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3 キャッチボールの指導実践例 (1) ボールの握りについて正しいボールの握り方は 小学校でも意外と指導されておらず 正しく教える必要がある 図 1 と図 3 の握りは 一見すると違いがないように見えるが 図 1 を側面から見た図 2 を見ると 親指の側面でボールを握っていることが分かる このことに

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1 キャッチボールの指導のあり方

野球指導者が何人いようが「野球における一番大切な練習は何か?」の質問に対して、皆が「キャッチボ ール」と答え、また、選手にも「キャッチボールが大切だ」と口酸っぱくしてまで言うだろう。 そこで、「なぜ、キャッチボールが大切か?」指導者は、意図、目的、理由を明確に選手に教えることが大 切となる。

「なぜ、キャッチボールが大切か?」の指導例

野球の攻守交代はアウトを3つ取ることにある。アウトを取るには、どうすることが大切か? (1)アウトを取るには、「捕る」ことが大切 アウトを取るには、以下の4つが必要になる。 ① 送球アウト ② 飛球の捕球アウト ③ 走者へのタッチアウト ④ 三振 ①~④に共通しているのは、ボールを「捕る」ことであり、捕らなければアウトにはならない。 だから、キャッチボールが上手くならないとアウトが取れない。 *三振振り逃げアウトも送球によるアウトの場合がある。 (2)アウトを捕るためには、「送球正確さ」が大切 アウトを取るには、投げたい相手に正確にボールを投げることが大切である。 だからキャッチボールは大切で、アウトを捕る基本練習になる。 *キャッチボールの練習に真剣に取り組まない時は、厳しく怒るべきである。キャッチボールをおろそ かにすることは『負ける練習』と言っても過言ではない。大会における敗戦の要因や失点の多くに「送 球ミス=暴投、投手の四球絡み」がある。 (3)仲間への思いやり、心のキャッチボール 常に、相手に捕りやすい送球がいくとは限らない。低い送球や高い送球、左右にもズレる送球もある。 相手が捕りやすい送球を心がければ、暴投は尐なくなるが、実際は難しい。それならば、相手の暴投に 対し、自分が動いて捕る、体を張って捕る、ことで相手の暴投を防ぐことができる。 また、そうすることによって、相手は自分の暴投を反省しつつ、仲間に感謝するだろう。そのような観 点に立って実際の指導では、 ・投げ手の低い送球(届かない)を受け手が後逸 → 受け手を叱る ・投げ手の取れないような高い送球を受け手が後逸 → 投げ手を叱る 要するに、キャッチボールを見れば、チームの力量やチームワークが見え、試合前の対戦チームの観察 の際にもキャッチボールを見ることを選手にも意識させたい。強いチームのキャッチボールは見事で、だ からこそ、アウトをしっかり捕れるチームと言える。

2 キャッチボールの練習の人数的方法

(1)1対1(2人1組) 様々な種類を取り入れて行う。 *肩慣らし等で行う時は1種類にする。 (2)複数1組(3~5人) 1列に並び、リレー式で往復してボールを運ぶ。 *連携プレーをイメージする。 (3)1対複数(4~6人) 投げ手を中心に扇型の隊形でケンカ投法によって行う。 *捕球後すぐに送球する。 (4)内野エリアでのボール回し 内野各塁に全員が均等に分かれ、ベース上から様々なパターンで 「捕球→送球」 を素早く行う。 *外野手も含めて行う。

