

保守的 1 73 2 14 2 4 6 199

r = 0.47

1998年参議院選挙(比例代表区)

自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 0 5 11 11 13 57 3 62

やや革新的 6 8 11 35 15 23 2 228

中間 4 26 16 33 8 10 3 477

やや保守的 5 53 5 27 4 3 2 319

保守的 1 72 2 17 2 4 2 194

r = 0.46

2000年衆議院選挙(小選挙区)

自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 1 8 3 31 13 39 6 72

やや革新的 7 12 2 50 7 17 4 218

中間 5 36 6 36 7 6 5 443

やや保守的 3 59 3 22 2 3 8 393

保守的 2 88 1 6 0 0 2 282

r = 0.52

2000年衆議院選挙(比例代表区)

自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 1 3 4 29 19 39 6 70

やや革新的 13 8 4 46 13 16 1 227

中間 7 27 12 38 8 7 2 445

やや保守的 7 47 7 29 3 4 2 394

保守的 2 83 4 9 1 0 1 280

r = 0.47

2001年参議院選挙(選挙区)

自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 4 27 4 27 8 25 6 49

やや革新的 3 29 7 30 11 12 9 185

中間 5 45 12 21 4 6 7 469

やや保守的 5 67 8 13 2 1 5 328

保守的 1 90 3 3 1 0 1 235

r = 0.41

2001年参議院選挙(比例区)

自由 自民 公明 民主 社民 共産 その他 N(人数)

革新的 6 21 6 24 6 30 6 33

やや革新的 4 22 6 29 17 14 8 126

中間 7 42 11 21 5 8 6 283

やや保守的 9 60 8 12 2 1 7 227

保守的 1 92 1 1 1 1 3 159

r = 0.45

       

この表の見方であるが、例えば2001年参議院選挙(比例区)の 表を見ると、「革新的」な人のうち6%が自由党に投票し、21%の 人が自民党に投票していることが分かる。また、「保守的」な人の うち1%が自由党に投票し、92%の人が自民党に投票していると いう事を示している。

      そこで、96 年の投票政党と保革イデオロギーとの関係から見て いくと、保革イデオロギーと投票政党には相関関係がかなりの程度 見られる。たとえば、各選挙における自民党への投票を見ると、96 年の小選挙区では「革新的」有権者の 20%から「保守的」有権者

おいては 76%へと伸びているし、同年比例代表区においても「革

新的」有権者の9%から「保守的」有権者の75%へと増えている。

いずれの選挙結果からみても、これと同様の相関が示されている。

また社民党や共産党への投票を見ると、自民党の場合とは逆に、有 権者が「保守的」に近づけば近づくほど投票は落ちている。以上よ り、保革イデオロギーと投票政党には相関関係がある。

      また次に、1996年においては共産、社民、民主、自民、新進の 5党で、また1998年・2000年・2001年においては共産、社民、

民主、公明、自民、自由の6党で、投票政党と保革イデオロギーと のピアソン相関係数を計算してみた。その際、それぞれの政党の保 革における政党位置としては前述の専門家調査を使用した(表1− 1)。すなわち1996年では共産党を2.75、社民を7.25、民主を9.28、

自民を15.35、新進を16.15と数値化した。また1998年・2000年・

2001年では共産を2.98、社民を5.24、民主を9.53、公明を11.91、

自民を15.08、自由を16.89と数値化した。保革イデオロギーにつ

いては、「革新」を1として、以降「やや革新」を2、「中間」を3、

「やや保守」を4、「保守」を5と数値化した。結果として算出さ れた係数は表2−2の右下にあるrの値である。

      係数を見ていくと、96年衆議院選挙の小選挙区では0.33と相対 的に低くなっており、98年参議院選挙の選挙区では0.47と盛り返 し、00年衆議院選挙の小選挙区では0.52と高い相関を示している。

結果としては蒲島・竹中の研究によるものに比べると確かに相関は 弱くなっている。iv しかしながら、1996年こそピアソンの相関係 数は0.33と低くなっているものの、1998年以降相関係数が決して 減少傾向にはなってはいないということが分かる。また各相関係数 をみても、それら自体が強い相関が窺えるものである。以上より、

現在においても、保革イデオロギーは投票行動について強い影響を 及ぼしていると言えそうである。

2−4.保革イデオロギーの有効性

      以上に見てきた通り、1)保革イデオロギーと政党支持の関係、

2)保革イデオロギーと投票政党との相関といった2つの観点から、

保革イデオロギーは有権者個人の意思決定をするための指針とし て現在も確固たる有効性を保持している事が分かった。

ドキュメント内 untitled (ページ 37-44)

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