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高分解能LC/MSによる構造解析(新規導入装置による超高分解能測定および多段階MS測定)

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Academic year: 2021

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高分解能 LC/MS による構造解析

(新規導入装置による超高分解能測定および多段階 MS 測定)

有機分析化学研究部 小野田 資、秋山 毅、井口 詔雄

要 旨 質量分析計の進歩は目覚ましく、現代ではありとあらゆる分野の微量分析・構造解析において欠か すことのできない分析手法である。特に、「幅広い成分に適用可能な HPLC」および「質量分解能の非常に 高い質量分析計」を組み合わせた「高分解能 LC/MS」は、混合物中の微量有機成分の構造解析など、他手 法では達成できない高度な解析が可能である。本稿では、弊社に導入した新規の高分解能 LC/MS 装置の特 長とその分析事例を紹介する。

1. はじめに

材料・先端デバイスから、医薬・バイオ、ライフイノ ベーションの分野に至るまで、先端材料の機能発現に は有機化合物が大きな役割を担っている。含有元素の 組み合わせの多様性から有機化合物の構造は非常に複 雑であり、さらに実際の製品においては多数の成分の 混合物になっている場合が多いため、有機化合物の解 析は容易ではない。 多成分の混合物を各成分に分離する“液体クロマト グラフィー(LC: Liquid Chromatography)”および、 検出器に“質量分析計(MS: Mass Spectrometry)” を接続したLC/MS は、混合物中の微量成分の質量情 報を得ることが可能であり、有機化合物の解析におい て強力なツールとなる。質量分析計に質量分解能の高 い高分解能MS を用いることで、検出されたイオンの 精密質量から組成式の推定が可能であり、LC/MS は 有機化合物の解析に必須の手法となりつつある。

2. 高分解能 LC/MS および新規導入装置

LC/MS における高分解能 MS としては、TOF-MS (Time Of Flight Mass Spectrometer:飛行時間型質 量分析計)や、OrbitrapⓇ(電場型のフーリエ変換型 質量分析計)、FT-ICR MS(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass Spectrometry:フーリエ 変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置)などが 挙 げ ら れ る 。 さ ら に 、 四 重 極-TOF 型 や 四 重 極 -OrbitrapⓇ型等、質量分析計を複数結合させた機種で は、MS/MS 測定におけるプロダクトイオンを解析す ることで詳細な構造情報を取得することが可能である。 弊社ではこれまでに四重極-OrbitrapⓇ型の高分解能 LC/MS(従来装置)を用いて、様々な分野での有機微 量成分の解析を実施してきた 1)。以前は構造情報の取 得が困難であった事例についても、OrbitrapⓇの導入に より、その構造解析が可能となり、ここ数年で構造解 析が可能な領域が飛躍的に広がってきた。そこで、高 分解能 LC/MS を用いた構造解析を更に進化・深化さ せるために、弊社ではさらに高性能な高分解能 LC/MS である “Orbitrap Fusion™ Tribrid™ Mass Spectrometer” を新たに導入した。

The TRC News, 201707-01 (July 2017)

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図1 新規装置Orbitrap Fusion™ の装置外観 今回導入した新規装置は 3 つのアナライザー [① Quadrupole(四重極)、② OrbitrapⓇ(電場型 FT)、 ③ Ion trap(イオントラップ)]を搭載しており、これ らのアナライザーを駆使することで高分解能での MS 測定、MS/MS 測定、さらには MSn測定を実施するこ とが可能である。表 1 に本装置の特徴を記載した。 表 1 新規装置Orbitrap Fusion™ の特徴 アナライザー (質量分離部 および 検出器) ・四重極 ・OrbitrapⓇ(電場型 FT) ・イオントラップ 質量分解能 ・最大分解能 500,000 (m/z 200) 多段階 MS ・MS10 まで精密質量で測定可能 開裂方法 ・CID, HCD, ETD から選択可能

CID: Collision-Induced Dissociation HCD: Higher-energy Collisional Dissociation ETD: Electron-Transfer Dissociation