二 守 備

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3 キャッチボールの指導実践例

(1)ボールの握りについて 正しいボールの握り方は、小学校でも意外と指導されておらず、正しく教える必要がある。 図①と図③の握りは、一見すると違いがないように見えるが、図①を側面から見た図②を見ると、親指の 側面でボールを握っていることが分かる。このことにより、ボールに「スピン」がかかり、送球が伸びるよ うになる。逆に、図③のように親指の腹にボールをかけると、コントロールも付けにくく、特に、投手にお いては、図①、図②の握りがきちんと定着するよう指導することが大切である。 ① 良い握り:正面 ② 良い握り:側面 ③ 悪い握り (2)キャッチボールをやる前のストレッチ ボールを投げる動作は、肩、肘関節内、各筋肉に衝撃が強く、ストレッチの重要性は極めて大きい。 指導者は、ケガの予防として行うことを強く意識させるとともに、各ストレッチの目的をきちんと選手に 指導し、理解させることが大切である。 各ストレッチにかける回数や時間は、10 回や 10 秒が目安で、キャプテンがリードしながら全員で数えな がら実施すると良い。ストレッチについては、各チームが工夫しているので学んでほしい。 「投げられないケガ」は、野球選手にとって辛いことである。指導者は、技術向上の前に、ケガの予防に ついて高い意識を持つことが大切である。 ① ② ③ ④ ⑤ ① 肘と肩の関節を伸ばす。(左右) ② 肘関節の屈伸、柔軟性を高める。(左右) ③ 後ろで手を組み、肩甲骨のストレッチ。 ④ 前屈で腰の柔軟性を高める。(左右クロス) ⑤ 膝を曲げ、両肩を回す。前回旋で肩と膝周りのストレッチ。(左右交互) *広島の前田投手が登板前に必ずやっている。 ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑥ ⑤の要領で後ろに回旋する。 *⑤と併用し前後に実施することでバランス良く肩関節や肩周辺の筋肉がほぐれる。 ⑦ 手首を内回りに曲げてストレッチ。内旋で使う筋をほぐす。 ⑧ 腕を胸の前で組み、水平のラインを保持したまま、左右斜めに動かす。 肩関節や肩周辺の筋肉の内旋により筋温を上げる。 ⑨ 首の回旋。肩上部筋肉や首周りの筋をほぐす。

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(3)キャッチボールの種類 *①~⑪のキャッチボールは 10~15m程度の距離で実施。 ① 下手投げ ② 肩幅開き ③-a 体重移動左 ③-b 体重移動右 手首を固めたまま送球 両足固定ノーステップ 左足に全体重→左膝上で割る→右足全体重→送球 ④ 左足振り上げ ⑤ 右足振り上げ ⑥ 両足固定からジャンプして送球 右足固定して送球 左足を固定して送球 両足を肩幅に広げ、垂直にジャンプして送球 ⑦ 180°回転ジャンプしてから送球 ⑧-a 真上投げ ⑧-b 真上投げ 肩幅に足を開き、ジャンプで回転して正面に送球 右足から左足にしっかりのって真上に投げる ⑨-a 後ろ投げ ⑨-b 後ろ投げリリース ⑩-a グローブキャッチ捕球 → ⑩-b 送球 肩甲骨の可動域を広げて後ろの相手に送球 グローブ表面でキャッチして素早く握り替え送球 ⑪ 2球キャッチボール ステップ足を前に置き、2球同時に投げ合う

