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らかにすることで 出現頻度と意味的特徴の関係性も明らかにしたい 2 先行研究 2.1 自他対応 数多くある自他対応を扱った先行研究の中から奥津(1967) 寺村(1982) 早津(1987)を見 ていきたい まず 奥津(1967)では 自他対応は 二つの動詞があり 自動[ Transitive]他

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Academic year: 2021

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対応する自動詞・他動詞の意味的特徴とそれぞれの使用頻度との関係性

新谷 知佳 エルジェス大学 要旨 対応関係にある自動詞と他動詞であっても、いつでもその両方が用いられるわけではな く、使用傾向が他動詞寄りのものから自動詞寄りのものまで連続性の中に存在していると 言える。 そして、その使い分けは自他対応のある動詞対の意味上の特徴から判断可能であ ることを提示する。コーパスにおける出現頻度からそれらが連続性の中にあることを示し た上で、それぞれの動詞対の意味的特徴と出現頻度の関係性を示す。自動詞が積極的に用 いられる動詞対の意味的特徴は動作主がなくとも自然に起こる、あるいは人の感情に関す る変化という点である。一方、他動詞が積極的に用いられる動詞対の特徴は動作主の働き かけによってはじめて起こる変化という点である。これらの特徴は連続性の中の両極にあ るものの特徴である。そして、自他の使用に偏りなく両方の使用が見られる動詞対には、 通常よくないとされる変化、つまり人にとって負の変化であるという特徴がある。 【キーワード】 自動詞、他動詞、自他対応、使用頻度、コーパス

Keywords: Intransitive verb, Transitive verb, Frequency, Corpus 1 はじめに 日本語の自動詞と他動詞は「切れる/切らす」、「焼ける/焼く」のように対応関係にあ るものが多い。しかし、それらはいつでも自動詞と他動詞の両方が用いられるわけではな く、動詞対によってその使用頻度には偏りが見られる。たとえば、以下の例が挙げられる。 (1) a.海にブイが浮いている。 b.海にブイを浮かせてある。 海面に浮かぶブイを思い浮かべてほしい。日本語母語話者は自動詞を用いた(1)a の表現と 他動詞を用いた(1)b の表現のどちらを用いるだろうか。いずれも文法的に正しい文である が、おそらく、(1)a の表現を用いる日本語母語話者が多く、こちらの方がより自然に感じ られるのではないだろうか。実際、コーパスにおける出現割合も自動詞「浮く」は 90%、 他動詞「浮かす」は 10%となっており、「浮く/浮かす」の動詞対は自動詞の方が積極的 に用いられる動詞対であると言える。 本研究では、このような事実に着目し、コーパスを用いてその出現割合を算出しそれぞ れの動詞対はその使用傾向が自動詞寄りのものから他動詞寄りのものまで連続性の中に存 在していることを示したい。そして、自動詞が積極的に用いられる動詞対、他動詞が積極 的に用いられる動詞対、自他の偏りがなく両方の使用が見られる動詞対の意味的特徴を明

