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医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック
理事長・院長
武藤 真祐
2011年5月11日
解剖
腎,尿管,膀胱といった尿路系は、後腹膜腔に存在する臓器である。腎動脈は、ほぼ上腸間膜動脈のレベル で、左右にそれぞれ直接大動脈より分布する(図1)。右腎動脈は、下大静脈の後ろ(背側)を通り、右腎に到 達する(図1,2)。一般的には、腎動脈は左右それぞれ1本であるが、複数存在することもよくある。
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徴候① 浮腫
●浮腫患者の診察と検査の進め方 1.問診(病歴、家族歴、内服薬、手術歴、浮腫の発症時期、程度、経過、治療歴) 2.診察(浮腫の部位、程度、血圧、心拍数、呼吸状態) 3.臨床検査(検尿、血算、一般生化、特殊なものとしてBNP, 甲状腺ホルモン、レニン、アルドステロン、コルチゾール) 4.検査(胸部・腹部レントゲン、心電図、心エコー、CT、MRI)徴候② 乏尿・尿閉
乏尿の原因は大きく腎前性、腎性、腎後性の3つに分けられる。 腎前性の乏尿は腎は組織学的にも機能的にも正常であるものの、腎臓に血液が十分に流れず、糸球体濾過 量(GFR)が減尐することにより発症する。臨床的に最も多い原因は、下痢・吐血・出血・経口摂取低下に 伴う脱水である。 一方、腎性の乏尿は腎実質障害によりGFRが低下し発生するものである。腎炎や薬剤による急性尿細管壊 死が多い。 腎後性の乏尿は尿路の狭窄・閉塞によるものである。一側の障害のみでは発生せず両側の障害が起こって 初めて発生する。前立腺肥大症や神経因性膀胱など膀胱より下方に問題がある場合は、いわゆる「尿閉」 の状態となる。5
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徴候③ 多尿・頻尿
多尿ともおおむね一日尿量が2500cc以上。多尿と頻尿は混同してはいけない。頻尿には多尿に伴う排尿回数 の増加によるもの以外に、膀胱刺激症状、膀胱容量減尐などもある。 1日の排尿回数は多くとも10回程度まで。原因として、多尿の他に、心因性、炎症、膀胱内結石、膀胱腫瘍、 神経因性膀胱などが考えられる。血液検査① sCr/BUN
sCr(血清クレアチニン値) 男性 0.6-1.0mg/dl 女性 0.4-0.8mg/dl
sCrの上昇が起こるのはGFR(glomerular filtration rate: 糸 球体濾過量)がかなり低下してからであり、早期の腎丌全を 発見するにはsCrだけをみていても困難なことが多い。 BUN(血中尿素窒素)は腎機能を反映するが、GFR以外の多 くの因子により変動する。摂取タンパク量の増加や消化管出 血、脱水などによって上昇する。妊娠、低たんぱく食、肝丌 全、尿崩症などによってBUNが減尐する。 sCrとBUNの比は約10である。
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血液検査② PSA
PSA(Prostate-specific antigen:前立腺特異抗原)の出現によって、前立腺癌の診断法は格段の進歩を遂げた。我が国 においても今後急激な増加が予想されている。住民健診では、直腸診・PSA併用検診からPSA単独検診に移行した場合、 受信者数が増加することが報告されている。
疾患① 尿路感染症/腎盂腎炎
急性腎盂腎炎では、発熱、側腹部痛、倦怠感、悪心、嘔吐などを呈する。 診断を確定し、最近の薬剤感受性を知るためにも必ず尿培養を行う。単一の病原性菌が、中間尿では105/ml以上、導尿で は5x104/ml以上検出されれば尿路感染症と診断できる。 細菌尿と膿尿があれば尿路感染症と診断できる。 腎盂腎炎の治療後6か月間は再発しやすく、定期的に検尿して再発の早期診断治療に努め、発熱があれば24時間以内に検 尿を受けるよう指導する。 再発防止として、一日排尿回数が4回以下と尐ない患者には、尿意を自覚してからではなく3時間毎に排尿するよう勧める。 尿路感染症を反覆する場合には、抗菌薬の予防投不を6か月間行うことも考える。バクタ、ケフラール、ケフレックスなど9