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【①~⑪を 10~15m程度の距離で行った後のキャッチボール】 ⑫・・・塁間の距離で、②のキャッチボールを 10 球。 ⑬・・・次に、1ステップを入れて 20 球。 ⑭・・・次に、40~50mの中距離の送球を1ステップ入れて 10 球行う。 ⑮・・・再び、10m程度の距離で肩幅開き(②)でケンカ投球(補給後素早く送球)20 球。 *全員で速さを競う ⑯・・・1ステップでケンカ投球 20 球競う。 *⑮、⑯とも 1~3 位以外に罰ゲーム(腕立伏 10 回等)を課すと、盛り上がる。 (4)多種多様なキャッチボールの目的 キャッチボールもまた各チームの工夫どころで、練習試合等で相手チームに学ぶことも大切である。 本稿で紹介したキャッチボールの例は、筆者がシーズンを通して実施しているものを中心に紹介した。こ れら種類には、技術向上の目的以外にも、筋力、バランス感覚、敏捷性等の要素を高める目的も含まれてお り、各種類が、どのような目的にあるのか、生徒と共に実践しながら大切である。 特に、下投げ(①)は、走者を挟んだプレーの際に使う技術であるのに対し、意外と重要視されず練習内 容として取り上げられていない。また、真上投げ(⑧)や後ろ投げ(⑨)は、肩周辺の筋力を高めるだけで なく肩甲骨の可動域を広げるトレーニングにもなるため、特に、投手においては有効と考える。「相手より高 く投げよう!」と声がけし、競争意識を持たせて実施したい。 さらに、グローブキャッチ補球(⑩)や2球キャッチボール(⑪)は、集中力や状況判断を高めるには、 最適で、特に、2球キャッチボール(⑪)は、どこに投げれば相手が捕りやすいか考えると同時に、握り替 えの速さ(補球から送球の速さ)が身に付くので、グローブキャッチ補球(⑩)、2球キャッチボール(⑪) ともに 10~20 球を素早くできるか競争させたい。 (5)冬期トレーニングや意図的に推奨したいキャッチボールの練習例 ① 両脚を開いたまま座ってキャッチボール 【目的】バランス感覚の育成、手首を使った柔らかな送球 ・2人1組で行う。大きく開脚し向かい合って座る。 ・手首を使って、柔らかく送球する。 ・距離は10~15m程度の近距離で行う。 ・バランスを崩さずに投げる感覚も重要になる。 ・慣れてきたら、20 球で競争する。(罰ゲーム有) ・上達具合で、2球同時でのキャッチボールも良い。 ② 両脚を開いたまま座り、さらに両脚を浮かせてキャッチボール バランスを保ちながら 相手が捕りやすい送球を 2球同時で 【目的】バランス感覚の育成、体幹の強化 ・脚を浮かせ、バランスを崩したなか送球。苦しい体勢から踏ん張って送球するので体幹が強化される。 *腹筋にもかなりの負荷がかかる。 ・相手に捕りやすい送球を意識し、集中して行う。 ・慣れてきたら20 球で競争する。(罰ゲーム有) ・上達次第で2球同時でのキャッチボールも良い。 ・10 球毎に隣と交代する等、ペアを代えるのも有効。

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(6)キャッチボールを行う上での注意事項 ① シーズン中は、必ず、短時間でもキャッチボールメニューは入れるようにする。 ② 毎日、相手を替えるようにする。相手が代わると送球の質が変わり、技術の向上につながる。 また、誰とでも心のキャッチボールを交わすことが、チームワークの育成につながる。 ③ 投手と捕手の組み合わせは崩さずに、バッテリーのコミュニケーションを大切にする。 ④ 「絶対に後ろに逸らさない!」強い意識を持って取り組ませたい。 (7)補球について 補給をする際、相手の送球が真っ直ぐならば、図Aのように身体の正面で補球できる。(目安としてライン 上に身体の中心がくるように立たせると良い) 一方で、送球が逸れた場合、真剣にキャッチボールに取り組まない選手は、図Bのように捕球するが、後 ろへ逸らさない意識が高い選手は、図Cようにボールが正面にくるように足を動かして捕球をする。 普段のキャッチボールから、「自分が動いて捕球する(足で捕る)」を選手に強く意識させるようにしたい。 図A 図B 図C (8)正しいステップ ~送球ミスを防ぐためのステップ指導について~ ① 正しいステップ → 送球ライン →平行 図A 図B 図C 図D 送球動作で大切なのは、肩口で相手を見ながら(図A)、右足をしっかりと相手に向け(図B)、体の正面 で「割る」とともに、左右の肩を結んだラインを平行に保つ(図C)ことにある。 野球用語で「割る」とは、図Dのような状態で、「体の正面で、両手の親指の先を地面に向けよう」と指導 すると良い。それにより内旋運動が始まってスナップの効いた送球ができるようになる。また、これができ ない選手は、アーム式の打撃マシンのような投げ方になる。 目安のライン