本装置は、OrbitrapⓇの高い質量分解能から、34S に加 え18O や15N といった同位体イオンも観測可能である ことから高精度な組成演算が可能であり、m/z 1000 を 超える高質量数側でも高い質量分解能を有するため、 中高分子量成分の解析にも適用可能である。また、イ オントラップを搭載していることから、プロダクトイ オン(部分構造)同士の繋がりに関する情報が取得可 能である。さらに、OrbitrapⓇとイオントラップを組み 合わせた測定解析を行うことで、末端・側鎖構造解析 やシーケンス解析にも活用可能であることを見出して いる。 以上の様に、新規装置では測定解析方法を工夫する ことで、これまで以上に高精度の構造解析が可能とな り、解析対象の範囲も広がった。

3. 分析事例

本稿では新規装置 OrbitrapⓇ Fusion™による高精度 の構造解析事例として、有機赤色染料(図2 参照、分 子量:652、組成式:C32H24N6O6S2)を測定解析した 結果を紹介する。 N N H2N S N N NH2 S O HO O O OH O C32H24N6O6S2 Exact Mass: 652.1199 Mol. Wt.: 652.70 図 2 測定解析対象とした赤色染料の分子構造 3.1 超高分解能を用いた解析 高分解能 MS である新規装置は、質量分解能が非常 に高く、最高分解能は 500,000(m/z 200)の超高分解 能測定が可能である。従来装置では困難であった 16O (酸素)の同位体イオン18 O や14N(窒素)の同位体イ オン15N も分離して検出できるため、劣化成分をはじ めとした微量成分の元素組成式の決定が高精度で可能 である。 赤色染料を測定して得られたデータ[プロトン付加 イオン周辺のマススペクトル:図 3、プロトン付加イ オンの同位体イオン([M+H+1]+ および [M+H+2]+ 部分の拡大図:図 4]を以降に示した。

S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full500K_5e3_ddHCD500K_noEx_19 #473-476RT:10.58-10.64AV:3NL:1.89E7

F:FTMS + p ESI Full ms [150.0000-1350.0000] 652.5 653.0 653.5 654.0 654.5 655.0 655.5 656.0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 R e la ti ve Ab u n d a n ce 653.1274 654.1307 655.1233 653.6289 [M+H]+ 12C 32H26O6N6 32S 2 [M+H+1]+ 12C 3213C1H26O6N632S2 12C 30 13C 2H26O6N6 32S 2 [M+H+2]+ 12C 32H26O6N6 32S 1 34S 1 C:30~40 と推測 S:2 と推測 N N H2N S N N NH2 S O HO O O OH O + H [M+H]+ C32H25N6O6S2 Exact Mass: 653.1277