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らかにすることで、出現頻度と意味的特徴の関係性も明らかにしたい。 2 先行研究 2.1 自他対応 数多くある自他対応を扱った先行研究の中から奥津(1967)、寺村(1982)、早津(1987)を見 ていきたい。まず、奥津(1967)では、自他対応は「二つの動詞があり、自動[—Transitive]他 動[+Transitive]という対立、およびそれに必然的に関連する特徴のちがいを除いては、文法 的、意義的特徴を共有する時、この二動詞間に自・他の対応がある、と言う。」と定義され ている。一方、寺村(1982)では、「共時的に見てある共通の語根から自動詞、他動詞が派生 したと見られるもの、つまり形態的な対立のあるもの」と定義されており、形態的特徴に より重きが置かれている。そして、早津(1987)では、「自動詞と他動詞との間に形態的・意 義的・統語的な対応」と定義されている。本研究では、この早津(1987)の定義をもって自 他対応であるとする。また、早津(1987)では、「有対自動詞は、働きかけによってひきおこ しうる非情物の変化を、有情物の存在とは無関係に、その非情物を主語にして叙述する動 詞である」という自他対応のある自動詞の意味的特徴にも言及があり、本研究ではこの点 も参考にした。 2.2 自他対応の分類 奥津(1967)では、形態的特徴に着目し、自他対応を自動詞から他動詞への転化である自 動化転形、他動詞から自動詞への転化である他動化転形、或る共通要素から自動詞および 他動詞への転化である両極化の3 つに分類している。ナロック(2105) には、この分類も示 されているため、使用頻度との関係性の考察を行ったが、はっきりとした関係性は認めら れなかった。この3 つの転化と本研究で着目する出現頻度は一致しておらず、形態的特徴 から使用頻度の分析を行うことは難しい。 2.3 日本語教育における自他対応 日本語教育の分野では、自他それぞれのもつ表現効果により注目しており、『初級を教え る人のための日本語文法ハンドブック』では、自動詞は「ある出来事が自然に起こったよ うに表すの」に対し、他動詞は「それが人間などの意志的な動作によって引き起こされた ように表現する」とされている。また、『初級日本語文法と教え方のポイント』では、自動 詞は「話し手が動作を受ける対象に焦点を合わせる」のに対し、他動詞は「話し手が動作 主に焦点を合わせて述べる」とされている。しかし、どの動詞対においてもこのような表 現効果が得られるのかどうかは疑問視すべき点であることを指摘したい。自然に起きたよ うに表したければ自動詞、動作主の意志的な動作として表したければ他動詞といった単純 な使い分けでいいのだろうか。この点もふまえて次節で各動詞対を詳しく見ていく。 3 自他対応をもつ動詞対の意味的特徴とその使用頻度 3.1 考察対象 本研究の考察対象とする自他対応をもつ動詞対は、早津(1987)における自他対応の定義 に則り、ナロック他 (2015)の中から、意味的対応の希薄なもの、意味的対応が部分的なも

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の、文語または方言的なもの、片方の動詞が不安定動詞(自他両用動詞)のもの、他動詞 ~複他動詞のもの、自動詞・他動詞のいずれかのコーパス出現件数が0 件のものを除いた、 計328 対である。 3.2 考察方法 328 対の動詞対について、ナロック(2015)上にあるコーパス(BCCWJ)の出現頻度を用いて、 各動詞対における自動詞・他動詞それぞれの出現割合を算出した。たとえば、自動詞「浮 く」の出現頻度は1,511 件、他動詞「浮かす」の出現頻度は 176 件であるため、「浮く/浮 かす」の動詞対におけるそれぞれの出現割合は自動詞「浮く」が90%、他動詞「浮かす」 の出現割合は10%となる。この出現割合をもとに各動詞対のグループ分けを行った。 3.3 考察結果 グループ分けの結果、下の図1のように、各動詞対はひとつの連続性の中に存在してい ることが明らかになった。それぞれのグループの動詞対の数は、左の自動詞寄りのものか ら98 対、61 対、57 対、52 対、60 対であった。それぞれの動詞対の特徴について詳しく見 ていきたい。 図 1 連続性の中に存在する自他対応をもつ動詞対 3.3.1 自動詞が積極的に用いられる動詞対 自動詞が積極的に用いられる動詞対は、以下のような動詞対である。 (2) 切れる/切らす、つながる/つなげる、抜ける/抜く、降る/降らす、 浮く/浮かす、枯れる/枯らす、滑る/滑らす、泣く/泣かす、 安らぐ/安らげる、慣れる/慣らす、似る/似せる、生える/生やす、 驚く/驚かす、沿う/沿える、揺れる/揺らす、寝る/寝かす、 このグループにある多くの動詞対に見られる意味的特徴は、動作主がなくとも自然に起こ るあるいは人の感情に関する変化であるという点である。以下に「切れる/切らす」と「抜 ける/抜く」の実例を挙げる。 (3) a.階段をのぼりきるころには息が切れた。 (文藝, 2005, 文学/芸術) b.ルーベットが息を切らしながら言った。 (中村うさぎ著 『極道くん漫遊記』, 1991, 913) (4) a.後半は雨も強くなり集中力が切れていました。 (Yahoo!ブログ, 2008, スポー ツ)