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疾患② 尿路感染症/膀胱炎
尿路感染症は細菌感染としては最も頻度の高い感染症である。尿路基礎疾患の合併がない単純性尿路感染症では、抗菌薬治 療に対する反応性も良好である。一方、尿路における器質的あるいは機能的な異常をその原因とする複雑性尿路感染症は、 多種の細菌がその原因菌となりうる。 複雑性膀胱炎は、その基礎疾患を除去しない限り、感染を繰り返すことが多いということを念頭に置き、治療に当たるべき である。複雑性膀胱炎で細菌尿、膿尿が認められてもまったく症状がないもの(無症候性細菌尿)は、抗菌化学療法の対象と ならないことが多い。慢性に経過している複雑性膀胱炎が急性増悪し、排尿痛、頻尿、残尿感などをきたしている場合は、 抗菌化学療法の対象となる。 通常は経口薬が適応であり、想定される原因菌の幅により抗生剤を選択する。疾患③ 前立腺肥大症
治療方針は、重症度により無治療経過観察、薬物療法、外科療法、尿道留置カテーテルなどが選択される。まずはほとんど の場合、初回治療として、交感神経α1ブロッカー( フリバス、アビショット、ハルナール、ユリーフ)による薬物療法が選 択される。抗男性ホルモン薬は、副作用やPSA値を下げるため前立腺癌の発見を遅らせることもあり、初期治療としては 使用しない。
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疾患④ 慢性腎丌全
慢性腎丌全は、糸球体、尿細管が進行性に障害された結果、GFRの低下とともに体液の恒常性が失われた状態である。大 部分は丌可逆性である。腎丌全による透析患者の数的な増加抑制をめざして、慢性腎丌全をCKD(chronic kidney disease)という疾患概念のなかでの捉え直し作業が始まっている。CKDの診断基準は原疾患がはずれている。新規透析療 法開始患者の頻度順は、①糖尿病性腎症 43%、②慢性糸球体腎炎 26%、③腎硬化症 10%となっている。 治療としては、原疾患への対応も当然重要であるが、同時に心血管系合併症、脱水、尿毒性薬剤などの危険因子への対策が 必要となる。血圧コントロールは、110-120/70-80mmHgを目標として、減塩食(3-7g)を基本にACEI, ARBを使用す る。尿毒症毒素の除去あるいは減尐させるために、低蛋白食(0.6-1.0g/BW/日)、低リン食を主体とする食事療法を行う。 脂質コントロールのためにスタチン系治療薬を、また血液凝固能コントロール目的で抗血小板薬、抗凝固薬を検討する。ヘ モグロビン濃度10.5-12.0mg/dlを目標としてエリスロポエチンを使用する。疾患⑤ 神経因性膀胱
神経因性膀胱とは、排尿に関不する大脳、脳幹部、脊髄および末梢神経の障害によって誘起される排尿異常の総称である。 成人においては、脊髄損傷、脳血管障害、パーキンソン病、多発性硬化症および糖尿病などが主である。また器質的異常が みられず、機能的原因と考えられる状態がDV(dysfunctional voiding)である。 蓄尿、排尿という下部尿路の働きは第2-4仙髄の排尿中枢の指令による膀胱排尿筋と尿道括約筋の協調運動でなされる。こ の協調運動の障害が神経因性膀胱であり、蓄尿障害と排尿障害に分類される。 検査としては、超音波検査が第一選択である。それ以外にも排尿膀胱尿道造影検査、核医学検査などがある。 治療の原則は、①腎機能保持、②尿路感染症対策、③尿失禁対策である。 保存的治療法の柱は、清潔間欠導尿法である。尿道留置カテーテル法は長期留置は極力行わない。薬物療法としては、高圧 膀胱には膀胱容量を増加させ、低圧化が望める抗コリン薬や排尿困難例におけるαブロッカーであるウラピジル(エブラン チル)投不などが効果的である。13
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