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② 悪い例のステップ→ 送球ライン → 斜め 図A 図B 図C 図D 送球の悪い例として、ステップする右足を左足の後方へバックステップを踏んだり(図B)、右足を左足に ぶつけるようにステップを踏んだりする選手が多い。さらに、「割れ」が崩れたり(図C)、左右の肩を結ぶ ラインが崩れたりする(図D)。これは、「暴投へのプロセス」である。 指導者は、どのようなキャッチボールであっても、「ステップの方向」と「送球(肩)ライン」を見ながら、 正しい動きを徹底して指導することが必要である。 ③ 良い例の下半身の向き(左膝、つま先の方向) 図A 図B 図C ラインを目印にステップラインを指導すると良い。左足のつま先が真っ直ぐに相手に向かい(図B)、送球 時には体重が前足(左足)の膝にしっかりとのせる(図C)。 ④ 悪い例の下半身の向き(左膝、つま先の方向) 図A 図B 図C つま先が相手方向からズレて(図A)、踏み込んだ前足の膝が開いている(図B)。これでは、肩肘にも負 担がかかり、送球も不安定になるので、修正する必要がある。 (9)正しいステップによる送球を指導する留意点 ① ケガの予防が第一 肩や肘を痛める原因として、「投げ過ぎ」よりも、「ストレッチ不足」「投げ方に問題」「ケアの怠惰」が多 い。投球時における肩のラインが水平でなく傾いていたり、ステップ時の前足の膝が開いたりしていたら、 肩や肘に負荷がかかるので、しっかりと指導したい。 ② アウトを捕る(正確に投げる)近道であることを意識づける 先述するように、野球競技は、1つのアウトを捕ることが大変に重要で、送球ミスが勝敗を左右すること から正しいステップを身に付けるよう意識させたい。

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【インステップを矯正する指導法】 他に多く見られる例として、「インステップ送球(投球時の踏み込み足が相手に対してクロス気味になる)」 がある。これも肩や肘を痛める要因となり、送球も不安定になるので矯正をしたい。 インステップを矯正する方法として、軸足を置く位置に、相手に向かってTの字を書き、軸足の土踏まず の部分を中心に置きステップ足をTの字のIの上にのせて投球させると良い。

4 守備(走る、捕る、投げる プロセス)の指導実践例

(1)ゴロ捕球の基本的な流れについて ① 正しい流れ 図A 図B 図C 図D 待球姿勢 捕球点中心に三角形 捕球後グラブをへそへ へそで「割り」送球へ 補球の局面(図B)でよく「腰を落とせ」と指導者は言うが、筆者は「両手を降ろせ」と言う。その方が、 自然に上体が地面に平行となって打球が見やすくなるからである。 大切なのは、補球後(図C)の形を身につけることであり、それは容易ではない。強豪私立高校の野球部 でさえ、図A~図Cの一連の動作を2人1組となってゴロを転がし 50 回ずつ反復練習をするチームもある。 ぜひ、ノックの前には、ドリル的に2人1組で反復練習を行うとよい。 ② 悪い流れ 図A 図B 図C 図D 腰高で構えて待つ 両足が揃い捕球点も近い 腰が伸びきる ステップの開きが大きい 先に示した「良い流れ」比較しながら、自チームの選手の捕球の流れを見てみると良い。送球が不安定に なるのは、この一連の流れの中に必ず要因があるので、送球難の選手のつまずきの発見につながる。 エラーは、例え捕球時にミスをしても、その後の送球がしっかりとされアウトを取ればエラーにはならな い。エラーの多くは、「 捕球ミス → 送球ミス 」であり、また、そこには「慌てる」心理も働く。 指導者は、「送球の方が走者よりはるかに速い。だから、捕球をミスしても正しい送球動作をしよう」と暗 示をかけるべきである。

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(2)軟式野球“特有”の打球処理への指導例 軟式のボールの特性である「大きく跳ねる」ことにより、捕球を苦しめる打球を生むことが多く、投手が 打者を打ち取ったとしても、ボールが跳ねることで内野安打になりやすく、硬式野球とは異なる。 例えば、2死3塁の場面で投手が打ち取った打球が3塁方向へボテボテのゴロで跳ねており、3塁手はダ ッシュをして捕球をミス、または、1塁に送球してもセーフで失点…ということがよくあるのが軟式野球で ある。そこで、大きく跳ねる打球に対する処理パターンを2つ紹介したい。2人1組でドリル的に練習(捕 球目的のみ)でき、また、ノックによる実戦的な練習(捕球→送球まで)も実践してほしい。 ① 大きく跳ねた打球処理に対する認識の指導 (ⅰ)ダッシュで立ち向かう。絶対に定位置で待たない。 打球を待った結果、頭上を越えて内野安打になるより、前進ダッシュをして補球できなかった方が、 投手のダメージは小さい。全力ダッシュを心がける。 (ⅱ)以下に示す2通りの捕球を狙い、小刻みダッシュ(ダッシュ強弱を入れたダッシュ)で打球入る。 *小刻みダッシュは、どのような打球に対しても活用したい技術である。 (ⅲ)捕球しても絶対に慌てて投げず、正しい動作で正確な送球を心がける。 ② 跳ね際で補球 打球に対してやや右側に入り、グローブを跳ね際のラインに入れる。グローブを立てるのではなく、「手を 立てろ!」と指導する。グローブを立てると捕球面が狭くなってしまう。特に3塁手においては、この捕球 練習は必須だが、内野手全員が取り組んでほしい技術である。 *手の平を立てるのがポイント ③ ジャンプして補球 打球に合わせてジャンプをし、理想は胸の前あたりで打球に対するグローブの捕球面を水平にしてキャッ チしたい。また、着地と同時に右足を前に素早くステップして送球する。小刻みダッシュで捕球のタイミン グをつかむようにしたい。