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図 4 赤色染料のマススペクトル (同位体イオン部分の拡大) 図 4 のマススペクトル(部分拡大図)において、 [M+H+2]+ に 着 目 す る と 、34S 由 来 の ピ ー ク (12C32H26O6N632S134S1)および 13C 由来のピーク (12C3013C2H26O6N632S2)を新規装置では完全に分離 して検出することが確認できた。32S に対する34S の天 然同位体存在比が 4.25%であることを考慮すると、 [M+H]+ピークと[M+H+2]+ピークのイオン強度比から 分子内に S を 2 個含むと推定できる。 TOF 型質量分析計の質量分解能では、上記に示した [M+H+2]+ における34S 由来のピークと13C 由来のピ ークを分離検出することは困難であることから、 OrbitrapⓇ(電場型FT)ならではの解析例と言える。 新規装置では、MS 測定はもとより MS/MS 測定、さ らにはMSn測定においても高分解能測定が可能であり、 得られたプロダクトイオンも精密質量であることから 詳細な解析が可能である。 赤色染料について MS/MS 測定した際の解析例を以 降に示す(図5 および図 6)。“m/z 653.127”をプリカ ーサーイオンとした際の MS/MS スペクトルを図5に 示した。また、プロダクトイオンとして検出された m/z 353.140 について、その同位体イオン([M+H+1]+ お よび [M+H+2]+)部分の拡大図を図 6 に示した。 図 5 赤色染料の MS/MS スペクトル (プリカーサーイオン@m/z 653.127) 図 6 赤色染料の MS/MS スペクトル (m/z 353.140 の同位体イオン部分の拡大) 図 6 のマススペクトル(部分拡大図)において、 [M+H+2]+ に着目すると、設定分解能 120,000(従来 装置の最高分解能と同程度)で取得したマススペクト ル[上段]ではピークは 2 つだけ確認された。一方、 設定分解能 500,000(新規装置の最高分解能)で取得し たマススペクトル[中段]では、3 つのピークが確認 さ れ た 。 こ れ ら は “13C × 2 個 由 来 の ピ ー ク (12C2013C2H1716O114N4”に加えて、13C・15N 由来の ピーク(12C2113C1H1716O114N315N5”および“18O 由来 のピーク(12C22H1718O114N4”であり、15N 由来のピ ークや18O 由来のピークも検出可能であることが確認 された。また、当該スペクトルパターンは、C22H17ON4 のシミュレーション結果[下段]とも良く一致してい た 以上、新規装置では、MS~MSn測定において、15N 由来のピークや18O 由来のピークを分離して検出する ことが可能である。例えば、微量成分の分子内にO(酸 素)が存在するか否かを判別可能であることから、新 規装置による超高分解能測定は、酸化変成の有無を議 論する上でも有用な手法と成り得ると考えられ、有機 化合物の反応機構解明等への応用も期待できる。 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 m/z 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 R e la ti ve Ab u n d a n ce 653.1274 C32H25O6N6S2 0.3614 ppm 176.1597 248.1809 421.0257 222.1126 653.1272 C32H25O6N6S2 0.0624 ppm 325.1336 C22H17O N2 0.0797 ppm C22389.0955H17O3N2S 0.1265 ppm 168.0809 C12H10N 0.6066 ppm 418.1094 C22H18O3N4S 0.0173 ppm 222.0220 C10H8O3N S 0.3653 ppm 308.1308 C22H16N2 0.0701 ppm 141.0574 C10H7N 0.8251 ppm 180.0809 C13H10N 0.4561 ppm 106.0653 C7H8N 1.6606 ppm 280.1122 C21H14N 0.2874 ppm NL: 1.89E7 S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full500K_5 e3_ddHCD500K_noEx_19#473-476 RT: 10.58-10.64 AV: 3 F: FTMS + p ESI Full ms [150.0000-1350.0000] NL: 4.82E6 S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full500K_5 e3_ddHCD500K_noEx_19#462-517 RT: 10.62-10.96 AV: 9 F: FTMS + p ESI d Full ms2 653.1274@hcd35.00 [50.0000-664.0000] [M+H+2]+ 部分の拡大 12C 32H26O6N6 32S 1 34S 1 [M+H+1]+ 部分の拡大 12C 30 13C 2H26O6N6 32S 2 33S 由来 15N 由来 13C 由来 34S 由来 [M+H+1]+ 部分の拡大 [M+H+2]+ 部分の拡大 実測スペクトル 設定分解能 120K (従来装置と同等) シミュレーション @C22H17ON4 (分解能 370K) 実測スペクトル 設定分解能 500K (新規導入装置) 13C 由来 15N 由来 C22H17 18O 1N4 (18O:1) 18O 由来 13C×2 由来 12C 21 13C 1H17O 14N 3 15N 1 (13C:1, 15N:1) 12C2013C2H17ON4 (13C:2) 13C,15N 由来 m/z 353.1397 推定組成式: C22H17ON4 653.1272 389.0955 418.1094 325.1336 308.1308 168.0809 222.0220 141.0574 [M+H]+ C32H26O6N6S2