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b.互いに集中力を切らさない素晴らしい守備を見せ、最後までスコアは動かず。 (Yahoo!ブログ, 2008, スポーツ) (5) a.理佐たちの手から力が抜けた。(和智正喜著 『七夜物語』, 2003, 913) b.彼女は手からすっかり力を抜いていた。 (村上春樹著 『中国行きのスロウ・ ボート』, 1986, 913) (6) a.最近生え変わり時期なのか毛が抜けまくります。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 動物 植物、ペット) b.まず、シーズーのような毛でしたら耳の中の毛を抜かなければなりません。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 動物、植物、ペット) いずれも動作主のコントロールではなく、自然に起こる変化であると言える。そして、い ずれも他動詞が用いられた文であっても、影山(1996)で言及されている動作主を含意する 「〜のために」という意味を読み取りにくいという特徴がある。 3.3.2 他動詞が積極的に用いられる動詞対 他動詞が積極的に用いられる動詞対は、以下のような動詞対である。 (7) 焼ける/焼く、刺さる/刺す、定まる/定める、煮える/煮る、 備わる/備える、丸まる/丸める、脱げる/脱ぐ、緩まる/緩める、 はさまる/はさむ、止む/止める、転げる/転がす、つかまる/つかむ、 取れる/取る、もげる/もぐ、蒸れる/蒸す、どく/どける このグループにある多くの動詞対に見られる意味的特徴は動作主の働きかけによってはじ めて起こる変化であるという点である。以下に「焼ける/焼く」と「刺さる/刺す」の実 例を挙げる。 (8) a 猫は世話がやける。 (到津伸子著 『不眠の都市』, 2002, 914) b.他人の恋の世話を焼いている場合ではない。 (新井恵美子著 『江戸の家計簿』, 2001, 157) (9) a.あと二回元種作りをしたらパンが焼けるのですが,どうなるかな〜? (Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) b.クリスマスには特別大きなパンを焼いた。 (稲垣美晴著 『サンタクロースの 秘密』, 1995, 386) (10) a.顎のところに数本の針が刺さっていた。 (群像, 2004, 文学/芸術) b.点滴の針を刺すのを見たことがある。(宮脇俊三著 『殺意の風景』, 1988, 913) (11) a.はっと顔をあげると、父さんの肩に矢が刺さっているのがみえた。 (上橋菜穂子著; 佐竹美保絵 『虚空の旅人』, 2001, ) b.太股に矢を刺された男が叫んだ。 (浜野卓也著 『義の旗風』, 2001, 913) いずれも動作主がいて、そのはたらきかけがなければ起こらない変化と言える。そして、 自動詞が積極的に用いられる動詞対に見られた「〜のために」という意味を読み取りにく いという特徴とは対称的に、「〜のために」という意味を読み込みやすいという特徴も見受