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④ 外野手のゴロ捕球 軟式野球における外野へのゴロの補給は大変難しい。硬式ボールのゴロがきれいに転がってくるのに対し て、軟式ボールは弾みながら転がってくるので、後逸することが多い。 理想は「 正面に入り構える → 捕る 」になるが、2塁走者がいてバックホーム狙いの場面ではそうはい かないので、図Bのように「 左足前で捕球 → 小さくジャンプ → 右足前へステップ → 送球 」をするこ とになる。しかし、弾む打球に対して一番大切なことは、図Aのように、打球に合わせて強弱を付けたダッ シュで予測した捕球点に一気に入ることにある。したがって、外野手の守備練習は、フライ捕球より、むし ろ「 ゴロ捕球 → 送球 」を練習する方が実戦的と考える。 図A 図B あわてず正しい送球姿勢 (3)飛球に対する補球の基本的な指導例 (内野・外野共通) フライの補球は、ゴロより簡単に思う指導者は尐なくはなく「フライ捕球の練習=外野手」と考えるチー ムが多い。しかし、フライの補球は決して簡単でなく、むしろ、フライを落球する内野手に頭を悩ませる指 導者が尐なからずいる。したがって、フライの補球練習は内野手も行うことが大切で以下にその理由を示す。 ① なぜ、内野手もフライの補球練習が必要か (ⅰ)軟式野球の特性として「詰まった打球のフライ」が多く、内・外野どちらの飛球か判断が難しい打 球が多いため、内野手も飛球を補球する練習をする必要がある。 (ⅱ)上記から、内野手が行う飛球の補球練習は、ランニングキャッチ、半身で追っかけ、背走りしての シングルキャッチ等の練習が必要になる。 ② 内野手と外野手の間の飛球の鉄則 筆者は「後ろが優先(外野手)」と指導している。外野手が捕れると判断したら、大きな声をかけ捕りにい く。時にはスライディングキャッチもすることになる。重要なのは、捕球の判断をした選手の声かけにある。 ③ 正しい捕球時の流れ 飛球を補球するポイントとして、グローブを左肩の上部におき、両足を揃えずに左足を尐し前へ出す。グ ローブに添えた右手に打球をあててしまう選手を良く見かけるが、無理に右手を添えなくて良い。また、体 勢は、若干、半身の姿勢で捕らせるようにすると、飛球の急な変化や目測ミスに対応できるようにするとと もに、特に、ライナー打球に対応しやすくなる。 グローブを左肩上部 両足を前後させる

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④ 悪い捕球時の流れ グローブの位置が頭上にあると飛球を見失いやすい。両足が揃うと、目測ミス、ライナー系の打球、打球 の変化への対応が遅れて後逸する可能性が生じるので気をつけたい。 ⑤ ランニングキャッチ 追い方の基本は、上半身を振り過ぎずに下半身主導で追いかけたい(図A、図B)。上体が揺れると目線も 揺れ、打球も揺れて見えるため、目測が難しくなる。 また、グローブはキャッチ寸前に出すようにする(図C)。グローブの捕球面を見せながら打球を追いかけ る選手がいるが、それではランニングの距離を稼ぐことができなくなる。 *ランニングキャッチの基本:「 目線をきる → 落下地点を予測 → 走り込む 」 図A 図B 図C 図D 悪い追い方