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3.2 多段階 MS 新規装置のもう一つ大きな特徴として、従来装置に はなかったイオントラップを搭載している点が挙げら れる。イオントラップにより、多段階のマススペクト ルの取得(MSn測定)が可能であり、既に前項で記載 した通りMSn測定においても高分解能測定による精密 質量の取得が可能である。さらに、新規装置では開裂 方法を複数の手法(CID、HCD、ETD)から選択可能であ るため、化合物の構造や分析の目的に応じて適切な開 裂手法を適用することで高度な解析が可能となった。 従来装置では、MS2測定において高エネルギーで衝 突乖離を行い、なるべく多くのプロダクトイオンを生 じさせることで、多くの部分構造情報を得ようとして いたが、プロダクトイオン同士を紐付けするのは必ず しも容易ではなかった。一方、新規装置では、MSn 定を実施することで部分構造同士の繋がりについても 情報を得ることが可能となった。例えば、MS3測定で 得られたプロダクトイオン“α1、α2、α3 ・・・”の うち、α1 をプリカーサーイオンとした MS4測定でプロ ダクトイオン“β1、β2、β3 ・・・”が検出され、α2 をプリカーサーイオンとしたMS4測定でプロダクトイ オン“γ1、γ2、γ3 ・・・”が検出されたとする。この 結果から、α1 は β1、β2、β3 を部分構造として有する ことが判別でき、α2 は γ1、γ2、γ3 を部分構造として 有することが判別できる。 MSn測定の解析事例として、赤色染料をMS5まで実 施した事例を以降に示す(図 7)。 まず、MS1測定のマススペクトル(1 段目)では、 分子量関連イオンの [M+H]+ が検出され、組成式 C32H26O6N6S2 を決定することが可能であった。 次いで、検出された分子量関連イオンをプリカーサ ーイオンとして、MS2測定のマススペクトルを取得し た(2 段目)。生じたプロダクトイオンはそれぞれ高精 度の精密質量であることから、検出イオンの組成式(部 分構造)を推定することが可能である。また、プロダ クトイオン同士の質量差(ニュートラルロス)分も高 精度の精密質量となり、質量差から脱離した分子の組 成式(部分構造)を推定することが可能である。 得られたプロダクトイオンを次段のプリカーサーイ オンに設定して更にプロダクトイオンを生成させるこ とで、MS3測定(3 段目)、MS4測定(4 段目)、MS5 測定(5 段目)とマススペクトルを取得していくこと 図 7 赤色染料の MS~MS5 スペクトル なお、MS2および MS3測定で得られたマススペクト ルにおいて、プロダクトイオン同士の質量差から、 “N2+H”が脱離していることが推定された。図 8 上 段スキームの様に、アゾ基由来の“N2”脱離と開裂だ けでは、MS4測定以降のマススペクトルを解釈するこ とが困難であることから、図 8 下段スキームの様に、 アゾ基由来の“N2”脱離に際して転移反応も生じてい る可能性が考えられた2) N N NH2 Dissociation ? S N O O HO NH2 S N O O HO + N2 N N NH2 + N2 N H Rearrangement ? 図 8 アゾ基からの“N2”脱離スキーム(推定) 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 m/z 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 R e la ti ve Ab u n d a n ce 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 653.1276 C32H25O6N6S2 0.7260 ppm 248.1809 176.1597 C10H24S 2.2180 ppm 675.1095 418.1096 C22H18O3N4S 0.4209 ppm 353.1398 C22H17O N4 0.4073 ppm 655.1279 573.1703 C32H25O3N6S 0.0232 ppm 308.1310 C22H16N2 0.5886 ppm 232.0759 C16H10O N 0.6935 ppm 636.1017 389.0955 C22H17O3N2S 0.0498 ppm 308.1308 C22H16N2 -0.0056 ppm 390.1034 323.1180 C22H15O N2 0.1881 ppm 296.0368 C22H4N2 -0.2196 ppm 308.1308 C22H16N2 -0.1047 ppm 292.1120 C22H14N -0.3664 ppm 216.0807 C16H10N -0.2634 ppm NL: 3.37E7 S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full120K_1e5_ddCID30 K_MD5_noEx_23#1338 RT: 10.62 AV: 1 F: FTMS + p ESI Full ms [150.0000-1350.0000] NL: 2.30E7 S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full120K_1e5_ddCID30 K_MD5_noEx_23#1359 RT: 10.69 AV: 1 F: FTMS + p ESI d Full ms2 653.1276@cid35.00 [174.0000-664.0000]