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けられる。 3.3.3 自他の使用に偏りがなく両方の使用が見られる動詞対 自他の使用に偏りがなく両方の使用が見られる動詞対は、以下のような動詞対である。 (12) 欠ける/欠く、こぼれる/こぼす、弱まる/弱める、焦げる/焦がす、 滅びる/滅ぼす、冷える/冷やす、焦れる/焦らす、崩れる/崩す、 尽きる/尽くす、反る/反らす、詰まる/詰める、下がる/下げる、 歪む/歪める、裂ける/裂く、くじける/くじく、潰れる/潰す このグループにある多くの動詞対に見られる意味的特徴は、通常よくないとされる変化、 人にとって負の変化であるという点である。以下に、「欠ける/欠く」と「弱まる/弱める」 の実例を示す。 (13) a.気が抜けた様に集中力が欠けてます(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ) b.特に作業に飽きて集中力を欠いたときにエラーが起きているようです。 (Yahoo!知恵袋, 2005, 企業と経営) (14) a.それだけ、インタビューアーに正当性が欠けていたのだと思います。 (NHK 取材班編著 『エイズ危機』, 1992, 493) b.彼らは自分たちの望みが正当性を欠いている事を知っている。 (茅田砂胡著 『デルフィニア戦記』, 2003, 913) (15) a.地域との結びつきが弱まり家族の孤立化を生んだ例も出ています。(全国国 公立幼稚園長会編 『新しい時代を拓く幼稚園運営のポイント Q&A』, 2002, 376) b.蒸発するときに、砂糖の結晶同士の結びつきを弱めるからなのですね。 (『伊東家の食卓裏ワザ大全集』, 2000, 590) (16) a.やがてアンコール王国の力が弱まると、地域ごとに有力者が国を作りました。 (『ベトナム・ラオス・カンボジアの歴史』, 1997 ) b.伊吾の力を弱めるために、高昌は西突厥と連合して、そこを攻めた。 (『シルクロード糸綢之路』, 1981, 292) これらのどの文においても、その文が表している変化が読み手にとって負の変化であると 感じられるという特徴がある。 4 日本語教育への応用可能性 日本語教育への応用可能性としてまず考えられるのが、リスト化することによって連続 性の中にあることを示し、使用傾向の差も自動詞・他動詞の導入時に一緒に導入すること である。自他対応はまとめてリストで覚える学習者も多い文法項目であるため、使用傾向 を同時に示すことで一定の効果が得られると考えられる。 そして、もう一つの可能性として考えられるのが各グループにおける意味的特徴から起 こる表現効果を教えるというものである。第3 節ではそれぞれの動詞対のグループの持つ

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意味的特徴を明らかにしたが、これにより、自動詞寄りの動詞対では、自動詞を用いたと きよりも他動詞を用いたときに動作主の意志的な動作であることが強調され、他動詞寄り の動詞対では、他動詞を用いたときよりも自動詞を用いたときにより自然な動きであるこ とが強調されるという表現効果が生まれると考えられる。(1) b の他動詞を用いた表現が不 自然に感じられたのも、この表現効果によって動作主の存在が強調されすぎてしまったこ とによるものである。そのため、この表現効果についても日本語教育内で扱うことによっ て、自他対応を持つ動詞の使い分けをより理解できると考えられる。 5 今後の課題 本研究では、自他対応を持つ動詞対は、使用傾向が他動詞寄りのものから自動詞寄りの ものまで連続性の中に存在しており、その使い分けは自他対応のある動詞対の意味上の特 徴からある程度判断可能であることを明らかにした。今後は、各動詞対に見られる意味的 特徴をテンスやアスペクトについても考慮しながら、より精査するとともに、話し言葉コ ーパスなどの他のコーパスも利用し、より多くの例を見ていく必要があると考えている。 そして、日本語教育への応用可能性であげた2つの方法を実際に授業内で実践してその効 果を探りたい。さらには、学生の誤用例をもとに各動詞対のもつ使用傾向と誤用頻度の関 係性も探ることで、より実用的な日本語教育への提案をしていきたい。 <参考文献> 庵功雄他(2000)『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』 株式会社スリーエ ーネットワーク. 市川保子(2005) 『初級日本語文法と教え方のポイント』 株式会社スリーエー ネットワ ーク. 奥津敬一郎(1967)「自動化・他動化および両極化転形-自・他動詞の対応-」『国語学』 70,pp46-66. 影山太郎(1996)『 動詞意味論—言語と認知の接点』 くろしお出版. 須賀一好・早津恵美子(編)(1995)『動詞の自他』: 207–231. 東京:ひつじ書房. 寺村秀夫 (1982) 『日本語のシンタクスと意味Ⅰ』,くろしお出版. ナロック・ハイコ,プラシャント・パルデシ,影山 太郎,赤瀬川 史朗(2015)『現代語自 他対一覧表 Excel 版』(http://watp.ninjal.ac.jp/resources/). 早津恵美子(1987) 「対応する他動詞のある自動詞の意味的・統語的特徴」『言語学研究』 6: pp.79-109,京都大学言語学研究会. 早津恵美子(1989)「有対他動詞と無対他動詞の違いについてー意味的な特徴を中心にー」 『言語研究』 95. ヤコブセン, ウェスリー・M(1989)「他動性とプロトタイプ論」,久野瞕・柴田方良(編) 『日本語学の新展開』,pp.213-248,くろしお出版. <参考 URL>

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