5 ノックについての考え方、指導法、指導例

(1)ノックについての留意点 ① 守備力の向上を目的とするが、「ノックを通して選手と会話をする」ことを念頭に置きたい。 ② 強い打球より、緩い打球を打ちたい。 ・実際の試合では、詰まった打球や跳ねる打球の方が多い。 ・強い打球は、選手のケガにつながる。選手にケガを負わせるのは指導者の責任 ・強い打球の処理は、守備力向上よりも反射神経の養成にすぎない。 *足を使わずに捕球ができる。軟式の特性を考えれば『足を使って捕球に入る』ことが重要 ・特に、試合前はケガがないようにシートノックは緩い打球を打ちたい。 *高校野球で強豪校の試合前ノックは、緩い打球を正面やぎりぎりに打ち分けている。 ・緩い打球=高くバウンドさせる(叩きつける)、左右に振る=足を使うことが、守備力の強化になる。 ③ 選手のミスに「なぜ、ミスをしたのか?」を指摘する。 ・ただ怒るのではない。「捕球ミス」「送球ミス」「判断ミス」のいずれのミスか見極める。 ④ ノック時に選手に厳しく叱るのは、捕球ミスでプレーを止めたとき。諦めたとき。 ・捕球をミスした後は素早く送球が先決であることを指導する。「エラー=セーフにした時」 ・捕球をミスしても素早い送球でアウトにするプレーは褒める。「後の処理が良かったね」 ・最大のエラーは「 捕球ミス → 送球ミス(慌てる) 」こと。 ・1プレーの中でミスが2つ重なればアウトは捕れない。最悪は走者に2つの塁を与える。 ⑤ 練習も試合も同じ打球は二度とないことを意識させる。 ・ノックで様々な方向や跳ねる打球にどう対応できるか?自分を鍛え、感覚を磨くことを理解させたい。 ⑥ 練習を自分のものにさせる。 ・ノックでのミスはOK。ミスをしながら、学び、自分の財産にしていく。 ・昨日より今日、今日より明日に上手くなる自分と出会うための練習と意識させる。盛り上げたい。