NL: 2.54E7

S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full120K_1e5_ddCID30 K_MD5_noEx_23#1350 RT: 10.66 AV: 1 F: FTMS + p ESI d Full ms3 653.1282@cid35.00 418.1098@cid35.00 [110.0000-429.0000]

NL: 1.51E7

S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full120K_1e5_ddCID30 K_MD5_noEx_23#1351 RT: 10.66 AV: 1 F: FTMS + p ESI d Full ms4 653.1277@cid35.00 418.1095@cid35.00 389.0953@cid35.00 [102.0000-400.0000]

NL: 5.24E6

S1_10dil_2uL_JIMCo_pos_Full120K_1e5_ddCID30 K_MD5_noEx_23#1352 RT: 10.67 AV: 1 F: FTMS + p ESI d Full ms5 653.1276@cid35.00 418.1096@cid35.00 389.0955@cid35.00 308.1309@cid35.00 [79.0000-319.0000] MS MS2 MS3 MS4 MS5 C10H7O3N2S SO3 N N H2N S N N NH2 S O HO O O OH O C10H7N2 SO3H N2H C10H7O3N2S C6H6N 653.1276 573.1703 418.1096 353.1398 389.0955 308.1310 232.0759 308.1308 308.1308 216.0807 [M+H]+ C6H6N SO3H N2H C10H7N2 SO3

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前述したアゾ基以外の構造においても、多段階 MS (MS/MS 測定も含む)により生じたプロダクトイオン を、プリカーサーイオンの単純な開裂だけでは説明で きないケースも少なくない。従って、高分解能 LC/MS による構造解析を深化するためには、数多くの測定・ 解析を実施し、経験則やモデル試験から転移反応や環 状化合物の開環反応等についても理解を深める必要が あると考えられる。

4. まとめ

本稿では、新規導入装置での解析例を用いて有機化合 物の解析に有用な高分解能LC/MS を用いた構造解析 例について紹介した。 高分解能LC/MS 分析は、LC 分離により複雑な混合 試料中でも微量成分が検出可能であり、高質量分解能 により検出成分の分子式が決定可能であることが特徴 である。 新規導入した高分解能LC/MS は、非常に高い質量 分解能から精密質量および各種同位体イオンが詳細に 解析可能であり、高精度に検出イオンの分子式を決定 できる。さらに、多段階MS および種々の開裂方法を 駆使することで、部分構造同士の繋がりについても解 析が可能であった。 高分解能LC/MS は非常に強力な分析手法であるが、 不適切な前処理・測定条件で分析を行っても分析目的 は達成できない。質の高いデータを取得するには、測 定試料・対象成分に応じた前処理、LC 分離条件、MS 測定条件も重要であることを忘れてはならない。また、 LC/MS におけるマススペクトルの解析には、装置付 随や公開されているデータベースだけでは困難である のが現状であり、解析ノウハウや独自のデータベース 構築も必要である。 今後も高分解能LC/MS による解析を様々な分野に 応用展開していきたい。

引用文献

1) 井口 詔雄, The TRC News, 116, 23 (2013).

2) A Ramachandran, University of Wollongong Thesis

Collection (2008).

小野田 資(おのだ もとし)

有機分析化学研究部 有機分析化学第 2 研究室 主任研究員 趣味:音楽鑑賞

秋山 毅(あきやま つよし)

有機分析化学研究部 有機分析化学第 2 研究室 研究員 趣味:自転車、ギター

井口 詔雄(いぐち のりお)

有機分析化学研究部 有機分析化学第 1 研究室 主席研究員 趣味:読書

図 4  赤色染料のマススペクトル  (同位体イオン部分の拡大)  図 4 のマススペクトル(部分拡大図)において、 [M+H+2] +   に 着 目 す る と 、 34 S 由 来 の ピ ー ク ( 12 C 32 H 26 O 6 N 632 S 134 S 1 )および 13 C 由来のピーク ( 12 C 3013 C 2 H 26 O 6 N 632 S 2 )を新規装置では完全に分離 して検出することが確認できた。 32 S に対する 34 S の天 然同位体存在比が 4.25%であること

参照

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