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(2)ノックの指導事例 ① 走者を付けない内野ノック、外野ノック ・単純に打球を打つのみ ・「ステップ → 捕球 → 送球」の練習の積み重ね。 ・打つ順番は、サードから始まりショート、セカンド、ファースト、ピッチャー、キャッチャーと続く。 ・時には、打つ順番をバラバラにすると集中力を切らさないようにするには有効。 ≪ノックの形態≫ 【 】内は、走者を想定した状態 (ⅰ)前進守備バックホーム【走者3塁】内野ゴロバックホーム、捕手はホームタッチまで。 (ⅱ)ホームゲッツー【走者満塁】内野ゴロバックホームから1塁送球でダブルプレー。 しかし、2塁走者がホームを狙うケースを想定し、1塁手からさらにバックホームもさせたい。 (ⅲ)前進守備から送球1塁へ【走者3塁】この時に1塁手からのバックホームもさせたい。 (ⅳ)ボール1塁【走者なし】どんな打球も1塁送球でアウトを捕る。 (ⅴ)ダブルプレー【走者1塁】全内野手が2塁への送球を狙う。2塁から1塁へ送球。この時、意外と 2塁から1塁への暴投が多い。余裕があればワンバウンド送球OK。捕手が1塁のカバーリング。 (ⅵ)サード、ショート、投手ゴロ→1塁送球→1塁手の3塁送球【走者2塁】 1塁手は速いワンバウンド送球OK。「3塁へ暴投=失点」がよくある。3塁セーフOKでも良い。 (ⅶ)バント処理(1塁、1・2塁、2塁、3塁)走者をつけず、予めどこへ送球するのか決めのも良い。 ポイントは、投手のバント処理能力の向上と捕手が足を使っての処理能力の向上。 *バントの打球は、正面から打球に入れる捕手が対応した方が捕球しやすい。ただし、捕手の1塁 悪送球は尐なくないので、練習で捕手によるバント対応を磨きたい。 ② 走者を付けたノック ・試合形式で行い、より実戦的であるため、判断力の練習になる。 ・内外野手を全てつけて、時にはアウトカウントを設定しても良い ・ 設定内容は、下記条件から24通り(8×3)になるが、ここでの詳細は避ける。 走者・・・・・・・・8通り(なし、1 塁、2 塁、3 塁、1・2 塁、1・3 塁、2・3 塁、満塁) アウトカウント・・・3通り(無死、1死、2死) ≪走者を付けたノックは、勝利を求めるための最良の守備練習≫ 全ては、アウトを3つ捕るために、様々な状況判断を行うことが勝利への道程になる。 (ⅰ)野球の難しさは、走者がいる時の守りであり、その守りも、アウトカウント、点差、相手投手の球種 等によって守備位置やアウトを狙う場所が変わってくる。 (ⅱ)走者を付けてノックをすることは、試合形式で行い、より実戦的になるので時間を多く割きたい。 (ⅲ)理想は、先の塁でアウトを捕ること。そのためには「素早く捕球」「素早く判断」「素早く送球」が必 要となり、そのために「どう動くか?」を練習で把握させる。 (ⅳ)積極的なミスは叱らない。消極的なミスを叱る。 ・積極的なミスとして、先の塁へ送球してアウトを狙った場合の「セーフ」は叱らない。 しかし、「なぜ、セーフになったか?」を追究する。「判断力の遅れ」or「打球に入りが遅い」等 ・消極的なミスとして、判断に迷って送球動作が鈍り、先の走者や打者走者を「セーフ」にした時。 (ⅴ)いかなるケースでもアウトを取るには「声がけ」が大切。捕手を中心に声がけできるチーム作り。 ・常に全員でアウトカウントと走者状況を確認。 (「1アウト2塁ね」「ノーアウト1塁盗塁バント有るぞ」「2アウト 1・2 塁、近い所でアウトOK」等) (ⅵ)バント処理で確実に1つアウトを捕る練習に力を入れる。 ・軟式は跳ねるため、バント処理ミスから失点はよくあので、実践に近い場面でアウトを捕る練習が必須。 (ⅶ)いかなる状況でも「間に合わない所には投げない」それにも「声がけ」が必要である。 ・邪道になるが、2死満塁でサードゴロや投手右側の投手ゴロはバックホームでフォースアウトOK。 *筆者は自チームで徹底する。わざわざ3塁方向から距離が遠い1塁より、本塁送球の方が短い。 また、1塁への送球にミスがあれば、2塁走者も生還して2失点の可能性を生じる。

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③ 状況判断を磨く走者付きのノックの指導事例 様々な状況について練習してみることで大切である。実際の試合では何が起こるか分からない。自分達の 思い通りに試合展開ができる保障はないからこそ、走者を付けて臨機応変の状況判断力を磨くことが大切と なる。以下に、様々な状況に応じる指導事例を紹介する。 (ⅰ)2死3塁でセフティーバント →本塁送球してタッチアウトOK。 (ⅱ)2死2塁で三遊間への深いゴロをショートが捕球 →1塁送球より、偽投して2塁走者の3塁オーバーランを狙い3塁送球。 もしくは、バックホームでアウトを狙うこと等も状況判断による。左打者ならなお狙える。 (ⅲ)走者2塁から左打者のバントやセフティーバントで3塁側への打球 →1塁送球より、偽投して2塁走者の3塁オーバーランを狙うことも状況判断 (ⅳ)無死あるいは1死で走者2塁でサードゴロやショートゴロ →1塁送球より、偽投して2塁送球で2塁走者を挟殺プレーで狙う状況判断 結果、打者走者が2塁へ到達しても1死あるいは2死2塁。 *1死あるいは2死3塁では失点の可能性が高い。アウトを1つ増やして、走者を先へ進めない野球 (ⅴ)無死あるいは1死満塁で打球が内野ゴロ →バックホームから1塁送球でダブルプレーを狙う。 しかし、跳ねた打球で1塁送球が「セーフ」の状況なら、 →捕手は1塁へ偽投して3塁へ送球し、2塁走者のオーバーランによるタッチアウトを狙う。 *捕手からの1塁悪送球で2塁走者生還はよくある。 (ⅵ)走者2塁で強い打球のレフト前ヒット →レフトの守備位置が深くなければ、即座に3塁送球で2塁走者のオーバーランでタッチアウトの可能性。

参照

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